説明

電池状態計測方法及び電池状態計測装置

【課題】二次電池の残量状態を高精度に推定できる、電池状態計測装置の提供。
【解決手段】二次電池の充放電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第1の電池特性に基づき、二次電池の単位時間前の充電率に対応する二次電池の充放電停止時の電池電圧を算出する電圧算出部41と、電圧検出部10で検出される電池電圧と電圧算出部41で算出される電池電圧との電圧差を算出する電圧差算出部42と、二次電池の充放電停止時の電池電圧と電圧検出部10で検出される電池電圧との電圧差と二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第2の電池特性に基づき、電圧差算出部42で算出される電圧差に対応する二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出部43と、二次電池の単位時間前の充電率と変化量算出部43で算出される変化量とを用いて、二次電池の単位時間後の充電率を算出する充電率算出部44とを有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の状態を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、電池の開路電圧を検出して、当該電池の開路電圧対電池残量のデータと比較することによって、当該電池の電池残量を求める、電池残量演算装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−180783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二次電池の残量状態(残容量状態)は、電池電圧が同じでも負荷電流の大きさなどによって変動するため、上述の従来技術では、二次電池の残量状態の推定精度が低い場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、二次電池の残量状態を高精度に推定できる、電池状態計測方法及び電池状態計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電池状態計測方法は、
二次電池の電池電圧を検出する電圧検出ステップと、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第1の電池特性に基づき、前記二次電池の単位時間前の充電率に対応する、前記二次電池の充放電停止時の電池電圧を算出する電圧算出ステップと、
前記電圧検出ステップで検出される電池電圧と前記電圧算出ステップで算出される電池電圧との電圧差を算出する電圧差算出ステップと、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第2の電池特性に基づき、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差に対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出ステップと、
前記二次電池の単位時間前の充電率と前記変化量算出ステップで算出される変化量とを用いて、前記二次電池の単位時間後の充電率を算出する充電率算出ステップとを有することを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る電池状態計測装置は、
二次電池の電池電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第1の電池特性に基づき、前記二次電池の単位時間前の充電率に対応する、前記二次電池の充放電停止時の電池電圧を算出する電圧算出部と、
前記電圧検出部で検出される電池電圧と前記電圧算出部で算出される電池電圧との電圧差を算出する電圧差算出部と、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と前記電圧検出部で検出される電池電圧との電圧差と前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第2の電池特性に基づき、前記電圧差算出部で算出される電圧差に対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出部と、
前記二次電池の単位時間前の充電率と前記変化量算出部で算出される変化量とを用いて、前記二次電池の単位時間後の充電率を算出する充電率算出部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二次電池の残量状態を高精度に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る電池状態計測装置の一実施形態である計測回路100の構成を示したブロック図である。
【図2】二次電池201の充電時及び放電時の相対充電率RSOC(Relative State of Charge)と電池電圧Vとの関係を示した電池特性のグラフである。
【図3】現在のRSOCの第1の算出例を示したフローチャートである。
【図4】二次電池201の充電時及び放電時の相対充電率RSOCと電池電圧Vとの関係を示した電池特性のグラフである。
