説明

電磁弁制御式舵取機

【課題】 電磁弁制御式舵取機の操舵時のショックをなくし、高精度の操舵を可能とし、効率が良く、かつメインの油圧流路中に絞り用の制御弁が不要なシステムを実現する。
【解決手段】 舵軸を回動させるラムを押し引きするシリンダへの作動油の給排または供給停止の切り替えを行う油圧切替弁と、クローズド回路内に設置されて、ラムに対する油圧を発生させる可変容量型のメインポンプと、メインポンプの容積を変化させて吐出量を変化させるポンプ制御装置と、油圧切替弁の操作部とポンプ制御装置へ接続されるオープン回路内に設置されて、油圧切替弁とポンプ制御装置の制御油圧を発生させるチャージポンプと、チャージポンプと油圧切替弁の操作部との間に介在して、操舵時にチャージポンプの発生油圧が油圧切替弁の操作部とポンプ制御装置にかかるように、また非操舵時にチャージポンプの発生油圧がタンクへ抜けるように切り替えを行う電磁弁とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の舵取機に係り、より詳しくは電磁弁制御方式を採用しながらも滑らかで高精度の操舵を実現可能な電磁弁制御式舵取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電磁弁制御方式を採用した船舶の舵取機は知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような電磁弁制御式舵取機においては、一般に固定容量の油圧ポンプを使用するとともに、この油圧ポンプから油圧をもらう電磁弁により、油圧切替弁を切り替えて、メインの油圧流路を面舵あるいは取舵に切り替えるようにしている。
【0003】
【非特許文献1】[online]、[平成16年8月26日検索]、インターネット<URL:http://www.khi.co.jp/kpm/products/parts/marine_machinery/steering.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のように固定容量の油圧ポンプを使用して、この油圧ポンプから油圧をもらう電磁弁で、油圧切替弁を切り替えて、メインの油圧流路を切り替えるようにしたものにあっては、舵を操作しない時も、油圧ポンプは常に最大流量で吐出しており、これを電磁弁で切り替えるため、下記のような難点があった。
1)操舵時(特に動き始め及び停止時)のショックが大きい。
2)前記1)の問題を改善するためには、不感帯を設け、この不感帯をある程度大きくする必要があるが、この場合には目標舵角度と実際の舵角度の差が大きくなるという新たな難題が発生する。
3)省エネルギの観点から、舵を操作しない場合はメインの油圧流路の油圧をアンロードすることが望ましい。しかし、船舶の舵取機には大流量が必要なため、一般には既述したような電磁弁+油圧切替弁の2段構成にして、油圧切替弁の制御油圧を電磁弁で切り替える方式を採っており、この油圧切替弁の切替制御に約1MPa程度以上の油圧を必要としている。このため、舵を操作しない時でも約1MPa以下にはアンロードできない。この結果、舵を操作しない場合でも、前記固定容量の油圧ポンプは約1MPaの油圧で全量吐出し続けており、消費電力および作動油の発熱を抑制できず、効率の悪いシステムとなっている。
4)メインの油圧流路がいわゆるオープン回路(作動油をオイルタンクから全量供給し、オイルタンクへ全量戻すもの)からなる場合、操舵方向と外力の方向が一致したとき暴走しないように、オイルタンクへの戻り配管の途中に制御弁(絞り用)を設ける必要がある。
【0005】
