説明

電源装置

【課題】降圧チョッパ部のスイッチング素子が故障して短絡した場合に光源に過電流が流れるのを防止することのできる電源装置を提供する。
【解決手段】光源4と、チョークコイルT1及びスイッチング素子Q1を有し、当該スイッチング素子Q1のオン/オフを切り替えることにより直流電圧を降圧して光源4に点灯に必要な電圧を印加する降圧チョッパ部3と、調光信号に基づいてスイッチング素子Q1を駆動制御し、スイッチングオン期間とスイッチングオフ期間とを交互に繰り返して光源4を調光する調光制御部30と、ポジティブ型のサーミスタPTH1及びチョークコイルT1の2次巻線T11の誘起電圧を駆動電圧とするサイリスタTH1の並列回路を有する突入電流防止部5と、スイッチングオフ期間においてサイリスタTH1に駆動電圧を印加する補填部6を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを有する負荷に点灯電力を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電子機器の直流電源を構成する直流電源装置が知られており、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の従来例は、図8に示すように、交流電源100と、交流電源を整流する全波整流器101と、全波整流器101で整流された電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路102とを主要部として構成されている。なお、全波整流器101と昇圧チョッパ回路102との間に挿入されるコンデンサ103は、ノイズ除去用のコンデンサである。
【0003】
昇圧チョッパ回路102は、チョークコイル102Aと、ダイオード102Bと、スイッチング素子102Cと、スイッチング素子102CのON/OFF間隔を制御する制御回路102Dと、出力平滑用の電解コンデンサ102Eとを主要部として構成される。そして、この従来例では、全波整流器101で整流された直流電圧が昇圧チョッパ回路102を介することにより所定電圧まで昇圧される。
【0004】
この従来例では、交流電源100が投入された際の突入電流を制限する突入電流防止回路104が設けられている。突入電流防止回路104としては、全波整流器101の出力側に、抵抗104Aとサイリスタ104Bとを並列に接続した回路が用いられている。そして、昇圧チョッパ回路102を構成するチョークコイル102Aのうちの1巻線を用いてサイリスタ104Bのゲート−カソード間に正の電圧が印加されるように構成されている。
【0005】
突入電流防止回路104は以下のように動作する。まず、直流電源装置を動作させるために交流電源100が投入される。この時点では、サイリスタ104Bのゲート−カソード間には駆動電圧は印加されていないため、突入電流防止回路104を流れる電流は全て抵抗104Aを介して昇圧チョッパ回路102に供給される。そして、昇圧チョッパ回路102に電圧が印加されると、これに伴って制御回路102Dが動作してチョークコイル102Aにエネルギが蓄積され始める。この時点でサイリスタ104Bが起動され、これによって突入電流防止回路104に流れる電流の経路は、抵抗104Aの側からサイリスタ104Bの側に切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−178137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来例のような直流電源装置を用いて発光ダイオードから成る光源に電圧を印加する場合には、降圧チョッパ回路を接続し、当該回路により直流電源装置の出力電圧を降圧してから供給する必要がある。降圧チョッパ回路には、通常スイッチング素子が設けられており、当該スイッチング素子のオン/オフを切り替えることで直流電源装置の出力電圧を降圧する。
【0008】
しかしながら、このスイッチング素子が故障して短絡した場合には、光源に過電流が流れる。このとき、光源が過電流により破壊に至った場合には、光源の両端間に直流電源装置の出力電圧が印加され続けるだけで問題ないが、光源が破壊に至らない場合には、光源に過電流が流れ続けてしまう。これにより、光源が発熱し、光源の周辺に配置された部材等も温度が上昇することにより、例えば部材が溶融する等の悪影響を与える虞がある。
【0009】