【図5】現在のRSOCの第2の算出例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明に係る電池状態計測装置の一実施形態である計測回路100の構成を示したブロック図である。計測回路100は、二次電池201の残量状態を計測する集積回路(IC)である。二次電池201の具体例として、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などが挙げられる。計測回路100は、二次電池201から電力供給を受ける電子機器300に内蔵されている。電子機器300の具体例として、携帯端末(携帯電話、携帯ゲーム機、情報端末、音楽や映像の携帯プレーヤーなど)、ゲーム機、コンピュータ、ヘッドセット、カメラなどの電子機器が挙げられる。
【0012】
二次電池201は、電子機器300に内蔵又は外付けされる電池パック200に内蔵されている。二次電池201は、負荷接続端子5,6を介して電子機器300に給電し、負荷接続端子5,6に接続される不図示の充電器によって充電可能である。電池パック200は、二次電池201と、二次電池201に電池接続端子3,4を介して接続される保護モジュール202とを内蔵する。保護モジュール202は、二次電池201を過電流・過充電・過放電等の異常状態から保護する保護回路203を備える電池保護装置である。
【0013】
計測回路100は、電圧検出部10と、温度検出部20と、ADコンバータ(ADC)30と、電池残量管理部40と、メモリ50と、通信部60とを備えている。
【0014】
電圧検出部10は、二次電池201の両極間の電池電圧を検出し、その電圧検出値に応じたアナログ電圧をADC30に出力する。
【0015】
温度検出部20は、二次電池201の周囲温度を検出し、その温度検出値に応じたアナログ電圧をADC30に出力する。温度検出部20は、計測回路100又は電子機器300の温度を、二次電池201の周囲温度として検出する。温度検出部20は、二次電池201自体の温度を検出してもよいし、電池パック200内の温度を検出してもよい。
【0016】
ADC30は、電圧検出部10と温度検出部20それぞれから出力されるアナログ電圧をデジタル値に変換して、電池残量管理部40に出力する。
【0017】
電池残量管理部40は、電圧検出部10によって検出された二次電池201の電池電圧と、温度検出部20によって検出された二次電池201の温度と、メモリ50に予め格納された二次電池201の電池特性を特定するための特性データとに基づいて、二次電池201の残量状態を推定する演算処理部である。電池残量管理部40は、電圧算出部41と、電圧差算出部42と、変化量算出部43と、充電率算出部44とを有している。これらの算出部についての説明は、後述する。電池残量管理部40の具体例として、マイクロコンピュータなどの演算処理装置が挙げられ、メモリ50の具体例として、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリが挙げられる。
【0018】
通信部60は、電子機器300に内蔵されるCPU301等の制御部に対して、二次電池201の残量状態等の電池状態を伝送するインターフェースである。CPU301等の制御部は、計測回路100から取得した二次電池201の残量状態等の電池状態に基づいて、二次電池201の残量状態をユーザに表示するなどの所定の制御動作を実行する。
【0019】
次に、二次電池201の電池特性について説明する。充放電レートの違いや環境温度の違いによって、充放電中の二次電池201の充電率と電池電圧との関係を示す曲線は、図2に示されるように異なっている。
【0020】
図2は、二次電池201の充電時及び放電時の相対充電率RSOCと電池電圧Vとの関係を示した電池特性のグラフである。相対充電率は、そのときの温度及び電流値で、満充電状態から、ある特定の電圧(例えば、3.1V)に到達するまでに放電できる全容量を100%としたときの残容量の割合である。曲線aは、25℃において充電レート0.5Cで充電したときの特性を示し、曲線bは、10℃において充電レート0.25Cで充電したときの特性を示し、曲線cは、25℃において充電レート0.25Cで充電したときの特性を示す。曲線eは、25℃において放電レート0.25Cで放電したときの特性を示し、曲線fは、10℃において放電レート0.25Cで放電したときの特性を示し、曲線gは、25℃において放電レート0.5Cで放電したときの特性を示す。曲線dは、25℃における開放電圧OCVの特性を示す。開放電圧OCVは、二次電池201の充放電が停止している時の電池電圧とみなすことが可能である。
【0021】
図2によれば、二次電池201の電池電圧Vと開放電圧OCVとの電圧差ΔVは、各相対充電率RSOCにおいて、充放電レートが高いほど大きくなり、温度Tが低いほど大きくなる。つまり、充放電レートは、相対充電率RSOC毎の電圧差ΔV及び温度Tとの間に相関関係が存在する。
【0022】
この点に着目し、計測回路100の電池残量管理部40は、二次電池201について電圧差ΔV及び温度Tを計測することによって、電圧差ΔV及び温度Tをパラメータとする関数又はテーブル等の相関情報に基づいて、充放電レート、つまり相対充電率RSOCの単位時間当たりの変化量(増減量)を算出する。RSOCの単位時間当たりの増減量が算出されれば、単位時間前のRSOCに基づいて、単位時間後のRSOCを算出することが可能となる。この算出処理を単位時間毎に繰り返すことで、高精度で連続性のあるRSOCを推定することができる。
