説明

電源装置

【課題】少ない作業工数で組み立てることができる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、一端に正の電極8、他端に負の電極7が設けられた複数の電池4と、複数の電池4を直列接続するバスバモジュール3と、を有している。バスバモジュール3は、互いに隣り合う電池4の互いに隣り合う電極7,8それぞれに接続される一対の接続部91,92とこれら一対の接続部91,92同士を連結した連結部90とを有する複数のバスバ9と、電極7,8と接続部91,92とを挟持することでこれら電極7,8と接続部91,92とを電気的に接続する複数の端子16,17と、複数のバスバ9と複数の端子16,17とを取り付けたプレート10と、を有している。電極7,8は、平板状に形成され、かつ、バスバ9によって接続される電極7,8同士の厚み方向が互いに直交する向きで設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などには、前記電動モータの駆動源として、図13に示すような電源装置200(例えば特許文献1を参照。)が搭載される。
【0003】
図13に示す電源装置200は、一端に正の電極203、他端に負の電極204が設けられた複数の電池202と、互いの間に前記複数の電池202を挟む一対のエンドプレート205(一方のみを示す。)と、前記複数の電池202を直列接続するバスバモジュール210と、を有している。
【0004】
上記複数の電池202は、互いに隣り合う電池202同士の正の電極203と負の電極204とが互いに隣り合うように、一方向に沿って並べられている。また、前述した電極203,204は、図13中に示すナット217が螺合可能な雄ネジ状に形成されている。
【0005】
上記バスバモジュール210は、互いに隣り合う電池202同士の正の電極203と負の電極204とを電気的に接続する複数のバスバ216と、これらバスバ216と電極203,204とを固定する複数のナット217と、前記バスバ216を所定位置に位置決めする合成樹脂製のプレート211と、を有している。また、前述したバスバ216は、平板状の金属板に一対の貫通穴が設けられた構成である。これら一対の貫通穴には、互いに隣り合う電池202同士の正の電極203と負の電極204とが通される。
【0006】
前述した電源装置200を組み立てるには、まず、複数の電池202を前述したように一方向に沿って並べ、一対のエンドプレート205間に挟んで、図示しないバンド等を用いて複数の電池202と一対のエンドプレート205とを固定する。そして、互いに固定された複数の電池202の電極203,204が設けられた面にプレート211と複数のバスバ216とを重ねる。この際、バスバ216の一対の貫通穴それぞれに電極203,204を通すようにして重ねる。そして、前記貫通穴を通された電極203,204にナット217を螺合させることでバスバ216と電極203,204とを固定する。即ちバスバ216と電極203,204との電気接続状態を維持する。こうして電源装置200が組み立てられる。
【特許文献1】特開2004−31049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の電源装置200においては、バスバ216の貫通穴を通された電極203,204にナット217を螺合させることでバスバ216と電極203,204とを固定する構成であることから、電極203,204とナット217との締結箇所が多く、組み立て時の作業工数が多いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、少ない作業工数で組み立てることができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、一端に正の電極、他端に負の電極が設けられた複数の電池と、前記複数の電池を直列接続するバスバモジュールと、を有する電源装置において、前記バスバモジュールが、(イ)互いに隣り合う前記電池の互いに隣り合う前記電極それぞれに接続される一対の接続部とこれら一対の接続部同士を連結した連結部とを有する複数のバスバと、(ロ)前記電極と前記接続部とを挟持することでこれら電極と接続部とを電気的に接続する複数の挟持部材と、(ハ)前記複数のバスバと前記複数の挟持部材とを取り付けたプレートと、を有していることを特徴とする電源装置である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記挟持部材が、前