説明

電源装置及び画像形成装置

【課題】簡易な回路構成により、電子機器の動作状態又は停止状態に応じて、それぞれ異なる直流電圧を出力する。
【解決手段】1次巻線と補助巻線と2次巻線を有するトランスT301と、入力された交流電圧を平滑整流した直流電圧の1次巻線への導通を制御する主スイッチング素子Q301と、2次巻線に発生する電圧を平滑整流した電圧Voutと基準電圧を比較し、電圧差に応じた電圧を出力する差動増幅器IC301と、トランスの2次側の差動増幅器からの出力電圧に応じた帰還電流を1次側に伝達するフォトカプラPC301と、帰還電流と補助巻線からの帰還電圧に応じて、主スイッチング素子を制御するスイッチング素子Q302と、2次巻線に電圧Vout2を発生させる際に、帰還電流を増加させて、主スイッチング素子をオフ状態にするスイッチング素子Q304を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源より整流平滑して得られた高圧直流電圧を、電子機器が必要とする数V〜数十Vの低電圧の直流電圧に変換する電源装置、及びその電源装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電源からの電力供給により動作する電子機器が具備する電源装置は、一般的に、商用交流電源からの交流電流を整流して直流電流を作る整流機能と、整流された直流電流から電子機器内で使用する所定の直流電圧を作る電圧変換機能を備えている。
【0003】
図8(a)は、電子機器内部に設けられた一般的な電源装置の回路ブロックを示した図である。図8(a)に示すように、電源装置は、“整流回路”、“第1の直流電圧変換回路”、“第2の直流電圧変換回路”を備えている。“整流回路”は、商用交流電源から供給された交流電流を整流し、直流電流に変換する。“第1の直流電圧変換回路”は、“整流回路”によって直流電流に変換された電圧を、電子機器内部で使用する所定の直流電圧に変換する。“第2の直流電圧変換回路”は、“第1の直流電圧変換回路”によって変換された直流電圧を、電子機器内部で使用する、更に低い直流電圧に変換する。“第1の直流電圧変換回路”は、一般に24V前後の直流電圧を生成し、生成された直流電流は、高電圧を生成する高圧回路やモータ等を駆動する駆動回路等の消費電力が大きい回路に供給される。一方、“第2の直流電圧変換回路”は、一般に5Vや3.3V前後の直流電圧を生成し、生成された直流電流は、消費電力が小さいCPU等の制御回路に供給される。
【0004】
近年、一般家庭や、オフィスで使用される電化製品においても、省エネルギー化が広く求められている。そのため、一般的な電子機器では、図8(b)に示すように、電子機器が停止状態にある時には、“第2の直流電圧変換回路”を停止させ、制御回路等の負荷には、“第1の直流電圧変換回路”で生成した直流電流を直接供給する構成が採用されている。電子機器が停止した状態では、高圧回路、駆動回路等の負荷に電力を供給する必要がないため、“第1の直流電圧変換回路”にて制御回路等の負荷へ供給する直流電圧を生成し、“第2の電圧変換回路”を基本的に動作させない。これにより、“第2の直流電圧変換回路”にて、電圧変換が行われる際の電力ロスが無くなり、停止状態における電子機器全体での消費電力が抑制される。例えば、電子機器に搭載される自励式スイッチング電源は、電子機器の最大負荷状態において効率が最大になるように設計される。そのため、機器の負荷が軽くなればなるほど効率は低下するので、例えば、特許文献1では、この効率低下を回避するための方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−284340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す“第1の電圧変換回路”は、電子機器が動作状態にある時には、高圧回路、駆動回路等の負荷、及び制御回路等の負荷の両方の負荷へ電力供給を行い、電子機器が停止状態にある時には、制御回路等の負荷にのみ電力供給を行う。すなわち、“第1の電圧変換回路”は、2つの負荷条件に対応して電力供給を行わねばならず、そのため、回路構成が複雑となり、電源装置全体のコストが高くなってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、簡易な回路構成により、電子機器の動作状態又は停止状態に応じて、それぞれ異なる直流電圧を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため、本発明では次のとおりに構成する。
【0009】
(1)交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源装置であって、1次巻線と補助巻線と2次巻線を有するトランスと、入力された交流電圧を平滑整流した直流電圧の前記トランスの1次巻線への導通を制御する第1のスイッチング手段と、前記トランスの2次巻線に発生する電圧を平滑整流した第1の出力電圧と基準電圧を比較し、前記第1の出力電圧と前記基準電圧との差に応じた電圧を出力する差動増幅手段と、前記トランスの2次側の前記差動増幅手段からの出力電圧に応じた帰還電流を前記トランスの1次側に伝達する伝達手段と、前記帰還電流と前記トランスの補助巻線からの帰還電圧に応じて、前記第1のスイッチング手段をオン状態又はオフ状態に制御する制御手段と、前記トランスの2次巻線に前記第1の出力電圧よりも低い第2の出力電圧を発生させる際に、前記帰還電流を増加させて、前記第1のスイッチング手段をオフ状態にする第2のスイッチング手段と、を備えた電源装置。
【0010】
(2)交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源装置であって、1次巻線と補助巻線と2次巻線を有するトランスと、入力された交流電圧を平滑整流した直流電圧の前記トランスの1次巻線への導通を制御する第1のスイッチング手段と、前記トランスの2次巻線に発生する電圧を平滑整流された第1の出力電圧と基準電圧を比較し、前記第1の出力電圧と前記基準電圧との差に応じた電圧を出力する差動増幅手段と、前記トランスの2次側の前記差動増幅手段からの出力電圧に応じた第1の帰還電流を前記トランスの1次側に伝達する第1の伝達手段と、前記第1の出力電圧の過電圧と、前記第1の出力電圧よりも低い第2の出力電圧の過電圧を検出する過電圧検出手段と、前記トランスの2次側の前記過電圧検出手段が過電圧を検出すると第2の帰還電流を前記トランスの1次側に伝達する第2の伝達手段と、前記第1の帰還電流と前記第2の帰還電流と前記トランスの補助巻線からの帰還電圧に応じて、前記第1のスイッチング手段をオン状態又はオフ状態に制御する制御手段と、前記トランスの2次巻線に前記第1の出力電圧よりも低い第2の出力電圧を発生させる際に、前記第2の帰還電流を増加させて、前記第1のスイッチング手段をオフ状態にする第2のスイッチング手段と、を備えた電源装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な回路構成により、電子機器の動作状態又は停止状態に応じて、それぞれ異なる直流電圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】RCC方式の電源装置の回路図
