説明

電池容量補正装置及び電池容量補正方法

【課題】電池容量の補正誤差を抑える。
【解決手段】二次電池(11)の充放電における電池容量を補正する電池容量補正装置(1)において、前記二次電池(11)の電圧を検出する電圧検出部(25)と、前記二次電池(11)の充放電電流を検出する電流検出部(26)と、前記電圧検出部(25)及び前記電流検出部(26)から得られる検出結果に基づいて、前記二次電池(11)の充放電時における電池残量を管理する電池残量管理部(43)とを有し、前記電池残量管理部(43)は、前記二次電池(11)の充電率に応じて前記電池残量を補正するための補正変化容量の制限値を設定することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池容量補正装置及び電池容量補正方法に係り、特に電池容量の補正誤差を抑えるための電池容量補正装置及び電池容量補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機器や充電回路等に対して電力を供給するために、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等に代表される二次電池が知られている。このような二次電池は、例えば、現在貯蓄されている充電量と、その二次電池の容量(バッテリ容量)との比であるSOC(残存容量(State Of Charge))を随時算出し、算出されたSOC値に基づいて、二次放電の充放電の制御を行っている。
【0003】
また、上述したような電源システムにおける二次電池の状態推定においては、満充電状態に対する充電率(SOC)等を正確に求めることが要求される。すなわち、電源システムは、二次電池の充電率を、充放電中や充放電直後にも正確に逐次推定して、二次電池の過剰な充放電を制限する必要がある。
【0004】
ここで、電池容量の算出手法について、図を用いて説明する。図1は、電池容量算出の一例を示す図である。図1に示す電池容量算出の一例では、横軸に充電率SOC[%]を示し、縦軸に開放時の端子電圧[V]を示している。つまり、図1では、開放電圧と充電率との特性([開放電圧−充電率]特性)を示している。
【0005】
従来では、図1に示すようにSOCの差分(例えば、図1において[SOC2−SOC1])と、その間の充電容量(例えば、図1において[OCV2−OCV1])との関係により電池容量の算出を行っていた。
【0006】
ここで、二次電池の使用に伴い、二次電池の状態が徐々に変化する(二次電池が劣化する)と、二次電池の電池パラメータ(内部抵抗や電池容量等)が変化する。したがって、このような経年変化等による劣化にも対応させて二次電池の状態を精度良く推定することが求められ、そのための手法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0007】
特許文献1に示されている手法では、二次電池の電池電圧、電池電流及び電池温度を検出するための検出手段と、前記電池温度の検出値と、前記電池電圧及び前記電池電流のうちの一方である第1状態量の検出値とに基づいて、電池モデル式に従って、前記二次電池の充電率と、前記二次電池の開放電圧と、前記電池電圧及び前記電池電流のうちの他方である第2状態量とを逐次推定する電池状態推定手段と、前記第2状態量の検出値及び推定値に基づいて、前記第2状態量の検出値及び推定値間の差異を表わす推定誤差を算出すると共に、前記充電率及び前記開放電圧の何れか一方と前記推定誤差とに基づいて、前記電池モデル式に用いられるパラメータ群のうち、前記二次電池の状態変化に応じて変化する所定のパラメータを推定するパラメータ推定手段とを備え、前記電池状態推定手段は、前記パラメータ推定手段による前記所定パラメータの推定結果を前記電池モデル式に反映させることによって正極開放電位及び負極開放電位を補正すると共に、補正された前記正極開放電位及び前記負極開放電位に基づいて前記開放電圧を推定する、二次電池の状態推定装置が示されている。
【0008】
また、特許文献2に示されている手法では、二次電池のSOC値を推定するSOC推定方法は、二次電池の充放電電流を継続的に積算して第1の積算値を求め、テーブルを参照して取得した二次電池の容量値でもって第1の積算値を除算した結果をSOC初期値に加算することにより、第1のSOC値を継続的に算出することと、充電と放電とが切り替わるタイミングでの二次電池の端子電圧に基づいて第2のSOC値を求めることと、過去に求めた第2のSOC値と今回求めた第2のSOC値との差と、この差に対応する時間間隔における充放電電流の積算値とから、二次電池についての現在の第2の容量値を求め、テーブル中の容量値を第2の容量値で更新することとを有する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−060384号公報
