説明

電源装置

【課題】2組の電池ブロックの電池電圧を別々の電圧管理ICで検出しながら、各電池ブロックの残容量のアンバランスを解消する。
【解決手段】電源装置は、プラス側の電池ブロック1Aとマイナス側の電池ブロック1Bとを中間基準点5で直列に接続しているバッテリ1と、バッテリ1の直列毎の電池2の電圧を検出する電圧検出回路3とを備える。電圧検出回路3は、中間基準点5に対し、プラス側の電池ブロック1Aの電池2の電圧を管理するプラス側の電圧管理IC4Aと、マイナス側の電池ブロック1Bの電池2の電圧を管理するマイナス側の電圧管理IC4Bとを備える。プラス側とマイナス側の電圧管理IC4は、プラス側とマイナス側の電源ライン8を、バッテリ1のプラス側とマイナス側の出力に接続して、全ての電池2から電力を供給すると共に、各々の電圧管理IC4のグランドラインを共通としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具用電源やバックアップ電源用の電源装置に関し、とくに、多数の電池を直列に接続している電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具用電源やバックアップ電源用の電源装置は、出力を大きくするために、多数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている。電源装置の出力がバッテリの電圧と電流の積に比例するからである。たとえば、多数の二次電池を直列に接続している電動工具では最大42V、バックアップ電源では最大57Vと出力電圧を高くしている。二次電池をニッケル−水素電池とする電源装置は、複数のニッケル−水素電池を直列に接続して電池モジュールとし、さらに電池モジュールを直列に接続して出力電圧を高くしている。また、二次電池をリチウムイオン二次電池とする電源装置は、電池モジュールを1個のリチウムイオン二次電池とし、これを多数に直列に接続して出力電圧を高くしている。
【0003】
多数の電池モジュールを直列に接続している電源装置は、全体の電池を複数組の電池ブロックに分割している。複数組の電池ブロックは、中間基準点で直列に接続している。多数の電池モジュールを直列に接続している電源装置は、各々の電池電圧を検出して充放電をコントロールしている。直列毎の各電池の過充電と過放電を防止するためである。電池は、過充電と過放電で電気特性が著しく低下する性質がある。この弊害を防止するために、各々の電池ブロックを構成する各電池の電圧をモジュール毎に分割して検出する回路を備える電源装置は開発されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−282159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電源装置の回路図を図1に示す。この電源装置は、2組の電池ブロック91A、91Bの電池モジュール92に、電圧を検出する電圧管理IC94を接続している。電圧管理IC94は、中間基準点95に対してプラス側の電圧管理IC94Aと、マイナス側の電圧管理IC94Bからなり、プラス側の電圧管理IC94Aは、中間基準点95のプラス側に接続している電池モジュール92の電圧を検出し、マイナス側の電圧管理IC94Bは、中間基準点95のマイナス側に接続している電池モジュール92の電圧を検出する。電圧管理IC94は、電池ブロック91A、91Bから電力を供給して動作する。したがって、プラス側の電圧管理IC94Aは、中間基準点95のプラス側に接続している電池ブロック91Aから電力が供給される。マイナス側の電圧管理IC94Bは、マイナス側に接続している電池ブロック91Bから電力を供給している。プラス側とマイナス側の電圧管理IC94は、製造工程のバラツキ等が原因で消費電力を全く同じには製作できない。電圧管理IC94の消費電流の差は、プラス側とマイナス側の電池ブロック91A、91Bの放電量に差を発生させる。この放電差は、時間が経過するにしたがって累積されて、プラス側とマイナス側の電池ブロック91A、91Bの残容量をアンバランスにする。残容量がアンバランスな電池ブロックを直列に接続して充放電すると、残容量の小さい電池ブロックは過放電されやすく、反対に残容量の大きい電池ブロックは過充電される傾向が強くなる。両方の電池ブロックの過充電と過放電を防止しながら充放電すると、実質的に充放電できる容量が小さくなる。放電容量が残容量の小さい電池ブロックに制限され、また充電容量が残容量の大きい電池ブロックに制限されるからである。
【0005】
