説明

電池組立体

【課題】複数の電池セルを強固に、しかも長期間にわたって安定的に保持する。
【解決手段】電池組立体10は、複数の電池セル16が積層された積層体15と、所定の連結方向に沿って組み合わされ、さらに連結されており、積層体15を収容するケース11を形成する複数のケース部材12、13とを備える。さらに、複数のケース部材12、13を連結方向に沿って締め付ける締結部材14を備える。それぞれのケース部材12、13は、連結方向に沿って積層体15を挟んで保持する挟持部としての底面12b、13bを備える。この構成によると、複数の電池セル16を含む積層体15は、複数のケース部材12、13の連結方向Yに沿って、複数のケース部材12、13の間に挟まれて保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを有する電池組立体に関する。本発明は、例えば、車両の走行用動力源としての電動機に給電する電池組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の電池セルを積層した電池集合体をケース内に収容した電池パックを開示している。この技術では、電池セルのそれぞれに突部を設けている。複数の突部は、複数の電池セルを積層することによって、積層方向に沿って延びる突条を形成する。そして、この突条と係合するブラケットを設けることにより、複数の電池セルの簡単な保持構造が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−185815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、ひとつひとつの電池セルが、部分的に設けられた突起によって支持される。この構造では、突起に、応力が集中する。このため、複数の電池セルを強固に、かつ安定的に保持することが困難であった。
【0005】
また、突条とブラケットとの係合方向と、アッパケースとロワケースとの連結方向との両方によって、電池セルの形状、およびケースの形状が制約されるという問題点があった。
【0006】
さらに、突条とブラケットとを係合させる作業と、アッパケースとロワケースとを連結する作業とを別々に行うことが求められる。このため、複数の電池セルをケース内に収容する作業が複雑になるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の電池セルを強固に、かつ安定的に保持することができる電池組立体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、複数の電池セルをケース内に収容する作業を改善することができる電池組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0010】
請求項1に記載の発明は、複数の電池セルが積層された積層体(15、15a、15b)と、所定の連結方向に沿って組み合わされ、さらに連結されており、積層体を収容するケースを形成する複数のケース部材(12、13、213、512、513)と、複数のケース部材を連結方向に沿って締め付ける締結部材(14、514)とを備え、それぞれのケース部材は、連結方向に沿って積層体を挟んで保持する挟持部(12b、13b)を備えることを特徴とする電池組立体という技術的手段を採用する。この構成によると、複数の電池セルを含む積層体は、複数のケース部材の連結方向に沿って、複数のケース部材の間に挟まれて保持される。このため、複数の電池セルが強固に、しかも長期間にわたって安定的に保持される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、ケース部材は、さらに、連結方向に沿って積層体と嵌り合い、連結方向と交差する方向に関して積層体を拘束する嵌め合い部(12a、13a)を備えるという技術的手段を採用する。この構成によると、連結方向と交差する方向に関して、嵌め合い部によって積層体を拘束することができる。このため、締結部材による締め付け力だけに頼ることなく、ケース部材に形成された嵌め合い部の構造によって積層体を保持することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、嵌め合い部は、積層体の積層方向に関して積層体を拘束するという技術的手段を採用する。この構成によると、積層方向に関して積層体を拘束することができる。このため、複数の電池セルの積層状態をケース部材によって維持することが可能である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、複数の電池セルが積層された積層体(15、15a、15b)と、所定の連結方向に沿って組み合わされ、さらに連結されており、積層体を収容するケースを形成する複数のケース部材(12、13、213、512、513)と、複数のケース部材を連結方向に沿って締め付ける締結部材(14、514)とを備え、ケース部材は、連結方向に沿って積層体と嵌り合い、積層体の積層方向に関して積層体を拘束する嵌め合い部(12a、13a)を備えることを特徴とする電池組立体という技術的手段を採用する。