電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置
【課題】セパレータを薄くしつつも、電池セルの保護を図ることができる。
【解決手段】外形を角形とし、その上面に電極端子13を備える複数の電池セル10と、前記複数の電池セル10同士を積層面で重ねて積層すると共に、該電池セル10同士の間に介在される絶縁性のセパレータ20と、を備える電源装置であって、前記セパレータ20は、シート状で、前記電池セル10の幅と略等しい幅で、積層面から上面にかけて被覆するよう貼付することができる。上記構成により、電池セルの上面において、電池セル同士が面する界面の端縁がシート状セパレータで被覆されるため、この部分で隣接する電池セル同士が短絡することを回避できる。
【解決手段】外形を角形とし、その上面に電極端子13を備える複数の電池セル10と、前記複数の電池セル10同士を積層面で重ねて積層すると共に、該電池セル10同士の間に介在される絶縁性のセパレータ20と、を備える電源装置であって、前記セパレータ20は、シート状で、前記電池セル10の幅と略等しい幅で、積層面から上面にかけて被覆するよう貼付することができる。上記構成により、電池セルの上面において、電池セル同士が面する界面の端縁がシート状セパレータで被覆されるため、この部分で隣接する電池セル同士が短絡することを回避できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角形電池セルを積層した電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置に関し、特にハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両に搭載されて車両を走行させるモータの電源装置、あるいは家庭用、工場用の蓄電用途等に使用される大電流用の電源に電力を供給する電源装置を構成する電池セルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電源装置の高出力化の要求に伴い、電池セルを積層した電池ブロックを複数積層する。しかしながら、例えば車載用の電源装置のように、限られたスペースに多数の電池ブロックを配置する場合は、スペース要求が厳しく、大きなケース内に多数の電池ブロックを収納した電源装置を配置することは困難である。
【0003】
特に、電池セルの外装缶を金属製とする場合は、電池セルを積層した状態で絶縁するため、表面にシュリンクチューブなどの絶縁チューブで被膜すると共に、樹脂製のセパレータを電池セル間に介在させている。しかしながら、セパレータの厚さによって電池セルを積層した電池ブロックの全体が厚くなってしまう。この傾向は、積層する電池セルの数が増えるほど大きくなり、特に近年の高出力化の要求に応えるため、電池セルの積層数は増える傾向にあることから、このような厚型化の対策が求められている。
【0004】
そこで、セパレータを極力薄くすることが考えられる。例えば樹脂製のセパレータでなく、シート状のセパレータを介在させることで、電池セル間の絶縁性を確保する構成が考えられる。
【0005】
一方、セパレータを薄くすればするほど、電池セル同士を直接積層させる状態に近付くこととなる。電池セルの外装缶は、上面を開口した有底の金属製であり、角形の上面を封口板で閉塞して、周囲をレーザ溶接などによって固定している。この固定部分は、機械的な強度がそれ程強くないため、電池セル同士を積層すると、開口端同士が接触して、溶接部分を破損する可能性がある。
【0006】
そこで、開口端同士が接触しないように、電池セルの腹の部分同士で接触するように、セパレータの厚さを、電池セルの積層面の中央で厚くすることが考えられる。このようにすれば、図12(a)の概略拡大断面図に示すように、電池セル910を積層しても、セパレータ920により中央部分同士が接触されて、封口板911が位置する上面の部分は隙間が形成され、直接この部分が接触して封口板911の溶接部分を破損する事態を回避できる。
【0007】
しかしながら、電池セル910の上面で隙間が形成されると、今度はこの隙間に水滴が溜まる事態が生じ得る。この結果、図12(b)の概略拡大断面図に示すように、隣接する電池セル910同士が上面で水滴940を介して導通される虞があった。特に電池セル910は、側面や底面はシュリンクチューブ915で被覆されているものの、その上面は、安全弁を閉塞しないように露出されたままとなっており、この結果、水滴940による導通の可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−287530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、複数の電池セルを積層した電池ブロックを薄型化するために、セパレータを薄くしつつも、電池セルの保護を図ることのできる電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電源装置によれば、外形を角形とし、その上面に電極端子13を備える複数の電池セル10と、前記複数の電池セル10同士を積層面で重ねて積層すると共に、該電池セル10同士の間に介在される絶縁性のセパレータ20と、を備える電源装置であって、前記セパレータ20は、シート状で、前記電池セル10の幅と略等しい幅で、積層面から上面にかけて被覆するよう貼付することができる。上記構成により、電池セルの上面において、電池セル同士が面する界面の端縁がシート状セパレータで被覆されるため、この部分で隣接する電池セル同士が短絡することを回避できる。
【0011】
また、第2の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ20は、前記電池セル10の一方の積層面のみを被覆してなり、前記電池セル10は、他の電池セル10と積層する際、前記セパレータ20を貼付した積層面と、他の電池セル10の、セパレータ20を貼付していない他方の積層面とを対向させるようにして積層させることができる。これにより、複数の電池セルとセパレータを積層させた場合に、その積層面の両面をセパレータで被覆する場合に比べて積層方向の長さを短縮することができ、全体の小型化を図ることができる。加えて、各電池セルの両面をセパレータで被覆することなく、片面のみとしつつも隣接する電池セル間での導通を効果的に阻止し、安価に構成できる。
【0012】
さらに、第3の側面に係る電源装置によれば、前記電池セル10は、その上面に、電池セル10の外装缶の内圧が上昇した際に開弁して内部のガスを放出するための安全弁14を設けており、前記セパレータ20は、前記安全弁14と対応する位置を開口した弁開口部21を設けることができる。上記構成により、電池セルの上面にセパレータを貼付しても、安全弁を閉塞することなく、安全弁の動作が阻害されない。
【0013】
さらにまた、第4の側面に係る電源装置によれば、前記電池セル10は、その表面を絶縁性の熱収縮フィルム15で被覆することができる。これにより、電池セルの表面の絶縁を図ることができる。