【図2】RCC方式における回路各部の電圧、電流波形を示す図
【図3】実施例1の自励式スイッチング電源の回路構成を示した回路図
【図4】実施例1のチョッパ電源の回路構成を示した回路図
【図5】実施例2の自励式スイッチング電源の回路構成を示した回路図
【図6】実施例3のチョッパ電源の回路構成を示した回路図
【図7】実施例4の画像形成装置の模式図
【図8】一般的な電源装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、実施例により詳しく説明する。
【0014】
[スイッチング電源装置の基本動作]
最初に、図1に示す自励型フライバックコンバータ(RCC:リンギングチョークコンバータ)を例に、スイッチング電源装置である低圧電源装置の基本回路について説明する。図1の回路は、図8(a)、(b)における“整流回路”、“第1の直流電圧変換回路”部分に該当する。
【0015】
まず、回路構成について説明する。図1において、商用電源から供給された交流電圧は、ダイオードブリッジDA301で整流され、電解コンデンサC301により平滑された直流電圧となる。ダイオードブリッジDA301、電解コンデンサC301で構成される回路が前述した“整流回路”に該当する。図1の残りの回路が“第1の直流電圧変換回路”に該当する。絶縁トランスT301は、入力側の1次巻線Np、出力側の2次巻線Ns、及び1次側の補助巻線Nbにて構成され、補助巻線Nbは1次巻線Npと同極に、2次巻線Nsは1次巻線Npと逆極に接続されている。“整流回路”により平滑された直流電圧の(+)側は1次巻線Npの一端に接続され、(−)側は、第1のスイッチング手段である、MOS型電界効果トランジスタの主スイッチング素子Q301のソース端子に接続されている。また、起動抵抗R301は、一端を1次巻線Npの入力電圧(+)側に、他端を主スイッチング素子Q301のゲート端子に接続されている。主スイッチング素子Q301のゲート端子と補助巻線Nbの一端には、コンデンサC304、抵抗R303、ダイオードD301が並列接続された抵抗R304が直列接続され、Q301のターンオン、ターンオフのスピードを調整している。スイッチング素子Q302(制御手段)のコレクタは主スイッチング素子Q301のゲート端子に接続され、Q302のエミッタはQ301のソース端子に接続され、スイッチング素子Q302は、主スイッチング素子Q301のオン、オフを制御する。スイッチング素子Q302のベースとエミッタに接続されたコンデンサC305と、補助巻線Nbの一端とスイッチング素子Q302のベースに接続された抵抗R305は、時定数回路を構成している。また、伝達手段であるフォトカプラPC301のフォトトランジスタのコレクタと主スイッチング素子Q301のゲート端子との間には抵抗R306が接続され、フォトトランジスタに流れる電流を制限している。
【0016】
絶縁トランスT301の2次巻線Nsの1次巻線Npと逆極側には、ダイオードD302と電解コンデンサC302が接続され、T301の2次側に発生した電流が整流平滑され、出力電圧Vout(第1の出力電圧)として電子機器内部の負荷に供給される。差動増幅器IC301の反転入力端子には、出力電圧Voutを抵抗R312、R313で分圧した電圧が入力され、差動増幅器IC302の非反転入力端子には、出力電圧Voutを抵抗R314、R315によって分圧された電圧が入力される。一方、差動増幅器IC301の非反転入力端子、及び差動増幅器IC302の反転入力端子には、ツェナーダイオードZD301と抵抗R316により決定される基準電圧が入力される。差動増幅器IC301の反転入力端子には出力電圧Voutの分圧電圧が入力され、非反転入力端子には基準電圧が入力されている。出力電圧Voutが高くなり、Voutの分圧電圧が基準電圧より高くなると、差動増幅器IC301の出力はローレベルとなり、抵抗R307を介して、フォトカプラPC301の2次側部分である発光ダイオード(以下、LEDと呼ぶ)に電流が流れる。逆に、出力電圧Voutが低くなり、Voutの分圧電圧が基準電圧よりも低くなると、差動増幅器IC301の出力はハイインピーダンスとなり、フォトカプラPC301のLEDには電流が流れない。
【0017】
続いて、図1の回路動作について説明する。主スイッチング素子Q301のゲート端子には、“整流回路”により整流、平滑された入力電圧Eを起動抵抗R301と抵抗R302によって分圧された電圧が印加され、Q301はオン状態となる。主スイッチング素子Q301がオン状態になると、1次巻線Npに入力電圧Eが印加され、補助巻線Nbに1次巻線Npと同極側を正とする帰還電圧が誘起される。この時、2次巻線Nsにも電圧が誘起されるが、整流用のダイオードD302が逆バイアスとなっているため、絶縁トランスT301の2次巻線Nsには電流が流れない。従って、1次巻線Npを流れる電流は、絶縁トランスT301の励磁電流だけで、絶縁トランスT301には、励磁電流の2乗に比例したエネルギーが蓄積される。この励磁電流は時間に比例して増大する。補助巻線Nbに誘起された帰還電圧は、コンデンサC304、抵抗R303、R304を介して主スイッチング素子Q301のゲート端子に印加され、Q301のオン状態が継続される。また、補助巻線Nbに誘起された帰還電圧は、抵抗R305を通して流れる電流によって、コンデンサC305を充電する。コンデンサC305の両端の電圧がスイッチング素子Q302をオンさせる閾値より高くなると、スイッチング素子Q302がオン状態となる。その結果、主スイッチング素子Q301のゲート端子に印加される電圧が低下し、主スイッチング素子Q301はオフ状態となる。
【0018】
主スイッチング素子Q301がオフ状態になると、絶縁トランスT301の各巻線に起動時とは逆極性の電圧(逆起電力)が発生して、整流用のダイオードD302がオンし、絶縁トランスT301に蓄積されたエネルギーが整流、平滑され、2次側に伝達される。絶縁トランスT301がエネルギーを放出している間、主スイッチング素子Q301のゲート端子には逆バイアスがかかっているため、Q301はオフ状態のままである。絶縁トランスT301の2次側へのエネルギー伝達が終わると、絶縁トランスT301に主スイッチング素子Q301をオンさせる電圧が発生するため、Q301は再びオン状態となる。