この構成によると、積層方向に関して積層体を拘束することができる。このため、複数の電池セルの積層状態をケース部材によって維持することが可能である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、嵌め合い部は、連結方向および積層体の積層方向の両方と交差する横方向に関して積層体を拘束するという技術的手段を採用する。この構成によると、横方向に関して積層体を拘束することができる。ここで、横方向は、ケース部材の連結方向および積層体の積層方向の両方と交差する方向である。それは、電池セルが扁平な直方体形状である場合、扁平な面と平行な方向に対応する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、積層体は、複数の電池セル(16)と、積層体の外側に露出して設けられ、複数のケース部材と接触する複数の接触部を有する外枠部材(17、317、417)とを備え、外枠部材は、少なくとも複数の接触部にケース部材より軟らかい軟質部材を備えるという技術的手段を採用する。この構成によると、複数の電池セルが軟質部材を介して保持される。このため、複数の電池セルを保護することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、外枠部材は、軟質部材よりも硬く、複数の接触部の間にわたって延びる梁状部材(317m)を備えるという技術的手段を採用する。この構成によると、2つの接触部の間において、梁状部材によって高い強度が与えられる。このため、複数の電池セルを保護することができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、積層体は、複数の電池セルが積層された第1積層体(15a)と、複数の電池セルが積層され、第1積層体と並列に配置された第2積層体(15b)とを備え、ケースは、ケースと第1積層体との間に電池セルを冷却するための冷却空気を流すための第1通路を形成する第1通路形成部(11b)と、ケースと第2積層体との間に冷却空気を流すための第2通路を形成する第2通路形成部(11c)とを備えるという技術的手段を採用する。この構成によると、少なくとも第1積層体と第2積層体とを含む複数の積層体がケース内に収容される。さらに、ケース部材によって第1通路、および第2通路が形成される。
【0018】
請求項9に記載の発明は、第1積層体と第2積層体とは、連結方向(Y)と交差する平面上(X−Z)に並べて配置されているという技術的手段を採用する。この構成によると、積層体を連結方向と交差する平面上に並べて配置しながらケースを組立てることができる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、第1積層体と第2積層体とは、連結方向(X)に沿って広がる平面上(X−Z)に並べて配置されているという技術的手段を採用する。この構成によると、積層体を連結方向に沿って広がる平面上に並べて配置しながらケースを組立てることができる。
【0020】
請求項11に記載の発明は、第1積層体と第2積層体との間に、ケース部材より軟らかい軟質部材で作られたスペーサ(500)を備えるという技術的手段を採用する。この構成によると、2つの積層体の間の間隔を確保することができる。なお、スペーサは少なくともひとつの積層体との間に冷却空気の通路を区画してもよい。さらに、連結方向に沿って並ぶ2つの積層体の間にスペーサを設けた場合には、連結方向に沿って加えられる締結力を受ける緩衝部材としても機能させることができる。
【0021】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る電池組立体の斜視図である。
【図2】第1実施形態の電池組立体のII−II断面を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の電池組立体のIII−III断面を示す断面図である。
【図4】第1実施形態の積層体の斜視図である。
【図5】第1実施形態の積層体の部分的な分解斜視図である。
【図6】本発明を適用した第2実施形態に係る電池組立体の断面図である。
【図7】本発明を適用した第3実施形態に係る電池組立体の断面図である。
【図8】本発明を適用した第4実施形態に係る電池組立体の断面図である。
【図9】本発明を適用した第5実施形態に係る電池組立体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る電池組立体10の斜視図である。電池組立体10は、電池パックとも呼ばれる。電池組立体10は、車両に搭載されて、車両の走行用動力源としての電動機に給電する。図中には、座標系を示す三軸X、Y、およびZが図示されている。以下の説明において、X軸は、横方向とも呼ばれる。Y軸は、後述するケース部材の連結方向あるいは高さ方向とも呼ばれる。さらに、Z軸は、後述する電池の積層方向とも呼ばれる。