記電極と前記接続部とを互いに重ね合わせた状態でこれら電極と接続部とを弾性的に挟持するクリップであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記挟持部材が、前記電極と前記接続部とを内側に位置付ける筒状の筒部と、前記電極と前記接続部とを前記筒部の内表面に向かって付勢する付勢部と、を有する導電性の端子であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のうち1項に記載された発明において、前記バスバモジュールが、前記電池の電圧を検出する電圧検出回路に接続された電線と接続可能であり、かつ、前記挟持部材に一体成形された電線接続部をさらに有していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のうち1項に記載された発明において、前記バスバモジュールが、前記電池の電圧を検出する電圧検出回路に接続された電線と接続可能であり、かつ、前記電極及び前記接続部とともに前記挟持部材に挟持される電線接続部材をさらに有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載された発明は、請求項1ないし請求項5のうち1項に記載された発明において、前記電極が平板状に形成され、そして、前記バスバによって接続される前記電極同士の厚み方向が互いに直交する向きで当該電極が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、前記バスバモジュールが、(イ)互いに隣り合う前記電池の互いに隣り合う前記電極それぞれに接続される一対の接続部とこれら一対の接続部同士を連結した連結部とを有する複数のバスバと、(ロ)前記電極と前記接続部とを挟持することでこれら電極と接続部とを電気的に接続する複数の挟持部材と、(ハ)前記複数のバスバと前記複数の挟持部材とを取り付けたプレートと、を有しているので、バスバモジュールを複数の電池に重ねてこれら電池に組み付けることで、複数のバスバの複数の接続部と複数の電池の複数の電極とを対応する各挟持部材に一括で差し込むこと、即ち複数のバスバの複数の接続部と複数の電池の複数の電極とを一括で電気的に接続すること、ができ、そのために、少ない作業工数で組み立てることができる電源装置を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、前記挟持部材が、前記電極と前記接続部とを互いに重ね合わせた状態でこれら電極と接続部とを弾性的に挟持するクリップであるので、少ない作業工数で組み立てることができる電源装置を提供することができる。また、電極に位置ずれが生じた場合でも、クリップが弾性変形することで前記位置ずれを吸収することができる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、前記挟持部材が、前記電極と前記接続部とを内側に位置付ける筒状の筒部と、前記電極と前記接続部とを前記筒部の内表面に向かって付勢する付勢部と、を有する導電性の端子であるので、少ない作業工数で組み立てることができる電源装置を提供することができる。また、電極に位置ずれが生じた場合でも、付勢部が弾性変形することで前記位置ずれを吸収することができる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、前記バスバモジュールが、前記電池の電圧を検出する電圧検出回路に接続された電線と接続可能であり、かつ、前記挟持部材に一体成形された電線接続部をさらに有しているので、挟持部材をプレートに取り付けることで電線接続部を前記プレートに取り付けることができ、そのために、さらに少ない作業工数で組み立てることができる部品点数の少ない電源装置を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、前記バスバモジュールが、前記電池の電圧を検出する電圧検出回路に接続された電線と接続可能であり、かつ、前記電極及び前記接続部とともに前記挟持部材に挟持される電線接続部材をさらに有しているので、電線接続部材を挟持部材に差し込むことで該電線接続部材を容易にプレートに取り付けることができ、そのために、さらに少ない作業工数で組み立てることができる部品点数の少ない電源装置を提供することができる。
【0020】
