説明

電源方向通知装置及び電源方向確認方法

【課題】効率よく安全に配電線の電源方向を確認する。
【解決手段】赤色クリップC1、青色クリップC2及び白色クリップC3は、それぞれ検出制御装置RのA端子、D端子及びB端子に接続される。抵抗Rs1及びRs2は、それぞれ赤色LED5及び青色LED6への電流を制御する。リレーRy1及びRy2は、交流100Vで動作する。詳細には、A端子・B端子間の電位差が100Vになると、リレーRy1の接点が閉じて、電池4から抵抗Rs1及び赤色LED5に電流が流れ、赤色LED5が点灯する。また、D端子・B端子間の電位差が100Vになると、リレーRy2の接点が閉じて、電池4から抵抗Rs2及び青色LED6に電流が流れ、青色LED6が点灯する。A端子、D端子及びB端子は、それぞれ赤色クリップC1、青色クリップC2及びに白色クリップC3に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の電源方向を通知するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線が事故により停電した場合、どの区間に事故が発生したかを見極めることが先決である。従来、事故区間を見極めるために、高圧配電線路故障区間検出装置(以下、故障区間検出装置とする)が使用されている。故障区間検出装置は、配電線を直接切入する開閉器部と、その開閉器部を制御する検出制御装置とから構成される。検出制御装置はA、D一対の端子を備えており、検出制御装置を配電線に接続する場合、A端子を配電線の電源側に接続し、検出制御装置のD端子を配電線の負荷側に接続しなければならない。配電線の電源方向(故障区間検出装置から見て電源側)は系統変更により変わる場合もあり、故障区間検出装置の接続時、点検時やその他必要に応じて、電源方向に従って正しくA、D端子が接続されていることを確認することがあるが、従来は、両電源トランスのカットアウトを開放し、検出制御装置の電源端子を検電器で検電することによって確認している。なお、特許文献1には、故障区間検出装置について開示されている。
【特許文献1】特開昭62−66171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、カットアウトが電柱の上部に設置され、そのカットアウトから離れた下方に検出制御装置が設置されているため、検出制御装置の位置からカットアウトの開放操作ができない場合には、一旦操作ができる位置まで昇柱してカットアウトを開放する。これによって、検出制御装置に電流が流れなくなる。その後検出制御装置の位置まで降柱して検電器で電源方向の確認を行い、再度昇柱してカットアウトを投入してから、降柱している。特に、都市部においては、装柱が複雑なので昇降柱だけで3分以上かかる場合や、共架電線、看板等の接近により移動スペースがないため昇降柱そのものが困難な場合もあり、業務効率が悪く、作業者の安全性にも問題がある。
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、効率よく安全に配電線の電源方向を確認することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、電源方向通知装置であって、2つのペアを構成する端子接続用のクリップと、前記2つのペアのうち、第1のペアの前記クリップ間に所定値以上の電圧が印加された場合に閉路になる第1のスイッチと、前記2つのペアのうち、第2のペアの前記クリップ間に所定値以上の電圧が印加された場合に閉路になる第2のスイッチと、前記第1のスイッチが閉路になると所定の出力を行う第1の素子と、前記第2のスイッチが閉路になると所定の出力を行う第2の素子とを備えることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、第1のペアのクリップ間における印加電圧の有無が第1の素子の出力の有無に反映され、第2のペアのクリップ間における印加電圧の有無が第2の素子の出力の有無に反映されるので、電源方向通知装置を用いることによって、効率よく安全に配電線の電源方向を確認することができる。
【0007】
また、本発明は、電源方向通知装置であって、前記第1のスイッチ及び前記第1の素子に直列接続される第1の電源と、前記第2のスイッチ及び前記第2の素子に直列接続される第2の電源とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、電源方向通知装置であって、前記第1のペアのうち一方のクリップと、前記第2のペアのうち一方のクリップとが、一体化していることを特徴とする。
