電界紡糸によって得られる多層プリフォーム、プリフォームの製造方法並びにその使用
本発明は、電界紡糸によって得られ、プロテーゼのスキャフォールドとして適した多層プリフォームであって、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、少なくとも1つのナノファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであるプリフォームに関する。また、本発明は、前記プリフォームの製造方法に関する。また、本発明は、前記プリフォームの、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材としての使用に関する。さらに、本発明は、基材上でヒト又は動物組織を増殖させるための方法であって、本発明のプリフォームを前記基材として使用する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界紡糸によって得られ、プロテーゼのスキャフォールドとして適しており、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、少なくとも1つのナノファイバー層と、を含む多層プリフォームに関する。また、本発明は、電界紡糸によるプリフォームの製造方法に関する。さらに、本発明は、前記プリフォームの使用並びに基材上でヒト又は動物組織を増殖させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Q.P.Pham et al.,Biomacromolecules 2006,Vol.7,pp.1796−1805は、ε−ポリカプロラクトンのポリマーファイバーからなる電界紡糸多層プリフォームを開示している。上記多層プリフォームは、2〜10μmの直径を有するマイクロファイバー及び約600nmの直径を有するナノファイバーの層を交互に含む。しかしながら、プリフォームへの細胞及び栄養分の経路が最適化されていないため、プリフォームマトリックスへの細胞の内部成長は十分ではない。
【0003】
米国特許出願公開第2008/112998号は、交互に積層された電界紡糸ポリマー層と、それらに挟まれた哺乳動物細胞と、を含む合成組織スキャフォールドを開示している。組織スキャフォールドに哺乳動物細胞が存在する場合には、使用前のスキャフォールドの減菌及び保存が複雑となる。
【0004】
オランダ特許第NL1026076号に対応する米国特許出願公開第2008/0131965号は、電界紡糸によってプリフォームを製造するための方法を開示している。米国特許出願公開第2008/0131965号は、ナノファイバー及びマイクロファイバーからプリフォームを製造する方法は開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、三次元的なプロテーゼ又はインプラントを製造することができるプリフォームを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、細胞の内部成長が良好なプリフォームを提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、構造的及び機械的安定性と細胞の内部成長及び付着の最適なバランスを有するプリフォームを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材として使用することができるプリフォームを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、プロテーゼ又はインプラント(特に、心臓弁、血管、血管を接続するためのT字形接続装置又は心臓パッチ)のための基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の1以上は、請求項1の前文に記載された特徴を有し、少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであることを特徴とする多層プリフォームによって達成される。
【0011】
本発明の一実施形態では、プリフォームの全ての層の細孔径、すなわち、ファイバーネットワーク全体又はプリフォームの細孔径は1〜300μmである。この場合、プリフォーム全体の気孔率は所望の範囲となり、プリフォームの厚み全体にわたって細胞及び栄養分が良好に侵入する。
【0012】
本願発明者らは、1以上のマイクロファイバー層及び1以上のナノファイバー層からなるプリフォームを使用する場合には、細胞の良好な内部成長及び栄養分の良好な拡散のために、1以上のマイクロファイバー層及び1以上のナノファイバー層の気孔率が十分に大きいことが必須であることを見出した。
【0013】
さらに検討した結果、本願発明者らは、本発明のプリフォームによって、構造的及び機械的特性と細胞の内部成長及び付着の最適なバランスを得ることができることを見出した。特に、本願発明者らは、ナノファイバー層の細孔径が重要であり、特定の理論に縛られることを望むものではないが、ナノファイバー層の細孔径は細胞の十分な内部成長をもたらすと考えている。
【0014】
以下の詳細な説明と添付図面によって本発明はより良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る2層プリフォームの概略断面である。
【図2】本発明の一実施形態に係る勾配積層プリフォームの概略断面である。
【図3】本発明に係る多層プリフォームの別の実施形態を示す。
【図4a】人工三膜心臓弁のスキャフォールドとして使用する本発明に係るプリフォームの電界紡糸に使用することができる型の3つのサブ型を示す。
【図4b】図4aに示すサブ型のアセンブリの断面図であり、各サブ型に電界紡糸によって1つのマイクロファイバー層及び1つのナノファイバー層を形成した後の状態を示す。
【図5a】図4aに示すサブ型のアセンブリ及び心臓弁を得るための相補的なサブ型を示す。
【図5b】組み合わせられた図5aに示すサブ型の断面図である。
【図5c】電界紡糸によって得られた1つのマイクロファイバー層及び1つのナノファイバー層を含む心臓弁の型の断面図である。
【図6a】図5a〜図5cに示す型を使用して得られた本発明に係るプリフォームの平面図である。
【図6b】図5a〜図5cに示す型を使用して得られた本発明に係るプリフォームの側面図である。
【図7a】本発明の別の実施形態に係る型(2以上の血管を接続するためのT字型接続装置)を示す。
【図7b】サブ型の実施形態を示す。
【図7c】サブ型の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願明細書において使用する「マイクロファイバー」という用語は、マイクロメートル領域の直径を有するファイバーを意味する。
【0017】
本願明細書において使用する「ナノファイバー」という用語は、ナノメートル領域の直径を有するファイバーを意味する。
【0018】
本願明細書において使用する「プリフォーム」という用語は、三次元形状を有し、組織工学におけるスキャフォールドとして使用することができる物品を意味する。
【0019】
本願明細書において使用する「多層」という用語は、ナノファイバー層とマイクロファイバー層からなる少なくとも2つの層を含むことを意味する。本発明の範囲内において上記定義に含まれるものとしては、積層された無数の非常に薄い層からなり、ある層から別の層に向かってファイバーの直径が連続的に変化する勾配積層プリフォームが挙げられる。このようなプリフォームは、例えば、電界紡糸の場合には、紡糸時に紡糸パラメータを連続的に変化させてファイバーの直径を連続的に増加又は減少させることによって得ることができる。勾配多層プリフォームの非常に基本的な例としては、一方の外表面にマイクロファイバー層を有し、他方の外表面にナノファイバー層を有し、それらの間に、隣接する層よりも小さな直径を有する無数のマイクロファイバー層及びナノファイバー層を有するプリフォームが挙げられる。
【0020】
組織工学分野において使用されるスキャフォールドの製造に電界紡糸を使用することが知られている。電界紡糸では、所望のスキャフォールドの特性を変更・最適化する多くのパラメータは変更することができるため、電界紡糸は汎用技術となっている。電界紡糸プリフォームの用途の例としては、組織工学におけるスキャフォールド又は型、薬物送達デバイス、創傷包帯としての使用が挙げられる。
【0021】
本願発明者らの1名によるオランダ特許第NL1026076号(米国特許出願公開第2008/0131965号に対応)は、ポリマーマイクロファイバーの電界紡糸によってプリフォームを製造するための方法を開示しており、得られるプリフォームは心臓弁のプロテーゼのスキャフォールドとして使用することができる。図3〜図7に開示する型及びサブ型はオランダ特許第NL1026076号に開示されている。
【0022】
電界紡糸は、所望のプリフォームに応じて平面形状、板形状又は複雑な三次元形状を有する金属ターゲット又は型を使用する方法である。電磁場によってポリマーファイバーを型に堆積させる。ポリマー繊維は、1種以上の溶媒に溶解した1種以上のポリマーの溶液から生成する。電界紡糸は公知であり、本願明細書においては詳細な説明は省略する。
【0023】
本発明に係るファイバー層の材料としては、電界紡糸することができる任意のファイバー材料を使用することができる。ただし、本発明では、ポリマー材料、特に生体適合性ポリマー材料をファイバー材料として使用することが好ましい。好適なポリマーの例は後述する。
【0024】
ファイバーを(サブ)型の表面に堆積させた後、(サブ)型をファイバーから除去するとファイバーのプリフォーム又はスキャフォールドが得られる。得られるプリフォームは、重なり合った不織ファイバーからなる多孔性ネットワークであり、細胞及び組織の内部成長及び成長のための基材として使用することができる。細胞及び組織の形成は生体内又は生体外で行うことができる。生体内において組織を形成する場合には、播種又は未播種プリフォーム(細胞を播種したプリフォーム又は細胞を播種していないプリフォーム)を体内に埋め込み、細胞を引き寄せ、組織形成を促進する。生体外において組織を形成する場合には、解放繊維状構造内で増殖することができるヒト又は動物細胞を使用してプリフォームを培養する。培養は、細胞増殖を最適化するように、適当な条件(栄養分、成長因子、温度、時間、pH、機械的及び生化学的刺激等)下で行うことができる。これにより、プリフォームの内部及び表面に組織が形成される。組織とプリフォームの組み合わせは、インプラント又はプロテーゼとして使用することができる。このようにして得られたプロテーゼ又はインプラントは、ヒト又は動物の体内に埋め込むことができる。