【0023】
電池残量管理部40が、電圧検出部10によって検出された電池電圧Vに基づいて電圧差ΔVを算出するためには、図2の曲線dに相当するような電池特性データを、電圧差ΔVの算出基準となる電池特性データ(ゼロ基準電圧曲線)として予め有している必要がある。また、電圧差ΔVの算出値及び温度検出部20によって検出された温度Tに基づいてRSOCの単位時間当たりの増減量を算出するためには、電圧差ΔV及び/又は温度TとRSOCの単位時間当たりの増減量との関係を定めた電池特性データを予め有している必要がある。
【0024】
このような電池特性データは、二次電池201の種類毎に異なっている。そのため、計測回路100によって電池状態が実際に計測される二次電池201について、各温度及び各充放電レートの条件で、図2のような充放電曲線等を予め測定することによって、電池特性データを抽出しておけばよい。抽出された電池特性データは、メモリ50に記憶させる。メモリ50に予め記憶された電池特性データは、電圧検出部10によって検出される電池電圧値及び温度検出部20によって検出される温度値とともに、RSOCの単位時間当たりの増減量の算出に用いられる。例えば温度Tが一定の場合、RSOCの単位時間当たりの増減量と電圧差ΔVは正の相関があるため、RSOCの単位時間当たりの増減量は電圧差ΔVが大きくなるほど大きく算出される。
【0025】
なお、使用条件(温度、負荷電流)や二次電池201の残量状態に係わらず、二次電池201の電池電圧Vが電子機器300の動作下限電圧に到達した時点でRSOCを0%と推定するためには、各使用条件で二次電池201の満充電状態から電子機器300の動作下限電圧に至るまでに放電できる容量を100%として、図2のような充放電曲線を予め測定すればよい。
【0026】
ここで、「電圧差ΔVの算出値及び温度検出部20によって検出された温度Tに基づいてRSOCの単位時間当たりの増減量を算出」するための関数式の一例を示す。RSOCの単位時間当たりの増減量ΔRSOCは、
ΔRSOC={(係数A×温度T+係数B)×ΔV}+係数C
と表すことができる。上式は、あくまで一例であり、必要に応じて例えば2次以上の式であってよい。また、現在のRSOC値を変数に取り入れてもよい。係数A,B,Cが、温度Tに応じて変化する値でもよい。また、変数の数値の範囲に応じて、式または係数を変更してもよい。このように、二次電池201の種類毎に異なる電池特性等を考慮して、適当なモデル関数を選定すればよい。このような関数式の係数又はその係数を決定するための係数が、メモリ50に予め記憶されている。
【0027】
次に、電池残量管理部40によるRSOCの算出例について説明する。
【0028】
図3は、現在のRSOCの第1の算出例を示したフローチャートである。電池残量管理部40は、電圧算出部41、電圧差算出部42、変化量算出部43及び充電率算出部44を用いて、図3のフローチャートで表されるルーチンを単位時間毎に繰り返し実行する。なお、図3中に記載されたnは、零又は零よりも大きい値である。
【0029】
ステップS10において、電池残量管理部40は、予め決められた単位時間が経過したか否かを判断する。電池残量管理部40は、その単位時間が経過したとき、ステップS12以降の算出処理を開始する。
【0030】
ステップS12において、電池残量管理部40は、電圧検出部10によって検出された電池電圧Vを取得し、温度検出部20によって検出された温度Tを取得する。
【0031】
ステップS14において、電圧算出部41は、単位時間前のRSOC(前回のルーチンのステップ30で算出された現在のRSOCに相当)から、二次電池201の充放電停止時の電池電圧(以下、「ゼロ基準電圧」という)を算出する。電圧算出部41は、ゼロ電池電圧とRSOCとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、単位時間前のRSOCに対応するゼロ基準電圧を算出する。
【0032】
ステップS16において、電池残量管理部40は、ステップS12で取得された電池電圧Vが(ステップS14で算出されたゼロ基準電圧−n)よりも低いか否かを判断する。低い場合には、二次電池201の現在の状態が図2の曲線dよりも低い領域に存在することを意味するので、電池残量管理部40は、二次電池201は放電状態であると判断する。
【0033】
ステップS26において、電圧差算出部42は、ステップS12で取得された電池電圧Vから(ステップS14で算出されたゼロ基準電圧−n)を減算することによって、電圧差ΔVを算出する(ここでは、電圧差ΔVは負の値をとる)。
【0034】
ステップS28において、変化量算出部43は、電圧差ΔVとRSOCの単位時間当たりの増減量と温度Tとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。変化量算出部43は、その電池特性データに基づいて、ステップS26で算出された電圧差ΔV及びステップS12で取得された温度Tに対応する、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。
【0035】