この構成によれば、端子接続用のクリップを共通化できるので、コスト削減を図ることができる。
【0009】
また、本発明は、電源方向通知装置であって、前記第1の電源及び前記第2の電源が、一体化していることを特徴とする。
この構成によれば、2個の素子の出力用電源を共通化できるので、コスト削減を図ることができる。
【0010】
また、本発明は、電源方向通知装置を用いて、作業者によって、故障区間検出装置を構成する検出制御装置の所定の端子が配電線の電源側に接続されていることを確認する方法であって、前記電源方向通知装置を前記検出制御装置に固定するステップと、前記電源方向通知装置の各クリップを前記検出制御装置の各端子に接続するステップと、前記配電線の電源側と、前記検出制御装置との間に接続されている電源トランスのカットアウトを開放するステップと、前記配電線の電源側に接続すべき端子に対応する素子から出力がなくなった場合には、前記検出制御装置の端子の接続が正しく、前記負荷側に接続すべき端子に対応する素子から出力がなくなった場合には、前記検出制御装置の端子の接続が誤りであると判断するステップと、を実行することを特徴とする。
【0011】
この方法によれば、作業者は、電源方向通知装置から離れていても、電源方向通知装置の素子による出力の有無を認識できるので、電源方向通知装置に接近することなく電源方向を確認することができる。
【0012】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効率よく安全に配電線の電源方向を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る電源方向通知装置は、配電線に係る故障区間検出装置のうち検出制御装置の各電源端子に接続され、配電線の電源側にある電源トランスから検出制御装置に電力の供給があるか否かによって、電源側の端子に対応するLED(Light Emitting Diode)が点灯又は消灯するものである。LEDの点灯又は消灯は、電源方向通知装置から数メートル程度離れた箇所にいる作業者が視認することができる。これによれば、検電器に近付くために昇降柱する必要がなくなるので、効率よく安全に配電線の電源方向を確認することができる。
【0015】
≪故障区間検出装置の構成≫
まず、電源方向通知装置1を用いて電源方向に応じた端子接続を確認すべき対象である、故障区間検出装置Mについて説明する。
【0016】
故障区間検出装置Mは、配電線を直接切入する開閉器部Sと、これを制御する検出制御装置Rとから構成される。検出制御装置Rには、F型(定方向区分用)、C型(無方向区分用)及びL型(2回線睨合点結合用、小規模システム設置箇所のみ運用)の3種類がある。
【0017】
図4(a)は、F型の検出制御装置R及びその周辺の構成を示す図である。開閉器部Sは、配電線を開路又は閉路にする主接触子と、その主接触子を接点に接触させるための駆動用コイルとを備える。電源トランスTrは、3本の配電線のうち2本に接続し、2本の配電線間の電位差によって検出制御装置Rに電力供給を行う。検出制御装置Rは、電源トランスTrから電力供給を受けて、開閉器部Sの駆動用コイルに電流を流すことによって、主接触子を接点に接触させる。これによって、開閉器部Sの両側の配電線がつながって、潮流方向に送電が行われる。なお、反対方向に送電があった場合、開閉器部Sが開路になっているので電源トランスTrに電力が到達せず、F型の検出制御装置Rは動作しない。また、負荷側のみの配電線事故を検出する。すなわち、配電線からの試充電によりX時間後に開閉器部Sの投入動作を行い、Y時間以内の停電によりロック(切)となり、次回送電では動作しない。その詳細は、後記する。
【0018】
続いて、F型の検出制御装置Rを備える故障区間検出装置Mの動作原理について説明する。故障区間検出装置Mは、配電線の区分箇所に開閉器部S及び検出制御装置Rを組合せて設置し、故障区間を検出するものである。図4(b)に示すように、検出制御装置Rの動作時限は、遅延動作時間Xと、切離動作時間Yとに分けられる。
【0019】
開閉器部Sは、配電線が未通電の場合に、主接触子が接点から離れることによって開路になっている。配電線に電圧が印加されると、電源トランスTrからの電力供給により、検出制御装置R内のリレーが動作する。リレーの動作開始(T)からX時間後(T)に駆動用出力端子Cに信号出力が行われ、駆動用コイルの作用で主接触子が接点に接触することによって、開閉器部Sが投入される。これにより、Y時間後(T)にリレーの動作が完了し、定常状態に遷移するようになっている。
【0020】
