説明

電源スイッチ及びそれを備えたディスプレイ端末

【課題】良好な操作性とともに意図しない操作による誤動作を防止した電源スイッチを提供する。
【解決手段】圧縮バネ13が介装された押しボタン11と電気的接続を切替える接点部12を有する第1の押圧装置10と、圧縮バネ23が介装された押しボタン21と当接部材22を有する第2の押圧装置20とを備え、第1の押圧装置10と第2の押圧装置20は、押下方向が対向するように配設され、第1の押圧装置10の押しボタン11と第2の押圧装置20の押しボタン21とが略同時に押下されたとき、接点部12と当接部材22が当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源スイッチに関し、特に略同時に押下することによってON/OFFの操作が可能な電源スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、PCやPOS(Point Of Sales)システムで使用されるPOS端末では、稼働中などに意図しない電源ボタンへの接触によるシャットダウンなどの誤作動を防ぐために、電源スイッチは、あえて押しにくくした設計がなされている。例えば、電源スイッチをディスプレイの裏側など押しにくい位置に配置したり、電源スイッチの押しボタン自体を小さくしたり、押しボタンの周りを高くして、また、押しボタンの周りにガード部材を設けて押しにくくする等の工夫が施されている。
【0003】
一方において、電源スイッチを意図して操作する場合には、上記したような誤動作を防止するように配慮した電源スイッチでは、操作性が著しく良くない。端末機器の用途は運用場所によって異なるので、頻度が少ないにせよ、意図する場合には電源スイッチの操作性のよいことが望ましい。
【0004】
そこで、操作性と誤動作に伴う安全性に配慮した操作スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照。)
これは、プレス加工機の操作用スイッチに関するもので、操作者が両手を使って操作する左右一対の押しボタンを備えたラム下降用の両手押しボタンスイッチと、足踏み式のラム上昇用フートペタルスイッチとを備え、両手押しボタンスイッチで左右一対の押しボタンを同時に押しているAND条件で、ラムを下降操作させるように構成したものである。
【特許文献1】特開平8−243797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に提案されているものは、意図する場合に操作者が両手を使って操作しなければならず、決して操作性の良好な電源スイッチではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、意図して操作する場合の操作性を良好なものとしつつ、意図しない場合の誤動作を防止して、安全で使い易い電源スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、圧縮バネが介装された押しボタンと電気的接続を切替える接点部を有する第1の押圧装置と、圧縮バネが介装された押しボタンと当接部材を有する第2の押圧装置とを備え、前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置は、押下方向が対向するように配設され、前記第1の押圧装置の押しボタンと前記第2の押圧装置の押しボタンとが略同時に押下されたとき、前記接点部と前記当接部材が当接して、前記接点部がON状態もしくはOFF状態となることを特徴とする電源スイッチが提供される。
【0008】
また、本発明の別の一態様によれば、圧縮バネが介装された押しボタンと電気的接続を切替える接点部を有する第1の押圧装置と、圧縮バネが介装された押しボタンと当接部材を有する第2の押圧装置とを備え、前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置は、押下方向が略直交するように配設され、前記第1の押圧装置の押しボタンと前記第2の押圧装置の押しボタンとが略同時に押下されたとき、前記接点部と前記当接部材が当接して、前記接点部がON状態もしくはOFF状態となることを特徴とする電源スイッチが提供される。
【0009】
さらに、本発明の別の一態様によれば、圧縮バネが介装された押しボタンと電気的接続を切替える接点部を有する第1の押圧装置と、圧縮バネが介装された押しボタンと当接部材を有する第2の押圧装置とを備え、前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置は、押下方向が斜交するように配設され、前記第1の押圧装置の押しボタンと前記第2の押圧装置の押しボタンとが略同時に押下されたとき、前記接点部と前記当接部材が当接して、前記接点部がON状態もしくはOFF状態となることを特徴とする電源スイッチが提供される。
【0010】
本発明の電源スイッチにおいては、前記当接部材は、絶縁性の材料で形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の電源スイッチにおいては、前記当接部材は、フッ素樹脂を材料として形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の電源スイッチにおいては、前記当接部材は、前記接点部に接する面が斜めに形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の電源スイッチにおいては、前記当接部材は、斜めに形成された面が粗面化されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の別の一態様によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電源スイッチを備えたことを特徴とするディスプレイ端末が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、意図しない操作による誤動作を防止し、安全で使い易い電源スイッチが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付している。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、POS端末やディスプレイ端末等に配設される電源スイッチ100であって、プッシュ型の電源スイッチの構成例を示す略断面図である。