【0025】
生分解性ポリマーをファイバー層として使用して本発明に係るプリフォームを製造する場合には、スキャフォールドの多孔性ファイバーネットワークは、生体内における組織増殖及び/又は生体への埋め込み後に分解する。その結果、新たに形成された組織のみが残り、生体組織からなるプロテーゼを形成する。そのため、本発明では、生分解性又は生体吸収性ポリマーをプリフォームの製造に使用することが好ましく、それにより、所定の時間が経過するとプリフォームはほぼ完全に分解又は再吸収される。ポリマー材料はヒト又は動物組織で置き換えられ、完全に生体組織からなるインプラント又はプロテーゼが体内に存在することになる。
【0026】
電界紡糸によって製造したスキャフォールドは、いくつかの重要なパラメータによって特徴付けられる。第1のパラメータは繊維径であり、例えば、電子顕微鏡法によって測定する。繊維径は、スキャフォールドのいくつかの特性(表面積及び後述するパラメータ等)に対して影響を与え得る。本発明では、異なる繊維径を有する少なくとも2つの層(すなわち、少なくとも1つのマイクロファイバー層及び少なくとも1つのナノファイバー層)が存在することが必要である。
【0027】
第2のパラメータはスキャフォールドの細孔径であり、例えば、水銀ポロシメトリーによって測定する。本発明のプリフォームの層の細孔径は1〜300μmとする。
【0028】
第3のパラメータは気孔率であり、例えば、水銀ポロシメトリー、流体侵入法(fluid intrusion)及び重量測定法によって測定する。細孔径及び気孔率は、細胞の付着、増殖、移動及び/又は分化に影響を及ぼす付属品に影響を及ぼすスキャフォールドの重要な特性である。
【0029】
マイクロファイバー層を使用することにより、ファイバーからなるスキャフォールドの良好な構造的及び機械的安定性を得ることができる。ナノファイバー層を使用することにより、スキャフォールド内で組織を増殖させるために使用するヒト及び/又は動物細胞に対する良好な適合性が得られる。本願発明者らは、特定の細孔径範囲のマイクロファイバー層及びナノファイバー層の組み合わせにより、構造的及び機械的安定性とヒト及び/又は動物細胞に対する適合性の最適なバランスが得られることを見出した。
【0030】
細胞外マトリックス(ECM)は、細胞の構造的支持体となるヒト又は動物組織の細胞外部分である。ECMは、間質マトリックスと基底膜で構成される。間質マトリックスは異種細胞間に存在し、多糖類及び(本発明のナノファイバーを物理的類似性を示す)繊維状タンパク質のゲルによって形成されている。基底膜はECMのシート状沈着物であり、上皮細胞が付着して増殖する。本発明に使用するナノファイバー層は、細胞の細胞外マトリックスの物理的特性を模倣する。その利点は、プリフォームにおいて増殖する細胞の環境が良好となり、マイクロファイバー層よりも良好にナノファイバー層に付着することである。
【0031】
プリフォームの好適な実施形態は従属請求項に記載されており、以下に詳細に説明する。
【0032】
本発明の一実施形態では、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径は1〜300μmである。最大細孔径は、好ましくは250μm、より好ましくは200μmである。より好適な実施形態では、細孔径は5〜100μmである。最も好ましい細孔径は培養する細胞の種類に応じて異なり、動物細胞の場合には5〜50μm、ヒト細胞の場合には20〜100μmである。
【0033】
本発明の一実施形態では、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径は1〜300μmである。最大細孔径は、好ましくは250μm、より好ましくは200μmである。より好適な実施形態では、細孔径は5〜100μmである。最も好ましい細孔径は培養する細胞の種類に応じて異なり、動物細胞の場合には5〜50μm、ヒト細胞の場合には20〜100μmである。
【0034】
本発明の一実施形態では、プリフォームの全ての層の細孔径、すなわち、ファイバーネットワーク全体又はプリフォームの細孔径は1〜300μmである。最大細孔径は、好ましくは250μm、より好ましくは200μmである。より好適な実施形態では、細孔径は5〜100μmである。最も好ましい細孔径は培養する細胞の種類に応じて異なり、動物細胞の場合には5〜50μm、ヒト細胞の場合には20〜100μmである。
【0035】
上述したマイクロファイバー層及びナノファイバー層の細孔径の利点は、培養する細胞が通過し、プリフォームの厚み全体にわたって細胞が良好に侵入することである。これは、プリフォーム全体において組織を形成するために必要となる。細孔径は、培養する細胞の大きさに応じて異なり、細胞の大きさに応じて選択することができる。ヒト細胞の大きさは一般に動物細胞よりも大きいため、動物又はヒト細胞を使用する際に最も好ましい細孔径は異なる。
【0036】
本発明の別の実施形態では、マイクロファイバーの直径は3〜20μm、好ましくは5〜18μm、特に好ましくは8〜14μm(例えば12μm)である。これにより、優れた機械的及び構造的安定性が得られる。
【0037】
表1は、本発明において使用するマイクロファイバーの概要を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1において、第1の列は繊維径(μm)を示す。第2の列はこれらのファイバーの細孔径(μm)を示す。第3の列はファイバー層の顕微鏡写真を示す。第4の列は細胞内部成長の可視化の写真を示し、第5の列は細胞内部成長適格性を示す。
【0040】
マイクロファイバーのみを使用しているが、細胞内部成長に対する細孔径の影響は明確に示されている。可視化データは、Balguid,Strategies to optimize engineered tissue towards native human aortic valves,PhD thesis Eindhoven University of Technology,2008の図4.1のものである。細孔径は、上記データをPham et al.の図4と組み合わせることによって推定した。本発明の方法により、繊維径と細孔径との関係を切り離すことができ、ナノファイバーであっても十分な細胞内部成長を行うことができる。
【0041】
本発明の別の実施形態では、ナノファイバーの直径は50〜800nm、好ましくは100〜800nm、より好ましくは200〜800nm、特に好ましくは400〜800nm(ECMのナノ寸法と類似)である。別の実施形態では、ナノファイバーの最大直径は700nm又は600nmであってもよい。
【0042】
本発明の別の実施形態では、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の気孔率は70〜95%である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、前記少なくとも1つのナノファイバー層の気孔率は70〜95%である。
【0044】
上述したマイクロファイバー層及びナノファイバー層の気孔率の利点は、培養する細胞が通過し、プリフォームの厚み全体にわたって細胞が良好に侵入することである。これは、プリフォーム全体において組織を形成するために必要となる。細孔径は、培養する細胞の大きさに応じて異なり、細胞の大きさに応じて選択することができる。
【0045】
本発明のプリフォームは、1つのマイクロファイバー層と1つのナノファイバー層から構成されていてもよい。この場合、マイクロファイバー層は内層又は外層であってもよい。
【0046】
また、本発明のプリフォームは、ナノファイバー層を挟む2つのマイクロファイバー層から構成されていてもよい(逆も同様)。
【0047】
また、本発明のプリフォームは、交互又は所望の構成で積層された任意の数のマイクロファイバー層と任意の数のナノファイバー層から構成されていてもよく、例えば、直径が増加する多数の層又はナノファイバー層からマイクロファイバー層へと直径が増加する多数又は無数の層の勾配層又はナノファイバー層からマイクロファイバー層へと直径が増加し、再びナノファイバー層へと直径が減少する勾配層であってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態では、スキャフォールドの製造時に哺乳動物細胞をスキャフォールドに導入しない。哺乳動物細胞が存在しない場合には、使用前にスキャフォールドを容易に保存及び減菌することができる。本発明に係るスキャフォールドの別の利点は、使用前にスキャフォールドに所望の細胞を播種することができることである。哺乳動物細胞を含むスキャフォールドは、スキャフォールドに存在する細胞のみについてしか使用できない。
【0049】
図1〜図3は、本発明に係る多層プリフォームの3つの実施形態を概略的に示す。なお、図面のスケールは正確なものではない。
【0050】
図1は、2層プリフォームの断面の概略図である。図1は、第1のマイクロファイバー層1と第2のナノファイバー層2を示している。点線3はこれらの層の境界を示している。この実施形態では、層は平面状であり、オーバーラップしていない。また、両層の細孔径は同様である。
【0051】
図2は、ナノファイバーからマイクロファイバーへと異なる繊維径を有する6つの層を含む勾配多層を示す。点線はこれらの層の境界を示している。また、各層の細孔径は同様である。
【0052】
図3は、3つのマイクロファイバー層1と3つのナノファイバー層2を有する交互多層を示している。点線はこれらの層の境界を示している。また、各層の細孔径は同様である。
【0053】
本発明に係るプリフォームは、平面状ではない層を有していてもよく、層間の境界は明確ではなくてもよい。
【0054】
例えば、マイクロファイバー層の厚みは10〜500μm、好ましくは50〜250μmである。
【0055】
例えば、ナノファイバー層の厚みは100nm〜500μm、好ましくは10〜250μmである。
【0056】
プリフォーム全体の厚みは、心臓弁の場合には300〜1000μm、血管の場合には300〜1000μm、心臓パッチの場合には500〜2000μmであることが好ましい。厚みは、用途に応じて当業者が決定することができる。
【0057】
マイクロファイバー層とナノファイバー層の厚みは用途に応じて異なる。高い機械的特性を必要とする用途では、マイクロファイバー層の厚みは、低い機械的特性を必要とする用途よりも通常は小さくすることができる。また、各層の細孔径との関連もある。例えば、細孔径が大きい場合には、層を厚くしても侵入は容易である。このような、異なるパラメータは密接な関連を有し、当業者に不当な負担を強いることなく、請求の範囲に記載された範囲内で特定の用途に応じて調節することができる。