請求項6に記載された発明によれば、前記電極が平板状に形成され、そして、前記バスバによって接続される前記電極同士の厚み方向が互いに直交する向きで当該電極が設けられているので、バスバによって接続される電極同士の相対的な位置ずれ量を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電源装置を、図1ないし図7を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る電源装置を示す斜視図である。図2は図1に示された電源装置の分解図である。図3は図1に示された電源装置の複数の電池の接続順序を模式的に示す模式図である。図4は図1に示された電源装置のバスバモジュールの要部拡大図である。図5は図4に示されたバスバモジュールを、一部のバスバ取付部を非表示にして示す斜視図である。図6は図5に示されたバスバ、挟持部材、電線接続部、電極の一部を示す斜視図である。図7は、図1に示された本発明の電源装置の作用効果を説明するための説明図であり、(a)はバスバによって接続される一対の電極各々の厚み方向が平行になる向きで当該電極を設けた構成における前記一対の電極が正規位置に位置付けられた状態を示す図であり、(b)は(a)に示された一対の電極がそれぞれ位置ずれして最も離れた位置に位置付けられた状態を示す図であり、(c)は図1に示された本発明のバスバによって接続される一対の電極が正規位置に位置付けられた状態を示す図であり、(d)は(c)に示された本発明の一対の電極が公差範囲内でそれぞれ位置ずれした状態を示す図である。
【0022】
図1に示す電源装置1は、電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などに搭載され、前記電動モータに電力を供給するものである。この電源装置1は、電池集合体2と、バスバモジュール3と、を有している。
【0023】
上記電池集合体2は、2列に並べられた複数の電池4と、これら2列に並べられた複数の電池4を互いの間に挟む合成樹脂製の一対のエンドプレート5と、帯板状に形成され、一端が一方のエンドプレート5に取り付けられ、かつ、他端が他方のエンドプレート5に取り付けられることで、2列に並べられた複数の電池4と一対のエンドプレート5とを固定する複数のバンド6と、を有している。また、図1中の矢印Xは、各列における複数の電池4の並び方向、及び、各電池4の厚み方向を示し、矢印Zは、一方の前記列と他方の前記列との並び方向、及び、各電池4の幅方向を示し、矢印Yは、各電池4の高さ方向を示している。
【0024】
また、各電池4は、方体状の電池本体40と、この電池本体40の上面40aから突出した一対の電極7,8と、を有している。また、前記「上面40a」とは、電池本体40の矢印Y方向の一端に位置する平らな面を意味する。また、一対の電極7,8は、上面40aの矢印Z方向の一端及び他端からそれぞれ矢印Y方向に突出している。また、一対の電極7,8のうちの電極7は負極であり、電極8は正極である。さらに、前述したように2列に並べられた複数の電池4は、図3に示すように、互いに隣り合う電池4同士の正の電極8と負の電極7とが互いに隣り合うように並べられている。また、図3中の一点鎖線Aは、電流方向を示している。
【0025】
また、上記電極7,8は、それぞれ、導電性の金属により平板状に形成されている。さらに、複数の電池4の複数の電極7,8は、後述のバスバ9によって接続される一組の電極7,8同士の厚み方向が互いに直交する向きでそれぞれ設けられている。
【0026】
上記バスバモジュール3は、主に前述した複数の電池4を直列接続するものであり、図2に示すように、複数のバスバ9と、挟持部材としての複数の端子16,17と、前記端子16に一体成形された電線接続部19と、合成樹脂製のプレート10と、電池集合体2における電池4各々の電圧、及び、直列接続された全ての電池4の総電圧、及び、直列接続された全ての電池4の中間電圧などを検出する電圧検出回路(不図示)に接続されたコネクタ15と、一端が前記コネクタ15を介して前記電圧検出回路に接続され、かつ、他端が前記電線接続部19に接続された複数の電線14と、を有している。また、前記電線14は、芯線と該芯線を被覆した絶縁被覆とを有する周知の被覆電線である。
【0027】
上記複数のバスバ9は、導電性の金属板にプレス加工が施されるなどして得られるものである。各バスバ9は、図4ないし図6に示すように、互いに隣り合う電池4の互いに隣り合う電極7,8それぞれに接続される一対の平板状の接続部91,92と、これら一対の接続部91,92同士を連結した平板状の連結部90と、を一体に有している。また、一対の接続部91,92は、当該接続部91,92各々の厚み方向が互いに直交する向きで連結部の縁から立設している。
