説明

電池電極形成用バインダー及び電極合材

【目的】粉末電極材料ならびに集電体に対する良好な接着力を示し、また電池特性の向上にも寄与しえる非水系電池電極用バインダーを提供する。
【解決手段】
下記式(1)


(式中、m及びnは平均値であり、0.01<n/(m+n)<0.5、かつ0<m+n≦200の関係を満たす正数である。R1は四価の芳香族基、R2は二価の芳香族基、R3はフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を示す)で表される繰り返し単位を構造中に有するフェノール性水酸基含有芳香族ポリイミド樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、及び硬化促進剤(C)を含有する非水系電池電極形成用バインダー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電池、特にリチウムイオン電池において粉末電極材料(主として電極活物質及び必要に応じて加えられる導電性助剤)を電極に安定的に固着させるために用いられ、且つ電池特性の向上にも寄与しえる反応性芳香族ポリイミド樹脂組成物からなるバインダー、その溶液、バインダー溶液と粉末電極材料との混合物からなる電極合材、更に該電極合材を用いて形成される電極構造体及び非水系電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系電池の電極活物質などの粉末電極材料のバインダーとしてはフッ化ビニリデン系重合体が多く用いられている(特許文献1)。しかしながら、フッ化ビニリデン系重合体は粉末電極材料との結着力や集電基体との接着力が比較的弱いため、使用中に活物質などの粉末電極材料の脱落や、これら粉末電極材料を含む電極合剤層の集電基体からの剥離などの現象が見られた。このため非水系電池を長時間使用していると、その放電容量が経時的に低下するという問題があった。
【0003】
上述の問題を解決するためにスルホン化ポリフッ化ビニリデン樹脂を放射線によって架橋する方法(特許文献2)などが提案されている。このような方法は確かに耐溶剤溶解性の向上はもたらすが、架橋反応に手間が掛かり、工業的な使用には適さないという問題があった。また、電池容量のますますの増大に伴い、安全性確保の面からバインダー樹脂にはより高い耐熱性が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−306502号公報
【特許文献2】特開平10−298386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の主たる目的は、耐熱性、耐溶剤性、並びに粉末電極材料及び集電体に対する良好な接着力を有し、かつ電池特性の向上にも寄与し得る、工業的な使用が容易な非水系電池電極形成用バインダー組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、上記バインダー組成物の溶液、バインダー組成物の溶液と粉末電極材料との混合物からなる電極合剤スラリー、該電極合剤スラリーを用いて形成される電極構造体及び非水系電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造のポリマー、エポキシ樹脂及び硬化促進剤からなる組成物を本用途に用いることが極めて有効であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、m及びnは平均値であり、0.01<n/(m+n)<0.5、かつ0<m+n≦200の関係を満たす正数である。R1は四価の芳香族基、R2は二価の芳香族基、R3はフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を示す)で表される繰り返し単位を構造中に有するフェノール性水酸基含有芳香族ポリイミド樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、及び硬化促進剤(C)を含有する非水系電池電極形成用バインダー組成物、
(2)前項(1)に記載のバインダー組成物を有機溶剤に溶解してなる非水系電池電極形成用バインダー組成物溶液、
(3)前項(2)に記載のバインダー組成物溶液と粉末電極材料とを混合してなる電極合材スラリー、
(4)集電体の少なくとも一面に、前項(3)に記載の電極合材スラリーを用いて形成された電極合材層を有する電極構造体、
(5)正極と負極の少なくとも一方が、前項(4)の電極構造体からなる非水系電池、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバインダー組成物は160〜200℃の低温で硬化可能であり、しかも該組成物の硬化物は200℃以上の耐熱性を有すると共に、接着性、耐溶剤溶解性に優れるため非水系電池電極形成用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明のバインダー組成物は、前記式(1)で表されるフェノール性水酸基含有ランダム共重合芳香族ポリイミド樹脂(A)(以下、単に「成分(A)」と記載する)を含有する。
式(1)におけるR1は四価の芳香族基、R2は二価の芳香族基、R3はフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基をそれぞれ表す。尚、本発明において「二価の芳香族基」とは、その構造中に少なくとも一つ以上の芳香族基を有する化合物の芳香環から水素原子を二個除いた構造を意味しており、例えばジフェニルエーテルにおいて酸素を挟んで両側に位置する別々のベンゼン環から、それぞれ一つずつ水素原子を除いた構造も本発明でいう「二価の芳香族基」の範疇に含まれる。四価の芳香族基も同様の考え方で表される構造を意味する。
【0013】
式(1)におけるR1の具体例としては、無水ピロメリット酸、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリン−ビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、1,2,3,4,−ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3a,4,5,9b−テトラヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の四塩基酸二無水物類から二個の酸無水物基を除いた残基が挙げられ、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物の残基が好ましい。
【0014】
式(1)におけるR2の具体例としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン及びm−トリレンジアミン等のフェニレンジアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等のジアミノジフェニルエーテル類;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル及び3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等のジアミノジフェニルチオエーテル類;1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン及び1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等のアミノフェノキシベンゼン類;4,4’−ジアミノベンゾフェノン及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン類;4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキサイド及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン類;ベンチジン、3,3’−ジメチルベンチジン、2,2’−ジメチルベンチジン、3,3’−ジメトキシベンチジン及び2,2’−ジメトキシベンチジン等のベンチジン類;3,3’−ジアミノビフェニル;p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン及びo−キシリレンジアミン等のキシリレンジアミン類並びに4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン類等のジアミン類から二個のアミノ基を除いた残基が挙げられ、ジアミノジフェニルエーテル類、アミノフェノキシベンゼン類、ジアミノベンゾフェノン類が好ましく、アミノフェノキシベンゼン類がより好ましく、中でも1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが特に好ましい。