【特許文献2】国際公開第2008/026477号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、開放電圧より求められるSOCには、経年変化等による劣化等の誤差が多く含まる場合があるため、算出された電池容量を用いて現在の電池容量を補正する際には、その容量変化量を制限する必要がある。
【0011】
しかしながら、充電容量が同じであっても、充電完了が満充電に近い(言い換えるとSOC値が高い)ほど、算出された電池容量と実際の電池容量の誤差が少なく、その場合には、精度の高い補正が可能となる。
【0012】
ここで、上述した特許文献に示されているような従来手法では、このような充電容量の満充電時を利用した誤差補正手法については開示されていない。
【0013】
したがって、本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、電池容量の補正誤差を抑えることにより、電池残容量管理システムの精度を向上させるための電池容量補正装置及び電池容量補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0015】
本発明は、二次電池(11)の充放電における電池容量を補正する電池容量補正装置(1)において、前記二次電池(11)の電圧を検出する電圧検出部(25)と、前記二次電池(11)の充放電電流を検出する電流検出部(26)と、前記電圧検出部(25)及び前記電流検出部(26)から得られる検出結果に基づいて、前記二次電池(11)の充放電時における電池残量を管理する電池残量管理部(43)とを有し、前記電池残量管理部(43)は、前記二次電池(11)の充電率に応じて前記電池残量を補正するための補正変化容量の制限値を設定することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、二次電池(11)の充放電における電池容量を補正する電池容量補正方法において、前記二次電池(11)の電圧を検出する電圧検出ステップと、前記二次電池(11)の充放電電流を検出する電流検出ステップと、前記電圧検出ステップ及び前記電流検出ステップから得られる検出結果に基づいて、前記二次電池(11)の充放電時における電池残量を管理する電池残量管理ステップとを有し、前記電池残量管理ステップは、前記二次電池(11)の充電率に応じて前記電池残量を補正するための補正変化容量の制限値を設定する(S04〜S06)ことを特徴とする。
【0017】
なお、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、本願発明が図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池容量の補正誤差を抑えることにより、電池残容量管理システムの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電池容量算出の一例を示す図である。
【図2】本実施形態における電源システムの一構成例を示す図である。
【図3】本実施形態におけるCPUの機能構成の一例を示す図である。
【図4】電池容量算出精度を説明するための一例の図である。
【図5】本実施形態における変化容量制限値について説明するための図である。
【図6】本実施形態における補正処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態を適用した電池残容量管理システムの実施結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本発明について>
本発明は、例えば、開放電圧より求める充電率(SOC)と充電された積算容量とにより算出される電池容量において、現在の電池容量を補正する際、変化容量がある一定値を超えないように所定の制限をしているが、充電完了が満充電であるほど、SOCが安定して求められるため、充電完了時点のSOCに応じた制限による補正を行うことで誤差を低減する。
【0021】
以下に、上述した特徴を実現するための本発明における電池容量補正装置及び電池容量補正方法を好適に実施した形態について図面等を用いて説明する。
【0022】
<電源システムの構成例>