【0058】
また、プリフォーム全体の厚みも用途に応じて異なる。高い機械的特性を必要とする用途では、プリフォーム全体の厚みは、低い機械的特性を必要とする用途よりも通常は小さくすることができる。
【0059】
電界紡糸を使用して、ポリマープリフォーム又はスキャフォールドを得る。ポリマースキャフォールドは、現在の心臓血管組織の欠点(エラスチンの不足)を克服するものである。心臓血管移植組織の適切な生体内機能は、組織等価物におけるエラスチン生合成の不足によってこれまで実現していない。しかしながら、ポリマースキャフォールドは弾性挙動を示し、永久歪みは小さい。従って、ポリカプロラクトン等のポリマーは、弾性を有する代替物として機能することができ、天然エラスチンが徐々に生成してその役割を引き継ぐ。
【0060】
本発明の電界紡糸プリフォームを得るために使用されるポリマーは限定されるものではなく、特定の用途の要件に応じて当業者が選択することができる。適当なポリマーの例としては、脂肪族ポリマー、コポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ポリカプロラクトンが挙げられる。
【0061】
電界紡糸に使用するポリマーは、生分解性又は生体吸収性であることが好ましい。
【0062】
また、2種以上のポリマーの混合物を使用することもできる。また、2種以上のブロックを含むブロックコポリマーを使用することもできる。例えば、異なる分解速度を有するポリマーのブロックを使用することができる。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも2つのファイバー層(マイクロファイバー、ナノファイバー又はそれらの組み合わせ)は、異なる生物分解速度(biological decomposition rate)を有する。分解速度は標準的な方法(詳細は省略)によって測定することができる。内側のファイバー層の生物分解は外側のファイバー層よりも迅速に生じる。この場合、外側のファイバー層は必要な強度を示し、内側のファイバー層は天然組織に迅速に置換される。あるいは、外側のファイバー層の生物分解は内側のファイバー層よりも迅速に生じる。この場合、内側のファイバー層は必要な強度を示し、外側のファイバー層は天然組織に迅速に置換される。
【0064】
本発明の別の特に好適な実施形態は、少なくとも2つの成分からなるファイバーを含むファイバー層(マイクロファイバー又はナノファイバー又はそれらの両方)の使用に関し、各成分は異なる生物分解速度を有する。例えば、ファイバーは順次配置された成分a及びbからなり、反復的組成「−a−b−a−b−a−b−」を有するファイバーを得る。そのようなファイバー層を使用する場合、2つの成分の一方はある期間が経過した後に分解し、短いファイバー(分解速度の低い成分のファイバー)が残る。残存する短いファイバーは、新たに形成された天然組織の機械的強度に寄与し、その間に組織は増殖することができる(ゆっくり分解する成分のみからなるファイバー層の場合には不可能である)。2つの成分からなるファイバーからなるファイバー層を使用する利点は、そのようなファイバーからなるプリフォームを若い患者に埋め込む場合には、より大きなインプラントに交換するための外科手術が必要ではないことである。本発明に従って製造したインプラントは患者とともに成長することができる。ただし、上記利点は本発明の他の実施形態によって得ることができる。
【0065】
また、本発明は、電界紡糸によってプロテーゼのスキャフォールドとして適したプリフォームを製造するための方法であって、型を用意する工程と、次に電界紡糸によって少なくとも1つのマイクロファイバー層と少なくとも1つのナノファイバー層を任意の順序で形成する工程と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μm、好ましくは5〜100μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μm、好ましくは5〜100μmであることを特徴とする方法に関する。
【0066】
本願発明者らは、上記方法により、細胞の十分な侵入並びに組織の増殖のための栄養分の十分な拡散を可能とするプリフォームが得られることを見出した。1〜300μm、好ましくは5〜100μmの細孔径を有するナノファイバー層の製造は現在まで行われていない。
【0067】
上記方法の好適な実施形態は従属請求項に記載されており、以下に詳細に説明する。また、プリフォームに関連して説明した実施形態も上記方法に当てはまる(逆も同様)。
【0068】
本発明の方法の一実施形態では、前記少なくとも1つのナノファイバー層及び必要に応じて前記少なくとも1つのマイクロファイバー層を電界紡糸する工程は、220K(−53℃)未満、例えば、200〜220K(−73〜−53℃)の温度で行う(Simonet et al.,Polymer engineering and science,2007,pp.2020−2026を参照)。220K未満の温度は、冷却方法(例えば、ドライアイス又は液体窒素)に応じて使用することもできる。低温における電界紡糸は低温電界紡糸(cryo electro−spinning)と呼ばれる。そのような低温を使用する利点は、マイクロメートルサイズの細孔を形成できることである。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本願発明者らは、上記現象は、電界紡糸溶液に存在する水滴の凍結による氷晶の形成によって生じるものと考えている。これらの氷晶は、ナノファイバーの電界紡糸時に多孔性ネットワーク内に埋め込まれる。電界紡糸後、温度を室温に戻すと氷晶は溶け、氷晶の直径を有する細孔が残る。
【0069】
本発明の方法の別の実施形態は、型を用意する工程と、少なくとも1つのナノファイバー層を電界紡糸する工程と、次に少なくとも1つのマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、を含む。
【0070】
別の実施形態では、電界紡糸時に哺乳動物細胞を前記プリフォームに導入しない。細胞は、プリフォームが完成した後に導入する。
【0071】
また、本発明は、本発明の方法によって得られたプリフォームの、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材としての使用に関する。
【0072】
また、本発明は、基材上でヒト又は動物組織を増殖させるための方法であって、本発明のプリフォームを前記基材として使用する方法に関する。この場合、電界紡糸によって得られたプリフォームにヒト又は動物組織層を導入することができる。
【0073】
一実施形態では、スキャフォールドは心臓弁のプロテーゼを形成するためのものである。別の実施形態では、スキャフォールドは血管又は血管の接続装置のプロテーゼを形成するためのものである。1以上の血管を縫合によって接続すると、血液が漏れる場合が多い。すなわち、縫合は複雑な処置であり、血管は非常に小さく、円形であるために縫合が難しいためである。そのため、2以上の血管を接続するために使用することができるT字型接続装置が必要となる。
【0074】
本発明は、複雑な三次元形状を有するプリフォームの電界紡糸による製造に特に適している。特に、本発明は、心臓弁のプロテーゼのスキャフォールドとして使用することができるプリフォームをオランダ特許第NL1026076号に従って製造するために適している。
【0075】
ヒトの心臓は生物力学的役割を担い、1日当たり10万回鼓動し、1日当たり7200リットルの血液を全身に送り出している。そのため、特に大動脈の心臓弁に大きな機械的負荷がかかる(拡張期では80mmHg)。弁尖は、円周方向における優先的な繊維配向を有する異方性コラーゲン構造を有しており、収縮期における抵抗は最小となり、弛緩期の負荷を収容する十分な強さ及び剛性が得られる。(直径の小さな)動脈では、コラーゲンは螺旋構造を有する。動脈血圧に耐えるように設計は最適化されている。
【0076】
従って、電界紡糸によるスキャフォールドに対する機械的要求は、特にワンステップアプローチ用に設計されている場合には困難な課題である。スキャフォールドは丈夫で高い耐久性を有していなければならないが、a)心臓弁の場合には適切な開閉を可能とし、b)冠動脈又は心臓パッチの場合には変形鼓動に続く弾性変形を可能とする柔軟性も有していなければならない。また、糖尿病用シャントの場合には、透析のために繰り返し穴をあけることができなければならない。血流力学的性能及び耐久性に関する要件は、ISO規格(例えば、bioprosthetic heart valves with regards to effective orifice area,amount of regurgitation,mean and maximum systolic pressure gradients as well as durability[Norm EN ISO 5840:2006 Cardiovascular Implants Cardiovascular prostheses])に定められている。
【0077】
血流力学的性能に加えて、スキャフォールドは、適切なミクロ機械環境を提供し、適切な細胞分化又は表現型保存及び生体内組織成熟化を可能としなければならない。また、スキャフォールドは、心臓弁及び直径の小さな動脈におけるコラーゲン構造の形成を促進しなければならない。本発明のナノファイバーとマイクロファイバーの特定の組み合わせは、上述した要件の全てを満たすことができる。
【0078】
また、本発明は、電界紡糸によるプリフォームの製造方法であって、
a)実質的に凸面のみを含む少なくとも2つのサブ型からなる型を用意する工程と、
b)前記工程a)の前記サブ型の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、
c)前記工程a)の前記サブ型及び前記工程b)の前記サブ型から選択される少なくとも2つのサブ型を組み合わせる工程と、
d)前記c)のアセンブリの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸してプリフォームを得る工程と、を含み、
前記プリフォームは、少なくとも1つのナノファイバー層と、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmである方法に関する。
【0079】
