説明

電流・電圧プローブ

【課題】燃料電池の電流面分布の測定において、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗を極力小さくし、多数のプローブを使用する場合に、測定位置による誤差を低減することにある。
【解決手段】電流・電圧プローブ10は、測定対象の測定面上の一点を流れる電流を測定するための電流プローブ8と、電流プローブ8の周辺の平均電圧を測定するための電圧プローブ4と、電流プローブ8と電圧プローブ4を絶縁するためのプローブ導向部3とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する電流・電圧プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、MEAとセパレータとを組み合わせて、燃料(水素)とAir(酸素)とをMEAとセパレータとの間に流し込んで、水素と酸素との化学反応を起こさせて、電力を得る発電デバイスである。
【0003】
ここで、燃料電池では、MEAとセパレータとの組み合わせ全体で均一に化学反応が進行することが重要になる。
【0004】
しかし、部分的に、欠陥の程度、燃料(水素)濃度、及びAir(酸素)濃度などが異なることにより、MEAとセパレータとの組み合わせ全体で均一に化学反応が進行しない場合がある。つまり、MEAとセパレータとの組み合わせの部分毎に、化学反応の程度に差が生じる場合がある。
【0005】
そのため、燃料電池の最適化を図るため燃料電池電流面分布測定を利用することが考えられる。
【0006】
燃料電池電流面分布測定は、一般的には、燃料電池表面であるセパレータで、電流センシング部品を接触させて、各センシング点で電流を測定して、全体測定範囲の面分布データを採ることにより行われる。
【0007】
したがって、燃料電池電流面分布の測定は電流値の精度と電流が発生した点の位置の精度との2つの精度がポイントとなる。
【0008】
この燃料電池電流面分布の測定方法としては、プローブを複数用いて各点における発生電流を直接測定するか、プローブ付近の平均電圧を測定し、キルヒホッフの法則等を用いて発生電流を算出する方法が考えられる。
【0009】
しかし、セパレータ自体は導電体であるので、測定に際して様々な問題が出てくる。
【0010】
ここで、最大の問題は、上記センシング部で取り出した電流は、燃料電池の各点での発生電流そのものではないことである。
【0011】
なぜなら、測定で採った各点の電流信号はセンシング部の抵抗とセパレータの抵抗とを組み合わせた効果による発生電流再分配の結果だからである。
【0012】
ところで、このような、燃料電池電流面分布測定を行うためのプローブではないが、四端子測定法のための従来のプローブとして、例えば、特許文献1に開示されたものがある。図29はこの従来のプローブであるプローブ100を示している。
【0013】
ここで、四端子測定法は、一般的には、抵抗体である被測定物に電流を流すための定電流端子と、測定の際における電圧降下状態を検出するための電圧検出端子とを別個にして、計4本のリード線を用いて行われるものである。
【0014】
上記プローブ100は、図29に示すように、先端に電圧測定ピン105aを有するプランジャー105bをバレル105c内にその進退を自在に付勢して保持させてなる電圧プローブ105を有している。また、電圧プローブ105の周囲には絶縁体106が存在しており、この絶縁体106の周囲を取り囲むようにして環状の電流測定ピン107aを備えてなる電流プローブ107が配置されている。そして、この電流プローブ107を軸方向への進退を自在にして保持するスリーブ109と電流プローブ107との間にはスプリング材108が嵌挿されている。
【0015】
一方、典型的な従来の電流プローブの構造の概要を図11に示す。図11はこのような典型的な従来の電流プローブの構造の概要を示す概念図である。この電流プローブはリセプタクル部11と、コンタクトプローブ部12を組み合わせた構造をしている。このような従来の電流プローブの構造の例として、たとえば、特許文献2に開示されたものがある。図28はこの従来のプローブである電流プローブ200を示している。この電流プローブ200の構造の概要は、リセプタクル部209とコンタクトプローブ部203とを組み合わせた構造である。また、上記リセプタクル部209と上記コンタクトプローブ部203との間には、バネ204が上記コンタクトプローブ部203の一端に嵌挿されて配置されている。このような典型的な電流プローブのトータルの抵抗値は約20〜50mΩ程度である。
【特許文献1】特開平7−244072号公報(平成7年9月19日公開)
【特許文献2】特開平10−303258号公報(平成10年11月13日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来のプローブ100では、電流プローブ107が電圧プローブ105の電圧測定ピン105aの周りを取り囲むように配置された環状の電流測定ピン107aで構成されている。言い換えると、電流プローブ107が外側、かつ電圧プローブ105が中心側に配設されて構成されている。
【0017】
そうすると、燃料電池電流面分布測定に上記従来のプローブ100を用いた場合、発生電流を検出する目的で被測定物に環状の電流測定ピン107aを接触させる際に、棒状体の電流プローブの1点接触よりも、接触面積が大きくなるため、プローブとセパレータの表面接触抵抗がかなり大きくなってしまうという問題点がある。
【0018】
すなわち、このプローブ100は基本的に、燃料電池電流面分布測定時のような発生電流の測定を目的とするものではなく、電流プローブ107から測定対象に電流を供給しつつ電圧プローブ105により電圧を測定するために好適となるように構成されたものである。
【0019】
したがって、このプローブ100を燃料電池電流面分布測定において、測定点における電流を検出しつつ、該測定点周辺の電圧を同時に測定するという目的で使用すると、多数のプローブを使用して燃料電池電流面分布測定を行う場合に、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗測定を小さくすること及び測定位置による誤差を効果的に低減することが困難であるという問題点がある。