まず、本実施形態における電池容量補正装置を含む電源システム(電池残容量管理システム)の構成例について、図を用いて説明する。図2は、本実施形態における電源システムの一構成例を示す図である。図2に示す電源システム100は、電池容量補正装置としての電池パック(バッテリーパック)1と、携帯機器2とを有するよう構成されている。なお、電源システム100において、電池パック1に接続される機器については、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば携帯機器2の他にも充電回路等であってもよい。
【0023】
また、電池パック1は、二次電池11、電池監視IC(Integrated Circuit)12と、電流検出用抵抗13と、保護IC14とを有するよう構成されている。なお、電池パック1は、二次電池11とその電池状態を管理する管理システムとを合わせたモジュール部品であり、電極端子15(正極端子15−1及び負極端子15−2)と、通信端子16とを介して携帯機器2と接続される。
【0024】
電池監視IC12は、トリミング回路21と、基準クロック生成部22と、基準電源生成部23と、温度検出部24と、電圧検出部25と、電流検出部26と、ADC(Aalog to Digital Converter)27と、CPU(Central Processing Unit)28と、通信インターフェース(I/F)29と、ROM(Read Only Memory)30と、RAM(Random Access Memory)31と、書き換え可能メモリ32と、タイマ33とを有するよう構成されている。また、保護IC14は、充放電保護回路34と、2つのトランジスタ35−1,35−2とを有するよう構成されている。
【0025】
二次電池11は、上述したように、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ等の二次電池からなる。なお、図2に示す電源システム100において、二次電池11は、携帯機器2の電源でもあり、電子監視IC12や保護IC14の電源でもある。また、二次電池11は、例えばADC27、CPU28、通信I/F29、タイマ33の電源でもある。また、温度検出部24、電圧検出部25、電流検出部26については、それらの回路構成に応じて、二次電池11からの給電が必要となることがある。また、書き換え可能メモリ32については、二次電池11からの給電が遮断されても、その記憶内容は保持される。温度検出部24、電圧検出部25、電流検出部26、ADC27、及びCPU28は、二次電池11の電池状態を検知する状態検知部として機能する。
【0026】
電流検出用抵抗13は、二次電池11と直列に接続されており、電池監視IC12の電流検出部26において、二次電池11の充放電電流を検出させる。また、保護IC14は、トランジスタ35−1,35−2のオン/オフを制御して二次電池11を過充電、過放電等から保護するための充放電保護ICである。
【0027】
保護IC14のトランジスタ35−1は、例えばnチャネルMOS電界効果トランジスタ等から構成されており、ソースとバックゲートとが接続され、ドレインがトランジスタ35−2のソースに接続され、ゲートが充放電保護回路34と接続されている。トランジスタ35−2は、例えばnチャネルMOS電界効果トランジスタ等から構成されており、ソースがトランジスタ35−1のドレインに接続され、ドレインがバックゲート及び負極端子15−2に接続され、ゲートが充放電保護回路34に接続されている。つまり、充放電保護回路34によってトランジスタ35−1,35−2をスイッチングすることにより、二次電池11の充放電が制御される。
【0028】
電極端子15のうち、正極端子15−1は、二次電池11の正極に通電経路を介して電気的に接続され、負極端子15−2は、二次電池11の負極に通電経路を介して電気的に接続される。更に、通信端子16は、通信I/F29に接続される。
【0029】
トリミング回路21は、CPU28からの制御信号に基づいて、基準クロック生成部22に対してクロック周波数制御信号を出力し、電池監視IC12の内部クロック信号の周波数を制御する。また、トリミング回路21は、CPU28からの制御信号に基づいて、基準電源生成部23に対して電圧制御信号を出力して、基準電源生成部23から出力される電圧レベルを設定する。
【0030】
基準クロック生成部22は、トリミング回路21からのクロック周波数制御信号に基づいて、電池監視IC12内の基準クロック信号を生成し、生成した基準クロック信号をCPU28に出力する。
【0031】
基準電圧23は、トリミング回路21からの電圧制御信号により、電池監視IC12内の電圧レベルを設定し、設定されたレベルの電圧をADC27に出力する。
【0032】