【0014】
さらにまた、第5の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ20は、その幅を前記電池セル10の幅と略一致させた側面被覆部と、その上端において折曲されて前記電池セル10の上面を被覆する上面被覆部と、その下端において折り返されて、前記電池セル10の幅よりも狭い幅で、かつ前記電池セル10の高さよりも短い長さに形成された積層部と、を備えることができる。
【0015】
さらにまた、第6の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ20は、前記電池セル10の積層面を被覆すると共に、その上端から離間させた部位に、該セパレータ20を複数枚重ねた積層部を設けることができる。これにより、電池セルの積層面の中央部分を高くして、電池セルを積層した際に中央部分で当接し、上端の封口板の周囲を隣接する電池セルとの間で当接させないことができ、この部分の破損を回避できる。
【0016】
さらにまた、第7の側面に係る電源装置によれば、前記積層部は、前記セパレータ20の側面被覆部よりも、幅が短くなるように形成することができる。
【0017】
さらにまた、第8の側面に係る車両は、上記の電源装置を備えることができる。
【0018】
さらにまた、第9の側面に係る蓄電装置は、上記の電源装置を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電源装置に搭載される電池ブロックの斜視図である。
【図2】図1における電池ブロックを示す分解斜視図である。
【図3】電池セルに熱収縮フィルムを貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図3にセパレータを貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】セパレータを電池セルで挟み込んだ状態の一部の概略断面図である。
【図6】実施例1のセパレータの形状を示す斜視図である。
【図7】実施例2のセパレータの形状を示す斜視図である。
【図8】実施例3のセパレータの形状を示す斜視図である。
【図9】電源装置を搭載した車両の一例を示すブロック図である。
【図10】電源装置を搭載した車両の他の例を示すブロック図である。
【図11】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【図12】試作のセパレータを電池セルで挟み込んだ状態を示す概略拡大断面図(a)及び(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を例示するものであって、本発明は電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を以下のものに特定しない。さらに、本明細書においては、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施形態)
【0021】
以下、一実施形態として電源装置に搭載される電池ブロックの例を、図1及び図2に基づいて説明する。これらの図において、図1は電源装置に搭載される電池ブロックの斜視図、図2は図1における電池ブロックの分解斜視図を、それぞれ示している。
【0022】
この電源装置に搭載される電池ブロック100は、電池セル10の間にセパレータ20を挟み込み電池セル10を積層し、積層両端にエンドプレート50を嵌め込んでいる。図示していないが、両方のエンドプレート50は、バインドバーにて締結される。これにより、電池ブロック100は、積層方向を締結し固定することができる。
【0023】
この図の電池ブロック100に積層されている電池セル10は、12個を積層しているがこれに限るものではない。電池ブロック100の電池セル10の積層数は、要求される電力を供給できる数に増減させることができる。また、積層される電池セル10は、並列及び直列にバスバーにて接続され、要求される電力とする電池積層構造体を構成することができる。この電池積層構造体は、複数連結し、並列及び直列に接続することにより更なる電力を供給する電源装置とすることができる。
(電池セル10)
【0024】
次に、電池セル10は、図3の斜視図に示すように、角形電池からなる薄型の略箱形状とし、外装缶がアルミニウム等の金属で形成されている。また、電池セル10は、外装缶の上面で両端部に正負一対の電極端子13を突出させると共に、電極端子13間には安全弁14を設けた封口板11を備えている。安全弁14は、電池セル10の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。これにより、安全弁14を開弁させることで、電池セル10の内圧上昇を回避することができる。
【0025】
電池セル10を構成する素電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。特に薄型電池にリチウムイオン二次電池を使用すると、電池ブロック全体の容量に対する充電容量を大きくできる特長がある。このため、電池セル10は、薄型の形状を保ったまま充電容量を確保し、積層される電池ブロック100の小型化を図ることができる。
(熱収縮フィルム15)
【0026】
また、電池セル10は、外装缶の封口板11を除く壁面及び底面を、熱収縮フィルム15であるシュリンクチューブで熱収縮され被覆し絶縁している。これにより、電池セル10の封口板11を除く周囲を絶縁でき、隣接する電池セル10間での短絡や底面で載置する金属板と導通するなど、意図しない導通を防止し、また水滴などから保護することができる。
(セパレータ20)
【0027】
次に、積層される電池セル10にセパレータを貼り付けた状態の斜視図を図4に示す。このセパレータ20は、シート状をなし、電池セル10の積層面の一面を側面被覆部として絶縁している。ただ、図に示すようにこのセパレータ20は、電池セル10の積層面の一面全体を絶縁している訳ではなく、電池セル10の底部を除く短縮した高さとしている。さらにセパレータ20は、上面被覆部として折曲され、一対の電極端子13及び安全弁14を除き、封口板11を覆った形状としている。このセパレータ20は、電極端子13の土台12で位置決めをするための切込を入れ、さらに安全弁14部分を開口する弁開口部21を形成している。ただ、セパレータは、電池セル10における上面の必ずしも全面を覆う必要はなく、電池セル10の封口板11と外装缶との接合部分のみ覆う形状とすることもできる。これにより、セパレータ20は、複数の電池セル10間に挟み込まれ積層されることにより、隣接する電池セル10の上面にある封口板11間での結露等における導通を回避することができる。
【0028】
また、このセパレータ20は、電池セル10の積層面の片面のみに側面被覆部として、シート状に形成されることにより、薄型化を図っている。これにより、複数の電池セル10と、その片面のみを被覆したセパレータ20を積層した電池ブロック100は、両面をセパレータで被覆する構成に比べ、積層方向への長さをさらに短縮し、小型化を図ることができる。