【0025】
電池組立体10は、アルミダイカスト製のケース11を有する。ケース11には、複数の機能部分10aが設けられている。機能部分10aには、ケース11内に収容された電池および電気回路部品等を冷却するための冷却空気を導入する空気入口、冷却空気を排出する空気出口、および電力端子や信号線などが配置されたコネクタ部を含むことができる。
【0026】
ケース11は、第1ケース部材としてのアッパケース12と、第2ケース部材としてのロワケース13とを有する。アッパケース12とロワケース13とは、扁平な箱型のケース11を上下に分割して得られる有底筒状の部材である。アッパケース12とロワケース13との開口部の縁には、外側に向けて広がるフランジ部が設けられている。アッパケース12とロワケース13とは、互いの開口部を合わせるようにして組み合わされている。従って、アッパケース12とロワケース13とは、所定の連結方向であるY軸に沿って組み合わされ、さらに連結されている複数のケース部材を提供している。これらアッパケース12とロワケース13とは、後述する積層体を収容するケース11を形成する。
【0027】
フランジ部には、ボルト14を貫通させるための貫通穴が設けられている。ボルト14は、アッパケース12とロワケース13とに締め付け力を付与する。これにより、アッパケース12とロワケース13とは、締め付けられ、互いに固定されている。ボルト14は、複数のケース部材を連結方向に沿って締め付ける締結部材である。後続の図面に図示されるように、締結部材は、ボルト14とナットとによって提供されている。
【0028】
図2は、電池組立体10のII−II断面を示す断面図である。図3は、電池組立体10のIII−III断面を示す断面図である。ケース11は、積層体15を収容するための収容室11aを区画形成している。積層体15は、複数の積層体15a、15bを有する。第1積層体15aと第2積層体15bとは、同じ形状であって、細長い直方体形状である。第1積層体15aと、第2積層体15bとは、並列に配置されている。第1積層体15aと、第2積層体15bとは、その長手方向が平行になるように配置され、かつ横方向に並べて配置されている。第1積層体15aと第2積層体15bとは、連結方向と交差する平面上、すなわちX−Z平面上に並べて配置されている
ひとつの積層体15は、交互に積層された複数の電池セル16と複数の保護部材17とを有する。積層体15は、複数の電池セル16を電気的に接続する導電部材を有するバスバー18を備える。さらに、ケース11内には、冷却空気を送風するための送風機および電池組立体10の電圧を監視する制御装置などの機器19が収容されている。
【0029】
ケース11の内面は、積層体15から離れて位置する複数の空洞形成部と、積層体15と接触する複数の接触部とを有する。空洞形成部は、ケース11と積層体15との間に複数の室を形成するための複数の凹部11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hを含む。これら複数の凹部11b−11hは、アッパケース12およびロワケース13のいずれかに、またはそれら両方にわたって形成される。
【0030】
ケース11は、電池セル16を冷却するための冷却空気を流すための複数の通路を形成するための複数の凹部を有する。ケース11の側壁のうち、第1積層体15aの積層方向に沿って広がり、第1積層体15aに隣接する側壁には、凹部11bが設けられている。この凹部11bは、ケース11と第1積層体15aとの間に冷却空気を流すための第1通路を形成する第1通路形成部である。ケース11の側壁のうち、第2積層体15bの積層方向に沿って広がり、第2積層体15bに隣接する側壁には、凹部11cが設けられている。この凹部11cは、ケース11と第2積層体15bとの間に冷却空気を流すための第2通路を形成する第2通路形成部である。ケース11の中央であって、2つの積層体15a、15bの間には、凹部11d、11eが設けられている。これら凹部11d、11eは、冷却空気を流すための共通の第3通路を形成するための第3通路形成部である。
【0031】
冷却空気は、図2に矢印F1によって図示されるように、共通通路から、第1または第2の専用通路へ向けて流すことができる。また、これに代えて、図2に矢印F2によって図示されるように、専用通路から共通通路へ向けて流してもよい。
【0032】
さらに、積層体15のバスバー18を収容するための凹部11f、11gがアッパケース12に設けられている。さらに、ケース11の積層方向のひとつの側壁には、凹部11hが設けられている。この凹部11hは、機器19を収容するための収容室を形成する。
【0033】