【0020】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃料電池電流面分布測定において、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗を極力小さくし、多数のプローブを使用する場合に、測定位置による誤差を低減することができる電流・電圧プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来の問題点を解決するために、測定点の電流を検出するための棒状の電流プローブと、該電流プローブの周辺の電圧を測定するために該電流プローブを取り囲んで構成される筒状の電圧プローブと、上記電流プローブと上記電圧プローブとの間を絶縁するために配設され、上記電流プローブを進退自在に保持するための筒状のプローブ支持部とを有することを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、電流プローブは棒状体の1点接触である。したがって、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗を極力小さくすることができる。
【0023】
また、電流プローブ周辺の平均電圧とその中心の電流という2系統の情報を同時に得ることもできる。このため、電圧プローブの測定電圧を用いて、セパレータ上での電流再分配を考慮して、発生電流を計算することが容易となる。これにより、電流プローブの測定電流を用いた電流再分配に関する補正計算時の電流プローブとセパレータの表面接触抵抗による誤差を回避できる。なぜなら、電圧プローブには、発生電流は流れず、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗の影響を回避できるからである。さらに、電圧プローブの追加により、補正計算時に使われる測定信号が少なくなって、測定回路による誤差の低減もできる。
【0024】
したがって、燃料電池電流面分布測定において、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗を極力小さくし、多数のプローブを使用する場合に、測定位置による誤差を低減することができる。
【0025】
また、本発明の電流・電圧プローブは、前記電流プローブの先端が、電圧プローブよりも突出して設けられていると共に、上記電流プローブには、該電流プローブを測定点に当接させたときに、該電流プローブをプローブ支持部の内側で弾性的に没入移動させる電流プローブ用ばねが設けられている構成とすることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、電流プローブの先端を弾性的に測定点に接触させることができるためセパレータ等の測定対象における表面の損壊等を防止することができる。
【0027】
また、本発明の電流・電圧プローブは、前記プローブ支持部の後端部が、上記電圧プローブよりも突出して設けられていると共に、上記プローブ支持部には、上記電圧プローブを測定点に当接させたときに、該電圧プローブをプローブ支持部の外側で弾性的に退行移動させる電圧プローブ用ばねが設けられている構成とすることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、電圧プローブの先端を弾性的に測定点に接触させることができるためセパレータ等の測定対象における表面の損壊等を防止することができる。
【0029】
また、本発明の電流・電圧プローブは、前記電流プローブが、測定点に接触して電流を検出するための棒状の電流プローブヘッドと、一端側に圧入孔を有し、その圧入孔に上記電流プローブヘッドを圧入してなるストッパーと、該ストッパーの他端側から延出する、上記電流プローブヘッドが検出した電流を外部へ引き出すための棒状の電流引き出し部とを有する構成とすることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、電流プローブの電流プローブヘッドと電流引き出し部は、一体ではなく、2つの部品からなる2部構成となっている。このように、密接に接合した2部構成の導電体は、接合部の相対移動がなければ、接触抵抗の大きさはμΩレベルとなる。したがって、本発明の電流プローブは、従来の典型的な構造を有する上記電流プローブ200などと比較して、トータルの抵抗値が安定的に低いため、さらに測定誤差を低減できる。
【0031】
また、本発明の電流・電圧プローブは、前記電流プローブと前記電圧プローブとが同軸に構成されていることが望ましい。
【0032】
上記構成によれば、本発明の電流・電圧プローブを構造的に単純化することができ、コストの低減が可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の電流・電圧プローブは、以上のように、測定点の電流を検出するための棒状の電流プローブと、該電流プローブの周辺の電圧を測定するために該電流プローブを取り囲んで構成される筒状の電圧プローブと、上記電流プローブと上記電圧プローブとの間を絶縁するために配設され、上記電流プローブを進退自在に保持するための筒状のプローブ支持部とを有するものである。
【0034】
それゆえ、燃料電池電流面分布測定において、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗を極力小さくし、多数のプローブを使用する場合に、測定位置による誤差を低減することができる電流・電圧プローブを提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の一実施形態について図1ないし図3、図21及び図22に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1は本発明の一実施形態である電流・電圧プローブ10の構成を示す断面図である。電流・電圧プローブ10は測定点の電流を検出するための棒状体である電流プローブ8が電流・電圧プローブ10の軸中心に配設されている。また、電流プローブ8の周辺には、電圧を測定するために電流プローブ8を取り囲んで構成される筒状体である電圧プローブ4が配設されている。さらに、電流プローブ8と電圧プローブ4との間を絶縁するために、プローブ導向部3が設けられている。このプローブ導向部3は電流プローブ8を進退自在に保持するための筒状体として構成されている。さらに、電流・電圧プローブ10には電流プローブ8を付勢するための電流プローブばね6、及び電圧プローブ4を付勢するための電圧プローブばね2が、配設されている。また、電圧プローブばね2の一端には電圧を測定するための電圧端子7が設けられている。そして、電流・電圧プローブ10は電流プローブ8と電圧プローブ4とが同軸に構成されている。