【0029】
さらに、このセパレータ20は、電池セル10の積層面との中央付近においてシートの厚みを肥厚化している。この結果、電池セル10は、積層面で中央付近以外の外周に空間を形成し、離間された状態を作り出すことができる。これにより、積層される電池セル10間が狭くなり、封口板11と外装缶との接合強度の弱い溶接部分が、隣接する電池セル10により押圧されて、破損する恐れを回避することができる。
【0030】
上記電池セル間における積層面の外周を離間させた電池セル間の概略断面図を図5に示す。図に示すように電池セル10は、上面を除く側面を熱収縮フィルム15であるシュリンクチューブにて絶縁されている。さらに、セパレータ20は、電池セル10の上面及び一側面を覆う形状としている。さらにまた、セパレータ20は、一側面を覆うシートで、電池セル10の接合面における周縁近傍を除き二重にしている。これにより、電池セル10の封口板11と外装缶との接合部分を隣接する電池セル10間で押圧し、破損することを回避することができる。さらに、電池セル10の上部に結露等の水滴が付着したとしても、電池セル10の上面をセパレータ20の上面被覆部で保護しているため、絶縁を維持することができる。
【0031】
一方、電池セルの発熱等によるセパレータの延伸や収縮等変形の少ない素材が好ましい。そのため、このセパレータ20の素材は、絶縁性に優れ、さらに熱に強い樹脂製でシート状としたポリカーボネート(PC)等を利用することが好適である。ただ、これに限るものではなくポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等を利用することもできる。
(実施例1)
【0032】
次に、セパレータであるシートの厚みを形成する方法の一例として、実施例1のセパレータの形状を斜視図とした図6に示す。このセパレータ20Aのシートは、下端辺より電池セル10に接合する面より幅を狭く、また高さも低く突出させた突出シート20A’を外折りで折曲させて積層部を形成する。これにより、セパレータ20Aは、電池セル10の積層面の腹である中央付近を肥厚に形成することができる。ただ、セパレータ20Aの突出シート20A’は、外折りに限定されるものではなく、内折りとすることもできる。また折曲させた積層部は、接着材で固定する他、熱溶着でセパレータ同士を溶着させることもできる。
(実施例2)
【0033】
さらに、セパレータは、突出シートの折曲回数を一回のみに止まらず、二回以上の折曲回数を持たせ、厚みをさらに肥厚化することもできる。そのセパレータであるシートの厚みを形成する方法として、実施例2のセパレータの形状を斜視図とした図7に示す。このセパレータ20Bは、下端辺より電池セル10に接合する面より幅を狭く、また高さも低く突出した突出シート20B’を備え、さらに突出シート20B’の先に略同形の突出シート20B’’を備えている。まず、突出シート20B’’を突出シート20B’側に外折りし、次に折曲した突出シート20B’’と突出シート20B’をセパレータ20B側に外折りで折り畳む。これにより、セパレータ20Bは、電池セル10の積層面における腹部分を三重の厚みのシートとすることができる。これにより、セパレータ20Bは、電池セル10間における積層面の周縁をさらに離間させることができる。
(実施例3)
【0034】
さらに、セパレータは、折曲させたシートとすることもできるが、これに限るものではなく別部材とすることもできる。このセパレータであるシートの厚みを形成する方法として、実施例3のセパレータの形状を斜視図とした図8に示す。セパレータ20Cは、電池セル10における片側の積層面全体を被覆できる寸法としている。さらにこのセパレータ20Cには、電池セル10に接合する面より幅が狭く、また高さも低い、個別の接合シート20C’を貼り付けている。貼り付ける縦方向の位置は、セパレータ20Cの略中央に接合シート20C’の略中央部を合わせる。さらに、貼り付ける横方向の位置は、セパレータ20Cの略中央に、接合シート20C’の略中央が一致する位置に貼り付けることが望ましい。この接合シート20C’は、セパレータ20Cの厚みと同じ厚みとすることもできるが、これに限るものではなく、セパレータ20Cの厚みより肥厚化させることもできる。また、接合シート20C’は、セパレータ20Cの厚みと同等とし、複数枚貼り合わせることもできる。これにより、電池セルの製造状況により接合シート20C’の厚みを調整することができ、電池セル10の封口板と外装缶との接合部分を隣接する電池セル10間で押圧し、破損することを回避することができる。言い換えれば、電池セル間における積層面の外周を離間させることができ、電池セル同士での押圧による破損を回避させることができる。
【0035】
一方、この場合のセパレータは、電池セル10の片側の積層面全体とせず、積層面の下端部を除き被覆させることもできる。ただ、その場合の接合シート20C’における中央の位置は、電池セル10における積層面の横方向及び縦方向でそれぞれの略中央と一致させた腹部分の場所に接合されることが望ましい。
【0036】
上記セパレータ20Cは、接合シート20C’を接合する上で、熱溶着させることが好ましいが、これに限るものではなく、接着剤等により接合させることもできる。なお、以上の例ではセパレータで、封口板11の、一対の電極端子13及び安全弁14を除く全面を覆った形状としている。ただ、本発明はセパレータをこの形状に限定するものでなく、セパレータの積層面から上面にかけての端縁部分を被覆するものでもよい。すなわち、隣接する電池セルとの界面において、水滴等で導通することを回避できれば足りる。
【0037】
以上の電源装置は、車載用のバッテリシステムとして利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、あるいはモータのみで走行する電気自動車などの電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0038】
エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を図9に示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給するバッテリシステム100Bと、バッテリシステム100Bの電池を充電する発電機94とを備えている。バッテリシステム100Bは、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、バッテリシステム100Bの電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、たとえば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、バッテリシステム100Bから電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、バッテリシステム100Bの電池を充電する。
(電気自動車用電源装置)
【0039】