例えば、発光ダイオードから成る光源を用いたLEDダウンライトでは、光源の周囲に反射板が配置される。この反射板の材料は様々であるが、仮にPBT(ポリブチレンテレフタレート)とすれば、その溶融温度は約230℃である。上記のように光源が発熱して当該溶融温度に達すると、反射板が溶融して変形し、所望の配光特性を得られなくなる等の不具合が生じる虞がある。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、降圧チョッパ部のスイッチング素子が故障して短絡した場合に光源に過電流が流れるのを防止することのできる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電源装置は、発光ダイオードから成る光源と、チョークコイル及びスイッチング素子を有し、当該スイッチング素子のオン/オフを切り替えることにより直流電源からの直流電圧を降圧して前記光源に点灯に必要な電圧を印加する降圧チョッパ部と、外部からの調光信号に基づいて前記スイッチング素子を駆動制御し、前記調光信号の周波数よりも高い周波数の駆動信号を前記スイッチング素子に供給するスイッチングオン期間と、前記スイッチング素子への駆動信号の供給を停止するスイッチングオフ期間とを交互に繰り返して前記光源を調光する調光制御部と、正の温度係数を有するサーミスタ及び前記チョークコイルの2次巻線の誘起電圧を駆動電圧とするサイリスタの並列回路を有し、前記直流電源の投入時における突入電流を防止する突入電流防止部と、前記スイッチングオフ期間において前記サイリスタに駆動電圧を印加する補填部とを備えることを特徴とする。
【0012】
この電源装置において、前記補填部は、前記スイッチングオン期間において充電されるバックアップ電源であることが好ましい。
【0013】
この電源装置において、前記スイッチング素子の短絡を検出する短絡検出部を備え、前記補填部は、前記短絡検出部において前記スイッチング素子の短絡を検出すると前記サイリスタへの駆動電圧の印加を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、降圧チョッパ部のスイッチング素子が故障して短絡した場合に光源に過電流が流れるのを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電源装置の実施形態1を示す回路概略図である。
【図2】同上の電源装置における動作波形図である。
【図3】同上の電源装置において補填部を除いた場合の動作波形図である。
【図4】本発明に係る電源装置の実施形態2を示す回路概略図である。
【図5】同上の電源装置における動作波形図である。
【図6】本発明に係る電源装置の実施形態3を示す回路概略図である。
【図7】同上の電源装置における動作波形図である。
【図8】従来の直流電源装置を示す回路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本発明に係る電源装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、入力フィルタ部1と、整流部2と、降圧チョッパ部3と、発光ダイオード(図示せず)から成る光源4と、突入電流防止部5と、補填部6と、PWM信号生成部7とを備える。
【0017】
入力フィルタ部1は、交流電源AC1から出力される交流電圧からノイズを除去する。整流部2は、例えばダイオードブリッジから成り、入力フィルタ部1を介して交流電源AC1から供給される交流電圧を全波整流して脈流電圧を出力する。整流部2の出力端には平滑コンデンサC1が並列に接続されており、整流部2から出力される脈流電圧を平滑化して直流電圧VD1(例えば、約400V)を出力する。したがって、本実施形態では、交流電源AC1、整流部2、平滑コンデンサC1から直流電源を構成している。
【0018】
降圧チョッパ部3は、平滑コンデンサC1の両端間電圧の直流電圧VD1を降圧して出力するものである。降圧チョッパ部3は、ダイオードD1及びスイッチング素子Q1の直列回路と、ダイオードD1に並列に接続される電解コンデンサC2及びチョークコイルT1の1次巻線T10の直列回路とを備え、電解コンデンサC2の両端間に光源4が並列に接続される。本実施形態では、スイッチング素子Q1としてMOSFETを用いている。
【0019】
また、降圧チョッパ部3には、PWM信号生成部7から供給される調光信号であるPWM信号(例えば、数十Hz〜数百Hz)を受けてスイッチング素子Q1の駆動制御を行う調光制御部30が設けられている。調光制御部30は、図2に示すように、PWM信号がローレベルの期間では、スイッチング素子Q1のゲート端子に高周波数(例えば、数kHz〜数十kHz)の駆動信号を供給することで、スイッチング素子Q1を高周波数で発振させる。このPWM信号がローレベルの期間を「スイッチングオン期間」と呼ぶものとする。PWM信号がハイレベルの期間に切り替わると、調光制御部30は、スイッチング素子Q1のゲート端子への駆動信号の供給を停止する。これにより、スイッチング素子Q1では、高周波での発振が停止する。このPWM信号がハイレベルの期間を「スイッチングオフ期間」と呼ぶものとする。