本発明の技術的課題は、電磁弁制御式舵取機において、操舵時のショックをなくし、高精度の操舵を可能とし、効率が良く、かつメインの油圧流路中に絞り用の制御弁が不要なシステムを実現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁弁制御式舵取機は、舵軸を面舵側あるいは取舵側に回動させるためのラムと、ラムの両端にそれぞれ設置されて、ラムを面舵側あるいは取舵側に相対的に押し引きする一対のシリンダと、これら一対のシリンダへの作動油の相対的な給排あるいは作動油の供給停止の切り替えを行う油圧切替弁と、油圧切替弁を介して前記一対のシリンダへ接続されるクローズド回路内に設置されて、ラムに対する油圧を発生させる可変容量型のメインポンプと、メインポンプの容積を変化させて吐出量を変化させるポンプ制御装置と、油圧切替弁の操作部とポンプ制御装置へ接続されるオープン回路内に設置されて、油圧切替弁とポンプ制御装置の制御油圧を発生させるとともに、リリーフ弁を介して前記クローズド回路内に強制的に補充するチャージポンプと、チャージポンプと油圧切替弁の操作部との間に介在して、操舵時にチャージポンプの発生油圧が油圧切替弁の操作部とポンプ制御装置にかかるように、また非操舵時にチャージポンプの発生油圧がタンクへ抜けるように切り替えを行う電磁弁とを備え、操舵時にポンプ制御装置がメインポンプの容量を増加させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電磁弁制御式舵取機によれば、操舵時にチャージポンプの発生油圧がポンプ制御装置にかかり、ポンプ制御装置がメインポンプの容量を増加させ、メインポンプの吐出量が除々に増えて行くので、切替えがスムーズとなり、切替時のショックをなくすることができるとともに、高精度の操舵が可能となり、かつメインの油圧流路中に絞り用の制御弁を設ける必要がなくなる。
また、非操舵時にチャージポンプの発生油圧がタンクへ抜ける(アンロードされる)ので、ポンプ制御装置がメインポンプの容量を増加させることがなく、メインポンプ(可変容量ポンプ)は吐出量がゼロあるいは微小となって、油圧回路のロスが小さく、作動油の発熱を小さく抑えることが可能となり、オイルクーラを不要にでき、かつ電力消費を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図示実施形態に基づき本発明を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電磁弁制御式舵取機のシステム構成を示す油圧回路である。
【0009】
本実施形態の電磁弁制御式舵取機は、油圧回路が、クローズド回路からなり直接舵操作を行うためのメイン油圧回路A(図中に実線で示す)と、オープン回路からなり弁等の切替制御を行うための制御用油圧回路B(図中に破線で示す)とから形成され、このようなメイン油圧回路Aと制御用油圧流路Bからなる油圧回路が2組設けられ、独立して、又は互いに協調して動作できるように回路が構成されている。
【0010】
次に、これを更に詳述するが、既述したように油圧回路が2組共同一に構成されているため、ここでは主に一方(例えば図の右側)の油圧回路についてのみ説明し、他方(図の左側)については対応する部分に同一符号を付して説明を省略する。本実施形態の電磁弁制御式舵取機は、舵軸1と、舵軸1をホーク状のチラー2及びこれと係合するピン3を介して面舵側あるいは取舵側に回動させるためのラム4と、ラム4の両端にそれぞれ設置されて、ラム4を面舵側あるいは取舵側に相対的に押し引きする一対のシリンダ5a,5bと、これら一対のシリンダ5a,5bへの作動油の相対的な給排あるいは作動油の供給停止の切り替えを行うPR接続型の油圧切替弁6と、油圧切替弁6を介して各シリンダ5a,5bへ接続されるクローズド回路からなるメイン油圧回路A内に設置されて、ラム4に対する油圧を発生させる可変容量型のメインポンプ7と、メインポンプ7の容積を変化させて吐出量を変化させるシリンダからなるポンプ制御装置8と、油圧切替弁6の操作部とポンプ制御装置8へ接続されるオープン回路内に設置されて、油圧切替弁6とポンプ制御装置8の制御油圧を発生させるとともに、リリーフ弁9a,9b,9c及び逆止弁11a,11bを介してクローズド回路すなわちメイン油圧回路A内に強制的に補充する小型ポンプからなるチャージポンプ12と、チャージポンプ12と油圧切替弁6の操作部との間に介在して、操舵時にチャージポンプ12の発生油圧が油圧切替弁6の操作部とポンプ制御装置8にかかるように、また非操舵時にチャージポンプ12の発生油圧がタンク13へ抜けるように切り替えを行うオープンセンタ型の電磁弁14とを備えてなり、操舵時にポンプ制御装置8がメインポンプ7の容量を増加させるように構成されている。
