説明

電池配線モジュール

【課題】組み立て作業の作業性の悪化を招くことなく、バスバーの一面側に検知電線を重ねて配策することが可能な電池配線モジュールを提供する。
【解決手段】正極及び負極の電極端子11を有する単電池12を複数個並べてなる単電池群13に取り付けられる電池配線モジュール10であって、前記電極端子11に接続されるバスバー20と、前記単電池群13の状態を検出するための検知電線33と、前記バスバー20を保持する樹脂プロテクタ40と、を有し、前記樹脂プロテクタ40には、前記バスバー20を覆う絶縁材料からなる蓋部61と、前記蓋部61のうち前記バスバー20とは反対側の面において、前記検知電線33の側方に立つ壁部64とが設けられ、この壁部64により前記検知電線33を配策する配策スペースSが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車やハイブリッド車両に搭載される動力用の電池モジュールは、一般に、バスバーを介して多数の単電池を直列接続して構成されている。この種の電池モジュールでは、単電池毎の端子電圧を測定するための電圧検知線等、単電池群の状態を検出するための検知電線を、単電池の電極端子に接続する必要がある。
【0003】
このような電池モジュールの一例として、単電池を複数個並べてなる単電池群に、バスバーおよび検知電線を備えた電池配線モジュールを取り付けて、組み立てるものが知られている。例えば、下記特許文献1に記載された電池配線モジュールは、複数のバスバーが樹脂プロテクタの所定の位置に保持され、検知電線は、単電池の数に応じて複数が備えられ、樹脂プロテクタに設けられた電線収容溝にまとめて収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−8955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池配線モジュールにおいて、バスバーの一面側に検知電線を重ねて配策しようとした場合には、バスバーの一面側に絶縁用の蓋部を配置し、その蓋部のバスバーとは反対側に、検知電線を配策することが考えられる。このとき、蓋部に沿って配された複数の検知電線を、一纏めにしてある程度位置決めする手段として、結束バンド等で検知電線を束ねることが考えられる。しかしながら、このような手段を取る場合には、結束バンド等の固定部品を検知電線に取り付ける作業が必要となり、電池配線モジュールの組み立てにかかる手間が増え、作業性の悪化を招く虞があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、組み立て作業の作業性の悪化を招くことなく、バスバーの一面側に検知電線を重ねて配策することが可能な電池配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池配線モジュールは、正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、前記単電池群の状態を検出するための検知電線と、前記バスバーを保持する樹脂プロテクタと、を有し、前記樹脂プロテクタには、前記バスバーを覆う絶縁材料からなる蓋部と、前記蓋部のうち前記バスバーとは反対側の面において、前記検知電線の側方に立つ壁部とが設けられ、この壁部により前記検知電線を配策する配策スペースが形成されているものである。
このような構成によれば、検知電線に固定部材を取り付けることなく、検知電線を一纏めにして蓋部に位置決めすることができるので、組み立て作業の作業性の悪化を招くことなく、バスバーの一面側に検知電線を重ねて配策することができる。
【0008】
また、前記壁部は前記検知電線の両側に一対が設けられ、前記一対の壁部は前記検知電線の配策方向に連続して延びるものであり、前記壁部に跨って、前記配策スペースに配策された前記検知電線を覆う電線覆い部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、検知電線の配策スペースから外側へのはみ出しを規制することができ、また検知電線の外部との接触を防ぐことができる。
【0009】
また、前記電線覆い部は、前記配策スペースを閉鎖する閉じ状態と、前記配策スペースを開放する開き状態との間を回動可能に前記蓋部に一体に設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、電線覆い部を開き状態にして配策スペースに検知電線を配策し、電線覆い部を閉じ状態に回動するだけの簡単な作業で、蓋部に対する検知電線の固定と、検知電線の保護とを行うことができる。
【0010】