また、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を図10に示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給するバッテリシステム100Cと、このバッテリシステム100Cの電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、バッテリシステム100Cから電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、バッテリシステム100Cの電池を充電する。
(蓄電装置)
【0040】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、載置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を図11に示す。この図に示す電源装置100Aは、複数の電池積層構造体81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池積層構造体81は、複数の角形電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電池積層構造体81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置100Aは、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100Aは、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100Aと接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100Aの電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100Aへの充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100Aから負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100Aへの充電を同時に行うこともできる。
【0041】
電源装置100Aで駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100Aと接続されている。電源装置100Aの放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100Aからの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100Aの電源コントローラ84によって制御される。図11の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0042】
各電池積層構造体81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池積層構造体81同士を直列、並列に接続するための端子である。
【0043】
さらに、この電源装置100Aは、電池ユニット82の均等化のための均等化モードを備える。電池ユニット82は並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。このため電源コントローラ84に制御される均等化回路86を備えている。均等化回路86によって、複数の電池ユニット82間の電池残存容量のばらつきを抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る電源装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0045】
100…電池ブロック
100A…電源装置
100B、100C…バッテリシステム
10…電池セル
11…封口板
12…土台
13…電極端子
14…安全弁
15…熱収縮フィルム
20、20A、20B、20C…セパレータ
20A’、20B’、20B’’…突出シート
20C’…接合シート
21…弁開口部
50…エンドプレート
81…電池積層構造体
82…電池ユニット
84…電源コントローラ
85…並列接続スイッチ
86…均等化回路
93…モータ
94…発電機
95…インバータ
96…エンジン
910…電池セル
911…封口板
915…シュリンクチューブ
920…セパレータ
940…水滴
HV、EV…車両
LD…負荷;CP…充電用電源;DS…放電スイッチ;CS…充電スイッチ
OL…出力ライン;HT…ホスト機器
DI…パック入出力端子;DA…パック異常出力端子;DO…パック接続端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角形電池セルを積層した電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置に関し、特にハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両に搭載されて車両を走行させるモータの電源装置、あるいは家庭用、工場用の蓄電用途等に使用される大電流用の電源に電力を供給する電源装置を構成する電池セルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電源装置の高出力化の要求に伴い、電池セルを積層した電池ブロックを複数積層する。しかしながら、例えば車載用の電源装置のように、限られたスペースに多数の電池ブロックを配置する場合は、スペース要求が厳しく、大きなケース内に多数の電池ブロックを収納した電源装置を配置することは困難である。
【0003】
特に、電池セルの外装缶を金属製とする場合は、電池セルを積層した状態で絶縁するため、表面にシュリンクチューブなどの絶縁チューブで被膜すると共に、樹脂製のセパレータを電池セル間に介在させている。しかしながら、セパレータの厚さによって電池セルを積層した電池ブロックの全体が厚くなってしまう。この傾向は、積層する電池セルの数が増えるほど大きくなり、特に近年の高出力化の要求に応えるため、電池セルの積層数は増える傾向にあることから、このような厚型化の対策が求められている。
【0004】
そこで、セパレータを極力薄くすることが考えられる。例えば樹脂製のセパレータでなく、シート状のセパレータを介在させることで、電池セル間の絶縁性を確保する構成が考えられる。
【0005】
一方、セパレータを薄くすればするほど、電池セル同士を直接積層させる状態に近付くこととなる。電池セルの外装缶は、上面を開口した有底の金属製であり、角形の上面を封口板で閉塞して、周囲をレーザ溶接などによって固定している。この固定部分は、機械的な強度がそれ程強くないため、電池セル同士を積層すると、開口端同士が接触して、溶接部分を破損する可能性がある。
【0006】
