説明

電源装置と前記電源装置を用いる画像形成装置

【課題】 高電圧電源オン時の制御信号Vcontがオペアンプに入力された時点から所望の設定電圧値に立ち上がるまでの間にスプリアス周波数に起因する立ち上がり時間の遅延が発生していた。
【解決手段】 出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較するオペアンプ109と、このオペアンプ109の出力に基づいて、圧電トランス101を駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振器510とを有し、電圧制御発振器510は、圧電トランス101の共振周波数の高周波数域(又は低周波数域)で、その共振周波数の高周波数側(又は低周波数側)に存在するスプリアス周波数以下(又は以上)の範囲で圧電トランスを駆動する周波数信号を発生するように構成する。これにより、高電圧電源オン時の制御信号がオペアンプに入力された時点から所望の設定電圧値に立ち上がるまでの間に、スプリアス周波数に起因する立ち上がり時間の遅延の発生が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子写真プロセスを用いた画像形成装置等に用いる電源装置と、この電源装置を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタ装置において、感光体に転写ローラを当接させ、その感光体と転写ローラの間に挿入された記録シートに画像を転写する直接転写方式が知られている。この場合、転写ローラには導電体の軸を持つローラ状の導電性ゴムを用い、そのローラを感光体のプロセススピードに合わせ回転駆動している。そして転写ローラに印加する電圧には直流バイアス電圧を用いている。この直流バイアス電圧の極性は、通常のコロナ放電式の転写電圧と同じ極性である。しかし、こういった転写ローラを用いて良好な転写を行うためには、通常3kV以上の電圧(所要電流は数μA)を転写ローラに印加する必要があった。このような高電圧を生成するために、従来は巻線式の電磁トランスを使用していた。しかし、このような電磁トランスは、銅線、ビン、磁芯で構成されており、上記のような仕様で用いる場合は、出力電流値が数μAという微小な電流のために各部における漏れ電流を最大限少なくしなければならなかった。そのため、トランスの巻線を絶縁物によりモールドする必要があり、しかも供給電力に比較して大きな容量のトランスを必要とするため高電圧電源装置の小型化、軽量化の妨げとなっていた。
【0003】
一般に、電子写真方式のプリンタ装置においては、上記の転写のほかに、感光ドラムの一次帯電、現像、さらに、必要に応じて定着バイアス、中間転写体を用いた場合の二次転写など、多くの高圧を用いるユニットがある。さらに、カラープリンタにおいては、そのようなユニットが色ごとのステーションに設ける場合もあり、多くのトランスが備えられるため、巻線式の電磁トランスを使用していた場合、装置全体の小型化、軽量化を妨げることになってしまう。
【0004】
そこで、これらの欠点を補うために、薄型で軽量の高出力の圧電トランスを用いて高電圧を発生させることが検討されている。この例として、セラミックを素材とした圧電トランスを用いることにより電磁トランス以上の効率で高電圧を発生できることが知られている。しかも圧電トランスは、一次側及び二次側間の結合に関係なく一次側と二次側の電極間の距離を離すことができるので、絶縁のための特別なモールド加工が不要となり、高電圧電源を小型かつ軽量にできる。
【0005】
図10は、圧電トランス101を用いた従来の高電圧電源回路例を説明する図である。このような高電圧電源回路例は、例えば特許文献1に示されている。
【0006】
101は高電圧電源の圧電トランス(圧電セラミックトランス)である。圧電トランス101の出力は、ダイオード102,103及び高圧コンデンサ104によって正電圧に整流平滑され、負荷である転写ローラ(不図示)に供給される。この出力電圧Voutは、抵抗105,106,107によって分圧され、保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に検出信号(Vsns)として入力される。他方オペアンプ109の反転入力端子(−端子)には、抵抗114を介して制御基板からアナログ信号である高電圧電源の制御信号(Vcont)が入力される。ここでオペアンプ109と抵抗114とコンデンサ113とは積分回路として機能しており、これら抵抗114とコンデンサ113の容量及び抵抗で決まる積分時定数で鈍った制御信号Vcontがオペアンプ109に入力される。更に、このオペアンプ109の出力は電圧制御発振器(VCO)110に接続されている。この電圧制御発振器(VCO)110の出力により、インダクタ112に接続されたトランジスタ111を駆動することで圧電トランス101の一次側に電源を供給する。
【0007】
図11は、圧電トランス101の特性を説明する図である。
【0008】
図において、この特性は共振周波数f0において出力電圧が最大となるような裾広がりな形状をしており、周波数による出力電圧の制御が可能である。共振周波数f0よりも高い周波数で出力電圧を制御する場合、圧電トランス101の出力電圧を増加させるには駆動周波数を高周波数から低周波数へ変化させればよいことがわかる。
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