温度検出部24は、二次電池11の周囲温度を検出する。具体的には、温度検出部24は、二次電池11の周囲温度を検出し、その検出された周囲温度をADC27に入力可能な電圧に変換して出力する。なお、ADC27によって変換された二次電池11の周囲温度を示す電池温度のデジタル値は、CPU28に出力され、演算処理のためのパラメータとして利用される。
【0033】
また、電池温度のデジタル値は、CPU28によって予め決められた単位に換算され、二次電池11の電池状態を示す電池状態情報として、通信I/F29を介して携帯機器2に出力される。なお、本実施形態における温度検出部24は、二次電池11自体の温度やその雰囲気温度だけでなく、例えば、二次電池11と電池パック1とが近接していれば、電池パック1やその各構成部の温度を検出するものであってもよい。
【0034】
電圧検出部25は、二次電池11の電圧を検出し、その検出された電圧をADC27に入力可能な電圧に変換して出力する。ここで、ADC27によって変換された二次電池11の電圧を示す電池電圧のデジタル値は、CPU28に出力され、演算処理のためのパラメータとして利用される。また、電池電圧のデジタル値は、CPU28によって予め決められた単位に換算され、二次電池11の電池状態を示す電池状態情報として、通信I/F29を介して携帯機器2に出力される。
【0035】
電流検出部26は、二次電池11の充放電電流を検出し、その検出された電流をADC27に入力可能な電圧に変換して出力する。なお、電流検出部26は、例えば、二次電池11と直列に接続された電流検出用抵抗13と、電流検出用抵抗13の両端に発生する電圧を増幅するオペアンプとを備えてもよく、その場合には、電流検出用抵抗13とオペアンプとによって充放電電流を電圧に変換する。なお、上述したオペアンプは、例えばADC27に備えられてもよい。
【0036】
ADC27によって変換された二次電池11の充放電電流を示す電池電流のデジタル値は、CPU28に出力され、演算処理のためのパラメータとして利用される。また、電池電流のデジタル値は、CPU28によって予め設定された単位に換算され、二次電池11の電池状態を示す電池状態情報として、通信I/F29を介して携帯機器2に出力される。
【0037】
ADC27は、温度検出部24、電圧検出部25、及び電流検出部26のそれぞれから得られるアナログ値をデジタル値に変換するADコンバータである。また、ADC27は、変換されたデジタルデータをCPU28に出力する。
【0038】
CPU28は、電池監視IC12、更には電池パック1の各機能構成における動作等を制御する。なお、CPU28の具体的な機能等については後述する。
【0039】
通信I/F29は、通信端子16を介して携帯機器2との通信を行う。具体的には、通信I/F29は、携帯機器2からの要求情報等を取得し、CPU28に出力する。また、通信I/F29は、要求に対するCPU28の処理結果に基づく通知情報等を携帯機器2に出力する。
【0040】
ROM30及びRAM31は、CPU28における各種演算処理を行うための各種情報を蓄積し、必要に応じて読み出したり、書き込んだりするための記録手段である。つまり、ROM30及びRAM31は、例えばCPU28が本実施形態における各種機能を実現させるために実行するプログラムや電源システム100における電池容量補正を実現するために必要な設定値(例えば、閾値、制限値、規定値、補正変化容量制限係数)等の各種情報等を記憶するための構成であり、CPU28からの要求により各種情報を読み出すこともでき、またCPU28で実施された処理結果等の各種情報を書き込むこともできる。
【0041】
書き換え可能メモリ32は、CPU28等における演算処理に利用される二次電池11や電池パック1の各構成部の特性を特定するための特性データや実行された電圧算出結果、電流算出結果等を格納する。ここで、書き換え可能メモリ32は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等を使用することができるが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0042】
タイマ33は、電池パック1や電池監視IC12の全体の動作に対する時間の管理を行う。また、タイマ33は、システムクロックをカウントし、そのカウント値はCPU28に参照される。具体的には、例えば電圧算出結果や電流算出結果等を時間情報と共に書き換え可能メモリ32等に記録する場合や、充電開始時又は放電開始時からの経過時間等を管理する場合に、タイマ33の時間情報が用いられる。
【0043】
