説明

電源装置付熱処理ローラ

【課題】熱処理ローラの肉厚内に設置された温度検知器と、前記温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送する前記ローラに設置された信号変換送信回路とを備えた熱処理ローラにおいて、回転側のローラに設置した温度検知器および信号変換送信回路に電力を供給するための配線をなくすること。
【解決手段】熱処理ローラシェル20の肉厚内に設置された温度検知器1と、前記温度検知器1の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置31に無線伝送する前記ローラに設置された信号変換送信回路29とを備えた熱処理ローラであって、前記ローラのジャーナル24aに前記温度検知器1および信号変換送信回路29に電力を供給する、ローラの回転で発電する発電機と2次電池からなる電源装置33を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置付熱処理ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローラ本体の中空内部に誘導コイルを配置した誘導発熱ローラやローラ本体の中空内に熱流体を通流するローラなどの熱処理ローラでは、ローラの肉厚内に温度検知器を配置し、その温度検知器で検出したローラの表面温度検出信号に基づいて誘導コイルに流す電流や熱流体の温度を制御し、ローラの表面温度を所定の温度に維持するようにする場合がある。この場合、温度検知器で検出したローラの表面温度検出信号は、ローラのジャーナルに設置した回転トランスを介して地上側、すなわち固定側に配置した温度制御装置に送られる。回転側に配置されて温度検知器などへの電力は、固定側に配置した交流電源から回転トランスを介して供給されている。
【特許文献1】特開2003−178862号公報
【特許文献2】特開2004−195888号公報
【特許文献3】特開2002−093567号公報
【0003】
しかし、回転側に配置されて温度検知器の検出信号を、回転トランスを介して固定側の温度制御装置に送る構成では、検知精度の高い温度検知器を用いても、回転変圧器の伝達精度などに左右されローラの表面温度の変動を±0.1℃以内に収めることができないという欠点があった。この欠点を解消する手段として回転側に配置されて温度検知器の検出信号を無線で固定側の温度制御装置に送ることが、発明者らによって提案されている(特願2006−38786号)。
【0004】
図4は、この提案に係る熱処理ローラ用温度検出装置の回路ブロック図である。この図4において、Aはローラの回転側、Bはステータなどの固定側を示し、回転側Aには、ローラの表面温度を検知する白金(Pt)100Ωからなる温度検知器1、信号変換回路2、アナログ・デジタル変換器3、マイクロコンピュータ4、送信回路5および送信アンテナ6が配置され、固定側には受信アンテナ7および受信回路8、マイクロコンピュータ9、デジタル・アナログ変換器10が配置され、デジタル・アナログ変換器10のアナログ出力は温度検知器1の検出信号として図示しない温度制御装置へ送られる。
【0005】
信号変換回路2は、温度検知器1に一定電流(1mA)を流し、降下電圧を50倍増幅し、0〜2Vの変化を0〜100℃の変化に対応させて出力する。アナログ・デジタル変換器3は100mSごとに信号変換回路2の出力であるアナログ信号をサンプリングし、その出力を16ビットに換算してデジタル信号(数値信号)に変換してマイクロコンピュータ4に送る。マイクロコンピュータ4は、温度検知器1の特性がリニア(線形)でなく約0.3℃の誤差が発生するため、入力したデジタル信号をリニアライズ(線形化)して約0.019℃の誤差に修正し、修正した16ビットのデジタル信号を2.4GHz域の電流信号にデジタル変調して送信回路5に送り、送信回路5はデジタル変調した電流信号を、アンテナ6を介して、固定側に送信する。
【0006】
回転側のアンテナ6から送信された信号を固定側のアンテナ7を介して受信回路8で受信し、受信した信号をマイクロコンピュータ9に送る。マイクロコンピュータ9は16ビットのデジタル電流信号を読み取り、そのデジタル信号をデジタル・アナログ変換器10に送り、デジタル・アナログ変換器10で変換したアナログ信号を図示しない温度制御装置へ送る。
【0007】
このように構成した熱処理ローラ用温度検出装置では ローラの回転側で温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換後の信号を温度検知器の特性による誤差を修正して無線送信し、固定側で送信されたデジタル信号を受信しアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を温度検知器の温度検出信号として温度制御装置に入力するので、回転側で温度検知器の検知信号を固定側に送るための回転変圧器を要さず、また、温度検知器の特性による誤差を修正した信号であることと相俟ってきわめて精度の高い温度検出信号を得ることができる。
【0008】
しかし、回転側のローラに配置された温度検知器、信号変換、A/Dコンバータ、マイコン、送信ICへ供給する電力は、固定側のコイル11と回転側コイル12−1,12−2との磁気結合により供給され、固定側のコイル11はローラから離れて配置された交流電源から伸びる電線と接続されている。そのために、ローラへの電線が多く、ローラの周辺が煩雑であるとともに、ローラを固定側の温度制御装置などの機器と離して離し配置することができないといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、熱処理ローラの肉厚内に設置された温度検知器と、前記温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送する前記ローラに設置された信号変換送信回路とを備えた熱処理ローラにおいて、回転側のローラに設置した温度検知器および信号変換送信回路に電力を供給するための、固定側からローラまでの配線を削減し、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱処理ローラの肉厚内に設置された温度検知器と、前記温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送する前記ローラに設置された信号変換送信回路とを備えた熱処理ローラであって、前記ローラのジャーナルに前記温度検知器および信号変換送信回路に電力を供給する電源装置を設けたことを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ローラの表面温度の検知信号をローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送するとともに、ローラに設置された信号変換送信回路への電源をローラに設けているので、ローラの周辺を簡素、かつローラを温度検出用の電力供給線の配置に左右されず独立して任意の位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
