説明

電源転換装置

【課題】スイッチの小容量化、小型化を可能とする電源転換装置を提供する。
【解決手段】複数の電源系統と負荷3との間に設けられ、閉状態時は、複数の電源系統の中から選択された電源系統と負荷3とを接続し、開状態時は、複数の電源系統と負荷3との接続を解除するスイッチと、電源系統とスイッチとの間に設けられ、スイッチに流れる電流値を検出するスイッチ用電流検出器と、スイッチに流れる電流値が負荷3に設けられた負荷遮断器5の瞬時遮断電流値に対応した異常電流値に達しているか否かを判定し、スイッチに流れる電流値が異常電流値に達している場合は、スイッチに、繰り返し開閉動作させ、負荷遮断器5が電源系統と負荷との接続を解除するまで、負荷3に流れる電流を、瞬時遮断電流値に限流するとともに、スイッチに流れる電流を、異常電流値に限流する制御装置11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源転換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源転換装置は、船舶等において、複数の電源系統から、既定の健全な電源系統をスイッチで選択し、負荷側へ給電を行う目的で使用される(例えば、特許文献1参照)。
そして、負荷には、負荷遮断器が設けられる。この負荷遮断器は、事故が発生した場合に、負荷の定格電流値を超えた規定値(瞬時遮断電流値)を一定時間検出して異常とみなし、電源系統と当該負荷との接続を遮断する。
【0003】
【特許文献1】特開平6−276697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電源転換装置においては、異常負荷を遮断するための事故電流が、電源系統の短絡容量、事故点までの系統インピーダンスに依存する。即ち、短絡容量等によっては、事故電流が非常に大きい値となることもある。このため、従来の電源転換装置においては、事故電流に耐え得るように、大容量かつ大型のスイッチを選定せざるを得なかった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、スイッチの小容量化及び小型化を可能とする電源転換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電源転換装置は、複数の電源系統と負荷との間に設けられ、閉状態時は、前記複数の電源系統の中から選択された電源系統と前記負荷とを接続し、開状態時は、前記複数の電源系統と前記負荷との接続を遮断するスイッチと、前記電源系統と前記スイッチとの間に設けられ、前記スイッチに流れる電流値を検出するスイッチ用電流検出器と、前記スイッチに流れる電流値が前記負荷に設けられた負荷遮断器の瞬時遮断電流値に対応した異常電流値に達しているか否かを判定し、前記スイッチに流れる電流値が前記異常電流値に達している場合は、前記スイッチに、繰り返し開閉動作させ、前記負荷遮断器が前記電源系統と前記負荷との接続を遮断するまで、前記負荷に流れる電流を、前記瞬時遮断電流値に限流するとともに、前記スイッチに流れる電流を、前記異常電流値に限流する制御装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、スイッチの小容量化及び小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明を実施するための最良の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電源転換装置を示す系統図である。
図1において、1は常用電源系統である。2は転換用電源系統である。3は複数の負荷である。これらの負荷3は、負荷系統4に接続される。また、負荷3の負荷系統4側には、それぞれ負荷遮断器5が設けられる。これらの負荷遮断器5は、負荷3に瞬時遮断電流値以上の電流が流れると、負荷系統4と負荷3との接続を遮断する機能を有する。そして、常用電源系統1及び転換用電源系統2と負荷系統4とは、電源転換装置6を介して接続される。
【0010】
