説明

電源装置

【課題】車載バッテリとして、温度に基づく充放電制御が必要なリチウムイオン電池又はニッケル水素電池等を備えていても、放熱する為の冷却ファン、高温排気の処理、及びこれらの為の空間が不要な電源装置の提供。
【解決手段】車載発電機7により充電され、電気負荷群8,8に電力を供給する第1バッテリ9と、車載発電機7の発電電力を昇圧する昇圧手段5と、その昇圧した電力により充電され、他の電気負荷2に電力を供給し、放熱部材(図示せず)を通じて放熱する第2バッテリ1とを備える電源装置。通電時に放熱部材から吸熱する熱電変換素子12と、第2バッテリ1の温度を検出する温度検出器11と、その検出した温度が第1温度以上であるか否かを判定する手段10と、第1温度以上であると判定したときに、車載発電機7又は第1バッテリ9から熱電変換素子12に通電する通電手段13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載発電機の発電電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する鉛蓄電池等のバッテリと、車載発電機の発電電力を昇圧する昇圧手段と、昇圧手段が昇圧した電力により充電され、他の電気負荷に電力を供給するリチウムイオン電池又はニッケル水素電池等のバッテリとを備える電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電気負荷は年々増加する傾向にある。このような電気負荷の増加に対応して、従来の電源システムに、従来の鉛蓄電池より高電圧で充放電可能な電力貯蔵手段と、車載発電機で発電された電力を昇圧する昇圧手段とを加えて、昇圧手段が昇圧した電力により電力貯蔵手段を充電し、従来より高電圧の電力を負荷に供給する電源装置が考えられている。
【0003】
特許文献1には、充電又は放電している電池の熱を電力に変換する熱電変換素子と、この熱電変換素子が変換した電力を、電池の充放電電力として供給するコントローラとを備える電池の電源装置が開示されている。
特許文献2には、長時間放置されると電池容量が劣化する高温下充電状態に、リチウムイオン2次電池が放置されないよう予め放電させておき、電池容量の劣化を抑制するリチウムイオン2次電池の使用方法及び装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−63384号公報
【特許文献2】特開2000−287372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような複数のバッテリを備える電源装置では、追加されるバッテリとしては、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池等が考えられている。しかし、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池は、使用可能な温度範囲が鉛蓄電池より限られており、温度に基づく充放電制御が必要である。例えば、リチウムイオン電池の場合、図4に示すように、充電可能な温度範囲は0°C〜40°Cであり、放電可能な温度範囲は0°C〜60°Cである。
その為、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池等を使用するには、放熱する為の冷却ファン、高温排気の処理、及びこれらの為の空間が必要であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、車載バッテリとして、温度に基づく充放電制御が必要なリチウムイオン電池又はニッケル水素電池等を備えていても、放熱する為の冷却ファン、高温排気の処理、及びこれらの為の空間が不要な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る電源装置は、エンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力を昇圧する昇圧手段と、該昇圧手段が昇圧した電力により充電され、1又は複数の他の電気負荷に電力を供給し、放熱部材を通じて放熱する第2バッテリとを備える電源装置において、通電時に前記放熱部材から吸熱する熱電変換素子と、前記第2バッテリの温度を検出する温度検出器と、該温度検出器が検出した温度が第1温度以上であるか否かを判定する手段と、該手段が第1温度以上であると判定したときに、前記車載発電機又は第1バッテリから前記熱電変換素子に通電する通電手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この電源装置では、第1バッテリが、エンジンに連動する車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給し、昇圧手段が、車載発電機が発電した電力を昇圧し、第2バッテリが、その昇圧した電力により充電され、1又は複数の他の電気負荷に電力を供給し、放熱部材を通じて放熱する。熱電変換素子が、通電時に放熱部材から吸熱し、温度検出器が、第2バッテリの温度を検出する。判定する手段が、温度検出器が検出した温度が第1温度以上であるか否かを判定し、第1温度以上であると判定したときに、通電手段が、車載発電機又は第1バッテリから熱電変換素子に通電する。
【0008】
第2発明に係る電源装置は、前記通電手段が通電しているときに、前記温度検出器が検出した温度が、前記第1温度より低い第2温度以下であるか否かを判定する手段を更に備え、該手段が第2温度以下であると判定したときは、前記通電手段の通電を停止するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
