説明

電源システム

【課題】2つの直流電源を有効に使用可能な電源システムについて、共振現象を発生させることなく負荷への出力電圧を安定的に制御するための構成を提供する。
【解決手段】電源システムは、直流電源10と、直流電源20と、電力変換器50♯とを含む。電力変換器50♯は、複数のスイッチング素子S1〜S4およびリアクトルL1,L2と、共振減衰回路55とを有する。スイッチング素子S1〜S4は、直流電源10および電源配線PLの間の電力変換経路と、直流電源20および電源配線PLの間の電力変換回路との両方に含まれるように配置される。共振減衰回路55は、リアクトルL1と磁気結合されたリアクトルL3と、リアクトルL2と磁気結合されたリアクトルL4と、キャパシタC3および抵抗R3とを含む。キャパシタC3および抵抗R3には、リアクトルL3の誘起電圧Vm1と、リアクトルL4の誘起電圧Vm2との差電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源システムに関し、より特定的には、2つの直流電源と負荷との間で直流電力変換を実行するための電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−295715号公報(特許文献1)には、2つの直流電源から負荷(車両駆動電動機)へ電力を供給する電気自動車の電源システムが記載されている。特許文献1では、直流電源として2個の電気二重層キャパシタが用いられる。そして、2個の電気二重層キャパシタを並列接続して負荷へ電力を供給する動作モードを設けることが記載される。
【0003】
また、特開2008−54477号公報(特許文献2)には、複数の直流電圧を入力とし、複数の直流電圧を出力する電圧変換装置が記載されている。特許文献2に記載の電力変換装置では、エネルギ蓄積手段(コイル)の端子と、複数の入力電位および複数の出力電位との接続を切替えることによって、動作モードが切替えられる。そして、動作モードには、2つの直流電源が並列に接続されて負荷へ電力を供給するモードが含まれる。
【0004】
また、特開2010−57288号公報(特許文献3)には、第1蓄電ユニットおよび第2蓄電ユニットを備えた電力供給装置として、当該蓄電ユニット間の直流接続と並列接続とを切換えるスイッチを設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−295715号公報
【特許文献2】特開2008−54477号公報
【特許文献3】特開2010−57288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2の構成では、2つの直流電源を並列に接続して負荷へ電力供給することが可能であるが、2つの直流電源を直列に接続することは想定されていない。
【0007】
特許文献3の構成では、第1蓄電ユニットおよび第2蓄電ユニットの直列接続および並列接続を切換えることによって、モータジェネレータを駆動制御するインバータへの印加電圧を変化させている。すなわち、特許文献3では、直列接続あるいは並列接続された蓄電ユニットからの出力電圧に対する直流電圧変換機能について想定していない。
【0008】
したがって、負荷に対する出力電力を電圧指令値に従って制御する電源システムにおいて、特許文献1〜3に記載の構成では、2つの直流電源を有効に使用できない可能性がある。
【0009】
また、電源システムを動作させる際に、電力変換器の回路内にLC回路によって電圧が振動する現象(共振現象)が発生すると、電磁波ノイズの発生により電力変換器外部へ影響を与えることが懸念される。したがって、電力変換器での共振現象を抑制するような構成とすることが求められる。
【0010】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、2つの直流電源を有効に使用可能な電源システムについて、共振現象を発生させることなく、負荷への出力電圧を安定的に制御するための構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による電源システムは、第1の直流電源と、第2の直流電源と、負荷に電気的に接続される電源配線と第1および第2の直流電源との間で直流電力変換を実行するための電力変換器と、制御装置とを含む。電力変換器は、複数のスイッチング素子と、第1のリアクトルと、第2のリアクトルと、共振減衰回路とを含む。複数のスイッチング素子は、第1の直流電源と電源配線との間に形成される第1の電力変換経路と、第2の直流電源と電源配線との間に形成される第2の電力変換経路との両方に含まれるように配置される。第1のリアクトルは、第1の電力変換経路に含まれるように配置される。第2のリアクトルは、第2の電力変換経路に含まれるように配置される。共振減衰回路は、第1および第2の電力変換経路に対して電気的には非接続である。共振減衰回路は、第3のリアクトルと、第4のリアクトルと、キャパシタおよび抵抗とを有する。第3のリアクトルは、第1のリアクトルと磁気結合される。第4のリアクトルは、第2のリアクトルと磁気結合され、かつ、第3のリアクトルに対して直列に接続される。キャパシタおよび抵抗は、第3および第4のリアクトルと直列に接続される。制御装置は、電源配線上の出力電圧を制御するように複数のスイッチング素子のオンオフを制御する。
【0012】
好ましくは、複数のスイッチング素子は、第1から第4のスイッチング素子を含む。第1のスイッチング素子は、電源配線および第1のノードの間に電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第2のノードおよび第1のノードの間に電気的に接続される。第3のスイッチング素子は、第2の直流電源の正極端子と電気的に接続される第4のノード、および第2のノードの間に電気的に接続される。第4のスイッチング素子は、第2の直流電源の負極端子と第3のノードとの間に電気的に接続される。電力変換器は、第1および第2のリアクトルをさらに含む。第1のリアクトルは、第1の直流電源の正極端子と第2のノードとの間に電気的に接続される。第2のリアクトルは、第2の直流電源の正極端子と第1のノードとの間に電気的に接続される。
【0013】
さらに好ましくは、第1のリアクトルおよび第3のリアクトルは、磁性材料で構成された共通のコアに巻回された巻線を有するように構成される。
【0014】
また、さらに好ましくは、第2のリアクトルおよび第4のリアクトルは、磁性材料で構成された共通のコアに巻回された巻線を有するように構成される。
【0015】
あるいは好ましくは、電力変換器は、複数のスイッチング素子の制御によって、第1および第2の直流電源が電源配線に対して直列に電気的に接続された状態で直流電力変換を実行する第1の動作モードと、第1および第2の直流電源が電源配線に対して並列に直流電力変換を実行する第2の動作モードとを切換えられるように構成される。
【0016】
さらに好ましくは、電力変換器は、第1および第2の直流電源が電源配線に対して直列に電気的に接続された状態で直流電力変換を実行する第1の動作モードと、複数のスイッチング素子の制御によって、第1および第2の直流電源が電源配線に対して並列に直流電力変換を実行する第2の動作モードとを切換えられるように構成される。そして、電力変換器は、第1の動作モードでは、第3のスイッチング素子をオン固定する一方で、直列接続された第1および第2の直流電源と電源配線との間での直流電力変換のための制御信号に従って、第2および第4のスイッチング素子と第1のスイッチング素子とが相補的にオンオフするように、第1から第4のスイッチング素子のオンオフを制御する。
【0017】
さらに好ましくは、電力変換器は、第1の動作モードでは、直列接続された第1および第2の直流電源と電源配線との間での直流電力変換について、出力電圧が指令電圧と一致するように制御する。
【0018】
また、さらに好ましくは、電力変換器は、第2の動作モードでは、第1の直流電源と電源配線との間での直流電力変換のための第1の制御信号と、第2の直流電源と電源配線との間での直流電力変換のための第2の制御信号との論理和に従って、複数のスイッチング素子のオンオフを制御する。
【0019】
あるいは、さらに好ましくは、電力変換器は、第2の動作モードでは、第1および第2の直流電源のうちの一方の直流電源と、電源配線との間の直流電力変換については出力電圧が指令電圧と一致するように制御する一方で、第1および第2の直流電源のうちの他方の直流電源と電源配線との間の直流電力変換については他方の直流電源の電流が指令電流と一致するように制御する。
【0020】
好ましくは、電力変換器は、第1および第2の直流電源が電源配線に対して直列に電気的に接続された状態で直流電力変換を実行する第1の動作モードと、複数のスイッチング素子の制御によって、第1および第2の直流電源が電源配線に対して並列に直流電力変換を実行する第2の動作モードとを切換えられるように構成される。そして、複数のスイッチング素子は、第1の動作モードでは第1および第2の直流電源を直列接続するためにオン固定される一方で、第2の動作モードでは出力電圧を制御する直流電力変換のためのデューティ比に従ってオンオフされるスイッチング素子を含む。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、2つの直流電源を備えた電源システムについて、負荷への出力電圧を共振現象を発生させることなく安定的に制御した上で、2つの直流電源を有効に使用可能な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による電源システムの構成例を示す回路図である。
【図2】パラレル接続モードにおける第1の回路動作を説明する回路図である。
【図3】パラレル接続モードにおける第2の回路動作を説明する回路図である。
【図4】図2の回路動作時におけるリアクトルの還流経路を説明する回路図である。
【図5】図3の回路動作時におけるリアクトルの還流経路を説明する回路図である。
【図6】パラレル接続モードにおける第1の直流電源に対する直流電力変換(昇圧動作)を説明する回路図である。
【図7】パラレル接続モードにおける第2の直流電源に対する直流電力変換(昇圧動作)を説明する回路図である。
【図8】シリーズ接続モードにおける回路動作を説明する回路図である。
【図9】図8の回路動作時におけるリアクトルの還流経路を説明する回路図である。
【図10】シリーズ接続モードにおける直流電圧変換(昇圧動作)を説明する回路図である。
【図11】シリーズ接続モードにおける共振現象を説明するための波形図である。
【図12】図11の波形図の各期間における電力変換器の回路動作を説明するための第1の回路図である。
【図13】図11の波形図の各期間における電力変換器の回路動作を説明するための第2の回路図である。
【図14】図11の波形図の各期間における電力変換器の回路動作を説明するための第3の回路図である。
【図15】図11の波形図の各期間における電力変換器の回路動作を説明するための第4の回路図である。
【図16】図11の波形図の各期間における電力変換器の回路動作を説明するための第5の回路図である。
【図17】図11の波形図の各期間における電力変換器の回路動作を説明するための第6回路図である。
【図18】シリーズ接続モードにおける共振現象発生時の等価回路図である。