電源転換装置6は、常用スイッチ7、常用電圧電流検出器8、転換用スイッチ9、転換用電圧電流検出器10、制御装置11を備える。常用スイッチ7は、常用電源系統1と負荷系統4との間に設けられる。この常用スイッチ7は、閉状態時は、常用電源系統1と負荷系統4とを接続し、開状態時は、常用電源系統1と負荷系統4との接続を遮断する。常用電圧電流検出器8は、常用電源系統1と常用スイッチ7との間に設けられ、スイッチ用電圧電流検出器として機能する。即ち、常用電圧電流検出器8は、常用電源系統1と常用スイッチ7との間の電圧電流値12を検出する。
【0011】
転換用スイッチ9は、転換用電源系統2と負荷系統4との間に設けられる。この転換用スイッチ9は、閉状態時は、転換用電源系統2と負荷系統4とを接続し、開状態時は、転換用電源系統2と負荷系統4との接続を遮断する。転換用電圧電流検出器10は、転換用電源系統2と転換用スイッチ9との間に設けられ、スイッチ用電圧電流検出器として機能する。即ち、転換用電圧電流検出器10は、転換用電源系統2と転換用スイッチ9との間の電圧電流値13を検出する。
【0012】
制御装置11は、常用電圧電流検出器8及び転換用電圧電流検出器10から電圧電流値12、13を受信する。そして、制御装置11は、電圧電流値12、13に基づいて、常用スイッチ7及び転換用スイッチ9にスイッチ開閉信号14、15を出力し、常用スイッチ7及び転換用スイッチ9の開閉を制御する。
【0013】
具体的には、制御装置11は、通常、常用スイッチ7を閉状態とし、転換用スイッチ9を開状態とする。かかる状態では、常用電源系統1と負荷系統4とが接続され、転換用電源系統2と負荷系統4との接続が遮断される。かかる接続状態では、常用電源系統1が共用され、複数の負荷3に給電され、転換用電源系統2から負荷3への給電が遮断される。
【0014】
そして、制御装置11は、電圧電流値12の電圧異常を検出すると、常用スイッチ7を開状態とし、転換用スイッチ9を閉状態とする。かかる状態では、常用電源系統1と負荷系統4との接続が遮断され、転換用電源系統2と負荷系統4とが接続される。かかる接続状態では、常用電源系統1から負荷3への給電が遮断され、転換用電源系統2が共用され、負荷3へ給電される。即ち、上記構成の電源転換装置6は、複数の電源系統から、既定の健全な電源系統をスイッチで選択し、負荷3側へ給電を行うものである。
【0015】
本実施の形態の制御装置11は、さらに、負荷3側に異常が発生した場合に特徴的な電流制御を行う。即ち、制御装置11は、電流電圧値12、13から常用スイッチ7又は転換用スイッチ9に流れる電流値が負荷遮断器5の瞬時遮断電流値に対応した異常電流値に達しているか否かを判定する。
【0016】
そして、制御装置11は、常用スイッチ7又は転換用スイッチ9に流れる電流値が異常電流値に達している場合は、常用スイッチ7又は転換用スイッチ9に、繰り返し開閉動作させる。さらに、制御装置11は、負荷遮断器5が常用電源系統1又は転換用電源系統2と負荷3との接続を遮断するまで、負荷3に流れる電流を、瞬時遮断電流値に限流するとともに、常用スイッチ7又は転換用スイッチ9に流れる電流を、異常電流値に限流する。
【0017】
即ち、制御装置11は、負荷3、負荷遮断器5、常用スイッチ7、転換用スイッチ9に、所定値以上の電流が流れることを防止する機能を有する。加えて、制御装置11は、上記限流動作の後、常用スイッチ7又は転換用スイッチ9に流れる電流が異常電流値よりも小さくなった場合は、常用スイッチ7又は転換用スイッチ9を閉状態とする機能を有する。
【0018】
次に、常用電源系統1で負荷3に給電している時に、負荷3の一方近傍で事故が発生した場合を考える。図1においては、事故点が16で示される。この事故点16では、負荷3と負荷遮断器5との間の給電回路が短絡し、短絡電流が流れている状態となっている。
【0019】
図2はこの発明の実施の形態1における電源転換装置で電流制御しない場合の短絡電流を説明するための波形図である。
図2において、下段は、負荷系統4の電流の波形を表し、上段は、負荷系統4の電圧の波形を表す。また、横軸は、時間を表し、下段及び上段の縦軸は、それぞれ電流値及び電圧値を表す。
【0020】