【0018】
図1に示すように、電源スイッチ100は、互いに近傍に配設される第1の押圧装置10と第2の押圧装置20とで構成されている。それぞれ、第1の押圧装置10と第2の押圧装置20は対向して、すなわち、押下方向を略180度反対にして、取り付けパネル1に取り付けられている。
【0019】
第1の押圧装置10は、操作者が指等で押すことができる押しボタン11と、電源スイッチ自体のON/OFFを切替えるための接点部12を備えている。押しボタン11は、指の触れる部位に若干の窪みを形成することにより操作する際の感触も良好となり、例えば、樹脂モールド材で形成することができる。接点部12には、所定の電気的な接続(図示しない)が施される。
【0020】
同様に、第2の押圧装置20は、操作者が指等で押すことができる押しボタン21と、当接部材22を備えている。押しボタン21は、例えば、樹脂モールド材で形成することができる。当接部材22は、好ましくは絶縁性の材料で形成され、例えばフッ素樹脂で形成できる。
【0021】
押しボタン11の下部と、取り付けパネル1との間には、第1の押圧装置用の圧縮バネ13が介装されている。この圧縮バネ13は、押しボタン11が押下されて可動後に、押しボタン11を元の位置に復帰させるためのものである。
【0022】
同様に、押しボタン21の下部と、取り付けパネル1との間には、第2の押圧装置用の圧縮バネ23が介装されている。この圧縮バネ23は、押しボタン21が押下されて可動後に、押しボタン21を元の位置に復帰させるためのものである。
【0023】
尚、取り付けパネル1の形状は一例を示すものであって、図1に示す形状には限定されないことは言うまでもない。
【0024】
上記したように、第1の押圧装置10と第2の押圧装置20は互いに近傍に配設されており、略同時に押下された場合には、第1の押圧装置10の接点部12は第2の押圧装置20の当接部材22によって押されるようになっている。したがって、操作者は、電源スイッチ100のON/OFF操作を行う意図で、第1の押圧装置10及び第2の押圧装置20を同時に押圧することにより、この電源スイッチ100が搭載された電子機器の電源スイッチ100のON/OFFを実行することができる。このとき、絶縁性の当接部材22で接点部12が押されるので、接点部12を損傷させることもない。
【0025】
尚、第1の押圧装置10と第2の押圧装置20が操作者によって適切に押下された場合に、電源スイッチ100としてのON状態を表わすインジケータ(図示しない)を、電源スイッチ100の近傍に配設することが好適である。
【0026】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る電源スイッチ100の略断面図である。図2に示すように、電源スイッチ100は、互いに近傍に配設される第1の押圧装置30と第2の押圧装置40とで構成されている。第1の押圧装置30と第2の押圧装置40は、それぞれの押下方向が略直交するように、取り付けパネル2に取り付けられている。
【0027】
第1の押圧装置30は、操作者が指等で押すことができる押しボタン31と、電源スイッチ100自体のON/OFFを切替えるための接点部32を備えている。押しボタン31は、例えば、樹脂モールド材で形成することができる。接点部32には、所定の電気的な接続(図示しない)が施される。この接点部32は、先端部(押しボタン31の反対側)が、円弧状に丸みを形成すると好適である。
【0028】
第1の実施形態と同様に、第2の押圧装置40は、操作者が指等で押すことができる押しボタン41と、当接部材42を備えている。押しボタン41は、例えば、樹脂モールド材で形成することができる。第1の実施形態と同様に、当接部材42は、好ましくは絶縁性の材料で形成され、例えばフッ素樹脂で形成できる。
【0029】
第1の実施形態と同様に、押しボタン31の下部と、取り付けパネル2との間には、第1の押圧装置30用の圧縮バネ33が介装されている。この圧縮バネ33は、押しボタン31が押下されて可動後に、押しボタン31を元の位置に復帰させるためのものである。
【0030】
押しボタン41の下部と、取り付けパネル2との間には、第2の押圧装置40用の圧縮バネ43が介装されている。この圧縮バネ43は、押しボタン41が押下されて可動後に、押しボタン41を元の位置に復帰させるためのものである。
【0031】
尚、取り付けパネル2の形状は一例を示すものであって、図2に示す形状には限定されないことは言うまでもない。
【0032】
上記したように、第1の押圧装置30と第2の押圧装置40は互いに近傍に配設されており、かつ、互いの押下方向が略直交しているので、略同時に押下された場合には、第1の押圧装置30の接点部32は第2の押圧装置40の当接部材42によって押されるようになっている。したがって、操作者は、電源スイッチ100のON/OFF操作を行う意図で、第1の押圧装置30及び第2の押圧装置40を同時に押圧することにより、この電源スイッチ100が搭載された電子機器の電源スイッチ100のON/OFFを実行することができる。このとき、絶縁性の当接部材42で接点部32が押されるので、接点部32を損傷させることもない。
【0033】
尚、第1の押圧装置30と第2の押圧装置40は、互いの押下方向が略直交する場合に限らない。互いの押下方向が斜交する、すなわち、90度以外の角度で交わるように配置することもできることは言うまでもない。