さらに、図1の電源装置は、プラス側とマイナス側の電圧管理IC94から出力される信号をレベルシフトする信号伝送回路97によっても、プラス側とマイナス側の電池ブロック91A、91Bに消費電流の差を発生して、これがプラス側とマイナス側の電池ブロック91A、91Bの残容量をアンバランスにする。プラス側の電圧管理IC94Aの信号伝送回路97が、両方の電池ブロック91A、91Bから電力を供給するのに対し、マイナス側の電圧管理IC94Bの信号伝送回路97が、マイナス側の電池ブロック91Bのみから電力を供給しているからである。これを避けるために、フォトカプラを始めとする受発光素子により、伝送部のアンバランスを防ぐことも可能だが、通信速度・消費電流・コストの面でデメリットがある。
【0006】
したがって、図1の電源装置は、時間が経過するにしたがって、2組の電池ブロック91A、91Bの残容量がアンバランスになる欠点がある。たとえば、電池モジュールの容量を2000mAhとし、プラス側とマイナス側の電圧管理ICの消費電流の差が20μAとした場合、1年間での消費電流の差は約175mAhとなって、両電池ブロックの残容量の差が約8.8%にもなる。
【0007】
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、2組の電池ブロックの直列毎の各電池電圧を別々の電圧管理ICで検出しながら、2組の電池ブロックの残容量のアンバランスを解消して、電池を充放電できる実質容量を大きくしながら、電池の寿命を長くできる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
電源装置は、複数の電池2を直列に接続しているプラス側の電池ブロック1Aと複数の電池2を直列に接続しているマイナス側の電池ブロック1Bとを中間基準点5で直列に接続しているバッテリ1と、バッテリ1の電池2の電圧を検出する電圧検出回路3とを備える。電圧検出回路3は、中間基準点5に対し、プラス側の電池ブロック1Aの直列毎の電池電圧を管理するプラス側の電圧管理IC4Aと、マイナス側の電池ブロック1Bの直列毎の電池電圧を管理するマイナス側の電圧管理IC4Bとを備える。プラス側の電圧管理IC4Aとマイナス側の電圧管理IC4Bは、プラス側とマイナス側の電源ライン8を、バッテリ1のプラス側とマイナス側の出力に接続して、全ての電池2が各々の電圧管理IC4に電力を供給すると共に、各々の電圧管理IC4のグランドラインを共通としている。
【0009】
本発明の電源装置は、プラス側とマイナス側の電圧管理IC4を、各々の電池2の電圧を検出する電圧検出回路3とすることができる。
【0010】
本発明の電源装置は、プラス側とマイナス側の電圧管理IC4を、電池2の過充電を検出すると過充電信号を出力し、また、電池2の過放電を検出すると過放電信号を出力することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電源装置は、2組の電池ブロックを構成する直列毎の各電池の電圧を別々の電圧管理ICで検出しながら、2組の電池ブロックの残容量のアンバランスの要因を解消できる特徴がある。それは、本発明の電源装置が、両方の電圧管理ICの電源ラインを、プラス側とマイナス側の電池ブロックを直列に接続しているバッテリのプラス側とマイナス側の出力に接続するため、全ての電池から均等に各々の電圧管理ICに電力を供給するからである。この電源装置は、2組の電池ブロックの残容量のアンバランスを解消できるので、電池を充放電できる実質容量を大きくできる。それは、両方の電池ブロックが一緒に過充電、または過放電されるので、残容量の小さい電池ブロックが放電容量を制限せず、また、残容量の大きい電池ブロックが充電容量を制限しないからである。また、各々の電池ブロックの残容量にアンバランスの要因がないことから、両方の電池ブロックの過充電や過放電による劣化を防止して、電池寿命を長くできる特徴も実現される。
【0012】
さらにまた、本発明の電源装置は、各々の電圧管理ICのグランドラインを共通にすることから、各々の電圧管理ICの出力信号をレベルシフトする必要がなく、出力信号を共通グランドラインの信号伝送回路で処理して出力できる特徴も実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0014】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0015】
図2の電源装置は、バッテリ1と、バッテリ1を構成する電池2の電圧を検出する電圧検出回路3とを備える。バッテリ1は、2組の電池ブロック、すなわちプラス側の電池ブロック1Aと、マイナス側の電池ブロック1Bを中間基準点5で直列に接続している。