【0036】
つぎに、本発明の一実施形態である電流・電圧プローブ10における電流プローブ8の一例について図3に基づいて説明する。図3は電流・電圧プローブ10における電流プローブ8の構成を示す概念図である。図3に示すように、電流プローブ8は、測定点に接触して電流を検出するための棒状体である電流プローブヘッド5と、ストッパー32と、ストッパー32の他端側から延出し、検出した電流を外部へ引き出すための棒状体である電流引き出し部33とから構成されている。また電流プローブヘッド5はストッパー32の一端側に設けられた圧入孔に圧入されている。
【0037】
ここで、図2は本発明の一実施形態である電流・電圧プローブ10の各部品を構成する材料の一例を表にしたものである。
【0038】
上記構成の電流・電圧プローブ10の使用方法について説明する。
【0039】
例えば、図21に示すように、燃料電池のセパレータの表面方向と厚み方向との3Dセパレータ抵抗分布測定に使用することができる。
【0040】
また、多数の電流・電圧プローブ10の組み合わせは、上記平面板の抵抗分布測定だけではなく、塊状物体、薄い導電性フイルムなどの抵抗分布測定にも使える。
【0041】
さらに、上記のプローブ間の間隔を小さくすれば、これらの抵抗値を比抵抗として、評価できるようになる。
【0042】
また、燃料電池電流面分布測定システムに、同じ測定治具で、この3Dセパレータ抵抗分布測定の機能を導入することもできる。したがって、燃料電池電流面分布測定システムの機能を増やすこともできる。
【0043】
また、多数の電流・電圧プローブ10で、プローブとセパレータとの表面接触抵抗の測定することもできる。したがって、導電体の表面状態(粗さ、表面清潔さなど)の評価の1つの測定手法としても利用できる。図22は、プローブとセパレータの表面接触抵抗を測定する場合の測定原理の概要を示した概念図である。
【0044】
ここで、図22に基づいてプローブとセパレータの表面接触抵抗を測定する場合の測定原理を説明する。
【0045】
図22において、左図の測定系を右図の等価回路で置き換える。また、シャント抵抗をR=R=Rとし、シャント抵抗にかかる電圧をそれぞれV11、V21とする。このとき、電流I、Iはそれぞれ次式となる。
=V11/R=V11/R、I=V21/R=V21/R
よって、プローブとセパレータの表面接触抵抗をRC1、RC2とすると、
C1=V12・R/V11、RC2=V22・R/V21
となる。
【実施例】
【0046】
上述した電流・電圧プローブ10の性能について確認を行ったので、以下に説明する。なお、説明は、電流プローブ8のみ、電圧プローブ4のみ、及び本実施の形態の電流・電圧プローブ10の順におこなう。
(電流プローブのみを用いた測定の問題点)
まず、電流プローブのみを用いた測定の問題点について、図4〜図13を用いて詳細に説明する。
【0047】
ここで、図4に基づいて電流プローブの測定原理について説明する。図4は電流プローブの測定原理を示す概念図である。
【0048】
電流プローブを用いた測定に当たって問題になるのは、センサー抵抗とプローブ抵抗との和であるセンシング部の抵抗RS1・RS2、プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2、及び2プローブ間のセパレータ抵抗r12である。
【0049】
ここで、上記センシング部の抵抗RS1・RS2が一定値ならば、測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いて、測定電流から発生電流の再計算が可能である。この点について、図4を用いて、以下詳細に説明する。
【0050】
まず、図4の上図の測定系において、燃料電池の発電ゾーンを電流源と想定する。次に、上記電流源を電流プローブの真下に想定すれば、2つの電流プローブの測定等価回路は図4の下図ようになる。この測定等価回路においては、
=RS1+RC1
=RS2+RC2
となっている。
【0051】
すなわち、図4の上図の測定系を図4の下図の測定等価回路で置き換えることにする。そうすると、測定系の想定発電ゾーン1での発生電流は、
=IP1・(1+R/r12)−IP2・R/r12 ・・・・・(1)
となる。
【0052】
一方、測定系の想定発電ゾーン2での発生電流は、
=IP2・(1+R/r12)−IP1・R/r12 ・・・・・(2)
となる。
【0053】
もし、r12>>R及びr12>>Rならば、ほぼI=IP1、I=IP2となり、測定電流値は発生電流値として評価できる。
【0054】
しかし、セパレータ材料は通常カーボン、SUS(ステンレス)等の導電体であるので、セパレータ上の2プローブ間のセパレータ抵抗r12が小さい。よって、測定電流値と発生電流値とには有意な差があることになる。すなわち、測定電流値だけで、燃料電池の発生電流値に基づく燃料電池電流面分布情報を得ることはできないという問題点が生じる。
【0055】
この問題点について実際に実験して確かめた。図23はその実験結果を示す図である。この図23には、R=R=3mΩ、r12=0.5mΩ、及び仮想発生電流値を10mAピッチで0〜50mAまで変化させた計算結果が示されている。同図において、ΔI及びΔIは実際に流した仮想発生電流間の差を示している。また、ΔIp1及びΔIp2は上記実際に流した仮想発生電流間の差ΔI及びΔIに対応する測定電流間の差を示している。
【0056】
このとき、実験結果では、上記測定電流間の差に対する実際に流した仮想発生電流間の差の比は13となっており、2桁のオーダーとなっている。すなわち、この図に示された結果によれば、セパレータ上の2プローブ間のセパレータ抵抗r12がセンシング部の抵抗R・Rに比較して小さい場合には、燃料電池電流面分布測定時に測定電流値から発生電流値への再計算が必要であることがわかる。
