説明

電池

【課題】サイクル特性を向上させることができる電池を提供する。
【解決手段】フィルム状の外装部材31の内部に、正極と負極とがセパレータおよび電解質層を介して対向配置された電池素子20が収納されている。電解質層は、電解液と高分子化合物を含み、いわゆるゲル状になっている。電池素子20と、外装部材31との間に、電解液が存在している。これにより、電解質層における電解液が充放電に伴い損失しても、電解液を補填することができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液と高分子化合物とを含む電解質を用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子機器の電源として、産業上電池が重要な位置を占めている。これらの機器では、小型軽量化が要求され、電池についても軽量化、あるいは機器内の収納スペースを効率的に利用できる形状等にすることが求められている。このような要求に応える電池としては、例えば、エネルギー密度あるいは出力密度の大きなリチウム電池が最も適格である。
【0003】
中でも、薄型大面積のシート型電池、薄型小面積のカード型電池あるいは形状自由度の高い電池などが求められているが、従来から外装部材に用いられている金属製の缶を用いると、例えば、液状の電解質が液漏れを起こすので、このような電池を作製することは困難であった。
【0004】
そこで、液状の電解質に接着作用を有する物質を添加したり、あるいは液状の電解質に高分子化合物を混合してゲル化したゲル電解質を用いることが提案されてきた。これにより、電極と電解質との間に密着力が生じ、例えば、フィルム状の外装部材を用いても、電解質の液漏れを防止することができるので、電池を薄く、軽くすることができ、しかも安価であるので、実用化されてきた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2000−243447号公報
【特許文献2】特開2001−167797号公報
【特許文献3】特許第2853096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン二次電池は電池電圧が高い。これは、正極は厳しい酸化雰囲気であり、負極は厳しい還元雰囲気であることを意味する。このため、電解質には十分に耐電圧性の高い材料が用いられていても、僅かながら反応してしまう。また、電解質は、水などの不純物が含まれていると分解が促進されてしまう。このため、充放電の繰り返しに伴い徐々に電解質が減少し、サイクル特性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
この問題を解決するためには、電解質を過剰に投入する方法がある。例えば、金属缶外装の内部に液状の電解質である電解液を用いた電池では、上下の巻端部分に電解液を貯めておくことが可能である。
【0007】
一方、フィルム状の外装部材の内部にゲル状電解質を用いた電池では、電極間に介在するゲル状電解質の厚みを厚くすることが考えられる。しかし、この場合には、電池の厚みが厚くなってしまい、これを避けるには活物質の充填量を減らすことが必要となり、電池容量が低下してしまい、致命的な商品価値の損失を伴ってしまうという問題があった。よって、容量を低下させずに、サイクル特性をより向上させることができる電池の開発が切望されていた。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性を向上させることができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電池は、正極と負極とが電解質層およびセパレータを介して対向配置された電池素子を備えたものであって、電解質層は、電解液と高分子化合物を含み、電池素子は、フィルム状の外装部材の内部に収納されており、電池素子と、外装部材との間に、電解液が存在しているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電池によれば、電池素子と外装部材との間に電解液を存在させるようにしたので、充放電に伴い損失した電解質層における電解液を補填することができ、例えば、電池の厚みを厚くしなくても、サイクル特性を向上させることができる。
【0011】
また、電池素子と外装部材との間に存在している電解液の割合を、電池全体に対して1.0質量%以下とするようにしれば、漏液を防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態に係る二次電池の一構成例を分解して表すものである。この二次電池は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた電池素子20をフィルム状の外装部材31の内部に収納した構成を有している。
【0014】
正極リード11および負極リード12は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材31の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。なお、正極リード11と負極リード12とは、同一方向に導出されていることが好ましいが、短絡などが起こらず、電池性能が低下しなければ、いずれの方向に導出されていてもよい。
【0015】
正極リード11は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード12は、例えばニッケル(Ni)あるいは銅(Cu)などの金属材料により構成されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、箔状であってもよいし、リボン状であってもよいし、また、網目状であってもよい。
【0016】
外装部材31は、例えば、アルミニウム箔を一対の樹脂フィルムで挟み込んだ防湿性および絶縁性の多層フィルムから構成されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0017】
外装部材31と正極リード11および負極リード12との間には、正極リード11および負極リード12と、外装部材31との密着性を向上させると共に、正極リード11および負極リード12と、外装部材31のバリなどとの接触によるショートを防止するための密着フィルム32が挿入されている。密着フィルム32は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リード11および負極リード12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0018】