圧電トランス101には図11に示すように、共振周波数f0以外に圧電トランス101の構造上の特性により、不要共振周波数(以下、スプリアス周波数と記す)が発生する。いま十分に高い駆動周波数から、共振周波数f0付近の所望の出力電圧を得る圧電トランスの駆動周波数まで掃引する場合、各スプリアス周波数を通過する過程で微小出力電圧が発生する。これにより周波数の掃引時間が遅くなり、高圧電圧が出力されるまでの立ち上がり時間が長くなってしまっていた。以下、詳細に説明する。
【0010】
図10において、オペアンプ109の出力電圧値が電圧制御発振器(VCO)回路110の発振周波数を決定する構成をとっている。オペアンプ109の出力電圧値が所望の電圧値に一致する点、即ち、VCO回路110の発振周波数が、所望の発振周波数に固定されるまでの時間を掃引時間とする。オペアンプ109は、反転入力端子(−端子)に制御基板からの制御信号Vcontの電圧を入力し、非反転入力端子(+端子)に検出信号Vsnsを入力している。そして、これら制御信号Vcontと検出信号Vsnsの差分電圧値によりオペアンプ109の出力電圧Vopoutが決定され、この出力電圧Vopoutにより発振周波数の掃引時間が定まる。
【0011】
図12は、従来例の圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を説明する図である。
【0012】
1201は高電圧電源の制御信号Vcontの波形を示し、1202はオペアンプ109の出力電圧Vopoutの波形を示し、1203は出力電圧Voutの波形を示している。1210は高電圧電源のオン時のタイミング、1211,1212は、出力電圧立ち上がり時のスプリアス通過時を示している。この場合の出力電圧Voutの波形は、1203で示すように、駆動周波数を掃引する過程でスプリアス周波数(1211,1212)を通過することにより微小出力電圧が発生する。そして、その出力電圧値に則した検出信号値Vsnsがオペアンプ109に入力され、オペアンプ109の出力電圧Vopout1202が上昇する。それに伴って発振周波数の掃引時間が長くなっていた。このように、高電圧電源オン時の制御信号Vcontがオペアンプに入力された時点(1210)から所望の出力設定電圧値に立ち上がるまでの間に、スプリアス周波数に起因する立ち上がり時間の遅延が発生していた。
【0013】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決することにある。
【0014】
また本願発明の特徴は、高電圧の立ち上がり時間を短縮することを可能とした電源装置と、それを採用した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る電源装置は以下のような構成を備える。即ち、
圧電トランスを周波数信号で駆動して出力電圧を発生する電源装置であって、
出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の高周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以下の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様に係る電源装置は以下のような構成を備える。即ち、
圧電トランスを周波数信号で駆動して出力電圧を発生する電源装置であって、
出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の低周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以上の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生することを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、
像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
前記静電潜像にトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写部材に転写する転写手段と、
前記トナー像が転写された被転写部材にトナーを加熱定着させる定着手段と
前記被転写部材を搬送するために搬送手段と、
前記現像手段、転写手段、定着手段の少なくともいずれかに高電圧を供給する電源装置と、前記電源装置は、出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有する、と、
を有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の高周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以下の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する、又は前記圧電トランスの共振周波数の低周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以上の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧電トランスの共振周波数に最も近接したスプリアス周波数を避けて、圧電トランス駆動周波数の最下限或に最上限を設定することで、出力電圧の立ち上がり時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0020】
まず最初に図9を参照して、本実施の形態に係るカラーレーザプリンタの構成を説明する。