ステップS18において、電池残量管理部40は、ステップS12で取得された電池電圧Vが(ステップS14で算出されたゼロ基準電圧+n)よりも高いか否かを判断する。高い場合には、二次電池201の現在の状態が図2の曲線dよりも高い領域に存在することを意味するので、電池残量管理部40は、二次電池201は充電状態であると判断する。
【0036】
ステップS22において、電圧差算出部42は、ステップS12で取得された電池電圧Vから(ステップS14で算出されたゼロ基準電圧+n)を減算することによって、電圧差ΔVを算出する(ここでは、電圧差ΔVは正の値をとる)。
【0037】
ステップS24において、変化量算出部43は、電圧差ΔVとRSOCの単位時間当たりの増減量と温度Tとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。変化量算出部43は、その電池特性データに基づいて、ステップS22で算出された電圧差ΔV及びステップS12で取得された温度Tに対応する、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。
【0038】
ステップ20において、電池残量管理部40は、ステップS12で取得された電池電圧Vが(ステップS14で算出されたゼロ基準電圧−n)よりも高く且つ(ステップS14で算出されたゼロ基準電圧+n)よりも低い場合、RSOCの単位時間当たりの増減量をゼロにする(所定値以下のゼロ近傍の微小値でもよい)。この場合は、二次電池201の現在の状態が図2の曲線d上又はその近傍の領域に存在することを意味するので、電池残量管理部40は、二次電池201は無負荷状態であると判断する。
【0039】
ステップS30において、充電率算出部44は、単位時間前のRSOC(前回のルーチンのステップ30で算出された現在のRSOCに相当)とステップS20,S24,S28のいずれかにおいて算出された単位時間当たりのRSOCの増減量とを加算することによって、現在のRSOCを算出する。
【0040】
したがって、図3のルーチンを単位時間毎に繰り返すことで、高精度で連続性のあるRSOCを推定することができる。
【0041】
次に、RSOCの別の推定方法について説明する。
【0042】
図2,3を用いてRSOCを推定する上述の方法では、電圧差ΔVを算出するためのゼロ基準電圧曲線として、充電時も放電時も共に、図2の曲線dのような1本の開放電圧曲線を用いていた。しかし、充電時と放電時とでは電池に現れる特性が異なるため、図4に示されるように、充電時と放電時で別々にゼロ基準電圧曲線を持たせてもよい。
【0043】
図4は、二次電池201の充電時及び放電時の相対充電率RSOCと電池電圧Vとの関係を示した電池特性のグラフである。曲線aは、25℃において充電レート0.5Cで充電したときの特性を示し、曲線cは、25℃において充電レート0.25Cで充電したときの特性を示す。曲線eは、25℃において放電レート0.25Cで放電したときの特性を示し、曲線gは、25℃において放電レート0.5Cで放電したときの特性を示す。曲線hは、曲線aや曲線c等の充電時の電池特性から求められた、充電電流を限りなく0Cに近づけたときの特性を示す。曲線iは、曲線eや曲線g等の放電時の電池特性から求められた、放電電流を限りなく0Cに近づけたときの特性を示す。曲線hは、充電停止時の電池特性とみなすことが可能であり、曲線iは、放電停止時の電池特性とみなすことが可能である。
【0044】
ゼロ基準電圧曲線として曲線hと曲線iを採用することによって、充電レート(すなわち、充電率の単位時間当たりの増加量)及び放電レート(すなわち、充電率の単位時間当たりの減少量)を、図2の場合に比べて高精度に求めることが可能となる。
【0045】
図5は、現在のRSOCの第2の算出例を示したフローチャートである。電池残量管理部40は、電圧算出部41、電圧差算出部42、変化量算出部43及び充電率算出部44を用いて、図5のフローチャートで表されるルーチンを単位時間毎に繰り返し実行する。
【0046】
ステップS40において、電池残量管理部40は、予め決められた単位時間が経過したか否かを判断する。電池残量管理部40は、その単位時間が経過したとき、ステップS42以降の算出処理を開始する。
【0047】
ステップS42において、電池残量管理部40は、電圧検出部10によって検出された電池電圧Vを取得し、温度検出部20によって検出された温度Tを取得する。
【0048】
ステップS44において、電圧算出部41は、単位時間前のRSOC(前回のルーチンのステップ60で算出された現在のRSOCに相当)から、二次電池201の充電停止時の電池電圧(以下、「充電ゼロ基準電圧」という)を算出する。電圧算出部41は、充電ゼロ基準電圧とRSOCとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、単位時間前のRSOCに対応する充電ゼロ基準電圧を算出する。同様に、電圧算出部41は、単位時間前のRSOC(前回のルーチンのステップ60で算出された現在のRSOCに相当)から、二次電池201の放電停止時の電池電圧(以下、「放電ゼロ基準電圧」という)を算出する。電圧算出部41は、放電ゼロ基準電圧とRSOCとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、単位時間前のRSOCに対応する放電ゼロ基準電圧を算出する。
【0049】