図2は、図1に示した電池素子20のII−II線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体20は、一対の正極21と負極22とをセパレータ23および電解質層24を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
【0019】
正極21は、例えば、正極集電体21Aと、この正極集電体21Aの両面に設けられた正極活物質層21Bとを有している。正極集電体21Aには、例えば長手方向における一方の端部に正極活物質層21Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極リード11が取り付けられている。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されている。
【0020】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されている。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウムと遷移金属とを含むリチウム複合酸化物あるいはリチウムリン酸化合物が好ましい。これらは高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、高容量化を図ることができるからである。
【0021】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属として、コバルト(Co),ニッケル),マンガン(Mn),鉄(Fe),バナジウム(V)、チタン(Ti)、クロム(Cr)および銅からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましく、特に、コバルト,ニッケル)およびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種を含むものがより好ましい。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,LiNi0.5 Co0.5 2 ,LiNi0.8 Co0.2 2 ,LiMn2 4 あるいはLiNi1-x-y Cox Mny 2 (0<x<1,0<y<1)などが挙げられる。また、リチウムリン酸化合物としては、例えばLiFePO4 が挙げられる。
【0022】
正極活物質層21Bは、また、必要に応じて導電材および結着材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。また、結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン,ポリエチレンあるいはポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、1種または2種以上が混合して用いられる。
【0023】
負極22は、例えば、正極21と同様に、負極集電体22Aと、この負極集電体22Aの両面に設けられた負極活物質層22Bとを有している。負極集電体22Aには、例えば長手方向における一方の端部に負極活物質層22Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に負極リード12が取り付けられている。負極集電体22Aは、例えば、銅(Cu)などの金属材料により構成されている。
【0024】
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンあるいはスチレンブタジエンゴムなどの結着材を含んでいてもよい。
【0025】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛類,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などの炭素材料が挙げられる。黒鉛類としては、メソフェーズカーボンマイクロビーズ,カーボンファイバーあるいはコークスなどの人造黒鉛、または天然黒鉛など挙げられる。
【0026】
リチウムなどを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0027】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えばリチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム,ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0028】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0029】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモン(Sb),およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0030】
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0031】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどの酸化物、あるいはLiN3 などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0032】
セパレータ23は、例えば、ポリオレフィン,ポリテトラフルオロエチレンあるいはポリエステルなどの不織布または多孔質フィルムが挙げられ、中でも、ポリエチレンあるいはポリプロピレンの多孔質フィルムが好ましい。ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるからである。
【0033】
電解質層24は、例えば、電解液と、この電解液を保持する高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となった電解質により構成されている。電解液は、例えば、非水溶媒などの溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含有している。
【0034】
溶媒としては、炭酸エチレンを含んでいることが好ましく、その含有量は、15質量%以上であることが好ましい。負極22の表面に安定な被膜を形成することができ、電解液の分解反応を抑制することができるからである。また、誘電率も高く、電解質塩の溶解、解離を促進することができるからである。但し、融点が38℃と高いので、大量に用いると低温特性が低下してしまう。
【0035】
溶媒としては、また、炭酸ジメチル,炭酸エチルメチル,炭酸ジエチル,炭酸エチルプロピルあるいは炭酸ジブチルなどの鎖式炭酸エステルも好ましく挙げられる。粘度が低く、イオンの移動を高くすることができ、電池特性を向上させることができるからである。また、融点が低く、低温特性を向上させることもできるからである。
