説明

電源システム

【課題】点検や交換のために単電池が切り離される場合でも、停電時のバックアップ給電を行うこと。
【解決手段】電源システム10は、組電池2と、整流器1と、充電器4とを有する。組電池2は、n+m(n、mは自然数)個の複数の単電池8を有し、交流電源5の停電時に負荷6へ直流電力を供給する。整流器1は、交流電源5から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷6へ供給する。充電器4は、交流電源5から出力される交流電力を用いて複数の単電池8それぞれを充電する。そして、組電池2は、複数の単電池8のうち任意に選択されたn個の単電池8を直列に接続して得られる。また、整流器1は、出力電圧が組電池2の満充電電圧以上に設定される。また、充電器4は、出力電圧が充電対象の単電池8の満充電電圧に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷へ供給する電源システムがある。図4は、従来の電源システムの一例を示す図である。図4に示すように、例えば、従来の電源システム20は、整流器11と、組電池12とを有する。整流器11は、交流電源15から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷16へ供給する。組電池12は、複数の単電池17を直列に接続して構成される。また、組電池12は、整流器11から出力される直流電力により充電され、交流電源15の停電時に負荷16へ直流電力を供給する。このように、交流電源15の停電時に組電池12が負荷16へ直流電力を供給することをバックアップ給電と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−148485号公報
【特許文献2】特開2008−211935号公報
【特許文献3】特開2008−278668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電源システムでは、点検や交換のために単電池が切り離される場合に、停電時のバックアップ給電を行うことができないという課題があった。
【0005】
例えば、図4に示す電源システム20では、交流電源15が有効である限りは、組電池12は常に充電される状態にある。また、組電池12の印加電圧(組電池12に印加される電圧)すなわち整流器11の出力電圧は、単電池17の満充電電圧と単電池17の直列数との積に設定される。そのため、交流電源15の停電時には、並列接続された組電池12により瞬断なく負荷16への給電が継続される。
【0006】
このような電源システム20では、長期間の運用によって、組電池12を構成する一部の単電池17について点検や交換が必要になる場合がある。この場合には、点検又は交換の対象となる単電池17が組電池12から切り離され、充放電試験や交換作業が行われる。そして、この点検又は交換が行われている間は、単電池17や組電池12の接続が切り離されるため、停電発生時のバックアップ給電が不可能になる。このように、単電池を複数直列接続して構成した組電池による直流バックアップ電源システムでは、点検や交換のために単電池17が切り離される場合に、停電時のバックアップ給電を行うことができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、点検や交換のために単電池が切り離される場合でも、停電時のバックアップ給電を行うことが可能な電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源システムは、交流電源から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷へ供給する整流器と、n+m(n、mは自然数)個の複数の蓄電池を有し、前記交流電源の停電時に前記負荷へ直流電力を供給する組電池と、前記交流電源から出力される交流電力を用いて前記複数の蓄電池それぞれを充電する充電器とを有し、前記組電池は、前記複数の蓄電池の中から任意に選択されたn個の蓄電池を直列に接続して得られる電圧を出力し、前記整流器の出力電圧は、前記組電池の満充電電圧以上に設定され、前記充電器の出力電圧は、充電対象の前記蓄電池の満充電電圧に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点検や交換のために単電池が切り離される場合でも、停電時のバックアップ給電を行うことが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係る電源システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係るバイパス付単電池を示す図である。
【図3】図3は、本実施例に係る電源システムにおける単電池の点検又は交換を説明するための図である。
【図4】図4は、従来の電源システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電源システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、交流電源から出力される交流電源を負荷へ供給する電源システムに本発明を適用した場合について説明するが、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
まず、図1を用いて、本実施例に係る電源システムの構成例について説明する。本実施例に係る電源システムは、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を負荷に供給する。図1は、本実施例に係る電源システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施例に係る電源システム10は、整流器1と、組電池2と、ダイオード3と、充電器4とを備える。
