電磁コイル及び電磁弁
【課題】電磁コイルにおいて、コイル部材1の周囲に側面外函2と底面外函3を配置して磁気回路効率を上げて、省電力化、小型化を図る。
【解決手段】側板部21,21と連結部22とで側面外函(磁路部材)2を構成する。底板部31,31と連結部32とで底面外函3を構成する。コイル部材1の両端面1a,1aを露出するとともに側面1bを覆うように側面外函2をコイル部材1に嵌合し、中間組立体A(図3)とする。コイル部材1の両端面1a,1aと、側面外函3の両端面2a,2aを覆うように、中間組立体Aに底面外函3を嵌合する。底面外函3の底板部31と側面外函3の端面2aとを密着させる。磁路部材をコイル部材の樹脂部12とともに一体成形してもよい。磁路部材を樹脂部12の嵌合孔に挿入してもよい。
【解決手段】側板部21,21と連結部22とで側面外函(磁路部材)2を構成する。底板部31,31と連結部32とで底面外函3を構成する。コイル部材1の両端面1a,1aを露出するとともに側面1bを覆うように側面外函2をコイル部材1に嵌合し、中間組立体A(図3)とする。コイル部材1の両端面1a,1aと、側面外函3の両端面2a,2aを覆うように、中間組立体Aに底面外函3を嵌合する。底面外函3の底板部31と側面外函3の端面2aとを密着させる。磁路部材をコイル部材の樹脂部12とともに一体成形してもよい。磁路部材を樹脂部12の嵌合孔に挿入してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコイルを樹脂で封止するなどで構成したコイル部材の外周にヨーク部材を装着した電磁コイル、及びこの電磁コイルを備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁コイル及び電磁弁として、例えば特開2011−117534号公報(特許文献1)、特開2008−151218号公報(特許文献2)及び特開2005−113991号公報(特許文献3)に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1のものは、平行な上面と下面を有する断面コ字状の外函(22)を有し、この外函を電磁コイルケース(10)の上下端面を上面と下面とで挟んで外函を電磁コイルケースに取り付けるようにしたものである。
【0004】
特許文献2の電磁弁は電磁コイルを備え、この電磁コイルの保持構造は、円筒状の外ケース(38)の上端と電磁コイル(36)の上端との間にコイル座金(42)を介装させて、外ケース内に電磁コイルを収容し、電磁コイルの下端に当接するように、外ケースの下端近傍に下板部材(40)を装着したものである。
【0005】
特許文献3における電磁コイルは、ソレノイドコイル(16)を、磁性材料からなり且つ磁路を形成するフレーム(40)の内部に保持するようになっている。このフレーム(40)は、一対の側板部(64)と、一対の側板部(64)を結合させる端板部(66)と、各側板部(64)の他端部からそれぞれ中心に向けて延びる一対の延長部(68)とを有している。そして、延長部(68)の弾性力によるバネ性で、フレームとソレノイドコイルとを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−117534号公報
【特許文献2】特開2008−151218号公報
【特許文献3】特開2005−113991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものは、外函が簡単な構成であり、組立て易いという利点はあるが、外函は電磁コイルケース(コイル部材)の両端と一側面だけを覆う形状であり、磁気回路効率が悪い。このため、大きな消費電力が必要であり、またコイル温度の上昇が大きいという問題がある。
【0008】
特許文献2のものは、磁気回路効率は良いが、振動に対する保持構造をとるために、コイル座金(42)や下板部材(40)等を必要とし、部品点数が多いという問題がある。また、下板部材(40)を係止するための構造が複雑で組立に手間が掛かるという問題がある。
【0009】
特許文献3のものは、磁気回路効率は度良いが、フレーム(40)の構造が複雑で加工が難しく、部品コストが高いという問題がある。
【0010】
本発明は、コイル部材の外周に外函を装着した電磁コイル及び電磁弁において、外函の構造と該外函によるコイル部材の保持構造を改良し、磁気回路効率を高めて、小型化、省電力化、軽量化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の電磁コイルは、コイルを樹脂からなる樹脂部で内包した柱体状のコイル部材と、前記コイルの側面を覆うように前記コイル部材の前記樹脂部に設けられた磁性体からなる磁路部材と、前記コイル部材の両端面と前記磁路部材の両端面をそれぞれ覆う2つの底板部と該底板部間を連結する連結部とを有する板状磁性体からなる底面外函と、を備えた電磁コイルであって、前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記コイル部材の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材は、前記コイル部材の両端面を露出するとともに側面を覆うように該コイル部材に嵌合する板状磁性体からなる側面外函であり、前記底面外函は、前記コイル部材に前記側面外函を嵌合した中間組立体に対して、前記コイル部材の両端面と前記側面外函の両端面をそれぞれ覆うように構成され、前記側面外函は、前記コイル部材の側面の一部分を露出する切り欠き部を有し、該切り欠き部を自由端として自身の弾性力により前記コイル部材の側面を挟み込むようにして前記樹脂部に固定され、前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記中間組立て体の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に一体成形することにより、該磁路部材を該樹脂部に固定するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に形成された嵌合孔内に挿入し、該磁路部材を前記樹脂部に設けるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項5の電磁コイルは、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材の前記両端面間の幅が、前記コイル部材の前記両端面間の幅より大きく設定され、前記底面外函の前記2つの底板部が前記磁路部材の両端面にそれぞれ圧接されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6の電磁弁は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電磁コイルを電磁駆動部として備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の電磁コイルによれば、磁路部材と底面外函とによりコイルが覆われているので、磁気回路効率が高くなる。また、磁路部材が樹脂部に固定されたコイル部材を底面外函で嵌合挟持する構成となっているので、組立作業が容易になるとともに部品点数も少なくなる。
