説明

電池短絡の監視

システムは、ユーザデバイスの電池の電圧を測定し、電池電圧の低下が測定された場合に、電池の温度及び加速度を測定し、測定した電池の電圧、温度又は加速度のうちの1つ以上に基づいて電池が適切に機能しているかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池短絡の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(Liイオン)電池は、消費者電子デバイス(例えば、携帯電話、ラップトップコンピュータ等)において一般に使用される蓄電池の一種である。リチウムイオン電池は、エネルギー対重量比が高く、記憶効果が無く且つ未使用時に電荷がゆっくりと減少するため、現在、携帯電子機器に対して最も一般的な種類の電池のうちの1つとなっている。しかし、リチウムイオン電池の場合、内部短絡を理由とする、安全性能上の問題が起こりやすい。近年、ラップトップコンピュータの数百万個のリチウムイオン電池が、電池の製造中に生成された微細な金属粒子により潜在的に内部短絡が発生する危険性があるという理由で回収された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの面によると、方法は、ユーザデバイスの電池の電圧を測定する工程と、電池電圧の低下が測定された場合に電池の温度及びユーザデバイスの加速度を測定する工程と、測定した電圧、温度又は加速度のうちの1つ以上に基づいて電池が適切に機能しているかを判定する工程とを有する。
【0004】
当該方法は、電池が誤動作していると判定された場合に電池の使用を防止する工程を更に有する。
【0005】
当該方法は、電池電圧の低下がユーザデバイスの動作により引き起こされたものであるのかを判定する工程と、電池電圧の低下がユーザデバイスの動作により引き起こさたものである場合に電池の電流を測定する工程と、測定した電池の電流に基づいて電池が適切に機能しているかを判定する工程とを更に有する。
【0006】
当該方法は、電池が適切に機能していると判定された場合に電池の動作を継続する工程を更に有する。
【0007】
当該方法は、測定した電池の電圧が電圧閾値よりも高いかを判定する工程を更に有する。
【0008】
当該方法は、測定した電池の温度が温度閾値よりも高いかを判定する工程と、測定した電池の電圧が電圧閾値よりも高く且つ測定した電池の温度が温度閾値よりも高い場合に、電池が誤動作していると判定する工程とを更に有する。
【0009】
当該方法は、測定したユーザデバイスの加速度が加速度閾値よりも大きいかを判定する工程と、測定した電池の電圧が電圧閾値よりも高く且つ測定したユーザデバイスの加速度が加速度閾値よりも大きい場合に、電池が誤動作していると判定する工程とを更に有する。
【0010】
別の面によると、ユーザデバイスは、電池と、電池の電圧を測定する電圧監視デバイスと、電圧監視デバイスが電池電圧の低下を検出した場合に、電池の温度を測定する温度監視デバイスと、電圧監視デバイスが電池電圧の低下を検出した場合に、電池の機械的誤用を測定する機械的誤用監視デバイスと、測定した電池の電圧、温度又は機械的誤用のうちの1つ以上に基づいて、電池が適切に機能しているかを判定する処理論理部とを備える。
【0011】
更に、当該電池はリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池の一方を含む。
【0012】
当該電池は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間の隔離板とを更に備える。
【0013】
また、測定した電池の電圧、温度又は機械的誤用のうちの1つ以上は、隔離板がピンホールを含むか否かを示す情報を提供する。
【0014】
上記電圧監視デバイスは、更に、電圧計、電位差計又はアナログデジタル変換器のうちの1つを含む。
【0015】
上記温度監視デバイスは、温度計、熱電対、サーミスタ又は抵抗温度検出器(RTD)のうちの1つを含んでいてもよい。
【0016】
上記機械的誤用監視デバイスは、電池の加速度を測定する加速度計を含む。
【0017】
上記電池の加速度は、更に、ユーザデバイスが落下したか否か又は機械的に誤用されたか否かを示す情報を提供する。
【0018】
上記処理論理部は、更に、電池が誤動作していると判定された場合に、電池の使用を防止する。
【0019】
上記処理論理部は、更に、電池電圧の低下がユーザデバイスの動作により引き起こされたものであるのかを判定し、電池電圧の低下がユーザデバイスの動作により引き起こされたものである場合に、測定した電池の電流を受け取り、測定した電池の電流に基づいて電池が適切に機能しているかを判定する。
【0020】
上記処理論理部は、更に、電池が適切に機能していると判定された場合に、電池の動作を継続する。
【0021】
上記処理論理部は、更に、測定した電池の電圧を電圧閾値と比較する。
【0022】