【0021】
図9は、本発明の実施の形態に係るカラーレーザプリンタ(画像形成装置)の構成を説明する概略断面図である。
【0022】
このレーザプリンタ401は、記録媒体である記録シート32を収納するデッキ(用紙カセット)402を有している。デッキ紙有無センサ403は、このデッキ402内の記録シート32の有無を検知する。ピックアップローラ404は、その回転によりデッキ402から記録シート32を一枚ずつに分離して繰り出す。デッキ給紙ローラ405は、ピックアップローラ404によって繰り出された記録シート32を搬送する。リタードローラ406は、デッキ給紙ローラ405と対をなし、記録シート32の重送を防止している。このデッキ給紙ローラ405の下流には、記録シート32を同期搬送するレジストローラ対407と、レジストローラ対407への記録シート32の搬送状態を検知するレジ前センサ408が配設されている。
【0023】
またレジストローラ対407の下流には静電吸着搬送転写ベルト(以下、ETBと記す)409が配設されている。そして4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))分のプロセスカートリッジ410Y,410M,410C,410Kと、スキャナーユニット420Y,420M,420C,420Kからなる画像形成部によって画像が形成される。こうして形成された画像は転写ローラ430Y,430M,430C,430Kによって、ETB409により搬送される記録シート32上に順次重ね合わせて転写される。
【0024】
更に、この画像形成部の下流には、記録シート32に転写されたトナー像を熱定着するために内部に加熱用のヒータ432を備えた定着ローラ433と加圧ローラ434対とを含む定着器が配設されている。この定着器により画像が定着された記録シート32は、定着排紙ローラ対435の回転により装置外に排出される。定着排紙センサ436は、この定着器からの記録シート32の搬送状態を検知している。
【0025】
次に各スキャナ部420Y〜420Kと各画像形成部の構成を、イエローの画像形成用のスキャナ部420Yと画像形成部の構成を参照して説明する。尚、他の色のスキャナ部と画像形成部は同様の構成であるため、その説明を省略する。このスキャナ部420Yは、後述するビデオコントローラ440から送出される画像信号に基づいて変調されたレーザ光を出力する。このためにレーザユニット421Y、レーザユニット421Yからのレーザ光を各感光ドラム305Y上に走査するためのポリゴンミラー422Yとスキャナモータ423Y、結像レンズ群424Yを備えている。そしてプロセスカートリッジ410Yには公知の電子写真プロセスに必要な感光ドラム305Y、帯電ローラ303Yと現像ローラ302Y、トナー格納容器411Yを具備しており、レーザプリンタ401に対して着脱可能に構成されている。
【0026】
ビデオコントローラ440は、パーソナルコンピュータ等の外部装置(ホストコンピュータ)441から送出される画像データを受け取ると、その画像データをビットマップデータに展開して画像形成用の画像信号を生成する。201はレーザプリンタの制御部である制御基板を示している。この制御基板201は、RAM207a,ROM207b,タイマ207c、デジタル入出力ポート207d,D/Aポート207eを具備したMPU(マイクロコンピュータ)207、及び各種入出力制御回路(不図示)等を有している。
【0027】
更に、高電圧電源部202は、各プロセスカートリッジに対応した帯電高電圧電源(不図示)、現像高電圧電源(不図示)と、各転写ローラ430Y〜430Kに対応した高電圧を出力可能な圧電トランスを使用した転写高電圧電源とで構成されている。
【0028】
次に、本実施の形態に係る圧電トランス式の高電圧電源部202の構成を説明する。尚、本実施の形態に係る高電圧電源の構成は、正電圧、負電圧どちらの出力回路に対しても有効であるため、ここでは代表的に正電圧を必要とする転写高電圧電源について説明する。また転写用の高電圧電源は各転写ローラ430Y,430M,430C,430Kに対応して4つの回路が設けられている。しかし、それぞれの回路構成は同じであるため、1つの回路についてのみ説明する。
【0029】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る高電圧電源部202で採用される圧電トランス式高電圧電源回路の一例を示す図である。
図1において、101は圧電トランス(圧電セラミックトランス)、102,103,506,513はダイオード、104,113,514はコンデンサである。また105〜108、114,501〜504,507,511,512,515,517,518,520は抵抗、109はオペアンプ、111,505,509,519はトランジスタである。さらに、112はインダクタ、508はコンパレータ、510は電圧制御発振器(VCO)、530はCR発振回路である。
【0030】
圧電トランス101の出力は、ダイオード102,103及び高圧コンデンサ104によって正電圧に整流平滑され、負荷である転写ローラ(不図示)に供給される。更に、この出力電圧Voutは、抵抗105,106,107によって分圧され、保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に、検出信号(Vsns)として入力されている。このオペアンプ109の反転入力端子(−端子)には、直列抵抗114を介して制御基板201からアナログ信号である高電圧電源の制御信号(Vcont)が入力される。更にオペアンプ109の出力は、電圧制御発振器(VCO)510に接続されている。また電圧制御発振器510の出力は、抵抗517を介してトランジスタ111のベースに接続されている。このトランジスタ111のコレクタは、インダクタ112を介して電源(+24V)に接続されているとともに、圧電トランス101の一次側電極の一方に接続されている。尚、このこの一次側の電極の他方は接地されている。またトランジスタ111のエミッタも接地されている。