【0020】
スイッチングオン期間では、平滑コンデンサC1から直流電圧VD1が光源4に印加されるので、光源4を流れる出力電流I1は時間の経過に伴って上昇する(図2参照)。一方、スイッチングオフ期間では、電解コンデンサC2の両端電圧のみが光源4に印加されるため、光源4を流れる出力電流I1は時間の経過に伴って低下する(図2参照)。なお、出力電流I1の上昇又は低下の度合いは、電解コンデンサC2の容量に依存する。このスイッチングオン期間とスイッチングオフ期間とを交互に繰り返すことにより、光源4は点灯状態を維持する。
【0021】
ここで、PWM信号のオンデューティ比を大きくすると、スイッチングオン期間が短くなるために出力電流I1が低下し、PWM信号のオンデューティ比を小さくすると、スイッチングオン期間が長くなるために出力電流I1が上昇する。したがって、PWM信号のオンデューティ比を適宜変更することで、光源4に供給する出力電流I1を増減することができ、光源4を所望の光出力に調光することができる。
【0022】
突入電流防止部5は、正の温度係数を有するポジティブ型のサーミスタPTH1とサイリスタTH1との並列回路を備え、この並列回路は整流部2と平滑コンデンサC1との間に接続される。サイリスタTH1のゲート端子には、抵抗R1,R2及びコンデンサC3から成る積分回路の出力電圧が入力されるようになっている。この積分回路の入力端には、ダイオードD2を介して降圧チョッパ部3のチョークコイルT1の2次巻線T11が接続されおり、2次巻線T11の誘起電圧が積分回路を介してサイリスタTH1のゲート端子に入力されるようになっている。したがって、ダイオードD2を介して積分回路に入力される2次巻線T11の誘起電圧がサイリスタTH1の駆動電圧V2となる。
【0023】
以下、本実施形態の動作について図面を用いて説明する。先ず、交流電源AC1を投入すると、この時点ではサイリスタTH1が駆動していないことから、サーミスタPTH1を介して電流が流れる。したがって、サーミスタPTH1を介することにより平滑コンデンサC1の充電電流を抑制し、電源投入時の突入電流を防止する。その後、調光制御部30の制御電源(図示せず)が立ち上がると、PWM信号生成部7からのPWM信号に基づいて調光制御部30がスイッチング素子Q1の駆動制御を行い、降圧チョッパ部3の動作が開始する。これにより、光源4に点灯に必要な電圧が印加され、光源4が点灯する。
【0024】
スイッチングオン期間では、スイッチング素子Q1に駆動信号が供給され、降圧チョッパ部3がスイッチング動作をする。このため、チョークコイルT1の1次巻線T10には、図2に示すようにパルス状の1次電圧V1が印加される。なお、スイッチング素子Q1がオンの場合には、1次電圧V1は、直流電圧VD1と光源4に印加される負荷電圧VL1との差分であるVD1−VL1となる。一方、スイッチング素子Q1がオフの場合には、1次巻線T10には逆起電力が生じ、1次電圧V1が負荷電圧−VL1とほぼ等しくなる。
【0025】
ここで、チョークコイルT1の2次巻線T11には、1次巻線T10と2次巻線T11との巻数比に応じた誘起電圧が生じるが、この誘起電圧はダイオードD2を介して補填部6及び突入電流防止部5に入力される。したがって、図2に示すように、スイッチング素子Q1がオフの場合にのみ、サイリスタTH1に駆動電圧V2が印加される。すなわち、光源4の通常点灯時におけるスイッチングオン期間では、2次巻線T11の誘起電圧を駆動電圧としてサイリスタTH1が導通するため、サーミスタPTH1を介さずに電流が流れる。
【0026】
次に、スイッチング素子Q1が故障して短絡した場合における動作について説明する。スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間が短絡して故障すると、調光制御部30からの駆動信号に依らずスイッチング素子Q1はオン状態を維持するため、降圧チョッパ部3はスイッチング動作を停止する。これにより、1次巻線T10に電圧が印加されないことから1次電圧V1はほぼ零となり、2次巻線T11にも電圧が誘起されないことから駆動電圧V2もほぼ零となり、サイリスタTH1は非導通状態となる。したがって、サーミスタPTH1を介して電流が流れる。
【0027】
サーミスタPTH1に電流が流れ続けると、サーミスタPTH1の温度が上昇し、その抵抗値が著しく増大する。これにより、整流部2で全波整流された脈流電圧の殆どがサーミスタPTH1に印加されるので、降圧チョッパ部3の出力電圧が低下し、点灯に必要な電圧を光源4に印加できなくなる。したがって、光源4が不点灯状態に切り替わるため、光源4に過電流が流れて発熱するのを防止することができる。
【0028】