【図19】比較例として示される減衰抵抗を付加した電力変換回路の構成を示す回路図である。
【図20】図19に示した電力変換器の共振現象発生時の等価回路図である。
【図21】図18に示した共振回路における電流および電圧のシミュレーション波形図である。
【図22】図20に示した共振回路における電流および電圧のシミュレーション波形図である。
【図23】本実施の形態による電力変換器の構成を説明するための回路図である。
【図24】図23に示した電力変換器に含まれるリアクトルの構成例を示す概念図である。
【図25】図23に示した本実施の形態による電力変換器の共振現象発生時の等価回路図である。
【図26】共振減衰回路によって形成される振動モデルを示す回路図である。である。
【図27】図26に示した振動モデルおよびスイッチング素子の電圧の動作波形図である。
【図28】本実施の形態による電力変換器における共振現象時の電流および電圧のシミュレーション波形図である。
【図29】図1に示した電力変換器(比較例)における共振現象時の電流および電圧のシミュレーション波形図である。
【図30】本実施の形態による電力変換器のパラレル接続モードにおける共振減衰回路の動作波形図である。
【図31】パラレル接続モードにおける負荷側からの等価回路を示すブロック図である。
【図32】第1の電源の制御動作例を説明するための波形図である。
【図33】第2の電源の制御動作例を説明するための波形図である。
【図34】電圧源として動作する電源の制御ブロックの構成例を示す図である。
【図35】電流源として動作する電源の制御ブロックの構成例を示す図である。
【図36】パラレル接続モードにおける各制御データの設定を説明する図表である。
【図37】シリーズ接続モードにおける負荷側からの等価回路を示すブロック図である。
【図38】シリーズ接続モードにおける制御動作例を説明するための波形図である。
【図39】シリーズ接続モードにおける電源の制御ブロックの構成例を示す図である。
【図40】シリーズ接続モードにおける各制御データの設定を説明する図表である。
【図41】本発明の実施の形態による電源システムが適用された車両電源システムの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0024】
(回路構成)
図1は、本発明の実施の形態による電源システムの構成例を説明するための回路図である。
【0025】
図1を参照して、電源システム5は、直流電源10と、直流電源20と、負荷30と、制御装置40と、電力変換器50とを備える。なお、電力変換器50は、本実施の形態による電力変換器(後述)に対する比較例として示される。すなわち、図1に示した電源システム5において、図1の電力変換器50を、本実施の形態による電力変換器50♯(図23)によって置換することによって、本発明の実施の形態による電源システムが構成される。
【0026】
なお、後述するように、本実施の形態による電力変換器50♯は、電力変換器50の回路構成に加えて、図1の電力変換器50における共振現象を防止するための受動素子によって構成された共振減衰回路をさらに含むものである。したがって、以下では、まず、電力変換器50の回路構成および動作、ならびに、問題となる共振現象を順に説明する。
【0027】
図1において、直流電源10および20は、二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電装置によって構成される。たとえば、直流電源10は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池のような二次電池で構成される。また、直流電源20は、たとえば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の出力特性に優れた直流電圧源要素により構成される。直流電源10および直流電源20は、「第1の直流電源」および「第2の直流電源」にそれぞれ対応する。ただし、直流電源10および20を同種の蓄電装置によって構成することも可能である。
【0028】
電力変換器50は、直流電源10および直流電源20と、負荷30との間に接続される。電力変換器50は、負荷30と接続された電源配線PL上の直流電圧(以下、出力電圧Voとも称する)を電圧指令値に従って制御するように構成される。
【0029】
負荷30は、電力変換器50の出力電圧Voを受けて動作する。出力電圧Voの電圧指令値は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。電圧指令値は、負荷30の状態に応じて可変に設定されてもよい。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源10,20の充電電力を発生可能に構成されてもよい。
【0030】
電力変換器50は、電力用半導体スイッチング素子S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。本実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。スイッチング素子S1〜S4は、制御装置40からの制御信号SG1〜SG4に応答して、オンオフを制御することが可能である。
【0031】
スイッチング素子S1は、電源配線PLおよびノードN1の間に電気的に接続される。リアクトルL2は、ノードN1と直流電源20の正極端子との間に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。リアクトルL1はノードN2と直流電源10の正極端子との間に接続される。スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および接地配線GLの間に電気的に接続される。接地配線GLは、負荷30および、直流電源10の負極端子と電気的に接続される。
【0032】
制御装置40は、たとえば、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを有する電子制御ユニット(ECU)によって構成される。制御装置40は、メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なうように構成される。あるいは、制御装置40の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
【0033】
制御装置40は、出力電圧Voを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。
【0034】
なお、図1では図示を省略しているが、直流電源10の電圧(V[1]と表記する)および電流(I[1]と表記する)、直流電源20の電圧(V[2]と表記する)および電流(I[2]と表記する)、ならびに、出力電圧Voの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。
【0035】
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源10および直流電源20の各々に対応して昇圧チョッパ回路を備えた構成となっている。すなわち、直流電源10に対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパ回路が構成される。同様に、直流電源20に対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパ回路が構成される。そして、第1の昇圧チョッパ回路によって直流電源10および電源配線PLの間に形成される電力変換経路と、第2の昇圧チョッパ回路によって直流電源10および電源配線PLの間に形成される電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4が含まれる。
【0036】
なお、昇圧チョッパ回路における電圧変換比(昇圧比)は、低圧側(直流電源側)の電圧Vi、高圧側(負荷側)の電圧VH、および、下アーム素子のデューティ比DTを用いて、下記(1)式で示されることが知られている。なお、デューティ比DTは、下アーム素子のオン期間およびオフ期間の和であるスイッチング周期に対する、下アーム素子のオン期間比で定義される。なお、下アーム素子のオフ期間には、上アーム素子がオンされる。
【0037】
VH=1/(1−DT)・Vi …(1)
なお、本実施の形態による電力変換器50では、電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4の制御によって、直流電源10,20が並列に負荷30との間で電力の授受を行なうパラレル接続モードと、直列に接続された直流電源10,20が負荷30との間で電力の授受を実行するシリーズ接続モードとを切替えて動作することが可能である。シリーズ接続モードは「第1の動作モード」に対応し、パラレル接続モードは「第2の動作モード」に対応する。
【0038】
(各動作モードでの基本的な回路動作)
電力変換器50の各動作モードでの基本的な回路動作について説明する。まず、電力変換器50のパラレル接続モードでの動作について説明する。
【0039】
電力変換器50のパラレル接続モードでの回路動作について説明する。
図2および図3に示されるように、スイッチング素子S4またはS2をオンすることによって、直流電源10および20を電源配線PLに対して並列に接続することができる。ここで、並列接続モードでは、直流電源10の電圧V[1]と直流電源20の電圧V[2]との高低に応じて等価回路が異なってくる。
【0040】
図2(a)に示されるように、V[2]>V[1]のときは、スイッチング素子S4をオンすることにより、スイッチング素子S2,S3を介して、直流電源10および20が並列に接続される。このときの等価回路が図2(b)に示される。
【0041】
図2(b)を参照して、直流電源10および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源20および電源配線PLの間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
【0042】
一方、図3(a)に示されるように、V[1]>V[2]のときには、スイッチング素子S2をオンすることにより、スイッチング素子S3,S4を介して、直流電源10および20が並列に接続される。このときの等価回路が図3(b)に示される。
【0043】
図3(b)を参照して、直流電源20および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
【0044】
図2および図3に示した回路動作では、いかなる場面においてもリアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギの放出経路が必要である。異なる電流が流れているリアクトル同士がスイッチング素子を介して直列に接続されると、蓄積エネルギと電流の関係に矛盾が生じるために、スパーク等が発生して回路破壊に繋がる虞があるためである。したがって、リアクトルL1,L2の蓄積エネルギを放出するための還流経路が、回路上に必ず設けられる必要がある。
【0045】