ここで、上述した電源システム100における電池パック1に接続される携帯機器2は、例えば人が携帯可能な外部電子機器である。具体的には、携帯機器2は、例えば携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)やモバイルパソコン等の情報端末装置、カメラ、ゲーム機、音楽やビデオ等のプレーヤー、電動工具、POS(Point Of Sale)端末、無線機等が挙げられる。また、電池パック1は、携帯機器2に内蔵されたり、外付けされる。
【0044】
また、携帯機器2は、通信I/F29から取得した電池状態情報に基づいて、当該電池状態情報に応じた所定の動作を行う。更に、携帯機器2は、例えば、電池状態情報をディスプレイ等の表示部に表示させたり(例えば、二次電池11の残量情報、劣化情報、交換時期情報等の表示)、電池状態情報に基づいて自身の動作モードを、例えば「通常消費電力モード」から「低消費電力モード」に変更するといった制御等を行うこともできる。
【0045】
<CPU28における演算処理内容>
ここで、上述した電池監視IC12に含まれるCPU28において実行される各種機能等について図を用いて説明する。図3は、本実施形態におけるCPUの機能構成の一例を示す図である。図3に示すCPU28は、電圧取得部41と、電流取得部42と、電池残量管理部43と、異常状態検出部44と、省電力制御部45とを有するよう構成されている。
【0046】
本実施形態におけるCPU28は、ROM30、RAM31、及び書き換え可能メモリ32等と共に演算処理部として、電圧取得、電流取得、電池残量管理、異常状態検出、省電力制御、及び充放電制御等の各処理を行う。
【0047】
電圧取得部41は、例えば電圧検出部25からADC27を介して得られる電圧値に基づいて、所定条件等に対応する電圧値を算出する。具体的には、電圧取得部41は、電圧検出部25により検出される電圧値と、温度検出部24から検出される電池パック1内の温度変化とから、温度変化に対応した電圧変化等を検出し、検出した電圧変化等に対応する電圧を取得する。
【0048】
電流取得部42は、例えば電流検出部26からADC27を介して得られる電流値に基づいて、所定条件等に対応する電流値を算出する。
【0049】
電池残量管理部43は、上述した電流取得部42により得られた電流を積算することにより、電池残量を管理する。なお、電池残量の算出では、二次電池11の温度や劣化等により二次電池11の内部抵抗が変化するため、二次電池11の電圧のばらつきが生じ、算出された電池残量(電池容量)に誤差が生じる場合があるため、必要に応じて補正が行われる。
【0050】
このとき、電池残量管理部43は、後述するように、SOCを基準として補正可能範囲(補正変化容量制限値等)を設定し、その範囲内で電池容量の補正を行う。なお、電池残量管理部43における上述した処理の詳細については、後述する。
【0051】
また、本実施形態における補正値の取得手法については、既存の技術を広く適用することができる。例えば、予め設定された温度補正テーブル等をROM30及びRAM31等に蓄積しておき、温度検出部24により検出された温度に対応させて、上述した温度補正テーブル等から補正値を取得し補正を行うことができる。また、上記の他にも、例えば、予め設定された充放電の回数に応じた劣化の度合いに基づく劣化補正テーブル等をROM30及びRAM31等に蓄積しておき、充放電回数に対応させて、上記劣化補正テーブル等から補正値を取得し補正を行うことができる。
【0052】
異常状態検出部44は、所定条件等に基づいて、異常状態となっているか否かを検出する。ここで、異常状態検出部44が検出する異常状態としては、例えば電池の電圧が規定値以上になる過充電状態、電圧が規定値以下になる過放電状態、規定値以上の電流が流れる過電流状態等があるが、本発明における異常状態はこれに限定されるものではない。
【0053】
省電力制御部45は、電池監視IC12における省電力動作モードと、非省電力動作モードとの切り換え制御等を行う。なお、省電力モードでは、例えばタイマ33のクロックを低下させ、電池監視IC12全体の処理速度を低下させる等の動作を行う等、電池パック1内の消費電流が最小となるモードに切り替える機能を有する。なお、本発明における省電力機能の内容は、これに限定されるものではない。
【0054】
なお、CPU28における動作は、上述した各種機能に限定されるものではなく、電池パック1全体の制御を行う。
【0055】
<電池容量(電池残量)の補正について>
次に、本実施形態における電池容量の補正について説明する。例えば開放電圧により求める充電率(SOC)と、充電された積算容量とにより算出される電池容量とを用いて、現在の電池容量を補正する場合では、変化容量がある一定値を超えないように所定の制限をしているが、充電完了が満充電であるほど、SOCが安定して求められる。