【0057】
以上の考察から、もし、センシング部の抵抗R・Rが一定値ならば、測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いた再計算により、測定電流から発生電流を求めることができるとわかる。
【0058】
しかし、現実には、センシング部の抵抗R・Rには、それぞれ、プローブの抵抗と、プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2が含まれるので、そのセンシング部の抵抗R・Rは測定のつど変化してしまう。
【0059】
そこで、次に、センシング部の抵抗R・Rの変化による測定結果への影響を分析することにする。
【0060】
上述のように、上記2プローブの測定等価回路では、センシング部の抵抗R・Rの中には、プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2が含まれている。上記プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2が測定の都度に変化するのは一般的な現象である。上記プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2をある程度安定化するために様々な手法が試されている。たとえば、接触圧力の増加、接触面積の増加、及び接触面の粗さの調整などである。しかし、これらの手法の中には、燃料電池電流面分布測定においては、使えないものもある。たとえば、圧力が増加すれば、セパレータが割れる恐れが高くなる。また、接触面積の増加を防ぐためには、測定点間の距離を大きくしなければならない。そうすると、測定の位置の精度が低下してしまう。
【0061】
ここで、センシング部の抵抗R・Rが変化した場合の測定結果への影響を分析する実験を行った。図24はその実験結果を示す図である。すなわち、図24においては、センシング部の抵抗R・Rを変化させた場合(プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2の変化を想定している。)における理論上の電流の計算値であるI1C・I2Cと、実際の電流の測定値であるIP1・IP2との関係を表している。なお、実験のために実際に流した電流の測定値(図24では実際値としている。以下同じ。)はI=25mA、I=50mAである。
【0062】
ここでは、2プローブ間のセパレータ抵抗をr12=0.5mΩに固定している。また、センシング部の抵抗R・Rは3.00mΩを中心として上下に0.02mΩ刻みで最大3.1mΩ、最小2.90mΩまで変化させた。
【0063】
上記の結果では、センシング部の抵抗の変化率が3.3%のとき、すなわちセンシング部の抵抗R・Rが中心の抵抗値3.00mΩに対して0.10mΩ変化した場合、測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いた再計算によるIの計算誤差ΔIが60%にも達している。
【0064】
よって、センシング部の抵抗R・Rが変化する場合には、測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いた再計算をしても意味がないことがわかる。すなわち、プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2の変化に応じた補正が必要であることがわかる。
【0065】
上記の理論分析では、センシング部の抵抗R・Rと2プローブ間のセパレータ抵抗r12とを適当に設定して計算した結果であって、実際のセパレータの抵抗値と各測定部の抵抗値とに基づいたものではない。そこで、実際のセパレータの抵抗値と各測定部の抵抗値との測定をする実験を行った。図5及び図7〜9はこの測定結果を示す棒グラフである。また、図6にはこの実験の測定方式を示す概念図が示されている。
【0066】
(1)まず、電流プローブを49本用いて測定した場合のセンシング部の体抵抗の測定を行った。ここで、体抵抗とは、プローブ抵抗とシャント抵抗とを含むが、電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗は含まない概念である。ここで、シャント抵抗とは電流を測定するための測定回路に直列に入れられる抵抗のことである。また、測定は、測定部分ごとに単独で測定を行った。また、測定方式は四端子測定法を採用した。
【0067】
図5はこの四端子測定法を用いた実験の測定結果を示した棒グラフである。図5では、横軸は49本のそれぞれの電流プローブに番号を付し、その番号(プローブNo.)が示されている。また、縦軸はセンシング部の抵抗の値であり、単位はmΩとしている。この実験により、実験結果の抵抗値は上記測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いた再計算で得られる値とほぼ同じレベルの値であることがわかる。
【0068】
(2)次に、電流プローブを49本用いて測定した場合のセンシング部における全抵抗の測定を行った。ここで、全抵抗とは、センシング部の体抵抗と、電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗とを含む概念である。
【0069】
図7は上記測定方式を用いた実験の測定結果を示した棒グラフである。縦軸と横軸との関係は、上記図5の棒グラフの場合と同様である。この図7に示された結果によれば、図5の場合の体抵抗が平均5.4mΩ程度であるのに対し、図7の場合の全抵抗が平均9mΩ程度である。そうすると、電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2を含む場合、センシング部の抵抗R・Rは約2倍弱増加することがわかる。すなわち、全抵抗に対する電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2の寄与がかなり大きいことがわかる。
【0070】