熱処理ローラの肉厚内に設置された温度検知器と、前記温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送する前記ローラに設置された信号変換送信回路とを備えた熱処理ローラにおいて、回転側のローラに設置した温度検知器および信号変換送信回路に電力を供給するための、固定側からローラまでの配線を削減する目的を、ローラ自体に電源装置を設けることにより実現した。
【実施例】
【0013】
図1は一実施例に係る熱処理用ローラの概略を示す構成図、図2は図1に示す熱処理用ローラの電源部の構成を示す断面図、図3は本発明の実施例に係るローラ用温度検出装置の全体構成を示すブロック回路図である。なお、図3において、図4に示す先行例のローラ用温度検出装置と同一部分には同一の符号を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0014】
図1において、20はローラシェル、21は誘導コイル、22は鉄心、23は支持軸、24a、24bはローラシェル20の両端部にそれぞれで一体的に固定したジャーナルであり、誘導コイル21は円筒状の鉄心22に巻回され、支持軸23に固定されている。支持軸23の一端は機台25に固定され他端はジャーナル24aの内面で軸受け25を介して支持されている。ジャーナル24aと24bはそれぞれ軸受け27aと27bを介して機台25に回転自在に支持され、図示しないモータの回転により回転する。ローラシェル20には気液二相の熱媒体を封入する複数の密閉室20aとPt(白金)100Ωの温度検知器1を挿入する孔20bが形成されている。
【0015】
温度検知器1は、ジャーナル24aに固定した信号変換送信回路29(図3に示す信号変換回路1、A/Dコンバータ3、マイコン4、送信IC5、アンテナ6)に接続され、温度検知器1で検出した温度検出信号は、この信号変換送信回路29を経て受信回路30(図3に示すアンテナ7、受信IC8、マイコン、D/Aコンバータ)に無線送信され、受信回路30に接続した温度制御装置31に送られる。温度制御装置31は、送信された温度検出信号とローラの表面温度設定値と比較し、その偏差に応じてサイリスタユニットからなる電力調節器32により誘導コイル21に流れる電流を調節する。
【0016】
本発明にしたがい本実施例では、発電機、過充電保護回路およびリチウムイオン電池(電気二重層コンデンサでもよい。)からなる電源装置33をジャーナル24aの内部に設置しており、この電源装置33で回転側(ローラ)に設けた温度検知器1および信号変換送信回路29に電力を供給している。
【0017】
具体的には、電源装置33は図2に示すように構成されている。すなわち図2において、34はジャーナル24aに固定され、ジャーナル24aの回転とともに回転する発電機ケース、35は支持軸23の端部に固定されたギアボックス、36はジャーナル24aに固定され、ジャーナル24aの回転とともに回転するギア、37は過充電保護回路およびリチウムイオン電池である。ギア36の回転すなわちジャーナル24aの回転はギアボックス35内のギアに伝達され、ジャーナル24aの回転よりも高速の回転を出力軸38に伝達する。出力軸38は発電機ケース34を貫通し、端部に整流子(スリップリング)34cが固定されている。発電機ケース34内面には磁石34aが固定され、この磁石34aと対向する位置で出力軸38にコイル(三極)34bが固定され、コイル(三極)34bの端部は整流子(スリップリング)34cに接続されている。すなわち、磁石34aの回転速度とコイル(三極)34bの回転速度との差によりコイル(三極)34bに電圧が誘起される。
【0018】
発電機ケース34の端部にはブラシ34dが固定され、ブラシ34dは整流子34cと接触する。すなわちコイル(三極)34bに誘起された交流電圧は整流子34cとブラシ34dとで直流に変換して過充電保護回路およびリチウムイオン電池37に送られリチウムイオン電池を充電する。回転側に設けた温度検知器1および信号変換送信回路29への電力の供給は、過充電保護回路およびリチウムイオン電池37から供給されるが、ローラの停止時は、発電機が発電しないのでリチウムイオン電池から供給される。39は電力供給線である。なお、発電機とギアボックスとの組み合わせに代えギアードモータを使用するようにしてもよい。
【0019】
以上の説明は、電源装置として発電機を使用するものであるが、電源は発電機に限らず、たとえば太陽電池であってもよい。また、実施例の熱処理ローラは熱源を誘導発熱機構とするものであるが、熱源は誘導発熱機構に限らず、熱媒流体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る熱処理用ローラの概略を示す構成図である。
【図2】図1に示す熱処理用ローラの電源部の一例の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るローラ用温度検出装置の全体構成を示すブロック回路図である。
【図4】従来のローラ用温度検出装置の全体構成を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0021】
1 温度検知器
20 ローラシェル
20b 温度検知器挿入孔
21 誘導コイル
22 鉄心
23 支持軸
24a、24b ジャーナル
25 機台
29 信号変換送信回路
30 受信回路
31 温度制御装置
32 電力調節器
33 電源装置
34 発電機ケース
34a 磁石
34b コイル
34c 整流子
34d ブラシ
35 ギアボックス
36 ギア
37 過充電保護回路およびリチウムイオン電池
38 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理ローラの肉厚内に設置された温度検知器と、前記温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換して、前記ローラ外に配置された温度制御装置に無線伝送する前記ローラに設置された信号変換送信回路とを備えた熱処理ローラであって、前記ローラのジャーナルに前記温度検知器および信号変換送信回路に電力を供給する電源装置を設けたことを特徴とする電源装置付熱処理ローラ。
【請求項2】
電源装置は、ローラの回転により発電する発電機と前記発電機で発電した電力を蓄積する蓄積装置からなることを特徴とする請求項1に記載の電源装置付熱処理ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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