説明

電源装置

【課題】絶縁形直流−直流電力変換装置において、出力電圧範囲の広い条件にあっても、トランスへの還流電流を増大させることなく、装置の小型化・軽量化を図る。
【解決手段】直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記インバータの出力端に1次側が接続されたトランスと、前記トランス2次側に接続され、2つのダイオード直列回路と2つのコンデンサ直列回路を並列接続してなる倍電圧整流回路と、を備えた直流−直流電力変換装置において、第1のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の正極側に接続し、第2のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の中点に接続し、出力電圧の大きさによって、前記第1および第2のスイッチング素子を選択的に駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流−直流電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流−直流電力変換装置の制御方式の一つとして、図6に位相シフト制御方式と呼ばれる例を示す。図6において、インバータはスイッチング素子52、53を交互にオン・オフさせるとともに、スイッチング素子54、55をスイッチング素子52、53に対し位相差をもって交互にオン・オフさせる。この位相差により、トランス56へ印加する電圧パルス幅、すなわち負荷63に与える出力電圧の調整を行う。更に、位相シフト制御方式では、ZVS(ゼロ・ボルト・スイッチング=零電圧スイッチング)が可能であり、スイッチング損失を低減することができる。
位相シフト制御方式は、軽負荷時に適用すると、逆回復が発生してスイッチング損失が増加してしまう。この対策として、特許文献1のように、負荷電流に基づいて、軽負荷時においては、位相シフト制御方式からハードスイッチング方式へ制御を切り換えて素子損失を低減させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−178501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、一定出力電圧においては非常に効果的な方法であるが、出力電圧範囲の広い条件においては、出力電圧が低いとき、すなわちスイッチング素子54、55がスイッチング素子52、53に対し大きな位相差もって交互にオン・オフするため、スイッチング素子52、53、54、55およびトランス56の1次側巻線に通流する還流電流が増加してしまう。特に還流電流増加によるトランスの大型化により、装置全体の小型化、軽量化の妨げとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記インバータの出力端に1次側が接続されたトランスと、前記トランス2次側に接続され、2つのダイオード直列回路と2つのコンデンサ直列回路を並列接続してなる倍電圧整流回路と、を備えた直流−直流電力変換装置において、第1のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の正極側に接続し、第2のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の中点に接続し、前記トランスに出力される出力電圧の大きさによって、前記第1および第2のスイッチング素子を選択的に駆動させる。
本発明の直流−直流電力変換装置においては、出力電圧が前記コンデンサ直列回路の中点の電圧より小さい場合は、前記第1のスイッチング素子を常時オフし、前記第2のスイッチング素子をオン・オフ駆動させ、出力電圧が前記平滑コンデンサの電圧より大きい場合は、前記第2のスイッチング素子を常時オフし、前記第2のスイッチング素子をオン・オフ駆動させることも可能である。
なお、本発明の直流−直流電力変換装置においては、前記コンデンサ直列回路の中点に接続された第2のスイッチング素子は、逆阻止IGBTであってもよいし、ソース同士を接続した2つのパワーMOSFETから構成してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、定電力でかつ出力電圧範囲の広い条件においてトランスの小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態を示す回路構成図
【図2】位相シフト制御信号生成器の制御ブロック図
【図3】出力電圧が直流中間電圧の1/2以下であるときのトランス2次側回路の動作説明図
【図4】出力電圧が直流中間電圧の1/2以上であるときのトランス2次側回路の動作説明図
【図5】本発明に用いる、逆耐圧をもつ逆阻止IGBT、ソース同士を接続した2つのパワーMOSFETを示す図