上記処理論理部は、更に、測定した電池の温度を温度閾値と比較し、測定した電池の電圧が電圧閾値より高く且つ測定した電池の温度が温度閾値より高い場合に、電池が誤動作していると判定する。
【0023】
上記機械的誤用監視デバイスは、更に、電池の加速度を測定し、上記処理論理部は、更に、測定した電池の加速度を加速度閾値と比較し、測定した電池の電圧が電圧閾値より高く且つ測定した電池の加速度が加速度閾値より大きい場合に、電池が誤動作していると判定する。
【0024】
更に別の面によると、システムは、ユーザデバイスの電池の電圧を測定する手段と、電池電圧の低下が測定された場合に、電池の温度及び機械的誤用を測定する手段と、測定した電池の電圧、温度又は加速度のうちの1つ以上に基づいて、電池が適切に機能しているかを判定する手段と、電池が誤動作していると判定された場合に、電池の使用を防止する手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書の一部に取り込まれ且つ一部を構成する添付の図面は、本明細書において説明する1つ以上の実施形態を示しており、その記述によりそれらの実施形態を説明する。
【図1】図1は、本明細書において説明するシステム及び方法が実現されるユーザデバイスの例を示す図である。
【図2】図2は、図1のユーザデバイスの例示的な構成要素を示す図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示すユーザデバイスの例示的な電池を示す図である。
【図4】図4は、図1及び図2に示すユーザデバイスの監視デバイスを示す図である。
【図5】図5は、本明細書において説明する実施形態に係る例示的な処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら詳細な説明を行う。種々の図面の同一の図中符号は、同一の又は類似する要素を示すものとする。なお、以下の詳細な説明は本発明を限定するものではない。
【0027】
概要
本明細書において説明する実施形態は、ユーザデバイスの電池(例えば、リチウムイオン電池)の短絡を監視する1つ以上の機構を提供する。例えば一実施形態において、ユーザデバイスと関連付けられる電池の電圧が測定される。電圧の低下が検出された場合、内部短絡が発生する可能性があるような不適切な使用状況に電池がさらされているかを判定(例えば、測定)する。不適切な電池の使用状況には、電池(例えば、ユーザデバイス)を格納及び/又は使用する際の温度が高すぎること、並びに/あるいは電池(例えば、ユーザデバイス)が落下することが含まれる。不適切な電池の使用状況が検出された場合には、電池のその後の使用が停止及び/又は限定される。
【0028】
例示的なユーザデバイスの構成
図1は、本明細書で説明するシステム及び方法が実現されるユーザデバイス100の一例を示す図である。ユーザデバイス100は、無線電話;携帯無線電話をデータ処理、ファクシミリ及びデータ通信機能と組み合わせたパーソナル通信システム(PCS)端末;無線電話、ページャ、インターネット/イントラネットアクセス、ウェブブラウザ、オーガナイザ、カレンダ、ドップラー受信機及び/又は全地球測位システム(GPS)受信機を含むパーソナルデジタルアシスタント(PDA);GPSデバイス;電話機;携帯電話;ラップトップコンピュータ、パーソナルコンピュータ;あるいはそれらのデバイスのうちの1つのデバイス上で実行される任意の別の種類の演算又は通信デバイス、スレッド又はプロセス及び/又はそれらのデバイスのうち1つのデバイスにより実行可能なオブジェクト等、電池を使用できる任意のデバイスを含むものとする。一実施形態において、ユーザデバイス100は、リチウムイオン電池及び/又はリチウムポリマー電池を含む。
【0029】
図1に示すように、ユーザデバイス100は、筺体110、スピーカ120、ディスプレイ130、制御ボタン140、キーパッド150、マイク160及び/又はカメラ170を備える。筺体110は、ユーザデバイス100の構成要素を外側の要素から保護する。スピーカ120は、ユーザデバイス100のユーザに可聴情報を提供する。
【0030】
ディスプレイ130は、ユーザに視覚情報を提供する。例えばディスプレイ130は、ユーザデバイス100に入力されたテキスト、別のデバイスから受信されたテキスト、画像、映像及び/又はグラフィックス、並びに/あるいは着呼又は発呼に関する情報、あるいはテキストメッセージ、電子メール、メディア、ゲーム、電話帳、住所録、現在の時間等を表示する。制御ボタン140により、ユーザはユーザデバイス100と対話し、ユーザデバイス100に1つ以上の動作を実行させることができる。例えば制御ボタン140は、ユーザデバイス100に情報を送信させるために使用される。キーパッド150は、標準的な電話キーパッドを含む。マイク160は、ユーザから可聴情報を受信する。カメラ170は、ユーザデバイス100の裏側に配され、ユーザデバイス100による映像及び/又は画像(例えば、写真)の撮像を可能にする。