ここで、補填部6を設けない場合、上記のようにスイッチング素子Q1の短絡故障時において光源4に過電流が流れるのを防止する効果を奏することができるが、以下のような問題を生じる。すなわち、スイッチングオフ期間では、スイッチング素子Q1に駆動信号が供給されないため、降圧チョッパ部3のスイッチング動作が停止する。このため、図3に示すように、1次巻線T10に電圧が印加されないことから、2次巻線T11にも電圧が誘起されず、駆動電圧V2がほぼ零となってサイリスタTH1が非導通状態となる。
【0029】
すると、サーミスタPTH1を介して電流が流れるようになるので、サーミスタPTH1の抵抗値が増大し、消費電力も増大することから回路効率が低下してしまう。また、サーミスタPTH1の抵抗値の増大に伴ってサーミスタPTH1に印加される電圧も上昇することから、降圧チョッパ部3の出力電圧が低下し、光源4が不点灯状態に切り替わる虞がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、補填部6を設けることで上記の問題を解消している。補填部6は、図1に示すように抵抗R3及びコンデンサC4から成る積分回路であって、2次巻線T11と突入電流防止部5との間に設けられる。この積分回路の時定数は、スイッチングオフ期間において駆動電圧V2が一定以上に維持される程度に設定される。
【0031】
以下、補填部6の動作について説明する。先ず、スイッチングオン期間において、補填部6では、2次巻線T11の誘起電圧によってコンデンサC4が充電される。このとき、コンデンサC4の充電電圧はサイリスタTH1の駆動に必要な電圧以上となるため、サイリスタTH1が導通し、サーミスタPTH1を介さずに電流が流れる。次に、スイッチングオフ期間では、2次巻線T11に電圧が誘起されないが、図2に示すように、コンデンサC4の充電電圧が駆動電圧V2としてサイリスタTH1印加されるので、サイリスタTH1は導通状態を維持する。すなわち、補填部6は、スイッチングオン期間において充電され、スイッチングオフ期間においてサイリスタに駆動電圧V2を印加するバックアップ電源としての機能を果たす。
【0032】
したがって、補填部6を設けることで、スイッチングオン期間及びスイッチングオフ期間の何れの期間においてもサイリスタTH1の導通状態を維持することができる。このため、補填部6を設けない場合のようにスイッチングオフ期間においてサーミスタPTH1に電流が流れることがないので、消費電力の増大や、光源4が不点灯状態に切り替わる問題を解決することができる。
【0033】
上述のように、本実施形態では、降圧チョッパ部3のチョークコイルT1の2次巻線T11に誘起される電圧を利用することで、降圧チョッパ部3のスイッチング素子Q1が故障して短絡した場合に光源4に過電流が流れるのを防止することができる。また、本実施形態では、補填部6を設けることで、スイッチングオフ期間においても突入電流防止部5のサイリスタTH1の導通状態を維持することができる。
【0034】
なお、突入電流防止部5には、抵抗R1,R2、及びコンデンサC3から成る積分回路が接続されているが、サイリスタTH1には抵抗R1,R2によって分圧された電圧が印加されるため、その電圧は1V程度と低く、バックアップ電源としての効果は殆どない。一方、補填部6は、抵抗R1,R2で分圧される前における2次巻線T11の誘起電圧によってコンデンサC4を充電し、この充電電圧をスイッチングオフ期間に亘って一定以上に維持するものであるため、バックアップ電源としての効果が極めて高い。
【0035】
(実施形態2)
以下、本発明に係る電源装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図4に示すように、突入電流防止部5と平滑コンデンサC1との間に力率改善用のPFC(Power Factor Correction)部8を接続し、PWM信号生成部7からのPWM信号により駆動する補填部9を補填部6の代わりに設けている。なお、PFC部8は従来周知であるので、ここでは説明を省略する。
【0036】
補填部9は、PWM信号生成部7からのPWM信号が抵抗R4を介して1次側の発光ダイオードに入力されるフォトカプラPC1と、フォトカプラPC1の2次側のフォトトランジスタに接続されるダイオードD3及び抵抗R5の直列回路とを備える。2次側のフォトトランジスタでは、コレクタ端子が平滑コンデンサC1の高圧側の端子に接続され、エミッタ端子がダイオードD3のアノードに接続される。
【0037】
以下、補填部9の動作について図面を用いて説明する。先ず、スイッチングオフ期間においては、図5に示すようにPWM信号がハイレベルであるため、フォトカプラPC1の1次側の発光ダイオードが導通し、発光する。この光を受けて、2次側のフォトトランジスタのコレクタ−エミッタ間も導通することで、直流電圧VD1がダイオードD3、抵抗R5を介して突入電流防止部5の積分回路に印加される。したがって、スイッチングオフ期間においては、補填部9が駆動することによりサイリスタTH1に駆動電圧V2が印加され、サイリスタTH1は導通状態を維持する。