【0036】
更に、炭酸プロピレンも好ましい。誘電率が高く電解質塩の解離を促進することができ、また、融点は炭酸エチレンよりも低く、炭酸エチレンよりも低温特性を低下させることはないからである。但し、黒鉛を用いた負極22とは、反応性が高くなり、電極反応を阻害する被膜を形成してしまうので、黒鉛表面を加工したり、黒鉛化度が低い低結晶性炭素で被覆して反応性を低減させるようにすることが好ましく、また炭酸エチレンあるいは炭酸ビニレンと併用することが好ましい。
【0037】
溶媒としては、これらの他にも、ガンマブチロラクトンなどのラクトン類を用いることもできる。溶媒には、いずれか1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0038】
電解質塩としては、例えば、LiPF6 ,LiBF4 ,LiN(CF3 SO2 2 ,LiN(C2 5 SO2 2 あるいはLiClO4 などのリチウム塩が挙げられる。中でも、LiPF6 は、電気化学的安定性,熱安定性および解離度の観点から好ましい。電解質塩には、いずれか1種を単独で用いてよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0039】
電解質塩の濃度は、溶媒に溶解することができる濃度であればよいが、リチウムイオンの濃度が溶媒に対して0.4mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。
【0040】
高分子化合物としては、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が好ましい。炭酸プロピレンなどの溶媒に対する相溶性が高いからである。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの割合は、3質量%以上7.5質量%以下の範囲内であることが好ましく、6.9質量%以下であることがより好ましい。少ないと、溶媒に対する相溶性が低下してしまい、多いと、溶媒に対する相溶性が高くなりすぎて、安定なゲルを形成し難くなるからである。また、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体の分子量は、数平均分子量が50万以上70万以下の範囲内であるか、あるいは重量平均分子量が21万以上31万以下の範囲内であり、固有粘度での分子量表現では1.7以上2.1以下の範囲内であることが好ましい。
【0041】
高分子化合物としては、また、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとモノクロロトリフルオロエチレンとの共重合体も好ましい。炭酸プロピレン,炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルなどの溶媒との相溶性が高いからである。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、あるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとモノクロロトリフルオロエチレンとの共重合体には、更に他のモノマーを共重合させてもよい。
【0042】
高分子化合物としては、これらの他にも、ポリアクリロニトリル,ポリオキシエチレン,ポリメタクリル酸メチル,あるいはフッ化ビニリデンとモノクロロトリフルオロエチレンとの共重合体などが挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0043】
この二次電池では、電池素子20と外装部材31との間に、電解液が存在し、遊離している。これにより、充放電に伴い損失した電解質層24における電解液を補填することができるようになっており、例えば、電解質層24の厚みを厚くすることにより電池の厚みを厚くしなくても、サイクル特性を向上させることができるようになっている。
【0044】
なお、例えば、負極22の端部にリチウムが析出してしまうのを防止する目的で、あるいは正極21と負極22との接触による短絡を防止する目的で、正極21,負極22およびセパレータ23の幅は、正極21<負極22<セパレータ23の順に広く設計されている。このため、正極21,負極22およびセパレータ23の幅方向の端部と、外装部材31との間には空間部分が存在し、この部分に遊離した電解液が存在することが可能である。また、電池素子20の外周面と、外装部材31との内側との間に、遊離した電解液が液膜として存在することも可能である。これにより、電池の厚みを厚くしなくてもよくなっている。
【0045】
電池素子20と外装部材31との間に存在している電解液の割合は、電池全体に対して1.0質量%以下であることが好ましい。多すぎると漏液してしまう場合もあるからである。なお、ここでいう電池は、例えば、正極リード11および負極リード12が取り付けられた電池素子20をフィルム状の外装部材31の内部に収納したものであり、密着フィルム32を含むものとし、保護回路などを含まないものをいう。
【0046】
なお、この二次電池の完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)は4.20V以下でもよいが、4.20Vよりも高く4.25V以上6.00V以下の範囲内になるように設計されていてもよい。その場合、電池電圧を4.20V以下とする場合よりも、同じ正極活物質でも単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。
【0047】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0048】
図3,図4および図5は、本実施の形態に係る二次電池の製造工程を表すものである。まず、正極活物質と、必要に応じて導電材と結着材とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、図3(A)に示したように、ドクターブレード法などによりこの正極合剤スラリーを正極集電体21Aの両面あるいは片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。続いて、例えば、正極集電体21Aに正極リード11を、例えば超音波溶接あるいはスポット溶接により接合する。そののち、電解液と、高分子化合物と、必要に応じて希釈溶剤とを含む前駆溶液を用意し、正極活物質層21Bの上、すなわち正極21の両面あるいは片面に塗布し、冷却または希釈溶剤を揮発させて、電解質層24を形成する。
【0049】
