説明

電磁シールドルーム用回転扉および電磁シールドルーム

【課題】 出入りが容易で、大勢の人間が同時に利用可能な電磁シールドルームの回転扉および電磁シールドルームを提供すること。
【解決手段】 室内と室外に向けてそれぞれ開口10を有する枠体11と、複数の扉体12とを備え、これら扉体12は、扉体12と扉体12との間に人間を収容する空間15を保持しつつ、前記枠体11の中で回転することにより、前記空間15が室外と室内とに交互に開放状態となる。前記扉体12のうちのいずれかにより、前記室外と室内とが常に仕切られた状態となり、前記扉体12には、枠体11と摺接する導電体25が設けられ、前記扉体12は、前記室外と室内とを仕切る位置にある場合において、その周縁が前記導電体25を介して前記枠体11と常に接触した状態となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内と室外とを電磁的に遮断する電磁シールドルームおよび電磁シールドルームの出入り口に適用される回転扉に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁シールドルームは、壁や床、窓を電磁シールド性能を有する建具により構成することで、内部と外部を電磁的に遮断するものである。
従来の電磁シールドルームにおいては、出入り口に2重扉を設けてある。例えば外部から電磁シールドルームに入る場合には、まず外側の扉を開けて2重扉の中間の空間に入ってから、外側の扉を閉め、次いで内側の扉を開けて電磁シールドルームに入る。
このように出入りすることで、電磁シールドルームの電磁シールド性能を常時確保することができる。
【特許文献1】特開2002−161592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしこのように2重扉であると扉の開閉を2度繰り返さなければならないため、出入りが不便である。また、一度に出入りすることができる人数は2重扉内の空間の広さによって限定されてしまうため、大勢の人間が同時に出入りすることはできないという問題があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、出入りが容易で、大勢の人間が同時に利用可能な電磁シールドルームの回転扉および電磁シールドルームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明は、複数の扉体と、室内と室外とに向けてそれぞれ開口を有する枠体とを有し、前記各扉体は間に人間を収容する空間を保持しつつ前記枠体の内部で循環することにより、前記空間が室外と室内とに交互に開放状態となる回転扉において、前記扉体のうちのいずれかにより、前記室外と室内とが常に仕切られた状態となり、前記扉体と枠体との少なくともいずれか一方に、同他方に対して摺接する導電体が設けられ、前記扉体は、前記室外と前記室内とを仕切る位置にある場合に、その周縁が前記導電体を介して前記枠体と常に接触した状態であることを特徴とする。
また、本発明は、前記電磁シールドルーム用回転扉を用いた電磁シールドルームであって、前記電磁シールドルーム用回転扉が、室内の壁、床及び天井に所定の電磁波を遮断する電磁シールド材が設けられた部屋の出入り口に取り付けられることを特徴とする。
また、本発明は、上述の電磁シールドルームにおいて、前記電磁シールドルームが、所定の電磁波を遮断する電磁シールド材が設けられた窓を有することを特徴とする。
【0006】
本発明においては、複数の扉体のいずれかによって、常に室内と室外とが仕切られた状態におかれる。そして扉体と枠体との間に生じうる隙間が導電体により埋められ、導電体が枠体または扉体に対して摺動しつつ扉体が回転することで、枠体と扉体との隙間から電磁波が漏れることが抑えられる。
導電体は扉体と枠体との少なくともいずれか一方に設けられていればよいが、扉体に設けた方が導電体の設置面積が少なくて済む。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては以下の効果を得ることができる。
回転扉が回転することにより、容易に出入りすることができるとともに、大勢の人が連続して、かつ入室と退室とを同時に行うことができる。この際に枠体と扉体との間の隙間に生じうる隙間が導電体により埋められていることで、電磁波の漏れを防ぐことができる。
また、本発明の電磁シールドルームは、特に総合病院等、人の出入りが多く、電磁波の影響を受けると不都合が生じる場所において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示した符号1は、本発明の実施形態としての回転扉である。図2に示したものは回転扉1の適用例としての電磁シールドルームである。