【0031】
図1はユーザデバイス100の例示的な構成要素を示すものであり、他の実施形態において、ユーザデバイス100は図1に示す構成要素と比較して少ない構成要素、異なる構成要素又は追加の構成要素を含んでいてもよい。更に他の実施形態において、ユーザデバイス100の1つ以上の構成要素は、ユーザデバイス100の1つ以上の他の構成要素により実行される1つ以上の他のタスクを実行してもよい。
【0032】
図2は、ユーザデバイス100の例示的な構成要素を示す図である。図示されるように、ユーザデバイス100は、処理論理部210、メモリ220、ユーザインタフェース230、通信インタフェース240、アンテナ構体250、電池260及び/又は1つ以上の監視デバイス270を備える。処理論理部210は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を含む。処理論理部210は、ユーザデバイス100及びその構成要素の動作を制御する。メモリ220は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、並びに/あるいは処理論理部210により使用されるデータ及び命令を格納する別の種類のメモリを含む。
【0033】
ユーザインタフェース230は、ユーザデバイス100に情報を入力し且つ/又はユーザデバイス100から情報を出力する機構を含む。入力及び出力機構は、例えば、データ及び制御コマンドがユーザデバイス100に入力されることを可能にするボタン(例えば、制御ボタン140、キーパッド150のキー、ジョイスティック等)又はタッチスクリーンインタフェース;電気信号を受信し且つオーディオ信号を出力するスピーカ(例えば、スピーカ120);オーディオ信号を受信し且つ電気信号を出力するマイク(例えば、マイク160);視覚情報(例えば、ユーザデバイス100に入力されるテキスト)を出力するディスプレイ(例えば、ディスプレイ130);ユーザデバイス100を振動させるバイブレータ;並びに/あるいは、映像及び/又は画像を受信するカメラ(例えば、カメラ170)を含む。
【0034】
通信インタフェース240は、例えば処理論理部210からのベースバンド信号を無線周波数(RF)信号に変換可能な送信機及び/又はRF信号をベースバンド信号に変換可能な受信機を含む。あるいは、通信インタフェース240は、送信機及び受信機の双方の機能を実行するトランシーバを含む。通信インタフェース240は、RF信号の送信及び/又は受信を行うアンテナ構体250に接続される。アンテナ構体250は、空中にRF信号を送信及び/又は空中からRF信号を受信する1つ以上のアンテナを含む。アンテナ構体250は、例えば通信インタフェース240からRF信号を受信してそれらの信号を空中に送信し、且つ空中からRF信号を受信してそれらの信号を通信インタフェース240に提供する。一実施形態において、例えば通信インタフェース240は、ネットワーク及び/又はネットワークに接続されたデバイスと通信してもよい。
【0035】
以下に詳細に説明するように、ユーザデバイス100は、メモリ220等のコンピュータ可読媒体に含まれるアプリケーションのソフトウェア命令を実行する処理論理部210による制御のもと、本明細書で説明される特定の動作を実行する。コンピュータ可読媒体は、物理又は論理メモリ素子として規定される。ソフトウェア命令は、別のコンピュータ可読媒体又は別のデバイスから通信インタフェース240を介してメモリ220に読み込まれてもよい。メモリ220に含まれるソフトウェア命令は、処理論理部210に後述する処理を実行させてもよい。あるいは、本明細書において説明する処理を実現するために、ソフトウェア命令の代わりに又はそれらと組み合わせてハードワイヤード回路網が使用されてもよい。従って、本明細書において説明する実施形態は、ハードウェア回路網及びソフトウェアの任意の特定の組合せに限定されるものではない。
【0036】
電池260は、正電極及び負電極を分離する膜(例えば、隔離板)を有する任意の電池(例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)を含む。電池260は、ユーザデバイス100の形状及びサイズ、ユーザデバイス100により必要とされる電力量等に応じて種々の形状及びサイズが採用される。電池260の更なる詳細については、図3と関連して後述する。
【0037】
監視デバイス270は、電池260の状態及び/又は電池260の性能に影響を及ぼす可能性のある状態を監視可能な任意のデバイスを含む。例えば一実施形態において、監視デバイス270は、電圧監視デバイス(例えば、ユーザデバイス100内に提供されるアナログデジタル(A/D)変換器等の電圧センサ)、温度監視デバイス(例えば、サーミスタ、熱電対等)及び/又は落下監視デバイス(例えば、加速度計等)を含む。監視デバイス270の更なる詳細については、図4と関連して後述する。