また、前記電線覆い部と前記壁部とには、前記電線覆い部の前記開き状態から前記閉じ状態への回動動作に伴って、互いに係止するロック構造が備えられているものとしてもよい。このような構成によれば、電線覆い部を開き状態から閉じ状態に回動するだけの簡単な作業で、電線覆い部と壁部とをロックすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組み立て作業の作業性の悪化を招くことなく、バスバーの一面側に検知電線を重ねて配策することが可能な電池配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における電池配線モジュールの平面図であって、蓋部の開放状態を示す平面図
【図2】蓋部の開放状態を示す電池配線モジュールの一部拡大正面図
【図3】蓋部の開放状態を示す電池配線モジュールの一部拡大側面図
【図4】電線覆い部の開き状態を示す電池配線モジュールの一部拡大平面図
【図5】電線覆い部の開き状態を示す電池配線モジュールの一部拡大正面図
【図6】電線覆い部の開き状態を示す電池配線モジュールの一部拡大側面図
【図7】電線覆い部の閉じ状態を示す電池配線モジュールの一部拡大平面図
【図8】電線覆い部の閉じ状態を示す電池配線モジュールの一部拡大正面図
【図9】電線覆い部の閉じ状態を示す電池配線モジュールの一部拡大側面図
【図10】電線覆い部の閉じ状態を示す断面図であって、図7のA−A位置における断面に相当する断面図
【図11】本体カバー部が装着された状態を示す電池配線モジュールの一部拡大平面図
【図12】単電池群に対するバスバーの配置を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図12を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態における電池配線モジュール10は、正極及び負極の電極端子11を有する単電池12を、複数個(本実施形態では8個)並べてなる単電池群13に取り付けられ、異なる単電池12の正極の電極端子11と負極の電極端子11とを電気的に接続するものである。単電池群13に電池配線モジュール10を取り付けてなる電池モジュールは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動源として使用される。
【0014】
単電池12は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、その他の二次電池等であって、図示しない電池要素が収容されてなる本体部14と、正負の電極端子11と、電圧検知用の端子15とを有している。本体部14は扁平な四角い箱型をなし、正負の電極端子11および電圧検知用の端子15は、本体部14の上面に設けられている。
【0015】
電極端子11および電圧検知用の端子15は、金属製(銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等)であって、切削加工、鋳造、または鍛造等、公知の手法により形成され、いずれも略中心位置に雌ネジ孔16が形成されたナット形状をなしている(図12参照)。電圧検知用の端子15は、正負の電極端子11の略中心位置に配され、この電圧検知用の端子15により各単電池12の正負の電極端子11のほぼ中間の電圧を検出することができる。また、直列接続された単電池群13の両端部に位置する正極および負極の電極端子11は、外部へ電力を出力するための出力端子11Aを構成する。
【0016】
複数の単電池12は、図12に示すように、異なる極性の電極端子11が隣り合うようにして一方向(縦方向)に複数個(本実施形態では4個)並べられるとともに、この一方向に並べられてなる単電池列17が、他方向(一方向に対して直交する方向、横方向)に複数列(本実施形態では2列)並んで配置されている。なお、単電池群13は、図示しない保持部材により一体に保持されている。
【0017】
電池配線モジュール10は、電極端子11に接続される複数のバスバー20を備えている。バスバー20は、例えば、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属製の板材を、所定の形状にプレス加工することにより形成されている。なお、バスバー20の表面には、スズ、ニッケル等の金属がメッキされていてもよい。
【0018】
バスバー20は、縦方向に並べられた単電池12の異極の電極端子11間を接続する第一バスバー21と、第一バスバー21により直列接続されてなる単電池列17の両端に配された電極端子11間を接続する第二バスバー22と、出力端子11Aと外部接続用の端子26との間を接続する出力バスバー23とを有している。