さらに、ケース11は、その内面に設けられた接触部によって積層体15と接触し、積層体15を保持し、固定している。積層体15aを固定するためにケース11に設けられた形状と、積層体15bを固定するためにケース11に設けられた形状とは同じである。以下の説明においては、積層体15aに関連するケース11の形状を主として説明する。
【0034】
ケース11に設けられた複数の接触部は、三軸方向のそれぞれに関して積層体15を位置決めし、固定する。ケース11は、連結方向に沿って積層体15を挟んで保持する挟持部を備える。アッパケース12とロワケース13との内面のうち、連結方向に面し、かつ積層体15と接触する部分は、連結方向に沿って積層体15を挟んで保持する挟持部である。また、ケース11は、連結方向に沿って積層体15と嵌り合い、連結方向と交差する方向に関して積層体15を拘束する嵌め合い部を備える。嵌め合い部は、連結方向に沿って積層体15を受け入れる凹部によって提供することができる。この嵌め合い部は、横嵌め合い部と、積層方向嵌め合い部とを含む。横嵌め合い部は、連結方向および積層方向の両方と交差する横方向に関して積層体15を拘束する。また、積層方向嵌め合い部は、積層方向に関して積層体15を拘束する。さらに、ケース11に設けられた複数の接触部は、ケース11だけによって積層体15を積層状態に維持する。これらの挟持部、および嵌め合い部は、アッパケース12とロワケース13とに設けられた凹部12a、13aによって提供される。
【0035】
図2および図3において、アッパケース12には、積層体15aに対応する凹部12aが形成されている。凹部12aは、底面12bと、この底面12bを囲む4つの側面12c、12d、12e、12fとを提供している。底面12bは、X−Z平面に沿って広がる面である。底面12bは、連結方向に面する。底面12bは、ボルト14の締め付け力によって、積層体15aに押し付けられている。底面12bは、挟持部を提供する。側面12c、12d、12e、12fは、連結方向に沿って広がる面である。
【0036】
互いに対向している一対の側面12c、12dは、横方向に面する。一対の側面12c、12dの間の距離は、連結方向に沿って積層体15aを受け入れることができ、しかも積層体15aの横方向移動を規制するように設定されている。この実施形態では、積層体15aは、一対の側面12c、12dの間において横方向に関して拘束されている。
【0037】
互いに対向している一対の側面12e、12fは、積層方向に面する。一対の側面12e、12fの間の距離は、連結方向に沿って積層体15aを受け入れることができ、しかも積層体15aの積層方向移動を規制するように設定されている。この実施形態では、積層体15aは、一対の側面12e、12fの間において積層方向に関して拘束されている。積層体15aは、一対の側面12e、12fの間に軽く圧入されている。これにより、複数の電池セル16と複数の保護部材17との積層状態がケース11によって維持される。
【0038】
ロワケース13には、積層体15aに対応する凹部13aが形成されている。凹部13aは、底面13bと、この底面13bを囲む4つの側面13c、13d、13e、13fとを提供している。底面13bは、X−Z平面に沿って広がる面である。底面13bは、連結方向に面する。底面13bは、ボルト14の締め付け力によって、積層体15aに押し付けられている。底面13bは、挟持部を提供する。側面13c、13d、13e、13fは、連結方向に沿って広がる面である。
【0039】
互いに対向している一対の側面13c、13dは、横方向に面する。一対の側面13c、13dの間の距離は、積層体15aを受け入れることができ、しかも積層体15aの横方向移動を規制するように設定されている。この実施形態では、積層体15aは、一対の側面13c、13dの間において横方向に関して拘束されている。
【0040】
互いに対向している一対の側面13e、13fは、積層方向に面する。一対の側面13e、13fの間の距離は、積層体15aを受け入れることができ、しかも積層体15aの積層方向移動を規制するように設定されている。この実施形態では、積層体15aは、一対の側面13e、13fの間において積層方向に関して拘束されている。積層体15aは、一対の側面13e、13fの間に軽く圧入されている。これにより、複数の電池セル16と複数の保護部材17との積層状態がケース11によって維持される。
【0041】
図4は、積層体15の斜視図である。図5は、積層体15の部分的な分解斜視図である。ひとつの積層体15は、積層された複数の電池セル16を有する。ひとつの積層体15は、複数の電池セル16と、複数の保護部材17とを交互に積層して構成されている。積層体15の両端には保護部材17が配置される。電池セル16は、扁平な直方体形状である。電池セル16は、そのひとつの側面上に一対の端子を有する。電池セル16は、その厚さ方向に沿って積層されている。
【0042】