【0019】
フォトカプラPC301のLEDには、前述したように、出力電圧Voutが所定の値より高ければ高いほど、電流が多く流れる。その結果、フォトカプラPC301の1次側部分であるフォトトランジスタに流れる電流(帰還電流)も多くなり、コンデンサC304に供給される電流が増えることにより、コンデンサC304の充電時間が短くなる。これは、主スイッチング素子Q301のオン状態である時間が短くなることを示している。主スイッチング素子Q301のオン状態である時間が短くなると、絶縁トランスT301に蓄積されるエネルギーが減少し、その結果、出力電圧Voutの電圧が下がる。出力電圧Voutが所定電圧よりも低い場合には、フォトカプラPC301のLEDには電流が流れなくなる。その結果、主スイッチング素子Q301がオン状態である時間が長くなり、絶縁トランスT301に蓄積されるエネルギーは増加し、出力電圧Voutの電圧が上がる。以上説明した回路動作によって、出力電圧Voutの定電圧制御が行われる。
【0020】
[出力電圧の切り替え制御]
図1の回路では、出力電圧Voutが供給される電子機器の動作状態に応じて、“パワーセーブ信号1”の出力を変更することにより、出力電圧Voutの電圧を電子機器が停止状態の時には、より低い電圧に切り替えることができる。“パワーセーブ信号1”は、CPU等のアナログ出力ポート(不図示)から出力される。差動増幅器IC302の反転入力端子には、差動増幅器IC301の非反転入力端子と同じ基準電圧が入力され、IC302の非反転入力端子には出力電圧Voutを抵抗R314、R315で分圧した電圧が入力される。
【0021】
“パワーセーブ信号1”がオン(ハイレベル出力)の場合は、差動増幅器IC302の反転入力端子の基準電圧が、非反転入力端子の出力電圧Voutの分圧電圧より高くなると、IC302の出力はローレベルとなる。その結果、スイッチング素子Q303のベース電圧はローレベルとなって、Q303はオン状態にはならず、フォトカプラPC301のLEDには電流が流れない。逆に、差動増幅器IC302の反転入力端子の基準電圧が、非反転入力端子の出力電圧Voutの分圧電圧より低くなると、差動増幅器IC302の出力がハイインピーダンスとなる。“パワーセーブ信号1”がハイレベル出力なので、抵抗R320からダイオードD303、抵抗R319へ電流が流れる。その結果、スイッチング素子Q303のベース電圧はハイレベルとなって、スイッチング素子Q303がオン状態となり、抵抗R318を介して、フォトカプラPC301のLEDに流れる電流が増幅される。“パワーセーブ信号1”がオフ(ローレベル出力)の場合は、差動増幅器IC302の出力に関係なく、スイッチング素子Q303のベース電圧は常にローレベルとなり、Q303はオン状態にならないため、フォトカプラPC301のLEDには電流が流れない。
【0022】
以上のことから、フォトカプラPC301のLEDの電流制御は、次のように行われる。“パワーセーブ信号1”がオフ(ローレベル出力)の場合には、差動増幅器IC301の反転入力端子にかかる分圧電圧(Vout×R313/(R312+R313))と、非反転入力端子にかかる基準電圧が比較される。そして、分圧電圧が基準電圧よりも高ければ、フォトカプラPC301のLEDに電流が流れ、逆に、分圧電圧が基準電圧よりも低ければ、LEDに電流が流れない制御となる。一方、“パワーセーブ信号1”がオン(ハイレベル出力)の場合は、差動増幅器IC302の非反転入力端子にかかる分圧電圧(Vout×R315/(R314+R315))と、反転入力端子にかかる基準電圧が比較される。そして、分圧電圧が基準電圧よりも高ければ、フォトカプラPC301のLEDに電流が流れ、逆に、分圧電圧が基準電圧よりも低ければ電流が流れない制御となる。設計上、差動増幅器IC301の反転入力端子にかかる分圧電圧(Vout×R313/(R312+R313))は、差動増幅器IC302の非反転入力端子にかかる分圧電圧(Vout×R315/(R314+R315))より小さくなるように設定されている。“パワーセーブ信号1”がオン状態で、かつ、差動増幅器IC302の出力がハイインピーダンス状態で、フォトカプラPC301のLEDに電流が流れている場合は、IC302の非反転入力端子にかかる分圧電圧は、反転入力端子の基準電圧より高い状態である。この時、差動増幅器IC301の反転入力端子の分圧電圧は、非反転入力端子の基準電圧よりも低くなるように設計されているので、差動増幅器IC301の出力はハイインピーダンス状態のままとなり、フォトカプラPC301の電流制御には影響しない。
【0023】
[電子機器の負荷状況による電圧制御]
また、電子機器の負荷が小さくなった場合に、フォトカプラPC301の電流制御を行う方法として、図1に示すように、CPU等のアナログ出力ポート(不図示)からスイッチング素子Q304のベースに“パワーセーブ信号2”を出力する方法がある。“パワーセーブ信号2”は、ハイレベル/ローレベルが繰り返されるパルス信号であり、抵抗R322を介して、スイッチング素子Q304のベースに入力される。そして、“パワーセーブ信号2”がハイレベルの間、スイッチング素子Q304はオン状態となり、フォトカプラPC301のLEDには、差動増幅器IC301、IC302の出力に関係なく、抵抗R321で制限される電流が流れる。このLEDに流れる電流の電流値は、電子機器動作時の電流値と比べて充分に大きく、そのため、フォトカプラPC301のフォトトランジスタに流れる電流も増大し、瞬時にコンデンサC305の充電電圧を上昇させる。その結果、スイッチング素子Q302がオン状態となり、主スイッチング素子Q301はオフ状態となる。この状態が本スイッチング電源の発振周波数の周期の、例えば2〜20倍位継続されると、絶縁トランスT301のエネルギーは完全に放出され、本スイッチング電源の1次側は起動前と同じ状態になる。本スイッチング電源の2次側は、電子機器の負荷が小さいため、出力電圧は、ほぼそのままの状態が維持される。そして、“パワーセーブ信号2”がローレベルとなり、スイッチング素子Q304のベースがハイレベルからローレベルになると、フォトカプラPC301のLEDに流れる電流も、ほぼ以前の状態に回復する。
【0024】