(3)次に、意図的に電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2を変化させて、この変化によるセンシング部の抵抗R・Rの変化を分析する実験を行った。測定方法は上記測定方式を採用し、電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗変化を分析した。
【0071】
まず、各電流プローブを同時に1回だけ加圧し、その加圧状態を維持したままで、計2回の測定をおこなった。図8はその実験結果を示す棒グラフである。縦軸と横軸との関係は上記の場合と同様である(以下、この説明は省略する。)この実験結果によれば、抵抗値の変化はあまり生じていないことがわかる。
【0072】
つぎに、各電流プローブを同時に2回だけ加圧し、加圧のたびに測定をする実験を行った。図9はその実験結果を示す棒グラフである。この実験の結果によれば、各電流プローブの抵抗値が若干変化していることがわかる。
【0073】
以上の図8及び図9の実験結果を比較すると、電流プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2が、接触のたびに値が変わってしまうことがわかる。
【0074】
(4)次に、セパレータ抵抗自体についてセパレータの材質を変えて測定する実験を行った。測定方式には四端子測定法を用いた。図10はこの四端子測定法における測定位置を示す平面図である。また、図25はこの実験結果を示す図である。さらに、図25の表中I−I’等は図10における上記測定位置に対応している。ここで、実験に用いられたセパレータの材質について説明する。セパレータAは縦・横がそれぞれ50mm、厚みが5mmのカーボン板である。セパレータBは縦・横がそれぞれ50mm、厚みが2mmのカーボン板である。セパレータCは縦・横がそれぞれ50mm、厚みが0.2mmのSUS板である。ここで、SUS板とはステンレス板のことである。
【0075】
実験結果の抵抗測定値から、2プローブ間の距離を6mmとして、2プローブ間の距離6mm当りのセパレータ抵抗を平均計算すると、厚み5mmのカーボン板は0.42mΩ(最大値)、厚み2mmのカーボン板は1.04mΩ(最大値)、及び厚み0.2mmのSUS板は0.876mΩ(最大値)となる。
【0076】
したがって、厚みが2mmのカーボン板について、2プローブ間の距離を6mmとしたときのセンシング部の抵抗(トータルの抵抗)とセパレータ抵抗との比は約6である。
【0077】
つぎに、上記センシング部の抵抗R・Rとセパレータ抵抗r12との比を6に固定した場合と、0.6に固定した場合とについて実験した。センシング部の抵抗R・Rはそれぞれ、3.00mΩを中心として上下に0.02mΩ刻みで最大3.1mΩから最小2.90mΩまで変化させた。図26及び図27はそれぞれ、上記センシング部の抵抗R・Rとセパレータ抵抗r12との比(R/r12)を6に固定した場合と、0.6に固定した場合との実験結果を示す図である。
【0078】
実験結果より、センシング部の抵抗R・Rとセパレータ抵抗r12との比がR/r12=6のときと、R/r12=0.6のときとを比較してみる。そうすると、理論上の計算値と実際に流した電流の実際値との差ΔIのオーダーは、センシング部の抵抗R・Rとセパレータ抵抗r12との比がR/r12=6のときのほうが、1桁程度大きいことがわかる。
【0079】
よって、センシング部の抵抗R・Rとセパレータ抵抗r12との比が大きくなると、理論上の計算による誤差は大きくなってしまうことがわかる。
【0080】
以上のことから、センシング部の抵抗R・Rの低減が測定システムの精度を向上させるための1つの重要ポイントであることがわかる。
【0081】
しかし、センシング部の抵抗R・Rの低減には、限界がある。現状は、センシング部の抵抗R・Rを低減できたとしても、5〜7mΩ程度が限界である。
【0082】
次に、本実施の形態の電流プローブ8を図3に基づいて説明する。
【0083】
この電流プローブ8は、測定対象に接触させて電流を測定するための接触部を一端に有する棒状体である電流プローブヘッド5と、該電流プローブヘッド5の他端が圧入される圧入孔を一端に有するストッパー32と、該ストッパー32における他端の断面の略中央部から延出し、該断面の径よりも短手方向の径が小さい棒状体である電流引き出し部33とからなる。すなわち、上記電流プローブ8は、電流プローブヘッド5と、ストッパー32を有する電流引き出し部33との2つの部品からなる2部形式の構成である。
【0084】
つぎに、上記電流プローブ8の特徴について説明する。上述のように、電流プローブヘッド5とストッパー32を有する電流引き出し部33との2つの部品から構成し、上記電流プローブヘッド5の他端を上記ストッパー32の一端にある圧入孔に圧入させて、密接させた場合、これらの嵌合部の相対移動がなければ、電流プローブ8とセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2の大きさはμΩレベル程度となる。結果として、上記電流プローブ8の抵抗値はトータルの抵抗値でも、2mΩ程度となった。これは、図29に示すような、従来の典型的な構造を有する電流プローブ200のトータルの抵抗値が20〜50mΩ程度であることと比較してかなり低いものとなっている。
【0085】
ところで、電流面分布測定の実験では、上記電流プローブ8の電流引き出し部33には導線が半田付けされる。このため、2つの部品からなる2部形式の構成である本実施の形態の電流プローブ8と比較して、従来の電流プローブは、一体成型された電流プローブを電流面分布測定の治具として使用した場合には、交換が不便であるという欠点がある。なぜなら、1つの電流プローブを交換する必要が生じた場合、全プローブを解体して、半田を外さないと、取出せないからである。ここで、上記電流プローブ8の表面には測定のたびに、測定対象の損壊片等がゴミとして付着する。このため、この表面状態の汚染の問題についての対策の1つとして、電流プローブ8を交換することが考えられる。ここで、上記電流プローブ8は上述のように、2部品に分かれているので、交換すべき電流プローブヘッド5だけを取り外すだけで、交換ができる。したがって、材料、作業時間の節約を効率良く行える。
【0086】