上記方法の利点は、所望の三次元形状を有する複数のサブ型に細分された型を使用することにより、電界紡糸によって所望の(複雑な)三次元形状を有するプリフォームを得ることができることである。前記サブ型は、通常の平らな部分以外に、実質的に凸面のみを含む空間的構成を有する。
【0080】
電界紡糸によってファイバー層を複雑な三次元形状(凸面、凹面及び平らな部分)を有するターゲットに形成する場合には、余分なファイバーが型の凹状エッジの間で形成されるために均一なファイバー層を形成することは困難である。そのため、現実には均一なファイバー層が望ましいにもかかわらず、均一なファイバー層をそのような凹面に形成することは困難である。
【0081】
上記問題は、本発明の方法の工程a)〜d)によって解決される。すなわち、凹面を有さず、通常の平らな部分以外に実質的に凸面のみを含む複数のサブ型に型を細分することによって凹面による問題を回避する。
【0082】
型を構成するサブ型は、サブ型を組み合わせて型を形成することができるように構成されている。サブ型は、他のサブ型の1以上の表面に隣接する1以上の表面を有し、サブ型をぴったりと合わせて型を形成することができる。
【0083】
実際に使用されるプリフォームは凹面及び凸面を有する場合が多いため、電界紡糸によって型をコーティングすることによって均一なファイバー層を有する複雑な三次元的なプリフォームを製造することは不可能だった。
【0084】
通常の平らな部分以外に凸面を主として含む複数のサブ型に型を細分することによって所望のプリフォームを得ることができる。次に、1以上の工程によってサブ型に別々にファイバー層を形成し、ファイバー層を形成したサブ型を組み合わせ、ファイバー層を追加して全体を強化する。
【0085】
サブ型は、金属等の電界紡糸との使用に適した材料からなる。
【0086】
サブ型は、中実でってもよく、部分的に中空であってもよい。サブ型が部分的に中空である場合には、閉じた外側表面を有していてもよい。サブ型又は型には1以上の開口部を設けることができ、例えば、電界紡糸時にサブ型又は型を正しく配置するための開口部ホルダを開口部に取り付けることができる。また、その他の適当な材料を使用することもできる。低温紡糸条件のためにサブ型を冷却するために、中空のサブ型又は溝又は穴を含むサブ型を使用することができる。
【0087】
ファイバー層は、サブ型/型の表面(外表面)に形成する。
【0088】
以下、本発明の特に好適な実施形態を示す図面を参照して本発明についてさらに説明する。心臓弁の型として機能するプリフォームを製造した(図4a〜図6b)。図面は、3つの膜を含む心臓弁の型を示す。ただし、本発明によれば、より多くの膜又はより少ない膜を含む他の弁を製造することができる。
【0089】
図4aは、各サブ型1が1つの上面2及び2つの接触面3を含む3つのサブ型1を示す。各サブ型には、電界紡糸によって別々にファイバー層を形成する。3つのサブ型1は、通常の平らな表面以外に、実質的に凸面のみを含むように構成されている。サブ型1は凹面を有しておらず、電界紡糸によって均一なファイバー層が得られる。サブ型1は、組み合わせることによって型を形成するように構成されている。
【0090】
図4bは、図4aに示す3つのサブ型1の断面図であり、各サブ型1にファイバー層4を形成した後の状態を示す。サブ型1は、接触面3を互いに隣接させて配置することによってアセンブリ5を形成している。部分6は接合面と呼ばれ、適切に機能する人工心臓弁を得るために非常に重要である。そのような接合面により、膜はヒト又は動物細胞と共にプリフォームを培養した後に正しく当接して生物心臓弁が得られる。培養時にプリフォームはある程度収縮するため、余分なエッジ(接合面)が膜に存在することが重要である。接合面6は、収縮が発生した場合に膜間に漏れを生じさせる開口部が形成されることを防止することができる。本発明に係る3つのサブ型1の代わりに心臓弁の1つの型を使用した場合にはそのような接合面は得られない。
【0091】
図5aは、ファイバー層(図示せず)が形成されたサブ型1のアセンブリ5を示す。アセンブリ5はリング7によって保持されているが、その他の公知の方法を使用することもできる。図5aは、アセンブリ5の端部においてぴったりと正確に嵌合する相補的なサブ型8を示している。
【0092】
図5bに示す心臓弁の型は、ファイバー層が形成されたサブ型1のアセンブリ5、リング7、サブ型8からなる。本発明の方法の工程(d)では、電界紡糸によって型全体にファイバー層9を形成する。
【0093】
図5cは、工程c)後の型の断面図であり、上面2及びファイバー層4,9を有するサブ型1,8を示している。また、図5cは、ファイバー層4の一部を構成する接合面6と、ファイバー層4の一部を構成し、サブ型1の上面2に形成された膜10を示す。
【0094】
図6a及び図6bは、サブ型1,8を除去して得られるプリフォームを示す。サブ型は、ファイバー層から1つずつ慎重に除去する。サブ型の除去は、例えば手動で行うことができる。また、内部の接触面3上のファイバー層4の一部も除去するが、接合面6は残す。図6aはサブ型1,8を除去した後のプリフォームの平面図であり、図6bはサブ型1,8を除去した後のプリフォームの側面図であり、膜10、ファイバー層4(実線)及びファイバー層9(点線)を示す。また、図6bは接合面6も示す。
【0095】
好適な実施形態に基づいて本発明について説明したが、体の他の部分(例えば、心臓又は血管の他の弁、関節の一部(膝頭))のインプラントの製造に使用される他のプリフォームを製造するために本発明を使用することもできる。
【0096】
その他の実施形態は請求項に記載されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界紡糸によって得られ、プロテーゼのスキャフォールドとして適しており、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、少なくとも1つのナノファイバー層と、を含む多層プリフォームに関する。また、本発明は、電界紡糸によるプリフォームの製造方法に関する。さらに、本発明は、前記プリフォームの使用並びに基材上でヒト又は動物組織を増殖させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Q.P.Pham et al.,Biomacromolecules 2006,Vol.7,pp.1796−1805は、ε−ポリカプロラクトンのポリマーファイバーからなる電界紡糸多層プリフォームを開示している。上記多層プリフォームは、2〜10μmの直径を有するマイクロファイバー及び約600nmの直径を有するナノファイバーの層を交互に含む。しかしながら、プリフォームへの細胞及び栄養分の経路が最適化されていないため、プリフォームマトリックスへの細胞の内部成長は十分ではない。
【0003】
米国特許出願公開第2008/112998号は、交互に積層された電界紡糸ポリマー層と、それらに挟まれた哺乳動物細胞と、を含む合成組織スキャフォールドを開示している。組織スキャフォールドに哺乳動物細胞が存在する場合には、使用前のスキャフォールドの減菌及び保存が複雑となる。
【0004】
オランダ特許第NL1026076号に対応する米国特許出願公開第2008/0131965号は、電界紡糸によってプリフォームを製造するための方法を開示している。米国特許出願公開第2008/0131965号は、ナノファイバー及びマイクロファイバーからプリフォームを製造する方法は開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、三次元的なプロテーゼ又はインプラントを製造することができるプリフォームを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、細胞の内部成長が良好なプリフォームを提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、構造的及び機械的安定性と細胞の内部成長及び付着の最適なバランスを有するプリフォームを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材として使用することができるプリフォームを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、プロテーゼ又はインプラント(特に、心臓弁、血管、血管を接続するためのT字形接続装置又は心臓パッチ)のための基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の1以上は、請求項1の前文に記載された特徴を有し、少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであることを特徴とする多層プリフォームによって達成される。
【0011】
本発明の一実施形態では、プリフォームの全ての層の細孔径、すなわち、ファイバーネットワーク全体又はプリフォームの細孔径は1〜300μmである。この場合、プリフォーム全体の気孔率は所望の範囲となり、プリフォームの厚み全体にわたって細胞及び栄養分が良好に侵入する。
【0012】
本願発明者らは、1以上のマイクロファイバー層及び1以上のナノファイバー層からなるプリフォームを使用する場合には、細胞の良好な内部成長及び栄養分の良好な拡散のために、1以上のマイクロファイバー層及び1以上のナノファイバー層の気孔率が十分に大きいことが必須であることを見出した。
【0013】
さらに検討した結果、本願発明者らは、本発明のプリフォームによって、構造的及び機械的特性と細胞の内部成長及び付着の最適なバランスを得ることができることを見出した。特に、本願発明者らは、ナノファイバー層の細孔径が重要であり、特定の理論に縛られることを望むものではないが、ナノファイバー層の細孔径は細胞の十分な内部成長をもたらすと考えている。
【0014】
以下の詳細な説明と添付図面によって本発明はより良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る2層プリフォームの概略断面である。
【図2】本発明の一実施形態に係る勾配積層プリフォームの概略断面である。
【図3】本発明に係る多層プリフォームの別の実施形態を示す。
【図4a】人工三膜心臓弁のスキャフォールドとして使用する本発明に係るプリフォームの電界紡糸に使用することができる型の3つのサブ型を示す。
【図4b】図4aに示すサブ型のアセンブリの断面図であり、各サブ型に電界紡糸によって1つのマイクロファイバー層及び1つのナノファイバー層を形成した後の状態を示す。
【図5a】図4aに示すサブ型のアセンブリ及び心臓弁を得るための相補的なサブ型を示す。