【0038】
図2はユーザデバイス100の例示的な構成要素を示すものにすぎず、他の実施形態において、ユーザデバイス100は図2に示す構成要素と比較して少ない構成要素、あるいは異なる構成要素又は追加の構成要素を含んでいてもよい。更に他の実施形態において、ユーザデバイス100の1つ以上の構成要素は、ユーザデバイス100の1つ以上の他の構成要素により実行される1つ以上の他のタスクを実行してもよい。
【0039】
例示的な電池
図3は、電池260の一例を示す図である。図示するように、電池260は、監視デバイス270と通信し、アノード300、カソード310、電圧源320、隔離板330及び/又は電解質340を備える。一実施形態において、電池260は、ユーザデバイス100の他の構成要素(例えば、処理論理210、メモリ220、ユーザインタフェース230、通信インタフェース240、アンテナ構体250及び/又は監視デバイス270)に電力を提供する。
【0040】
一実施形態において、アノード300は、正電流が分極電気デバイスに流れる時に通る電極を備える。電池260が放電している場合、アノード300は、正電流が流れる負端子を形成する。この内向きに流れる電流は、アノード300から電解質340に移動する陽イオンにより内部に搬送される。電池260が充電している場合、アノード300は外部発電機(例えば、電圧源320)から電流を受け取る正端子を形成する。アノード300は、電池260の形状及びサイズに応じて種々の形状及びサイズに作成され、種々の材料によって構成されうる。例示的な一実施形態において、電池260はリチウムイオン電池を含み、アノード300は炭素から構成される。
【0041】
カソード310は、正電流が分極電気デバイスから流れる際に通る電極を備える。電池260が放電している場合、カソード310は正電流を流す正端子を形成する。この外向きに流れる電流は、電解質340からカソード310に移動する陽イオンにより内側に搬送される。電池260が充電している場合、カソード310は電流を外部発電機(例えば、電圧源320)に送る負端子を形成する。カソード310は、電池260の形状及びサイズに応じて種々の形状及びサイズに作成され、種々の材料によって構成されうる。例示的な一実施形態において、電池260はリチウムイオン電池を含み、カソード310は金属酸化物から構成される。
【0042】
隔離板330は、アノード300とカソード310とを分離し、膜(例えば、微孔性膜)を備える。隔離板330は、電池260の形状及びサイズに応じて種々の形状及びサイズに作成される。例えば一実施形態において、電池260がラップトップコンピュータ(例えば、ユーザデバイス100)に使用される場合、隔離板330は25μm以下の厚さとなる。隔離板330の厚さ(例えば、リチウムイオン電池における)は、長年にわたる材料の開発及び/又は高い能力の要求に基づいて益々薄くなっている。隔離板330は、ポリオレフィンの微孔性膜、並びに/あるいは電池260において使用される他の材料又は化学物質(例えば、電解質340に対して使用される化学物質)に適合する任意の他の材料等、種々の材料から構成される。
【0043】
電解質340は、アノード300とカソード310との間(例えば、電池260のプレート間)において電気を伝導し且つエネルギーをアノード300及びカソード310に蓄積する媒体としての役割を果たす任意の液体物質を備える。電解質340は、電池260の種類及び目的に依存する。例えば電池260がリチウムイオン電池である場合、電解質340は従来の水を使用する電解質よりもはるかに低温で凝固する有機電解質が含まれる。例示的な一実施形態において、電解質340はリチウム塩を含む有機溶剤であってもよい。そのような一実施形態において、アノード300が炭素から構成され且つカソード310が金属酸化物(M)(例えば、コバルト等)から構成される場合、電池260が電気の提供を可能にする基礎となる化学反応式は以下のように記述される。
【0044】
Li1−xMO+Li⇔C+LiMO
図3に更に示すように、ピンホール350(例えば、微小な短絡又は局所的な絶縁破壊)は、隔離板330において発生する可能性がある。ピンホール350等の微小な短絡は、種々の状態が原因である可能性がある。例えば、電池260(及び/又はユーザデバイス100)が格納及び/又は使用される際の温度が高すぎる(例えば、60℃以上の温度)場合、ピンホール350が発生する可能性がある。別の例において、電池260(及び/又はユーザデバイス100)が機械的誤用の影響を受ける(例えば、ユーザデバイス100が落下する、衝撃を受ける)場合、ピンホール350が発生する可能性がある。そのような状態が原因で発生する内部の微小な短絡(例えば、ピンホール350)は予測不可能であり、電池260は損傷していない可能性がある。しかし、そのような微小な短絡(例えば、ピンホール350)により、電池260は熱暴走を起こす可能性があり(例えば、内部短絡電流の結果、局所的な温度上昇を招き、電池260の熱暴走を引き起こす(発熱)化学反応を誘発する可能性がある)、電池260は危険な程熱くなる可能性がある。そのような微小な短絡に関連する安全衛生上の問題を未然に防ぐため、図4及び図5と関連して後述する一実施形態では、電池260が不適切な状態(例えば、過度の加熱及び/又は機械的誤用)の影響を受ける場合には、電池260の使用を防止及び/又は限定する。