【0018】
請求項2の電磁コイルによれば、請求項1の効果に加えて、側面外函と底面外函とによりコイル部材の全周が覆われているので、磁気回路効率が高くなる。また、側面外函でコイル部材を嵌合挟持するとともにこの側面外函とコイル部材とからなる中間組立体を底面外函で嵌合挟持する構成となっているので、組立作業が容易になるとともに部品点数も少なくなる。
【0019】
請求項3の電磁コイルによれば、請求項1の効果に加えて、磁路部材を樹脂部に一体成形することにより磁路部材を樹脂部に固定するようにしたので、磁路部材を固定するための部品を必要としない。
【0020】
請求項4の電磁コイルによれば、請求項1の効果に加えて、磁路部材を樹脂部に形成された嵌合孔内に挿入することにより磁路部材を樹脂部に設けるようにしたので、磁路部材を一体成形で構成した場合と比較して、磁路部材の寸法精度を必要としない。
【0021】
請求項5の電磁コイルによれば、請求項1乃至4のいずれか一項の効果に加えて、底面外函の2つの底板部が磁路部材の両端面にそれぞれ圧接されるので、磁路部材と底面外函とが密着し、磁気回路効率がさらに高くなる。
【0022】
請求項6の電磁弁によれば、電磁コイルの磁気効率が高いことから、駆動用電力を小さくすることができ、電磁弁自体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の電磁コイルの組立状態の斜視図である。
【図2】同電磁コイルの分解斜視図である。
【図3】同電磁コイルの中間組立体の斜視図及び一部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の電磁弁の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態の電磁コイルのコイル部材の斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態の電磁コイルのコイル部材の斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態の電磁コイルのコイル部材の斜視図である。
【図9】本発明の第6実施形態の電磁コイルのコイル部材の分解斜視図である。
【図10】本発明の第7実施形態の電磁コイルのコイル部材の分解斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態の電磁コイルの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の電磁コイル及び電磁弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態の電磁コイルの組立状態の斜視図、図2は同電磁コイルの分解斜視図、図3は同電磁コイルの中間組立体の斜視図及び一部拡大斜視図である。
【0025】
この第1実施形態の電磁コイルは、円筒状のコイル11(図2参照)を樹脂材からなる樹脂部12で封止(内包)したコイル部材1と、コイル部材1の外周に嵌合される「磁路部材」としての側面外函2と、コイル部材1に側面外函2を嵌合した中間組立体A(図3参照)に嵌合される底面外函3とを備えている。図1及び図2において符号Lはコイル11の円柱の中心軸であり、コイル11への通電により中心に生じる磁界の方向は中心軸Lの方向となる。また、コイル部材1は中心軸Lと交差する平面状の両端面1a,1a(柱体の両底面)と、両端面1a,1aの外周を繋ぐ円筒状の側面1bを有している。また、コイル部材1は、その中央に電磁弁のプランジャケースを挿入する中心孔12aを有している。
【0026】
側面外函2は鉄板製である。この側面外函2はコイル部材1の外周に整合する形状をしており、それぞれ略半円弧面をなす2つの側板部21,21と、両方の側板部21,21を連結する連結部22とを一体に形成したものである。この側面外函2の小口はそれぞれ端面2a,2aとされ、側板部21,21の端部間には切り欠き部2bが形成されている。そして、側面外函2自体の弾性力により、側板部21,21はコイル部材1の側面1bを押圧する方向に作用し、この側面外函2はコイル部材1を挟持した状態で嵌合される。コイル部材1に側面外函2を嵌合した部材が、図3に示す中間組立体Aとなる。この中間組立体Aにおいて、側面外函2はコイル部材1の両端面1a,1aを露出するとともに、コイル部材1の側面1bを覆っている。
【0027】
底面外函3は鉄板製である。この底面外函3は、平行な2枚の底板部31,31と、両方の底板部31,31を連結する連結部32とを一体に形成したものである。なお、一方の底板部31には電磁弁のプランジャケースを挿入する中心孔31aが形成され、他方の底板部31には電磁弁のプランジャケースをネジ止めするためのネジ穴31bが形成されている。
【0028】
底面外函3は、連結部32で側面外函2の切り欠き部2bを覆うとともに、底板部31,31で中間組立体Aの端部を挟み込むようにして、中間組立体Aに嵌合されている。この状態で、底面外函3自体の弾性力により、底板部31,31は中間組立体Aを押圧する方向に作用し、この底面外函3は中間組立体Aを挟持した状態で嵌合される。そして、底板部31,31は、コイル部材1の両端面1a,1aと、側面外函2の両端面2a,2aをそれぞれ覆っている。
【0029】
以上のように、側面外函2と底面外函3とにより、コイル部材1の全周が覆われているので、このコイル部材1で発生する磁気の磁気回路効率が高くなる。また、組立時には、コイル部材1に側面外函2を嵌合して中間組立体Aとし、この中間組立体Aに底面外函3を嵌合するだけでよいので、組立作業が容易になる。また、側面外函2の弾性力によりコイル部材1を挟持し、底面外函3の弾性力により中間組立体Aを挟持する構成となっているので、ビス等の固定部品を必要とせず、部品点数も少なくなる。
【0030】
