説明

電波類別探知装置

【課題】個々の電波諸元では捉えることの難しい電波を識別可能にする。
【解決手段】偏波の異なる複数の素子で構成された空中線で受信された複数の電波送信源からの受信信号を、それぞれデータ番号、受信時刻および各種諸元が付与された離散データに変換するA/D変換手段3と、変換された離散データを信号データリストにして一時保存する一次記録手段4と、信号データリストから各電波諸元に基づいて信号データを抽出し、電波諸元毎の信号データグループを作成する諸元検出手段5と、異なる電波諸元間の信号データグループで構成データを比較し、構成データの合致度に基づいて特定の電波送信源による信号データグループを算出する相関処理手段6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の電波送信源から送信された電波から、特定の送信源からの信号を識別する電波類別探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波探知装置として、他の電波送信源から放射された電波を受信してその電波の送信元を特定するものがある。しかし、電波送信源が多数存在している場合、受信電波も多数混在しており、混信した受信信号の中から送信源を特定することは容易ではない。このため、例えば特許文献1に記載の電波探知装置では、複数の送信源からのパルス列からなるレーダ波を受信し、この受信されたパルス列から各パルス列が有する送信源固有のパルス列特性(機器毎に起因する位相特性、出力レベル特性)に基づいて所定のパルス列を抽出し、この抽出されたパルス列のパルス繰り返し周波数(PRF)を計測するようにしており、これにより、混信時においても送信源を特定する正確なPRFが得られるようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−292536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一周波数帯域内に多数のレーダ等電波発信源に由来する信号が存在する場合、分析対象となる信号の類別が必要である。例えば、信号強度に注目して電波の類別を行おうとすると、対象の信号強度が他に比較して高く、かつ信号強度の時間的変化が小さい場合でしか有効でない。同様に、他の電波諸元により電波を類別しようとする上記の従来技術においても、注目する各電波諸元を安定的に観測することができなければ、電波発信源の識別は難しくなる。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、それぞれの電波諸元では捉えることの難しい電波を識別可能にする電波類別探知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電波類別探知装置は、偏波の異なる複数の素子で構成された空中線で受信された複数の電波送信源からの受信信号を、それぞれデータ番号、受信時刻および各種諸元が付与された離散データに変換するA/D変換手段と、A/D変換手段で変換された離散データを信号データリストにして一時保存する一次記録手段と、一次記録手段の信号データリストから各電波諸元に基づいて信号データを抽出し、電波諸元毎のデータグループを作成する諸元検出手段と、諸元検出手段で作成された異なる電波諸元間のデータグループで構成データを比較し、構成データの合致度に基づいて特定の電波送信源による信号データグループを算出する相関処理手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、各種電波諸元により受信信号を類別して信号データグループを構成し、異なる電波諸元間で信号データグループの構成データを比較することで、多種の電波諸元を以って特徴付けられる電波を識別するようにしたので、単一諸元だけでは捉えることの難しい、複数の電波送信源からの電波から特定の送信源による信号データグループを決定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電波類別探知装置の機能構成を示すブロック図である。
複数の電波送信源20から送信された電波は、偏波の異なる複数の素子で構成された各空中線1で受信される。受信された各電波は、それぞれ受信部2で検波、増幅された後、A/D変換部3において、データ番号、受信時刻および各種電波諸元(信号強度、偏波、到来方位、周波数等)を付与された離散データに変換され、一次記録部4に保存される。一次記録部4から逐次読み出された信号データは諸元検出部5へ出力される。諸元検出部5では、各諸元に着目して信号データをグループ分けする。相関処理部6は、諸元間の各データグループを構成する信号データを比較し、特定の送信源によると判定できる信号データグループを決定する。
【0009】
次に、詳細動作について説明する。
図2は受信部2に入力される受信信号である。この入力段階における受信信号には複数の電波送信源20からの各種電波が混在している。受信部2では、受信信号の各周波数帯に亘って検波、増幅しA/D変換部3に与える。A/D変換部3では、アナログの受信信号をデジタル化し、それぞれがデータ番号、受信時刻および、信号強度、偏波、到来方位、周波数等の各種電波諸元を付与した離散データに変換する。図3に示すように、各離散データ7には固有の通し番号が付与され、一次記録部4へ出力される。一次記録部4では、離散データを図4に示すような構成の信号データリストにして一時保存する。
【0010】