結論として、上記電流プローブ8は、市販の従来の電流プローブよりも、トータルの抵抗値が安定的に低く、かつ電流プローブ8の本体の加工、交換作業などにおいて、材料費、及び人件費の節約ができる。
【0087】
(5)最後に、上記電流プローブ8を複数使用して電流面分布測定の実験を行った結果について説明する。
【0088】
図12は、複数の電流プローブ8で電流面分布測定の実験を行った結果を示す電流値の面分布を表す図である。実際の測定は、複数の定電流源を所定間隔で配置して、燃料電池の発生電流の代わりとして使用した。各定電流源の間隔は12mmとし、各電流プローブ8の間隔は6mmと設定した。
【0089】
上記各定電流源の電流供給点(以下、「通電位置」という。)と上記各電流プローブとの間に、厚みが5mmのカーボン板を挟んで測定を行った。また、実験は上記各定電流源のON/OFFを制御して行った。その結果、図12に示すような結果が得られた。
【0090】
図12の(a)は測定位置と通電位置を示している。大きい黒点は各定電流源の配置位置であり、小さい黒点は、各電流プローブ8の配置位置である。また、縦軸のA〜F及び横軸の1〜7は各点の位置座標を表している。図12の(b)はすべての定電流源がONされているときの結果であり、図(c)〜(k)は座標2B〜6Fの位置にある各電流源がOFFの時の結果である。同(c)〜(k)により、電流は、0mA(OFF)から100mA(ON)の変化であるにもかかわらず、測定結果の変化は5〜10mA程度であることが分かる。この結果は、上記測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いた再計算が必要であることを示している。
【0091】
次に、上記図12の測定データから、上記測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いて再計算した結果について説明する。
【0092】
図13は上記再計算の結果に基づいて、電流面分布を求めて図示したものである。記号等は上記図12の場合と同様である。
【0093】
確かに、再計算の効果が図に現れている。しかし、思いのほか計算誤差が大きいことがわかる。たとえば、図13の図(b)と図(g)とを対比すると、座標4Dの位置では、電流のON/OFFの変化はあまり現れていない。この原因は、計算時に使われるデータ(上述のセンシング部の抵抗R・Rとセパレータ抵抗r12との比)は一定であるのに対し、実際の測定時に、これらの数値が変わって、再計算の結果と電流の実際値との間に誤差が生じるからであると考えられる。
【0094】
一方、測定回路による誤差も大きい。上記測定系の測定等価回路からキルヒホッフの法則を用いた再計算では、1点に発生する電流の再計算は、すべての点の電流測定値が使われる。各測定部の測定回路誤差は小さくても、再計算の結果のトータル誤差は、各点ともに大きく拡大される。
【0095】
これは、電流プローブ8だけを使っての電流面分布測定の欠点である。センシング部の抵抗R・Rの変化に応じた補正をすることが困難なのである。
(電圧プローブのみを用いた測定の問題点)
(1)つぎに、電圧プローブ4のみを用いた測定の問題点について図14〜19を用いて詳細に説明する。
【0096】
まず、電圧測定方式における電流面分布測定の理論モデル計算について簡単に説明する。セパレータの一部を概念的に直方体部分として取り出して、この直方体部分においてキルヒホッフの法則を応用すれば、電流と電圧の関係が求められる。図14は、この電圧測定方式の理論モデルを表す概念図である。
【0097】
図14で、V1〜V5は測定電圧、dは2プローブ間の距離、hは上記直方体部分のZ軸方向の高さ、及びρは抵抗率である。また、Iは求めたい発生電流、I〜Iは上記直方体部分の4つの側面から流入及び流出する、上記直方体部分の表面に沿って強制的に流される電流である。したがって、全ての電流がセパレータ表面沿いにしか流れていないことになる。すなわち、電圧プローブには発生電流が流れないことが電圧測定方式の特徴である。
【0098】
したがって、図14の理論モデルを使って、発生電流Iを計算すると次式の様になる。
=(I−I+I−I
=k・(V+V+V+V―4・V
ここで、k=−h/ρとおいた。
【0099】
このように、電圧プローブには発生電流が流れないため、電圧プローブとセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2の影響がなくなる。よって、電圧測定方式の方が電流測定方式より精度が上がる。
【0100】
また、電圧プローブとセパレータとの接触圧が必要とされないため、セパレータが割れる恐れがなくなる。
【0101】
以上の分析で、電圧測定方式のほうが、より簡単に燃料電池電流面分布の測定ができるという結論が得られる。
【0102】
(2)次に、この電圧測定方式による電圧プローブを複数使用して電流面分布測定の実験を行った結果について説明する。
【0103】
実験の条件は、上記電流プローブ8の場合と同じである。図15はこの実験結果から求めた電流値の面分布を示す図である。上記電圧プローブでの計算結果は、上記電流プローブ8による再計算の結果よりも、位置の精度と電流の測定精度とが向上していることがわかる。
【0104】
また、電圧測定方式の測定システムと測定治具は、電流プローブ8だけの測定方式よりも、簡単で、製作費用を少なくできるという特徴もある。
【0105】
しかし、上記電圧プローブ4だけの測定では、測定時において、セパレータ表面に沿って強制的に、電流を流すことになる。燃料電池の発展に伴い、上記セパレータ表面に沿って強制的に流される電流のパワーロスの低減が1つの目標とされている。セパレータ内の抵抗値を下げる方法としては、燃料電池に適用できる導電性の良い材料の選択を工夫する方向と、セパレータの厚みを小さくする方向との2方面からアプローチされている。一方、燃料電池の単位面積発電効率が向上して、2A/cm以上の燃料電池も実用化されている。これらの燃料電池に対して、電圧プローブで、強制的に電流をセパレータ表面に沿って流すのは、セパレータ内でのパワーロスによって、明らかに不可能である。これは、上記電圧プローブのみによる電圧測定方式での燃料電池電流面分布測定の不利な点である。
【0106】
