説明

電磁波シールド室用電磁波シールド板と積層電磁波シールド板

【課題】 電磁波シールド性と透視性のある、電磁波シールド室用の電磁波シールド板と積層電磁波シールド板を提供することにある。
【解決手段】 電磁波シールド室用の電磁波シールド板であり、電磁波シールド性と透視性のあるフィルム状のシールド材を透視性のある基板の片面又は両面に貼り付けた。電磁波シールド性のあるシールド材を透視性のある基板の前面又は一部の面にコーティング又は蒸着した。電磁波シールド性と透視性のあるシールド材を二枚の基板の間に挟着した。電磁波シールド室用の積層電磁波シールド板であり、前記電磁波シールド板を二枚以上積層した。前記電磁波シールド板を電磁波非シールドの支持板と積層した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波シールド室用の電磁波シールド板と積層電磁波シールド板に関し、電磁波シールド室のうち特に現金自動取引装置(現金自動引き出し預け入れ機:現金処理機:通称「ATM」)設置用の電磁波シールド室の周壁板、天井板、扉板として使用するのに適するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、振込め詐欺が頻発しており、年間、数百億もの膨大な額の被害が発生している。
振込め詐欺は、振込め詐欺師がお年寄りを電話で金融機関やコンビニエンスストアなどに設置されているATMまで誘い出し、ATMの近くから携帯電話でお年寄りと通話しながらお年寄りにATMを操作させて振込みを実行させる手口が多い。また、盗撮による被害発生も危惧されている。これは、ATMの近くに仕掛けた盗撮用カメラでATMの暗証番号を盗撮し、盗撮した暗証番号を盗撮者に自動的に無線送信し、入手した盗撮者がその暗証番号と偽造カードを使用してATMから現金を引き出す手口である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ATMは金融機関のロビー、無人店舗、コンビニエンスストアの店内等に設置されており、ATMを操作する人と振込め詐欺師とが携帯電話で通話することができるため、係員や店員がいる金融機関のロビーやコンビニエンスストアの店内であっても、それら係員や店員に気付かれることなく振込みさせられてしまい、被害が増加の一途をたどっている。本件発明者は先に、携帯電話を使用した振込め詐欺の被害を防止できるATM用の電磁波シールド室を開発した。本発明はATM設置室をはじめとして、医療機器設置室、OA機器設置室といった電磁波シールドを必要とする各種電磁波シールド室の周壁板、天井板、扉板として使用するのに適する電磁波シールド板と積層電磁波シールド板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板は、電磁波シールド性及び透視性のあるフィルム状、膜状、箔状、線状のシールド材を、透視性のある基板の全面(表裏両面、上下面、両側面の計6面)又は一部の面(例えば、表裏両面又は表面と裏面のいずれか一面)に形成したものである。
【0005】
シールド材がフィルム状のものである場合は、透視性のある基板に接着剤で貼り付けたりホットメルトで付着させたりすることができる。金属箔の場合も同様の手法で付着させることができる。シールド材が金属膜の場合は、コーティング、蒸着、印刷等の手段で透視性のある基板に形成することができる。シールド材が金属線の場合は透視性のある基板内に圧入固定することもできる。印刷の場合は、メッシュ状に透視性のある基板に印刷することもできる。
【0006】
シールド材は透視性のある二枚の基板の間に挟んで固定することも、シールド材を透視性のある二枚の基板の間に挟み更にはそれら透視性のある二枚の基板の外面にも貼り付けることができる。透視性のある二枚の基板の間に挟まれたシールド材はその外周部を透視性のある基板の外側まで引出して、外部アースと連結し易くしておくのが望ましい。
【0007】
前記いずれの場合も、電磁波シールド板の外周部は電磁波シールド性のあるパッキンやシーリング材で被覆することもできる。
【0008】
本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板は、前記電磁波シールド板を二枚以上積層したものである。この場合、電磁波シールド板を支持板と積層することもでき、支持板を電磁波シールド板又は電磁波非シールド板とすることができる。支持板は電磁波シールド板の外周部よりも外側まで突出させて支持部を形成するのがよい。この場合も電磁波シールド板のシールド材の一部を透視性のある基板より外側に引出して引出し部にし、それを外部アースと接続し易くしておくのがよい。積層電磁波シールド板の外周部も電磁波シールド性のあるパッキンやシーリング材で被覆することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板は次のような効果がある。
(1)電磁波シールド性と透視性のあるフィルム状、膜状、箔状、線状のシールド材を、透視性のある基板の全面又は一部の面に形成したので、用途に合った形状、寸法の電磁波シールド板を手軽に製作することができる。
(2)シールド材が電磁波シールド性と透視性のあるフィルム状であり、そのシールド材が透視性のある基板に貼り付けたものであるため、用途に合った形状、寸法の電磁波シールド板を手軽に製作することができる。
(3)シールド材が透視性のある基板にコーティング、蒸着により薄膜状に形成され、それら薄膜状のシールド材が後処理により透視性を付与したり、シールド材をメッシュ状に印刷して透視性を付与したりするので、用途に合った形状、寸法の電磁波シールド板を手軽に製作することができる。