そこで、開口端同士が接触しないように、電池セルの腹の部分同士で接触するように、セパレータの厚さを、電池セルの積層面の中央で厚くすることが考えられる。このようにすれば、図12(a)の概略拡大断面図に示すように、電池セル910を積層しても、セパレータ920により中央部分同士が接触されて、封口板911が位置する上面の部分は隙間が形成され、直接この部分が接触して封口板911の溶接部分を破損する事態を回避できる。
【0007】
しかしながら、電池セル910の上面で隙間が形成されると、今度はこの隙間に水滴が溜まる事態が生じ得る。この結果、図12(b)の概略拡大断面図に示すように、隣接する電池セル910同士が上面で水滴940を介して導通される虞があった。特に電池セル910は、側面や底面はシュリンクチューブ915で被覆されているものの、その上面は、安全弁を閉塞しないように露出されたままとなっており、この結果、水滴940による導通の可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−287530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、複数の電池セルを積層した電池ブロックを薄型化するために、セパレータを薄くしつつも、電池セルの保護を図ることのできる電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電源装置によれば、外形を角形とし、その上面に電極端子13を備える複数の電池セル10と、前記複数の電池セル10同士を積層面で重ねて積層すると共に、該電池セル10同士の間に介在される絶縁性のセパレータ20と、を備える電源装置であって、前記セパレータ20は、シート状で、前記電池セル10の幅と略等しい幅で、積層面から上面にかけて被覆するよう貼付することができる。上記構成により、電池セルの上面において、電池セル同士が面する界面の端縁がシート状セパレータで被覆されるため、この部分で隣接する電池セル同士が短絡することを回避できる。
【0011】
また、第2の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ20は、前記電池セル10の一方の積層面のみを被覆してなり、前記電池セル10は、他の電池セル10と積層する際、前記セパレータ20を貼付した積層面と、他の電池セル10の、セパレータ20を貼付していない他方の積層面とを対向させるようにして積層させることができる。これにより、複数の電池セルとセパレータを積層させた場合に、その積層面の両面をセパレータで被覆する場合に比べて積層方向の長さを短縮することができ、全体の小型化を図ることができる。加えて、各電池セルの両面をセパレータで被覆することなく、片面のみとしつつも隣接する電池セル間での導通を効果的に阻止し、安価に構成できる。
【0012】
さらに、第3の側面に係る電源装置によれば、前記電池セル10は、その上面に、電池セル10の外装缶の内圧が上昇した際に開弁して内部のガスを放出するための安全弁14を設けており、前記セパレータ20は、前記安全弁14と対応する位置を開口した弁開口部21を設けることができる。上記構成により、電池セルの上面にセパレータを貼付しても、安全弁を閉塞することなく、安全弁の動作が阻害されない。
【0013】
さらにまた、第4の側面に係る電源装置によれば、前記電池セル10は、その表面を絶縁性の熱収縮フィルム15で被覆することができる。これにより、電池セルの表面の絶縁を図ることができる。
【0014】
さらにまた、第5の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ20は、その幅を前記電池セル10の幅と略一致させた側面被覆部と、その上端において折曲されて前記電池セル10の上面を被覆する上面被覆部と、その下端において折り返されて、前記電池セル10の幅よりも狭い幅で、かつ前記電池セル10の高さよりも短い長さに形成された積層部と、を備えることができる。
【0015】
さらにまた、第6の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ20は、前記電池セル10の積層面を被覆すると共に、その上端から離間させた部位に、該セパレータ20を複数枚重ねた積層部を設けることができる。これにより、電池セルの積層面の中央部分を高くして、電池セルを積層した際に中央部分で当接し、上端の封口板の周囲を隣接する電池セルとの間で当接させないことができ、この部分の破損を回避できる。
【0016】
さらにまた、第7の側面に係る電源装置によれば、前記積層部は、前記セパレータ20の側面被覆部よりも、幅が短くなるように形成することができる。
【0017】
さらにまた、第8の側面に係る車両は、上記の電源装置を備えることができる。
【0018】
さらにまた、第9の側面に係る蓄電装置は、上記の電源装置を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電源装置に搭載される電池ブロックの斜視図である。
【図2】図1における電池ブロックを示す分解斜視図である。
【図3】電池セルに熱収縮フィルムを貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図3にセパレータを貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】セパレータを電池セルで挟み込んだ状態の一部の概略断面図である。
【図6】実施例1のセパレータの形状を示す斜視図である。
【図7】実施例2のセパレータの形状を示す斜視図である。
【図8】実施例3のセパレータの形状を示す斜視図である。
【図9】電源装置を搭載した車両の一例を示すブロック図である。
【図10】電源装置を搭載した車両の他の例を示すブロック図である。
【図11】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【図12】試作のセパレータを電池セルで挟み込んだ状態を示す概略拡大断面図(a)及び(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を例示するものであって、本発明は電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を以下のものに特定しない。さらに、本明細書においては、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施形態)
【0021】
以下、一実施形態として電源装置に搭載される電池ブロックの例を、図1及び図2に基づいて説明する。これらの図において、図1は電源装置に搭載される電池ブロックの斜視図、図2は図1における電池ブロックの分解斜視図を、それぞれ示している。
【0022】
この電源装置に搭載される電池ブロック100は、電池セル10の間にセパレータ20を挟み込み電池セル10を積層し、積層両端にエンドプレート50を嵌め込んでいる。図示していないが、両方のエンドプレート50は、バインドバーにて締結される。これにより、電池ブロック100は、積層方向を締結し固定することができる。
【0023】