検出制御装置Rは、開閉器部Sが投入されてから変電所の遮断器が遮断するまでの時間(T)の長さにより、再送電時には次のような動作となる。
・T>Yの場合・・・再送電正常(投入)動作
・T<Yの場合・・・再送電切離(ロック)動作
従って、線路に故障がある場合には、すぐに遮断器が遮断するため、T<Yの動作となり、検出制御装置Rがロックするので、再送電時に開閉器部Sが投入することなく、故障区間を選択遮断することができる。一方、線路に故障がない場合には、いずれの区分点においても常にT>Yであるから、開閉器部Sは次々に投入されていく。
【0021】
樹枝状配電線では、故障区間から負荷側以遠は、たとえ健全区間であっても停電となる。
開閉器部Sが投入状態において、瞬間的な無電圧状態が発生したとしても開閉器部Sが開放にならないように、開閉器部Sは開放遅延動作時間(Z)の特性を有している。
【0022】
図5(a)は、C型の検出制御装置R及びその周辺の構成を示す図である。C型の検出制御装置Rでは、開閉器部Sの両側にそれぞれ電源トランスTr1及びTr2を設けるので、潮流方向にかかわらず電源側、負荷側のいずれの故障であっても検出することができる。例えば、電源側線路に故障が生じた場合にも、試充電後X時間以内の再停電によりロック(切)となり、電源側区間を切り離すことになる。他の特性は、F型と同様である。
【0023】
次に、C型の検出制御装置Rの動作について説明する。図5(b)に示すように、故障区間検出装置M1とM2との中間地点で配電線に故障が発生した場合、故障区間検出装置M1はI側からの試充電により故障区間Pに送電した後、Y時間以内に発電所遮断器が遮断されてロックされる。故障区間検出装置M2は、M1の投入動作によって故障区間Pが短時間送電されて再度停電するので、その短時間送電によってロック状態となり、II側にある2回線睨合点開閉器の投入により電力が区間Qまで逆送されても、投入動作を行わないようになっている。
【0024】
以上によれば、C型の検出制御装置Rの両側に電源トランスTrがあることによって、配電線に事故が発生したとしても事故点Pの手前まで電力を供給するために、元の潮流方向とは逆の方向に送電することがあるので、潮流方向にかかわらず、電力の供給を受けて動作することができる。
【0025】
なお、L型の検出制御装置Rは、2つの異なるフィーダで結合する場合のループ点で使用される。ただし、この場合、本体をリレー操作により切ロックで使用する。また、いずれかの側が無電圧になった場合、一定時間(遅延動作時間X)後に開閉器部Sの投入動作を行い、無電圧となった側へ送電する。
【0026】
≪電源方向を確認する必要性≫
図6は、開閉器部S及び検出制御装置Rを配電線に取り付けた場合の構成を示す図である。2つの配電線が変電所の母線から枝分かれし、それら配電線の端部が睨合点である開閉器部S6でつながっている。開閉器部S6には、C型の検出制御装置R6が併設されている。開閉器部S6は、常時には切った状態にある。
【0027】
一方の配電線には、母線に近い方から順に、遮断器CB1、故障区間表示器D1、開閉器部S1、S2及びS3が接続されている。故障区間表示器D1は、変電所に設置され、故障区間を表示する。開閉器部S1には、F型の検出制御装置R1が併設されている。開閉器部S2及びS3には、それぞれC型の検出制御装置R2及びR3が併設されている。
【0028】
他方の配電線には、母線に近い方から順に、遮断器CB2、故障区間表示器D2、開閉器部S4及びS5が接続されている。故障区間表示器D2は、変電所に設置され、故障区間を表示する。開閉器部S4には、F型の検出制御装置R4が併設されている。開閉器部S5には、C型の検出制御装置R5が併設されている。
【0029】
次に、開閉器部S2とS3の間にあるP点で事故が発生した場合の動作について説明する。事故が発生すると、遮断器CB1が遮断し、自動開閉路リレーにより30秒後に試充電(再閉路)される。各区分点における開閉器部の順次投入に要する時間(遅延動作時間X)を10秒に整定したとすると、遮断器CB1の投入後、開閉器部S1は10秒後に投入し、開閉器部S2は20秒後に投入する。
【0030】
変電所においては、遮断器CB1の再閉路と同時に、故障区間表示器D1の指針が働き始める。そして、20秒後に開閉器部S2が投入されると、その負荷側に事故点があるため、再度遮断器CB1が遮断し、同時に故障区間表示器D1の指針も停止して故障区間を表示する。
【0031】
さらに30秒後、遮断器CB1の再々閉路により開閉器部S1が投入され、健全区間(開閉器部S2までの区間)には送電されるが、検出制御装置R2及びR3は、試充電(再閉路)のときロックしており、それぞれ開閉器部S2及びS3を投入しない。
【0032】