【0028】
上記端子17は、電極7または電極8と接続部91または接続部92との双方を挟持することで、電極7または電極8と接続部91または接続部92とを電気的に接続する挟持部18を有している。この挟持部18は、導電性の金属板にプレス加工が施されるなどして得られるものであり、電極7または電極8と接続部91または接続部92との双方を内側に位置付ける角筒状の筒部18aと、電極7または電極8と接続部91または接続部92とを筒部18aの内表面に向かって付勢するバネ状の付勢部18bと、を一体に有している。
【0029】
また、上記挟持部18は、図6に示すように、筒部18aの一方の開口部から矢印B方向に沿って接続部91または接続部92を受け入れ、筒部18aの他方の開口部から矢印C方向に沿って電極7または電極8を受け入れる。また、矢印B方向と矢印C方向とは、互いに逆方向であり、筒部18aの軸方向と平行である。
【0030】
上記端子16は、図6に示すように、前述した挟持部18と、上記電線接続部19と、これら挟持部18と電線接続部19とを連結した連結板部20と、を一体に有している。
【0031】
上記電線接続部19は、図4及び図6に示すように、スリット19aを有する音叉型に形成されている。この電線接続部19は、スリット19a内に上記電線14を挟むことで、該電線14の絶縁被覆に切り込んで、当該電線14の芯線と電気的に接続する。
【0032】
このように、バスバモジュール3は、挟持部18のみを有する端子17と、挟持部18と電線接続部19とを有する端子16と、を複数個ずつ有している。
【0033】
上記プレート10は、複数の第1取付部11と、複数の第2取付部12と、複数の第3取付部13と、を一体に有している。前記第1取付部11は、1つのバスバ9と、このバスバ9の一対の接続部91,92をそれぞれ挟持した一対の端子16,17と、を取り付ける。また、前記第2取付部12は、端子16の電線接続部19と連結板部20とを取り付ける。また、前記第3取付部13は、複数の電線14とコネクタ15とを取り付ける。
【0034】
前述した構成の電源装置1は、電池集合体2とバスバモジュール3とが別々に組み立てられ、そして、組み立てられた電池集合体2の矢印Y方向の一端に位置する天上面に、組み立てられたバスバモジュール3が重ねられることで組み立てられる。
【0035】
また、バスバモジュール3を組み立てる際は、まず、プレート10の第1取付部11に一対の端子16,17を嵌め込むとともに、第2取付部12に電線接続部19と連結板部20とを嵌め込む。続いて、一対の端子16,17各々の挟持部18にバスバ9の一対の接続部91,92をそれぞれ差し込むようにして該バスバ9を第1取付部11に嵌め込む。そして、コネクタ15及び複数の電線14を第3取付部13に取り付け、かつ、電線14を電線接続部19のスリット19a内に差し込んで電線14と電線接続部19とを接続する。こうしてバスバモジュール3が組み立てられる。
【0036】
さらに、前述した手順で組み立てられたバスバモジュール3が前述したように電池集合体2の前記天上面に重ねられることで、挟持部18に電極7,8が差し込まれ、挟持部18が電極7,8と接続部91,92とを挟持する格好でこれら電極7,8と接続部91,92とを電気的に接続する。こうして、挟持部18即ち端子16,17を介して電極7,8と接続部91,92、即ち電池4とバスバ9、が電気接続されて、複数の電池4が直列接続される。
【0037】
このように、本発明では、前述した構成のバスバモジュール3を有しているので、バスバモジュール3を電池集合体2に重ねてこの電池集合体2に組み付けることで、複数のバスバ9の複数の接続部91,92と複数の電池4の複数の電極7,8とを対応する各端子16,17の挟持部18に一括で差し込むこと、即ち複数のバスバ9の複数の接続部91,92と複数の電池4の複数の電極7,8とを一括で電気的に接続すること、ができ、そのために、少ない作業工数で組み立てることができる電源装置1を提供することができる。
【0038】
また、本発明では、端子16に一体成形された電線接続部19を有しているので、端子16をプレート10に取り付けることで電線接続部19を前記プレートに取り付けることができ、そのために、さらに少ない作業工数で組み立てることができる部品点数の少ない電源装置1を提供することができる。
【0039】