【0056】
ここで、図4は、電池容量算出精度を説明するための一例の図である。図4に示す図において、横軸は充電停止時の充電率(SOC)[%]を示し、縦軸は算出電池容量誤差率[%]を示している。
【0057】
算出される二次電池11の電池容量は、例えば充電開始直前の電池電圧と、充電終了時点から所定時間経過時の電池電圧とに基づいて、CPU28により算出される。すなわち、CPU28は、充電開始直前の電池電圧と「開放電圧−充電率」特性とに基づいて、充電開始直前の充電率を算出すると共に、充電終了時点から所定時間経過時の電池電圧と、上述した図1に示すような「開放電圧−充電率」特性とに基づいて、充電終了時点から所定時間経過時の充電率を算出する。
【0058】
なお、「開放電圧−充電率」特性の情報は、例えば書き換え可能メモリ32等に予め蓄積されている。そのため、CPU28は、所定の「開放電圧−充電率」特性の情報を書き換え可能メモリ32から取得することができる。
【0059】
その後、CPU28は、電池容量をBC[mAh]とし、充電開始直前の充電率をSOC1[%]とし、充電終了時点から所定時間経過時の充電率をSOC2[%]とし、充電開始時点から充電終了時点までの充電期間において充電された電気量をQ[mAh]として、以下に示す演算式(1)に基づいて、二次電池11の電池容量BCを算出する。
BC=Q/{(SOC2−SOC1)/100} ・・・(1)
なお、SOC1やSOC2は、例えば温度補正されたものであれば、より正確な値が算出され得る。また、充電終了時点から所定時間経過時の電池電圧を用いることによって、充電終了時点よりも安定した電池電圧を演算に反映して演算結果の精度を高めることができる。
【0060】
ここで、図4に示す3種類の異なる二次電池(セル)をみると、何れも充電停止時の充電率が大きい方が、算出電池容量との誤差率が小さくなっていることがわかる。したがって、本実施形態では、充電完了時点のSOCに応じた補正を行うことで誤差の低減を実現することができる。
【0061】
<本実施形態における電池容量の補正について>
上述したように、電池容量の補正では、充電後の状態が満充電状態に近ければ近いほど、セルの特性より安定した容量が開放電圧より求められ、その容量より求められた補正容量の精度も高くなる。そのため、本実施形態では、電池容量の補正時において、充電率を所定のタイミングで定期的又は不定期に取得し、取得した充電率の値が100に近い、つまり満充電に近ければ近いほど、算出によって得られた補正値に対する補正の割合を多く適用する。
【0062】
具体的には、「充電後の開放電圧より求められる充電率(SOC)」、「補正変化容量制限係数(変化容量許容係数K1と基準となる変化制限量K2)」をパラメータとし、これらのパラメータにより補正変化容量制限値を算出する。
【0063】
ここで、算出式は、以下の式(2)のようになる。
補正変化容量制限値=(SOC−60)×K1+K2 ・・・(2)
つまり、本実施形態における補正変化量制限値をCPU28等により算出する場合には、充電率が高い場合における補正変化量の制限値を高めに設定することで、より高精度な補正を実現することができる。
【0064】
なお、上述の式(2)では、例えば充電率SOCが所定値未満の場合(例えば、約60%未満の場合等)には、変化容量制限値を固定値(例えば、10mAh)となるようにする。これにより、最小限の補正変化容量を取得することができ、その範囲内での補正を行うことができる
ここで、本実施形態における上述した補正処理による変化容量制限値について図を用いて説明する。図5は、本実施形態における変化容量制限値について説明するための図である。なお、図5に示す図の横軸は充電率SOC[%]を示し、縦軸は補正変化容量制限値[mAh]を示している。
【0065】
図5の例では、SOC60%未満の場合は、補正変化容量制限値は、10mAhと固定としている。また、図5の例では、補正変化容量制限値を10〜40mAhとしている。つまり、本実施形態では、図5に示すように、SOCが0〜60%の場合には、補正可能な変化容量の制限値を10mAhとし、60〜100%の場合には、充電率が増加するに従って10〜40mAhまで、制限値を次第に増加させるようにする。
【0066】
なお、本発明において、固定とするSOCの閾値や補正変化容量制限値の範囲についてはこれに制限されるものではなく、例えば二次電池の性能や劣化具合、環境条件等のうち、少なくとも1つの要因に対応させて適宜変更して設定することができる。
【0067】