遮断器CB1の再閉路及び再々閉路の時間をそれぞれ30秒後にした場合には、故障による最初の遮断から30秒後に再閉路、20〜25秒後に再遮断、30秒後に再々閉路、10秒後に開閉器部S1が投入し、合計90〜95秒後に開閉器部S2までの区間の送電が完了し、睨合点の検出制御装置R6を遠方制御により投入することにより、開閉器部S3まで送電が完了し、故障区間を除く総合動作が完了する。
【0033】
配電線の電源側に検出制御装置RのA端子が接続されているか否かを確認するのは、次の理由による。
【0034】
(1)検出制御装置RをC型からF型に置き換える場合
無方向区分用であるC型の検出制御装置を定方向区分用であるF型に変更することがある。F型は、電源トランスが1つしかなく、負荷側だけの配電線事故を検出するものであるから、反対方向からの送電では動作しない。そこで、配電線の電源方向に応じて正しく端子を接続するために、電源方向を確認しなければならない。
【0035】
(2)故障区間検出装置Mの付加機能を使用する場合
C型の検出制御装置Rの遠隔制御の一環として、停電が発生したときに事故点のある方向(図6では、事故の発生したP点がR2のD側及びR3のA側に位置すること)を判定し、表示する機能や、簡易的に電圧を測定する機能があり、それらの機能を使用する場合には、正しく端子を接続するために、電源方向を確認しなければならない。端子を逆に接続すると、事故点の方向を誤って判断してしまう。
【0036】
通常の停電を検出した場合には開閉器がロックするが、一瞬の停電の場合(例えば、蛇や烏が電線に引っ掛かった場合等)にはすぐに回復するので、停電時間が短く開閉器はロックしないが、事故点の方向の表示だけは行う。
【0037】
≪装置の構成≫
図1は、電源方向通知装置1の概観及び回路構成を示す図である。図1(a)は、電源方向通知装置1の斜視図を示す。図1(b)は、電源方向通知装置1の側面図を示す。電源方向通知装置1は、収納箱2及びリード線Lを備える。収納箱2は、箱本体がプラスチック製であり、蓋部がアルミ製であり、内部に制御部品を収納している。収納箱2の上面には電池ボックス3が設置され、電池ボックス3には電池4が装着されている。なお、電池ボックス3及び電池4は、収納箱2の内部に収納されていてもよい。収納箱2の前面には赤色LED5及び青色LED6が装設されている。電池4は、赤色LED5及び青色LED6を点灯させるための電源である。
【0038】
収納箱2のうち、赤色LED5及び青色LED6が装設された面とは反対側の面には、リード線Lが延出している。リード線Lは、赤色リード線L1、青色リード線L2及び白色リード線L3からなり、各リード線L1、L2及びL3は、断面積0.75mm、全長1400mmのビニール絶縁電線であり、リード線の延長部分にクリップの取替ができるように2箇所差込ピン端子が付いている。各リード線L1、L2及びL3の先端部には、リード線固定用の鰐口(わにぐち)クリップとして、それぞれ赤色クリップC1、青色クリップC2及び白色クリップC3が取り付けられている。各クリップC1、C2及びC3は、小さいものを使用しており、それらの金属が露出している部分のサイズが各端子間より短いので、端子間の短絡を防止することができる。
【0039】
さらに、収納箱2のうち、裏面の蓋部には、取り付け用の永久磁石7が取設されている。永久磁石7は、電源方向通知装置1を鉄部に固定するものであり、円形や矩形等の形状が考えられる。
【0040】
図1(c)は、電源方向通知装置1の回路構成を示す。収納箱2の内部は、赤色LED5、青色LED6、抵抗Rs1及びRs2、リレーRy1及びRy2、赤色クリップC1、青色クリップC2及び白色クリップC3を備える。赤色クリップC1、青色クリップC2及び白色クリップC3は、それぞれ検出制御装置RのA端子、D端子及びB端子に接続される。抵抗Rs1及びRs2は、それぞれ赤色LED5及び青色LED6への電流を制御する。リレーRy1及びRy2は、交流100Vで動作する。詳細には、A端子・B端子間に交流100Vの配電電圧が印加されると、リレーRy1の接点が閉じて、電池4から抵抗Rs1及び赤色LED5に電流が流れ、赤色LED5が点灯する。また、D端子・B端子間に交流100Vの配電電圧が印加されると、リレーRy2の接点が閉じて、電池4から抵抗Rs2及び青色LED6に電流が流れ、青色LED6が点灯する。A端子、D端子及びB端子は、それぞれ赤色クリップC1、青色クリップC2及び白色クリップC3に対応する。
【0041】