まず電磁シールドルームの構成について説明する。電磁シールドルームは、出入り口としての回転扉1,壁2,床3,窓4,および図示外の天井を備える。それぞれ電磁シールド加工が施されており、図の太線(電磁シールド面)で囲まれた領域が、室外から電磁的に遮蔽されている。このような電磁シールドルームは、例えば病院内における携帯電話使用可能ブースとして利用できる。内部で使用される携帯電話の電波は、電磁シールドによりシールドされ、室外の医療用電子機器に悪影響を与えることがない。
ここでは、無線によって携帯電話と通信を行うためのアンテナを電磁シールドルーム内に設置し、このアンテナを室外に設置された基地局等に有線のケーブルにて接続することにより、電磁シールドルーム内が室外から電磁的に遮断されていても、電磁シールドルーム内において携帯電話の通信が可能となり、携帯電話使用可能ブースとして実現可能となる。
【0009】
次に回転扉1の構成について詳細に説明する。図1に示したように、回転扉1は、室内と室外に向けてそれぞれ開口10を有する枠体11と、回転軸を共通にする4枚の扉体12を備えている。枠体11は、床上に設置された床板11aと、壁2に嵌め込まれた側板11bおよび天板11cを備えている。枠体11の開口10が電磁シールドルームの出入り口となる。
側板11bは、対向して2枚設けられており、水平断面における断面視が円弧状となっている。その円弧中心角は、後述のように室内と室外とが常に扉体によって仕切られるように90度以上となっており、それぞれ円弧中心を共通にして配置されている。後述のようにこの円弧中心に扉体12の回転軸が位置する。
また、これら床板11a、側板11b、天板11cは電磁シールド性能を有するように導電性の素材により形成されている。
扉体12は、垂直方向に設けられた図示外の回転軸周りに90度間隔で4枚設けられている。回転軸は側板11bの円弧中心に位置し、天板11cと床板11aとによって回転自在に支持されている。
扉体12は、図3に示したように導電性を有する縁21と、縁21に取り囲まれたガラス22とを備え、ガラス22には電磁シールドフィルムが貼着されている。(ガラス22にかえて電磁シールド性能を有する他の素材を採用してもよい。)
【0010】
扉体12の周縁には、枠体11と摺接する導電体25が設けられている。導電体25は縁21の上面21a、側面21b、および下面21cに渡って設けられている。
図4に示したように、導電体25はSUS(ステンレス製)ワイヤーブラシであり、基端部は縁21と電気的に接続し、先端部が枠体11と摺接することで枠体11と扉体12とが導通するようになっている。
扉体12が枠体11内に位置している(すなわち側面21bが開口10に臨んでいない)場合において、枠体11と扉体12との間に隙間が生ずると電磁波が漏れてしまうことから、導電体25は、これらの隙間を埋めるように設けられている。すなわち図3のように床板11aと下面21c、側板11bと側面21b、天板11cと上面21aとが導電体25を介して接触していることにより、互いの間に形成されうる隙間が生じないようになっている。
逆に、電磁波が漏れない程度の隙間は生じていても許容される。例えばSUSワイヤーブラシの一本一本の間には微小な隙間は形成されるが、電磁シールド性能を得るためには十分に小さい。
【0011】
次に、本回転扉の動作について説明する。
扉体12と扉体12との間に人間を収容する空間15を保持しつつ、各扉体12は前記枠体11の中で回転軸周りに回転することにより、前記空間15が室外と室内とに交互に開放状態となる。扉体12の回転動力は人間によって与えられるようにしてもよいし、別途に設けた駆動源により回転するようにしてもよい。
図5に扉体12の動きを示した。各扉体12に12−1〜12−4と番号をつけると、(a)の状態では扉体12−2,12−4により室内と室外とが仕切られている。扉体12−2と12−4は、導電体25が枠体11と摺接しつつ回転し、(b)、(c)のように進行する。この後扉体12−2,12−4は枠体11の側板11bとの接触をはずれ、仕切が解除されるが、その前に(c)、(d)のように扉体12−1,12−3が枠体11の側板11bと接触し、これら枠体12−1,12−3によって室外と室内とが仕切られる。その後、同様に(a)、(b)…と繰り返し、回転が行われる。
このようにいずれかの扉体12により、前記室外と室内とが常に仕切られた状態となる。
枠体11は電磁シールド性能を有し、扉体12自体も電磁シールド性能を有する。さらに枠体11と扉体12との間は導電体25が設けられているため、室内と室外とを仕切る扉体(例えば図5(a)の扉体12−2,12−4)に設けられた導電体25が、扉体12と枠体11との間の隙間を埋めていることで、この部位から電磁波が漏れることを防止することができる。
【0012】