また、本実施形態では、図5に示すような予め設定されたグラフを用いて充電率に対応する補正変化容量制限値を設定したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、SOCと補正変化容量制限値とを設定した対応テーブル等を設定しておき、その対応テーブルを参照してSOCに対応する補正変化容量制限値を設定してもよい。
【0068】
つまり、上述の説明では、図5に示すようにSOCをある値から増加させていくと、その値に比例して補正変化容量制限値も増加していたが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば、あるSOCの範囲に応じて段階的に補正変化容量制限値を増加させていってもよい。この場合、例えば、SOCが60〜70%の場合、70〜80%の場合、80〜85%の場合、85〜90%の場合、90〜95%の場合、95〜100%の場合等、SOCの比率の範囲に応じて、それぞれ対応する補正変化容量制限値を設定することができる。更に、本実施形態では、SOCがある値までは次第に補正変化容量制限値を増加させていき、SOCがある値以上となった場合には、固定値に設定することもできる。
【0069】
<本実施形態における補正処理手順>
ここで、上述した本実施形態における補正処理手順の具体例について、フローチャートを用いて説明する。
【0070】
図6は、本実施形態における補正処理手順の一例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートでは、例えば、CPU28等により電池容量補正処理が開始されると、例えば上述した図1に対応する[開放電圧−充電率]特性に基づいて、開放電圧(OCV2)より充電率(SOC2)の算出を行う(S01)。次に、図1に示すように2つの充電率SOC1、SOC2と、充電容量より電池容量を算出し(S02)、算出された電池容量と、現在の電池容量との差分を算出する(S03)。
【0071】
ここで、SOCの値に応じた補正変化容量制限値の設定を行う。具体的には、SOCと予め設定された閾値とを比較し、SOCがその閾値以上である場合には、SOC値に対応して設定された固定値より大きい制限値を設定し、その設定された制限値を超えない程度の補正を行えるようにする。
【0072】
図6では、上述した内容の一例として、SOCが60%以上であるか否かを判断し(SS04)、SOCが60%以上である場合(S04において、YES)、補正変化容量制限値をSOC値より算出する(S05)。なお、算出する際には、例えば上述した式(2)等を用いることができるが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0073】
また、S04の処理において、SOCが60%未満である場合(S04において、NO)、補正変化容量制限値に固定値として10mAhを設定し(S06)、この範囲を超えない程度の補正を行う。
【0074】
その後、算出補正変化容量制限を算出した差分に適用して補正を行い(S07)、補正された内容に基づいて電池容量の更新を行う(S08)。
【0075】
なお、上述した補正処理は、二次電池の充放電処理が行われている間は、例えば予め設定されたタイミングで繰り返し処理が行われる。上述した内容に基づいて、補正処理を行うことにより、電池容量の補正誤差を抑えることができ、電池残容量管理システムの精度を向上させることができる。
【0076】
<実施結果例>
ここで、本実施形態を適用した電池残容量管理システムにおける実施結果の例について図を用いて説明する。図7は、本実施形態を適用した電池残容量管理システムの実施結果の一例を示す図である。なお、図7に示す実施結果例の横軸は電池容量算出回数[回]を示し、縦軸は補正後の電池容量[mAh]を示している。
【0077】
図7には、一例として充電率SOCが異なる3種類(60%,75%,100%)の実施結果が示されている。例えば、図7に示すように、現在の電池容量が850nAhのときに算出電池容量(現在の電池容量)が820mAhであった場合、SOC=100%に近いほど算出結果に収束が早く、1回の補正で高精度な補正が可能となる。
【0078】
上述したように本発明によれば、電池容量の補正誤差を抑えることにより、電池残容量管理システムの精度を向上させることができる。具体的には、電池容量の充電率による容量補正において、開放電圧から求めるセルの容量は満充電時に安定して求められ、充電率が下がるにつれ精度が低下するため、この特徴を考慮して充電率に応じた補正を行うことで精度を向上させる。
【0079】