【図5b】組み合わせられた図5aに示すサブ型の断面図である。
【図5c】電界紡糸によって得られた1つのマイクロファイバー層及び1つのナノファイバー層を含む心臓弁の型の断面図である。
【図6a】図5a〜図5cに示す型を使用して得られた本発明に係るプリフォームの平面図である。
【図6b】図5a〜図5cに示す型を使用して得られた本発明に係るプリフォームの側面図である。
【図7a】本発明の別の実施形態に係る型(2以上の血管を接続するためのT字型接続装置)を示す。
【図7b】サブ型の実施形態を示す。
【図7c】サブ型の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願明細書において使用する「マイクロファイバー」という用語は、マイクロメートル領域の直径を有するファイバーを意味する。
【0017】
本願明細書において使用する「ナノファイバー」という用語は、ナノメートル領域の直径を有するファイバーを意味する。
【0018】
本願明細書において使用する「プリフォーム」という用語は、三次元形状を有し、組織工学におけるスキャフォールドとして使用することができる物品を意味する。
【0019】
本願明細書において使用する「多層」という用語は、ナノファイバー層とマイクロファイバー層からなる少なくとも2つの層を含むことを意味する。本発明の範囲内において上記定義に含まれるものとしては、積層された無数の非常に薄い層からなり、ある層から別の層に向かってファイバーの直径が連続的に変化する勾配積層プリフォームが挙げられる。このようなプリフォームは、例えば、電界紡糸の場合には、紡糸時に紡糸パラメータを連続的に変化させてファイバーの直径を連続的に増加又は減少させることによって得ることができる。勾配多層プリフォームの非常に基本的な例としては、一方の外表面にマイクロファイバー層を有し、他方の外表面にナノファイバー層を有し、それらの間に、隣接する層よりも小さな直径を有する無数のマイクロファイバー層及びナノファイバー層を有するプリフォームが挙げられる。
【0020】
組織工学分野において使用されるスキャフォールドの製造に電界紡糸を使用することが知られている。電界紡糸では、所望のスキャフォールドの特性を変更・最適化する多くのパラメータは変更することができるため、電界紡糸は汎用技術となっている。電界紡糸プリフォームの用途の例としては、組織工学におけるスキャフォールド又は型、薬物送達デバイス、創傷包帯としての使用が挙げられる。
【0021】
本願発明者らの1名によるオランダ特許第NL1026076号(米国特許出願公開第2008/0131965号に対応)は、ポリマーマイクロファイバーの電界紡糸によってプリフォームを製造するための方法を開示しており、得られるプリフォームは心臓弁のプロテーゼのスキャフォールドとして使用することができる。図3〜図7に開示する型及びサブ型はオランダ特許第NL1026076号に開示されている。
【0022】
電界紡糸は、所望のプリフォームに応じて平面形状、板形状又は複雑な三次元形状を有する金属ターゲット又は型を使用する方法である。電磁場によってポリマーファイバーを型に堆積させる。ポリマー繊維は、1種以上の溶媒に溶解した1種以上のポリマーの溶液から生成する。電界紡糸は公知であり、本願明細書においては詳細な説明は省略する。
【0023】
本発明に係るファイバー層の材料としては、電界紡糸することができる任意のファイバー材料を使用することができる。ただし、本発明では、ポリマー材料、特に生体適合性ポリマー材料をファイバー材料として使用することが好ましい。好適なポリマーの例は後述する。
【0024】
ファイバーを(サブ)型の表面に堆積させた後、(サブ)型をファイバーから除去するとファイバーのプリフォーム又はスキャフォールドが得られる。得られるプリフォームは、重なり合った不織ファイバーからなる多孔性ネットワークであり、細胞及び組織の内部成長及び成長のための基材として使用することができる。細胞及び組織の形成は生体内又は生体外で行うことができる。生体内において組織を形成する場合には、播種又は未播種プリフォーム(細胞を播種したプリフォーム又は細胞を播種していないプリフォーム)を体内に埋め込み、細胞を引き寄せ、組織形成を促進する。生体外において組織を形成する場合には、解放繊維状構造内で増殖することができるヒト又は動物細胞を使用してプリフォームを培養する。培養は、細胞増殖を最適化するように、適当な条件(栄養分、成長因子、温度、時間、pH、機械的及び生化学的刺激等)下で行うことができる。これにより、プリフォームの内部及び表面に組織が形成される。組織とプリフォームの組み合わせは、インプラント又はプロテーゼとして使用することができる。このようにして得られたプロテーゼ又はインプラントは、ヒト又は動物の体内に埋め込むことができる。
【0025】
生分解性ポリマーをファイバー層として使用して本発明に係るプリフォームを製造する場合には、スキャフォールドの多孔性ファイバーネットワークは、生体内における組織増殖及び/又は生体への埋め込み後に分解する。その結果、新たに形成された組織のみが残り、生体組織からなるプロテーゼを形成する。そのため、本発明では、生分解性又は生体吸収性ポリマーをプリフォームの製造に使用することが好ましく、それにより、所定の時間が経過するとプリフォームはほぼ完全に分解又は再吸収される。ポリマー材料はヒト又は動物組織で置き換えられ、完全に生体組織からなるインプラント又はプロテーゼが体内に存在することになる。
【0026】
電界紡糸によって製造したスキャフォールドは、いくつかの重要なパラメータによって特徴付けられる。第1のパラメータは繊維径であり、例えば、電子顕微鏡法によって測定する。繊維径は、スキャフォールドのいくつかの特性(表面積及び後述するパラメータ等)に対して影響を与え得る。本発明では、異なる繊維径を有する少なくとも2つの層(すなわち、少なくとも1つのマイクロファイバー層及び少なくとも1つのナノファイバー層)が存在することが必要である。
【0027】
第2のパラメータはスキャフォールドの細孔径であり、例えば、水銀ポロシメトリーによって測定する。本発明のプリフォームの層の細孔径は1〜300μmとする。
【0028】
第3のパラメータは気孔率であり、例えば、水銀ポロシメトリー、流体侵入法(fluid intrusion)及び重量測定法によって測定する。細孔径及び気孔率は、細胞の付着、増殖、移動及び/又は分化に影響を及ぼす付属品に影響を及ぼすスキャフォールドの重要な特性である。
【0029】
マイクロファイバー層を使用することにより、ファイバーからなるスキャフォールドの良好な構造的及び機械的安定性を得ることができる。ナノファイバー層を使用することにより、スキャフォールド内で組織を増殖させるために使用するヒト及び/又は動物細胞に対する良好な適合性が得られる。本願発明者らは、特定の細孔径範囲のマイクロファイバー層及びナノファイバー層の組み合わせにより、構造的及び機械的安定性とヒト及び/又は動物細胞に対する適合性の最適なバランスが得られることを見出した。
【0030】
細胞外マトリックス(ECM)は、細胞の構造的支持体となるヒト又は動物組織の細胞外部分である。ECMは、間質マトリックスと基底膜で構成される。間質マトリックスは異種細胞間に存在し、多糖類及び(本発明のナノファイバーを物理的類似性を示す)繊維状タンパク質のゲルによって形成されている。基底膜はECMのシート状沈着物であり、上皮細胞が付着して増殖する。本発明に使用するナノファイバー層は、細胞の細胞外マトリックスの物理的特性を模倣する。その利点は、プリフォームにおいて増殖する細胞の環境が良好となり、マイクロファイバー層よりも良好にナノファイバー層に付着することである。
【0031】
プリフォームの好適な実施形態は従属請求項に記載されており、以下に詳細に説明する。
【0032】
本発明の一実施形態では、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径は1〜300μmである。最大細孔径は、好ましくは250μm、より好ましくは200μmである。より好適な実施形態では、細孔径は5〜100μmである。最も好ましい細孔径は培養する細胞の種類に応じて異なり、動物細胞の場合には5〜50μm、ヒト細胞の場合には20〜100μmである。
【0033】
本発明の一実施形態では、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径は1〜300μmである。最大細孔径は、好ましくは250μm、より好ましくは200μmである。より好適な実施形態では、細孔径は5〜100μmである。最も好ましい細孔径は培養する細胞の種類に応じて異なり、動物細胞の場合には5〜50μm、ヒト細胞の場合には20〜100μmである。
【0034】
本発明の一実施形態では、プリフォームの全ての層の細孔径、すなわち、ファイバーネットワーク全体又はプリフォームの細孔径は1〜300μmである。最大細孔径は、好ましくは250μm、より好ましくは200μmである。より好適な実施形態では、細孔径は5〜100μmである。最も好ましい細孔径は培養する細胞の種類に応じて異なり、動物細胞の場合には5〜50μm、ヒト細胞の場合には20〜100μmである。
【0035】
上述したマイクロファイバー層及びナノファイバー層の細孔径の利点は、培養する細胞が通過し、プリフォームの厚み全体にわたって細胞が良好に侵入することである。これは、プリフォーム全体において組織を形成するために必要となる。細孔径は、培養する細胞の大きさに応じて異なり、細胞の大きさに応じて選択することができる。ヒト細胞の大きさは一般に動物細胞よりも大きいため、動物又はヒト細胞を使用する際に最も好ましい細孔径は異なる。
【0036】
本発明の別の実施形態では、マイクロファイバーの直径は3〜20μm、好ましくは5〜18μm、特に好ましくは8〜14μm(例えば12μm)である。これにより、優れた機械的及び構造的安定性が得られる。
【0037】
表1は、本発明において使用するマイクロファイバーの概要を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1において、第1の列は繊維径(μm)を示す。第2の列はこれらのファイバーの細孔径(μm)を示す。第3の列はファイバー層の顕微鏡写真を示す。第4の列は細胞内部成長の可視化の写真を示し、第5の列は細胞内部成長適格性を示す。
【0040】