【図6】位相シフト制御方式の従来構成図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に本発明における実施形態を示す。本実施形態では、直流電源1とスイッチング素子2〜5で構成されたインバータとトランス6と平滑リアクトル7と2つのダイオード8、9の直列回路と2つの平滑コンデンサ10、11の直列回路を並列接続させて構成した倍電圧整流器と、平滑コンデンサ10、11の直列回路の中点Mに接続されたスイッチング素子12と平滑コンデンサ10、11の直列回路の正極側Pに接続されたスイッチング素子13と還流ダイオード14と降圧リアクトル15と平滑コンデンサ16で構成された直流−直流電力変換回路と、直流中間電圧検出器より検出される直流中間電圧Edcに基づき位相シフト制御信号を生成する位相シフト制御信号生成器17、出力電圧検出器より検出される出力電圧Voに基づきスイッチング素子12および13のスイッチング素子制御信号を生成するスイッチング素子制御信号生成器18より構成される。
【0009】
本構成では、直流電源1により入力される直流電圧を、インバータにより交流出力に変換されトランス6を介して倍電圧整流器で直流中間電圧Edcに変換され、変換された直流中間電圧を直流−直流電力変換回路により任意の直流出力電圧Voを出力する。そのため、直流出力電圧が低い場合でも位相シフト制御方式のインバータスイッチングパルスの位相差は大きくなることはない。そのため、トランス6の1次側巻線の還流電流が増加することがなくなり、トランスを小型化できる。
【0010】
次に、各電力変換器の制御について説明する。インバータは、位相シフト制御信号生成器17により直流中間電圧Edcに基づきスイッチングパルスの位相差を決め、スイッチング素子2〜5をオン・オフさせる。図2を用いて位相シフト制御信号生成器17の動作について説明する。直流中間電圧指令Edc*と直流中間電圧の検出値Edcとの差分をとり電圧調整器19に入力してインバータの出力電圧指令Vinvを得る。位相シフト量調整器20により、スイッチング素子4、5がスイッチング素子2、3に対して出力電圧指令Vinv応じた位相差をもつようスイッチングパルスを生成する。位相シフト量調整器20で得られたスイッチングパルスをスイッチング素子2〜5に入力することでインバータを制御することが出来る。
【0011】
次に直流−直流電力変換回路について説明する。直流−直流電力変換回路では、スイッチング損失の低減を目的として所望する直流出力電圧Voの大きさにより2通りの動作を行う。まず、直流中間電圧Edcと直流出力電圧Voの関係がVo<Edc/2であるときの回路動作について図3を用いて説明する。図3(a)において、(1)のループはスイッチング素子12がオンしているときの通電経路、(2)のループはスイッチング素子12がオフしているときの通電経路をそれぞれ示している。図3(b)は図3(a)の動作における電圧電流波形である。スイッチング素子12がオンしているとき、平滑コンデンサ16に流れる電流Ioは降圧リアクトル15を介して増加する。一方、スイッチング素子12がオフしているとき、平滑コンデンサ16に流れる電流Ioは降圧リアクトル15に蓄えられたエネルギーにより還流ダイオード14を通じて還流し、減衰する。すなわち、降圧チョッパとして動作させることできる。この降圧チョッパは、直流出力電圧Voに基づきスイッチング素子制御信号生成器18がスイッチングパルスをスイッチング素子12に出力し、直流出力電圧Voが一定になるように制御を行う。このとき、スイッチング素子13はオフしておく。
【0012】
次に、直流中間電圧Edcと直流出力電圧Voの関係がVo≧Edc/2であるときの回路動作について図4を用いて説明する。図4(a)において、(1)のループはスイッチング素子13がオンしているときの通電経路、(2)のループはスイッチング素子13がオフしているときの通電経路をそれぞれ示している。図4(b)は図4(a)の動作における電圧電流波形である。スイッチング素子13がオンしているとき、平滑コンデンサ16に流れる電流Ioは降圧リアクトル15を介して増加する。一方、スイッチング素子13がオフしているとき、平滑コンデンサ16に流れる電流Ioは、降圧リアクトル15に蓄えられたエネルギーにより還流ダイオード14を通じて還流し、減衰する。すなわち、Vo<Edc/2の関係であったときと同様に、降圧チョッパとして動作させることできる。この降圧チョッパは、直流出力電圧Voに基づきスイッチング素子制御信号生成器18がスイッチングパルスをスイッチング素子13に出力し、直流出力電圧Voが一定になるように制御を行う。このとき、スイッチング素子12はオフしておく。
【0013】