この電源装置では、通電手段が通電しているときに、判定する手段が、温度検出器が検出した温度が、第1温度より低い第2温度以下であるか否かを判定し、第2温度以下であると判定したときは、通電手段の通電を停止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電源装置によれば、車載バッテリとして、温度に基づく充放電制御が必要なリチウムイオン電池又はニッケル水素電池等を備えていても、放熱する為の冷却ファン、高温排気の処理、及びこれらの為の空間が不要な電源装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る電源装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
この電源装置では、オルタネータ(車載発電機、交流発電機)7が発電し整流した直流電力が、オルタネータ7に並列接続された鉛蓄電池(第1バッテリ)9及び複数の負荷(電気負荷)8・・に供給される。また、オルタネータ7が発電し整流した直流電力は、DC/DCコンバータ5で昇圧され、昇圧された電力は、リチウムイオン電池(第2バッテリ)1及び負荷(電気負荷)2にも供給される。
【0012】
電圧検出器6が、鉛蓄電池9の出力電圧値を検出し、電圧検出器4が、リチウムイオン電池1の出力電圧値を検出し、その各検出値は、主としてマイクロコンピュータからなる制御部10に与えられる。
温度検出器11が、リチウムイオン電池1の温度を検出し、その検出値Tは制御部10に与えられる。
リチウムイオン電池1には、図示しない放熱基板が設けられ、放熱基板には、その伝熱を通電時に吸収して、リチウムイオン電池1を冷却する熱電変換素子12が付設されている。
【0013】
リチウムイオン電池1は、図2に模式的に示すような単位リチウムイオン電池1aを直列及び並列に接続したものである。各単位リチウムイオン電池1aには、例えばアルミニウム製の放熱基板14が、放熱効率が高まるように周設されている。放熱基板14には、単位熱電変換素子12aが、吸熱効率が高まるように互いの接触面積を大きくして付設されている。各単位熱電変換素子12aは互いに直列及び並列に接続されて、熱電変換素子12を構成している。
熱電変換素子12の通電は、スイッチ13によりオン/オフされ、スイッチ13は、制御部10によりオン/オフ制御される。
【0014】
以下に、このような構成の電源装置の動作を、それを示す図3のフローチャートを参照しながら説明する。
制御部10は、先ず、スイッチ13をオフにした(S1)後、温度検出器11が検出したリチウムイオン電池1の温度Tを読込み(S3)、温度Tが、リチウムイオン電池1の充放電が可能な上限温度である例えば40℃未満であるか否かを判定する(S5)。温度Tが40℃未満であれば、温度検出器11が検出したリチウムイオン電池1の温度Tを再度読込む(S3)。
【0015】
制御部10は、温度Tが40℃以上であれば(S5)、スイッチ13をオンにして(S7)、熱電変換素子12を通電させ、リチウムイオン電池1を冷却する。次いで、温度検出器11が検出したリチウムイオン電池1の温度Tを読込み(S9)、温度Tが、リチウムイオン電池1の充放電が可能な上限温度より低い例えば30℃以下であるか否かを判定する(S11)。温度Tが30℃以下でなければ、温度検出器11が検出したリチウムイオン電池1の温度Tを再度読込む(S9)。
制御部10は、温度Tが30℃以下であれば(S11)、スイッチ13をオフにして(S1)、リチウムイオン電池1の冷却を停止した後、温度検出器11が検出したリチウムイオン電池1の温度Tを読込む(S3)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電源装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】単位リチウムイオン電池、放熱基板及び単位熱電変換素子の構成例を示す模式図である。
【図3】図1に示す電源装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図4】リチウムイオン電池の充電可能温度範囲及び放電可能温度範囲を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 リチウムイオン電池(第2バッテリ)
1a 単位リチウムイオン電池
2,8 負荷(電気負荷)
4,6 電圧検出器
5 DC/DCコンバータ(昇圧手段)
7 オルタネータ(車載発電機、交流発電機)
9 鉛蓄電池(第1バッテリ)
10 制御部
11 温度検出器
12 熱電変換素子
12a 単位熱電変換素子
13 スイッチ
14 放熱基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力を昇圧する昇圧手段と、該昇圧手段が昇圧した電力により充電され、1又は複数の他の電気負荷に電力を供給し、放熱部材を通じて放熱する第2バッテリとを備える電源装置において、
通電時に前記放熱部材から吸熱する熱電変換素子と、前記第2バッテリの温度を検出する温度検出器と、該温度検出器が検出した温度が第1温度以上であるか否かを判定する手段と、該手段が第1温度以上であると判定したときに、前記車載発電機又は第1バッテリから前記熱電変換素子に通電する通電手段とを備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記通電手段が通電しているときに、前記温度検出器が検出した温度が、前記第1温度より低い第2温度以下であるか否かを判定する手段を更に備え、該手段が第2温度以下であると判定したときは、前記通電手段の通電を停止するように構成してある請求項1記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−226617(P2008−226617A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62436(P2007−62436)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】