マイクロファイバーのみを使用しているが、細胞内部成長に対する細孔径の影響は明確に示されている。可視化データは、Balguid,Strategies to optimize engineered tissue towards native human aortic valves,PhD thesis Eindhoven University of Technology,2008の図4.1のものである。細孔径は、上記データをPham et al.の図4と組み合わせることによって推定した。本発明の方法により、繊維径と細孔径との関係を切り離すことができ、ナノファイバーであっても十分な細胞内部成長を行うことができる。
【0041】
本発明の別の実施形態では、ナノファイバーの直径は50〜800nm、好ましくは100〜800nm、より好ましくは200〜800nm、特に好ましくは400〜800nm(ECMのナノ寸法と類似)である。別の実施形態では、ナノファイバーの最大直径は700nm又は600nmであってもよい。
【0042】
本発明の別の実施形態では、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の気孔率は70〜95%である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、前記少なくとも1つのナノファイバー層の気孔率は70〜95%である。
【0044】
上述したマイクロファイバー層及びナノファイバー層の気孔率の利点は、培養する細胞が通過し、プリフォームの厚み全体にわたって細胞が良好に侵入することである。これは、プリフォーム全体において組織を形成するために必要となる。細孔径は、培養する細胞の大きさに応じて異なり、細胞の大きさに応じて選択することができる。
【0045】
本発明のプリフォームは、1つのマイクロファイバー層と1つのナノファイバー層から構成されていてもよい。この場合、マイクロファイバー層は内層又は外層であってもよい。
【0046】
また、本発明のプリフォームは、ナノファイバー層を挟む2つのマイクロファイバー層から構成されていてもよい(逆も同様)。
【0047】
また、本発明のプリフォームは、交互又は所望の構成で積層された任意の数のマイクロファイバー層と任意の数のナノファイバー層から構成されていてもよく、例えば、直径が増加する多数の層又はナノファイバー層からマイクロファイバー層へと直径が増加する多数又は無数の層の勾配層又はナノファイバー層からマイクロファイバー層へと直径が増加し、再びナノファイバー層へと直径が減少する勾配層であってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態では、スキャフォールドの製造時に哺乳動物細胞をスキャフォールドに導入しない。哺乳動物細胞が存在しない場合には、使用前にスキャフォールドを容易に保存及び減菌することができる。本発明に係るスキャフォールドの別の利点は、使用前にスキャフォールドに所望の細胞を播種することができることである。哺乳動物細胞を含むスキャフォールドは、スキャフォールドに存在する細胞のみについてしか使用できない。
【0049】
図1〜図3は、本発明に係る多層プリフォームの3つの実施形態を概略的に示す。なお、図面のスケールは正確なものではない。
【0050】
図1は、2層プリフォームの断面の概略図である。図1は、第1のマイクロファイバー層1と第2のナノファイバー層2を示している。点線3はこれらの層の境界を示している。この実施形態では、層は平面状であり、オーバーラップしていない。また、両層の細孔径は同様である。
【0051】
図2は、ナノファイバーからマイクロファイバーへと異なる繊維径を有する6つの層を含む勾配多層を示す。点線はこれらの層の境界を示している。また、各層の細孔径は同様である。
【0052】
図3は、3つのマイクロファイバー層1と3つのナノファイバー層2を有する交互多層を示している。点線はこれらの層の境界を示している。また、各層の細孔径は同様である。
【0053】
本発明に係るプリフォームは、平面状ではない層を有していてもよく、層間の境界は明確ではなくてもよい。
【0054】
例えば、マイクロファイバー層の厚みは10〜500μm、好ましくは50〜250μmである。
【0055】
例えば、ナノファイバー層の厚みは100nm〜500μm、好ましくは10〜250μmである。
【0056】
プリフォーム全体の厚みは、心臓弁の場合には300〜1000μm、血管の場合には300〜1000μm、心臓パッチの場合には500〜2000μmであることが好ましい。厚みは、用途に応じて当業者が決定することができる。
【0057】
マイクロファイバー層とナノファイバー層の厚みは用途に応じて異なる。高い機械的特性を必要とする用途では、マイクロファイバー層の厚みは、低い機械的特性を必要とする用途よりも通常は小さくすることができる。また、各層の細孔径との関連もある。例えば、細孔径が大きい場合には、層を厚くしても侵入は容易である。このような、異なるパラメータは密接な関連を有し、当業者に不当な負担を強いることなく、請求の範囲に記載された範囲内で特定の用途に応じて調節することができる。
【0058】
また、プリフォーム全体の厚みも用途に応じて異なる。高い機械的特性を必要とする用途では、プリフォーム全体の厚みは、低い機械的特性を必要とする用途よりも通常は小さくすることができる。
【0059】
電界紡糸を使用して、ポリマープリフォーム又はスキャフォールドを得る。ポリマースキャフォールドは、現在の心臓血管組織の欠点(エラスチンの不足)を克服するものである。心臓血管移植組織の適切な生体内機能は、組織等価物におけるエラスチン生合成の不足によってこれまで実現していない。しかしながら、ポリマースキャフォールドは弾性挙動を示し、永久歪みは小さい。従って、ポリカプロラクトン等のポリマーは、弾性を有する代替物として機能することができ、天然エラスチンが徐々に生成してその役割を引き継ぐ。
【0060】
本発明の電界紡糸プリフォームを得るために使用されるポリマーは限定されるものではなく、特定の用途の要件に応じて当業者が選択することができる。適当なポリマーの例としては、脂肪族ポリマー、コポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ポリカプロラクトンが挙げられる。
【0061】
電界紡糸に使用するポリマーは、生分解性又は生体吸収性であることが好ましい。
【0062】
また、2種以上のポリマーの混合物を使用することもできる。また、2種以上のブロックを含むブロックコポリマーを使用することもできる。例えば、異なる分解速度を有するポリマーのブロックを使用することができる。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも2つのファイバー層(マイクロファイバー、ナノファイバー又はそれらの組み合わせ)は、異なる生物分解速度(biological decomposition rate)を有する。分解速度は標準的な方法(詳細は省略)によって測定することができる。内側のファイバー層の生物分解は外側のファイバー層よりも迅速に生じる。この場合、外側のファイバー層は必要な強度を示し、内側のファイバー層は天然組織に迅速に置換される。あるいは、外側のファイバー層の生物分解は内側のファイバー層よりも迅速に生じる。この場合、内側のファイバー層は必要な強度を示し、外側のファイバー層は天然組織に迅速に置換される。
【0064】
本発明の別の特に好適な実施形態は、少なくとも2つの成分からなるファイバーを含むファイバー層(マイクロファイバー又はナノファイバー又はそれらの両方)の使用に関し、各成分は異なる生物分解速度を有する。例えば、ファイバーは順次配置された成分a及びbからなり、反復的組成「−a−b−a−b−a−b−」を有するファイバーを得る。そのようなファイバー層を使用する場合、2つの成分の一方はある期間が経過した後に分解し、短いファイバー(分解速度の低い成分のファイバー)が残る。残存する短いファイバーは、新たに形成された天然組織の機械的強度に寄与し、その間に組織は増殖することができる(ゆっくり分解する成分のみからなるファイバー層の場合には不可能である)。2つの成分からなるファイバーからなるファイバー層を使用する利点は、そのようなファイバーからなるプリフォームを若い患者に埋め込む場合には、より大きなインプラントに交換するための外科手術が必要ではないことである。本発明に従って製造したインプラントは患者とともに成長することができる。ただし、上記利点は本発明の他の実施形態によって得ることができる。
【0065】
また、本発明は、電界紡糸によってプロテーゼのスキャフォールドとして適したプリフォームを製造するための方法であって、型を用意する工程と、次に電界紡糸によって少なくとも1つのマイクロファイバー層と少なくとも1つのナノファイバー層を任意の順序で形成する工程と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μm、好ましくは5〜100μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μm、好ましくは5〜100μmであることを特徴とする方法に関する。
【0066】
本願発明者らは、上記方法により、細胞の十分な侵入並びに組織の増殖のための栄養分の十分な拡散を可能とするプリフォームが得られることを見出した。1〜300μm、好ましくは5〜100μmの細孔径を有するナノファイバー層の製造は現在まで行われていない。
【0067】
上記方法の好適な実施形態は従属請求項に記載されており、以下に詳細に説明する。また、プリフォームに関連して説明した実施形態も上記方法に当てはまる(逆も同様)。
【0068】
本発明の方法の一実施形態では、前記少なくとも1つのナノファイバー層及び必要に応じて前記少なくとも1つのマイクロファイバー層を電界紡糸する工程は、220K(−53℃)未満、例えば、200〜220K(−73〜−53℃)の温度で行う(Simonet et al.,Polymer engineering and science,2007,pp.2020−2026を参照)。220K未満の温度は、冷却方法(例えば、ドライアイス又は液体窒素)に応じて使用することもできる。低温における電界紡糸は低温電界紡糸(cryo electro−spinning)と呼ばれる。そのような低温を使用する利点は、マイクロメートルサイズの細孔を形成できることである。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本願発明者らは、上記現象は、電界紡糸溶液に存在する水滴の凍結による氷晶の形成によって生じるものと考えている。これらの氷晶は、ナノファイバーの電界紡糸時に多孔性ネットワーク内に埋め込まれる。電界紡糸後、温度を室温に戻すと氷晶は溶け、氷晶の直径を有する細孔が残る。
【0069】