ステップS46において、電池残量管理部40は、ステップS42で取得された電池電圧Vがステップ44で取得された放電ゼロ基準電圧よりも低いか否かを判断する。低い場合には、二次電池201の現在の状態が図4の曲線iよりも低い領域に存在することを意味するので、電池残量管理部40は、二次電池201は放電状態であると判断する。
【0050】
ステップS56において、電圧差算出部42は、ステップS42で取得された電池電圧Vからステップ44で取得された放電ゼロ基準電圧を減算することによって、電圧差ΔVを算出する(ここでは、電圧差ΔVは負の値をとる)。
【0051】
ステップS58において、変化量算出部43は、電池電圧と放電ゼロ基準電圧との電圧差ΔVとRSOCの単位時間当たりの増減量と温度Tとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。変化量算出部43は、その電池特性データに基づいて、ステップS56で算出された電圧差ΔV及びステップS42で取得された温度Tに対応する、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。
【0052】
ステップS48において、電池残量管理部40は、ステップS42で取得された電池電圧Vがステップ44で取得された充電ゼロ基準電圧よりも高いか否かを判断する。高い場合には、二次電池201の現在の状態が図4の曲線hよりも高い領域に存在することを意味するので、電池残量管理部40は、二次電池201は充電状態であると判断する。
【0053】
ステップS52において、電圧差算出部42は、ステップS42で取得された電池電圧VからステップS44で算出された充電ゼロ基準電圧を減算することによって、電圧差ΔVを算出する(ここでは、電圧差ΔVは正の値をとる)。
【0054】
ステップS54において、変化量算出部43は、電池電圧と充電ゼロ基準電圧との電圧差ΔVとRSOCの単位時間当たりの増減量と温度Tとの関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。変化量算出部43は、その電池特性データに基づいて、ステップS52で算出された電圧差ΔV及びステップS42で取得された温度Tに対応する、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。
【0055】
ステップ50において、電池残量管理部40は、ステップS42で取得された電池電圧VがステップS44で算出された放電ゼロ基準電圧よりも高く且つステップS44で算出された充電ゼロ基準電圧よりも低い場合、RSOCの単位時間当たりの増減量をゼロにする(所定値以下のゼロ近傍の微小値でもよい)。この場合は、二次電池201の現在の状態が図4の曲線iと曲線hの間の領域に存在することを意味するので、電池残量管理部40は、二次電池201は無負荷状態であると判断する。
【0056】
ステップS60において、充電率算出部44は、単位時間前のRSOC(前回のルーチンのステップ60で算出された現在のRSOCに相当)とステップS50,S54,S58のいずれかにおいて算出された単位時間当たりのRSOCの増減量とを加算することによって、現在のRSOCを算出する。
【0057】
したがって、図5のルーチンを単位時間毎に繰り返すことで、高精度で連続性のあるRSOCを推定することができる。
【0058】
なお、図3,5において、パワーオン直後のRSOCの初期値を求める方法は、無負荷時の電池電圧(例えば、開放電圧)とRSOCとを一対一で対応付けた曲線を表す関数又はテーブルを用いて、電圧検出部10によって検出された電池電圧をRSOC値に変換して算出するとよい。
【0059】
上述の実施例によれば、以下のような効果が得られる。
1.現在の相対充電率と電池電圧値との関係から、電池の状態を充電中・無負荷・放電中の3種類のいずれかの状態であると判断できる。
2.現在の相対充電率と電池電圧値と温度の関係から、相対充電率の単位時間当たりのの増減量を算出し、単位時間後の相対充電率を予測し、これを単位時間毎に繰り返すことで常にそのときの相対充電率を推定することができる。
3.充電時と放電時で、現在の相対充電率から得られるゼロ基準電圧等の電池特性データを別々に持つことで、より高精度に相対充電率を推定することができる。
4.無負荷と判断する電池電圧にある程度の範囲を持たせることで、充放電停止後の電圧復帰に伴う相対充電率の変動を抑制することができる。
5.あらゆる使用条件(温度、負荷電流)においても、放電中の電池電圧が所定の電圧値に到達した時点で相対充電率が0%になるように推定することで、使用条件に係わらず常に電池使用機器が動作下限電圧に至るまでの相対充電率を推定することができる。
【0060】
このように、二次電池の現在の相対充電率と電池電圧と温度との関係に基づき、電池特性データを用いて、相対充電率の単位時間当たりの増減量を算出することで、様々な実使用条件下で高精度にかつ連続性のある相対充電率を推定することが可能となる。
【0061】
また、
6.放電中の相対充電率の推定値が実際より高めにずれている場合は、放電レートの算出値も実際より高めに推定され、放電中の相対充電率の推定値が実際より低めにずれている場合は、放電レートの算出値も実際より低めに推定されるため、推定誤差は減少方向に収束する。