上記のように、直流−直流電力変換回路を動作させると、スイッチング素子12に印加される電圧の大きさは、スイッチング素子13に印加される電圧の大きさの約1/2となるため、Vo<Edc/2動作時は、スイッチング素子13で常に動作した場合、つまりVo≧Edc/2の動作時よりもスイッチング損失をほぼ半減させることができる。
なお、スイッチング素子12にはVo>Edc/2であるとき逆電圧が印加されるため、図5のように逆耐圧をもつ逆阻止IGBTかソース同士を接続した2つのパワーMOSFETを用いる。2つのパワーMOSFETをスイッチング素子12として用いる場合は、パワーMOSFET12bをオン・オフさせている間は、パワーMOSFET12cを常時オンにしておけば同期整流効果が得られるため、単にダイオードを接続した場合に比べて導通損失を低減することが可能となる。すなわち、パワーMOSFETのオン抵抗は、一般的にダイオードよりも小さく、電流通流による電圧降下が小さくなることから、整流効率が高まる。
【符号の説明】
【0014】
1…直流電源、2、3、4、5…スイッチング素子、6…トランス、7…平滑リアクトル、8、9…ダイオード、10、11、16…平滑コンデンサ、12…第2のスイッチング素子、13…第1のスイッチング素子、14…還流ダイオード、15…降圧リアクトル、17…位相シフト制御信号生成器、18…スイッチング素子制御信号生成器、19…電圧調整器、20…位相シフト量調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記インバータの出力端に1次側が接続されたトランスと、
前記トランス2次側に接続され、2つのダイオード直列回路と2つのコンデンサ直列回路を並列接続してなる倍電圧整流回路と、を備えた直流−直流電力変換装置において、
第1のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の正極側に接続し、
第2のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の中点に接続し、
出力電圧の大きさによって、前記第1および第2のスイッチング素子を選択的に駆動させるようにしたことを特徴とする直流−直流電力変換装置。
【請求項2】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記インバータの出力端に1次側が接続されたトランスと、
前記トランス2次側に接続され、2つのダイオード直列回路と2つのコンデンサ直列回路を並列接続してなる倍電圧整流回路と、を備えた直流−直流電力変換装置において、
第1のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の正極側に接続し、
第2のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の中点に接続し、
出力電圧が前記コンデンサ直列回路の中点の電圧より小さい場合は、前記第1のスイッチング素子を常時オフし、前記第2のスイッチング素子をオン・オフ駆動させることを特徴とする直流−直流電力変換装置。
【請求項3】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記インバータの出力端に1次側が接続されたトランスと、
前記トランス2次側に接続され、2つのダイオード直列回路と2つのコンデンサ直列回路を並列接続してなる倍電圧整流回路と、を備えた直流−直流電力変換装置において、
第1のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の正極側に接続し、
第2のスイッチング素子を前記コンデンサ直列回路の中点に接続し、
出力電圧が前記コンデンサ直列回路の中点の電圧より大きい場合は、前記第2のスイッチング素子を常時オフし、前記第2のスイッチング素子をオン・オフ駆動させることを特徴とする直流−直流電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の直流−直流電力変換装置において、前記コンデンサ直列回路の中点に接続された第2のスイッチング素子は、逆阻止IGBTであることを特徴とする直流−直流電力変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の直流−直流電力変換装置において、前記コンデンサ直列回路の中点に接続された第2のスイッチング素子は、ソース同士を接続した2つのパワーMOSFETからなることを特徴とする直流−直流電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147527(P2012−147527A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2350(P2011−2350)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】