つまり、開放電圧により求める充電率(SOC)と、充電された積算容量により算出される電池容量とで、現在の電池容量を補正する際、充電完了時が満充電であるほど、SOCが安定して求められるため、充電完了時点のSOCに応じた補正を行うことで、誤差を低減することができる。
【0080】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 電池パック(電池容量補正装置)
2 携帯機器
11 二次電池
12 電池監視IC(Integrated Circuit)
13 電流検出用抵抗
14 保護IC
15−1 正極端子
15−2 負極端子
16 通信端子
21 トリミング回路
22 基準クロック生成部
23 基準電源生成部
24 温度検出部
25 電圧検出部
26 電流検出部
27 ADC(Aalog to Digital Converter)
28 CPU(Central Processing Unit)
29 通信インターフェース(I/F)
30 ROM(Read Only Memory)
31 RAM(Random Access Memory)
32 書き換え可能メモリ
33 タイマ
34 充放電保護回路
35−1,35−2 トランジスタ
41 電圧取得部
42 電流取得部
43 電池残量管理部
44 異常状態検出部
45 省電力制御部
100 電源システム(電池残容量管理システム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充放電における電池容量を補正する電池容量補正装置において、
前記二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の充放電電流を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部及び前記電流検出部から得られる検出結果に基づいて、前記二次電池の充放電時における電池残量を管理する電池残量管理部とを有し、
前記電池残量管理部は、前記二次電池の充電率に応じて前記電池残量を補正するための補正変化容量の制限値を設定することを特徴とする電池容量補正装置。
【請求項2】
前記電池残量管理部は、
前記二次電池の充電率が所定の閾値から満充電に近くなるほど、前記制限値を増加させることを特徴とする請求項1に記載の電池容量補正装置。
【請求項3】
前記制限値は、前記充電率に比例させて増加させることを特徴とする請求項2に記載の電池容量補正装置。
【請求項4】
前記電池残量管理部は、
前記二次電池の充電率が前記所定の閾値未満の場合には、前記制限値を固定値とすることを特徴とする請求項2に記載の電池容量補正装置。
【請求項5】
前記所定の閾値及び/又は前記制限値は、前記二次電池の性能、劣化度、及び環境条件のうち、少なくとも1つの要因に対応させて設定されることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の電池容量補正装置。
【請求項6】
二次電池の充放電における電池容量を補正する電池容量補正方法において、
前記二次電池の電圧を検出する電圧検出ステップと、
前記二次電池の充放電電流を検出する電流検出ステップと、
前記電圧検出ステップ及び前記電流検出ステップから得られる検出結果に基づいて、前記二次電池の充放電時における電池残量を管理する電池残量管理ステップとを有し、
前記電池残量管理ステップは、前記二次電池の充電率に応じて前記電池残量を補正するための補正変化容量の制限値を設定することを特徴とする電池容量補正方法。
【請求項7】
前記電池残量管理ステップは、
前記二次電池の充電率が所定の閾値から満充電に近くなるほど、前記制限値を増加させることを特徴とする請求項6に記載の電池容量補正方法。
【請求項8】
前記制限値は、前記充電率に比例させて増加させることを特徴とする請求項7に記載の電池容量補正方法。
【請求項9】
前記電池残量管理ステップは、
前記二次電池の充電率が前記所定の閾値未満の場合には、前記制限値を固定値とすることを特徴とする請求項7に記載の電池容量補正方法。
【請求項10】
前記所定の閾値及び/又は前記制限値は、前記二次電池の性能、劣化度、及び環境条件のうち、少なくとも1つの要因に対応させて設定されることを特徴とする請求項7乃至9の何れか1項に記載の電池容量補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−149970(P2012−149970A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8297(P2011−8297)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】