また、“パワーセーブ信号2”がハイレベルの時に、抵抗R306に流れる電流によりスイッチング素子Q302のコレクターベース間の電圧降下が、Q302の閾値電圧よりも大きい場合は、スイッチング素子Q302はオン状態を継続する。そのため、起動抵抗R301からの電流はスイッチング素子Q302にすべて流れ込み、主スイッチング素子Q301はオン状態にはならないため、本スイッチング電源は発振停止状態を継続する。時間の経過に伴い、コンデンサC305に蓄積された電荷が負荷により消費されていくと、絶縁トランスT301の2次側の出力電圧も下がる。それに伴い、差動増幅器IC301の出力電圧が上昇し、フォトカプラPC301のLEDに流れる電流が減少し、フォトカプラPC301のフォトトランジスタに流れる電流も減少する。その結果、抵抗R305による電圧降下がスイッチング素子Q302の閾値電圧よりも小さくなると、スイッチング素子Q302はオフ状態となって、主スイッチング素子Q301がオンするため、本スイッチング電源は再び発振を開始する。以上のように、スイッチング素子Q304のベースにパルス信号を入力することにより、スイッチング電源の単位時間当たりの発振回数を減少させることができるので、負荷が軽い時の電圧変換効率を改善することができる。
【0025】
[スイッチング電源装置の電圧、電流波形]
図2は、図1に示す自励型フライバックコンバータにおいて、主スイッチング素子Q301のオン、オフ状態における回路各部の電圧、電流波形を示した図である。図2において、Vgsは主スイッチング素子Q301のゲート端子に印加される電圧を、Vdsは主スイッチング素子Q301のドレイン端子−ソース端子間の電圧を、Idは主スイッチング素子Q301に流れる電流をそれぞれ指している。同様に、VNsは2次巻線Nsに発生する電圧を、Isは2次側のダイオードD302に流れる電流を、VNbは補助巻線Nbに発生する電圧をそれぞれ指している。
【0026】
商用交流電源からの入力電圧を平滑整流された直流電圧である入力電圧Eは、起動抵抗R301と抵抗R302により分圧され、主スイッチング素子Q301のゲート端子に印加される。主スイッチング素子Q301のゲート端子電圧Vgsの電位が上昇することによって、主スイッチング素子Q301はオン状態となり、主スイッチング素子Q301に流れる電流Idは時間と共に直線的に増加し、絶縁トランスT301にエネルギーが蓄積される。この時、主スイッチング素子Q301のドレイン端子−ソース端子間電圧Vdsは、主スイッチング素子Q301がオン状態であるため、端子間の電位差はほぼ零になっている。また、2次側のダイオードD302には、入力電圧Eの1次巻線Npと2次巻線Nsの巻線比倍の逆バイアス電圧VNsが印加されているため、ダイオードD302には、電流Isは流れない。この時、補助巻線Nbに発生する電圧VNbは、入力電圧Eの1次巻線Npと補助巻線Nbの巻線比倍の電圧となる。前述したように、コンデンサC305が充電され、スイッチング素子Q302がオン状態になると、主スイッチング素子Q301のゲート端子電圧Vgsは零になり、その結果、主スイッチング素子Q301がオフ状態となる。そして、主スイッチング素子Q301に電流が流れなくなることにより、電流Idは零になり、Q301のドレイン端子−ソース端子間電圧Vdsは、入力電圧Eと2次側出力電圧Voutの巻線比倍の電圧、及びサージ電圧を重畳したものとなる。この時、2次側のダイオードD302は導通状態となり、絶縁トランスT301に蓄積されたエネルギーが2次側に伝達される。絶縁トランスT301に蓄積されたエネルギーが放出されると、ダイオードD302に流れる電流Isは時間と共に直線的に減少する。この時、補助巻線Nbには、2次側出力電圧Voutの2次巻線Nsと補助巻線Nbの巻線比倍の負電圧が発生するが、その後の負電圧の低下により、再度、主スイッチング素子Q301がオン状態となることで、継続して発振動作が行われることになる。以上の動作により、負荷変動があった場合でもVoutを一定電圧として出力する制御が行われる。
【実施例1】
【0027】
[スイッチング電源の回路構成]
本実施例の実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、本実施例の低圧電源装置である自励式スイッチング電源の回路構成を示した図である。図3に示すように、基本的な回路構成は、前述した図1の回路構成と同様であるため、図1と同じ構成の回路部分についての説明は省略する。図1と図3を比べると、図1のパワーセーブ信号1に関係する差動増幅器IC302、スイッチング素子Q303等の回路が、図3では削除されている。更に、図3では、フォトカプラPC301の2次側部分であるLEDに並列接続された抵抗R350が追加され、第2のスイッチング手段であるスイッチング素子Q304への入力信号が“パワーセーブ信号2”から“パワーセーブ信号3”に変更されている。“パワーセーブ信号3”は、CPU等のアナログ出力ポート(不図示)から出力される。また、抵抗R321、R350は、次の式(1)を満足する抵抗値を有している。


【0028】
式(1)において、Voutは図3に示す電源回路の出力電圧を、LED_VfはフォトカプラPC301のLEDに所定電流を流した時の順方向電圧Vfを、第1の抵抗R1、第2の抵抗R2は抵抗R350、R321の抵抗値をそれぞれ示す。また、Vce(sat)は、スイッチング素子Q304(第1のトランジスタ)がオン状態におけるコレクターエミッタ間(電流流入端子―電流流出端子間)電圧を示す。なお、順方向電圧LED_Vf、コレクターエミッタ間電圧Vce(sat)は使用する素子のカタログスペック等、もしくは、実験的に求めることができる。
【0029】
[電子機器の動作状況による出力電圧の切り替え制御]
まず、電子機器が動作状態にある時の図3の回路動作について説明する。電子機器が動作状態にある時には、“パワーセーブ信号3”はローレベル状態であり、そのため、スイッチング素子Q304はオフ状態となり、フォトカプラPC301のLEDには差動増幅器IC301の出力に応じた電流が流れる。この場合の回路動作については前述したので、説明を省略する。また、負荷が軽い時には、“パワーセーブ信号3”として、ハイレベル/ローレベルを繰り返すパルス信号を入力することにより、前述したように、単位時間あたりの主スイッチング素子Q301の発振回数を減少させ、電圧変換効率を改善することができる。
【0030】
次に、電子機器が停止状態にある時は、“パワーセーブ信号3”をハイレベル/ローレベルを繰り返すパルス信号の状態から、ハイレベル状態のままにする。“パワーセーブ信号3”をハイレベルに保持することにより、スイッチング素子Q304はオン状態のままになり、フォトカプラPC301のLED、及びフォトトランジスタに電流が流れ続ける。そして、出力電圧Voutの電圧が十分に高い状態では、抵抗R306に流れる電流によりスイッチング素子Q302のコレクターベース間の電圧降下が、スイッチング素子Q302の閾値電圧よりも大きくなる。そのため、スイッチング素子Q302はオン状態を継続し、起動抵抗R301からの電流はスイッチング素子Q302にすべて流れ込むため、主スイッチング素子Q301はオン状態にならず、図3の自励式スイッチング電源は発振停止状態を継続する。その結果、出力電圧Voutの電圧値は低下し、差動増幅器IC301の反転入力端子に入力される分圧電圧は、非反転入力端子に入力される基準電圧よりも低くなるため、差動増幅器IC301の出力は、ハイインピーダンス状態となる。