【0031】
この圧電トランス101の出力電圧−周波数特性は、前述した図11に示す特性を有しているものとする。
【0032】
図11に示すように、共振周波数f0において出力電圧が最大となり、周波数による出力電圧の制御が可能であることが判る。ここで規定出力電圧Edcを出力する時の駆動周波数をfxとする。
【0033】
電圧制御発振器510は、入力電圧が上昇すると出力周波数が上がり、入力電圧が低下すると出力周波数が下がる動作を行うものとする。この条件において、出力電圧Voutが上昇すると抵抗105を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)の検出信号Vsnsも上昇し、その結果、オペアンプ109の出力端子の電圧も上昇する。これにより電圧制御発振器510の入力電圧も上昇するので圧電トランス101の駆動周波数が上昇する。従って、駆動周波数fxより少し高い周波数で圧電トランス101が駆動され、その出力電圧が少し低下する。このようにして、出力電圧Voutが上昇すると、その出力電圧を下げる方向に制御される(図2)。即ち、負帰還制御回路を構成している。
【0034】
また出力電圧Voutが低下するとオペアンプ109の検出信号Vsnsが低下し、オペアンプ109の出力電圧も低下する。これにより電圧制御発振器510の出力周波数は低下して出力電圧Voutを上昇する方向に制御する(図2)。
【0035】
このようにして、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)に入力される制御基板201からの制御信号(Vcont)の電圧で決定される電圧に等しくなるように、圧電トランス式高電圧電源回路の出力電圧Voutが定電圧制御される。
【0036】
尚、これら以外の電圧制御発振器510を構成する要素は、本発明の主旨から外れるため、その詳細な説明を省略する。
【0037】
図2は、本実施の形態1に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−周波数特性を説明する図である。
【0038】
圧電セラミックス振動体の共振周波数f0よりも高周波側における、駆動周波数と出力電圧との関係を表している。この圧電セラミックス振動体の共振周波数f0、共振周波数f0の高周波側に最も近接する高域スプリアス周波数をfHとしたとき、この圧電トランス駆動周波数fDの範囲は式1で表せる。
f0<fD<fH …式(1)
【0039】
画像形成装置の高電圧電源オン時における圧電トランス101の駆動周波数fDの初期値をfHよりも低周波数側に設定し、この周波数を圧電トランス101の駆動周波数fDの範囲の最上限値とする。これには、コンデンサ514と抵抗507の容量、抵抗値を選択することにより、駆動周波数fDの最上限値がfHよりも低周波数側に設定されるように、コンデンサ514と抵抗507のCR時定数を適当に選択することにより可能である。
【0040】
図3は、本実施の形態1に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を説明する図である。
【0041】
実線301は、制御基板201からアナログ信号である高電圧電源の制御信号Vcontの波形を示す。破線304は、従来のオペアンプ出力電圧Vopout波形(図2において従来の駆動周波数範囲で周波数を可変した場合)を示し、破線303は従来の出力電圧Voutの波形(図2において従来の駆動周波数範囲で周波数を可変した場合)を示している。実線302は本実施の形態に係るオペアンプ508の出力電圧Vopout波形を示し、305は本実施の形態における出力電圧Voutの波形を示している。310は、高電圧電源のオン時、311,312は、図2において従来の駆動周波数範囲で周波数を可変した場合、出力電圧立ち上がり時のスプリアス周波数を通過するタイミングを示している。
【0042】
本実施の形態1では、初期駆動周波数をfHよりも低周波数側に設定する。これにより、駆動周波数を掃引する過程でスプリアス周波数を通過しないので、高電圧電源のオン時(310)において、出力電圧Voutの波形305に示すような挙動で出力電圧が立ち上がる。その結果、従来例の出力電圧Voutの波形303と比較して、出力電圧Voutの立ち上がり時間を短縮できる。
【0043】
[実施の形態2]
この実施の形態2における実施の形態1との主たる相違点は、圧電トランス101の駆動周波数fDの範囲を、圧電セラミックス振動体の共振周波数f0よりも低周波側に設定する点にある。
【0044】
図4は、本発明の実施の形態2に係る圧電トランス式の高電圧電源の回路例を示す図である。
【0045】
この回路は、前述の実施の形態1における図1のトランジスタ111とインダクタ112を用いずに、トランジスタ505と521でプッシュプル回路を構成し、抵抗522を介して直接電源電圧で圧電トランス101をパルスドライブする例を示している。
【0046】