また、例えば、負極活物質と結着材とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドン,メチルエチルケトンあるいは水などの溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次いで、図3(B)に示したように、ドクターブレード法などによりこの負極合剤スラリーを負極集電体22Aの両面あるいは片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極集電体22Aに負極リード12を、例えば超音波溶接あるいはスポット溶接により接合すると共に、負極活物質層22Bの上、すなわち負極22の両面あるいは片面に、正極21と同様にして電解質層24を形成する。なお、このように塗布により形成された電解質層24は、セパレータ23との界面を良好に接着でき、また均一化することによりリチウム金属の析出によるサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【0050】
続いて、電解質層24が形成された正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して巻回電極体20を形成する。次いで、図4に示したように、外装部材31に電池素子20を挟み込み、外装部材31の一辺を除く外周縁部を熱融着する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材31との間には密着フィルム32を挿入する。
【0051】
次いで、図5に示したように、電子素子20と外装部材31との間に電解液を注入したのち、外装部材31の開口部を減圧下で熱融着する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0052】
また、電池素子20を次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極21および負極22を作製し、正極21および負極22に正極リード11および負極リード12を取り付けたのち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して、巻回体を形成する。次いで、この巻回体を、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤あるいは重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物に浸し、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層24を形成する。これにより、電池素子20が形成される。
【0053】
更に、電池素子20を次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極21および負極22を作製し、正極21および負極22に正極リード11および負極リード12を取り付ける。続いて、正極21,負極22あるいはセパレータ23の表面に、溶媒と高分子化合物とを用いてゲルを作製したのち、溶媒を抽出し、高分子化合物を乾燥してミクロスポンジを作製する。次いで、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して、巻回体を形成する。次いで、この巻回体を電解液に浸してミクロスポンジの内部に電解液を含浸させたのち、熱を加えてミクロスポンジと電解液とを溶融することにより、ゲル状の電解質層24を形成する。これにより、電池素子20が形成される。
【0054】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質層24を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解質層24を介して正極21に吸蔵される。ここでは、電池素子20と外装部材31との間に電解液が存在しているので、充放電に伴い電解質層24における電解液が損失しても、電解液が補填される。
【0055】
このように本実施の形態に係る二次電池によれば、電池素子20と外装部材31との間に電解液を存在させるようにしたので、充放電に伴い損失した電解質層24における電解液を補填することができ、例えば、電池の厚みを厚くしなくても、サイクル特性を向上させることができる。
【0056】
また、電池素子20と外装部材23との間に存在している電解液の割合を、電池全体に対して1.0質量%以下とするようにしれば、漏液を防止することもできる。
【実施例】
【0057】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0058】
[二次電池の作製]
(実施例1−1〜1−9)
まず、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )92質量%と、導電材として粉状黒鉛5質量%と、結着材として粉状ポリフッ化ビニリデン3質量%とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、アルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布し、100℃で24時間減圧乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成した。次いで、正極活物質層21Bが形成された正極集電体21Aを50mm×300mmの帯状に切り出し、正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aにアルミニウムリボンよりなる正極リード11を取り付けた。
【0059】
また、負極活物質として人造黒鉛91質量%と、結着材として粉状ポリフッ化ビニリデン9質量%とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し、120℃で24時間乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成した。次いで、負極活物質層22Bが形成された負極集電体22Aを52mm×320mmの帯状に切り出し、負極22を作製した。その際、正極合剤と負極合剤との塗布量を調整して、完全充電時における開回路電圧を4.20Vとなるようにした。そののち、負極集電体22Aにニッケルリボンよりなる負極リード12を取り付けた。
【0060】
続いて、炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを等質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解して電解液を作製した。この電解液と、高分子化合物としてフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体と、希釈溶剤としての炭酸ジメチルとを、電解液:高分子化合物:希釈溶剤=6:1:12の質量比になるように混合し、溶解させゾル状の前駆溶液を作製した。共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの割合は、6.9質量%とした。