本発明の方法の別の実施形態は、型を用意する工程と、少なくとも1つのナノファイバー層を電界紡糸する工程と、次に少なくとも1つのマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、を含む。
【0070】
別の実施形態では、電界紡糸時に哺乳動物細胞を前記プリフォームに導入しない。細胞は、プリフォームが完成した後に導入する。
【0071】
また、本発明は、本発明の方法によって得られたプリフォームの、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材としての使用に関する。
【0072】
また、本発明は、基材上でヒト又は動物組織を増殖させるための方法であって、本発明のプリフォームを前記基材として使用する方法に関する。この場合、電界紡糸によって得られたプリフォームにヒト又は動物組織層を導入することができる。
【0073】
一実施形態では、スキャフォールドは心臓弁のプロテーゼを形成するためのものである。別の実施形態では、スキャフォールドは血管又は血管の接続装置のプロテーゼを形成するためのものである。1以上の血管を縫合によって接続すると、血液が漏れる場合が多い。すなわち、縫合は複雑な処置であり、血管は非常に小さく、円形であるために縫合が難しいためである。そのため、2以上の血管を接続するために使用することができるT字型接続装置が必要となる。
【0074】
本発明は、複雑な三次元形状を有するプリフォームの電界紡糸による製造に特に適している。特に、本発明は、心臓弁のプロテーゼのスキャフォールドとして使用することができるプリフォームをオランダ特許第NL1026076号に従って製造するために適している。
【0075】
ヒトの心臓は生物力学的役割を担い、1日当たり10万回鼓動し、1日当たり7200リットルの血液を全身に送り出している。そのため、特に大動脈の心臓弁に大きな機械的負荷がかかる(拡張期では80mmHg)。弁尖は、円周方向における優先的な繊維配向を有する異方性コラーゲン構造を有しており、収縮期における抵抗は最小となり、弛緩期の負荷を収容する十分な強さ及び剛性が得られる。(直径の小さな)動脈では、コラーゲンは螺旋構造を有する。動脈血圧に耐えるように設計は最適化されている。
【0076】
従って、電界紡糸によるスキャフォールドに対する機械的要求は、特にワンステップアプローチ用に設計されている場合には困難な課題である。スキャフォールドは丈夫で高い耐久性を有していなければならないが、a)心臓弁の場合には適切な開閉を可能とし、b)冠動脈又は心臓パッチの場合には変形鼓動に続く弾性変形を可能とする柔軟性も有していなければならない。また、糖尿病用シャントの場合には、透析のために繰り返し穴をあけることができなければならない。血流力学的性能及び耐久性に関する要件は、ISO規格(例えば、bioprosthetic heart valves with regards to effective orifice area,amount of regurgitation,mean and maximum systolic pressure gradients as well as durability[Norm EN ISO 5840:2006 Cardiovascular Implants Cardiovascular prostheses])に定められている。
【0077】
血流力学的性能に加えて、スキャフォールドは、適切なミクロ機械環境を提供し、適切な細胞分化又は表現型保存及び生体内組織成熟化を可能としなければならない。また、スキャフォールドは、心臓弁及び直径の小さな動脈におけるコラーゲン構造の形成を促進しなければならない。本発明のナノファイバーとマイクロファイバーの特定の組み合わせは、上述した要件の全てを満たすことができる。
【0078】
また、本発明は、電界紡糸によるプリフォームの製造方法であって、
a)実質的に凸面のみを含む少なくとも2つのサブ型からなる型を用意する工程と、
b)前記工程a)の前記サブ型の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、
c)前記工程a)の前記サブ型及び前記工程b)の前記サブ型から選択される少なくとも2つのサブ型を組み合わせる工程と、
d)前記c)のアセンブリの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸してプリフォームを得る工程と、を含み、
前記プリフォームは、少なくとも1つのナノファイバー層と、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmである方法に関する。
【0079】
上記方法の利点は、所望の三次元形状を有する複数のサブ型に細分された型を使用することにより、電界紡糸によって所望の(複雑な)三次元形状を有するプリフォームを得ることができることである。前記サブ型は、通常の平らな部分以外に、実質的に凸面のみを含む空間的構成を有する。
【0080】
電界紡糸によってファイバー層を複雑な三次元形状(凸面、凹面及び平らな部分)を有するターゲットに形成する場合には、余分なファイバーが型の凹状エッジの間で形成されるために均一なファイバー層を形成することは困難である。そのため、現実には均一なファイバー層が望ましいにもかかわらず、均一なファイバー層をそのような凹面に形成することは困難である。
【0081】
上記問題は、本発明の方法の工程a)〜d)によって解決される。すなわち、凹面を有さず、通常の平らな部分以外に実質的に凸面のみを含む複数のサブ型に型を細分することによって凹面による問題を回避する。
【0082】
型を構成するサブ型は、サブ型を組み合わせて型を形成することができるように構成されている。サブ型は、他のサブ型の1以上の表面に隣接する1以上の表面を有し、サブ型をぴったりと合わせて型を形成することができる。
【0083】
実際に使用されるプリフォームは凹面及び凸面を有する場合が多いため、電界紡糸によって型をコーティングすることによって均一なファイバー層を有する複雑な三次元的なプリフォームを製造することは不可能だった。
【0084】
通常の平らな部分以外に凸面を主として含む複数のサブ型に型を細分することによって所望のプリフォームを得ることができる。次に、1以上の工程によってサブ型に別々にファイバー層を形成し、ファイバー層を形成したサブ型を組み合わせ、ファイバー層を追加して全体を強化する。
【0085】
サブ型は、金属等の電界紡糸との使用に適した材料からなる。
【0086】
サブ型は、中実でってもよく、部分的に中空であってもよい。サブ型が部分的に中空である場合には、閉じた外側表面を有していてもよい。サブ型又は型には1以上の開口部を設けることができ、例えば、電界紡糸時にサブ型又は型を正しく配置するための開口部ホルダを開口部に取り付けることができる。また、その他の適当な材料を使用することもできる。低温紡糸条件のためにサブ型を冷却するために、中空のサブ型又は溝又は穴を含むサブ型を使用することができる。
【0087】
ファイバー層は、サブ型/型の表面(外表面)に形成する。
【0088】
以下、本発明の特に好適な実施形態を示す図面を参照して本発明についてさらに説明する。心臓弁の型として機能するプリフォームを製造した(図4a〜図6b)。図面は、3つの膜を含む心臓弁の型を示す。ただし、本発明によれば、より多くの膜又はより少ない膜を含む他の弁を製造することができる。
【0089】
図4aは、各サブ型1が1つの上面2及び2つの接触面3を含む3つのサブ型1を示す。各サブ型には、電界紡糸によって別々にファイバー層を形成する。3つのサブ型1は、通常の平らな表面以外に、実質的に凸面のみを含むように構成されている。サブ型1は凹面を有しておらず、電界紡糸によって均一なファイバー層が得られる。サブ型1は、組み合わせることによって型を形成するように構成されている。
【0090】
図4bは、図4aに示す3つのサブ型1の断面図であり、各サブ型1にファイバー層4を形成した後の状態を示す。サブ型1は、接触面3を互いに隣接させて配置することによってアセンブリ5を形成している。部分6は接合面と呼ばれ、適切に機能する人工心臓弁を得るために非常に重要である。そのような接合面により、膜はヒト又は動物細胞と共にプリフォームを培養した後に正しく当接して生物心臓弁が得られる。培養時にプリフォームはある程度収縮するため、余分なエッジ(接合面)が膜に存在することが重要である。接合面6は、収縮が発生した場合に膜間に漏れを生じさせる開口部が形成されることを防止することができる。本発明に係る3つのサブ型1の代わりに心臓弁の1つの型を使用した場合にはそのような接合面は得られない。
【0091】
図5aは、ファイバー層(図示せず)が形成されたサブ型1のアセンブリ5を示す。アセンブリ5はリング7によって保持されているが、その他の公知の方法を使用することもできる。図5aは、アセンブリ5の端部においてぴったりと正確に嵌合する相補的なサブ型8を示している。
【0092】
図5bに示す心臓弁の型は、ファイバー層が形成されたサブ型1のアセンブリ5、リング7、サブ型8からなる。本発明の方法の工程(d)では、電界紡糸によって型全体にファイバー層9を形成する。
【0093】
図5cは、工程c)後の型の断面図であり、上面2及びファイバー層4,9を有するサブ型1,8を示している。また、図5cは、ファイバー層4の一部を構成する接合面6と、ファイバー層4の一部を構成し、サブ型1の上面2に形成された膜10を示す。
【0094】
図6a及び図6bは、サブ型1,8を除去して得られるプリフォームを示す。サブ型は、ファイバー層から1つずつ慎重に除去する。サブ型の除去は、例えば手動で行うことができる。また、内部の接触面3上のファイバー層4の一部も除去するが、接合面6は残す。図6aはサブ型1,8を除去した後のプリフォームの平面図であり、図6bはサブ型1,8を除去した後のプリフォームの側面図であり、膜10、ファイバー層4(実線)及びファイバー層9(点線)を示す。また、図6bは接合面6も示す。
【0095】
好適な実施形態に基づいて本発明について説明したが、体の他の部分(例えば、心臓又は血管の他の弁、関節の一部(膝頭))のインプラントの製造に使用される他のプリフォームを製造するために本発明を使用することもできる。
【0096】
その他の実施形態は請求項に記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界紡糸によって得られ、プロテーゼのスキャフォールドとして適した多層プリフォームであって、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、少なくとも1つのナノファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであることを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項2】