図4には、図2に示した回路動作時(V[2]>V[1]でのパラレル接続モード)におけるリアクトルの還流経路が示される。図4(a)には、リアクトルL1に対応する還流経路が示され、図4(b)には、リアクトルL2に対する還流経路が示される。
【0046】
図4(a)を参照して、図2(b)の等価回路において、力行状態におけるリアクトルL1の電流は、ダイオードD2,D1、電源配線PL、負荷30および接地配線GLを介した電流経路102によって還流することができる。また、回生状態におけるリアクトルL1の電流は、ダイオードD3を介した電流経路103によって還流することができる。電流経路102,103によって、リアクトルL1に蓄積されたエネルギを放出することができる。
【0047】
図4(b)を参照して、図2(b)の等価回路において、力行状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD1、電源配線PL、負荷30および接地配線GLを介した電流経路104によって還流することができる。また、回生状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD3,D2を介した電流経路105によって還流することができる。電流経路104,105によって、リアクトルL2に蓄積されたエネルギを放出することができる。
【0048】
図5には、図3に示した回路動作時(V[1]>V[2]でのパラレル接続モード)におけるリアクトルの還流経路が示される。図5(a)には、リアクトルL1に対応する還流経路が示され、図5(b)には、リアクトルL2に対する還流経路が示される。
【0049】
図5(a)を参照して、図3(b)の等価回路において、力行状態におけるリアクトルL1の電流は、ダイオードD1、電源配線PL、負荷30および接地配線GLを介した電流経路106により還流することができる。また、回生状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD4,D3を介した電流経路107により還流することができる。電流経路106,107によって、リアクトルL1に蓄積されたエネルギを放出することができる。
【0050】
図5(b)を参照して、図3(b)の等価回路において、力行状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD1、電源配線PL、負荷30、接地配線GLおよびダイオードD4を介した電流経路108により還流することができる。また、回生状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD3を介した電流経路109により還流することができる。電流経路108,109によって、リアクトルL2に蓄積されたエネルギを放出することができる。
【0051】
以上のように、電力変換器50では、パラレル接続モードでの動作時において、いかなる動作状態においても、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギを放出する還流経路が確保されている。
【0052】
次に、図6および図7を用いて、電力変換器50のパラレル接続モードにおける昇圧動作について詳細に説明する。
【0053】
図6には、パラレル接続モードにおける直流電源10に対する直流電力変換(昇圧動作)が示される。
【0054】
図6(a)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオンし、スイッチング素子S1,S2のペアをオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路120が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0055】
これに対して、図6(b)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S2のペアをオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10のエネルギとともに出力するための電流経路121が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0056】
スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S2の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S2のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S3,S4の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図6(a)の電流経路120および図6(b)の電流経路121が交互に形成される。
【0057】
この結果、スイッチング素子S1,S2のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10に対して構成される。図6に示される直流電力変換動作では、直流電源20への電流流通経路がないため、直流電源10および20は互いに非干渉である。すなわち、直流電源10および20に対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
【0058】
このような直流電力変換において、直流電源10の電圧V[1]と、電源配線PLの出力電圧Voとの間には、下記(2)式に示す関係が成立する。(2)式では、スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDaとする。
【0059】
Vo=1/(1−Da)・V[1] …(2)
図7には、パラレル接続モードにおける直流電源20に対する直流電力変換(昇圧動作)が示される。
【0060】
図7(a)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオンし、スイッチング素子S1,S4のペアをオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路130が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0061】
これに対して、図7(b)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S4のペアをオンすることによって、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源20のエネルギとともに出力するための電流経路131が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0062】
スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S4の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S2,S3の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図7(a)の電流経路130および図7(b)の電流経路131が交互に形成される。
【0063】
この結果、スイッチング素子S1,S4のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2,S3のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源20に対して構成される。図7に示される直流電力変換動作では、直流電源10への電流流通経路がないため、直流電源10および20は互いに非干渉である。すなわち、直流電源10および20に対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
【0064】
このような直流電力変換において、直流電源20の電圧V[2]と、電源配線PLの出力電圧Voとの間には、下記(3)式に示す関係が成立する。(3)式では、スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDbとする。
【0065】
Vo=1/(1−Db)・V[2] …(3)
次に、図8および図9を用いて、電力変換器50のシリーズ接続モードでの動作について説明する。
【0066】
図8(a)に示されるように、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10および20を電源配線PLに対して直列に接続することができる。このときの等価回路が図8(b)に示される。
【0067】
図8(b)を参照して、シリーズ接続モードでは、直列接続された直流電源10および20と電源配線PLとの間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間とオフ期間とを交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、スイッチング素子S2,S3のオフ期間にオンされることによって、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。また、オン固定されたスイッチング素子S3により、リアクトルL1をスイッチング素子S4と接続する配線15が等価的に形成される。
【0068】
図8に示した回路動作においても、図4,図5で説明したのと同様に、リアクトルL1,L2の蓄積エネルギを放出するための還流経路が必要である。
【0069】
図9には、図8に示した回路動作時(シリーズ接続モード)におけるリアクトルの還流経路が示される。図9(a)には、力行状態における還流経路が示され、図9(b)には、回生状態における還流経路が示される。
【0070】
図9(a)を参照して、図8(b)の等価回路において、力行状態におけるリアクトルL1の電流は、配線15、ダイオードD2,D1、電源配線PL、負荷30、および接地配線GLを介した電流経路111によって還流することができる。また、力行状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD1、電源配線PL、負荷30、ダイオードD4、および配線15を介した電流経路112により還流することができる。なお、スイッチング素子S2,S4を同時にオンオフしていれば、リアクトルL1,L2の電流は等しいため、配線15には電流が流れない。この結果、ダイオードD2,D4にも電流は流れない。
【0071】
図9(b)を参照して、図8(b)の等価回路において、回生状態におけるリアクトルL1の電流は、ダイオードD4および配線15を介した電流経路113によって還流することができる。同様に、回生状態におけるリアクトルL2の電流は、ダイオードD2および配線15を介した電流経路114によって還流することができる。なお、スイッチング素子S2,S4を同時にオンオフしていれば、リアクトルL1,L2の電流は等しいため、ダイオードD2,D4の電流も等しくなる。この結果、配線15には電流が流れない。
【0072】