【0034】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態は、第2の実施形態の言わば変形例になる。図3に示すように、第2の押圧装置50における当接部材52の形状は、平板状もしくは角柱状ではなく、第1の押圧装置30に向かって、斜めにカットされている。さらに、斜めに形成された当接部材52の面には、粗面化加工を施こすことが好適である。粗面化加工としては、例えばローレット加工状の細かな溝を形成することができる。したがって、第1の押圧装置30と第2の押圧装置50の各押しボタン31,51を押下するタイミングに若干のズレがあっても、第1の押圧装置30の接点部32は、第2の押圧装置50の当接部材52によって確実に押されるので、電源スイッチ100のON/OFF操作が安全に実行できる。
【0035】
上記した構成の電源スイッチ100は、各種の電子機器に配設することができる。例えば、図4は、電源スイッチ100が配設されるディスプレイ端末200の電源スイッチ100周りを示す模式図である。液晶ディスプレイのように、ディスプレイ端末200の厚さの薄い部位に電源スイッチ100を配設することにより、操作者は、第1の押圧装置10と第2の押圧装置20の各押しボタンを摘むように押すことにより、電源スイッチ100のON/OFFを操作することができる。仮に、ディスプレイ端末200の操作者側に位置している第1の押圧装置10の押しボタンに誤って触れても、第1の押圧装置10と第2の押圧装置20の各押しボタンを同時に押さないと、ON/OFFの操作が有効とはならないから、意図しない状況下での誤操作防止が確実に図られる。
【0036】
本実施形態では、上記構成を採用することにより、従来の誤動作防止スイッチにおいて問題となっていた操作性の悪さを軽減するとともに、電源スイッチが近接して配設されているにもかかわらず、意図した場合に電源スイッチを操作することができる。
【0037】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る電源スイッチの略断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る電源スイッチの略断面図である。
【図3】第3の実施形態に係る電源スイッチの略断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電源スイッチが配設されるディスプレイ端末の電源スイッチ周りを示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
100・・・電源スイッチ、10,30・・・第1の押圧装置、20,40,50・・・第2の押圧装置、11,21,31・・・押しボタン、12,32・・・接点部、22,42,52・・・当接部材、13,23,33,43・・・圧縮バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮バネが介装された押しボタンと電気的接続を切替える接点部を有する第1の押圧装置と、圧縮バネが介装された押しボタンと当接部材を有する第2の押圧装置とを備え、
前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置は、押下方向が対向するように配設され、前記第1の押圧装置の押しボタンと前記第2の押圧装置の押しボタンとが略同時に押下されたとき、前記接点部と前記当接部材が当接して、前記接点部がON状態もしくはOFF状態となることを特徴とする電源スイッチ。
【請求項2】
圧縮バネが介装された押しボタンと電気的接続を切替える接点部を有する第1の押圧装置と、圧縮バネが介装された押しボタンと当接部材を有する第2の押圧装置とを備え、
前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置は、押下方向が略直交するように配設され、前記第1の押圧装置の押しボタンと前記第2の押圧装置の押しボタンとが略同時に押下されたとき、前記接点部と前記当接部材が当接して、前記接点部がON状態もしくはOFF状態となることを特徴とする電源スイッチ。
【請求項3】
圧縮バネが介装された押しボタンと電気的接続を切替える接点部を有する第1の押圧装置と、圧縮バネが介装された押しボタンと当接部材を有する第2の押圧装置とを備え、
前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置は、押下方向が斜交するように配設され、前記第1の押圧装置の押しボタンと前記第2の押圧装置の押しボタンとが略同時に押下されたとき、前記接点部と前記当接部材が当接して、前記接点部がON状態もしくはOFF状態となることを特徴とする電源スイッチ。
【請求項4】
前記当接部材は、絶縁性の材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源スイッチ。
【請求項5】
前記当接部材は、フッ素樹脂を材料として形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源スイッチ。
【請求項6】
前記当接部材は、前記接点部に接する面が斜めに形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の電源スイッチ。
【請求項7】
前記当接部材は、斜めに形成された面が粗面化されていることを特徴とする請求項6に記載の電源スイッチ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電源スイッチを備えたことを特徴とするディスプレイ端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−44865(P2010−44865A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205913(P2008−205913)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】