【0019】
第一バスバー21および第二バスバー22は、全体として略長方形をなし、その長手方向の寸法は、隣り合う電極端子11の距離に応じた寸法とされ、第二バスバー22は、第一バスバー21よりも長尺とされている。第一バスバー21および第二バスバー22には、電極端子11の雌ネジ孔16に螺合する図示しないボルトの軸部を挿通可能な貫通孔24が、一対ずつ形成されている。貫通孔24は、バスバー20を板厚方向に打ち抜いて貫通形成されている。
【0020】
出力バスバー23は、全体として略L字型をなし、その一端部には、出力端子11Aに螺合するボルトの軸部を挿通可能な貫通孔24が設けられ、他端部には、外部と接続される外部接続部25が設けられている。外部接続部25は、出力バスバー23の他の部分の板面に対して略直角方向に屈曲されてなり、その中央には、外部接続用の端子26が略垂直に突設されている。外部接続用の端子26は、外周面にネジが切られたボルト状をなし、外部接続部25に形成された図示しない貫通孔に叩き込まれ、または溶接等されることで、外部接続部25に固定されている。
【0021】
出力バスバー23は、単電池群13の角に配された出力端子11Aに接続される第一出力バスバー23Aと、その出力端子11Aの内側に隣接して配置された出力端子11Aに接続される第二出力バスバー23Bとを有している。第一出力バスバー23Aは、第二出力バスバー23Bよりも長尺とされている。第一出力バスバー23Aの外部接続部25と第二出力バスバー23Bの外部接続部25とは、縦方向の位置を揃えて横並びに配置されている。
【0022】
電池配線モジュール10は、単電池12の電圧を検出するための電圧検知端子(検知端子)30を備えている。電圧検知端子30は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。電圧検知端子30は、電極端子11または電圧検知用の端子15の雌ネジ孔16に螺合するボルトの軸部を挿通可能な貫通孔31が形成された端子本体部32と、電圧検知線(検知電線)33の端末部が圧着された電線圧着部34とを有している。なお、電圧検知端子30の表面は、スズ、ニッケル等の金属によってメッキされていてもよい。
【0023】
貫通孔31は、端子本体部32の略中心に形成され、電圧検知端子30は、その貫通孔31が、電極端子11または電圧検知用の端子15の雌ネジ孔16と整合する位置に配されて、ボルト締めにより接続される。電圧検知端子30は、バスバー20とともに電極端子11に共締めされる第一電圧検知端子30Aと、単体で電圧検知用の端子15に接続される第二電圧検知端子30Bとを有している。第一電圧検知端子30Aは、第二電圧検知端子30Bよりも大型の端子本体部32を有している。
【0024】
電池配線モジュール10は、複数のバスバー20を保持する合成樹脂製の樹脂プロテクタ40を備えている。樹脂プロテクタ40は、複数の連結ユニットが、若干の相対移動を許容された状態で連結されてなる。
【0025】
樹脂プロテクタ40は、バスバー20および電圧検知端子30を保持するプロテクタ本体部42と、電圧検知線33をバスバー20の一面側(上面側)に積層して配置するための積層配置部60とを有している。なお、積層配置部60については、後ほど詳しく説明する。
【0026】
プロテクタ本体部42は、バスバー20を収容して保持するバスバー収容部43と、第二電圧検知端子30Bの端子本体部32を収容して保持する検知端子収容部44とを有している。バスバー収容部43および検知端子収容部44は、それぞれ周壁45に囲われた略方形をなして上下方向に開口している。バスバー収容部43および検知端子収容部44の周壁45は、電極端子11または電圧検知用の端子15に螺合されるボルトの頭部よりも高い位置まで立ち上がり、ボルトの頭部に工具等が接触して短絡することを防いでいる。バスバー収容部43および検知端子収容部44の周壁45には、電圧検知端子30の電線圧着部34をバスバー収容部43または検知端子収容部44から外側に突出させるための挿通部51が設けられている。
【0027】
バスバー収容部43および検知端子収容部44には、バスバー20または第二電圧検知端子30Bの下面側を支持する図示しない支持部と、バスバー20または第二電圧検知端子30Bの上方への離脱を防ぐ押え部41とが設けられ、バスバー20および第二電圧検知端子30Bは、押え部41よりも下側に押し込まれてバスバー収容部43または検知端子収容部44に収容される。支持部は、電池配線モジュール10を単電池群13に取り付けたときに、電極端子11または電圧検知用の端子15を避け得る位置に設けられている。なお、第一電圧検知端子30Aは、端子本体部32の角部を周壁45に係止させた状態で、バスバー収容部43に収容される。