7.同様に、充電中の相対充電率の推定値が実際より高めにずれている場合は、充電レートの算出値は実際より低めに推定され、充電中の相対充電率の推定値が実際より低めにずれている場合は、充電レートの算出値は実際より高めに推定されるため、推定誤差は減少方向に収束する。
【0062】
このように、実際の様々な使用状態(多様な充放電の繰り返し)においても、推定誤差は発散することはなく、減少方向に収束する。
【0063】
また、
8. 推定されたRSOCとRSOCの単位時間当たりの増減量ΔRSOC[%/s]を用いて、次の式から残時間[s]を求めることができる
残時間[s]=RSOC[%]÷ΔRSOC[%/s]。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0065】
例えば、本発明に係る電池状態計測装置は、二次電池201で動作する電子機器300内の基板上に搭載される場合に限らない。例えば、電池パック300の保護モジュール202の基板上に搭載されてもよい。また、本発明に係る電池状態計測方法は、電子機器300内のCPU301によって処理されるソフトウェアに組み込まれてもよい。
【0066】
また、本発明は、相対充電率に限らず、絶対充電率を推定してもよい。絶対充電率は、特定の温度および電流値(例えば25℃、0.2C)で、満充電状態から、ある特定の電圧(例えば、3.1V)に到達するまでに放電できる全容量を100%としたときの残容量の割合である。
【0067】
また、温度Tを考慮せずに、充電率の単位時間当たりの増減量を算出してもよい。例えば、変化量算出部43は、電池電圧と放電ゼロ基準電圧(又は、充電ゼロ基準電圧)との電圧差ΔVとRSOCの単位時間当たりの増減量との関係を定めた電池特性データをメモリ50から読み出し、その読み出した電池特性データに基づき、RSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。変化量算出部43は、その電池特性データに基づいて、電圧差ΔVに対応するRSOCの単位時間当たりの増減量を算出する。
【符号の説明】
【0068】
10 温度検出部
20 電圧検出部
30 ADC
40 電池残量管理部
41 電圧算出部
42 電圧差算出部
43 変化量算出部
44 充電率算出部
50 メモリ
60 通信部
100 計測回路
200 電池パック
201 二次電池
202 保護モジュール
203 保護回路
300 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電池電圧を検出する電圧検出ステップと、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第1の電池特性に基づき、前記二次電池の単位時間前の充電率に対応する、前記二次電池の充放電停止時の電池電圧を算出する電圧算出ステップと、
前記電圧検出ステップで検出される電池電圧と前記電圧算出ステップで算出される電池電圧との電圧差を算出する電圧差算出ステップと、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第2の電池特性に基づき、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差に対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出ステップと、
前記二次電池の単位時間前の充電率と前記変化量算出ステップで算出される変化量とを用いて、前記二次電池の単位時間後の充電率を算出する充電率算出ステップとを有する、電池状態計測方法。
【請求項2】
前記第1の電池特性は、
前記二次電池の充電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第3の電池特性と、前記二次電池の放電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第4の電池特性とを含み、
前記電圧算出ステップは、
前記第3の電池特性に基づき、前記二次電池の単位時間前の充電率に対応する、前記二次電池の充電停止時の電池電圧を算出し、
前記第4の電池特性に基づき、前記二次電池の単位時間前の充電率に対応する、前記二次電池の放電停止時の電池電圧を算出する、請求項1に記載の電池状態計測方法。
【請求項3】
前記第2の電池特性は、
前記二次電池の充電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第5の電池特性と、
前記二次電池の放電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第6の電池特性とを含み、
前記変化量算出ステップは、
前記第5の電池特性に基づき、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差に対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出し、
前記第6の電池特性に基づき、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差に対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する、請求項2に記載の電池状態計測方法。
【請求項4】
前記二次電池の温度を検出する温度検出ステップを有し、