諸元検出部5では、一次記録部4の信号データリストから各電波諸元に基づいて信号データを抽出し、電波諸元毎の信号データグループを作成する。例えば、信号データのうちで周波数に注目する場合、近似値と見なされる範囲を中心周波数の上下0.0005MHzまでとすれば、図4の信号データリストの中では、例えばデータ番号1、2、l、m、nが同じ信号データグループと見なされる。同様にして、周波数が合致する、近似値を取る信号データをグループ化し、周波数における信号データグループを作成していく。また、到来方位、偏波等の他の電波諸元についても同様に、その値の合致度によって信号データをグループ化する。作成された信号データグループは、図5に例示されるように、電波諸元(到来方位、偏波、…)名毎に諸元値が合致、近似する信号データ(データ番号)のまとまりを単位として構成されている。諸元値のまとまりが複数ある場合は、信号データグループは電波諸元名に対して複数存在することになる。
【0011】
次に、相関処理部6では、諸元検出部5で作成された異なる電波諸元間の信号データグループで構成データを比較し、構成データの合致度に基づいて特定の送信源による信号データグループを算出する。ここでは、例えば図6に示すように、到来方位に基づく信号データグループ群と周波数に基づく信号データグループ群とで構成データを比較する。図6の場合、到来方位に基づく信号データグループDIIと周波数に基づく信号データグループFIIIが、グループを構成している信号データ同士(データ番号)で合致度が高いと考えられる。このことから、グループDIIの方位とグループFIIIの周波数の2種の特性を併せ持つ信号の存在が推測できる。
【0012】
ここで、諸元検出部5で電波諸元毎の信号データグループを作成するに当たって次のような処理を行ってもよい。
図7に、横軸に周波数、縦軸に時間を取って信号データをプロットした信号分布を示す。次に、図7の信号分布に、例えば到来方位の信号データグループのデータを重ね合わせて比較する。この例を図8に示すが、「到来方位」に基づいた信号データグループDXXの信号データを重ね合わせた場合(符号9)、周波数の時間変化の周期性(符号8)が現れたとすれば、周期性(符号8)という特性を持った信号データグループFXXXを、電波諸元「周波数」のカテゴリに追加するようにしてもよい。
実際には、電波信号は2つのみならず多種の電波諸元を有している。より多くの電波諸元に渡って、信号データグループを構成する信号データの合致度が高く、または上述したように、ある電波諸元において他の諸元を重ね合わせると周期性、規則性等の特性が認められる場合は、これらの特性を持った電波を送信する目標の存在が高いと言える。
【0013】
図9は、多種の電波諸元による信号データグループの絞込み、信号の類識別の概念を図示したものである。ここに示されるように、この発明によれば、各電波諸元からなる空間内に、ある特性を持った信号が存在する範囲10を検出できることになる。
【0014】
以上のように、この実施の形態1によれば、複数の電波送信源からの受信信号を、それぞれデータ番号、受信時刻および各種諸元が付与された離散データに変換し、変換された信号の離散データから各電波諸元に基づいて信号データを抽出し、電波諸元毎の信号データグループを作成し、作成された異なる電波諸元間の信号データグループで構成データを比較し、構成データの合致度に基づいて特定の送信源による信号データグループを算出するようにしている。したがって、単一諸元だけでは捉えることの難しい、複数の電波送信源からの電波から特定の送信源による信号データグループを決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1による電波類別探知装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】同実施の形態1に係る受信部の入力信号の波形を示す説明図である。
【図3】同実施の形態1に係るA/D変換部で変換された離散データの例を示す説明図である。
【図4】同実施の形態1に係る一次記録部で保持される信号データリストの例を示す説明図である。
【図5】同実施の形態1に係る諸元検出部で作成された電波諸元毎のデータグループの例を示す説明図である。
【図6】同実施の形態1に係る相関処理部6による信号データグループ間の構成における合致度を比較する方法を示す説明図である。
【図7】同実施の形態1に係る時間対周波数における信号データ分布を示す説明図である。
【図8】図7の時間対周波数の信号分布と到来方位の信号データグループの信号を比較する例を示す説明図である。
【図9】この発明に係る多種の電波諸元による信号データグループの絞込みの概念を表わす説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 空中線、2 受信部、3 A/D変換部、4 一次記録部、5 諸元検出部、6 相関処理部、20 電波送信源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波の異なる複数の素子で構成された空中線で受信された複数の電波送信源からの受信信号を、それぞれデータ番号、受信時刻および各種諸元が付与された離散データに変換するA/D変換手段と、
A/D変換手段で変換された離散データを信号データリストにして一時保存する一次記録手段と、
一次記録手段の信号データリストから各電波諸元に基づいて信号データを抽出し、電波諸元毎の信号データグループを作成する諸元検出手段と、
諸元検出手段で作成された異なる電波諸元間の信号データグループで構成データを比較し、構成データの合致度に基づいて特定の電波送信源による信号データグループを算出する相関処理手段を備えたことを特徴とする電波類別探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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