【0028】
バスバー収容部43のうち第一バスバー21を収容する第一バスバー収容部46は、図1に示すように、樹脂プロテクタ40の縦方向に延びる両端縁(両短縁)に沿って設けられた第一バスバー外側収容部46Aと、第一バスバー外側収容部46Aとの間に所定の間隔をあけてプロテクタ本体部42の内側(中心側)に設けられた第一バスバー内側収容部46Bとを有している。
そして、第一バスバー外側収容部46Aと第一バスバー外側収容部46Aとの間には、検知端子収容部44が、縦方向に等間隔で並べて設けられている。
【0029】
バスバー収容部43のうち第二バスバー22を収容する第二バスバー収容部47は、樹脂プロテクタ40の横方向に延びる両端縁(両長縁)に沿って設けられている。
バスバー収容部43のうち出力バスバー23を収容する出力バスバー収容部48は、樹脂プロテクタ40の横方向における出力端子11A側の一端部に設けられている。出力バスバー収容部48は、第一出力バスバー23Aを収容する第一出力バスバー収容部48Aと、第二出力バスバー23Bを収容する第二出力バスバー収容部48Bとを有している。
【0030】
出力バスバー収容部48は、樹脂プロテクタ40の横方向に延びるとともに、縦方向の中央側に向かって略L字に曲がった形状をなし、その端部には、外部接続用の端子26を収容する外部端子収容部49が備えられている。なお、第一出力バスバー収容部48Aは、第二出力バスバー収容部48Bよりも外側の位置に設けられている。
【0031】
樹脂プロテクタ40には、電圧検知端子30に接続された電圧検知線33が収容される電線収容溝52が、横方向に直線状に延びて設けられている。電線収容溝52は一対の溝壁部53を有し、その間に電圧検知線33が収容されている。電線収容溝52は、樹脂プロテクタ40の縦方向における一端側寄りの位置に設けられている。電線収容溝52は、第二バスバー収容部47の周壁に沿って延び、その延び方向の一端側は、第一バスバー内側収容部46Bと第二バスバー収容部47との間を通り、他端側は、第一出力バスバー収容部48Aと第二出力バスバー収容部48Bとの間を通っている。バスバー収容部43および検知端子収容部44から引き出された電圧検知線33は、電線収容溝52に導かれて一纏めにされて配策される。電圧検知線33の先端は、図示しないECU等に接続され、単電池12の電圧が測定される。
【0032】
樹脂プロテクタ40は、電圧検知線33をバスバー20の上側に積層して配置するための積層配置部60を備えている。積層配置部60は、バスバー20を覆う絶縁材料からなる蓋部61と、蓋部61の上面に配置された電圧検知線33を覆う電線覆い部62とを有している。
【0033】
蓋部61は、出力バスバー収容部48の上面側(開口側)の略全体(出力端子11Aの上方部分を除く略全体)を覆う略方形の板状をなしている(図4参照)。なお、出力端子11Aの上方部分は、プロテクタ本体部42の上面側を覆う本体カバー部54により覆われる(図11参照)。
【0034】
積層配置部60は、可撓性を有する第一ヒンジ部63を介してプロテクタ本体部42に一体に連結されている(図1参照)。第一ヒンジ部63は、第一出力バスバー収容部48Aの周壁45のうち横方向に延びる外壁と蓋部61の外縁との間を連結している。第一ヒンジ部63は、蓋部61の外縁の両端部に一対が設けられている。
【0035】
積層配置部60は、蓋部61が出力バスバー収容部48の周壁45に当接して、出力バスバー収容部48を閉塞する閉塞状態(図4〜図6参照)と、出力バスバー収容部48の周壁45から離れて出力バスバー収容部48を開放する開放状態(図1〜図3参照)との間を、回動可能とされている。
【0036】
積層配置部60には、蓋部61のうち出力バスバー23とは反対側の面において、電圧検知線33の両側に立つ一対の壁部64が設けられ、この一対の壁部64の間は、電圧検知線33を通す配策スペースSとされている(図10参照)。一対の壁部64は、蓋部61の板面に対して略垂直に立ち上がり、その立ち上がり寸法(高さ寸法)は、バスバー収容部43の周壁45の高さ寸法と同等、もしくはそれ以上とされている。
【0037】