このように、電力変換器50では、シリーズ接続モードでの動作時において、力行状態および回生状態のいずれにおいても、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギを放出する還流経路が確保されている。
【0073】
次に、図10を用いて、シリーズ接続モードにおける直流電力変換(昇圧動作)を説明する。
【0074】
図10(a)を参照して、直流電源10,20を直列接続するためにスイッチング素子S3がオン固定される一方で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンし、スイッチング素子S1がオフされる。これにより、リアクトルL1,L2にエネルギを蓄積するための電流経路140,141が形成される。この結果、直列接続された直流電源10,20に対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオン(下アーム素子をオフ)した状態が形成される。
【0075】
これに対して、図10(b)を参照して、スイッチング素子S3をオン固定したままで、図10(a)とは反対に、スイッチング素子S2,S4のペアがオフし、スイッチング素子S1がオンされる。これにより、電流経路142が形成される。電流経路142により、直列接続された直流電源10,20からのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が電源配線PLへ出力される。この結果、直列接続された直流電源10,20に対して、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0076】
スイッチング素子S3がオン固定された下で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる一方でスイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方でスイッチング素子S2,S4がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図10(a)の電流経路140,141および図10(b)の電流経路142が交互に形成される。
【0077】
シリーズ接続モードの直流電力変換では、直流電源10の電圧V[1]、直流電源20の電圧V[2]、および、電源配線PLの出力電圧Voの間には、下記(4)式に示す関係が成立する。(10)式では、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDcとする。
【0078】
Vo=1/(1−Dc)・(V[1]+V[2]) …(4)
ただし、V[1]およびV[2]が異なるときや、リアクトルL1,L2のインダクタンスが異なるときには、図10(a)の動作終了時におけるリアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なる。したがって、図10(b)の動作への移行直後には、リアクトルL1の電流の方が大きいときには電流経路143を介して差分の電流が流れる。一方、リアクトルL2の電流の方が大きいときには電流経路144を介して、差分の電流が流れる。
【0079】
(シリーズ接続モードにおける共振現象)
図1に示した電力変換器50をシリーズ接続モードで動作させたときに、回路内の電圧が変動する共振現象が発生する可能性がある。図11を用いて、シリーズ接続モードにおける共振現象について説明する。
【0080】
図11は、電力変換器50のシリーズ接続モードにおける共振現象を説明するための動作波形図である。図12〜図17には、図11の各期間における電力変換器50の回路動作が示される。なお、図11には、力行状態での動作が例示されているため、ダイオードD1によって電流経路が形成される一方で、スイッチング素子S1は電力変換に直接作用しない。このため、図12〜図17ではスイッチング素子S1を点線で表記している。
【0081】
図11には、リアクトルL1を流れる電流I(L1)およびリアクトルL2を流れる電流I(L2)と、スイッチング素子S2,S4の出力端子間(たとえば、コレクタ−エミッタ間)の電圧V(S2),V(S4)が示される。なお、電流I(L1)は直流電源10の電流I[1]に相当し、電流I(L2)は直流電源20の電流I[2]に相当する。
【0082】
図11を参照して、期間T1では、スイッチング素子S2,S4がターンオンされている。このため、電圧V(S2)=V(S4)=0である。そして、電流I(L1)およびI(L2)はともに上昇している。なお、直流電源10および20の電圧が異なるため、電流I(L1)およびI(L2)が上昇する傾きは異なる。図11の例では、V[1]>V[2]の例が示されている。
【0083】
図12には、期間T1における回路動作が示される。図12を参照して、期間T1では、スイッチング素子S2〜S4がターンオンし、スイッチング素子S1がターンオフされる。したがって、図10(a)に示されたのと同様に、リアクトルL1およびL2を充電する電流経路が形成される。したがって、期間T1では、電流I(L1)およびI(L2)はともに上昇している。
【0084】
再び図11を参照して、期間T2は、スイッチング素子S2,S4のターンオフが開始される過渡過程に対応する。期間T2では、電圧V(S2),V(S4)が上昇する。
【0085】
図13には、期間T2における回路動作が示される。図13を参照して、期間T1の状態から、スイッチング素子S2,S4のターンオフが指示されることにより、スイッチング素子S2,S4の導通経路が遮断される。そして、ターンオフの過渡過程では、出力端子間(エミッタおよびコレクタ)に形成される寄生容量(以下、出力容量とも称する)が充電されることになる。この充電に伴って、図11に示したように、電圧V(S2),V(S4)が上昇する。
【0086】
そして、期間T3では、電圧V(S2),V(S4)が、V(S2)+V(S4)=Voの状態まで上昇する。
【0087】
図14には、期間T3における回路動作が示される。図14を参照して、図11の例では、I(L1)>I(L2)であるので、I(L1)−I(L2)の差電流が、ダイオードD2を介して負荷30へ供給されるようになる。すなわち、ダイオードD2がオンし始める。
【0088】
これにより、図11に示すように、期間T3では、電流I(L2)が上昇を続ける一方で、電流I(L1)が低下する。また、期間T3では、ダイオードD2がオンし始めるため、電圧V(S2)はほぼ零になる。この結果、期間T2におけるV(S2)およびV(S4)の和(すなわちVo)が全てスイッチング素子S4に印加される。すなわち、V(S4)=Voとなる。
【0089】
そして、電流I(L1)=I(L2)となると、期間T4が開始される。図15には、電流I(L1)=I(L2)となった時点における回路動作が示される。
【0090】
図15を参照して、電流I(L1)=I(L2)になると、ダイオードD2の電流が零となる。すなわち、図10(b)に示された、直流電源10および20が直列接続された電流経路が形成される。
【0091】
このとき、電力変換器50内での電圧関係は、図16のようになる。図16に示されるように、出力電圧Voと電圧V(S2),V(S4)の間には、Vo=V(S2)+V(S4)が成立する。また、図中の電圧VHおよび電圧V(S2),V(S4)について、下記の電圧関係式(5)、(6)が成立する。
【0092】
VH=V[1]+V(L1)+V[2]+V(L2) …(5)
V(S2)=V(L2)+V[2],V(S4)=V(L2)+V[2] …(6)
しかしながら、式(5),(6)および、Vo=V(S2)+V(S4)の条件では、V(S2)およびV(S4)の分担比が規定されない。このため、図11に示すように、期間T4では、リアクトルL1,L2と、スイッチング素子S2,S4の出力容量とによるLC回路での振動現象が発生する。これにより、電圧V(S2)およびV(S4)が周期的に変動する、共振現象が発生する。
【0093】
期間T4において、共振は電流経路中の寄生抵抗によって徐々に減衰する。そして、図17に示されるように、式(5),(6)での電圧V(S2)およびV(S4)がそれぞれ安定電位Vx,Vyに収束することによって、共振現象は終息する。この状態でのVxおよびVyの和は、出力電圧Voに対応する。
【0094】
これにより、図11に示されるように、期間T5では、スイッチング素子S2,S4の電圧V(S2)およびV(S4)は安定状態となる。なお、図11の動作波形図から、共振現象によって電圧V(S2)およびV(S4)が変動しても、電流I(L1)およびI(L2)は安定的に制御されることが理解される。すなわち、図11に示した共振現象が発生しても、電力変換器50の動作が直ちに不安定になることはない。しかしながら、電圧変動によって共振周波数での電磁ノイズが発生される可能性がある。電磁ノイズのレベルによっては、周囲の機器に影響を与えることが懸念される。たとえば、ラジオやオーディオ等に雑音が入ることが懸念される。
【0095】
図18には、図11で説明した共振現象の発生時における等価回路が示される。
図18を参照して、上述した、図11の期間T4における電圧関係式より、共振現象の発生時には、電力変換器50では共振回路70が構成される。
【0096】
共振回路70は、リアクトルL1およびスイッチング素子S4の出力容量C4が並列接続されたLC回路と、リアクトルL2およびスイッチング素子S2の出力容量C2が並列接続されたLC回路とが直列に接続された構成を有する。共振回路70の共振周波数fresは、リアクトルL1,L2のインダクタンスをLとし、出力容量C2,C4のキャパシタンスをCとすると、下記(7)式で示される。同様に、共振の先鋭度Qは、下記(8)式で示される。なお、(8)式中のRは、共振経路に含まれる並列抵抗成分である。
【0097】
【数1】

【0098】
式(8)から、共振経路と並列に抵抗を挿入すれば、共振電圧の減衰効果を得ることが可能であることが理解できる。
【0099】
図19には、共振現象を減衰させるための減衰抵抗を付加した構成が比較例として示される。
【0100】
図19を参照して、比較例として示される構成では、電力変換器50において、スイッチング素子S4と並列に抵抗素子61が接続されている。
【0101】
図20には、図19に示した電力変換器の共振現象発生時における等価回路図が示される。
【0102】
図20を参照して、図19の電力変換器によれば、共振現象の発生時には共振回路71が構成される。
【0103】
共振回路71は、図18に示した共振回路70と比較して、スイッチング素子S4の出力容量C4に対して並列接続される抵抗素子61をさらに含む。共振回路71のその他の構成は、共振回路70と同様である。
【0104】
抵抗素子61の抵抗値Rによって、式(8)に示したように、共振の先鋭度Qを低下させることができる。すなわち、抵抗素子61の抵抗値が低いほど減衰効果が高くなる。
【0105】
図21には、図18に示した共振回路70における電流I(L1),I(L2)および電圧V(S2),V(S4)のシミュレーション波形が示される。
【0106】
これに対して、図22には、図20に示した共振回路71における電流I(L1),I(L2)および電圧V(S2),V(S4)のシミュレーション波形が示される。なお、図22には、Q=3〜5程度となるように、抵抗素子61の抵抗値Rを設計した場合の波形が示されている。
