説明

電源回路

【課題】放電限界近くまで電池電圧が低下しない一次電池を使用する場合でも、メンテナンスが必要であることを通知してから動作限界に達するまで、充分なメンテナンス時間を確保することを可能とする電源回路を実現する。
【解決手段】機器の駆動電源として一次電池を用いると共に、電池電圧の低下を検出する電圧監視回路を具備する電源回路において、
前記電池電圧の電圧低下より充分前に前記一次電池から所定の時定数で前記電池電圧まで充電される電荷保持回路と、
前記電池電圧を監視し、所定の基準電圧値に低下したタイミングを検出する電圧監視回路と、
検出された前記タイミングで、前記電荷保持回路の保持電圧を前記一次電池に接続するスイッチ回路と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の駆動電源として一次電池を用いると共に、電池電圧の低下を検出する電圧監視回路を具備する電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広範囲のプラントに分散配置され、電波手段等によりプロセスデータを上位装置に送信する電池駆動のフィールド機器では、長期間のメンテナンスフリーを実現するために、電池としてリチウム一次電池等が使用される。
【0003】
フィールド機器では、電池放電によるデータ送信停止を回避するために、電池が放電限界となり機器が動作不能となる前に警告を発生し、電池交換のメンテナンスを促す電圧監視回路を電源回路に備えている。
【0004】
図4は、従来電源回路の構成例を示す機能ブロック図である。一次電池1は、電子回路等の負荷2に接続され、電池電圧Vbを供給している。電圧監視回路3は電池電圧Vbを監視し、この電池電圧が所定値以下に低下したときに警報ALを発生し、表示または上位装置に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−090419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電源回路の電池電圧監視手法では、次のような問題がある。
(1)図5は、従来電源回路の動作を説明する電池電圧特性図である。リチウム電池等、一次電池の種類によっては放電限界近くまで電池電圧Vbが低下しないものがある。
【0007】
図5において、電池電圧VbがV1に低下するタイミングT1を電圧監視回路3による電圧低下検出タイミングとしてとしてメンテナンスが必要であることを通知するが、リチウム電池では、この検出タイミングT1から、動作限界電圧V2に達するタイミングT2までの時間(T1〜T2=τ1)が極めて短く(数時間程度)、フィールド機器が遠隔地に配置されている場合には、作業員による機器のメンテナンス作業が間に合わない場合がある。
【0008】
(2)このような状況を避けるため、電池電圧が低下を始める前に電池が放電限界に近づいていることを知る方式として、消費電流を時間で積分し、この積分値と予め設定された電池の容量値と比較することで電池が放電限界に近づいていることを通知する手法がある。
【0009】
この場合、電流の検出回路や時間積分計算を行うため回路が複雑となる。また、それらの回路が電流を消費するため電池駆動による機器の動作時間が短くなってしまう。更に、この手法では、予め設定された電池の容量値を判断の基準としているため、電池容量の変化やバラつきに対応することができない。
【0010】
即ち、容量の異なる複数種類の電池を使用する場合、電池の種類毎に判断の基準値を設定し直す必要がある。また、例えば温度の影響や劣化によって電池の容量が変化してしまう場合、判断基準と実際の電池容量とが食い違い、判断を誤る可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、放電限界近くまで電池電圧が低下しない一次電池を使用する場合でも、メンテナンスが必要であることを通知してから動作限界に達するまで、充分なメンテナンス時間を確保することを可能とする電源回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)機器の駆動電源として一次電池を用いると共に、電池電圧の低下を検出する電圧監視回路を具備する電源回路において、
前記電池電圧の電圧低下より充分前に前記一次電池から所定の時定数で前記電池電圧まで充電される電荷保持回路と、
前記電池電圧を監視し、所定の基準電圧値に低下したタイミングを検出する電圧監視回路と、
検出された前記タイミングで、前記電荷保持回路の保持電圧を前記一次電池に接続するスイッチ回路と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【0013】
(2)前記電荷保持回路は、キャパシタであることを特徴とする(1)に記載の電源回路。
【0014】
(3)前記電荷保持回路は、二次電池であることを特徴とする(1)に記載の電源回路。
【0015】
(4)前記電圧監視回路は、検出された前記タイミングで、警報信号を出力する電池寿命警報手段を備えることを(1)乃至(3)のいずれかに記載の電源回路。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)放電限界近くまで出力電圧が低下しない電池を使用する場合でも、メンテナンスが必要であることを通知してから動作限界に達するまで、メンテナンスを行うのに充分な時間を確保することができる。