この実施形態では、図2に示すように、側面外函2の両端面2a,2a間の幅D2が、コイル部材1の両端面1a,1a間の幅D1より僅かに大きく設定されている。これにより、図3の拡大図に示すように、中間組立体Aにおいて、コイル部材1の端面1aは側面外函2の端面2aよりも例えば(D2−D1)/2=dだけ内側になり、組立状態において、底面外函3の2つの底板部31,31は、側面外函2の両端面2a,2aにそれぞれ圧接される。したがって、側面外函2と底面外函3とが密着し、磁気回路効率がさらに高くなる。
【0031】
側面外函2の幅D2とコイル部材1の幅D1とを同寸にすると、組立品の軸線L方向の寸法を最小にすることができるが、寸法バラツキを考慮して、図3の拡大図のようにD2>D1とし、この寸法の差D2−D1を可能な限り最小にすると、比較的小型化でき、且つ側面外函2と底面外函3を確実に密着することができる。
【0032】
なお、側面外函2と底面外函3とによりコイル部材1の全周を覆うことで、磁気回路効率を高くするだけであれば、側面外函2の端面2aと底面外函3の底板部31との間に僅かに隙間があってもよい。
【0033】
図4は第1実施形態の電磁コイルを用いた電磁弁の一例を示す正面図である。この電磁弁は、実施形態の電磁コイルに、底面外函3の一方の底板部31の中心穴31aにプランジャケース4を挿入し、他方の底板31のネジ穴31bで、ボルトネジ5によりネジ止めされている。プランジャケース4の内部には図示しない弁室を構成するハウジングがあり、継手管6,7が接続されている。また、プランジャケース4内には、図示しない吸引子、プランジャ、弁体、弁座部材等が収容されており、電磁コイルを駆動部として動作する。なお、ボルト5は吸引子にねじ込まれる。電磁弁の構造は上記の例に限らず、本発明の電磁コイルを電磁駆動部と備えたものであればよい。
【0034】
また、この第1実施形態では、側面外函2と底面外函3とによりコイル部材1の全周が覆われているので、例えば、当該電磁コイルを外部に露出して使用しても、飛び石などからコイル部材を保護することもできる。
【0035】
図5は本発明の第2実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。なお、以下の各実施形態において第1実施形態と同様な要素及び対応する要素には図1乃至図4と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。
【0036】
第2実施形態の電磁コイルは、円筒状のコイル11と鉄板製の磁路部材13を樹脂材からなる樹脂部12で封止(内包)したコイル部材1と、コイル部材1に嵌合される底面外函3とを備えている。なお、コイル部材1は第1実施形態と同様に、平面状の両端面1a,1a、円筒状の側面1b、中心孔12aを有している。また、磁路部材13の両端面13a,13a間の幅はコイル部材1の両端面1a,1a間の幅D1より僅かに大きく設定されている。そして、底面外函3の底板部31,31がコイル部材1を押圧する方向に作用し、底面外函3はコイル部材1を挟持した状態で嵌合される。
【0037】
磁路部材13は鉄板製であり、この磁路部材13はコイル部材1内に樹脂と共にインサート成形したものである。磁路部材13は一部に切り欠き部を有する円筒形状となっており、この磁路部材13はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材13は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、磁路部材13の中心軸L方向の端面13aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出されており、この端面13aは底面外函3の底板部31に圧接されていので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。
【0038】
図6は本発明の第3実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第3実施形態の電磁コイルは、2枚の鉄板製の磁路部材14を樹脂材からなる樹脂部12内にインサート成形したものである。この実施例でも2枚の磁路部材14はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材14は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、磁路部材14の中心軸L方向の端面14aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出されており、この端面14aは底面外函3の底板部31に圧接されていので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。
【0039】
図7は本発明の第4実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第4実施形態の電磁コイルは、3枚の鉄板製の磁路部材15を樹脂材からなる樹脂部12内にインサート成形したものである。この実施例でも3枚の磁路部材15はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材15は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、磁路部材15の中心軸L方向の端面15a,15aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出されており、この両端面15a,15a間の幅はコイル部材1の両端面1a,1a間の幅D1より僅かに大きく設定されている。この端面15aは底面外函3の底板部31に圧接されていので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、図示しないが、複数枚(4枚以上)の鉄板製の磁路部材で構成してもよい。
【0040】
図8は本発明の第5実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第5実施形態の電磁コイルは、1枚の鉄板製の磁路部材16を樹脂材からなる樹脂部12内にインサート成形したものである。この実施例でも磁路部材16はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材16は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、この実施形態では、磁路部材16の中心軸L方向の端面16aはコイル部材1の内部に埋設されている。したがって、底面外函3をコイル部材1に嵌合するとき、底板部31は樹脂であるコイル部材1の両端面1aに圧接されるだけであり、摩擦が小さくなって取り付け作業が容易になる。