【0107】
図21および図22の比較から理解されるように、抵抗素子61を挿入することによって、共振現象は減衰される。すなわち、図11の期間T4で発生する、スイッチング素子S2,S4の電圧V(S2),V(S4)の電圧変動の振幅が抑制される。
【0108】
しかしながら、図19に示した比較例では、共振を抑制するための抵抗素子61が、スイッチング素子S4のオフ期間、すなわちV(S4)>0の期間で常に電力を消費する。特に、図2〜図9で説明したパラレル接続モードでは、共振現象の虞がないにも関らず、共振現象を抑制するための抵抗素子61による電力消費が常時発生することになる。このため、電力変換器50の効率が低下することが問題となる。
【0109】
したがって、本実施の形態による電源システムでは、このような電力消費を発生させることなく共振現象を抑制できるような回路構成を提供する。
【0110】
(共振現象を抑制するための回路構成)
図23は、本発明の実施の形態に係る電源システムにおいて、図1に示した電力変換器50に代えて適用される、本実施の形態による電力変換器50♯の構成を説明するための回路図である。
【0111】
図23を参照して、電力変換器50♯は、図1に示した電力変換器50と同様の、スイッチング素子S1〜S4、ダイオードD1〜D4および、リアクトルL1,L2に加えて、共振減衰回路55をさらに含む。共振減衰回路55は、リアクトルL3,L4と、キャパシタC3と、抵抗R3とを有する。
【0112】
リアクトルL3は、リアクトルL1と磁気結合するように構成される。同様に、リアクトルL4はリアクトルL2と磁気結合するように構成される。たとえば、リアクトルL3,L4は、図24に示すように、リアクトルL1,L2と共通のコアに対して巻線を巻回することによって構成できる。
【0113】
図24を参照して、リアクトルL1(または、L2)は、磁性材料で構成されたコア180に巻回された巻線118によって構成される。リアクトルL3(またはL4)は、リアクトルL1(または、L2)と共通のコア180に巻回された巻線119によって構成される。このときに、コア180にはギャップが設けられる場合と設けられない場合があるが、いずれの場合にも、コア180は、磁気的な閉回路を形成している。巻線118,119は、この共通の閉回路の一部に対して巻回されるように配置される。
【0114】
図23に示されるように、リアクトルL3,L4の一方は、リアクトルL1またはL2と同一方向の電圧が誘起されるように構成され、リアクトルL3,L4の他方は、リアクトルL1またはL2と逆方向の電圧が誘起されるように構成される。図24に示した巻線119の巻回方向を調整することで、図23に示した方向の誘起電圧を、リアクトルL3,L4に発生されることができる。図23の構成例では、リアクトルL2には、リアクトルL4との逆極性の電圧が誘起される。
【0115】
図25には、共振減衰回路55を含む電力変換器50♯の共振現象発生時における等価回路図が示される。
【0116】
図25を参照して、共振減衰回路55を除く部分には、図18に示した共振回路70と同様の等価回路が形成される。一方で、リアクトルL3には、リアクトルL1の電圧V(L1)に応じた誘起電圧Vm1が発生される。また、リアクトルL4には、リアクトルL2の電圧V(L2)に応じた誘起電圧Vm2が発生される。
【0117】
したがって、共振減衰回路55によって、図26に示される振動モデルが形成される。
図26を参照して、リアクトルL3およびL4の一方に、リアクトルL1またはL2と逆極性の誘起電圧を発生されることにより、直列接続されたキャパシタC3および抵抗R3に対して、誘起電圧Vm1およびVm2の差電圧(図25の例では、Vm1−Vm2)が印加される。すなわち、共振減衰回路55に生じる振動電圧Vdmpは、Vdmp=Vm1−Vm2となる。キャパシタC3および抵抗R3には、振動電圧Vdmpによって生じる振動電流idmpが流れる。
【0118】
図27には、図26に示した振動モデルにおける振動電圧Vdmpおよび振動電流idmp、ならびに、スイッチング素子S2,S4の電圧V(S2),V(S4)のシミュレーション波形図が示される。
【0119】
図27を参照して、スイッチング素子S2,S4の電圧V(S2),V(S4)に、図11の期間T4における電圧変動が発生すると、共振電流経路に含まれるリアクトルL1,L2にも電圧変動が生じる。これにより、リアクトルL1,L2と磁気結合されたリアクトルL3,L4に生じる誘起電圧によって、共振減衰回路55に振動電圧Vdmpが発生する。
【0120】
振動電流idmpは、キャパシタC3によって直流分がカットされるため交流電流となる。また、抵抗R3によって、交流電流の振幅は減衰される。したがって、振動電流idmpは、共振現象の発生時のみに生じるとともに、抵抗R3によって減衰される。この減衰効果は、磁気結合を介してリアクトルL1,L2の電圧変動を減衰されるように作用する。この結果、スイッチング素子S2,S4の共振現象についても減衰効果を得ることができる。
【0121】
図28には、本実施の形態による電力変換器における共振現象時の電流および電圧のシミュレーション波形図が示される。一方で、図29には比較例として、共振減衰回路55を設けない構成、すなわち、図1に示した電力変換器(比較例)における共振現象時の電流および電圧のシミュレーション波形図が示される。図29に示される波形図は、図21の波形図と同等である。
【0122】
図28を参照して、スイッチング素子S2,S4の電圧V(S2)およびV(S4)に振動が発生している期間において、共振減衰回路55には振動電圧Vdmpおよび振動電流idmpが発生する。そして、振動電流idmpの減衰効果によって、電圧V(S2)およびV(S4)の変動についても減衰されている。
【0123】
図28および図29の比較から理解されるように、共振減衰回路55を設けた電力変換器50♯によれば、シリーズ接続モードにおける共振現象発生時の電圧変動を抑制することができる。これにより、電力変換器50♯の外部に対して放射される電磁波ノイズを低減できる。これにより、電源システムの外部機器に対する影響を抑制することができる。
【0124】
なお、上述のように、シリーズ接続モードにおける共振現象への対応によって、パラレル接続モードにおける損失が増加しないことが重要である。すなわち、パラレル接続モードにおける共振減衰回路55の動作についても検討する。図25および図26から理解されるように、共振減衰回路55での電力損失は、振動電流idmpの2乗と、抵抗R3の抵抗値との積に従う。
【0125】
図30には、本実施の形態による電力変換器のパラレル接続モードにおける共振減衰回路の動作波形図が示される。
【0126】
図30を参照して、パラレル接続モードでは、スイッチング素子S1〜S4のオンオフに応答して、電流I(L1)およびI(L2)の変曲点が発生する。そして、この変曲点において、リアクトルL1,L2の電圧が不連続に変化する。リアクトル電流の各変曲点において、共振減衰回路55には振動電圧Vdmpが発生する。
【0127】
しかしながら、パラレル接続モードでは、リアクトルL1,L2を含む経路に継続的な共振現象が発生することがない。このため、キャパシタC3の直流分カット効果により、振動電流idmpは、短時間で零となる。このため、共振減衰回路55では、図19に示された減衰のための抵抗素子61とは異なり、定常的な電力損失が発生しない。
【0128】
この結果、本実施の形態による電力変換器50♯によれば、定常的な電力損失を発生させることなく、シリーズ接続モードにおける共振現象を抑制することができる。これにより、スイッチング素子S2,S4の電圧変動に起因する電磁波ノイズの発生を抑制できる。
【0129】
(電力変換器の制御動作)
上述のように、共振減衰回路55は受動素子のみで構成されるため、電力変換器50♯についても、出力電圧Voは、スイッチング素子S1〜S4のオンオフによって、電力変換器50と同様に制御できる。以下では、電力変換器50と共通する、電力変換器50♯におけるパラレル接続モードおよびシリーズ接続モードの制御動作について詳細に説明する。以下に説明する制御動作は、制御装置40によるハードウェア処理および/またはソフトウェア処理によって実現される。
【0130】
まず、電力変換器50のパラレル接続モードにおける制御動作について説明する。図31には、パラレル接続モードにおける負荷側から見た等価回路が示される。
【0131】
図31を参照して、パラレル接続モードでは、直流電源10と負荷30との間で直流電力変換を実行する電源PS1と、直流電源20と負荷30との間で直流電力変換を実行する電源PS2とは、負荷30に対して並列に電力を授受する。電源PS1は、図6に示した直流電力変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。同様に、電源PS2は、図7に示した直流電力変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。
【0132】
すなわち、電源PS1は、直流電源10の電圧V[1]および出力電圧Voの間で、式(2)に示した電圧変換比による直流電力変換機能を有する。同様に、電源PS2は、直流電源10の電圧V[2]および出力電圧Voの間で、式(3)に示した電圧変換比による直流電力変換機能を有する。
【0133】
パラレル接続モードでは、両方の電源で共通の制御(出力電圧Voの電圧制御)を同時に実行すると、負荷側で、電源PS1およびPS2が並列接続される形になるため、回路が破綻する可能性がある。したがって、電源PS1および電源PS2の一方の電源が、出力電圧Voを制御する電圧源として動作する。そして、電源PS1および電源PS2の他方の電源は、当該電源の電流を電流指令値に制御する電流源として動作する。各電源PS1,PS2での電圧変換比は、電圧源または電流源として動作するように制御される。
【0134】
電源PS1を電流源とし電源PS2を電圧源として制御した場合には、直流電源10の電力P[1]、直流電源20の電力P[2]、負荷30の電力Poおよび、電流源における電流指令値Ii*の間には、下記(9)式の関係が成立する。
【0135】
P[2]=Po−P[1]=Po−V[1]・Ii* …(9)
直流電源10の電圧V[1]の検出値に応じて、P*=V[1]・Ii*が一定になるように電流指令値Ii*を設定すれば、電流源を構成する直流電源10の電力P[1]を電力指令値Pi*に制御できる。
【0136】
これに対して、電源PS2を電流源とし電源PS1を電圧源として制御した場合には、下記(10)式の関係が成立する。
【0137】
P[1]=Po−P[2]=Po−V[2]・Ii* …(10)
同様に、電流源を構成する直流電源20の電力P[2]についても、P*=V[2]・Ii*が一定になるように電流指令値Ii*を設定すれば、電力指令値Pi*に制御できる。
【0138】
図32には直流電源10に対応する電源PS1の具体的な制御動作例を説明するための波形図が示される。
【0139】
図32を参照して、電源PS1でのデューティ比Da(式(2)参照)は、電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図34)または電流源として動作するための電流フィードバック制御(図35)によって算出される。なお、図32中では、デューティ比Daを示す電圧信号を、同一の符号Daで示している。