一対の壁部64は、図4に示すように、電線収容溝52から蓋部61側へ連なるように設けられている。一対の壁部64は、電線収容溝52から導出した電線を、略直角方向に屈曲して配策する向きに延び、電圧検知線33の配策方向に連続している。一対の壁部64のうち一方の壁部(外壁部64Aと称する)は、蓋部61の外縁に沿って設けられている。外壁部64Aは、電線収容溝52に対して直角方向に直線状に延びている。また、一対の壁部64のうち他方の壁部(内壁部64Bと称する)は、電線収容溝52と同方向に延びた後、外壁部64Aの延び方向と同方向に曲がって延びている。内壁部64Bの大部分は外壁部64Aと略平行をなし、内壁部64Bの中間部分は外壁部64Aに接近する方向に傾斜している。これにより、電圧検知線33の配策スペースSは、電線収容溝52に連なる側が幅広とされ、その反対側(出口側)が幅狭とされている。なお、蓋部61のうち電圧検知線33の屈曲部分に対応する位置には、蓋部61の外縁の一部分を略方形に切り欠いてなる切欠部65が設けられている。
【0038】
積層配置部60には、一対の壁部64に跨って、配策スペースSに配策された電圧検知線33を覆う電線覆い部62が設けられている。一対の壁部64のうち外壁部64Aは、この電線覆い部62と一体に設けられ、電線覆い部62と外壁部64Aとは略直角をなしている。電線覆い部62は、図7に示すように、全体として電圧検知線33の延び方向に長い板状をなし、内壁部64Bに当接する側の縁部が、内壁部64Bに沿う段差形状に形成されている。内壁部64Bは、蓋部61と一体に設けられている。
【0039】
電線覆い部62の長手方向の一端は、第二出力バスバー収容部48Bの周壁45上に位置し、他端は、蓋部61よりも外側に突出している。電線覆い部62は、配策スペースSのうち電線収容溝52と連なる側の端部を除く略全体、言い換えると、電圧検知線33のうち蓋部61上に配置された部分の屈曲部分を除く略全体を覆っている。なお、電線覆い部62のうち蓋部61から外側に突出する側の端部には、電圧検知線33を押える電線押え片66が設けられている(図2および図5参照)。
【0040】
電線覆い部62は、可撓性を有する第二ヒンジ部67を介して蓋部61に一体に連結されている。電線覆い部62は、配策スペースSを閉鎖する閉じ状態(図7〜図10参照)と、配策スペースSを開放する開き状態(図4〜図6参照)との間を回動可能に設けられている。第二ヒンジ部67は、電線覆い部62と一体に設けられた外壁部64Aと、蓋部61の外縁との間を連結している(図5参照)。蓋部61のうち第二ヒンジ部67が設けられた部分(連結部61Aと称する)は、切欠部65よりも第一ヒンジ部63とは反対側に位置している(図1参照)。第二ヒンジ部67は、連結部61Aに一対が設けられている。連結部61Aは、配策スペースSの底壁を構成する。
【0041】
積層配置部60とプロテクタ本体部42とには、蓋部61の開放状態から閉塞状態への回動動作に伴って、互いに係止する第一ロック構造68が備えられている。第一ロック構造68は、複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられ、蓋部61に設けられた第一ロック片68Aと、プロテクタ本体部42に設けられた第一ロック突起68Bとを有して構成される。
【0042】
第一ロック片68Aは、第一ロック突起68Bが嵌合する開口を有し、蓋部61から一面側(閉塞状態における出力バスバー23側)に略垂直に延出し、蓋部61の板面方向に弾性変位可能とされている。第一ロック片68Aは、連結部61Aの両側と、その反対側とに設けられている。連結部61Aの両側の第一ロック片68Aのうち一方は、切欠部65に設けられている。
【0043】
第一ロック突起68Bは、プロテクタ本体部42のうち第一ロック片68Aに対応する位置に設けられている。第一ロック突起68Bのうち切欠部65に設けられた第一ロック片68Aに対応する第一ロック突起68Bは、第一出力バスバー収容部48Aと第二出力バスバー収容部48Bとの間に設けられた開口部55に突出して設けられている。
【0044】
電線覆い部62と蓋部61とには、電線覆い部62の開き状態から閉じ状態への回動動作に伴って、互いに係止する第二ロック構造69が備えられている。第二ロック構造69は、複数箇所(本実施形態では2箇所)に設けられ、電線覆い部62に設けられた第二ロック片69Aと、蓋部61に設けられた第二ロック突起69Bとを有して構成される。
【0045】
第二ロック片69Aは、第二ロック突起69Bが嵌合する開口を有し、電線覆い部62から一面側(閉じ状態における蓋部61側)に略垂直に延出し、電線覆い部62の板面方向に弾性変位可能とされている。第二ロック片69Aは、電線覆い部62の幅広部分と幅狭部分とに一ずつ設けられている。
【0046】
第二ロック突起69Bは、蓋部61に一体に設けられた内壁部64Bのうち第二ロック片69Aに対応する位置に設けられている。第二ロック突起69Bは、内壁部64Bの外側面に突出して設けられている。
【0047】
次に、電圧検知線33をバスバー20の上側に積層配置する作業について説明する。