【0041】
図9は本発明の第6実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第6実施形態の電磁コイルは、樹脂部12のコイル11の外側に縦に「嵌合孔」としてのスリット1cを形成し、このスリット1c内に鉄板製の磁路部材17を圧入したものである。この実施例でも2枚の磁路部材17はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材17は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、磁路部材17の中心軸L方向の端面17a,17aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出するようになっており、この端面17a,17aは底面外函3の底板部31に圧接されるので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、この端面17aはコイル部材1の両端面1aと面一でもよいし、スリット1c内に僅か窪んでいてもよい。この場合には、底面外函3の底板部31との摩擦が小さくなって取り付け作業が容易になる。
【0042】
図10は本発明の第7実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第7実施形態の電磁コイルは、樹脂部12のコイル11の外側に縦に多数の「嵌合孔」としての縦孔1dを形成し、この縦孔1d内に鉄製棒状の磁路部材18を圧入したものである。この実施例でも多数の磁路部材18はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材18は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、磁路部材18の中心軸L方向の端面18a,18aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出するようになっており、この端面18a,18aは底面外函3の底板部31に圧接されるので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、この端面18aはコイル部材1の両端面1aと面一でもよいし、スリット1c内に僅か窪んでいてもよい。この場合には、底面外函3の底板部31との摩擦が小さくなって取り付け作業が容易になる。以上の例では磁路部材17,18を圧入するようにしているが、単に挿入するだけでもよく、磁路部材を一体成形で構成した場合と比較して、磁路部材の寸法精度を必要としない。
【0043】
図11は本発明の第8実施形態の電磁コイルの要部斜視図である。この第8実施形態の電磁コイルは、コイル部材1と共に中間組立体Aを構成する側面外函2の変形例であり、この側面外函2の端面2aに段部2a1を設けたものである。拡大図に示したように、P面は底面外函3の底板部31,31に圧接されるが、Q面は底面外函3の底板部31,31とに隙間を作る。したがって、段部2a1の位置を調整することにより、底面外函3を取り付けるときの摺動性と磁気回路効率のバランスを調整することができる。この段部2a1の位置は必要に応じて設定することができる。
【0044】
第2乃至第8実施形態の電磁コイルも、前記図4に示した第1実施形態と同様に、プランジャケース、ボルトネジ、ハウジング、継手管を備えた電磁弁を構成することができることはいうまでもない。
【0045】
以上、各実施形態について説明したが、各実施形態において、コイル部材1、側面外函2、底面外函3の詳細な形状は実施形態のものに限定されるものではない。また、コイル部材は円柱あるいは角柱でもよく、「柱体状のコイル部材」とは、円柱や角柱などの柱体の一部が変形した形状をも含む概念である。
【符号の説明】
【0046】
1 コイル部材
1a 端面
1b 側面
11 コイル
12 樹脂部
2 側面外函(磁路部材)
2a 端面
2b 切り欠き部
21 側板部
22 連結部
3 底面外函
31 底板部
32 連結部
A 中間組立体
13 磁路部材
13a 端面
14 磁路部材
14a 端面
15 磁路部材
15a 端面
16 磁路部材
16a 端面
17 磁路部材
17a 端面
18 磁路部材
18a 端面
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコイルを樹脂で封止するなどで構成したコイル部材の外周にヨーク部材を装着した電磁コイル、及びこの電磁コイルを備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁コイル及び電磁弁として、例えば特開2011−117534号公報(特許文献1)、特開2008−151218号公報(特許文献2)及び特開2005−113991号公報(特許文献3)に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1のものは、平行な上面と下面を有する断面コ字状の外函(22)を有し、この外函を電磁コイルケース(10)の上下端面を上面と下面とで挟んで外函を電磁コイルケースに取り付けるようにしたものである。
【0004】
特許文献2の電磁弁は電磁コイルを備え、この電磁コイルの保持構造は、円筒状の外ケース(38)の上端と電磁コイル(36)の上端との間にコイル座金(42)を介装させて、外ケース内に電磁コイルを収容し、電磁コイルの下端に当接するように、外ケースの下端近傍に下板部材(40)を装着したものである。
【0005】
特許文献3における電磁コイルは、ソレノイドコイル(16)を、磁性材料からなり且つ磁路を形成するフレーム(40)の内部に保持するようになっている。このフレーム(40)は、一対の側板部(64)と、一対の側板部(64)を結合させる端板部(66)と、各側板部(64)の他端部からそれぞれ中心に向けて延びる一対の延長部(68)とを有している。そして、延長部(68)の弾性力によるバネ性で、フレームとソレノイドコイルとを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−117534号公報
【特許文献2】特開2008−151218号公報
【特許文献3】特開2005−113991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものは、外函が簡単な構成であり、組立て易いという利点はあるが、外函は電磁コイルケース(コイル部材)の両端と一側面だけを覆う形状であり、磁気回路効率が悪い。このため、大きな消費電力が必要であり、またコイル温度の上昇が大きいという問題がある。