図2に示すように、事故発生前の負荷系統4に流れる電流は、一定値を示す定常負荷電流17である。そして、事故が発生すると、短絡電流が給電回路に流れる。この短絡電流は、常用電源系統1の持つ短絡容量、事故点16までの電源系統インピーダンスに応じて決定される。具体的には、短絡電流は、短絡電流曲線18上にピークを持つ。この短絡電流曲線18は、事故発生点を最大値として、時間と共に減少するものである。
【0021】
そして、負荷遮断器5が、短絡電流を検出し、一定時間経過後、負荷系統4と負荷3との接続を遮断する。かかる接続の遮断により、負荷系統4から事故点16が遮断される。これにより、負荷系統4の電流が、定常負荷電流17に復帰する。
【0022】
ここで、短絡電流曲線18の最大値は、負荷遮断器5が動作する瞬時遮断電流値よりもはるかに大きい値となる。従って、本実施の形態の電源転換装置6で電流制御しない場合は、常用スイッチ7及び負荷遮断器5を大容量かつ大型のものとする必要がある。
【0023】
図3はこの発明の実施の形態1における電源転換装置で電流制御した場合の短絡電流を説明するための図である。
図3は図2に対応している。即ち、図3において、下段は、負荷系統4の電流の波形を表し、上段は、負荷系統4の電圧の波形を表す。
【0024】
図3においては、瞬時遮断電流値は、19で示される。上述したように、事故が発生すると、短絡電流が流れ、負荷3に流れる電流が瞬時遮断電流値に達する。これと同時に、常用スイッチ7に流れる電流が瞬時遮断電流値19に対応した異常電流値に達する。このとき、制御装置11は、電圧電流値12から常用スイッチ7に流れる電流が異常電流値に達していると判定する。そして、制御装置11は、スイッチ開閉信号14を出力し、常用スイッチ7に繰り返し開閉動作させる。
【0025】
このときの常用電圧電流検出器8の電流検出出力、制御装置11からのスイッチ開閉信号14出力、常用スイッチ7の開閉動作は、事故発生点からの短絡電流の増加傾斜に対して、十分に速い。このため、負荷系統4の電圧は、細かいパルス状の電圧20となる。即ち、負荷系統4のインピーダンスを加味すると、事故発生時の負荷系統4の実効電圧21は、定常負荷電圧22よりもピークを小さくする。
【0026】
かかる常用スイッチ7の開閉動作により、短絡電流は、継続して瞬時遮断電流値19に限流される。そして、負荷遮断器5が、瞬時遮断電流値19を検出し、負荷系統4と負荷3との接続を遮断する。かかる接続の遮断により、負荷系統4から事故点16も遮断される。これにより、負荷系統4の電流が、定常負荷電流に復帰する。
【0027】
以上で説明した実施の形態1によれば、事故発生時に図2に示すような大きな値の短絡電流に対応した電流が常用スイッチ7に流れることがない。即ち、常用スイッチ7は、異常電流値に対応した電流容量を有していればよい。このため、常用スイッチ7の小容量化及び小型化が図られる。また、確実に、常用スイッチ7の破損を回避できる。さらに、常用スイッチ7の小容量化及び小型化により、安価な電源転換装置6が提供される。
【0028】
また、事故発生時でも、負荷3に流れる電流が瞬時遮断電流値に限流される。このため、負荷3及び負荷遮断器5の小容量化及び小型化も図られる。加えて、常用電源系統1と常用スイッチ7との間に流れる電流が異常電流値に限流される。このため、常用電源系統1を保護することができる。また、常用電源系統1は、異常電流値以上の電流容量があればよい。このため、常用電源系統1の小容量化及び小型化も図られる。即ち、本発明の電源転換装置6によれば、常用電源系統1、負荷遮断器5、常用スイッチ7等、給電系統機器全体の小型化が可能となる。
【0029】
また、上記限流動作の後、常用スイッチ7に流れる電流が異常電流値よりも小さくなった場合は、常用スイッチ7を閉状態とする。これにより、異常が発生した負荷3が遮断された後、他の負荷3への給電を復帰することができる。なお、実施の形態1では、常用電源系統1で負荷3に給電する場合で説明した。しかし、転換用電源系統2で負荷3に給電する場合でも、同様の動作で、上記効果が得られるのは、いうまでもない。
【0030】
また、常用スイッチ7等と負荷3との間に、負荷3を流れる電流値を検出する負荷用電流器を設けてもよい。そして、負荷3に流れる電流に基づいて、制御装置11により電流制御を行ってもよい。この場合、制御装置11は、負荷3に流れる電流値が瞬時遮断電流値に達しているか否かを判定する。そして、負荷3に流れる電流値が瞬時遮断電流値に達している場合、制御装置11は、常用スイッチ7等に、繰り返し開閉動作させる。