そして、本実施の形態2においては、共振周波数f0より低周波数側の周波数範囲で圧電トランスを駆動させる構成となっている。またこの実施の形態2における電圧制御発振器(VCO)510aは、前述の実施の形態1のVCO510とは逆に、入力電圧が上昇すると出力周波数が下がり、入力電圧が低下すると出力周波数が上がる動作を行うものとする。尚、上記以外の回路構成に関しては、前述の実施の形態1と共通する部分は同じ記号で示し、それらの説明を省略する。
【0047】
図5は、本実施の形態2に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−周波数特性を説明する図である。
【0048】
ここでは圧電セラミックス振動体の共振周波数f0、低周波側に最も近接する低域スプリアス周波数をfLとしたとき、圧電トランス駆動周波数fDの範囲は以下の式(2)で表せる。
fL<fD<f0 …式(2)
【0049】
ここでVCO510aの動作下限周波数は、コンデンサ514と抵抗507とのCR時定数で決定される。画像形成装置の高電圧電源のオン時における圧電トランス101の駆動周波数fDの初期値をfLよりも高周波数側に設定し、圧電トランス101の駆動周波数fDの範囲の最下限値とする。こうしてコンデンサ514と抵抗507のCR時定数を決定して、圧電トランス101の駆動周波数fDを、fLよりも高周波数側に設定することが可能である。
【0050】
図6は、本実施の形態2に係る圧電トランス式の高電圧電源の出力電圧−時間特性を示す図である。
【0051】
実線601は制御基板201から供給される、アナログ信号である高電圧電源の制御信号Vcontの波形を示している。破線602は従来(図5の「従来の駆動周波数範囲」で示される範囲で周波数を可変制御した場合)のオペアンプの出力電圧Vopoutの波形を示し、破線603は従来の出力電圧Voutの波形を示している。実線606は、本実施の形態2に係るオペアンプ508の出力電圧Vopoutの波形を示し、実線607は本実施の形態2の出力電圧Voutの波形を示している。また610は高電圧電源オン時を示し、611,612のそれぞれは、図5の「従来の駆動周波数範囲」で示される範囲で周波数を可変制御した場合に、出力電圧立ち上がり時に掃引される駆動周波数がスプリアス周波数を通過するタイミングを示している。
【0052】
この実施の形態2では、図5に示すように、初期駆動周波数をfLよりも高周波数側に設定している。これにより、掃引する過程でスプリアス周波数を通過しないので、高電圧電源オン時(610)において、出力電圧Voutの波形607に示す挙動で出力電圧が立ち上がる。その結果、従来の出力電圧Voutの波形603と比較して、出力電圧Voutの立ち上がり時間を短縮できる。
【0053】
[実施の形態3]
前述の実施の形態1及び2の構成では、制御信号Vcontが0Vの場合でも圧電トランス101が駆動しており、微小に出力電圧Voutを出力する状態を維持しているため出力電圧Voutは完全に0Vにならない。このため電子写真方式のプリンタの感光体や転写ローラといったプロセス部材に、常に電圧が印加されることになる。これによりプロセス部材の寿命が低下する。又、常に圧電トランス101を駆動していることにより無駄に電力を消費してしまう等の問題がある。
【0054】
そこで本実施の形態3では、前述の実施の形態1及び2に記載の構成において、出力電圧Voutが、画像形成動作に用いる出力電圧以下の所定電圧になった時点で、出力電圧Voutを完全に0Vにする。
【0055】
また、本実施の形態は、圧電セラミックス振動体の共振周波数f0の高周波数側で圧電トランス101を制御する構成(実施の形態1)、および圧電セラミックス振動体の共振周波数f0の低周波数側で圧電トランス101を制御する構成(実施の形態2)のいずれの場合にも適用可能であるが、本実施の形態3では、圧電セラミックス振動体の共振周波数f0の高周波数側で圧電トランス101を制御する構成の場合で説明する。
【0056】
図7は、本発明の実施の形態3に係る圧電トランス式高電圧電源の回路例を説明する図で、前述の図1と共通する部分は同じ記号を付して、その説明を省略する。
【0057】
以下、本実施の形態3の特徴である出力電圧停止回路119を中心に説明する。
【0058】
出力電圧停止回路119は、コンパレータ115により、制御系統の電源電圧Vregと抵抗116,117の抵抗値で決定される基準電圧Vref2と、制御信号Vcontの電圧とを比較する。その比較結果(コンパレータ115の出力電圧Va)は、コンパレータ118により、出力電圧Voutの検出電圧VFBと比較される。そしてそのコンパレータ118の出力電圧(Vb)がCR発振回路530に入力されて出力に反映される。即ち、制御信号Vcontの電圧が基準電圧Vref2よりも高い場合は、コンパレータ115の出力電圧Vaはほぼ0Vにまで低下する。このため、出力電圧Voutが0V以上であれば、VCO510は通常どおりに動作する。一方、制御信号Vcontの電圧が基準電圧Vref2よりも低い場合は、コンパレータ115の出力電圧Vaは所定の電圧Vthとなる。この状態で出力電圧Voutが、この電圧Vth以下に低下するとオペアンプ118の出力電圧Vbは0Vとなり、VCO510からは周波数信号は出力されない。
【0059】
図8は、実施の形態3に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を説明する図である。
【0060】