【0045】
図3は電池260の例示的な構成要素を示したものにすぎず、他の実施形態において、電池260は図3に示す構成要素と比較して少ない構成要素、あるいは異なる構成要素又は追加の構成要素を含んでいてもよい。更に他の実施形態において、電池260の1つ以上の構成要素は、電池260の1つ以上の他の構成要素により実行される1つ以上の他のタスクを実行してもよい。
【0046】
例示的な監視デバイス
図4は、監視デバイス270の一例を示す図である。図示するように、監視デバイス270は、電圧監視デバイス400、温度監視デバイス410及び/又は落下監視デバイス420を備える。
【0047】
電圧監視デバイス400は、電池260の電圧を測定可能な任意のデバイスを含む。例えば一実施形態において、電圧監視デバイス400は、ユーザデバイス100内に提供される電圧計、電位差計、A/D変換器を含む。他の実施形態において、電圧監視デバイス400は、処理論理部210等の電池260の電圧を測定可能なユーザデバイス100の他の構成要素を含んでいてもよい。図4に更に示すように、電圧監視デバイス400は、電池電圧430を測定し、測定した電圧460を処理論理部210に出力する。図5と関連して後述するように、処理論理部210では測定された電圧460を利用する。
【0048】
温度監視デバイス410は、電池260及び/又はユーザデバイス100の温度を測定可能な任意のデバイスを含む。例えば一実施形態において、温度監視デバイス410は、温度計、熱電対、サーミスタ、抵抗温度検出器(RTD)等を含む。図4に更に示すように、温度監視デバイス410は、電池温度440(又はユーザデバイス100の温度)を測定し、測定した温度470を処理論理部210に出力する。図5と関連して後述するように、処理論理部210では測定した温度470を利用する。
【0049】
落下監視デバイス420は、電池260及び/又はユーザデバイス100の種々の機械的状態(例えば、落下、振動、衝撃等)を測定可能な任意のデバイスを含む。例えば一実施形態において、落下監視デバイス420は、加速度計、ドップラー受信機、GPS受信機等を含む。図4に更に示すように、落下監視デバイス420は、電池落下450(又はユーザデバイス100の落下)を測定し、落下測定結果480を処理論理部210に出力する。図5と関連して後述するように、処理論理部210では落下測定結果480を利用する。
【0050】
図4は監視デバイス270の例示的な構成要素を示したものにすぎず、他の実施形態において、監視デバイス270は図4に示す構成要素と比較して少ない構成要素、あるいは異なる構成要素又は追加の構成要素を含んでいてもよい。更に他の実施形態において、監視デバイス270の1つ以上の構成要素は、監視デバイス270の1つ以上の他の構成要素により実行される1つ以上の他のタスクを実行してもよい。
【0051】
例示的な処理
図5は、本明細書において説明する実施形態に係る例示的な処理500を示すフローチャートである。一実施形態において、処理500はユーザデバイス100のハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素(例えば、処理論理部210)により実行される。他の実施形態において、処理500は、別のデバイスの(例えば、通信インタフェース240を介してユーザデバイス100と通信する)ハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素と組み合わせてユーザデバイス100のハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素(例えば、処理論理部210)により実行されてもよい。
【0052】
図示するように、処理500はユーザデバイスの電池の電圧測定(ブロック510)及び電池電圧が低下したか否かの判定(ブロック520)により開始される。例えば図4と関連する上記一実施形態において、電圧監視デバイス400は、電池電圧430を測定し、測定した電圧460を処理論理部210に出力する。処理論理部210では、電池260の電圧がある期間(例えば、数分、数時間等)にわたり低下したか(例えば、閾値を上回って)を判定する。電池電圧430の突然の低下は、電池260が不適切な状態(例えば、過度の温度、機械的誤用等)の影響を受けること/受けたことを示しており、微小な短絡(例えば、ピンホール350)が隔離板330において起きた可能性があることを示している。
【0053】