【0016】
バッテリ1は、互いに直列に接続しているプラス側の電池ブロック1Aとマイナス側の電池ブロック1Bとからなる。プラス側の電池ブロック1Aは、中間接続点5のプラス側に接続され、マイナス側の電池ブロック1Bは、中間接続点5のマイナス側に接続している。
【0017】
図2の電源装置は、バッテリ1を、プラス側の電池ブロック1Aと、マイナス側の電池ブロック1Bの2ブロックに分割している。各々の直列毎の電池2の電圧を別々に検出するために、電圧検出回路3は、プラス側の電圧管理IC4Aと、マイナス側の電圧管理IC4Bからなる2組の電圧管理IC4を備える。各々の電圧管理IC4は、検出する電池2の電圧から、電池2の過充電と過放電を検出する判定回路6と、判定回路6の出力側に接続している信号伝送回路7とを備える。
【0018】
プラス側の電圧管理IC4Aとマイナス側の電圧管理IC4Bは、プラス側の電源ライン8A(Vcc)と、マイナス側の電源ライン8B(Vss)を、バッテリ1のプラス側とマイナス側の出力に接続して、全ての電池2を直列に接続しているバッテリ1から、各々の電圧管理IC4に電力を供給している。この電源装置は、各々の電圧管理IC4に、全ての電池2から電力を供給する。すなわち、各々の電圧管理IC4は、一方の電池ブロックの電池から電力を供給するのではない。したがって、全ての電池2から各々の電圧管理IC4に電力を供給するので、各々の電圧管理IC4の消費電力にアンバランスがあっても、電圧管理IC4に電力を供給することで、電池2に流れる電流差は発生しない。
【0019】
さらに、各々の電圧管理IC4は、グランドライン9をマイナス側の電源ライン8B(Vss)として、グランドライン9を共通としている。
【0020】
各々の電圧管理IC4は、各々の直列毎の電池2の電圧を検出して、電池2の過充電と過放電を防止する。電圧管理IC4は、各々の電池2の接続点11の電圧から電池2の電圧を検出する。電圧管理IC4は、全ての接続点11の電圧を検出して、全ての電池2の電圧を検出することができる。
【0021】
電圧管理IC4は、検出された直列毎の各電池2の電圧から、電池2の過充電と過放電を検出する。電池2の過充電と過放電は、電池2の電圧を設定電圧に比較して判定される。放電している電池2の電圧が最低電圧よりも低くなると、電池2が過放電される状態にあるとして、過放電信号を出力する。また、充電している電池2の電圧が最高電圧よりも高くなると、電池2が過充電される状態にあると判定して、過充電信号を出力する。
【0022】
また、電圧管理IC4は、電池2の電圧を検出して、電池2の満充電と完全に放電された状態を検出して、残容量の補正に使用することもできる。電池2の残容量は、電流を積算して演算されるが、電池2の電圧から残容量を補正することができる。
【0023】
2組の電池ブロックを直列に接続しているバッテリ1は、プラス側とマイナス側の電池2に同じ充放電電流が流れる。したがって、全ての電池2の充電量と放電量は同じになる。しかしながら、必ずしも全ての電池2の電気特性は全く同じではない。とくに、充放電の繰り返し回数が多くなると、各々の電池2は劣化する程度が異なって、満充電できる容量が変化する。この状態になると、満充電できる容量の減少した電池2は、過充電されやすく、また過放電もされやすくなる。電池2は、過充電と過放電で著しく電気特性が劣化するので、満充電できる容量が減少した電池が過充電や過放電されると急激に劣化してしまう。このため、バッテリ1は、多数の電池2を直列に接続しているが、各々の電池2の過充電と過放電を防止しながら、すなわち、電池2を保護しながら充放電することが大切となる。全ての電池2を保護しながら充放電するために、各々の電圧管理IC4は、電池2の電圧を検出している。
【0024】
たとえば、全体で14個の電池を直列に接続しているバッテリは、7個の電池を接続しているプラス側の電池ブロックと、7個の電池を接続しているマイナス側の電池ブロックに分割し、あるいは6個の電池を接続しているプラス側の電池ブロックと、8個の電池を接続しているマイナス側の電池ブロックのように、異なる個数に分割してトータルで14個となるように2ブロックに分割することができる。ここで、電池は、リチウムイオン電池を使用することができる。
【0025】