【0017】
(2)電流の時間積分手法と比較して簡単な回路で実現でき、実際に電池が放電限界に近づき電圧の変化が生じたことを検出するため、電池の寿命限界まで使用でき、電池容量の変化やバラつきにも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した電源回路の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】キャパシタの充電特性図である。
【図3】本発明電源回路の動作を説明する電池電圧特性図である。
【図4】従来電源回路の構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】従来電源回路の動作を説明する電池電圧特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用した電源回路の一実施例を示す機能ブロック図である。一次電池10及び負荷20の関係は、図4で説明した一次電池1及び負荷2と同一構成である。
【0020】
本発明で追加される構成は、電荷保持回路30、スイッチ回路40、電圧監視回路50である。リレー回路40はラッチング(自己保持)機能があり、定常状態ではリレーの接点はオフ状態である。
【0021】
電荷保持回路30の電荷保持手段は、スーパーキャパシタ等のキャパシタC1で構成され、抵抗R1を介して一次電池10に接続されている。図2は、キャパシタの充電特性図である。キャパシタC1の電圧Vcは一次電池10が装着されると、R1・C1による所定の時定数で電池電圧Vbまで充電さる。
【0022】
キャパシタC1の充電は、電池電圧の電圧低下タイミングT1より充分前に終了し、待機状態となっている。キャパシタC1の電圧Vcは、スイッチ回路40のリレー接点を介して負荷20に接続される。
【0023】
電圧監視回路50において、電圧比較手段51は電池電圧Vbと基準電圧設定手段52による設定電圧V1を比較し、VbがV1を低下したタイミングT1でスイッチ駆動手段53に信号S1を出力する。
【0024】
スイッチ駆動手段53は、信号S1を取得してスイッチ回路40に信号M1を出力し、リレー接点をオンに操作し、キャパシタC1を負荷20に接続する。キャパシタC1から負荷20に電流が供給される。キャパシタC1の容量は、メンテナンス作業を行うに十分な時間、負荷20に電流を供給できるだけの容量を持つものとする。
【0025】
スイッチ駆動手段53は、信号M1と同期して、電池寿命警報手段54に信号M2を出力する。電池寿命警報手段54は、信号M2を取得して、警報ALを出力し、電池交換等のメンテナンスが必要であること上位に通知または表示する。
【0026】
図3は、本発明電源回路の動作を説明する電池電圧特性図である。電池電圧VbがV1まで低下した電圧低下検出タイミングT1で、負荷20にキャパシタC1が接続されて負荷20に電流が供給されるので、電池電圧Vbが動作限界電圧V2に到達するタイミングT3を、図5に示したタイミングT2よりも大幅に遅らせることができる。
【0027】
即ち、電池電圧Vbの低下を検出するタイミングT1から動作限界に達するT3までの時間は(T1〜T3=τ2>>τ1)となり、機器のメンテナンス作業を行うに十分なもの(24時間以上)となる。
【0028】
図1に示した実施例では、電荷保持回路20の電荷保持手段としてキャパシタC1を例示したが、充電制御回路等を介して充電される小型の二次電池であってもよい。また、スイッチ回路40はリレー接点を例示したが、半導体スイッチ回路であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 一次電池
20 負荷
30 電荷保持回路
40 スイッチ回路
50 電圧監視回路
51 電圧比較手段
52 基準電圧設定手段
53 スイッチ駆動手段
54 電池寿命警報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の駆動電源として一次電池を用いると共に、電池電圧の低下を検出する電圧監視回路を具備する電源回路において、
前記電池電圧の電圧低下より充分前に前記一次電池から所定の時定数で前記電池電圧まで充電される電荷保持回路と、
前記電池電圧を監視し、所定の基準電圧値に低下したタイミングを検出する電圧監視回路と、
検出された前記タイミングで、前記電荷保持回路の保持電圧を前記一次電池に接続するスイッチ回路と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記電荷保持回路は、キャパシタであることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記電荷保持回路は、二次電池であることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記電圧監視回路は、検出された前記タイミングで、警報信号を出力する電池寿命警報手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−85368(P2012−85368A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226795(P2010−226795)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】