【0061】
得られた前駆溶液を正極21および負極22のそれぞれに塗布し、80℃で2分間加熱することにより希釈溶剤を揮発させてゲル状の電解質層24を形成した。
【0062】
そののち、電解質層24をそれぞれ形成した正極21と負極22とを、幅54mm,厚み10μm,空孔率33%の多孔質ポリエチレンフィルムからなるセパレータ23を介して積層し、巻回して電池素子20を作製した。
【0063】
得られた電池素子20を、アルミニウム箔が一対の樹脂フィルムで挟み込まれた多層フィルムよりなる外装部材31に挟み込み、外装部材31の一辺を除く外周縁部を熱融着した。外装部材31には、厚み50μmのアルミニウム箔を、厚み40μmのポリプロピレンおよび厚み40μmのナイロンにより挟み込んだアルミラミネートフィルムを用い、電池素子20と、ポリプロピレン側とが対向するようにした。
【0064】
そののち、外装部材31の開口部から電子素子20と外装部材31との間に電解液を注入したのち、外装部材31の開口部を減圧下で熱融着することにより、図1および図2に示した二次電池を作製した。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材31との間には樹脂片よりなる密着フィルム32を挿入した。また、注入する電解液は、実施例1−1〜1−9では、炭酸エチルメチル(EMC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、炭酸エチルメチル:炭酸ジエチル=2:1の体積比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を2.0mol/kgとなるように溶解したものを用い、注入量を表1に示したように50mg〜300mgとした。更に、電池の質量は20gとした。なお、実施例1−1の二次電池の幅は35mm,最大高さは59mm、厚みは4.0mmであった。
【0065】
(実施例1−10,1−11)
電子素子20と外装部材31との間に注入する電解液を、炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)とを等体積比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解したもとし、注入量を200mgまたは2000mgとしたことを除き、他は実施例1−1〜1−9と同様にして二次電池を作製した。電池の質量は20gとした。
【0066】
(実施例1−12,1−13)
正極合剤スラリーを塗布する厚みを10%薄くし、完全充電時における開回路電圧を4.40Vとなるようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−9と同様にして二次電池を作製した。電子素子20と外装部材31との間に注入する電解液は、実施例1−12では、炭酸エチルメチルと炭酸ジエチルとを、炭酸エチルメチル:炭酸ジエチル=2:1の体積比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を2.0mol/kgとなるように溶解したものとし、注入量は200mgとした。また、実施例1−13では、炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを等体積比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解したもとし、注入量は200mgとした。電池の質量は20gとした。
【0067】
(実施例1−14〜1−19)
厚みなどの電池形状を変えたことを除き、他は実施例1−1〜1−9と同様にして二次電池を作製した。電子素子20と外装部材31との間に注入する電解液の種類は、実施例1−1〜1−9と同様にし、注入量は、表1に示したように100mg〜6000mgとした。
【0068】
(比較例1−1)
電子素子20と外装部材31との間に電解液を注入しなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−11と同様にして二次電池を作製した。
【0069】
(比較例1−2)
電子素子20と外装部材31との間に電解液を注入しなかったことを除き、他は実施例1−14〜1−19と同様にして二次電池を作製した。
【0070】
[二次電池の評価]
作製した実施例1−1〜1−19および比較例1−1,1−2の二次電池について、外装部材31を切り開き、外装部材31の内部および電池素子20の外部をペーパータオルで拭き取ったのち、外装部材31の内部および電池素子20の質量を測り、切り開く前の電池容量からの減量分を求めることにより、電池素子20と外装部材31との間に存在し遊離している電解液の量を求めた。電池に対する遊離している電解液の比率を求めた。結果を表1に示す。
【0071】
また、作製した実施例1−1〜1−19および比較例1−1,1−2の二次電池について、次のようにして、サイクル特性,低温特性および漏液試験を行った。
【0072】
(サイクル特性)
まず、23℃の環境下において、表1に示した上限電圧、電流値1Cの条件で、充電時間の総計が2.5時間に達するまで定電流定電圧充電を行い、続いて、23℃の環境下において、電流値1C、終止電圧3Vの条件で定電流放電を行った。サイクル特性は、この充放電を500サイクル行い、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の維持率、すなわち、(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)から求めた。結果を表1に示す。
【0073】
(低温特性)
まず、23℃の環境下において、表1に示した上限電圧、電流値1Cの条件で、充電時間の総計が2.5時間に達するまで定電流定電圧充電を行い、続いて、23℃の環境下において、電流値0.5C、終止電圧3Vの条件で定電流放電を行い、23℃における放電容量を求めた。続いて、同様の条件で定電流定電圧充電を行ったのち、−20℃の環境下において、電流値0.5C、終止電圧3Vの条件で定電流放電を行い、−20℃における放電容量を求めた。低温特性は、23℃における放電容量に対する−20℃における放電容量の割合、すなわち、(−20℃における放電容量/23℃における放電容量)×100(%)から求めた。結果を表1に示す。
【0074】
(漏液試験1)
電池に対して、直径3cmの中空ではない円筒型のパンチを100kg/cm2 の圧力で押し当て、封止部分が壊れて漏液するかどうかを調べた。結果を表1に示す。なお、表1では、漏液しなかったものを○として示し、漏液したものを×として示した。