【0013】
整流器1は、交流電源5から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷6へ供給する。
【0014】
組電池2は、n+m(n、mは自然数)個の複数のバイパス付単電池7を有し、交流電源5の停電時に負荷6へ直流電力を供給する。本実施例では、負荷6への給電は、整流器1の出力と組電池2との並列接続により行なわれる。そのため、交流電源5の停電等により整流器1の出力が停止した場合には、組電池2が出力する電力が負荷6へ供給される。
【0015】
バイパス付単電池7は、単電池8と、単極双投スイッチ9とを有する。単電池8は、蓄電池である。本実施例では、単電池8として、定格電圧が2.0[V(ボルト)]、満充電電圧が2.2[V]、定格容量が200[Ah(アンペアアワー)]の鉛蓄電池が用いられる。単極双投スイッチ9は、第1の極を第2の極及び第3の極のいずれか一方に接続する。ここで、単極双投スイッチ9は、第2の極が蓄電池の一方の極に直列接続され、第3の極が該蓄電池の他方の極に接続される。
【0016】
図2は、本実施例に係るバイパス付単電池7を示す図である。図2に示すように、例えば、単極双投スイッチ9は、第1の極として極Aを有し、第2の極として極Bを有し、第3の極として極Cを有する。そして、単極双投スイッチ9は、極Aと極Bとの接続、及び、極Aと極Cとの接続のいずれか一方を行うように構成されており、極Bと極Cとの接続は行わない。
【0017】
ここで、単極双投スイッチ9の極Aは、隣接する他のバイパス付単電池7が有する単電池8のマイナス極に接続される。また、極Bは、単電池8のプラス極に接続され、極Cは、単電池8のマイナス極に接続される。ただし、組電池2の出力端に位置するバイパス付単電池7については、極Aがダイオード3のアノードに接続される。
【0018】
すなわち、バイパス付単電池7は、単極双投スイッチ9の極Aと極Bとが接続されることにより、単電池8が組電池2に接続された状態となる。一方、バイパス付単電池7は、単極双投スイッチ9の極Aと極Cとが接続されることにより、単電池8が組電池2から電気的に切り離された状態となる。このように、バイパス付単電池7には、2つの接続状態がある。
【0019】
ここで、任意に選択されたn個のバイパス付単電池7において、単電池8が組電池2に接続された状態となった場合には、n個のバイパス付単電池7が直列に接続された状態となる。この結果、組電池2の出力電圧は12.0[V]のn倍となる。例えば、全てのバイパス付単電池7について単電池8が接続された状態となった場合には、7個のバイパス付単電池7が直列に接続される。この場合には、組電池2の出力電圧は、14.0[V]となる。
【0020】
なお、本実施例では、7個の単電池8のうち1個の単電池8が点検又は交換時の予備として用いられることとする。例えば、図1に示すように、7個のバイパス付単電池7のうち6個のバイパス付単電池(図1に示す上から2〜7番目のバイパス付単電池7)について、単電池8が接続された状態となる。この場合には、6個の単電池8が直列に接続された状態となるので、組電池2の出力電圧は12.0[V]となる。すなわち、この状態では、組電池2は、定格電圧が12.0[V]、満充電電圧が13.2[V]、定格容量が200[Ah]となる。そして、図1に示すように、7個のバイパス付単電池7のうち残り1個のバイパス付単電池7(図1に示す上から1番目のバイパス付単電池7)については、単電池8がバイパスされた状態となっている。この単電池8が、点検又は交換時の予備として用いられる。
【0021】
図1の説明にもどって、ダイオード3は、組電池2から出力される電力を負荷6へ供給する。具体的には、ダイオード3は、アノードが組電池2の出力に接続され、カソードが負荷6の入力端に接続される。
【0022】
充電器4は、交流電源5から出力される交流電力を用いて、複数の単電池8それぞれを充電する。本実施例では、充電器4と整流器1とは交流電源5に並列に接続される。そのため、交流電源5が有効である場合には、交流電源5から出力される交流電力が整流器1及び充電器4それぞれに供給される。すなわち、交流電源5が有効である場合には、負荷6への給電と組電池2の充電とが並列に行われる。
【0023】
このような構成のもと、本実施例に係る電源システム10では、組電池2は、複数の単電池8の中から任意に選択されたn個の単電池8を直列に接続して得られる電圧を出力する。そして、本実施例では、負荷6の最低動作電圧は、単電池8の最低使用電圧とnとの積より低いこととする。
【0024】
また、整流器1の出力電圧は、組電池2の満充電電圧以上に設定される。本実施例では、7個の単電池8のうち1個の単電池8が点検又は交換時の予備として用いられるので、整流器1の出力電圧は13.2[V]以上に設定される。本実施例では、整流器1は、交流電源5から入力した電力を直流電力に変換して14.0[V]の電圧を出力することとする。負荷6への給電は、整流器1と組電池2とから並列に行われる。なお、組電池2の出力にはダイオード3のアノードが接続されているため、組電池2は放電のみ可能であり、整流器1から充電されることはない。
【0025】
また、充電器4の出力電圧は、充電対象の単電池8の満充電電圧に設定される。本実施例では、単電池8と同じ数だけ充電器4が設けられる。そして、各充電器4は、複数の単電池8それぞれに接続され、交流電源5から入力した電力を直流電力に変換して2.2[V]の電圧を出力し、単電池8の充電を行う。
【0026】