【0008】
特許文献2のものは、磁気回路効率は良いが、振動に対する保持構造をとるために、コイル座金(42)や下板部材(40)等を必要とし、部品点数が多いという問題がある。また、下板部材(40)を係止するための構造が複雑で組立に手間が掛かるという問題がある。
【0009】
特許文献3のものは、磁気回路効率は度良いが、フレーム(40)の構造が複雑で加工が難しく、部品コストが高いという問題がある。
【0010】
本発明は、コイル部材の外周に外函を装着した電磁コイル及び電磁弁において、外函の構造と該外函によるコイル部材の保持構造を改良し、磁気回路効率を高めて、小型化、省電力化、軽量化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の電磁コイルは、コイルを樹脂からなる樹脂部で内包した柱体状のコイル部材と、前記コイルの側面を覆うように前記コイル部材の前記樹脂部に設けられた磁性体からなる磁路部材と、前記コイル部材の両端面と前記磁路部材の両端面をそれぞれ覆う2つの底板部と該底板部間を連結する連結部とを有する板状磁性体からなる底面外函と、を備えた電磁コイルであって、前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記コイル部材の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材は、前記コイル部材の両端面を露出するとともに側面を覆うように該コイル部材に嵌合する板状磁性体からなる側面外函であり、前記底面外函は、前記コイル部材に前記側面外函を嵌合した中間組立体に対して、前記コイル部材の両端面と前記側面外函の両端面をそれぞれ覆うように構成され、前記側面外函は、前記コイル部材の側面の一部分を露出する切り欠き部を有し、該切り欠き部を自由端として自身の弾性力により前記コイル部材の側面を挟み込むようにして前記樹脂部に固定され、前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記中間組立て体の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に一体成形することにより、該磁路部材を該樹脂部に固定するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に形成された嵌合孔内に挿入し、該磁路部材を前記樹脂部に設けるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項5の電磁コイルは、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁コイルであって、前記磁路部材の前記両端面間の幅が、前記コイル部材の前記両端面間の幅より大きく設定され、前記底面外函の前記2つの底板部が前記磁路部材の両端面にそれぞれ圧接されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6の電磁弁は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電磁コイルを電磁駆動部として備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の電磁コイルによれば、磁路部材と底面外函とによりコイルが覆われているので、磁気回路効率が高くなる。また、磁路部材が樹脂部に固定されたコイル部材を底面外函で嵌合挟持する構成となっているので、組立作業が容易になるとともに部品点数も少なくなる。
【0018】
請求項2の電磁コイルによれば、請求項1の効果に加えて、側面外函と底面外函とによりコイル部材の全周が覆われているので、磁気回路効率が高くなる。また、側面外函でコイル部材を嵌合挟持するとともにこの側面外函とコイル部材とからなる中間組立体を底面外函で嵌合挟持する構成となっているので、組立作業が容易になるとともに部品点数も少なくなる。
【0019】
請求項3の電磁コイルによれば、請求項1の効果に加えて、磁路部材を樹脂部に一体成形することにより磁路部材を樹脂部に固定するようにしたので、磁路部材を固定するための部品を必要としない。
【0020】
請求項4の電磁コイルによれば、請求項1の効果に加えて、磁路部材を樹脂部に形成された嵌合孔内に挿入することにより磁路部材を樹脂部に設けるようにしたので、磁路部材を一体成形で構成した場合と比較して、磁路部材の寸法精度を必要としない。
【0021】
請求項5の電磁コイルによれば、請求項1乃至4のいずれか一項の効果に加えて、底面外函の2つの底板部が磁路部材の両端面にそれぞれ圧接されるので、磁路部材と底面外函とが密着し、磁気回路効率がさらに高くなる。
【0022】
請求項6の電磁弁によれば、電磁コイルの磁気効率が高いことから、駆動用電力を小さくすることができ、電磁弁自体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の電磁コイルの組立状態の斜視図である。
【図2】同電磁コイルの分解斜視図である。
【図3】同電磁コイルの中間組立体の斜視図及び一部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の電磁弁の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態の電磁コイルのコイル部材の斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態の電磁コイルのコイル部材の斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態の電磁コイルのコイル部材の斜視図である。
【図9】本発明の第6実施形態の電磁コイルのコイル部材の分解斜視図である。
【図10】本発明の第7実施形態の電磁コイルのコイル部材の分解斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態の電磁コイルの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の電磁コイル及び電磁弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態の電磁コイルの組立状態の斜視図、図2は同電磁コイルの分解斜視図、図3は同電磁コイルの中間組立体の斜視図及び一部拡大斜視図である。
【0025】