【0015】
式(1)におけるR3の具体例としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の一分子中に少なくとも二個のアミノ基と少なくとも一個のフェノール性水酸基を有するアミノフェノール類から二個のアミノ基を除いた残基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種又は2種以上混合して用いても良い。
【0016】
式(1)におけるm並びにnは、0.01<n/(m+n)<0.5および0<m+n≦200の関係を満たす平均繰り返し数を表す。
式(1)におけるn/(m+n)の値が0.01以下の場合は、エポキシ樹脂(B)(以下、単に「成分(B)」と記載する)と成分(A)中のフェノール性水酸基との架橋反応が十分に進行せず、硬化物の耐溶剤溶解性や機械強度等が低下する。
式(1)におけるn/(m+n)が0.5以上の場合、バインダー中の極性が高くなり、リチウムイオンがトラップされる可能性があるため好ましくない。また、m+nが200よりも大きい場合は、溶剤溶解性が極端に低下するため、成分(A)の生産性やバインダー組成物溶液としての作業性に問題が生じる。
成分(A)は、前記の酸無水物類、ジアミン類、アミノフェノール類を用いて、WO2007/046405号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
尚、本発明においては、成分(A)を成分(B)の硬化剤として使用する。
【0017】
本発明のバインダー組成物が含有する成分(B)としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に制限はない。具体的にはノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール縮合型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は2種以上を併用することも出来る。
【0018】
本発明のバインダー組成物には、成分(A)以外の他のエポキシ樹脂用硬化剤を併用しても良い。併用することのできる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノールノボラック、トリフェニルメタン及びこれらの変性物、イミダゾール、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらを併用する場合、成分(A)が全硬化剤中に占める割合としては通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上である。
本発明のバインダー組成物中における硬化剤の使用量は、成分(B)中のエポキシ基1当量に対して、成分(A)を含む全硬化剤の活性水素が通常0.7〜1.3当量、好ましくは0.8〜1.2当量となる量である。
【0019】
本発明のバインダー組成物が含有する成分(C)である硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤は成分(B)100質量部に対して0.1〜5.0質量部が用いられる。
【0020】
本発明のバインダー組成物溶液は、本発明のバインダー組成物を各種有機溶剤に溶解して得られる。溶解に用いることのできる有機溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。本発明のバインダー組成物溶液中の有機溶剤の濃度は通常30〜95質量%、好ましくは40〜90質量%である。
【0021】
上記のようにして得られた本発明のバインダー組成物溶液に、粉末電極材料(電極活物質及び必要に応じて加えられる導電助剤、その他の助剤)を分散混合することにより電極合剤スラリーが得られる。
【0022】
本発明の電極合剤は、非水系電池の正極合剤、負極合剤のいずれにも適用可能である。
【0023】
リチウムイオン二次電池の活物質としては、正極の場合は、一般式LiMY2(MはCo、Fe、Mn、Cr、Vなどの遷移金属の少なくとも一種:YはO、Sなどのカルコゲン化合物)で表される複合金属カルコゲン化合物、特にLiNixxCo1−x2(0≦x≦1)をはじめとする複合金属酸化物が好ましい。負極の場合は黒鉛、活性炭、あるいはフェノール樹脂やピッチなどを焼成炭化したものなどの粉末状炭素質材料に加えて、金属酸化物系のGeO、GeO2、SnO、SnO2、PbO、PbO2、硝酸チタニウム、シリコン酸化物(SiO、SiOx、0<x<2)、シリコン、あるいはこれらの複合金属酸化物などが挙げられる。
【0024】
電池における導電助剤は、LiCoO2などの電子伝導性の小さい活物質を使用する場合に電極合剤層の導電性を向上する目的で添加するもので、カーボンブラック、黒鉛微粉末あるいは繊維などの炭素質物質やニッケル、アルミニウムなどの金属微粉末あるいは繊維が使用される。活物質として導電性の大きい物質を用いる場合はこれらの導電剤は使用する必要がない。
【0025】
本発明の電極合剤スラリーは粉末電極材料100質量部と、固形分0.1〜20質量部を含有する本発明のバインダー組成物溶液とを混合して形成することが好ましい。
【0026】
上述のようにして形成された電極合剤スラリーを、例えば鉄、ステンレス鋼、鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属箔あるいは金属網などからなり厚さが5〜20μmとなるような集電基体の少なくとも一面、好ましくは両面に塗布し、例えば50〜170℃で乾燥して、例えば小規模の場合厚さが10〜1000μmの電極合剤層を形成することにより、非水系電池用電極が形成される。
【0027】
二次電池は正極及び負極間に電解液を含浸したポリプロピレン、ポリエチレンなどの高分子物質の微多孔質膜からなるセパレータを配置積層したものを渦巻状に巻いた発電素子が、負極端子を形成する有底の金属ケーシング中に収容された構造を有する。
【0028】
セパレータに含浸される非水電解液としては、例えばリチウム塩などの電解質を非水系溶媒(有機溶媒)に溶解したものを用いることが出来る。
【0029】
ここで電解質としてはLiPF3、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(CF3OSO23、LiN(CF3SO22、LiC(CF3OSO23、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などがある。
【0030】
また電解質の有機溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル及びこれらの混合物などが用いられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
次に本発明を更に実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
合成例1(成分(A)の合成)
撹拌装置、還流管、水分トラップ、温度計をつけた3Lフラスコ中に窒素ガスパージを施し、溶剤としてγ−ブチロラクトン1259.75部、ODPA(3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物 マナック製、分子量310.22)を293.05部、ABPS(3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン 日本化薬製、分子量280.30)を10.80部、APB−N(1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 三井化学製、分子量292.34)を270.41部、触媒としてピリジン14.95部、脱水剤としてトルエンを176.41部仕込み、180℃で3時間トルエンを還流しながらポリイミドの閉環に伴う水を水分トラップ装置に追い出し、その後4時間水、トルエン及びピリジンを水分トラップ装置経由で除きながら攪拌を行い、下記式(2)
【0033】
【化2】