この図の電池ブロック100に積層されている電池セル10は、12個を積層しているがこれに限るものではない。電池ブロック100の電池セル10の積層数は、要求される電力を供給できる数に増減させることができる。また、積層される電池セル10は、並列及び直列にバスバーにて接続され、要求される電力とする電池積層構造体を構成することができる。この電池積層構造体は、複数連結し、並列及び直列に接続することにより更なる電力を供給する電源装置とすることができる。
(電池セル10)
【0024】
次に、電池セル10は、図3の斜視図に示すように、角形電池からなる薄型の略箱形状とし、外装缶がアルミニウム等の金属で形成されている。また、電池セル10は、外装缶の上面で両端部に正負一対の電極端子13を突出させると共に、電極端子13間には安全弁14を設けた封口板11を備えている。安全弁14は、電池セル10の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。これにより、安全弁14を開弁させることで、電池セル10の内圧上昇を回避することができる。
【0025】
電池セル10を構成する素電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。特に薄型電池にリチウムイオン二次電池を使用すると、電池ブロック全体の容量に対する充電容量を大きくできる特長がある。このため、電池セル10は、薄型の形状を保ったまま充電容量を確保し、積層される電池ブロック100の小型化を図ることができる。
(熱収縮フィルム15)
【0026】
また、電池セル10は、外装缶の封口板11を除く壁面及び底面を、熱収縮フィルム15であるシュリンクチューブで熱収縮され被覆し絶縁している。これにより、電池セル10の封口板11を除く周囲を絶縁でき、隣接する電池セル10間での短絡や底面で載置する金属板と導通するなど、意図しない導通を防止し、また水滴などから保護することができる。
(セパレータ20)
【0027】
次に、積層される電池セル10にセパレータを貼り付けた状態の斜視図を図4に示す。このセパレータ20は、シート状をなし、電池セル10の積層面の一面を側面被覆部として絶縁している。ただ、図に示すようにこのセパレータ20は、電池セル10の積層面の一面全体を絶縁している訳ではなく、電池セル10の底部を除く短縮した高さとしている。さらにセパレータ20は、上面被覆部として折曲され、一対の電極端子13及び安全弁14を除き、封口板11を覆った形状としている。このセパレータ20は、電極端子13の土台12で位置決めをするための切込を入れ、さらに安全弁14部分を開口する弁開口部21を形成している。ただ、セパレータは、電池セル10における上面の必ずしも全面を覆う必要はなく、電池セル10の封口板11と外装缶との接合部分のみ覆う形状とすることもできる。これにより、セパレータ20は、複数の電池セル10間に挟み込まれ積層されることにより、隣接する電池セル10の上面にある封口板11間での結露等における導通を回避することができる。
【0028】
また、このセパレータ20は、電池セル10の積層面の片面のみに側面被覆部として、シート状に形成されることにより、薄型化を図っている。これにより、複数の電池セル10と、その片面のみを被覆したセパレータ20を積層した電池ブロック100は、両面をセパレータで被覆する構成に比べ、積層方向への長さをさらに短縮し、小型化を図ることができる。
【0029】
さらに、このセパレータ20は、電池セル10の積層面との中央付近においてシートの厚みを肥厚化している。この結果、電池セル10は、積層面で中央付近以外の外周に空間を形成し、離間された状態を作り出すことができる。これにより、積層される電池セル10間が狭くなり、封口板11と外装缶との接合強度の弱い溶接部分が、隣接する電池セル10により押圧されて、破損する恐れを回避することができる。
【0030】
上記電池セル間における積層面の外周を離間させた電池セル間の概略断面図を図5に示す。図に示すように電池セル10は、上面を除く側面を熱収縮フィルム15であるシュリンクチューブにて絶縁されている。さらに、セパレータ20は、電池セル10の上面及び一側面を覆う形状としている。さらにまた、セパレータ20は、一側面を覆うシートで、電池セル10の接合面における周縁近傍を除き二重にしている。これにより、電池セル10の封口板11と外装缶との接合部分を隣接する電池セル10間で押圧し、破損することを回避することができる。さらに、電池セル10の上部に結露等の水滴が付着したとしても、電池セル10の上面をセパレータ20の上面被覆部で保護しているため、絶縁を維持することができる。
【0031】
一方、電池セルの発熱等によるセパレータの延伸や収縮等変形の少ない素材が好ましい。そのため、このセパレータ20の素材は、絶縁性に優れ、さらに熱に強い樹脂製でシート状としたポリカーボネート(PC)等を利用することが好適である。ただ、これに限るものではなくポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等を利用することもできる。
(実施例1)
【0032】
次に、セパレータであるシートの厚みを形成する方法の一例として、実施例1のセパレータの形状を斜視図とした図6に示す。このセパレータ20Aのシートは、下端辺より電池セル10に接合する面より幅を狭く、また高さも低く突出させた突出シート20A’を外折りで折曲させて積層部を形成する。これにより、セパレータ20Aは、電池セル10の積層面の腹である中央付近を肥厚に形成することができる。ただ、セパレータ20Aの突出シート20A’は、外折りに限定されるものではなく、内折りとすることもできる。また折曲させた積層部は、接着材で固定する他、熱溶着でセパレータ同士を溶着させることもできる。
(実施例2)
【0033】
さらに、セパレータは、突出シートの折曲回数を一回のみに止まらず、二回以上の折曲回数を持たせ、厚みをさらに肥厚化することもできる。そのセパレータであるシートの厚みを形成する方法として、実施例2のセパレータの形状を斜視図とした図7に示す。このセパレータ20Bは、下端辺より電池セル10に接合する面より幅を狭く、また高さも低く突出した突出シート20B’を備え、さらに突出シート20B’の先に略同形の突出シート20B’’を備えている。まず、突出シート20B’’を突出シート20B’側に外折りし、次に折曲した突出シート20B’’と突出シート20B’をセパレータ20B側に外折りで折り畳む。これにより、セパレータ20Bは、電池セル10の積層面における腹部分を三重の厚みのシートとすることができる。これにより、セパレータ20Bは、電池セル10間における積層面の周縁をさらに離間させることができる。
(実施例3)
【0034】