【0140】
電源PS1の制御パルス信号SDaは、デューティ比Daと、周期的なキャリア信号25との比較に基づくパルス幅変調(PWM)制御によって生成される。一般的に、キャリア信号25には、三角波あるいはのこぎり波が用いられる。キャリア信号25の周期は、各スイッチング素子のスイッチング周波数に相当し、キャリア信号25の振幅は、Da=1.0に対応する電圧に設定される。
【0141】
制御パルス信号SDaは、デューティ比Daを示す電圧が、キャリア信号25の電圧よりも高いときに論理ハイレベル(以下、Hレベル)に設定される一方で、キャリア信号25の電圧よりも低いときに論理ローレベル(以下、Lレベル)に設定される。制御パルス信号SDaの周期(Hレベル期間+Lレベル期間)に対するHレベル期間の比、すなわち、制御パルス信号SDaのデューティ比は、Daと同等である。
【0142】
制御パルス信号/SDaは、制御パルス信号SDaの反転信号である。デューティ比Daが高くなると、制御パルス信号SDaのデューティ比が高くなる。反対に、デューティ比Daが低くなると、制御パルス信号SDaのデューティ比が長くなる。
【0143】
制御パルス信号SDaは、図6に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。すなわち、制御パルス信号SDaのHレベル期間で下アーム素子がオンされる一方で、Lレベル期間で下アーム素子がオフされる。一方、制御パルス信号/SDaは、図6に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
【0144】
図33には直流電源20に対応する電源PS2の具体的な制御動作例を説明するための波形図が示される。
【0145】
図33を参照して、電源PS2においても、電源PS1と同様のPWM制御によって、デューティ比Db(式(3)参照)に基づいて、制御パルス信号SDbおよび、その反転信号/SDbが生成される。制御パルス信号SDbのデューティ比はDbと同等であり、制御パルス信号/SDbのデューティは(1.0−Db)と同等である。すなわち、デューティ比Dbが高くなると、制御パルス信号SDbのHレベル期間が長くなる。反対に、デューティ比Dbが低くなると、制御パルス信号SDbのLレベル期間が長くなる。
【0146】
制御パルス信号SDbは、図7に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。制御パルス信号/SDbは、図7に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
【0147】
なお、デューティ比Dbは、電源PS1が電圧源として動作するときには、電源PS2が電流源として動作するための電流フィードバック制御(図35)によって算出される。反対に、デューティ比Dbは、電源PS1が電流源として動作するときには、電源PS2が電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図34)によって算出される。
【0148】
図34には、電圧源として動作する電源の制御ブロック201の構成例が示される。
図34を参照して、制御ブロック201は、出力電圧Voの電圧指令値Vo*と、出力電圧Vo(検出値)との偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DvFFとの和に従って、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvを生成する。伝達関数Hvは、電圧源として動作する電源PS1またはPS2の伝達関数に相当する。
【0149】
図35には、電流源として動作する電源の制御ブロック202の構成例が示される。
図35を参照して、制御ブロック202は、電流指令値Ii*と、電流制御される直流電源10または20の電流Ii(検出値)との偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DiFFとの和に従って、電流制御のためのデューティ比指令値Diを生成する。伝達関数Hiは、電流源として動作する電源PS2またはPS1の伝達関数に相当する。
【0150】
図36には、パラレル接続モードにおける各制御データの設定が示される。図36の左欄には、電源PS1(直流電源10)を電流源とし電源PS2(直流電源20)を電圧源として制御した場合の各制御データの設定が示される。
【0151】
図36の左欄を参照して、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、電源PS2(直流電源20)のデューティ比Dbに用いられるとともに、電流制御のためのデューティ比指令値Diが、電源PS1(直流電源10)のデューティ比Daに用いられる。電流制御によって制御される電流Iiは、直流電源10の電流I[1]となる。なお、電圧制御によって制御される電圧は、電源PS1,PS2のいずれを電圧源としても出力電圧Voである。
【0152】
図34中の伝達関数Hvは、図7に示した直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、図35中の伝達関数Hiは、図6に示した直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。
【0153】
電圧制御におけるフィードフォワード制御量DvFFは、下記(11)式に示すように、出力電圧Voと直流電源20の電圧V[2]との電圧差に応じて設定される。また、電流制御におけるフィードフォワード制御量DiFFは、下記(12)式に示すように、出力電圧Voと直流電源10の電圧V[1]との電圧差に応じて設定される。
【0154】
DvFF=(Vo−V[2])/Vo …(11)
DiFF=(Vo−V[1])/Vo …(12)
デューティ比Da(Da=Di)に応じて、図32に示した制御パルス信号SDaおよび/SDaが生成される。同様に、デューティ比Db(Db=Dv)に応じて、図33に示した制御パルス信号SDbおよび/SDbが生成される。
【0155】
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、電源PS1の電流制御のための制御パルス信号と、電源PS2の電圧制御のための制御信号パルスの論理和をとる態様で設定される。
【0156】
スイッチング素子S1は、図6および図7の昇圧チョッパ回路の各々で上アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S1のオンオフを制御する制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。すなわち、制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの少なくとも一方がHレベルの期間でHレベルに設定される。そして、制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの両方がLレベルの期間でLレベルに設定される。
【0157】
この結果、スイッチング素子S1は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の上アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0158】
スイッチング素子S2は、図6の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成し、図7の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S2のオンオフを制御する制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの論理和によって生成される。すなわち、制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの少なくとも一方がHレベルの期間でHレベルに設定される。そして、制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの両方がLレベルの期間でLレベルに設定される。これにより、スイッチング素子S2は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の上アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0159】
同様にして、スイッチング素子S3の制御信号SG3は、制御パルス信号SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S3は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の下アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0160】
また、スイッチング素子S4の制御信号SG4は、制御パルス信号SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S4は、図6の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の下アーム素子および、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0161】
図36の右欄には、電源PS1(直流電源10)を電圧源とし電源PS2(直流電源20)を電流源として制御した場合の各制御データの設定が示される。
【0162】
図36の右欄を参照して、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、電源PS1(直流電源10)のデューティ比Daに用いられるとともに、電流制御のためのデューティ比指令値Diが、電源PS2(直流電源20)のデューティ比Dbに用いられる。電流制御によって制御される電流Iiは、直流電源20の電流I[2]となる。電圧制御によって制御される電圧は、出力電圧Voである。
【0163】
図34中の伝達関数Hvは、図6に示した直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、図35中の伝達関数Hiは、図7に示した直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。
【0164】
電圧制御におけるフィードフォワード制御量DvFFは、下記(13)式に示すように、出力電圧Voと直流電源20の電圧V[1]との電圧差に応じて設定される。また、電流制御におけるフィードフォワード制御量DiFFは、下記(14)式に示すように、出力電圧Voと直流電源10の電圧V[2]との電圧差に応じて設定される。
【0165】
DvFF=(Vo−V[1])/Vo …(13)
DiFF=(Vo−V[2])/Vo …(14)
デューティ比Da(Da=Dv)に応じて、図32に示した制御パルス信号SDaおよび/SDaが生成される。同様に、デューティ比Db(Db=Di)に応じて、図33に示した制御パルス信号SDbおよび/SDbが生成される。