なお、図1(c)によれば、白色クリップC3は1個であるが、赤色クリップC1とペアになるクリップと、青色クリップC2とペアになるクリップとに分かれていてもよい。また、電池4は、赤色LED5及び青色LED6に電流を流して点灯させる電源として共通化しているが、赤色LED5点灯用電源と、青色LED6点灯用電源とに分かれた構成であってもよい。
【0042】
≪電源方向の確認手順≫
図2は、電柱における電源トランスのカットアウト及び検出制御装置の位置関係を示す図である。電柱Hは、地面の上に立設される。電源トランスTr1及びTr2は、電柱Hに沿って配電線の近くに設置され、それぞれカットアウトSW1及びSW2を介して配電線に接続される。検出制御装置Rは、電源トランスTr1及びTr2から下方に所定の距離(例えば、約1〜2m)だけ離れて設置される。そして、電源方向通知装置1が検出制御装置Rに取設される。
図3は、C型の検出制御装置Rの各端子に電源方向通知装置1の各クリップが接続されている様子を示す回路図である。
【0043】
以下、図2及び図3を参照しながら、作業者によって配電線の電源方向を確認する手順を説明する。
(1)作業者は、電柱Hの、検出制御装置Rのある位置まで昇柱し、検出制御装置Rに電源方向通知装置1を取り付ける。
【0044】
詳細には、まず、電源方向通知装置1の裏側に付いている永久磁石7を用いて、電源方向通知装置1を固定する。鉄部であれば、固定箇所は任意である。例えば、電源方向通知装置1を腕金に取り付けて、赤色LED5及び青色LED6をカットアウトSW1及びSW2のある位置にいる作業者の方へ向けることによって、当該作業者から各LEDの点灯又は消灯を確認できるので、1名でも作業が可能となるため、コスト低減及び業務処理の効率化を図ることができる。
【0045】
続いて、電源方向通知装置1のクリップC(赤色クリップC1、青色クリップ2及び白色クリップ3)をそれぞれ検出制御装置Rの電源端子(A、D、Bの各端子)に接続する。このとき、図3によれば、カットアウトSW1が閉じているので、電源トランスTr1を介して端子AB間に100Vの電位差が生じ、電源方向通知装置1の赤色LED5が点灯する。また、カットアウトSW2が閉じているので、電源トランスTr2を介して端子DB間に100Vの電位差が生じ、電源方向通知装置1の青色LED6が点灯する。各LEDの点灯は、柱上の作業者からも、地上からも確認することができる。なお、電源方向通知装置1の取り付けは、約20秒程度で可能であり、簡易である。
【0046】
(2)次に、作業者は、電源トランスTr1のカットアウトSW1のある位置まで昇柱し、電源側のカットアウトSW1を開放する。この場合、図3によれば、潮流方向が[1]のときにはI側が電源側なので、I側のカットアウトSW1を開放すると、端子AB間に電位差がなくなり、電源方向通知装置1の赤色LED5が消灯する。赤色LED5の消灯は、作業者からも、地上からも確認することができる。この際、A側端子に赤クリップC1を接続したので、電源側にA端子が接続されていることになり、検出制御装置Rの端子接続が正しいと判断することができる。
【0047】
一方、潮流方向が[2]であるとしたときII側が電源側なので、作業者はII側のカットアウトSW2を開放する。そうすると、端子DB間に電位差がなくなり、電源方向通知装置1の青色LED6が消灯する。青色LED6の消灯は、柱上の作業者からも、地上からも確認することができる。この際、D側端子に青クリップC2を接続したので、電源側にD端子が接続されていることになり、換言すれば負荷側にA端子が接続されているということであり、検出制御装置Rの端子接続が誤っていると判断することができる。
【0048】
≪実施例≫
2007年度、実際に配電線の電源方向の確認を行った箇所は、17ヶ所(2007年11月16日現在)であり、検出制御装置とカットアウト間の移動時間の平均は1分30秒(=90秒)だった。2007年度の予定では未実施箇所は残り7ヶ所であり、年度あたり24ヶ所実施、その半数が検出制御装置とカットアウトの間隔が広く、移動の必要がある箇所だとすれば、24/2×90=1080秒=18分の軽減となる。また、2007年度の実施箇所は2名による作業だったため、1名で作業すれば、コスト削減が図れる。
【0049】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、電源方向通知装置1を検出制御装置Rに取り付けることによって、作業者は、当該検出制御装置Rから離れていても、カットアウトSW1及びSW2の位置から電源方向を確認できるので、その確認のための降柱が必要なくなるため、昇降柱の回数を減らすことができ、作業時間を短縮することができる。また、地上から電源方向の確認をすることもできる。これによれば、作業における安全性の向上、作業者労力の低減による業務処理の効率化を図ることができる。