図5に戻ると、電池電圧の低下が検出される場合(ブロック520−YES)、電池の温度が測定され且つ/又は電池が機械的誤用の影響を受けたかが測定される(ブロック530)。例えば図4と関連する上記一実施形態において、温度監視デバイス410は電池温度440(又はユーザデバイス100の温度)を測定し、測定した温度470を処理論理部210に出力する。落下監視デバイス420は、電池落下450(又はユーザデバイス100の落下)を測定し、落下測定結果480を処理論理部210に出力する。処理論理部210は、測定した温度470及び落下測定結果480を利用して、測定した温度470及び/又は落下測定結果480が隔離板330において微小な短絡(例えば、ピンホール350)を発生するのに十分なものである(例えば、各閾値を上回る)かを判定する。
【0054】
図5に更に示すように、測定した電池の温度が所定の閾値よりも高く且つ/又は電池が落下測定結果480の受信時に処理論理部により判定されたような機械的誤用の影響を受けた場合(ブロック540−YES)、電池電圧の低下がユーザデバイスの正常な動作状態により引き起こされたものであるかが判定される(ブロック550)。例えば一実施形態において、ユーザデバイス100の処理論理部210は、電池電圧430の突然の低下がユーザデバイス110の正常な動作状態(例えば、テキストメッセージ通信、ページング、ディスプレイ130の電源投入、カメラ270の使用、映像及び/又は画像の表示等)により引き起こされたものであるかを判定する。処理論理部210は、隔離板330における微小な短絡の潜在的な原因であるとして電池電圧430の突然の低下(正常な動作状態により引き起こされた)を無視してもよく又はフィルタリングしてもよい。
【0055】
図5に戻ると、電池電圧の低下がユーザデバイスの正常な動作状態により引き起こされたものではない場合(ブロック550−NO)、電池が誤動作していると判定され、電池の更なる使用を防止する(ブロック560)。例えば、一実施形態において、ユーザデバイス100の処理論理部210は、電池電圧430の突然の低下が正常な動作状態により引き起こされたものではなく不適切な状態(例えば、過度な加熱、機械的誤用等)により引き起こされたものであると判定する。処理論理部210は、電池260が誤動作していると判定し、電池260の更なる使用を防止する(例えば、処理論理210は電池260に停止するように命令する)。なお、他の実施形態において、処理論理部210は、電池260の使用を防止するのではなく電池260の使用を限定するように構成してもよい。例えば、電池260の充電周期を減少させたり、且つ/又は電池260により出力される電圧を減少させたりする。更に他の実施形態において、処理論理部210は、電池260の状態をチェックするように設計された別個のテストプロトコルを代わりに及び/又は更に起動するようにしてもよい。
【0056】
図5に更に示すように、電圧の低下が検出されず(ブロック520−NO)、測定した電池の温度が高くなく、且つ/又は電池は機械的誤用の影響を受けておらず(ブロック540−NO)、且つ/又は電池電圧の低下がユーザデバイスの正常な動作状態により引き起こされた(ブロック550−YES)ものである場合には、電池の電流を測定し(ブロック570)、測定した電流に基づいて電池が適切に機能しているかを判定する(ブロック580)。例えば一実施形態において、電池260の電圧低下がなかったこと、電池が不適切な状態(例えば、過度な加熱、機械的誤用等)の影響を受けていなかったこと及び/又は電池電圧の低下がユーザデバイス100の正常な動作状態により引き起こされたものであることを処理論理部210が判定した場合には、電池260の電流を測定する(例えば、ユーザデバイス100内に提供される検出抵抗器、A/D変換器等を使用して)。処理論理部210は、測定した電流に基づいて電池260が適切に機能しているかを判定する。一例において、処理論理210は、電池260が適切に機能しているかを判定するために測定した電池260の電流を閾値と比較する。
【0057】
図5に戻ると、測定した電池電流に基づいて電池が適切に機能していないと判定された場合には(ブロック580−NO)、上述のように、電池が誤動作していると判定し、電池の更なる使用を防止又は制限する(ブロック560)。測定した電池電流に基づいて電池が適切に機能していると判定された場合には(ブロック580−YES)、電池の動作は継続する(ブロック590)。例えば一実施形態において、処理論理部210は、測定した電流に基づいて電池260が適切に機能していると判定する。処理論理部210は、隔離板330において有効な微小な短絡(例えば、ピンホール350)が存在していないこと及び電池260がユーザデバイス100により安全に動作し続けることができることを判定する。
【0058】
結論