また、本発明では、電線接続部19が前述したように音叉型に形成されているので、電線14をスリット19aに差し込むことで、容易に電線接続部19と電線14とを電気的に接続することができる。また、このように容易な作業によって電線接続部19と電線14とを電気的に接続することができるので、当該作業を自動化することも可能になる。
【0040】
また、本発明では、電極7,8に位置ずれが生じた場合でも、付勢部18bが弾性変形することで前記位置ずれを吸収することができる。
【0041】
ところで、図7の説明図の(a)、(b)に示すように、平板状に形成された電極308,307は、その厚み方向に位置ずれが生じ易い特性がある。また、図7の説明図の(a)、(b)に示す符号309は、互いに隣り合う前記電極308,307にそれぞれ接続する一対の接続部392,391と、これら一対の接続部392,391同士を連結した連結部390と、を有する比較例としてのバスバである。また、一点鎖線P1は、前記電極308,307が正規位置に位置付けられた状態での電極308,307の厚み方向の中心を通る中心線を示している。
【0042】
前記電極308,307は、それぞれの位置ずれ量は小さくても、例えば、一方の電極308が図7の説明図の(a)中に示す矢印D方向に位置ずれし、他方の電極307が矢印Dとは逆の矢印E方向に位置ずれした場合、電極308と電極307との間には、図7の説明図の(b)に示すように、最大間隔dが生じてしまう。このように最大間隔dが生じると、例え本発明の端子16,17を用いたとしても、これら端子16,17が互いに最も離れた電極308,307を挟持できない可能性がある。また、前記バスバ309は、多少の追従性は有しているが、電極308と電極307との間に最大間隔dが生じると、他方の接続部391が他方の電極307に重ならず、当該バスバ309と電極307とが電気的に接続できない可能性がある。
【0043】
この点において、本発明では、図7の説明図の(c)、(d)に示すように、平板状に形成された電極7,8が、バスバ9によって接続される一組の電極7,8同士の厚み方向が互いに直交する向きで設けられているので、同図に示すように、バスバ9によって接続される一組の電極7,8同士の相対的な位置ずれ量を小さくすることができる。また、図7の説明図の(c)、(d)中に示す一点鎖線P2は、前記電極8が正規位置に位置付けられた状態での電極8の厚み方向の中心を通る中心線を示している。また、一点鎖線P3は、前記電極7が正規位置に位置付けられた状態での電極7の厚み方向の中心を通る中心線を示している。
【0044】
即ち、本発明では、例えば、一方の電極8が図7の説明図の(c)中に示す矢印F方向に位置ずれし、他方の電極7が矢印Fと直交する矢印G方向に位置ずれした場合、電極7と電極8との矢印F方向の相対的な位置ずれ量は、ほぼ電極8のみに起因し、電極7にほとんど影響されない。同様に、電極7と電極8との矢印G方向の相対的な位置ずれ量は、ほぼ電極7のみに起因し、電極8にほとんど影響されない。その結果、本発明では、端子16,17が位置ずれした電極8,7を挟持できないという事態を回避することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る電源装置を、図8及び図9を参照して説明する。図8は本発明の第2の実施形態に係る電源装置を構成する挟持部材及び電線接続部を示す斜視図である。図9は本発明の第2の実施形態に係る電源装置の組み立て方法を説明する説明図であり、(a)は電極及び接続部と挟持部材とが分離した状態を示す図であり、(b)は(a)に示された接続部が挟持部材に挟持された状態を示す図であり、(c)は(b)に示された電極が接続部と重ねられて挟持部材に挟持された状態を示す図である。また、図8及び図9において、前述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態の電源装置1’は、電池集合体2と、バスバモジュール3’と、を有している(図9を参照。)。このバスバモジュール3’は、複数のバスバ9’と、挟持部材としての複数のクリップ21,24と、前記クリップ21に一体成形された電線接続部23と、合成樹脂製のプレート10’と、図示しないコネクタと、一端が前記コネクタを介して前記電圧検出回路に接続され、かつ、他端が前記電線接続部23に接続された複数の電線14と、を有している。
【0047】
上記バスバ9’は、一対の接続部91,92にそれぞれ打ち出し部91a,92aが設けられていること以外は前述したバスバ9と同一の構成である。前記打ち出し部91a,92aは、接続部91,92にエンボス加工が施されることによって設けられた半球状の突起である。この打ち出し部91a,92aが設けられていることにより、接続部91,92は、クリップ21,24に挟持された状態で、該クリップ21,24から容易に外れない構造となっている。