さらに、セパレータは、折曲させたシートとすることもできるが、これに限るものではなく別部材とすることもできる。このセパレータであるシートの厚みを形成する方法として、実施例3のセパレータの形状を斜視図とした図8に示す。セパレータ20Cは、電池セル10における片側の積層面全体を被覆できる寸法としている。さらにこのセパレータ20Cには、電池セル10に接合する面より幅が狭く、また高さも低い、個別の接合シート20C’を貼り付けている。貼り付ける縦方向の位置は、セパレータ20Cの略中央に接合シート20C’の略中央部を合わせる。さらに、貼り付ける横方向の位置は、セパレータ20Cの略中央に、接合シート20C’の略中央が一致する位置に貼り付けることが望ましい。この接合シート20C’は、セパレータ20Cの厚みと同じ厚みとすることもできるが、これに限るものではなく、セパレータ20Cの厚みより肥厚化させることもできる。また、接合シート20C’は、セパレータ20Cの厚みと同等とし、複数枚貼り合わせることもできる。これにより、電池セルの製造状況により接合シート20C’の厚みを調整することができ、電池セル10の封口板と外装缶との接合部分を隣接する電池セル10間で押圧し、破損することを回避することができる。言い換えれば、電池セル間における積層面の外周を離間させることができ、電池セル同士での押圧による破損を回避させることができる。
【0035】
一方、この場合のセパレータは、電池セル10の片側の積層面全体とせず、積層面の下端部を除き被覆させることもできる。ただ、その場合の接合シート20C’における中央の位置は、電池セル10における積層面の横方向及び縦方向でそれぞれの略中央と一致させた腹部分の場所に接合されることが望ましい。
【0036】
上記セパレータ20Cは、接合シート20C’を接合する上で、熱溶着させることが好ましいが、これに限るものではなく、接着剤等により接合させることもできる。なお、以上の例ではセパレータで、封口板11の、一対の電極端子13及び安全弁14を除く全面を覆った形状としている。ただ、本発明はセパレータをこの形状に限定するものでなく、セパレータの積層面から上面にかけての端縁部分を被覆するものでもよい。すなわち、隣接する電池セルとの界面において、水滴等で導通することを回避できれば足りる。
【0037】
以上の電源装置は、車載用のバッテリシステムとして利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、あるいはモータのみで走行する電気自動車などの電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0038】
エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を図9に示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給するバッテリシステム100Bと、バッテリシステム100Bの電池を充電する発電機94とを備えている。バッテリシステム100Bは、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、バッテリシステム100Bの電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、たとえば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、バッテリシステム100Bから電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、バッテリシステム100Bの電池を充電する。
(電気自動車用電源装置)
【0039】
また、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を図10に示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給するバッテリシステム100Cと、このバッテリシステム100Cの電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、バッテリシステム100Cから電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、バッテリシステム100Cの電池を充電する。
(蓄電装置)
【0040】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、載置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を図11に示す。この図に示す電源装置100Aは、複数の電池積層構造体81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池積層構造体81は、複数の角形電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電池積層構造体81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置100Aは、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100Aは、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100Aと接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100Aの電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100Aへの充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100Aから負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100Aへの充電を同時に行うこともできる。
【0041】
電源装置100Aで駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100Aと接続されている。電源装置100Aの放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100Aからの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100Aの電源コントローラ84によって制御される。図11の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0042】
各電池積層構造体81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池積層構造体81同士を直列、並列に接続するための端子である。
【0043】
さらに、この電源装置100Aは、電池ユニット82の均等化のための均等化モードを備える。電池ユニット82は並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。このため電源コントローラ84に制御される均等化回路86を備えている。均等化回路86によって、複数の電池ユニット82間の電池残存容量のばらつきを抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る電源装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0045】