まず、蓋部61を出力バスバー23の上側に積層して固定する。蓋部61を開放状態にして出力バスバー23を出力バスバー収容部48に収容し(図1参照)、その後、図3の矢印方向に蓋部61を回動して閉塞状態にする。このとき、蓋部61の回動に伴って第一ロック片68Aが第一ロック突起68Bに乗り上がり、蓋部61が閉塞状態になると同時に第一ロック片68Aが第一ロック突起68Bを乗り越えて弾性復帰し、第一ロック構造68がロック状態になる(図6参照)。
【0048】
次に、蓋部61の上面に電圧検知線33を配策する。電線覆い部62を開き状態にして、電線収容溝52から導出された電圧検知線33の束を、直角方向に湾曲させて蓋部61の配策スペースSに配置する(図4参照)。すると、電圧検知線33は、自身の弾性復元力により内壁部64B側に押され、内壁部64Bに沿って配されて位置決めされる。これにより、電圧検知線33は、第二出力バスバー23Bを幅方向に横切って、その上側に積層配置される。
【0049】
次に、電線覆い部62を、図5の矢印方向に回動して閉じ状態にする。このとき、電線覆い部62の回動に伴って第二ロック片69Aが第二ロック突起69Bに乗り上がり、電線覆い部62が閉じ状態になると同時に第二ロック片69Aが第二ロック突起69Bを乗り越えて弾性復帰し、第二ロック構造69がロック状態になる(図9参照)。
こうして、電圧検知線33は、出力バスバー23の上側に積層配置されて固定される。
【0050】
このようにして組み立てられた本実施形態の電池配線モジュール10は、電極端子11を上に向けた状態で並べられた単電池群13の上面側に取り付けられる。すなわち、電池配線モジュール10を単電池群13の上側に載置し、バスバー20の貫通孔24および電圧検知端子30の貫通孔31にボルトの軸部を通してそれぞれの雌ネジ孔16に螺合させることにより、隣り合う正極および負極の電極端子11を接続するとともに電圧検知端子30を所定の電極端子11および電圧検知用の端子15に接続させて、電池モジュールが完成する。
【0051】
上記のように構成された本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の電池配線モジュール10は、正極及び負極の電極端子11を有する単電池12を複数個並べてなる単電池群13に取り付けられる電池配線モジュール10であって、電極端子11に接続されるバスバー20と、単電池群13の状態を検出するための電圧検知線33と、バスバー20を保持する樹脂プロテクタ40と、を有し、樹脂プロテクタ40には、出力バスバー23を覆う絶縁材料からなる蓋部61と、蓋部61のうち出力バスバー23とは反対側の面において、電圧検知線33の両側に立つ一対の壁部64とが設けられ、この一対の壁部64の間が電圧検知線33を通す配策スペースSとされている。
【0052】
これにより、例えば電圧検知線33に固定部材を取り付けることなく、電圧検知線33を一纏めにして蓋部61に位置決めすることができる。したがって、組み立て作業の作業性の悪化を招くことなく、出力バスバー23の一面側に電圧検知線33を重ねて配策することができる。
【0053】
また、一対の壁部64は電圧検知線33の配策方向に連続して延びるものであり、一対の壁部64に跨って、配策スペースSに配策された電圧検知線33を覆う電線覆い部62が配置されている。これにより、電圧検知線33の配策スペースSから外側へのはみ出しを規制することができ、また電圧検知線33の外部との接触を防ぐことができる。
【0054】
また、電線覆い部62は、配策スペースSを閉鎖する閉じ状態と、配策スペースSを開放する開き状態との間を回動可能に蓋部61に一体に設けられている。これにより、電線覆い部62を開き状態にして配策スペースSに電圧検知線33を配策し、電線覆い部62を閉じ状態に回動するだけの簡単な作業で、蓋部61に対する電圧検知線33の固定と、電圧検知線33の保護とを行うことができる。
【0055】
また、蓋部61と電線覆い部62とには、電線覆い部62の開き状態から閉じ状態への回動動作に伴って、互いに係止する第二ロック構造69が備えられている。これにより、電線覆い部62を開き状態から閉じ状態に回動するだけの簡単な作業で、電線覆い部62と蓋部61とをロックすることができる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)上記実施形態では、電極端子11および電圧検知用の端子15には雌ネジ孔16が形成され、バスバー20および電圧検知端子30は、雌ネジ孔16と対になったボルトにより電極端子11または電圧検知用の端子15に押し付け固定されるものであるが、これに限らず、例えば、電極端子および電圧検知用の端子がボルト状をなし、バスバーおよび電圧検知端子は、電極端子または電圧検知用の端子と対になったナットによりそれぞれに押し付け固定されるものとしてもよい。