【0048】
上記クリップ21は、導電性の金属板にプレス加工が施されるなどして得られるものであり、図8に示すように、電極7または電極8と接続部91または接続部92との双方を挟持することで、電極7または電極8と接続部91または接続部92とを電気的に接続するクリップ本体22と、上記電線接続部23と、を一体に有している。
【0049】
上記クリップ本体22は、C字状に形成されたC字部22aと、このC字部22aの両端部にそれぞれ連なり、互いに離れる方向に反り返った一対の返し部22bと、を有している。前記C字部22aは、両端部間の間隔が接続部91,92の厚み寸法よりも小さい状態から、両端部間の間隔が接続部91,92の厚み寸法と電極7,8の厚み寸法との和と等しい状態まで、弾性変形可能に形成されている。このようなクリップ本体22は、電極7または電極8と接続部91または接続部92とを互いに重ね合わせた状態でこれら電極7または電極8と接続部91または接続部92とを、C字部22aの両端部間に弾性的に挟持する。
【0050】
上記電線接続部23は、C字部22aに連なりかつ板状に延びた板部23aと、この板部23aの幅方向の両縁それぞれから立設した一対の圧着片23bと、を有している。この電線接続部23は、一対の圧着片23bが互いに内向きに曲げられて、板部23aの表面上に位置付けられた電線14の芯線を圧着することで、該芯線と電気的に接続する。また、本実施形態における電線14は、電線接続部23に接続される端部において、絶縁被覆が除去されて芯線が露出している。
【0051】
上記クリップ24は、前述したクリップ本体22のみを有している。
【0052】
上記プレート10’は、複数の取付部25を一体に有している。この取付部25は、クリップ21,24のクリップ本体22を弾性変形自在に取り付ける。また、このクリップ本体22は、接続部91,92を挟持することでバスバ9’をプレート10’に取り付ける。
【0053】
前述した構成の電源装置1’は、電池集合体2とバスバモジュール3’とが別々に組み立てられ、そして、組み立てられた電池集合体2の前記天上面に、組み立てられたバスバモジュール3’が重ねられることで組み立てられる。
【0054】
また、バスバモジュール3’を組み立てる際は、予めクリップ21の電線接続部23と電線14とを接続しておき、図9(a)に示すように、プレート10’の取付部25にクリップ21,24のクリップ本体22を嵌め込む。続いて、図9(b)に示すように、クリップ本体22にバスバ9’の一対の接続部91,92をそれぞれ差し込むようにして該バスバ9’をプレート10’に取り付ける。こうしてバスバモジュール3’が組み立てられる。
【0055】
さらに、前述した手順で組み立てられたバスバモジュール3’が前述したように電池集合体2の前記天上面に重ねられることで、図9(c)に示すように、クリップ本体22に電極7,8が差し込まれ、クリップ本体22が電極7,8と接続部91,92とを互いに重ね合わせた状態で弾性的に挟持して、これら電極7,8と接続部91,92とを電気的に接続する。こうして、クリップ本体22即ちクリップ21,24によって電極7,8と接続部91,92、即ち電池4とバスバ9’、が電気接続されて、複数の電池4が直列接続される。
【0056】
このように、本発明では、電極7,8に位置ずれが生じた場合でも、クリップ本体22が弾性変形することで前記位置ずれを吸収することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る電源装置を、図10ないし図12を参照して説明する。図10は本発明の第3の実施形態に係る電源装置を構成する挟持部材及び電線接続部材を示す斜視図である。図11は図10に示された電線接続部材が電極及び接続部とともに挟持部材に挟持された状態を、プレートを非表示にして示す斜視図である。図12は本発明の第3の実施形態に係る電源装置の組み立て方法を説明する説明図であり、(a)は電極及び接続部並びに電線接続部材と挟持部材とが分離した状態を示す図であり、(b)は(a)に示された接続部及び電線接続部材が挟持部材に挟持された状態を示す図であり、(c)は(b)に示された電極が接続部及び電線接続部材と重ねられて挟持部材に挟持された状態を示す図である。また、図10ないし図12において、前述した第1,第2の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施形態の電源装置1’’は、電池集合体2と、バスバモジュール3’’と、を有している(図12を参照。)。このバスバモジュール3’’は、複数のバスバ9’と、挟持部材としての複数のクリップ22’と、電線接続部材23’と、合成樹脂製のプレート10’と、図示しないコネクタと、一端が前記コネクタを介して前記電圧検出回路に接続され、かつ、他端が前記電線接続部材23’に接続された複数の電線14と、を有している。