801は、制御基板201から供給される、アナログ信号である高電圧電源の制御信号Vcontの波形を示している。803は従来の出力電圧Voutの波形を示す。808は、本実施の形態3に係るコンパレータ115の出力電圧Vaの波形を示している。809は、本実施の形態3に係るコンパレータ118の出力電圧Vbの波形を示している。また810は、本実施の形態3に係る検出電圧VFBの波形を示し、811は本実施の形態3に係る出力電圧Voutの波形を示している。また820は、高電圧電源オン時を示し、821は高電圧電源オフ時を示している。
【0061】
このような構成において、出力電圧Voutが画像形成動作に用いる出力電圧以下の所定電圧になった時点で、出力電圧Voutが0Vになるよう基準電圧Vref2の値を設定する。また、この出力電圧Voutの閾値に対応する検出電圧VFBをVthとする。
【0062】
以下に、図7と図8を用いて動作を説明する。
【0063】
高電圧電源をオンする(820)と、制御部からの制御信号Vcont(801)の電圧はハイレベルとなる。これによりコンパレータ115の出力電圧Va(808)は0Vに、コンパレータ118の出力電圧Vb(809)はVregとなる。その後、検出電圧VFB(810)が上昇し始めると、出力電圧Vout(811)は、基準電圧Vref2の電圧値分上昇する(812)。そしてその後、所望の出力電圧Voutまで昇圧していく。
【0064】
次に高電圧電源をオフ(821)すると、制御部からの制御信号Vcont(801)の値が0Vとなり、これによりコンパレータ115の出力電圧Va(808)がVthとなる。その後、検出電圧VFB810が下がり始め、この閾値電圧Vthよりも低下した時点で、コンパレータ118の出力電圧Vb(809)が0Vとなる。これにより、検出電圧VFB(810)が、VFBの初期値(0V)まで瞬時に低下する。このとき同時に出力電圧Vout(811)も瞬時に0Vに低下する。
【0065】
以上より、図8に示す制御信号Vcont(801)が基準電圧Vref2よりも小さく、かつ検出電圧VFB(810)が所定の電圧値Vthよりも小さい場合に、コンパレータ118の出力(809)がほぼ0Vになる。これにより、トランジスタ111のベース電位が低下し発振を停止する。これにより圧電トランス101の駆動が停止するため出力電圧Vout811がほぼ0Vとなって、その出力が停止される。
【0066】
尚、制御信号Vcont(801)が基準電圧Vref2よりも大きい場合、或は検出電圧VFB(810)が所定の閾値電圧Vthよりも大きい場合は、出力電圧停止回路119が動作しないため、前述の実施の形態1の回路と同様の出力が得られる。
【0067】
尚、本実施の形態3では、共振周波数f0より高周波域で、圧電トランス101の駆動周波数を制御する構成で説明した。しかし本発明はこれに限定されるものでなく、前述の実施の形態2のように、共振周波数f0より低周波域の駆動周波数で制御しても良い。
【0068】
尚、上述の実施の形態1〜3では、定電圧制御の構成の場合で説明したが、本発明はこれに限定されず、定電流制御構成を採用した場合においても同様の効果が得られる。
【0069】
また、実施の形態1〜3において、画像形成装置の説明をタンデム方式のカラー画像形成装置を例に説明したが、高圧バイアスを用いた画像形成装置であれば本発明の適用範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1に係る高電圧電源部で採用される圧電トランス式高電圧電源回路の一例を示す図である。
【図2】本実施の形態1に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−周波数特性を説明する図である。
【図3】本実施の形態1に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る圧電トランス式高電圧電源の回路例を示す図である。
【図5】本実施の形態2に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−周波数特性を説明する図である。
【図6】本実施の形態2に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る圧電トランス式高電圧電源の回路例を説明する図である。
【図8】実施の形態3に係る圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るカラーレーザプリンタ(画像形成装置)の構成を説明する概略断面図である。
【図10】圧電トランスを用いた従来の高電圧電源回路例を説明する図である。
【図11】圧電トランスの特性を説明する図である。
【図12】従来例の圧電トランス式高電圧電源の出力電圧−時間特性を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電トランスを周波数信号で駆動して出力電圧を発生する電源装置において、
出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の高周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以下の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電圧制御発振手段は、入力電圧が上昇すると前記周波数信号の周波数を上昇させ、入力電圧が低下すると前記周波数信号の周波数を低下させることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電圧設定信号が閾値以下の場合、一定条件下で前記電圧制御発振手段の動作を停止させる手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