(3)そこで、つぎに上記パワーロスを考慮して、電圧プローブの適用できる範囲を求める計算を行う。この計算においては、上記電圧プローブでの燃料電池電流面分布測定時におけるセパレータの特性(セパレータの厚み、セパレータの比抵抗など)、及び最大測定電流(燃料電池の最大電流密度)を考慮しなければならない。
【0107】
測定方法や測定システムなどによる、測定対象物に対する影響をなるべく少なくすることは、測定システム設計の重要な観点の1つである。ここで、電圧プローブでの測定時にセパレータ表面沿いに強制的に流される電流のパワーロスと、燃料電池のトータルパワーとの比を1つ目の判定基準とし、セパレータ内の電圧降下を2つ目の判定基準とする。
【0108】
図16及び図17は、セパレータ沿いに強制的に流される電流のパワーロスの計算方法を説明するための概念図である。ここで、セパレータの比抵抗をρとし、セパレータ厚みをδ、及び発生電流密度(図16ではFC発電電流密度と記載している。)をjとする。ここでセパレータの表面を正方形とし、その一辺をLとする。図16に示すように、セパレータ沿いに強制的に流される電流は90度回転対称性を持っているため、図17の左図の1/4測定領域で計算すれば足りる。さらに、この1/4測定領域を流される上記強制的に流される電流は線対称性を持っているため結局、図17の右図の1/8測定領域の計算で足りる。
【0109】
図18の右図で、セパレータ表面のX方向の電流iは次式で与えられる
=x・y・j/2
次に、微小部分dのセパレータ抵抗rは次式で与えられる。
=ρ・d/(y・δ)
そうすると、微小部分dでのパワーロスdwxは次式で与えられる。
wx=r・i=ρ・j・x/(4・δ)
したがって、全測定領域でのパワーロスWは次式で与えられる。
W=ρ・j・L/(8・δ)
図18のグラフは、横電流によるセパレータでのパワーロスと測定範囲との関係を表すグラフを示す図である。最大発生電流密度を1A/cmとし、セパレータの比抵抗を0.7mΩ・cmとする。ここで、セパレータ内のパワーロスを燃料電池トータル発電パワーW(V=0.85V)の2%に収めると、次式が得られる。
lim≦(8・0.2・20/1・0.7)0.5=6.76(cm)
また、横電流によるセパレータでの電圧降下Vは、
V=W/(j・L)=ρ・j・L/(8・δ)
となる。
【0110】
図19は、セパレータでの電圧降下と測定範囲との関係を表すグラフを示す図である。最大発生電流密度=1A/cm、セパレータ比抵抗=0.7mΩ・cmとする。また、セパレータ内の電圧降下を燃料電池オープンループ電圧V=0.85Vの2%に収めると、次式が得られる。
L≦6.23cm
したがって、電圧プローブだけでの燃料電池電流面分布測定は、小範囲、局部測定及び単セル式の燃料電池に対しては有効であるが、発生電流が大きいか又は測定領域の面積が大きい場合には適用できないことがわかる。
(電流・電圧プローブでの測定におけるメリット)
(1)つぎに、本発明の一実施形態の電流・電圧プローブ10の構成について図1に基づいて説明する。図1は上記電流・電圧プローブ10の構成を示す断面図である。上記電流・電圧プローブ10は電流プローブ8と、電圧プローブ4と、上記電流プローブ8と電圧プローブ4とを絶縁するための絶縁体であるプローブ導向部3(プローブ支持部)から構成され、これらを一体かつ同軸に構成したものである。これにより、プローブ周辺の平均電圧とその中心の電流を探ることができる。これによって、平面(曲面でも可能)上で、多数のプローブを使うときに、測定位置による誤差を低減させることができる。また、最終的に電流プローブ8と電圧プローブ4とがともにセパレータ表面に接触するので、電流・電圧プローブ10全体の接触面積が増加し、セパレータに対する圧力も低減できる。したがって、セパレータへの機械的な損傷の恐れがなくなる。
【0111】
(2)次に、図20に基づいて上記電流・電圧プローブ10の測定原理について説明する。図20は上記測定原理について説明するための理論モデルを示す概念図である。図20によれば、電圧プローブの理論モデルと比べて、電流プローブ8によるパラメータIが追加されている。
【0112】
この理論モデルは、セパレータ上での電流再分配を考慮しての電流補正計算式である。まず、上記電流・電圧プローブ10においては、パラメータIが加わったことにより、電圧プローブだけでの測定方式において強制的に流される電流がセパレータに沿った方向に限られてしまうという問題点を解決できる。次に、上記電流・電圧プローブ10においては、電流プローブ8のみによる測定方法における再計算時の電流プローブ8とセパレータとの表面接触抵抗RC1・RC2とによる誤差を回避できないという問題点も解決できる。さらに、上記電流・電圧プローブ10においては、電圧プローブの追加で、補正計算時に使われる測定信号が少なくなって、測定回路による誤差の低減も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の電流・電圧プローブでは、電流プローブが棒状体の1点接触である。したがって、電流プローブとセパレータの表面接触抵抗を極力小さくすることができる。
【0114】
また、本発明の電流・電圧プローブは、プローブ周辺の平均電圧とその中心の電流という2系統の情報を同時に得ることができる。このため、セパレータ上での電流再分配を考慮しての電流補正計算式で発生電流を計算すれば、電流プローブでの補正計算時の電流プローブとセパレータの表面接触抵抗による誤差を回避できる。さらに、電圧プローブの追加により、補正計算時に使われる測定信号が少なくなって、測定回路による誤差の低減もできる。したがって、燃料電池の電流面分布の測定において、多数のプローブを使用する場合に、測定位置による誤差を低減できる。
【0115】
ところで、本発明の電流・電圧プローブは各種測定装置に幅広く利用することができる。たとえば、塊状物体、フイルム状導電体などの抵抗分布測定や、セパレータの体抵抗分布測定におけるセパレータの表面方向と厚み方向との3D測定などにも適用できる。
【0116】
さらに、多数の電流・電圧プローブをもちいて、プローブとセパレータの表面接触抵抗の測定も可能なので、たとえば、導電体の表面状態(粗さ、表面清潔さなど)の評価の1つの測定手法にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の電流・電圧プローブの一実施形態を示す断面図である。