保護部材17は、扁平な直方体形状、または板状と呼びうる形状である。保護部材17は、アッパケース12およびロワケース13より軟らかい樹脂製である。保護部材17は、アッパケース12およびロワケース13より軟らかい軟質部材とも呼ぶことができる。保護部材17は、弾力性を有する弾性部材によって構成することができる。保護部材17は、積層方向に関して複数の電池セル16を安定的に保持するために、積層方向に関して弾性変形可能な部材である。保護部材17は、連結方向、すなわち高さ方向に関してアッパケース12とロワケース13とから受ける締め付け力を受けるために、さらに同方向に関して複数の電池セル16を安定的に保持するために、連結方向に関して弾性変形可能な部材である。さらに、保護部材17は、横方向に関して複数の電池セル16を安定的に保持するために、横方向に関して弾性変形可能な部材である。
【0043】
複数の保護部材17は、電池セル16と接触して配置される。保護部材17は、保護部材17上の所定位置に電池セル16を固定する。さらに、保護部材17は、電池セル16との間に、適宜の空気通路を区画形成するために溝部を有する。ひとつの保護部材17の板としての大きさは、電池セル16より大きい。従って、図中のX−Y平面において、保護部材17の背後に電池セル16を完全に隠すことができる。複数の保護部材17は、細長い直方体形状の積層体15の6面すべてに露出している。さらに、複数の保護部材17は、それらの間の隙間から、電池セル16の端子だけを突出させている。この結果、複数の電池セル16は、複数の保護部材17の間に隠される。また、積層体15の外側から電池セル16への直接的な到達が制限される。
【0044】
ひとつの保護部材17は、長方形の周囲の4つの角に対応する位置に、4つの角部17a、17b、17c、17dを有する。これらの周囲の角部17a、17b、17c、17dは、複数の保護部材17が積層されることによって、一列に整列して配置される。この結果、積層体15には、その積層方向に沿って長く延びる4つの峰が形成される。これら4つの峰を形成する面は、積層体15を、その積層方法と交差する方向に関して位置決めし、固定するために貢献する。
【0045】
さらに、保護部材17は、積層方向の前後に、前角部17e、17fと、後角部17g、17hとを有している。これら前後の角部17e、17f、17g、17hを形成する面は、積層体15を、その積層方向に関して位置決めし、固定するために貢献する。さらに、これら前後の角部17e、17f、17g、17hは、積層体15をその積層方向に関して締め付けるために貢献する。
【0046】
積層された複数の保護部材17は、積層体15の外側に露出して設けられ、複数のケース部材12、13と接触する複数の接触部を有する外枠部材を提供する。さらに、複数の保護部材17は、少なくとも複数の接触部に、ケース部材12、13より軟らかい軟質部材を備えるといえる。
【0047】
図2に図示されるように、積層体15aの4つの角部は、2つの凹部12a、13aに嵌め合わされている。このため、角部17a、17bを形成する面は、凹部12aの底面12bと側面12c、12dとに接触する。また、角部17c、17dを形成する面は、凹部13aの底面13bと側面13c、13dとに接触する。これにより、連結方向および横方向に関して積層体15aが固定される。
【0048】
図3に図示されるように、積層体15aの前後の角部も、2つの凹部12a、13aに嵌め合わされている。このため、角部17e、17gを形成する面は、凹部12aの底面12bと側面12e、12fとに接触する。また、角部17f、17hを形成する面は、凹部13aの底面13bと側面13e、13fとに接触する。これにより、積層方向に関して積層体15aが固定される。さらに、積層体15aは、ケース11だけによって積層方向へ締め付けられ固定される。
【0049】
この実施形態によると、複数の電池セル16を含む積層体15は、複数のケース部材12、13の連結方向に沿って、複数のケース部材12、13の間に挟まれて保持される。このため、複数の電池セル16が強固に、しかも長期間にわたって安定的に保持される。
【0050】
さらに、少なくとも第1積層体15aと第2積層体15bとを含む複数の積層体をケース11内に収容することができる。さらに、ケース部材12、13によって第1通路、および第2通路を含む冷却空気の通路を形成することができる。また、複数の積層体15a、15bを、ケース部材12、13の連結方向と交差するX−Z平面上に並べて配置しながらケース11を組立てることができる。
【0051】
また、複数の電池セル16が軟質部材である保護部材17を介して保持される。このため、複数の電池セル16を保護することができる。
【0052】