この第1実施形態の電磁コイルは、円筒状のコイル11(図2参照)を樹脂材からなる樹脂部12で封止(内包)したコイル部材1と、コイル部材1の外周に嵌合される「磁路部材」としての側面外函2と、コイル部材1に側面外函2を嵌合した中間組立体A(図3参照)に嵌合される底面外函3とを備えている。図1及び図2において符号Lはコイル11の円柱の中心軸であり、コイル11への通電により中心に生じる磁界の方向は中心軸Lの方向となる。また、コイル部材1は中心軸Lと交差する平面状の両端面1a,1a(柱体の両底面)と、両端面1a,1aの外周を繋ぐ円筒状の側面1bを有している。また、コイル部材1は、その中央に電磁弁のプランジャケースを挿入する中心孔12aを有している。
【0026】
側面外函2は鉄板製である。この側面外函2はコイル部材1の外周に整合する形状をしており、それぞれ略半円弧面をなす2つの側板部21,21と、両方の側板部21,21を連結する連結部22とを一体に形成したものである。この側面外函2の小口はそれぞれ端面2a,2aとされ、側板部21,21の端部間には切り欠き部2bが形成されている。そして、側面外函2自体の弾性力により、側板部21,21はコイル部材1の側面1bを押圧する方向に作用し、この側面外函2はコイル部材1を挟持した状態で嵌合される。コイル部材1に側面外函2を嵌合した部材が、図3に示す中間組立体Aとなる。この中間組立体Aにおいて、側面外函2はコイル部材1の両端面1a,1aを露出するとともに、コイル部材1の側面1bを覆っている。
【0027】
底面外函3は鉄板製である。この底面外函3は、平行な2枚の底板部31,31と、両方の底板部31,31を連結する連結部32とを一体に形成したものである。なお、一方の底板部31には電磁弁のプランジャケースを挿入する中心孔31aが形成され、他方の底板部31には電磁弁のプランジャケースをネジ止めするためのネジ穴31bが形成されている。
【0028】
底面外函3は、連結部32で側面外函2の切り欠き部2bを覆うとともに、底板部31,31で中間組立体Aの端部を挟み込むようにして、中間組立体Aに嵌合されている。この状態で、底面外函3自体の弾性力により、底板部31,31は中間組立体Aを押圧する方向に作用し、この底面外函3は中間組立体Aを挟持した状態で嵌合される。そして、底板部31,31は、コイル部材1の両端面1a,1aと、側面外函2の両端面2a,2aをそれぞれ覆っている。
【0029】
以上のように、側面外函2と底面外函3とにより、コイル部材1の全周が覆われているので、このコイル部材1で発生する磁気の磁気回路効率が高くなる。また、組立時には、コイル部材1に側面外函2を嵌合して中間組立体Aとし、この中間組立体Aに底面外函3を嵌合するだけでよいので、組立作業が容易になる。また、側面外函2の弾性力によりコイル部材1を挟持し、底面外函3の弾性力により中間組立体Aを挟持する構成となっているので、ビス等の固定部品を必要とせず、部品点数も少なくなる。
【0030】
この実施形態では、図2に示すように、側面外函2の両端面2a,2a間の幅D2が、コイル部材1の両端面1a,1a間の幅D1より僅かに大きく設定されている。これにより、図3の拡大図に示すように、中間組立体Aにおいて、コイル部材1の端面1aは側面外函2の端面2aよりも例えば(D2−D1)/2=dだけ内側になり、組立状態において、底面外函3の2つの底板部31,31は、側面外函2の両端面2a,2aにそれぞれ圧接される。したがって、側面外函2と底面外函3とが密着し、磁気回路効率がさらに高くなる。
【0031】
側面外函2の幅D2とコイル部材1の幅D1とを同寸にすると、組立品の軸線L方向の寸法を最小にすることができるが、寸法バラツキを考慮して、図3の拡大図のようにD2>D1とし、この寸法の差D2−D1を可能な限り最小にすると、比較的小型化でき、且つ側面外函2と底面外函3を確実に密着することができる。
【0032】
なお、側面外函2と底面外函3とによりコイル部材1の全周を覆うことで、磁気回路効率を高くするだけであれば、側面外函2の端面2aと底面外函3の底板部31との間に僅かに隙間があってもよい。
【0033】
図4は第1実施形態の電磁コイルを用いた電磁弁の一例を示す正面図である。この電磁弁は、実施形態の電磁コイルに、底面外函3の一方の底板部31の中心穴31aにプランジャケース4を挿入し、他方の底板31のネジ穴31bで、ボルトネジ5によりネジ止めされている。プランジャケース4の内部には図示しない弁室を構成するハウジングがあり、継手管6,7が接続されている。また、プランジャケース4内には、図示しない吸引子、プランジャ、弁体、弁座部材等が収容されており、電磁コイルを駆動部として動作する。なお、ボルト5は吸引子にねじ込まれる。電磁弁の構造は上記の例に限らず、本発明の電磁コイルを電磁駆動部と備えたものであればよい。
【0034】
また、この第1実施形態では、側面外函2と底面外函3とによりコイル部材1の全周が覆われているので、例えば、当該電磁コイルを外部に露出して使用しても、飛び石などからコイル部材を保護することもできる。
【0035】
図5は本発明の第2実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。なお、以下の各実施形態において第1実施形態と同様な要素及び対応する要素には図1乃至図4と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。
【0036】
第2実施形態の電磁コイルは、円筒状のコイル11と鉄板製の磁路部材13を樹脂材からなる樹脂部12で封止(内包)したコイル部材1と、コイル部材1に嵌合される底面外函3とを備えている。なお、コイル部材1は第1実施形態と同様に、平面状の両端面1a,1a、円筒状の側面1b、中心孔12aを有している。また、磁路部材13の両端面13a,13a間の幅はコイル部材1の両端面1a,1a間の幅D1より僅かに大きく設定されている。そして、底面外函3の底板部31,31がコイル部材1を押圧する方向に作用し、底面外函3はコイル部材1を挟持した状態で嵌合される。
【0037】
磁路部材13は鉄板製であり、この磁路部材13はコイル部材1内に樹脂と共にインサート成形したものである。磁路部材13は一部に切り欠き部を有する円筒形状となっており、この磁路部材13はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材13は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、磁路部材13の中心軸L方向の端面13aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出されており、この端面13aは底面外函3の底板部31に圧接されていので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。