圧電トランスを周波数信号で駆動して出力電圧を発生する電源装置において、
出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の低周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以上の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生することを特徴とする電源装置。
【請求項5】
前記電圧制御発振手段は、入力電圧が上昇すると前記周波数信号の周波数を低下させ、入力電圧が低下すると前記周波数信号の周波数を上昇させることを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電圧設定信号が閾値以下の場合、一定条件下で前記電圧制御発振手段の動作を停止させる手段を更に有する請求項3に記載の電源装置。
【請求項7】
像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
前記静電潜像にトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写部材に転写する転写手段と、
前記トナー像が転写された被転写部材にトナーを加熱定着させる定着手段と
前記被転写部材を搬送するために搬送手段と、
前記現像手段、転写手段、定着手段の少なくともいずれかに高電圧を供給する電源装置と、前記電源装置は、出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の高周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以下の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生する、又は前記圧電トランスの共振周波数の低周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以上の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の高周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以下の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生し、入力電圧が上昇すると前記周波数信号の周波数を上昇させ、入力電圧が低下すると前記周波数信号の周波数を低下させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数の低周波数域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近い不要共振周波数以上の範囲で前記圧電トランスを駆動する周波数信号を発生し、入力電圧が上昇すると前記周波数信号の周波数を低下させ、入力電圧が低下すると前記周波数信号の周波数を上昇させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電圧設定信号が閾値以下の場合、一定条件下で前記電圧制御発振手段の動作を停止させる手段を更に有することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項11】
圧電トランスと、
出力電圧と、出力電圧を設定するための電圧設定信号とに基づいて周波数を可変して、前記圧電トランス駆動のための周波数信号を発生する電圧制御発振手段とを有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数に対して高周波及び低周波の何れか一方領域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近いスプリアス共振周波数との間の周波数範囲内の周波数信号を発生することを特徴とする電源装置。
【請求項12】
像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
前記静電潜像にトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写部材に転写する転写手段と、
前記トナー像が転写された被転写部材にトナーを加熱定着させる定着手段と
前記被転写部材を搬送するために搬送手段と、
前記現像手段、転写手段、定着手段の少なくともいずれかに高電圧を供給する電源装置とを有し、
前記電源装置は、圧電トランスと、出力電圧と出力電圧を設定するための電圧設定信号とに基づいて周波数を可変して、前記圧電トランス駆動のための周波数信号を発生する電圧制御発振手段を有し、
前記電圧制御発振手段は、前記圧電トランスの共振周波数に対して高周波及び低周波の何れか一方領域で、前記共振周波数と前記共振周波数に最も近いスプリアス共振周波数との間の周波数範囲内の周波数信号を発生することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−43891(P2007−43891A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170248(P2006−170248)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】