【0031】
しかし、時間の経過に伴い、コンデンサC305に充電された電荷が負荷により消費されていくと、絶縁トランスT301の2次側の出力電圧Voutの電圧が低下し、それに伴い、フォトカプラPC301のLEDに流れる電流が減少する。そのため、フォトカプラPC301のフォトトランジスタに流れる電流が減少し、スイッチング素子Q302のコレクターベース間電圧は、スイッチング素子Q302の閾値電圧よりも小さくなる。その結果、起動抵抗R301よりコンデンサC305に充電が行われている短い期間だけ、主スイッチング素子Q301がオン状態になる。そして、また、出力電圧Voutが所定電圧以上になると、フォトカプラPC301のLEDに流れる電流が再び増加し、フォトトランジスタに流れる電流も増加する。その結果、コンデンサC305の電圧が上昇し、スイッチング素子Q302がオン状態となり、再び主スイッチング素子Q301はオフ状態となる。“パワーセーブ信号3”をハイレベルにしたままにすると、前記の動作を繰り返す間欠発振動作となり、間欠発振動作に入った時の出力電圧Voutの平均電圧は、前述した式(1)で求められる電圧となる。そのため、式(1)における抵抗R1、R2の抵抗値を、電子機器が停止状態にある時に、電子機器内部で必要とされる電圧に応じて設定することで、“パワーセーブ信号3”をハイレベルにした時の出力電圧Voutを任意の電圧に設定することができる。本実施例では、抵抗R1、R2の値を出力電圧Voutが3.3V前後になるように設定している。なお、電圧3.3V、100mA〜200mA程度の負荷に対して、式(1)の関係が成り立つことが実験により確認されている。
【0032】
[直流電圧変換回路の回路構成と動作]
続いて、図8(a)、(b)における“第2の直流電圧変換回路”部分について、図4を用いて説明する。図4は、オープンコレクタ出力の差動増幅器を用いたチョッパ電源の構成を示す回路図であり、図8(a)、(b)における“第2の直流電圧変換回路”の部分に該当する。本電源は、差動増幅器IC51、主スイッチング素子Q52、回生ダイオードD52、チョークコイルL51、ダイオードD51、過負荷保護素子Q51、電解コンデンサC52、ツェナーダイオードZD51、電流検出抵抗R51等から構成されている。
【0033】
次に、チョッパ電源各部の動作について、図4を用いて説明する。図4は、主スイッチング素子Q52(電源制御手段)としてPチャネルのFETを使用し、電源入力としてはVoutを入力し、出力電圧としてはVout2(第2の出力電圧)を出力する降圧型のチョッパ電源の例である。差動増幅器IC51の出力がローレベルの時、主スイッチング素子Q52はオン状態となる。この時、ダイオードD51(電圧変化手段)のカソード電位はVoutとなり、このダイオードD51は非導通状態である。差動増幅器IC51の反転入力端子には、ツェナーダイオードZD51により決まる基準電圧のVout2が入力されている。そして、Vout2出力電圧が上昇し、差動増幅器IC51の非反転入力端子の電圧が基準電圧より高くなると、差動増幅器IC51の出力はハイレベルとなり、主スイッチング素子Q52はオフ状態となる。この時、インダクタであるチョークコイルL51には主スイッチング素子Q52のオン状態によってエネルギーが蓄えられているため、チョークコイルL51は回生ダイオードD52を介して電流を流す。そして、ダイオードD51のカソード電位は電源入力の低電位側の電圧(GNDを指す)より回生ダイオードD52の電圧降下分だけ低い電位になるため、ダイオードD51は導通状態となる。そして、差動増幅器IC51の反転入力端子電圧は、回生ダイオードD52とダイオードD51の電圧降下の差分の電圧となる。従って、回生ダイオードD52が導通状態を維持している間は、差動増幅器IC51の出力はハイレベルを維持し、主スイッチング素子Q52はオフ状態を維持することになる。チョークコイルL51の回生(エネルギー放出)が終了し、回生ダイオードD52が非導通状態となると、差動増幅器IC51の反転入力端子電圧は上昇し、基準電圧であるVout2となる。その後、基準電圧に比べて差動増幅器IC51の非反転入力電圧が低下してくると、差動増幅器IC51の出力はローレベルとなり、主スイッチング素子Q52は再びオン状態となる。以下、同様の動作を繰り返すことで、本電源回路は負荷に電力を供給する。
【0034】
また、電流検出抵抗R51は、主スイッチング素子Q52,チョークコイルL51に流れる電流を電圧に変換し、過負荷保護のために設けられている過負荷保護素子Q51のベース,エミッタ間に電位差を生じさせるように動作する。電流検出抵抗R51に流れる電流により生じる電圧が過負荷保護素子Q51の動作電圧以上になると、Q51はオン状態となり、コレクタ端子の電圧が上昇する。コレクタ電圧の上昇により差動増幅器IC51の非反転入力電圧は上昇し、基準電圧より高くなることにより、差動増幅器IC51の出力がハイレベルとなり、主スイッチング素子Q52はオフ状態に強制的に遷移することになる。この過負荷保護用の動作は本チョッパ電源の立ち上がり時、過負荷時に主スイッチング素子Q52に流れる電流を制限する役割を果たすために設けられており、通常動作時に動作することはない。
【0035】
本実施例の図3、図4の回路では、電子機器が動作状態にある時は、“パワーセーブ信号3”をローレベルにすることにより、Vout電圧として24V、Vout2電圧として3.3Vを出力する。また、負荷が軽い時には、“パワーセーブ信号3”として、ハイレベル/ローレベルを繰り返すパルス信号を入力することにより、単位時間あたりの発振回数を減少させる。更に、電子機器が停止状態にある時は、“パワーセーブ信号3”をハイレベルにすることにより、Vout電圧、Vout2電圧を共に3.3V出力にする。この時、図4に示す回路では、Vout2と差動増幅器IC51の反転入力端子に入力される基準電圧がほぼ同じ電圧なので、主スイッチング素子Q52は基本的にオン状態のままとなる。
【0036】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な回路構成により、電子機器の動作状態又は停止状態に応じて、それぞれ異なる直流電圧を出力することができる。すなわち、電子機器が動作状態にある時には、高圧回路、駆動回路等の負荷、及び制御回路等の負荷の両方の負荷に必要な電圧を出力し、電子機器が停止状態にある時には、制御回路等の負荷に必要な電圧のみを出力する。
【実施例2】
【0037】
[スイッチング電源の回路構成]