【0038】
図6は本発明の第3実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第3実施形態の電磁コイルは、2枚の鉄板製の磁路部材14を樹脂材からなる樹脂部12内にインサート成形したものである。この実施例でも2枚の磁路部材14はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材14は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、磁路部材14の中心軸L方向の端面14aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出されており、この端面14aは底面外函3の底板部31に圧接されていので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。
【0039】
図7は本発明の第4実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第4実施形態の電磁コイルは、3枚の鉄板製の磁路部材15を樹脂材からなる樹脂部12内にインサート成形したものである。この実施例でも3枚の磁路部材15はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材15は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、磁路部材15の中心軸L方向の端面15a,15aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出されており、この両端面15a,15a間の幅はコイル部材1の両端面1a,1a間の幅D1より僅かに大きく設定されている。この端面15aは底面外函3の底板部31に圧接されていので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、図示しないが、複数枚(4枚以上)の鉄板製の磁路部材で構成してもよい。
【0040】
図8は本発明の第5実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第5実施形態の電磁コイルは、1枚の鉄板製の磁路部材16を樹脂材からなる樹脂部12内にインサート成形したものである。この実施例でも磁路部材16はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材16は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。また、この実施形態では、磁路部材16の中心軸L方向の端面16aはコイル部材1の内部に埋設されている。したがって、底面外函3をコイル部材1に嵌合するとき、底板部31は樹脂であるコイル部材1の両端面1aに圧接されるだけであり、摩擦が小さくなって取り付け作業が容易になる。
【0041】
図9は本発明の第6実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第6実施形態の電磁コイルは、樹脂部12のコイル11の外側に縦に「嵌合孔」としてのスリット1cを形成し、このスリット1c内に鉄板製の磁路部材17を圧入したものである。この実施例でも2枚の磁路部材17はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材17は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、磁路部材17の中心軸L方向の端面17a,17aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出するようになっており、この端面17a,17aは底面外函3の底板部31に圧接されるので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、この端面17aはコイル部材1の両端面1aと面一でもよいし、スリット1c内に僅か窪んでいてもよい。この場合には、底面外函3の底板部31との摩擦が小さくなって取り付け作業が容易になる。
【0042】
図10は本発明の第7実施形態の電磁コイルの分解斜視図である。この第7実施形態の電磁コイルは、樹脂部12のコイル11の外側に縦に多数の「嵌合孔」としての縦孔1dを形成し、この縦孔1d内に鉄製棒状の磁路部材18を圧入したものである。この実施例でも多数の磁路部材18はコイル11の周囲を覆っている。したがって、この磁路部材18は底面外函3と共にコイル11で発生する磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、磁路部材18の中心軸L方向の端面18a,18aはコイル部材1の両端面1aから僅かに露出するようになっており、この端面18a,18aは底面外函3の底板部31に圧接されるので、さらに磁気の磁気回路効率を高くしている。なお、この端面18aはコイル部材1の両端面1aと面一でもよいし、スリット1c内に僅か窪んでいてもよい。この場合には、底面外函3の底板部31との摩擦が小さくなって取り付け作業が容易になる。以上の例では磁路部材17,18を圧入するようにしているが、単に挿入するだけでもよく、磁路部材を一体成形で構成した場合と比較して、磁路部材の寸法精度を必要としない。
【0043】
図11は本発明の第8実施形態の電磁コイルの要部斜視図である。この第8実施形態の電磁コイルは、コイル部材1と共に中間組立体Aを構成する側面外函2の変形例であり、この側面外函2の端面2aに段部2a1を設けたものである。拡大図に示したように、P面は底面外函3の底板部31,31に圧接されるが、Q面は底面外函3の底板部31,31とに隙間を作る。したがって、段部2a1の位置を調整することにより、底面外函3を取り付けるときの摺動性と磁気回路効率のバランスを調整することができる。この段部2a1の位置は必要に応じて設定することができる。
【0044】
第2乃至第8実施形態の電磁コイルも、前記図4に示した第1実施形態と同様に、プランジャケース、ボルトネジ、ハウジング、継手管を備えた電磁弁を構成することができることはいうまでもない。
【0045】