【図2】上記電流・電圧プローブに関する構成材料の一例を示す図である。
【図3】上記電流・電圧プローブに関する電流プローブの構成を示す概念図である。
【図4】電流プローブの測定原理を示す概念図である。
【図5】電流プローブに関する実験の測定結果を示した棒グラフである。
【図6】電流プローブに関する実験の測定方式を示す概念図である。
【図7】電流プローブに関する実験の測定結果を示した棒グラフである。
【図8】電流プローブに関する実験の測定結果を示した棒グラフである。
【図9】電流プローブに関する実験の測定結果を示した棒グラフである。
【図10】電流プローブに関する実験の測定位置を示す平面図である。
【図11】市販されている典型的な電流プローブの構造の概要を示す概念図である。
【図12】上記本実施の形態の電流プローブに関する実験の測定結果を示す分布図である。
【図13】上記電流プローブに関する実験の測定結果を示す分布図である。
【図14】電圧プローブに関する電圧測定方式の理論を説明するための概念図である。
【図15】上記電圧プローブに関する実験の測定結果を示す分布図である。
【図16】上記電圧プローブに関する電流のパワーロスの計算方法を説明するための概念図である。
【図17】上記電圧プローブに関する電流のパワーロスの計算方法を説明するための概念図である。
【図18】上記電圧プローブに関する実験の測定結果を示したグラフである。
【図19】上記電圧プローブに関する実験の測定結果を示したグラフである。
【図20】上記電流・電圧プローブの測定原理を示す概念図である。
【図21】上記電流・電圧プローブの他の実施の形態を示す斜視図である。
【図22】上記電流・電圧プローブのさらに他の実施の形態を示す斜視図である。
【図23】上記電流プローブに関する実験の測定結果を示した表である。
【図24】上記電流プローブに関する実験の測定結果を示した表である。
【図25】上記電流プローブに関する実験の測定結果を示した表である。
【図26】上記電流プローブに関する実験の測定結果を示した表である。
【図27】上記電流プローブに関する実験の測定結果を示した表である。
【図28】従来例の電流プローブを示す断面図である。
【図29】従来例の電流・電圧プローブを示す断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 押し板
2 電圧プローブばね(電圧プローブ用ばね)
3 プローブ導向部(プローブ支持部)
4 電圧プローブ(電圧プローブ)
5 電流プローブヘッド(電流プローブヘッド)
6 電流プローブばね(電流プローブ用ばね)
7 電圧端子
8 電流プローブ(電流プローブ)
10 電流・電圧プローブ(電流・電圧プローブ)
11 リセプタクル部
12 コンタクトプローブ部
32 ストッパー(ストッパー)
33 電流引き出し部(電流引き出し部)
d 測定プローブ間距離
ΔI プローブ1の電流値の測定誤差
δ セパレータ厚み
h 直方体の高さ
電流
電流
電流
1C 電流の理論計算値
2C 電流の理論計算値
電流プローブ測定電流
P1 プローブ1の測定電流
P2 プローブ2の測定電流
発生電流
j 発生電流密度
I0 測定電流
I1 測定電流
I2 測定電流
I3 測定電流
I4 測定電流
S1 プローブ1のセンサー抵抗+プローブ抵抗
S2 プローブ2のセンサー抵抗+プローブ抵抗
C1 プローブ1のプローブとセパレータとの表面接触抵抗
C2 プローブ2プローブとセパレータとの表面接触抵抗
抵抗
抵抗
抵抗
抵抗
抵抗
12 プローブ間のセパレータ抵抗
抵抗
ρ 抵抗率
01 電流
11 電流
12 電圧
21 電流
22 電圧
31 電流
41 電流
P1 測定電圧
P2 測定電圧
P3 測定電圧
P4 測定電圧
P5 測定電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定点の電流を検出するための棒状の電流プローブと、
該電流プローブの周辺の電圧を測定するために該電流プローブを取り囲んで構成される筒状の電圧プローブと、
上記電流プローブと上記電圧プローブとの間を絶縁するために配設され、上記電流プローブを進退自在に保持するための筒状のプローブ支持部とを有することを特徴とする電流・電圧プローブ。
【請求項2】
前記電流プローブの先端は、電圧プローブよりも突出して設けられていると共に、
上記電流プローブには、該電流プローブを測定点に当接させたときに、該電流プローブをプローブ支持部の内側で弾性的に没入移動させる電流プローブ用ばねが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電流・電圧プローブ。
【請求項3】
前記プローブ支持部の後端部は、上記電圧プローブよりも突出して設けられていると共に、
上記プローブ支持部には、上記電圧プローブを測定点に当接させたときに、該電圧プローブをプローブ支持部の外側で弾性的に退行移動させる電圧プローブ用ばねが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電流・電圧プローブ。
【請求項4】
前記電流プローブは、
測定点に接触して電流を検出するための棒状の電流プローブヘッドと、
一端側に圧入孔を有し、その圧入孔に上記電流プローブヘッドを圧入してなるストッパーと、
該ストッパーの他端側から延出する、上記電流プローブヘッドが検出した電流を外部へ引き出すための棒状の電流引き出し部とを有することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電流・電圧プローブ。
【請求項5】
前記電流プローブと前記電圧プローブとが同軸に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電流・電圧プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−309798(P2007−309798A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139429(P2006−139429)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】