【0059】
上記クリップ22’は、前述したクリップ本体22と同一の構成である。
【0060】
上記電線接続部材23’は、図10及び図11に示すように、電極7,8及び接続部91,92とともにクリップ22’に挟持される板状の挟持板部23dと、この挟持板部23dの縁から板状に立設した立設板部23cと、この立設板部23cの幅方向の両縁それぞれから立設した一対の圧着片23bと、を有している。また、前記挟持板部23dには、打ち出し部23eが設けられている。この打ち出し部23eは、挟持板部23dにエンボス加工が施されることによって設けられた半球状の突起である。この打ち出し部23eが設けられていることにより、挟持板部23dは、クリップ22’に挟持された状態で、該クリップ22’から容易に外れない構造となっている。
【0061】
前述した構成の電源装置1’’は、電池集合体2とバスバモジュール3’’とが別々に組み立てられ、そして、組み立てられた電池集合体2の前記天上面に、組み立てられたバスバモジュール3’’が重ねられることで組み立てられる。
【0062】
また、バスバモジュール3’’を組み立てる際は、予め電線接続部材23’と電線14とを接続しておき、図12(a)に示すように、プレート10’の取付部25にクリップ22’を嵌め込む。続いて、図12(b)に示すように、クリップ22’にバスバ9’の一対の接続部91,92をそれぞれ差し込むようにして該バスバ9’をプレート10’に取り付ける。また、クリップ22’に電線接続部材23’の挟持板部23dを差し込むようにして該電線接続部材23’をプレート10’に取り付ける。こうしてバスバモジュール3’が組み立てられる。
【0063】
さらに、前述した手順で組み立てられたバスバモジュール3’’が前述したように電池集合体2の前記天上面に重ねられることで、図12(c)に示すように、クリップ22’に電極7,8が差し込まれ、クリップ22’が電極7,8と接続部91,92と挟持板部23dとを互いに重ね合わせた状態で弾性的に挟持して、これら電極7,8と接続部91,92と挟持板部23dとを電気的に接続する。こうして、クリップ22’によって電極7,8と接続部91,92、即ち電池4とバスバ9’、が電気接続されて、複数の電池4が直列接続される。
【0064】
このように、本発明では、電線接続部材23’の挟持板部23dをクリップ22’に差し込むことで該電線接続部材23’を容易にプレート10’に取り付けることができ、そのために、さらに少ない作業工数で組み立てることができる部品点数の少ない電源装置1’’を提供することができる。
【0065】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電源装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示された電源装置の分解図である。
【図3】図1に示された電源装置の複数の電池の接続順序を模式的に示す模式図である。
【図4】図1に示された電源装置のバスバモジュールの要部拡大図である。
【図5】図4に示されたバスバモジュールを、一部のバスバ取付部を非表示にして示す斜視図である。
【図6】図5に示されたバスバ、挟持部材、電線接続部、電極の一部を示す斜視図である。
【図7】図1に示された本発明の電源装置の作用効果を説明するための説明図であり、(a)はバスバによって接続される一対の電極各々の厚み方向が平行になる向きで当該電極を設けた構成における前記一対の電極が正規位置に位置付けられた状態を示す図であり、(b)は(a)に示された一対の電極がそれぞれ位置ずれして最も離れた位置に位置付けられた状態を示す図であり、(c)は図1に示された本発明のバスバによって接続される一対の電極が正規位置に位置付けられた状態を示す図であり、(d)は(c)に示された本発明の一対の電極が公差範囲内でそれぞれ位置ずれした状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る電源装置を構成する挟持部材及び電線接続部を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電源装置の組み立て方法を説明する説明図であり、(a)は電極及び接続部と挟持部材とが分離した状態を示す図であり、(b)は(a)に示された接続部が挟持部材に挟持された状態を示す図であり、(c)は(b)に示された電極が接続部と重ねられて挟持部材に挟持された状態を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る電源装置を構成する挟持部材及び電線接続部材を示す斜視図である。