さらに、連結方向と交差する方向に関して、嵌め合い部12a、13aによって積層体15を拘束することができる。このため、締結部材14による締め付け力だけに頼ることなく、ケース部材12、13に形成された嵌め合い部12a、13aの構造によって積層体15を保持することができる。しかも、横方向に関して積層体15を拘束することができる。また、積層方向に関して積層体を拘束することができる。さらに、積層体15だけをその積層方向に沿って締め付ける部材を用いることなく、ケース11だけで積層体15の積層状態を維持することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図6は、本発明を適用した第2実施形態に係る電池組立体210の断面図である。この実施形態では、先行する実施形態のロワケース13に代えて、ロワケース213が用いられている。ロワケース213には、凹部211iと凹部211jとが形成されている。凹部211iは、第1積層体15aのための冷却空気の通路を形成する。凹部211jは、第2積層体15bのための冷却空気の通路を形成する。この結果、この実施形態によると、図示されるような多様な冷却空気の流れを提供することができる。
【0054】
(第3実施形態)
図7は、本発明を適用した第3実施形態に係る電池組立体310の断面図である。この実施形態では、先行する実施形態の保護部材17に代えて、保護部材317が用いられている。保護部材317は、先行する実施形態の保護部材17と同じ外部形状を有している。しかし、保護部材317は、内部に梁状部材317mを備えている。梁状部材317mは、保護部材317の横方向に沿って延びている。梁状部材317mは、側面13cと側面13dとの間にわたって延びている。梁状部材317mは、保護部材317の主たる材料である樹脂よりも硬い材料、例えば鉄によって形成されている。従って、この実施形態においては、積層体15の外枠部材としての保護部材317は、軟質部材よりも硬く、複数の接触部13c、13dの間にわたって延びる梁状部材317mを備える。この梁状部材317mは、横方向に関して保護部材317を補強する。
【0055】
(第4実施形態)
図8は、本発明を適用した第4実施形態に係る電池組立体410の断面図である。この実施形態では、先行する実施形態の保護部材17に代えて、保護部材417が用いられている。保護部材417は、先行する実施形態の保護部材17と同じ外部形状を有している。しかし、保護部材417は、4つの角部に緩衝部材417rを備えている。緩衝部材417rは、保護部材417の主たる材料である樹脂よりも弾力性に富み、衝撃吸収性に優れた材料である。この緩衝部材417rは、積層体15を弾性的に保持することを可能とする。この結果、電池セル16を衝撃から保護することができる。
【0056】
(第5実施形態)
図9は、本発明を適用した第5実施形態に係る電池組立体510の断面図である。この実施形態では、先行する実施形態のケース11に代えて、ケース511が用いられている。ケース511は、第1ケース部材としての右半部512と、第2ケース部材としての左半部513とを有する。これらケース部材512、513は、図中X軸方向に連結される。締結部材であるボルト514は、X軸方向に沿ってケース部材512、513を締め付ける。従って、第1積層体15aと第2積層体15bとは、連結方向に沿って広がるX−Z平面上に並べて配置されている。この実施形態では、X軸は、ケース部材の連結方向と呼ぶことができる。
【0057】
さらに、ケース部材512、513の間であって、第1積層体15aと第2積層体15bとの間には、樹脂製のスペーサ500が設けられている。このスペーサ500は、ケース511より軟らかい軟質部材で作られている。スペーサ500は、ボルト514による締め付け力を受けるとともに、第1積層体15aと第2積層体15bとを弾力的に保持する。さらに、スペーサ500には、冷却空気の通路を区画する凹部が形成されている。
【0058】
この実施形態によると、連結方向に沿って複数の積層体15a、15bを積み重ねるようにして配置することができる。さらに、スペーサ500によって複数の積層体15a、15bを安定的に保持することができる。
【0059】
この実施形態においても、積層体15a、15bが2つのケース部材512、513の間に、その連結方向に沿って挟まれて保持される。さらに、Y軸方向およびZ軸方向に関しても、積層体15a、15bがケース部材512、513と嵌り合う。
【0060】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0061】
例えば、ケース11は、有底角筒状の第1ケース部材と、板状の第2ケース部材とによって形成することができる。また、上述の実施形態において、積層体15は、連結方向に関してだけ拘束されてもよい。また、上述の実施形態において、積層体15は、積層方向に関してだけ拘束されてもよい。また、上述の実施形態においては、嵌め合い部の雌型としての凹部12a、13aをケース11に設け、嵌め合い部の雄型としての形状を積層体15に設けた。これに代えて、雌型としての凹部を積層体15に設け、雄型としての形状をケース11に設けてもよい。また、上述の実施形態においては積層体15はケース11だけによって積層方向に関して拘束されているが、これに代えて、積層体15を積層方向に締め付けて拘束するスルーボルトなどの締結部材を設けてもよい。かかる構成においては、積層体15は、ケース11と締結部材との両方により、あるいは締結部材だけによって積層方向に関して拘束される。