【0166】
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、電源PS1の電圧制御のための制御パルス信号と、電源PS2の電流制御のための制御信号パルスの論理和をとる態様で設定される。すなわち、直流電源10および直流電源20における電圧制御および電流制御の組合せに関らず、スイッチング素子S1〜S4の制御信号SG1〜SG4は同様に生成される。
【0167】
パラレル接続モードでは、制御信号SG2およびSG4が相補のレベルに設定されているので、スイッチング素子S2およびS4は相補的にオンオフされる。これにより、図2に示したV[2]>V[1]のときの動作と、図3に示したV[1]>V[2]の動作とが、自然に切替えられる。さらに、各動作において、スイッチング素子S1,S3が相補にオンオフされることにより、電源PS1,PS2のそれぞれにおいて、デューティ比Da,Dbに従った直流電力変換が実行できる。
【0168】
次に、電力変換器50のシリーズ接続モードにおける制御動作について説明する。図37には、シリーズ接続モードにおける負荷側から見た等価回路が示される。
【0169】
図37を参照して、シリーズ接続モードでは、負荷30に対して、電源PS1および電源PS2が直列に接続される。このため、電源PS1およびPS2を流れる電流は共通となる。したがって、出力電圧Voを制御するためには、電源PS1およびPS2は、共通に電圧制御されることが必要である。
【0170】
直列接続された電源PS1およびPS2は、図10に示した直流電力変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。すなわち、電源PS1,PS2は、直流電源10,20の電圧V[1]およびV[2]の和と、出力電圧Voとの間で、式(4)に示した電圧変換比による直流電力変換機能を有する。
【0171】
シリーズ接続モードでは、直流電源10の電力P[1]および直流電源20の電力P[2]を直接制御することはできない。直流電源10の電力P[1]および電圧V[1]と、直流電源20の電力P[2]および電圧V[2]との間には、下記(15)式の関係が成立する。なお、電力P[1]および電力P[2]の和が、負荷30の電力Poとなる点(Po=P[1]+P[2])は、パラレル接続モードと同様である。
【0172】
P[1]:P[2]=V[1]:V[2] …(15)
図38を参照して、電源PS1,PS2に共通のデューティ比Dc(式(4)参照)は、電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図39)によって算出される。なお、図38中では、デューティ比Dcを示す電圧信号を、同一の符号Dcで示している。
【0173】
制御パルス信号SDcは、図32および図33と同様のPWM制御によって、デューティ比Dc(式(4)参照)に基づいて生成される。制御パルス信号/SDcは、制御パルス信号SDcの反転信号である。制御パルス信号SDcのデューティはデューティ比Dcと同等であり、制御パルス信号/SDcのデューティは(1−Dc)と同等である。
【0174】
制御パルス信号SDcは、図10に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。一方、制御パルス信号/SDcは、図10に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
【0175】
図39には、シリーズ接続モードにおける制御ブロック203の構成例が示される。
図39を参照して、制御ブロック203は、出力電圧Voの電圧指令値Vo*と、出力電圧Voの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DvFFとの和に従って、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvを生成する。伝達関数Hvは、直列接続された電源PS1,PS2の伝達関数に相当する。
【0176】
図40には、シリーズ接続モードにおける各制御データの設定が示される。
図40を参照して、図39に示した電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、デューティ比Dcに用いられる。電圧制御によって制御される電圧は、出力電圧Voである。図39中の伝達関数Hvは、図10に示した昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。ま フィードフォワード制御量DvFFは、下記(16)に示すように、直列接続された電源電圧V[1]+V[2]と、出力電圧Voとの電圧差に応じて設定される。
【0177】
DvFF=(Vo−(V[2]+V[1]))/Vo …(16)
デューティ比Dc(Dc=Dv)に応じて、図38に示した制御パルス信号SDcおよび/SDcが生成される。
【0178】
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDcおよび/SDcに従って、図10に示した昇圧チョッパ回路を制御するように設定される。
【0179】
シリーズ接続モードでは、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10および20が直列に接続される。したがって、制御信号SG3は、Hレベルに固定される。
【0180】
スイッチング素子S1は、図10の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成する。したがって、制御パルス信号/SDcが制御信号SG1として用いられる。また、スイッチング素子S2,S4は、図10の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、制御パルス信号SDcが制御信号SG2,SG4として用いられる。
【0181】
これにより、直列接続された直流電源10および20と、電源配線PLとの間で、出力電圧Voを電圧指令値Vo*に制御するためのデューティ比Dcに従った直流電力変換が実行できる。
【0182】
(電動車両への適用例)
次に、本実施の形態に従う電源システムを具体的に適用した電動車両の電源システムの構成例および動作について説明する。
【0183】
図41は、本発明の実施の形態による電源システムが適用された車両電源システムの構成例を示す回路図である。
【0184】
図41を参照して、直流電源10としては、複数の二次電池セルが直列接続された組電池が用いられる。また、直流電源20としては、直列接続された複数の電気二重層キャパシタが用いられる。さらに、電力変換器50からの直流電圧が出力される電源配線PLおよび接地配線GLの間には平滑コンデンサ35が設けられる。
【0185】
負荷30は、電源配線PL上の直流電圧Voを3相交流電圧に変換するための3相インバータ31と、3相インバータ31からの3相交流電力を受けて動作するモータジェネレータ32とを含む。たとえば、モータジェネレータ32は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される走行用電動機で構成される。すなわち、モータジェネレータ32は、
電気自動車やハイブリッド自動車等の減速時には、回生発電を行う。モータジェネレータ32の発電動作時には、3相インバータ31は、モータジェネレータ32が発電した3相交流電力を直流電力に変換して電源配線PLに出力する。この直流電力によって、直流電源10および/または直流電源20を充電することができる。
【0186】
図41のシステム構成例では、二次電池で構成される直流電源10を定常的な電力供給源として使用し、電気二重層キャパシタで構成される直流電源10を補助的な電力供給源として使用することが好ましい。このため、パラレル接続モードでは、直流電源10の電力を制御して、二次電池の過充電または過放電を防止するために、直流電源10を電流制御する。一方、直流電源20は電圧制御される。
【0187】
パラレル接続モードでは、出力電圧Voを電圧指令値Vo*に従って制御するとともに、負荷30に対して直流電源10および20から並列に電力を授受できる。このため、一方の直流電源からの出力確保が困難な状態(たとえば極低温時)においても、負荷30に必要なエネルギを供給することが可能である。また、直流電源10,20の電力を独立に制御することができるので、直流電源10,20の各電力を精密に管理できる。すなわち、直流電源10,20の各々を、より安全に使用できる。また、直流電源10および20が独立して制御できるので、直流電源10,20の間で電力の授受を行うことも可能となる。この結果、たとえば、負荷30の作動前に、電源配線PLを介して、直流電源10,20の一方の電源によって、他方の電源をプリチャージすることも可能である。
【0188】
なお、図示は省略するが、負荷30(モータジェネレータ32)が発電した回生状態時にも、直流電源10に充電される電力P[1]を電流制御によって一定値に維持するとともに、残りの電力を直流電源20に受入れる電力配分制御を、出力電圧Voの制御と同時に実現することができる。
【0189】
一方、シリーズ接続モードでは、負荷30の電力Poが同じであれば、電力変換器50内のスイッチング素子S1〜S4を流れる電流が、パラレル接続モードよりも低下する。シリーズ接続モードでは、直列接続によって電圧V[1]+V[2]に対する直流電力変換が実行される一方で、パラレル接続モードでは、電圧V[1]に対する直流電力変換による電流と、電圧V[2]に対する直流電力変換による電流との和が各スイッチング素子を流れるからである。したがって、シリーズ接続モードでは、スイッチング素子での電力損失を低下することにより、効率を向上することができる。さらに、シリーズ接続モードでは、負荷30と直流電源10,20との間での電力授受に伴う電圧V[1],V[2]の変動の影響を受けることなく、出力電圧Voを制御することができる。
【0190】
また、パラレル接続モードでは、デューティ比Da,Dbは、電圧V[1],V[2]に対する出力電圧Voの比に従って設定されるため、一方の直流電源の電圧が低下すると、1.0に近い値となってしまう。したがって、制御信号SG1〜SG4のいずれかのHレベル期間比が1.0に近づく可能性がある。実際の昇圧チョッパ回路の制御では、上アーム素子および下アーム素子が同時にオンすることを確実に防止するためのデッドタイムを設ける必要があるため、実現可能なデューティ比Da,Dbには上限値が存在する。したがって、パラレル接続モードのみでは、一方の直流電源の電圧がある程度低下すると電圧制御が不能となってしまう。すなわち、直流電源10,20の蓄積エネルギを使い切る点で、パラレル制御モードには一定の限界が存在する。
【0191】
これに対して、シリーズ接続モードにおけるデューティ比Dcは、電圧V[1]+V[2]に対する出力電圧Voの比に従って設定されるため、一方の直流電源の電圧が低下しても、それ程大きな値とはならない。したがって、パラレル接続モードの場合とは異なり、一方の直流電源の電圧がある程度低下した場合にも電圧制御を継続することができる。この結果、シリーズ接続モードでは、直流電源10,20を直列接続することにより、直流電源10,20の蓄積エネルギを使い切る点で、パラレル接続モードよりも有利である。