【図11】図10に示された電線接続部材が電極及び接続部とともに挟持部材に挟持された状態を、プレートを非表示にして示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る電源装置の組み立て方法を説明する説明図であり、(a)は電極及び接続部並びに電線接続部材と挟持部材とが分離した状態を示す図であり、(b)は(a)に示された接続部及び電線接続部材が挟持部材に挟持された状態を示す図であり、(c)は(b)に示された電極が接続部及び電線接続部材と重ねられて挟持部材に挟持された状態を示す図である。
【図13】従来の電源装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1,1’,1’’ 電源装置
3,3’,3’’ バスバモジュール
4 電池
7,8 電極
9,9’ バスバ
10,10’ プレート
14 電線
16,17 端子(挟持部材)
18a 筒部
18b 付勢部
19,23 電線接続部
21,22’,24 クリップ(挟持部材)
23’ 電線接続部材
90 連結部
91,92 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に正の電極、他端に負の電極が設けられた複数の電池と、前記複数の電池を直列接続するバスバモジュールと、を有する電源装置において、
前記バスバモジュールが、
(イ)互いに隣り合う前記電池の互いに隣り合う前記電極それぞれに接続される一対の接続部とこれら一対の接続部同士を連結した連結部とを有する複数のバスバと、
(ロ)前記電極と前記接続部とを挟持することでこれら電極と接続部とを電気的に接続する複数の挟持部材と、
(ハ)前記複数のバスバと前記複数の挟持部材とを取り付けたプレートと、を有していることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記挟持部材が、前記電極と前記接続部とを互いに重ね合わせた状態でこれら電極と接続部とを弾性的に挟持するクリップであることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記挟持部材が、前記電極と前記接続部とを内側に位置付ける筒状の筒部と、前記電極と前記接続部とを前記筒部の内表面に向かって付勢する付勢部と、を有する導電性の端子であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記バスバモジュールが、前記電池の電圧を検出する電圧検出回路に接続された電線と接続可能であり、かつ、前記挟持部材に一体成形された電線接続部をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうち1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記バスバモジュールが、前記電池の電圧を検出する電圧検出回路に接続された電線と接続可能であり、かつ、前記電極及び前記接続部とともに前記挟持部材に挟持される電線接続部材をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうち1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電極が平板状に形成され、そして、前記バスバによって接続される前記電極同士の厚み方向が互いに直交する向きで当該電極が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうち1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−55885(P2010−55885A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218429(P2008−218429)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】