ここで、本実施例では、7個の単電池8のうち1個の単電池8が点検又は交換時の予備として用いられるので、組電池2の出力電圧は、最高でも満充電電圧の13.2[V]である。したがって、組電池2の出力電圧は整流器1の出力電圧(14.0[0])より低くなるので、整流器1から出力される電力が優先して負荷6へ供給されることになる。すなわち、交流電源5が有効である限りは、各単電池8は、組電池2に接続されているかどうかに関わらず充電器4により充電され、満充電後も充電器4の出力(2.2V)により電圧が維持される。
【0027】
例えば、いずれかの単電池8について点検や交換が必要になった場合には、対象の単電池8が組電池2から切離され、替わりに、接続されていない単電池8が組電池2に接続される。切離された単電池8は出力に接続されていないため、取り外されても交流電源5の停電時のバックアップ能力に影響はない。
【0028】
図3は、本実施例に係る電源システム10における単電池の点検又は交換を説明するための図である。図3に示すように、例えば、組電池2の上から2番目の単電池8の点検又は交換を行なう際には、予備としていた上から1番目の単電池8を組電池2に接続された状態にし、替わりに、上から2番目の単電池8を組電池2から切り離された状態とすればよい。このように、本実施例では、組電池2には常に必要な数の単電池8が接続されながらも、単電池8の切り離しが可能になる。したがって、単電池8の点検や交換に際しても停電時のバックアップ給電が可能になる。
【0029】
上述したように、本実施例に係る電源システム10は、整流器1と、組電池2と、充電器4とを有する。整流器1は、交流電源5から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷6へ供給する。組電池2は、n+m(n、mは自然数)個の複数の単電池8を有し、交流電源5の停電時に負荷6へ直流電力を供給する。充電器4は、交流電源5から出力される交流電力を用いて複数の単電池8それぞれを充電する。そして、組電池2は、複数の単電池8のうち任意に選択されたn個の単電池8を直列に接続して得られる電圧を出力する。また、整流器1は、出力電圧が組電池2の満充電電圧以上に設定される。また、充電器4は、出力電圧が充電対象の単電池8の満充電電圧に設定される。
【0030】
すなわち、本実施例では、点検又は交換の対象となる単電池8を切り離す替わりに、予備の単電池8を接続することで、必要な数の単電池8を常に組電池2に接続しつつ、単電池8の点検又は交換を行うことができる。したがって、本実施例によれば、点検や交換のために単電池8が切り離される場合でも、停電時のバックアップ給電を行うことが可能になる。
【0031】
また、本実施例では、負荷6の最低動作電圧は、単電池8の最低使用電圧とnとの積より低いこととした。したがって、本実施例によれば、負荷6の正常な動作を損なうことなく、停電時のバックアップ給電を行うことが可能になる。
【0032】
また、本実施例では、組電池2は、第1の単電池8と第2の単電池とを直列に接続する単極双投スイッチ9を有する。単極双投スイッチ9は、極Aを極B及び極Cのいずれか一方に接続する構成であって、極Aが第1の単電池8に接続され、極Bが第2の単電池8のプラス極に接続され、第3の極が第1の単電池8のマイナス極に接続される。したがって、本実施例によれば、操作者が単極双投スイッチ9の極を切り換えることで、交換又は点検の対象の単電池8を組電池2から容易に切り離すことができる。また、交換又は点検が完了した単電池8を組電池2に容易に接続することができる。
【0033】
なお、本実施例では、単電池8として鉛蓄電池を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、リチウムイオン蓄電池などの他の2次電池を単電池8として用いる場合でも、本発明を同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 電源システム
1 整流器
2 組電池
3 ダイオード
4 充電器
5 交流電源
6 負荷
7 バイパス付単電池
8 単電池
9 単極双投スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷へ供給する整流器と、
n+m(n、mは自然数)個の複数の蓄電池を有し、前記交流電源の停電時に前記負荷へ直流電力を供給する組電池と、
前記交流電源から出力される交流電力を用いて前記複数の蓄電池それぞれを充電する充電器とを有し、
前記組電池は、前記複数の蓄電池の中から任意に選択されたn個の蓄電池を直列に接続して得られる電圧を出力し、
前記整流器の出力電圧は、前記組電池の満充電電圧以上に設定され、
前記充電器の出力電圧は、充電対象の前記蓄電池の満充電電圧に設定される
ことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記負荷の最低動作電圧は、前記蓄電池の最低使用電圧とnとの積より低いことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記組電池は、第1の蓄電池と第2の蓄電池とを直列に接続する単極双投スイッチを有し、
前記単極双投スイッチは、第1の極を第2の極及び第3の極のいずれか一方に接続する構成であって、前記第1の極が前記第1の蓄電池に接続され、前記第2の極が第2の蓄電池の一方の極に接続され、前記第3の極が第1の蓄電池の他方の極に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125122(P2012−125122A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276291(P2010−276291)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】