(4)シールド材に透視性があるため、電磁波シールド室の周壁として使用した場合、電磁波シールド室内を外から透視することができ、電磁波シールド室内での携帯電話使用の振込め詐欺を発見し易く、振込め詐欺の予防に役立つ。
(5)シールド材を透視性のある基板に圧入したので、長期間使用してもシールド材が損傷しにくい。
(6)シールド材を透視性のある二枚の基板の間に挟んで貼り付けたので、長期間使用してもシールド材が損傷しにくい。
【0010】
本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板は次のような効果がある。
(1)電磁波シールド板を二枚以上積層したので電磁波シールド性が向上する。
(2)電磁波シールド板を支持板と積層し、支持板の外周部の一部を電磁波シールド板の外周部よりも外側に突出させて支持部を形成したので、積層電磁波シールド板を縦向きにして使用しても、積層電磁波シールド板の荷重が支持板の支持部で受けられて電磁波シールド板に掛からないので、電磁波シールド板のシールド材の一部を基板の外周部よりも外まで引出してアース部としてあってもアース部には荷重が掛からず、アース部が破損しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態であり、(a)は小孔が開口されたシールド材を基板に貼り付ける前の説明図、(b)は小孔が開口されたシールド材を基板の両外面に設けた状態の説明図、(c)は小孔が開口されたシールド材を二枚の基板の間に挟んで設けた状態の説明図、(d)は(b)は小孔が開口されたシールド材を二枚の基板の間に挟んで設け、更に二枚の基板の両外面にも設けた状態の説明図、(e)は小孔が開口されたシールド材を基板の全周(6面)に設けた状態の説明図。
【図2】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板の周壁下端部の実施形態であり、(a)は二枚の電磁波シールド板を積層して電磁波シールド板のシールド材を基板の外周に引き出した状態の正面図、(b)は支持板を入れて積層した積層電磁波シールド板の両外側の電磁波シールド板の底面から側面までパッキンを被せた状態の正面図、(c)は支持板を入れて積層した積層電磁波シールド板の底面から両側外面までにパッキンを被せた状態の正面図。
【図3】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を使用したATM設置電磁波シールド室の概要を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図4】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を使用した電磁波シールド室の床、周壁、天井の組立て説明図。
【図5】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を周壁に使用した電磁波シールド室の周壁下端部と下枠の連結説明図。
【図6】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を周壁に使用した電磁波シールド室の周壁上端部と上枠の連結説明図。
【図7】(a)、(b)は本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を使用した電磁波シールド室の天井板と天井枠の連結説明図。
【図8】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を使用した開閉扉と扉枠との取付け構造の一例を示す説明図。
【図9】本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板の三層構造の一例を示す説明図。
【図10】(a)〜(f)は電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を使用した開閉扉と扉枠の連結構造の異なる例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態1)
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板の一実施例を図1(a)〜(d)に基づいて説明する。このうち図1(a)に示すものは電磁波シールド性及び透視性のあるフィルム状のシールド材1を、ガラス又は樹脂製の透視性のある基板2の片面に接着剤で貼り付けたりホットメルトで付着したりしたものである。シールド材1としては導電性に優れた金属が適し、一例としては膜状、箔状といったものが適する。シールド材1は透視性を備えたものであり、フィルム全面に小孔1aを多数形成して透視性を付与してある。小孔1aはシールド材1を基板2に貼る前に開口してある。基板2には透視性のあるガラス板或いは樹脂板が適する。フィルムの厚さはμm単位とすることができる。小孔1aの形状、大きさ、間隔等は任意に選択可能である。
【0013】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態2)
シールド材1はコーティング或いは蒸着により基板2に金属膜を形成し、それを後処理、例えばエッチング処理(フォトエッチングを含む)して小孔1aを形成したり、メッシュ状にしたりして、透視性を付与することができる。膜状のシールド材1の厚さは実施形態1と同様とすることができる。メッシュの目とか小孔1a等の形状、大きさ、間隔等は任意に選択可能である。