【0075】
(漏液試験2)
電池に対して、直径0.2mmの針穴をあけ、100kg/cm2 の圧力でプレスし、漏液するかどうかを調べた。結果を表1に示す。なお、表1では、漏液しなかったものを○として示し、漏液したものを×として示した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示したように、電池素子20と外装部材31との間に電解液が存在し、遊離している実施例1−1〜1−11または実施例1−14〜1−19によれば、電池素子20と外装部材31との間に電解液を注入していない比較例1−1または比較例1−2よりも、それぞれサイクル特性が向上した。また、充電上限電圧を高くして実施例1−12,1−13においても、同様に優れたサイクル特性が得られた。
【0078】
更に、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの鎖式炭酸エステルを注入した実施例1−3,1−8,1−12によれば、これらを注入していない実施例1−10,1−11,1−13よりも、低温特性が向上した。
【0079】
加えて、電池素子20と外装部材23との間に存在している電解液の割合を、電池全体に対して1.0質量%以下とした実施例1−1〜1−7,1−10,1−12〜1−16によれば、漏液がなかった。
【0080】
すなわち、電池素子20と外装部材31との間に電解液を存在させるようにすれば、サイクル特性を向上させることができ、電池素子20と外装部材23との間に存在している電解液の割合を、電池全体に対して1.0質量%以下とするようにすれば、漏液を防止することもできることが分かった。
【0081】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、正極と負極とを電解質層およびセパレータを介して1層ずつ積層した、あるいは2以上の正極と負極とを電解質層およびセパレータを介して交互に積層した積層構造を有する二次電池、または、正極と負極とを積層し、つづら折りにした構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、薄型あるいは大型などの種々の大きさにしてもよい。
【0082】
更に、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。また、負極活物質としてリチウム金属あるいはリチウム合金を用いてもよく、その場合には、負極22は、例えば、負極集電体21A上にリチウム金属粉末を結着材を用いて塗布したものであってもよいし、圧延したリチウム金属板をそのまま、あるいは銅箔などの張り付けたものであってもよい。加えて、二次電池に限らず一次電池にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明一実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1に示した電池素子のII−II線に沿った構成を表す断面図である。
【図3】図1,2に示した二次電池の製造工程を表した斜視図である。
【図4】図3に続く製造工程を表した斜視図である。
【図5】図4に続く製造工程を表した斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
11…正極リード、12…負極リード、20…電池素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…電解質層、25…保護テープ、31…外装部材、32…密着フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とが電解質層およびセパレータを介して対向配置された電池素子を備えた電池であって、
前記電解質層は、電解液と高分子化合物を含み、
前記電池素子は、フィルム状の外装部材の内部に収納されており、
前記電池素子と、前記外装部材との間に、電解液が存在している
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記電池素子と前記外装部材との間に存在している電解液の割合は、1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記セパレータは、ポリオレフィンの多孔質フィルムからなることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン,ポリアクリロニトリル,ポリオキシエチレン,ポリメタクリル酸メチル,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,フッ化ビニリデンとモノクロロトリフルオロエチレンとの共重合体,およびフッ化ビニリデンとモノクロロトリフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項5】
前記高分子化合物は、ヘキサフルオロプロピレンを3質量%以上7.5質量%以下の割合で共重合させたフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、およびこの共重合体に他のモノマーを共重合させた化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項6】
前記電解液は、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ジメチル,炭酸エチルメチル,炭酸ジエチル,炭酸エチルプロピルおよび炭酸ジブチルからなる群のうちの少なくとも1種の溶媒を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項7】
前記電解液は、LiPF6 ,LiBF4 ,LiN(CF3 SO2 2 およびLiN(C2 5 SO2 2 からなる群のうちの少なくとも1種の電解質塩とを含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項8】
前記負極は、炭素材料を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項9】
前記正極は、リチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウムと遷移金属とを含むリチウム遷移金属酸化物を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−258066(P2007−258066A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82875(P2006−82875)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】