【0050】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施形態では、赤色LED5及び青色LED6を用いて電源方向を通知するような構成を示したが、例えば、音声又は振動を用いて電源方向を通知するような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】電源方向通知装置1の概観及び回路構成を示す図であり、(a)は電源方向通知装置1の斜視図を示し、(b)は電源方向通知装置1の側面図を示し、(c)は電源方向通知装置1の回路構成を示す。
【図2】電柱における電源トランスのカットアウト及び検出制御装置の位置関係を示す図である。
【図3】C型の検出制御装置Rの各端子に電源方向通知装置1の各クリップが接続されている様子を示す回路図である。
【図4】F型の検出制御装置Rに関する図であり、(a)はF型の検出制御装置R及びその周辺の構成を示し、(b)はF型の検出制御装置Rの動作時限を示す。
【図5】C型の検出制御装置Rに関する図であり、(a)はC型の検出制御装置R及びその周辺の構成を示し、(b)は2個のC型の検出制御装置Rの間で故障が発生した場合の動作を示す。
【図6】開閉器部S及び検出制御装置Rを配電線に取り付けた場合の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電源方向通知装置
2 収納箱
3 電池ボックス
4 電池(第1の電源、第2の電源)
5 赤色LED(第1の素子)
6 青色LED(第2の素子)
C1 赤色クリップ
C2 青色クリップ
C3 白色クリップ
Rs1、Rs2 抵抗
Ry1 リレー(第1のスイッチ)
Ry2 リレー(第2のスイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのペアを構成する端子接続用のクリップと、
前記2つのペアのうち、第1のペアの前記クリップ間に所定値以上の電圧が印加された場合に閉路になる第1のスイッチと、
前記2つのペアのうち、第2のペアの前記クリップ間に所定値以上の電圧が印加された場合に閉路になる第2のスイッチと、
前記第1のスイッチが閉路になると所定の出力を行う第1の素子と、
前記第2のスイッチが閉路になると所定の出力を行う第2の素子と、
を備えることを特徴とする電源方向通知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源方向通知装置であって、
前記第1のスイッチ及び前記第1の素子に直列接続される第1の電源と、
前記第2のスイッチ及び前記第2の素子に直列接続される第2の電源と、
を備えることを特徴とする電源方向通知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電源方向通知装置であって、
前記第1のペアのうち一方のクリップと、前記第2のペアのうち一方のクリップとは、共通化している
ことを特徴とする電源方向通知装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電源方向通知装置であって、
前記第1の電源及び前記第2の電源は、共通化している
ことを特徴とする電源方向通知装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電源方向通知装置を用いて、作業者によって、故障区間検出装置を構成する検出制御装置の所定の端子が配電線の電源側に接続されていることを確認する方法であって、
前記電源方向通知装置を前記検出制御装置に固定するステップと、
前記電源方向通知装置の各クリップを前記検出制御装置の各端子に接続するステップと、
前記配電線の電源側と、前記検出制御装置との間に接続されている電源トランスのカットアウトを開放するステップと、
前記配電線の電源側に接続すべき端子に対応する素子から出力がなくなった場合には、前記検出制御装置の端子の接続が正しく、前記負荷側に接続すべき端子に対応する素子から出力がなくなった場合には、前記検出制御装置の端子の接続が誤りであると判断するステップと、
を実行することを特徴とする電源方向確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−284677(P2009−284677A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134670(P2008−134670)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】