【0014】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態3)
シールド材1は基板2に印刷して形成することもできる。メッシュの目とか小孔1a等の形状、大きさ、間隔等は任意に選択可能である。
【0015】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態4)
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板は図1(b)のように、電磁波シールド性及び透視性のあるシールド材1を透視性のある基板2の表裏両面に設けることもできる。シールド材1の形成方法、小孔1aの形成方法、基板2は実施形態1〜3と同様にすることができる。
【0016】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態5)
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板は図1(c)のように、電磁波シールド性及び透視性のあるシールド材1を透視性のある二枚の基板2の間に挟んで貼り付けることもできる。この場合はシールド材1の外周の一部を基板2の外側まで引出して引出し部1bを形成しておくのがよい。引出し部1bを形成することにより二枚の基板2間のシールド材1を外部のアースに確実に接続して確実にシールドすることができる。シールド材1の形成方法、小孔1aの形成方法、基板2は実施形態1と同様にして行うことができる。シールド材1が設けられた基板2の端面を電磁波シールド性のあるパッキン25やシーリング材で被覆することによりし電磁波シールド性を高めることもできる。パッキン25やシーリング材は導電性のあるゴムや樹脂製とすることができる。
【0017】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態6)
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板は図1(d)のように、電磁波シールド性及び透視性のあるシールド材1を透視性のある二枚の基板2の間に挟んで貼り付け、二枚の基板2の表裏両面にも電磁波シールド性及び透視性のあるシールド材1を設けたものである。シールド材1の形成方法、小孔1aの形成方法、基板2は実施形態1と同様にして行うことができる。この場合も二枚の基板2間のシールド材1の外周の一部を基板2の端面より外側まで引出して引出し部1bを設けておき、それを基板2の外側のシールド材1の引出し部1bと連結し、それらの外側を電磁波シールド性のあるパッキン25やシーリング材で被覆しておくのがよく、このようにすることにより三枚のシールド材1を外部のアースに接続して電磁波シールド性を向上させることができる。パッキン25やシーリング材は導電性のあるゴムや樹脂製とすることができる。
【0018】
(電磁波シールド室用電磁波シールド板の実施形態7)
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板は図1(e)のように、電磁波シールド性及び透視性のあるシールド材1を透視性のある基板2の全周(表裏両面、上下両面、左右両面の計6面)に設けることもできる。シールド材1の形成方法、小孔1aの形成方法は実施形態1と同様にして行うことができる。
【0019】
(電磁波シールド室用積層電磁波シールド板の実施形態1)
本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板は、図1(a)〜(e)の電磁波シールド板8を図2(a)〜(c)のように二枚以上積層して積層電磁波シールド板Pとしてある。図2(a)は二枚の電磁波シールド板8を、シールド材1を内側にして背中合わせに積層したものであり、シールド材1の外周部を基板2の外周よりも外側まで引出して引出し部1bとしてある。
【0020】
図2(b)に示す積層電磁波シールド板Pは三層構造であり、中間の支持板26に電磁波非シールド板を使用し、その両外側の二枚を電磁波シールド板8としてある。支持板26は透視性のあるガラス板或いは樹脂板が適する。三層構造は中間層を電磁波シールド板とし、その両外側に電磁波非シールド板を使用して支持板とすることもできる。積層数は四枚以上とすることもできる。その場合、全てを電磁波シールド板8とすることができるが、少なくなくとも一枚には電磁波非シールド板を使用して支持板とするのが望ましい。前記いずれの場合も、電磁波シールド板8のシールド材1の外周部の少なくとも一部を基板2外周縁よりも外側まで引出して引出し部1bを設けて、その引き出し部1bを外部のアースに接続できるようにしておくのが望ましい。また、前記いずれの場合も、支持板26の四辺の外周部の少なくとも1辺の外周部を電磁波シールド板8の外周部よりも外側まで突出させて支持部26aを設けるが望ましい。積層電磁波シールド板Pを図2(a)のように縦向きにして使用した場合、前記シールド材1の引出し部1bが電磁波シールド板8の荷重で破損することがあるが、図2(b)のように支持部26を設けることにより、シールド材1の引出し部1bが直接地面や床と接触せず荷重による切断が防止される。
【0021】