電圧管理IC4の判定回路6は、電池2の両端を接続している接続点11の電圧差から電池2の電圧を検出する。たとえば、図2において電池M1の電圧E1は、V1−V0として検出され、電池M2の電圧E2は、V2−V1で検出される。判定回路6は、入力側のマルチプレクサ12と、このマルチプレクサ12の出力側に接続しているA/Dコンバータ13と、A/Dコンバータ13から出力されるデジタルの電圧信号から、電池2の電圧を演算する制御回路14とを備える。マルチプレクサ12は、接続点11を順番に切り換えてA/Dコンバータ13に出力する。A/Dコンバータ13は、順番に切り換えられる接続点11の電圧を、アナログ信号からデジタル信号に変換して、制御回路14に入力する。制御回路14は、順番に入力される接続点11の電圧信号から、各々の電池2の電圧を検出し、検出された電池2の電圧から、過充電と過放電を判定する。ここで、マルチプレクサ12とA/Dコンバータ13の代わりに、基準電圧とコンパレータを用いても構成することができる。
【0026】
電圧管理IC4は、判定回路6から出力される過放電信号と過充電信号を、信号伝送回路7から外部に出力する。信号伝送回路7は、2組のOR回路15を備える。プラス側の電圧管理IC4Aの信号伝送回路7は、OR回路15の一方の入力側を判定回路6の出力に接続している。マイナス側の電圧管理IC4Bの信号伝送回路7は、OR回路15の一方の入力側をプラス側の電圧管理IC4Aの出力側に、他方の入力側をマイナス側の電圧管理IC4Bの判定回路6の出力側に接続している。プラス側の信号伝送回路7は、判定回路6から入力される過放電信号又は過充電信号を、マイナス側の信号伝送回路7に入力する。マイナス側の信号伝送回路7は、プラス側の判定回路6、またはマイナス側の判定回路6の一方又は両方から、過放電信号又は過充電信号が入力されると、過放電信号と過充電信号を出力する。この電圧検出回路3は、いずれかの電池2が過放電又は過充電状態になると、マイナス側の電圧管理IC4Bから、過放電信号又は過充電信号が出力される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の電源装置のブロック回路図である。
【図2】本発明の電源装置のブロック回路図である。
【符号の説明】
【0028】
1…バッテリ 1A…プラス側の電池ブロック
1B…マイナス側の電池ブロック
2…電池
3…電圧検出回路
4…電圧管理IC 4A…プラス側の電圧管理IC
4B…マイナス側の電圧管理IC
5…中間基準点
6…判定回路
7…信号伝送回路
8…電源ライン 8A…プラス側の電源ライン
8B…マイナス側の電源ライン
9…グランドライン
11…接続点
12…マルチプレクサ
13…A/Dコンバータ
14…制御回路
15…OR回路
91A…電池ブロック
91B…電池ブロック
92…電池モジュール
94…電圧管理IC 94A…プラス側の電圧管理IC
94B…マイナス側の電圧管理IC
95…中間基準点
97…信号伝送回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池(2)を直列に接続しているプラス側の電池ブロック(1A)と複数の電池(2)を直列に接続しているマイナス側の電池ブロック(1B)とを中間基準点(5)で直列に接続しているバッテリ(1)と、バッテリ(1)の直列毎の電池(2)の電圧を検出する電圧検出回路(3)とを備え、電圧検出回路(3)が、中間基準点(5)に対し、プラス側の電池ブロック(1A)の電池(2)の電圧を管理するプラス側の電圧管理IC(4A)と、マイナス側の電池ブロック(1B)の電池(2)の電圧を管理するマイナス側の電圧管理IC(4B)とを備える電源装置であって、
プラス側の電圧管理IC(4A)とマイナス側の電圧管理IC(4B)が、プラス側とマイナス側の電源ライン(8)を、バッテリ(1)のプラス側とマイナス側の出力に接続して、全ての電池(2)が各々の電圧管理IC(4)に電力を供給すると共に、各々の電圧管理IC(4)のグランドラインを共通としてなる電源装置。
【請求項2】
中間基準点(5)に対し、プラス側とマイナス側の電圧管理IC(4)が、各々の電池(2)の電圧を検出する電圧検出回路(3)である請求項1に記載される電源装置。
【請求項3】
中間基準点(5)に対し、プラス側とマイナス側の電圧管理IC(4)が、電池(2)の過充電を検出すると過充電信号を出力し、また、電池(2)の過放電を検出すると過放電信号を出力する請求項1又は2に記載される電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−67520(P2008−67520A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243330(P2006−243330)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】