前記第2の電池特性は、前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量と、前記二次電池の温度との関係を定めるものであって、
前記変化量算出ステップは、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差と前記温度検出ステップで検出される温度とに対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する、請求項1又は2に記載の電池状態計測方法。
【請求項5】
前記第2の電池特性は、
前記二次電池の充電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量と、前記二次電池の温度との関係を定めた第7の電池特性と、
前記二次電池の放電停止時の電池電圧と前記電圧検出ステップで検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量と、前記二次電池の温度との関係を定めた第8の電池特性とを含み、
前記変化量算出ステップは、
前記第7の電池特性に基づき、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差と前記温度検出ステップで検出される温度とに対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出し、
前記第8の電池特性に基づき、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差と前記温度検出ステップで検出される温度とに対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する、請求項4に記載の電池状態計測方法。
【請求項6】
前記電圧検出ステップと前記電圧算出ステップと前記電圧差算出ステップと前記変化量算出ステップと前記充電率算出ステップとを含むルーチンを単位時間毎に繰り返す、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池状態計測方法。
【請求項7】
前記温度検出ステップと前記電圧検出ステップと前記電圧算出ステップと前記電圧差算出ステップと前記変化量算出ステップと前記充電率算出ステップとを含むルーチンを単位時間毎に繰り返す、請求項4又は5に記載の電池状態計測方法。
【請求項8】
前記変化量算出ステップは、前記電圧差算出ステップで算出される電圧差が所定の電圧差以下の場合、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を所定値以下の値にする、請求項1から7のいずれか一項に記載の電池状態計測方法。
【請求項9】
二次電池の電池電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と充電率との関係を定めた第1の電池特性に基づき、前記二次電池の単位時間前の充電率に対応する、前記二次電池の充放電停止時の電池電圧を算出する電圧算出部と、
前記電圧検出部で検出される電池電圧と前記電圧算出部で算出される電池電圧との電圧差を算出する電圧差算出部と、
前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と前記電圧検出部で検出される電池電圧との電圧差と前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量との関係を定めた第2の電池特性に基づき、前記電圧差算出部で算出される電圧差に対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する変化量算出部と、
前記二次電池の単位時間前の充電率と前記変化量算出部で算出される変化量とを用いて、前記二次電池の単位時間後の充電率を算出する充電率算出部とを有する、電池状態計測装置。
【請求項10】
前記二次電池の温度を検出する温度検出部を有し、
前記第2の電池特性は、前記二次電池の充放電停止時の電池電圧と前記電圧検出部で検出される電池電圧との電圧差と、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量と、前記二次電池の温度との関係を定めるものであって、
前記変化量算出部は、前記電圧差算出部で算出される電圧差と前記温度検出部で検出される温度とに対応する、前記二次電池の充電率の単位時間当たりの変化量を算出する、請求項9に記載の電池状態計測装置。
【請求項11】
前記二次電池を保護する保護回路と、請求項9又は10に記載の電池状態計測装置とを備える、電池保護装置。
【請求項12】
前記二次電池と、請求項9又は10に記載の電池状態計測装置とを備える、電池パック。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の電池状態計測装置を備える、前記二次電池を電源とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−76585(P2013−76585A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215603(P2011−215603)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】