100…電池ブロック
100A…電源装置
100B、100C…バッテリシステム
10…電池セル
11…封口板
12…土台
13…電極端子
14…安全弁
15…熱収縮フィルム
20、20A、20B、20C…セパレータ
20A’、20B’、20B’’…突出シート
20C’…接合シート
21…弁開口部
50…エンドプレート
81…電池積層構造体
82…電池ユニット
84…電源コントローラ
85…並列接続スイッチ
86…均等化回路
93…モータ
94…発電機
95…インバータ
96…エンジン
910…電池セル
911…封口板
915…シュリンクチューブ
920…セパレータ
940…水滴
HV、EV…車両
LD…負荷;CP…充電用電源;DS…放電スイッチ;CS…充電スイッチ
OL…出力ライン;HT…ホスト機器
DI…パック入出力端子;DA…パック異常出力端子;DO…パック接続端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形を角形とし、その上面に電極端子(13)を備える複数の電池セル(10)と、
前記複数の電池セル(10)同士を積層面で重ねて積層すると共に、該電池セル(10)同士の間に介在される絶縁性のセパレータ(20)と、
を備える電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、シート状で、前記電池セル(10)の幅と略等しい幅で、積層面から上面にかけて被覆するよう貼付されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、前記電池セル(10)の一方の積層面のみを被覆してなり、
前記電池セル(10)は、他の電池セル(10)と積層する際、前記セパレータ(20)を貼付した積層面と、他の電池セル(10)の、セパレータ(20)を貼付していない他方の積層面とを対向させるようにして積層させてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記電池セル(10)は、その上面に、電池セル(10)の外装缶の内圧が上昇した際に開弁して内部のガスを放出するための安全弁(14)を設けており、
前記セパレータ(20)は、前記安全弁(14)と対応する位置を開口した弁開口部(21)を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記電池セル(10)は、その表面を絶縁性の熱収縮フィルム(15)で被覆してなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、
その幅を前記電池セル(10)の幅と略一致させた側面被覆部と、
その上端において折曲されて前記電池セル(10)の上面を被覆する上面被覆部と、
その下端において折り返されて、前記電池セル(10)の幅よりも狭い幅で、かつ前記電池セル(10)の高さよりも短い長さに形成された積層部と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、前記電池セル(10)の積層面を被覆すると共に、その上端から離間させた部位に、該セパレータ(20)を複数枚重ねた積層部を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置であって、
前記積層部は、前記セパレータ(20)の側面被覆部よりも、幅が短くなるように形成されることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置を備える車両。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置を備える蓄電装置。
【請求項1】
外形を角形とし、その上面に電極端子(13)を備える複数の電池セル(10)と、
前記複数の電池セル(10)同士を積層面で重ねて積層すると共に、該電池セル(10)同士の間に介在される絶縁性のセパレータ(20)と、
を備える電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、シート状で、前記電池セル(10)の幅と略等しい幅で、積層面から上面にかけて被覆するよう貼付されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、前記電池セル(10)の一方の積層面のみを被覆してなり、
前記電池セル(10)は、他の電池セル(10)と積層する際、前記セパレータ(20)を貼付した積層面と、他の電池セル(10)の、セパレータ(20)を貼付していない他方の積層面とを対向させるようにして積層させてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記電池セル(10)は、その上面に、電池セル(10)の外装缶の内圧が上昇した際に開弁して内部のガスを放出するための安全弁(14)を設けており、
前記セパレータ(20)は、前記安全弁(14)と対応する位置を開口した弁開口部(21)を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記電池セル(10)は、その表面を絶縁性の熱収縮フィルム(15)で被覆してなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、
その幅を前記電池セル(10)の幅と略一致させた側面被覆部と、
その上端において折曲されて前記電池セル(10)の上面を被覆する上面被覆部と、
その下端において折り返されて、前記電池セル(10)の幅よりも狭い幅で、かつ前記電池セル(10)の高さよりも短い長さに形成された積層部と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(20)は、前記電池セル(10)の積層面を被覆すると共に、その上端から離間させた部位に、該セパレータ(20)を複数枚重ねた積層部を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置であって、
前記積層部は、前記セパレータ(20)の側面被覆部よりも、幅が短くなるように形成されることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置を備える車両。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置を備える蓄電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−114954(P2013−114954A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261337(P2011−261337)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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