本明細書において説明する実施形態は、ユーザデバイスの電池の短絡を監視する1つ以上の機構を提供する。例えば一実施形態において、ユーザデバイスの電池の電圧を測定する。電圧低下が検出された場合、短絡が起こる可能性があるような不適切な状況に電池がさらされているかを判定する。不適切な電池の状況には、電池を格納及び/又は使用する際の温度が高すぎること、並びに/あるいは電池が機械的に誤用されたこと(落下すること)が含まれる。不適切な電池の状況が検出された場合、電池のその後の使用が停止及び/又は限定される。
【0059】
実施形態の上記記述は、例示及び説明を提供するものであり、本発明を網羅することを意図したものではなく、あるいは本発明は開示された厳密な形式に限定されるものではない。変更及び変形は、上記教示に鑑みて可能であり、あるいは本発明の実施から得られてもよい。例えば、一連のブロックを図5に関連して説明したが、他の実施形態においてはブロックの順序は変更されてもよい。更に、依存しないブロックは同時に実行されてもよい。
【0060】
用語「備える」は、本明細書において使用される場合、記載される特徴、数字、ステップ又は構成要素の存在を特定するために用いるものであり、1つ以上の他の特徴、数字、ステップ、構成要素又はそれらの集合の存在又は追加を除外するものではないことは強調されるべきである。
【0061】
上述のような面は、図示される実施形態において多くの種々の形態のソフトウェア、ファームウェア及びハードウェアにより実現されうることは明らかであろう。それらの面を実現するために使用される実際のソフトウェアコード又は専用制御ハードウェアは、限定するものとして解釈されるべきではない。それらの面の動作及び挙動は、特定のソフトウェアコードを参照せずに説明した。ソフトウェア及び制御ハードウェアが本明細書の説明に基づいてそれらの面を実現するように設計可能であることは理解されよう。
【0062】
特徴の特定の組合せを請求の範囲に列挙し且つ/又は本明細書において開示したが、それらの組合せは本発明を限定することを意図したものではない。実際には、それらの特徴の多くは、請求の範囲に特に列挙されず且つ/又は本明細書において特に開示されない方法で組み合わされてもよい。
【0063】
本出願において使用される要素、ブロック又は命令は、明示されない限り、本発明にとって重要又は不可欠なものとして解釈されるべきではない。また、本明細書において使用されるように、単数形は複数形も含むことを意図する。1つの項目のみが意図される場合には、用語「1つ」又は同様の言葉が使用されるものとする。更に表現「基づく」は、特に指示のない限り、「少なくとも部分的に基づく」を意味することを意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザデバイスの電池の電圧を測定する工程と、
電池電圧の低下が測定された場合に前記電池の温度及び前記ユーザデバイスの加速度を測定する工程と、
前記測定した電圧、前記測定した温度又は前記測定した加速度のうちの1つ以上に基づいて前記電池が適切に機能しているかを判定する工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電池が誤動作していると判定された場合に、前記電池の使用を防止する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電池電圧の低下が、前記ユーザデバイスの動作により引き起こされたものであるかを判定する工程と、
前記電池電圧の低下が、ユーザデバイスの動作により引き起こされたものである場合に、前記電池の電流を測定する工程と、
前記電池の前記測定した電流に基づいて前記電池が適切に機能しているかを判定する工程と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電池が適切に機能していると判定された場合に、前記電池の動作を継続する工程を更に有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電池の前記測定した電圧が電圧閾値より高いかを判定する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電池の前記測定した温度が温度閾値より高いかを判定する工程と、
前記電池の前記測定した電圧が前記電圧閾値より高く且つ前記電池の前記測定した温度が前記温度閾値より高い場合に、前記電池が誤動作していると判定する工程と、を更に有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザデバイスの前記測定した加速度が加速度閾値より大きいかを判定する工程と、
前記電池の前記測定した電圧が前記電圧閾値より高く且つ前記ユーザデバイスの前記測定した加速度が前記加速度閾値より大きい場合に、前記電池が誤動作していると判定する工程と
を更に有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
電池と、
前記電池の電圧を測定する電圧監視デバイスと、
前記電圧監視デバイスが電池電圧の低下を検出した場合に、前記電池の温度を測定する温度監視デバイスと、