本実施例の過負荷保護回路を備えた低圧電源装置の実施形態について、図5を用いて説明する。図5は、本実施例の自励式スイッチング電源の回路構成を示した図である。図5に示すように、基本的な回路構成は、前述した図1の回路構成と同様であるため、図1と同じ構成の回路部分についての説明は省略する。図1と図5を比べると、図1のパワーセーブ信号1に関係する差動増幅器IC302、スイッチング素子Q303等の回路、及びパワーセーブ信号2に関係するスイッチング素子Q304等が、図5では削除されている。逆に、図5では、過電圧保護回路を構成するフォトカプラPC302や差動増幅器IC303等や、電子機器が停止状態の時に、出力電圧VoutをVout2の電圧値にする“パワーセーブ信号4”に関係するスイッチング素子Q350等の回路が追加されている。また、実施例1において説明した、図8の“第2の直流電圧変換回路”に該当する図4のチョッパ電源は、本実施例においても、直流の電圧Voutを電圧Vout2に変換する回路として使用される。
【0038】
[過電圧保護回路の構成と動作]
まず、過電圧保護回路について説明する。過電圧保護回路は、第1の伝達手段であるフォトカプラPC301と並列に接続された第2の伝達手段であるフォトカプラPC302と、過電圧検出手段である差動増幅器IC303から構成されている。フォトカプラPC302の2次側部分であるLEDのカソード側には、抵抗R351を介して差動増幅器IC303の出力端子が接続されている。差動増幅器IC303の反転入力端子には、出力電圧VoutでプルアップされたツェナーダイオードZD351のアノード側、及び出力電圧Vout2でプルアップされたダイオードD351のカソード側が接続されている。一方、差動増幅器IC303の非反転入力端子には、出力電圧Voutを抵抗R353と抵抗R354で分圧された電圧が入力されている。なお、電源装置が正常に動作し、その出力電圧が所定電圧未満であれば、差動増幅器IC303の非反転入力端子の入力電圧は、反転入力端子の入力電圧より高くなるように設定されている。
【0039】
続いて、過電圧保護回路の動作について説明する。電源装置が正常に動作している時は、差動増幅器IC303の出力はハイインピーダンス状態であるため、フォトカプラPC302のLEDには電流が流れておらず、主スイッチング素子Q301のスイッチング動作には影響が出ない。しかし、電源装置の回路が異常動作を起こし、出力電圧Vout、又は出力電圧Vout2が所定電圧以上になると、差動増幅器IC303の非反転入力端子と反転入力端子に入力された電圧の大小関係が逆転する。すなわち、回路の異常動作により、Vout電圧がツェナーダイオードZD351のツェナー電圧以上になり、抵抗R352に大きな電流が流れ込み、抵抗R352に発生する電圧が所定電圧以上に上昇した場合、差動増幅器IC303の出力はローレベルになる。また、出力電圧Vout2の電圧が所定電圧以上になり、抵抗R352に大きな電流が流れ込んで、抵抗R352の両端に発生する電圧が上昇した場合にも、差動増幅器IC303の出力はローレベルになる。その結果、フォトカプラPC302のLEDには電流が流れ、フォトカプラPC302のフォトトランジスタにも電流(第2の帰還電流)が流れる。そして、フォトカプラPC301の動作に関係なく、瞬時にコンデンサC305の電圧が上昇し、スイッチング素子Q302がオン状態となり、主スイッチング素子Q301をオフ状態にすることにより、出力電圧Vout、Vout2の電圧を下げる。
【0040】
本実施例では、電子機器が停止状態の時に、出力電圧値をVoutからVout2にするために、過電圧保護回路に以下の回路が追加されている。すなわち、フォトカプラPC302のLEDに並列接続された抵抗R356と、一端をLEDのカソード側と抵抗R351の接続点に、他端をスイッチング素子Q350に直列接続された抵抗R357と、スイッチング素子Q350からなる回路が追加されている。スイッチング素子Q350のコレクタは抵抗R357に接続され、エミッタは接地されている。更に、第2のスイッチング手段であるスイッチング素子Q350のベースには、抵抗R358を介して“パワーセーブ信号4”が入力される。“パワーセーブ信号4”は、電子機器が動作状態にある時にはローレベル状態であり、電子機器が停止状態にある時にはハイレベル状態となる信号である。また、抵抗R356、R357は、次の式(2)を満足する抵抗値を有している。


【0041】
式(2)において、Voutは図5に示す電源回路の出力電圧を、LED_VfはフォトカプラPC302のLEDに所定電流を流した時の順方向電圧Vfを、第3の抵抗R3、第4の抵抗R4は、抵抗R356、R357の抵抗値をそれぞれ示す。また、Vce(sat)は、スイッチング素子Q350(第1のトランジスタ)がオンした状態でのコレクターエミッタ間電圧を示す。
【0042】
[電子機器の動作状況による出力電圧の切り替え制御]
まず、電子機器が動作状態にある時の図5の回路動作について説明する。電子機器が動作状態にある時には、CPU等のアナログ出力ポート(不図示)から出力される“パワーセーブ信号4”はローレベル状態である。そのため、スイッチング素子Q350はオフ状態となり、フォトカプラPC302のLEDには、過電圧保護回路を構成する差動増幅器IC303の出力に応じた電流が流れる。また、フォトカプラPC301のLEDには差動増幅器IC301の出力に応じた電流が流れ、LEDの電流量に応じた電流(第1の帰還電流)がフォトトランジスタに流れる。この場合の回路動作については前述したので、説明を省略する。
【0043】
次に、電子機器が停止状態にある時は、“パワーセーブ信号4”をハイレベル状態にする。“パワーセーブ信号4”をハイレベルに保持することにより、スイッチング素子Q350はオン状態のままになり、差動増幅器IC303の出力に関係なく、フォトカプラPC302のLED、及びフォトトランジスタに電流が流れ続ける。その結果、フォトカプラPC301のフォトトランジスタの出力に関係なく、スイッチング素子Q302がオン状態となり、その状態が継続される。一方、主スイッチング素子Q301はオフ状態のままとなり、図5の自励式スイッチング電源は発振停止状態を継続する。しかし、時間の経過に伴い、コンデンサC305に充電された電荷が負荷により消費されていくと、絶縁トランスT301の2次側の出力電圧Voutが低下し、それに伴い、フォトカプラPC302のLEDに流れる電流が減少する。そのため、フォトカプラPC302のフォトトランジスタに流れる電流が減少し、スイッチング素子Q302のコレクターベース間電圧は、スイッチング素子Q302の閾値電圧よりも小さくなる。その結果、起動抵抗R301よりコンデンサC305に充電が行われ、主スイッチング素子Q301が短い期間オン状態になる。そして、また、出力電圧Voutが所定電圧以上になると、フォトカプラPC301のLEDに流れる電流が再び増加し、フォトトランジスタに流れる電流も増加する。その結果、コンデンサC305の電圧が上昇し、スイッチング素子Q302がオン状態となり、再び主スイッチング素子Q301はオフ状態となる。“パワーセーブ信号4”をハイレベルにしたままにすると、前記の動作を繰り返す間欠発振動作となり、間欠発振動作に入った時の出力電圧Voutの平均電圧は、前述した式(2)で求められる電圧となる。そのため、式(2)における抵抗R3、R4の抵抗値を、電子機器が停止状態にある時に、電子機器内部で必要とされる電圧に応じて設定することで、“パワーセーブ信号4”をハイレベルにした時の出力電圧Voutを任意の電圧に設定することができる。本実施例では、抵抗R3、R4の値を出力電圧Voutが3.3V前後になるように設定している。電圧3.3V、100mA〜200mA程度の負荷に対して、式(2)の関係が成り立つことが実験により確認されている。