【0192】
なお、実施の形態2を適用したシリーズ接続モードにおいても、デューティ比Dcは演算されないものの、制御パルス信号SDa,SDbに基づいて、実際にはデューティ比Dcに従って、スイッチング素子S1〜S4のオンオフが制御されるので、上記の特徴点は共通に適用される。
【0193】
このように実施の形態3による電源システム(車両電源システム)では、複数のスイッチング素子S1〜S4の制御によって、2つの直流電源10,20を並列接続するモードと直列接続するモードとを使い分けることができる。この結果、電動車両の電源システムにおいて、負荷電力への対応性(消費電力の供給および発電電力の受入)および電力管理性が向上するパラレル接続モードと、効率および蓄積エネルギの活用性に優れたシリーズ接続モードとを使い分けることができる。これにより、2つの直流電源10,20を有効に使用して、同一の蓄積電力に対する電動車両の走行距離を延ばすことができる。
【0194】
なお、本実施の形態では、直流電源10および直流電源20について、二次電池および電気二重層キャパシタに代表される、異なる種類の直流電源を適用する例を説明した。異なる種類、特に、エネルギ密度およびパワー密度(ラゴンプロット)が異なる直流電源を組み合せて負荷へ電力を供給する態様とすれば、特にパラレル接続モードにおいて、互いに苦手な動作領域での出力を補うような形で、広い動作領域に対して負荷電力の確保が容易となる。
【0195】
また、出力電圧が異なる2つの直流電源を組み合わせる場合にも、シリーズ接続モードおよびパラレル接続モードの切替によって、直流電源を有効に使用できることが期待される。ただし、直流電源10および20が、同一定格電圧の電源および/または同一種類の電源であっても、本発明の適用は妨げられることはない点について確認的に記載する。たとえば、同一タイプの直流電源を主電源および副電源として用いる場合に、本発明による電源システムを構成することが好適である。
【0196】
また、負荷30は、制御された直流電圧Voによって動作する機器であれば、任意の機器によって構成できる点について確認的に記載する。すなわち、本実施の形態では、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される走行用電動機およびインバータによって負荷30が構成される例を説明したが、本発明の適用はこのような場合に限定されるものではない。
【0197】
さらに、電力変換器50の構成についても、図1の例示に限定されるものではない。すなわち、電力変換器に含まれる複数のスイッチング素子の少なくとも一部が、第1の直流電源に対する電力変換経路と、第2の直流電源に対する電力変換経路との両方に含まれるように配置される構成であれば、実施の形態1による位相制御および、実施の形態2によるシリーズ接続モードでの制御処理を適用することが可能である。
【0198】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0199】
この発明は、2つの直流電源と負荷との間で直流電力変換を実行するため電源システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0200】
10,20 直流電源、15 配線、25 キャリア信号、30 負荷、31 インバータ、32 モータジェネレータ、35 平滑コンデンサ、40 制御装置、50 電力変換器、55 共振減衰回路、61 抵抗素子(比較例)、70,71 共振回路、102〜109,111〜114,120,121,130,131,140〜144 電流経路、118,119 巻線、180 コア、201〜203 制御ブロック、C2,C4 出力容量(スイッチング素子)、C3 キャパシタ(共振減衰回路)、D1〜D4 逆並列ダイオード、DT,Da,Db,Dc デューティ比、Di,Dv デューティ比指令値、DiFF,DvFF フィードフォワード制御量、GL 接地配線、Hi,Hv 伝達関数、I[1],I[2] 電流(直流電源10,20)、idmp 振動電流、Ii* 電流指令値、Ii 電流、L1,L2 リアクトル、L3,L4 リアクトル(共振減衰回路)、N1〜N3 ノード、PL 電源配線、PS1,PS2 電源、Pi 電力指令値、R3 抵抗(共振減衰回路)、S1〜S4 電力用半導体スイッチング素子、SDa,/SDa,SDb,/SDb,SDc,/SDc 制御パルス信号、SG1〜SG4 制御信号、T1〜 期間、V[1],V[2] 電圧(直流電源10,20)、Vdmp 振動電圧、Vm1,Vm2 誘起電圧、Vo* 電圧指令値、Vo 出力電圧、Vx,Vy 安定電位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直流電源と、
第2の直流電源と、
負荷に電気的に接続される電源配線と前記第1および第2の直流電源との間で直流電力変換を実行するための電力変換器とを備え、
前記電力変換器は、
前記第1の直流電源と前記電源配線との間に形成される第1の電力変換経路と、前記第2の直流電源と前記電源配線との間に形成される第2の電力変換経路との両方に含まれるように配置された複数のスイッチング素子と、
前記第1の電力変換経路に含まれるように配置された第1のリアクトルと、
前記第2の電力変換経路に含まれるように配置された第2のリアクトルと、
前記第1および第2の電力変換経路に対して電気的には非接続である共振減衰回路とを含み、
前記共振減衰回路は、
前記第1のリアクトルと磁気結合された第3のリアクトルと、
前記第2のリアクトルと磁気結合され、かつ、前記第3のリアクトルに対して直列に接続される第4のリアクトルと、
前記第3および第4のリアクトルと直列に接続される、キャパシタおよび抵抗とを有し、
前記電源配線上の出力電圧を制御するように前記複数のスイッチング素子のオンオフを制御するための制御装置をさらに備える、電源システム。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子は、
第1のノードおよび前記電源配線の間に電気的に接続された第1のスイッチング素子と、
第2のノードおよび前記第1のノードの間に電気的に接続された第2のスイッチング素子と、
前記第2の直流電源の正極端子と電気的に接続された第3のノードおよび前記第2のノードの間に電気的に接続された第3のスイッチング素子と、
前記第2の直流電源の負極端子と前記第3のノードとの間に電気的に接続された第4のスイッチング素子とを含み、
前記第1のリアクトルは、前記第1の直流電源の正極端子と前記第2のノードとの間に電気的に接続され、
前記第2のリアクトルは、前記第2の直流電源の正極端子と前記第1のノードとの間に電気的に接続される、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記第1のリアクトルおよび前記第3のリアクトルは、磁性材料で構成された共通のコアに巻回された巻線を有するように構成される、請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記第2のリアクトルおよび前記第4のリアクトルは、磁性材料で構成された共通のコアに巻回された巻線を有するように構成される、請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項5】
前記電力変換器は、前記複数のスイッチング素子の制御によって、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線に対して直列に電気的に接続された状態で前記直流電力変換を実行する第1の動作モードと、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線に対して並列に前記直流電力変換を実行する第2の動作モードとを切換えられるように構成される、請求項1または2記載の電源システム。
【請求項6】
前記電力変換器は、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線に対して直列に電気的に接続された状態で前記直流電力変換を実行する第1の動作モードと、前記複数のスイッチング素子の制御によって、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線に対して並列に前記直流電力変換を実行する第2の動作モードとを切換えられるように構成され、
前記電力変換器は、前記第1の動作モードでは、前記第3のスイッチング素子をオン固定する一方で、直列接続された前記第1および第2の直流電源と前記電源配線との間での前記直流電力変換のための制御信号に従って、前記第2および第4のスイッチング素子と前記第1のスイッチング素子とが相補的にオンオフするように、前記第1から第4のスイッチング素子のオンオフを制御する、請求項2記載の電源システム。
【請求項7】
前記電力変換器は、前記第1の動作モードでは、直列接続された前記第1および第2の直流電源と前記電源配線との間での前記直流電力変換について、前記出力電圧が指令電圧と一致するように制御する、請求項5または6に記載の電源システム。
【請求項8】
前記電力変換器は、前記第2の動作モードでは、前記第1の直流電源と前記電源配線との間での前記直流電力変換のための第1の制御信号と、前記第2の直流電源と前記電源配線との間での前記直流電力変換のための第2の制御信号との論理和に従って、前記複数のスイッチング素子のオンオフを制御する、請求項5記載の電源システム。
【請求項9】
前記電力変換器は、前記第2の動作モードでは、前記第1および第2の直流電源のうちの一方の直流電源と、前記電源配線との間の前記直流電力変換については前記出力電圧が指令電圧と一致するように制御する一方で、前記第1および第2の直流電源のうちの他方の直流電源と前記電源配線との間の前記直流電力変換については前記他方の直流電源の電流が指令電流と一致するように制御する、請求項5または8に記載の電源システム。
【請求項10】
前記電力変換器は、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線に対して直列に電気的に接続された状態で前記直流電力変換を実行する第1の動作モードと、前記複数のスイッチング素子の制御によって、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線に対して並列に前記直流電力変換を実行する第2の動作モードとを切換えられるように構成され、
前記複数のスイッチング素子は、前記第1の動作モードでは前記第1および第2の直流電源を直列接続するためにオン固定される一方で、前記第2の動作モードでは前記出力電圧を制御する直流電力変換のためのデューティ比に従ってオンオフされるスイッチング素子を含む、請求項1記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2013−13233(P2013−13233A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144210(P2011−144210)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】