【0034】
で表される繰り返し単位を構造中に有する成分(A)30質量%を含む樹脂溶液1800部を得た。また、得られた成分(A)のゲルパーミエイションクロマトグラフィーの測定結果を元にポリスチレン換算で求めた数平均分子量は38000、重量平均分子量は108000であり、合成反応に用いた各成分のモル比から算出した式(2)中のmの値は96であり、nの値は4であった。
【0035】
実施例1
得られた成分(A)を30質量%含む樹脂溶液100部に対して、エポキシ樹脂としてNC−3000(日本化薬株式会社製、エポキシ当量275g/eq.)を1.65部、硬化促進剤として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)を2部加えることにより本発明の非水系電池電極形成用バインダー組成物溶液を得た。
【0036】
得られたバインダー組成物溶液をPETフィルム上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、130℃で20分間の乾燥条件で溶剤を除去してPETフィルムからはがした後、170℃で1時間硬化せしめ、試験片を作成した。得られた試験片のガラス転移温度をDMA(動的粘弾性測定装置)を用いて測定したところ236.0℃であった。
【0037】
得られたバインダー組成物溶液を100部用いて負極用電極合剤を作成した。
負極用活物質としては呉羽化学株式会社製のカーボトロンPを用いて、活物質100質量部に対してバインダー樹脂の固形分が10質量部になるようにバインダー組成物溶液を混合して電極合材スラリーを調製した。この電極合剤スラリーを厚さ10μmの銅箔の上に塗布し170℃で1時間硬化せしめた。銅箔上に形成された電極合材層の厚みは100〜120μmの範囲であった。
【0038】
この電極構造体を用いて、電極合材層からの銅箔の剥離強度をJIS K6854に準拠して180°剥離試験により測定した。剥離強度は1.72N/mmと十分高い値を示した。
【0039】
この電極構造体を90℃のプロピレンカーボネート溶媒に144時間浸漬したが、外観上の異常は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、m及びnは平均値であり、0.01<n/(m+n)<0.5、かつ0<m+n≦200の関係を満たす正数である。R1は四価の芳香族基、R2は二価の芳香族基、R3はフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を示す)で表される繰り返し単位を構造中に有するフェノール性水酸基含有芳香族ポリイミド樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、及び硬化促進剤(C)を含有する非水系電池電極形成用バインダー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のバインダー組成物を有機溶剤に溶解してなる非水系電池電極形成用バインダー組成物溶液。
【請求項3】
請求項2に記載のバインダー組成物溶液と粉末電極材料とを混合してなる電極合材スラリー。
【請求項4】
集電体の少なくとも一面に、請求項3に記載の電極合材スラリーを用いて形成された電極合材層を有する電極構造体。
【請求項5】
正極と負極の少なくとも一方が、請求項4の電極構造体からなる非水系電池。

【公開番号】特開2011−124175(P2011−124175A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282858(P2009−282858)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】