【0011】
なお、15a,15bはメイン油圧回路Aの供給側配管または戻り側配管の一方の油圧が他方に比べて所定値以上となった場合に他方と連通させる安全弁、16a,16bはそれぞれ左右のシリンダ5a,5bの圧力を検出するシリンダ圧力ゲージ、17は制御用油圧回路B内の圧力を検出するサーボ圧力ゲージ、18は制御用油圧回路Bの供給配管の途中設けた絞り弁、19は制御用油圧回路Bの絞り弁18の上流側に設けたフィルタ、21はタンク13内の油量を検出するレベルスイッチである。
【0012】
次に、本実施形態の電磁弁制御式舵取機の動作について説明する。まず、非操舵時は、図1に示すようにチャージポンプ12の発生油圧が電磁弁14を介してタンク13へ抜ける(アンロードされる)ので、ポンプ制御装置8および油圧切替弁6に油圧がかからず、メインポンプ7の容量を増加させることがなく、切替わる(操舵がある)までメインポンプ7は吐出量がゼロあるいは微小となっている状態に保持される。このため、メイン油圧回路Aのロスが小さく、作動油の発熱を小さく抑えることが可能となり、オイルクーラを不要にでき、かつ電力消費を節約することができる。
【0013】
操舵時は、電磁弁14が切り替わり、チャージポンプ12の発生油圧が油圧切替弁6の操作部とポンプ制御装置8にかかり、ポンプ制御装置8がメインポンプ7の容量(吐出量)を次第に増加させるので、切替えがスムーズに行われ、切替時のショックをなくすることができる。このため、不感帯が不要で高精度の操舵が可能となり、かつメイン油圧回路A中に絞り用の制御弁を設ける必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る電磁弁制御式舵取機のシステム構成を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
【0015】
1 舵軸
4 ラム
5a,5b シリンダ
6 油圧切替弁
7 メインポンプ
8 ポンプ制御装置
9a,9b,9c リリーフ弁
12 チャージポンプ
13 タンク
14 電磁弁
A メイン油圧回路(クローズド回路)
B 制御用油圧回路(オープン回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵軸を面舵側あるいは取舵側に回動させるためのラムと、
前記ラムの両端にそれぞれ設置されて、該ラムを面舵側あるいは取舵側に相対的に押し引きする一対のシリンダと、
前記一対のシリンダへの作動油の相対的な給排あるいは作動油の供給停止の切り替えを行う油圧切替弁と、
前記油圧切替弁を介して前記一対のシリンダへ接続されるクローズド回路内に設置されて、前記ラムに対する油圧を発生させる可変容量型のメインポンプと、
前記メインポンプの容積を変化させて吐出量を変化させるポンプ制御装置と、
前記油圧切替弁の操作部と前記ポンプ制御装置へ接続されるオープン回路内に設置されて、前記油圧切替弁と前記ポンプ制御装置の制御油圧を発生させるとともに、リリーフ弁を介して前記クローズド回路内に強制的に補充するチャージポンプと、
前記チャージポンプと前記油圧切替弁の操作部との間に介在して、操舵時に前記チャージポンプの発生油圧が前記油圧切替弁の操作部と前記ポンプ制御装置にかかるように、また非操舵時に前記チャージポンプの発生油圧がタンクへ抜けるように切り替えを行う電磁弁とを備え、
前記操舵時に前記ポンプ制御装置が前記メインポンプの容量を増加させるように構成したことを特徴とする電磁弁制御式舵取機。

【図1】
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【公開番号】特開2006−69391(P2006−69391A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256050(P2004−256050)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】