【0044】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な回路構成により、電子機器の動作状態又は停止状態に応じて、それぞれ異なる直流電圧を出力することができる。過電圧保護回路を備えた電源回路においても、電子機器が停止状態の場合に、過電圧保護回路を構成するフォトカプラに対して、パワーセーブ信号を送ることにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0045】
[直流電圧変換回路の回路構成]
本実施例の実施形態について、図6を用いて説明する。図6は、本実施例の“第2の直流電圧変換回路”を示した図である。図6に示すように、基本的な回路構成は、前述した図4の回路構成と同様であるため、図4と同じ構成の回路部分についての説明は省略する。図4と図6を比べると、図4では差動増幅器IC51の基準電圧を決めていたのはツェナーダイオードZD51であったが、図6では、入力電圧Voutの分圧により決めている点が異なっている。更に、図6では、電子機器が停止状態の時に、主スイッチング素子Q52をオン状態にして、入力電圧Voutと出力電圧Vout2を直結した状態にするために、以下の回路が追加されている。すなわち、コレクタ側は差動増幅器IC51の出力側に接続され、エミッタ側は接地された、第3のスイッチング手段であるスイッチング素子Q61が追加されている。更に、スイッチング素子Q61のベースには、抵抗R61を介して、CPU等のアナログ出力ポート(不図示)から出力された“パワーセーブ信号5”が入力される。“パワーセーブ信号5”は、電子機器が動作状態にある時には、ローレベル状態であり、電子機器が停止状態にある時には、ハイレベル状態となる信号である。
【0046】
[電子機器の動作状況による出力電圧の制御]
図6を用いて、本実施例の回路動作について説明する。図6では、差動増幅器IC51の非反転入力端子には出力電圧Vout2が、反転入力端子には入力電圧Voutを抵抗R59と抵抗R60で分圧した分圧電圧が基準電圧として入力されている。電子機器が動作状態にある時には、“パワーセーブ信号5”はローレベル状態である。そのため、スイッチング素子Q61はオフ状態となり、主スイッチング素子Q52は、差動増幅器IC51の出力に応じて、オン状態、又はオフ状態となり、図6の回路は、入力電圧Voutを出力電圧Vout2に変換する直流電圧変換回路として動作する。
【0047】
次に、電子機器が停止状態になると、実施例1,2で述べたように、図3、図5における出力電圧VoutがVout2の電圧まで変化する。そのため、図6の回路においては、入力電圧Voutが変化すると、差動増幅器IC51の反転入力端子の基準電圧も変化する。図6において、スイッチング素子Q61がオフ状態だとすると、入力電圧Voutが出力電圧Vout2の電圧まで低下すると、差動増幅器IC51の反転入力端子に入力される基準電圧も低下し、Vout2より低い電圧となる。そのため、差動増幅器IC51の出力はハイレベルとなり、主スイッチング素子Q52はオフ状態で固定されてしまう。すなわち、出力電圧VoutをVout2の電圧まで下げた状態の時は、主スイッチング素子Q52はスイッチング動作を停止し、電圧入力側のVout端子と電圧出力側のVout2端子の間が遮断され、入力電圧Voutが出力されない状態となる。そのため、電子機器が停止状態になると、実施例1,2の“パワーセーブ信号”に同期して、“パワーセーブ信号4”をハイレベル状態にすることにより、スイッチング素子Q61はオン状態のままになる。これにより、差動増幅器IC51の出力に関係なく、主スイッチング素子Q52はオン状態のままとなり、入力電圧Voutと出力電圧Vout2を直結した状態になる。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、入力された直流電圧をより低い電圧に変換して出力する電圧変換回路において、簡易な回路構成により、電子機器が停止状態の時には、入力された直流電圧をそのまま出力することができる。特に、電圧変換動作を制御する差動増幅器の基準電圧が入力電圧を分圧して生成されている場合には、電子機器が停止状態になると、パワーセーブ信号を出力し、入力電圧側と出力電圧側を直結させる回路構成にすることにより、入力電圧をそのまま出力する。
【実施例4】
【0049】
[画像形成装置の概要]
図7は、実施例1ないし3で説明した電源回路を有する電源装置100を備えた画像形成装置200の模式図である。図7において、記録媒体101は画像形成を行う用紙やシートなどであり、ローラ102、103は記録媒体101を搬送し、画像形成部104は電子写真プロセスによって記録媒体101上に画像形成を行う。転写部105は、電子写真プロセスによって形成された画像を記録媒体101上に転写する。定着ローラ107や、発熱ヒータ6を備えた定着部106は、発熱ヒータ6による加熱と定着ローラ107による加圧によって、記録媒体101上に形成された画像を定着させる。そして、排出ローラ108は記録媒体101を排出トレイ109に排出し、110は排出トレイ109によって排出され、積載された記録媒体である。コントローラ111には、CPU、メモリ、ASIC等の回路が含まれ、画像形成装置の動作を制御する。なお、画像形成装置200は、電源装置100を経由して、不図示の商用交流電源に接続されている。
【0050】
電源装置100は、負荷に対して、24V、及び3.3Vの直流電圧を供給する低圧電源回路を有している。画像形成装置が画像形成動作状態の時には、低圧電源回路において生成された3.3V電圧は、例えば、CPU、メモリを含むコントローラ111に供給され、また、24V電圧は用紙を搬送するローラを駆動するモータ類に供給される。そして、画像形成装置が画像形成動作を停止している状態の時には、低圧電源回路は、24V電圧の生成を停止し、3.3V電圧のみをコントローラ111に供給することにより、消費電力を抑制する。