(2)上記実施形態では、単電池12は、本体部14が扁平な四角い箱型をなす角型電池とされているが、本発明は、どのような型の単電池にも適用することができ、例えば、円柱状に形成された本体部を有する円筒型の単電池にも適用することができる。
(3)上記実施形態では、樹脂プロテクタ40は、複数の連結ユニットを備えているが、これに限らず、例えば、樹脂プロテクタは、すべてのバスバーを保持可能な一の樹脂プレートであってもよい。
(4)上記実施形態では、本発明を、樹脂プロテクタ40の端部に配置された出力バスバー23に、電圧検知線33を積層して配置する場合に適用した例を示したが、これに限らず、本発明は、例えば、樹脂プロテクタの中心部に配置されたバスバーに電圧検知線等の検知電線を積層して配置する場合にも適用することができる。
(5)上記実施形態では、内壁部64Bは蓋部61に一体に設けられているが、これに限らず、例えば、内壁部をプロテクタ本体部に一体に設けるとともに、蓋部にはその内壁部を反対側に突出させるための貫通穴を設け、この貫通穴から内壁部を電圧検知線側に突出させるものとしてもよい。
【0058】
(6)上記実施形態では、一対の壁部64のうち内壁部64Bが蓋部61に一体に設けられ、外壁部64Aが電線覆い部62と一体に設けられているが、これに限らず、一対の壁部の両方を蓋部と一体に設けてもよい。
(7)上記実施形態では、電圧検知線33の両側に一対の壁部64が立設されているが、これに限らず、例えば、電圧検知線が自身の弾性復元力で押しつけられる側のみに壁部(内壁部)を設けるものとしてもよい。
(8)上記実施形態では、積層配置部60は、プロテクタ本体部42と第一ヒンジ部63により連結されているが、これに限らず、積層配置部を、プロテクタ本体部と非連結の別体のものとし、必要なときに別途連結手段を用いてプロテクタ本体部に連結するものとしてもよい。
(9)上記実施形態では、電線覆い部62は、配策スペースSの略全体を覆っているが、これに限らず、例えば、電線覆い部は、配策スペースの一部分のみを覆うように設けられ、またこのような電線覆い部を複数個所に設けるものとしてもよい。
(10)上記実施形態では、壁部64は、電圧検知線33に沿って連続して延びるものとされているが、これに限らず、例えば、壁部は、電圧検知線の側方において複数箇所に分断されたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
S…配策スペース
10…電池配線モジュール
11…電極端子
12…単電池
13…単電池群
20…バスバー
33…電圧検知線(検知電線)
40…樹脂プロテクタ
61…蓋部
62…電線覆い部
64…壁部
69…第二ロック構造(ロック構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、
前記電極端子に接続されるバスバーと、
前記単電池群の状態を検出するための検知電線と、
前記バスバーを保持する樹脂プロテクタと、を有し、
前記樹脂プロテクタには、前記バスバーを覆う絶縁材料からなる蓋部と、前記蓋部のうち前記バスバーとは反対側の面において、前記検知電線の側方に立つ壁部とが設けられ、この壁部により前記検知電線を配策する配策スペースが形成されている電池配線モジュール。
【請求項2】
前記壁部は前記検知電線の両側に一対が設けられ、
前記一対の壁部は前記検知電線の配策方向に連続して延びるものであり、
前記壁部に跨って、前記配策スペースに配策された前記検知電線を覆う電線覆い部が設けられている請求項1に記載の電池配線モジュール。
【請求項3】
前記電線覆い部は、前記配策スペースを閉鎖する閉じ状態と、前記配策スペースを開放する開き状態との間を回動可能に前記蓋部に一体に設けられている請求項2に記載の電池配線モジュール。
【請求項4】
前記電線覆い部と前記壁部とには、前記電線覆い部の前記開き状態から前記閉じ状態への回動動作に伴って、互いに係止するロック構造が備えられている請求項3に記載の電池配線モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−256538(P2012−256538A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129310(P2011−129310)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】