【0031】
さらに、制御装置11は、負荷遮断器5が常用電源系統1等と負荷3との接続を解除するまで、負荷3に流れる電流を、瞬時遮断電流値に限流するとともに、常用スイッチ7等に流れる電流を、異常電流値に限流する。即ち、負荷3に流れる電流の実測値で、限流動作がなされる。このため、より確実に、負荷3及び負荷遮断器5の破損を回避できる。なお、かかる機能は、負荷遮断器5に持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態1における電源転換装置を示す系統図である。
【図2】この発明の実施の形態1における電源転換装置で電流制御しない場合の短絡電流を説明するための波形図である。
【図3】この発明の実施の形態1における電源転換装置で電流制御した場合の短絡電流を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 常用電源系統、 2 転換用電源系統、 3 負荷、 4 負荷系統、
5 負荷遮断器、 6 電源転換装置、 7 常用スイッチ、
8 常用電圧電流検出器、 9 転換用スイッチ、 10 転換用電圧電流検出器、
11 制御装置、 12、13 電圧電流値、 14、15 スイッチ開閉信号、
16 事故点、 17 定常負荷電流、 18 短絡電流曲線、
19 瞬時遮断電流値、 20 パルス状の電圧、 21 実効電圧、
22 定常負荷電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源系統と負荷との間に設けられ、閉状態時は、前記複数の電源系統の中から選択された電源系統と前記負荷とを接続し、開状態時は、前記複数の電源系統と前記負荷との接続を遮断するスイッチと、
前記電源系統と前記スイッチとの間に設けられ、前記スイッチに流れる電流値を検出するスイッチ用電流検出器と、
前記スイッチに流れる電流値が前記負荷に設けられた負荷遮断器が動作する瞬時遮断電流値に対応した異常電流値に達しているか否かを判定し、
前記スイッチに流れる電流値が前記異常電流値に達している場合は、前記スイッチに、繰り返し開閉動作させ、
前記負荷遮断器が前記電源系統と前記負荷との接続を遮断するまで、前記負荷に流れる電流を、前記瞬時遮断電流値に限流するとともに、前記スイッチに流れる電流を、前記異常電流値に限流する制御装置と、
を備えたことを特徴とする電源転換装置。
【請求項2】
前記負荷は、複数からなり、前記電源系統を共用して給電され、
前記負荷遮断器は、前記負荷にそれぞれ設けられ、
前記制御装置は、前記負荷に流れる電流を、前記瞬時遮断電流値に限流するとともに、前記スイッチに流れる電流を、前記異常電流値に限流した後、前記スイッチに流れる電流値が異常電流値よりも小さくなった場合は、前記スイッチを前記閉状態とすることを特徴とする請求項1記載の電源転換装置。
【請求項3】
前記スイッチと前記負荷との間に設けられ、前記負荷に流れる電流値を検出する負荷用電流検出器、
を備え、
前記制御装置は、
前記負荷に流れる電流値が前記瞬時遮断電流値に達しているか否かを判定し、
前記負荷に流れる電流値が前記瞬時遮断電流値に達している場合は、前記スイッチに、繰り返し開閉動作させ、
前記負荷遮断器が前記電源系統と前記負荷との接続を遮断するまで、前記負荷に流れる電流を、前記瞬時遮断電流値に限流するとともに、前記スイッチに流れる電流を、前記異常電流値に限流することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源転換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−296684(P2009−296684A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144622(P2008−144622)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】