以上、各実施形態について説明したが、各実施形態において、コイル部材1、側面外函2、底面外函3の詳細な形状は実施形態のものに限定されるものではない。また、コイル部材は円柱あるいは角柱でもよく、「柱体状のコイル部材」とは、円柱や角柱などの柱体の一部が変形した形状をも含む概念である。
【符号の説明】
【0046】
1 コイル部材
1a 端面
1b 側面
11 コイル
12 樹脂部
2 側面外函(磁路部材)
2a 端面
2b 切り欠き部
21 側板部
22 連結部
3 底面外函
31 底板部
32 連結部
A 中間組立体
13 磁路部材
13a 端面
14 磁路部材
14a 端面
15 磁路部材
15a 端面
16 磁路部材
16a 端面
17 磁路部材
17a 端面
18 磁路部材
18a 端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを樹脂からなる樹脂部で内包した柱体状のコイル部材と、
前記コイルの側面を覆うように前記コイル部材の前記樹脂部に設けられた磁性体からなる磁路部材と、
前記コイル部材の両端面と前記磁路部材の両端面をそれぞれ覆う2つの底板部と該底板部間を連結する連結部とを有する板状磁性体からなる底面外函と、
を備えた電磁コイルであって、
前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記コイル部材の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁コイルであって、
前記磁路部材は、前記コイル部材の両端面を露出するとともに側面を覆うように該コイル部材に嵌合する板状磁性体からなる側面外函であり、
前記底面外函は、前記コイル部材に前記側面外函を嵌合した中間組立体に対して、前記コイル部材の両端面と前記側面外函の両端面をそれぞれ覆うように構成され、
前記側面外函は、前記コイル部材の側面の一部分を露出する切り欠き部を有し、該切り欠き部を自由端として自身の弾性力により前記コイル部材の側面を挟み込むようにして前記樹脂部に固定され、前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記中間組立て体の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする電磁コイル。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁コイルであって、
前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に一体成形することにより、該磁路部材を該樹脂部に固定するようにしたことを特徴とする電磁コイル。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁コイルであって、
前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に形成された嵌合孔内に挿入し、該磁路部材を前記樹脂部に設けるようにしたことを特徴とする電磁コイル。
【請求項5】
前記磁路部材の前記両端面間の幅が、前記コイル部材の前記両端面間の幅より大きく設定され、前記底面外函の前記2つの底板部が前記磁路部材の両端面にそれぞれ圧接されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁コイル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電磁コイルを電磁駆動部として備えたことを特徴とする電磁弁。
【請求項1】
コイルを樹脂からなる樹脂部で内包した柱体状のコイル部材と、
前記コイルの側面を覆うように前記コイル部材の前記樹脂部に設けられた磁性体からなる磁路部材と、
前記コイル部材の両端面と前記磁路部材の両端面をそれぞれ覆う2つの底板部と該底板部間を連結する連結部とを有する板状磁性体からなる底面外函と、
を備えた電磁コイルであって、
前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記コイル部材の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁コイルであって、
前記磁路部材は、前記コイル部材の両端面を露出するとともに側面を覆うように該コイル部材に嵌合する板状磁性体からなる側面外函であり、
前記底面外函は、前記コイル部材に前記側面外函を嵌合した中間組立体に対して、前記コイル部材の両端面と前記側面外函の両端面をそれぞれ覆うように構成され、
前記側面外函は、前記コイル部材の側面の一部分を露出する切り欠き部を有し、該切り欠き部を自由端として自身の弾性力により前記コイル部材の側面を挟み込むようにして前記樹脂部に固定され、前記底面外函は、自身の弾性力により前記2つの底板部により前記中間組立て体の両端部を挟み込むように構成されていることを特徴とする電磁コイル。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁コイルであって、
前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に一体成形することにより、該磁路部材を該樹脂部に固定するようにしたことを特徴とする電磁コイル。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁コイルであって、
前記磁路部材を前記コイルの周囲を覆うように配置するとともに、該磁路部材を前記樹脂部に形成された嵌合孔内に挿入し、該磁路部材を前記樹脂部に設けるようにしたことを特徴とする電磁コイル。
【請求項5】
前記磁路部材の前記両端面間の幅が、前記コイル部材の前記両端面間の幅より大きく設定され、前記底面外函の前記2つの底板部が前記磁路部材の両端面にそれぞれ圧接されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁コイル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電磁コイルを電磁駆動部として備えたことを特徴とする電磁弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−84891(P2013−84891A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94547(P2012−94547)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】
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