【0038】
次に、スイッチングオン期間においては、2次巻線T11の誘起電圧がサイリスタTH1に駆動電圧V2として印加されるので、サイリスタTH1は導通状態を維持する。このとき、図5に示すようにPWM信号がローレベルであるため、フォトカプラPC1の1次側の発光ダイオードは導通せず、補填部9は駆動しない。
【0039】
上述のように、本実施形態では、スイッチングオフ期間において補填部9を用いて突入電流防止部5のサイリスタTH1に駆動電圧V2を印加することで、スイッチングオフ期間においてもサイリスタTH1の導通状態を維持することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、スイッチング素子Q1が故障して短絡した場合には、PWM信号のハイレベル期間において補填部9からサイリスタTH1に駆動電圧V2が印加されるが、PWM信号のローレベル期間においては補填部9が駆動しない。したがって、PWM信号のハイレベル期間においてはサーミスタPTH1を介さずに電流が流れるが、PWM信号のローレベル期間においてはサーミスタPTH1を介して電流が流れるので、光源4に過電流が流れるのを防止する効果を奏することができる。
【0041】
また、本実施形態では、PWM信号生成部7からのPWM信号を補填部9の駆動電圧として利用しているが、PWM信号と同期した別の電源を用意し、この電源電圧を補填部9の駆動電圧として利用してもよい。
【0042】
(実施形態3)
以下、本発明に係る電源装置の実施形態3について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態2と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図6に示すように、降圧チョッパ部3のスイッチング素子Q1の短絡を検出する短絡検出部10を設けている。
【0043】
短絡検出部10は、降圧チョッパ部3のチョークコイルT1の3次巻線T12に誘起される検出電圧V3を入力電圧とするもので、入力端には、ダイオードD4と、抵抗R6,R7及びコンデンサC5から成る積分回路とが接続されている。コンデンサC5の両端電圧は、コンパレータCOM1の非反転入力端子に入力され、反転入力端子に入力される基準電圧VR1と比較される。
【0044】
コンパレータCOM1の出力端子は、NPN型トランジスタであるスイッチング素子Q2のベース端子に抵抗R8を介して接続されている。スイッチング素子Q2のコレクタ端子には、抵抗R9を介して電圧源Vccが接続され、また、NPN型トランジスタであるスイッチング素子Q3のベース端子が抵抗R10を介して接続されている。そして、スイッチング素子Q3のコレクタ端子は、補填部9のフォトカプラPC1の1次側の発光ダイオードと、抵抗R4との接続点に接続されている。
【0045】
以下、短絡検出部10の動作について図面を用いて説明する。先ず、スイッチングオン期間では、スイッチング素子Q1に駆動信号が供給され、降圧チョッパ部3がスイッチング動作をする。このため、チョークコイルT1の3次巻線T12には、図7に示すようにパルス状の検出電圧V3が誘起される。この検出電圧V3は、短絡検出部10のダイオードD4を介して抵抗R6,R7及びコンデンサC5から成る積分回路に入力されて平滑化され、コンパレータCOM1の非反転入力端子に入力される。
【0046】
そして、コンデンサC5の充電電圧が基準電圧VR1を上回るので、コンパレータCOM1の出力信号はハイレベルとなる。これにより、スイッチング素子Q2がオン、スイッチング素子Q3がオフに切り替わるので、補填部9のフォトカプラPC1の1次側のダイオードにPWM信号生成部7からのPWM信号が供給される。
【0047】
次に、スイッチングオフ期間では、降圧チョッパ部3のスイッチング素子Q1に駆動信号が供給されないため、降圧チョッパ部3のスイッチング動作が停止する。このため、図7に示すように、1次巻線T10に電圧が印加されないことから、3次巻線T12にも電圧が誘起されず、検出電圧V3がほぼ零となる。
【0048】
ここで、短絡検出部10の抵抗R6,R7及びコンデンサC5から成る積分回路の時定数は、スイッチングオン期間で充電されたコンデンサC5の充電電圧が、次のスイッチングオフ期間に亘って基準電圧VR1を上回る程度に設定される。このため、スイッチングオフ期間においてもコンデンサC5の充電電圧が基準電圧VR1を上回り、コンパレータCOM1の出力信号はハイレベルとなる。したがって、上記と同様に補填部9のフォトカプラPC1の1次側のダイオードにPWM信号生成部7からのPWM信号が供給される。