請求項1において、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層及び/又は前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が5〜100μmであることを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記プリフォームの全ての層の細孔径が1〜300μm、好ましくは3〜100μmである多層プリフォーム。
【請求項4】
前記請求項のいずれか1項において、前記マイクロファイバーの直径が3〜20μm、好ましくは5〜18μm、特に好ましくは8〜14μmであることを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項において、前記ナノファイバーの直径が50〜800μm、好ましくは少なくとも200nm、特に少なくとも400nm、好ましくは700nmを超えず、特に600nmを超えないことを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1項において、前記マイクロファイバー層及び/又はナノファイバー層の気孔率が70〜95%である多層プリフォーム。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項において、直径勾配を有する無数の層を有する多層プリフォーム。
【請求項8】
電界紡糸によってプロテーゼのスキャフォールドとして適したプリフォームを製造するための方法であって、型を用意する工程と、次に少なくとも1つのマイクロファイバー層と少なくとも1つのナノファイバー層を任意の順序で電界紡糸する工程と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであることを特徴とするプリフォームの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、前記少なくとも1つのナノファイバー層を電界紡糸する工程を220K未満の温度で行うプリフォームの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、次に型を用意する工程と、少なくとも1つのナノファイバー層を電界紡糸する工程と、少なくとも1つのマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、を含むプリフォームの製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項において、電界紡糸時に哺乳動物細胞を前記プリフォームに導入しないプリフォームの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリフォーム又は請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法によって得られたプリフォームの、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材としての使用。
【請求項13】
請求項12において、前記プリフォームが、心臓弁、1以上の血管、それらの接続装置又は心臓パッチである使用。
【請求項14】
プロテーゼのスキャフォールドとして適したプリフォームを電界紡糸する、プリフォームの製造方法。
【請求項15】
電界紡糸によるプリフォームの製造方法であって、
a)実質的に凸面のみを含む少なくとも2つのサブ型からなる型を用意する工程と、
b)前記工程a)の前記サブ型の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、
c)前記工程a)の前記サブ型及び前記工程b)の前記サブ型から選択される少なくとも2つのサブ型を組み合わせる工程と、
d)前記c)のアセンブリの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸してプリフォームを得る工程と、
を含み、
前記プリフォームは、少なくとも1つのナノファイバー層と、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであるプリフォームの製造方法。
【請求項1】
電界紡糸によって得られ、プロテーゼのスキャフォールドとして適した多層プリフォームであって、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、少なくとも1つのナノファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであることを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項2】
請求項1において、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層及び/又は前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が5〜100μmであることを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記プリフォームの全ての層の細孔径が1〜300μm、好ましくは3〜100μmである多層プリフォーム。
【請求項4】
前記請求項のいずれか1項において、前記マイクロファイバーの直径が3〜20μm、好ましくは5〜18μm、特に好ましくは8〜14μmであることを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項において、前記ナノファイバーの直径が50〜800μm、好ましくは少なくとも200nm、特に少なくとも400nm、好ましくは700nmを超えず、特に600nmを超えないことを特徴とする多層プリフォーム。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1項において、前記マイクロファイバー層及び/又はナノファイバー層の気孔率が70〜95%である多層プリフォーム。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項において、直径勾配を有する無数の層を有する多層プリフォーム。
【請求項8】
電界紡糸によってプロテーゼのスキャフォールドとして適したプリフォームを製造するための方法であって、型を用意する工程と、次に少なくとも1つのマイクロファイバー層と少なくとも1つのナノファイバー層を任意の順序で電界紡糸する工程と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであることを特徴とするプリフォームの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、前記少なくとも1つのナノファイバー層を電界紡糸する工程を220K未満の温度で行うプリフォームの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、次に型を用意する工程と、少なくとも1つのナノファイバー層を電界紡糸する工程と、少なくとも1つのマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、を含むプリフォームの製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項において、電界紡糸時に哺乳動物細胞を前記プリフォームに導入しないプリフォームの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリフォーム又は請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法によって得られたプリフォームの、ヒト又は動物組織を増殖させるための基材としての使用。
【請求項13】
請求項12において、前記プリフォームが、心臓弁、1以上の血管、それらの接続装置又は心臓パッチである使用。
【請求項14】
プロテーゼのスキャフォールドとして適したプリフォームを電界紡糸する、プリフォームの製造方法。
【請求項15】
電界紡糸によるプリフォームの製造方法であって、
a)実質的に凸面のみを含む少なくとも2つのサブ型からなる型を用意する工程と、
b)前記工程a)の前記サブ型の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸する工程と、
c)前記工程a)の前記サブ型及び前記工程b)の前記サブ型から選択される少なくとも2つのサブ型を組み合わせる工程と、
d)前記c)のアセンブリの表面に少なくとも1つのナノファイバー層又はマイクロファイバー層を電界紡糸してプリフォームを得る工程と、
を含み、
前記プリフォームは、少なくとも1つのナノファイバー層と、少なくとも1つのマイクロファイバー層と、を含み、前記少なくとも1つのマイクロファイバー層の細孔径が1〜300μmであり、前記少なくとも1つのナノファイバー層の細孔径が1〜300μmであるプリフォームの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【公表番号】特表2012−505320(P2012−505320A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530974(P2011−530974)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050611
【国際公開番号】WO2010/041944
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(508281631)テヘニース ウニフェルシテイト アイントホーフェン (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050611
【国際公開番号】WO2010/041944
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(508281631)テヘニース ウニフェルシテイト アイントホーフェン (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]