【符号の説明】
【0062】
10 電池組立体、11 ケース、11b 凹部(通路形成部)、11c 凹部(通路形成部)、12 アッパケース(ケース部材)、12a 凹部(嵌め合い部)、13 ロワケース(ケース部材)、13a 凹部(嵌め合い部)、14 ボルト(締結部材)、15 積層体、15a 第1積層体、15b 第2積層体、16 電池セル、17 保護部材(外枠部材)、18 バスバー、19 機器、317m 梁状部材、500 スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが積層された積層体(15、15a、15b)と、
所定の連結方向に沿って組み合わされ、さらに連結されており、前記積層体を収容するケースを形成する複数のケース部材(12、13、213、512、513)と、
複数の前記ケース部材を前記連結方向に沿って締め付ける締結部材(14、514)とを備え、
それぞれの前記ケース部材は、
前記連結方向に沿って前記積層体を挟んで保持する挟持部(12b、13b)を備えることを特徴とする電池組立体。
【請求項2】
前記ケース部材は、さらに、
前記連結方向に沿って前記積層体と嵌り合い、前記連結方向と交差する方向に関して前記積層体を拘束する嵌め合い部(12a、13a)を備えることを特徴とする請求項1に記載の電池組立体。
【請求項3】
前記嵌め合い部は、前記積層体の積層方向に関して前記積層体を拘束することを特徴とする請求項2に記載の電池組立体。
【請求項4】
複数の電池セルが積層された積層体(15、15a、15b)と、
所定の連結方向に沿って組み合わされ、さらに連結されており、前記積層体を収容するケースを形成する複数のケース部材(12、13、213、512、513)と、
複数の前記ケース部材を前記連結方向に沿って締め付ける締結部材(14、514)とを備え、
前記ケース部材は、
前記連結方向に沿って前記積層体と嵌り合い、前記積層体の積層方向に関して前記積層体を拘束する嵌め合い部(12a、13a)を備えることを特徴とする電池組立体。
【請求項5】
前記嵌め合い部は、前記連結方向および前記積層体の積層方向の両方と交差する横方向に関して前記積層体を拘束することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の電池組立体。
【請求項6】
前記積層体は、
複数の前記電池セル(16)と、
前記積層体の外側に露出して設けられ、複数の前記ケース部材と接触する複数の接触部を有する外枠部材(17、317、417)とを備え、
前記外枠部材は、少なくとも複数の前記接触部に前記ケース部材より軟らかい軟質部材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電池組立体。
【請求項7】
前記外枠部材は、
前記軟質部材よりも硬く、複数の前記接触部の間にわたって延びる梁状部材(317m)を備えることを特徴とする請求項6に記載の電池組立体。
【請求項8】
前記積層体は、
複数の電池セルが積層された第1積層体(15a)と、
複数の電池セルが積層され、前記第1積層体と並列に配置された第2積層体(15b)とを備え、
前記ケースは、
前記ケースと前記第1積層体との間に前記電池セルを冷却するための冷却空気を流すための第1通路を形成する第1通路形成部(11b)と、
前記ケースと前記第2積層体との間に前記冷却空気を流すための第2通路を形成する第2通路形成部(11c)とを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電池組立体。
【請求項9】
前記第1積層体と前記第2積層体とは、前記連結方向(Y)と交差する平面上(X−Z)に並べて配置されていることを特徴とする請求項8に記載の電池組立体。
【請求項10】
前記第1積層体と前記第2積層体とは、前記連結方向(X)に沿って広がる平面上(X−Z)に並べて配置されていることを特徴とする請求項8に記載の電池組立体。
【請求項11】
前記第1積層体と前記第2積層体との間に、前記ケース部材より軟らかい軟質部材で作られたスペーサ(500)を備えることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の電池組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−210657(P2011−210657A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79101(P2010−79101)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】