【0049】
すなわち、光源4の通常点灯時においては、実施形態2と同様に補填部9が駆動するため、スイッチングオフ期間においても突入電流防止部5のサイリスタTH1の導通状態を維持することができる。
【0050】
次に、スイッチング素子Q1が故障して短絡した場合、調光制御部30からの駆動信号に依らずスイッチング素子Q1はオン状態を維持するため、降圧チョッパ部3はスイッチング動作を停止する。これにより、1次巻線T10に電圧が印加されないことから1次電圧V1はほぼ零となり、3次巻線T12にも電圧が誘起されないことから検出電圧V3もほぼ零となる。
【0051】
スイッチング素子Q1の短絡状態が一定時間以上続くと、コンデンサC5が放電することにより充電電圧が基準電圧VR1を下回るため、コンパレータCOM1の出力信号がローレベルとなる。これにより、スイッチング素子Q2がオフ、スイッチング素子Q3がオンに切り替わるので、補填部9のフォトカプラPC1の1次側のダイオードへのPWM信号の供給が遮断される。したがって、補填部9からサイリスタTH1に駆動電圧V2が印加されなくなる。
【0052】
このとき、2次巻線T11にも駆動電圧V2が誘起されないことから、サイリスタTH1は非導通状態となり、サーミスタPTH1を介して電流が流れる。サーミスタPTH1に電流が流れ続けると、サーミスタPTH1の温度が上昇し、その抵抗値が著しく増大する。これにより、整流部2で全波整流された脈流電圧の殆どがサーミスタPTH1に印加されるので、降圧チョッパ部3の出力電圧が低下し、点灯に必要な電圧を光源4に印加できなくなる。したがって、光源4が不点灯状態に切り替わるため、光源4に過電流が流れて発熱するのを防止することができる。
【0053】
上述のように、本実施形態では、スイッチングオフ期間において補填部9を用いて突入電流防止部5のサイリスタTH1に駆動電圧V2を印加することで、スイッチングオフ期間においてもサイリスタTH1の導通状態を維持することができる。また、本実施形態では、短絡検出部10によって降圧チョッパ部3のスイッチング素子Q1の短絡を検出し、補填部9の駆動を停止することができる。このため、PWM信号のハイレベル期間において補填部9からサイリスタTH1に駆動電圧V2が印加されるのを防ぐことができるので、実施形態2と比較して光源4に過電流が流れるのを防止する効果をより高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
3 降圧チョッパ部
30 調光制御部
4 光源
5 突入電流防止部
6,9 補填部
10 短絡検出部
PTH1 サーミスタ
Q1 スイッチング素子
T1 チョークコイル
TH1 サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードから成る光源と、チョークコイル及びスイッチング素子を有し、当該スイッチング素子のオン/オフを切り替えることにより直流電源からの直流電圧を降圧して前記光源に点灯に必要な電圧を印加する降圧チョッパ部と、外部からの調光信号に基づいて前記スイッチング素子を駆動制御し、前記調光信号の周波数よりも高い周波数の駆動信号を前記スイッチング素子に供給するスイッチングオン期間と、前記スイッチング素子への駆動信号の供給を停止するスイッチングオフ期間とを交互に繰り返して前記光源を調光する調光制御部と、正の温度係数を有するサーミスタ及び前記チョークコイルの2次巻線の誘起電圧を駆動電圧とするサイリスタの並列回路を有し、前記直流電源の投入時における突入電流を防止する突入電流防止部と、前記スイッチングオフ期間において前記サイリスタに駆動電圧を印加する補填部とを備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記補填部は、前記スイッチングオン期間において充電されるバックアップ電源であることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子の短絡を検出する短絡検出部を備え、前記補填部は、前記短絡検出部において前記スイッチング素子の短絡を検出すると前記サイリスタへの駆動電圧の印加を停止することを特徴とする請求項1又は2記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−228066(P2012−228066A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93305(P2011−93305)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】