前記電圧監視デバイスが前記電池電圧の低下を検出した場合に、前記電池の機械的誤用を測定する機械的誤用監視デバイスと、
前記電池の前記測定した電圧、前記測定した温度及び前記測定した機械的誤用のうちの1つ以上に基づいて、前記電池が適切に機能しているかを判定する処理論理部と
を備えることを特徴とするユーザデバイス。
【請求項9】
前記電池は、リチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池の一方を含むことを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項10】
前記電池は、
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間の隔離板と
を備えることを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項11】
前記電池の前記測定した電圧、前記測定した温度及び前記測定した機械的誤用のうちの1つ以上は、前記隔離板がピンホールを含むか否かを示す情報を提供することを特徴とする請求項10に記載のユーザデバイス。
【請求項12】
前記電圧監視デバイスは、
電圧計と、
電位差計と、
アナログデジタル変換器のうちの1つを備えることを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項13】
前記温度監視デバイスは、
温度計と、
熱電対と、
サーミスタと、
抵抗温度検出器(RTD)のうちの1つを備えることを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項14】
前記機械的誤用監視デバイスは、前記電池の加速度を測定する加速度計を備えることを特徴とする請求項10に記載のユーザデバイス。
【請求項15】
前記電池の前記加速度は、前記ユーザデバイスが落下したか否か又は機械的に誤用されたか否かを示す情報を提供することを特徴とする請求項14に記載のユーザデバイス。
【請求項16】
前記処理論理部は、更に、
前記電池が誤動作していると判定された場合に、前記電池の使用を防止することを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項17】
前記処理論理部は、更に、
前記電池電圧の低下が前記ユーザデバイスの動作により引き起こされたものであるかを判定し、
前記電池電圧の低下がユーザデバイスの動作により引き起こされたものである場合に、前記電池の前記測定した電流を受け取り、
前記電池の前記測定した電流に基づいて前記電池が適切に機能しているかを判定することを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項18】
前記処理論理部は、更に、
前記電池が適切に機能していると判定された場合に、前記電池の動作を継続することを特徴とする請求項17に記載のユーザデバイス。
【請求項19】
前記処理論理部は、更に、
前記電池の前記測定した電圧を電圧閾値と比較することを特徴とする請求項8に記載のユーザデバイス。
【請求項20】
前記処理論理部は、更に、
前記電池の前記測定した温度を温度閾値と比較し、
前記電池の前記測定した電圧が前記電圧閾値より高く且つ前記電池の前記測定した温度が前記温度閾値より高い場合に、前記電池が誤動作していると判定することを特徴とする請求項19に記載のユーザデバイス。
【請求項21】
前記機械的誤用監視デバイスは、前記電池の加速度を測定し、
前記処理論理部は、更に、
前記電池の前記測定した加速度を加速度閾値と比較し、
前記電池の前記測定した電圧が前記電圧閾値より高く且つ前記電池の前記測定した加速度が前記加速度閾値より大きい場合に、前記電池が誤動作していると判定することを特徴とする請求項19に記載のユーザデバイス。
【請求項22】
ユーザデバイスの電池の電圧を測定する手段と、
電池電圧の低下が測定された場合に、前記電池の温度及び機械的誤用を測定する手段と、
前記電池の前記測定した電圧、前記測定した温度又は前記測定した加速度のうちの1つ以上に基づいて、前記電池が適切に機能しているかを判定する手段と、
前記電池が誤動作していると判定された場合に、前記電池の使用を防止する手段と
を備えることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−536133(P2010−536133A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519546(P2010−519546)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050468
【国際公開番号】WO2009/022241
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】