【0051】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な回路構成により、電子機器の動作状態に応じて、異なる直流電圧を出力する低圧電源回路を有した電源装置を画像形成装置に適用することができる。画像形成の動作状態に応じて、低圧電源回路における電圧生成を制御する電源装置を備えることにより、画像形成装置は消費電力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
T301 絶縁トランス
Q301 主スイッチング素子
Q302、Q304、Q350 スイッチング素子
PC301、PC302 フォトカプラ
R321、R350、R356、R357 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源装置であって、
1次巻線と補助巻線と2次巻線を有するトランスと、
入力された交流電圧を平滑整流した直流電圧の前記トランスの1次巻線への導通を制御する第1のスイッチング手段と、
前記トランスの2次巻線に発生する電圧を平滑整流した第1の出力電圧と基準電圧を比較し、前記第1の出力電圧と前記基準電圧との差に応じた電圧を出力する差動増幅手段と、
前記トランスの2次側の前記差動増幅手段からの出力電圧に応じた帰還電流を前記トランスの1次側に伝達する伝達手段と、
前記帰還電流と前記トランスの補助巻線からの帰還電圧に応じて、前記第1のスイッチング手段をオン状態又はオフ状態に制御する制御手段と、
前記トランスの2次巻線に前記第1の出力電圧よりも低い第2の出力電圧を発生させる際に、前記帰還電流を増加させて、前記第1のスイッチング手段をオフ状態にする第2のスイッチング手段と、
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記伝達手段は1次側がフォトトランジスタで、2次側はアノード側を前記第1の出力電圧でプルアップされた発光ダイオードで構成されたフォトカプラであり、
前記第2のスイッチング手段は、前記発光ダイオードに並列接続された第1の抵抗と、一端を前記発光ダイオードのカソード側と前記第1の抵抗との接続点に、他端を第1のトランジスタの電流流入端子に接続された第2の抵抗と、電流流出端子は接地され、電流流入端子は前記第2の抵抗と直列接続された前記第1のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタがオン状態のときには、前記第2の出力電圧は、前記発光ダイオードの順方向電圧と、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗の抵抗値と、前記第1のトランジスタの前記電流流入端子と前記電流流出端子間の電圧降下により決定されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源装置であって、
1次巻線と補助巻線と2次巻線を有するトランスと、
入力された交流電圧を平滑整流した直流電圧の前記トランスの1次巻線への導通を制御する第1のスイッチング手段と、
前記トランスの2次巻線に発生する電圧を平滑整流された第1の出力電圧と基準電圧を比較し、前記第1の出力電圧と前記基準電圧との差に応じた電圧を出力する差動増幅手段と、
前記トランスの2次側の前記差動増幅手段からの出力電圧に応じた第1の帰還電流を前記トランスの1次側に伝達する第1の伝達手段と、
前記第1の出力電圧の過電圧と、前記第1の出力電圧よりも低い第2の出力電圧の過電圧を検出する過電圧検出手段と、
前記トランスの2次側の前記過電圧検出手段が過電圧を検出すると第2の帰還電流を前記トランスの1次側に伝達する第2の伝達手段と、
前記第1の帰還電流と前記第2の帰還電流と前記トランスの補助巻線からの帰還電圧に応じて、前記第1のスイッチング手段をオン状態又はオフ状態に制御する制御手段と、
前記トランスの2次巻線に前記第1の出力電圧よりも低い第2の出力電圧を発生させる際に、前記第2の帰還電流を増加させて、前記第1のスイッチング手段をオフ状態にする第2のスイッチング手段と、
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
前記第2の伝達手段は1次側がフォトトランジスタで、2次側はアノード側を前記第1の出力電圧でプルアップされた発光ダイオードで構成されたフォトカプラであり、
前記第2のスイッチング手段は、前記発光ダイオードに並列接続された第3の抵抗と、一端を前記発光ダイオードのカソード側と前記第3の抵抗との接続点に、他端を第1のトランジスタの電流流入端子に接続された第4の抵抗と、電流流出端子は接地され、電流流入端子は前記第4の抵抗と直列接続された前記第1のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタがオン状態のときには、前記第2の出力電圧は、前記発光ダイオードの順方向電圧と、前記第3の抵抗及び前記第4の抵抗の抵抗値と、前記第1のトランジスタの前記電流流入端子と前記電流流出端子間の電圧降下により決定されることを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1の出力電圧を入力し、前記第2の出力電圧を出力する回路を備え、
前記回路は、一端が電圧出力側に接続されたインダクタと、
電圧入力側と前記インダクタの間に接続され、前記インダクタを介して出力を制御する電源制御手段と、
前記第2の出力電圧に比例した電圧と基準電圧を入力し、前記2つの電圧を比較した結果に応じて、前記電源制御手段をオン状態又はオフ状態にする比較手段と、
前記比較手段の前記基準電圧の入力側と前記インダクタとの間に接続され、前記インダクタにおけるエネルギーの蓄積及び放出に応じて前記比較手段の前記基準電圧の入力を変化させる電圧変化手段と、
前記電源制御手段に接続され、前記第2のスイッチング手段がオン状態のときに、前記電源制御手段をオン状態にする第3のスイッチング手段と、
を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記比較手段に入力される前記基準電圧は、前記第2の出力電圧を抵抗で分圧した電圧であることを特徴とする請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電源装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−244779(P2012−244779A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112635(P2011−112635)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】