そして、本回転扉によれば、扉体12の間の空間15に人が入り、扉体12を回転させることにより、人が室外と室内とを容易に行き来することができる。従来においては2重扉の中間の空間の広さによって同時に出入りできる人数が限られていた。本実施形態においては回転扉が回転することにより、大勢の人が連続して、かつ入室と退室とを同時に行うことができる。
【0013】
なお、上記の例では4枚扉の回転扉を例に示したが、室外と室内とが常に仕切られた状態となれば、上記のタイプの回転扉に限定されるものではない。他の回転扉の例としては、図6に示した120度間隔に扉体30が設けられ、開口32を有する枠体31の内部で回転する構成としてもよい。この例の場合は、上記の実施形態と同様に扉体30の周縁に導電体25を備える。
図7は上面視Z型の扉体33を備え、開口35を備えた枠体34の内部で回転する回転扉である。扉体33は枠体11と摺動し上面視が円弧状である側壁36と、これら側壁36を連結し、回転軸を備える仕切壁37を備える。この例の場合、導電体25は扉体33の上面及び下面と、枠体34を向いた側壁36側面の中の少なくとも両端(図の符号36a)に設ける。
図8は、複数枚の扉体38が、開口40を備える枠体39内を循環走行する回転扉である。各扉体38は、枠体39の中間部に位置する柱41に対して走行自在に支持され、図の矢印のように柱41の周囲を循環する。本変形例においても、上記の実施形態と同様に扉体30の周縁に導電体25を設ける。
以上の各変形例においても、回転扉の回転によっても室内と室外とは常に仕切られた状態となる。したがって電磁シールド性能は確保される。
【0014】
なお、上記の導電体25としては、SUSワイヤーブラシに限らない。十分な電磁シールド性能を有し、枠体11と摺動するのに十分な柔軟性を有するものであればよい。例えば図9に示した導電性のゴム25’であってもよい。すなわち、導電体25は、ワイヤーブラシ、導電ゴム、その他に導電性と可撓性を有するものであれば材質は限定されるものではない。なお、図の例では導電性のゴム25’が3列設けられているから、もし一部に破損が生じても電磁シールド性能は確保される。
また、扉体と枠体の少なくともいずれか一方に導電体が設けられていればよいが、枠体側に導電体を設けるよりも上記実施形態のように扉体側に導電体25を設ければ、導電体の設置面積は少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態として示した回転扉の斜視図である。
【図2】同回転扉を用いた電磁シールドルームの一例について示した上面図である。
【図3】同回転扉の扉体の正面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】同回転扉を回転させる際の扉体の動きについて示した上面図である。
【図6】回転扉の変形例について示した上面図である。
【図7】回転扉の変形例について示した上面図である。
【図8】回転扉の変形例について示した上面図である。
【図9】導電体としての他の例について示した図である。
【符号の説明】
【0016】
1 回転扉
10 開口
11 枠体
12 扉体
25 導電体
25’ 導電性ゴム(導電体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扉体と、室内と室外とに向けてそれぞれ開口を有する枠体とを有し、前記各扉体は間に人間を収容する空間を保持しつつ前記枠体の内部で循環することにより、前記空間が室外と室内とに交互に開放状態となる回転扉において、
前記扉体のうちのいずれかにより、前記室外と室内とが常に仕切られた状態となり、
前記扉体と枠体との少なくともいずれか一方に、同他方に対して摺接する導電体が設けられ、前記扉体は、前記室外と前記室内とを仕切る位置にある場合に、その周縁が前記導電体を介して前記枠体と常に接触した状態であることを特徴とする電磁シールドルーム用回転扉。
【請求項2】
前記電磁シールドルーム用回転扉が、室内の壁、床及び天井に所定の電磁波を遮断する電磁シールド材が設けられた部屋の出入り口に取り付けられることを特徴とする電磁シールドルーム。
【請求項3】
前記電磁シールドルームは、所定の電磁波を遮断する電磁シールド材が設けられた窓を有することを特徴とする請求項2に記載の電磁シールドルーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−169744(P2006−169744A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360278(P2004−360278)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(593063161)株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】