図2(b)、(c)のように積層電磁波シールド板Pの外周部を電磁波シールド性のあるパッキン27、28で被覆してシールド材1の引出し部1bを保護すると共にパッキン27、28と引出し部1bとの導通性を確保して電磁波シールド板8のシールド性を確実にすることができる。電磁波シールド性のあるパッキン27、28は例えば導電性のあるゴムや樹脂製とすることができる。
【0022】
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板8(図1(a)〜(e))又は積層電磁波シールド板P(図2(a)〜(c))は電磁波シールド室の周壁、天井板、扉板として使用することができる。周壁、天井板、扉板に本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板Pを使用した電磁波シールド室の一例を図3(a)、(b)に示す。この電磁波シールド室はATM設置スペースとATM操作スペースを備えた電磁波シールド室Aを細長にし、その中にATM50を一台設置した例である。電磁波シールド室はATMを複数台設置できる広さとすることもできる。
【0023】
電磁波シールド室Aは図4に示す床材3と、その上に図3(a)のように組み立てた周壁4と、周壁4の上の天井5で囲われており、周壁4に出入り口6(図3(b))を設け、出入り口6に開閉扉7を取付けてある。開閉扉7はドアでもよく引き戸であってもよい。電磁波シールド室Aは金融機関、コンビニエンスストア等の店舗内、駅や空港のビル内、公共施設の建物内、屋外といった必要箇所に設置することができる。
【0024】
電磁波シールド室Aは室内を電磁波シールドするため、床材3に電磁波シールド性のある板材やマット(通称:シールドマット)を使用し、周壁4と天井5に本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板8や積層電磁波シールド板Pを使用し、床材3と周壁4の連結箇所、周壁4と天井5との連結箇所、出入り口6への開閉扉7の取付け箇所も電磁波シールド構造にしてある。床材3は板材やマットではなく電磁波シールド構造に施工された地面や建物のフロアなどであってもよい。前記電磁波シールド室Aは図3(a)のように床材3、周壁4、天井5を組立て、開閉扉7を取付けることにより完成することができる。
【0025】
図4の床材3は地面に固定される。この場合、床材3の上に床取付けランナー10を設置し、固定ネジ(ボルト)11を床取付けランナー10から床材3を貫通して床にねじ込むことにより床材3を金融機関やコンビニエンスストアの床や屋外の路面に固定できるようにしてある。床材3は設置した地面や他の場所に電気的にアースして電磁波シールド効果を確実にすることができる。電磁波シールド室Aの床面は地面や室内の床等に導電性メッシュや他の導電材を敷設したり埋設したりして電磁波シールド構造にしたものであってもよい。
【0026】
周壁4の積層電磁波シールド板Pは、図4に示す周枠12の内側に配置固定される。周枠12は二本の支柱13の間の下部に下枠14が、上部に上枠15が取付けられ、両支柱13の内側と下枠14、上枠15の内側に受縁16が取付けられ、周枠12の内側に積層電磁波シールド板Pが配置されて受縁16に宛がわれ、周枠12の内側から積層電磁波シールド板Pの外側に押縁17が押し当てられて積層電磁波シールドPが受縁16と押縁17の間に挟まれ、押縁17が支柱13に固定されることにより積層電磁波シールド板Pが周枠12の内側に固定される。上枠15は天井取付けランナー18により両支柱13の上部に固定される。積層電磁波シールド板Pが固定された周枠12は床取付けランナー10に嵌合されて床材3に固定される。図4では積層電磁波シールド板Pの四周外周縁に電磁波シールド性のあるテープ、例えば、金属テープ9が貼り付けられている。周壁4の前面、両側面、背面は積層電磁波シールド板Pを前記のように組立てることにより形成されている。天井5(図3(a))に使用される積層電磁波シールド板Pは前記周壁4の上に配置固定される。天井5と周壁4も電磁波シールド構造にして連結固定されている。
【0027】
図4に示す側壁用の積層電磁波シールド板Pの下端部と下枠14との連結構造は種々あるが、その一例として図5に示すものは積層電磁波シールド板Pの下端面に導電性パッキン30を被せ、導電性パッキン30と下枠14との間の空間に電磁波シールド性のあるシーリング材31を充填して、積層電磁波シールド板Pと周枠12の間を電磁波シールドすることもできる。前記導電性パッキン30の代わりに導電性テープを貼り付けることもできる。
【0028】
図4に示す側壁用の積層電磁波シールド板Pの上端部と上枠15との連結構造も種々あるが、その一例として図6に示すものは積層電磁波シールド板Pの上端面に導電性パッキン30を被せ、導電性パッキン30と上枠15との間の空間に電磁波シールド性のあるシーリング材31を充填して、積層電磁波シールド板Pと周枠12の間を電磁波シールドすることもできる。前記導電性パッキン30の代わりに導電性テープを貼り付けることもできる。
【0029】
図3(a)の天井板としての積層電磁波シールド板Pと天井枠33との連結構造も種々あるが、その一例として図7(a)に示すものは、積層電磁波シールド板Pの連結端面に導電性パッキン34を被せ突合せ、その突合せ部分を両外側から金属製の横枠33で挟んだ構造である。図7(b)に示すものは積層電磁波シールド板Pの連結端面に導電性パッキン34を被せ、その連結端部を金属製のI字状の天井枠33の溝に嵌合した構造である。
【0030】
出入り口6(図3(b))への開閉扉7の取付けも電磁波シールド構造にしてある。開閉扉7の一例として図8に示すものは、本発明の積層電磁波シールド板Pを使用し、それを開閉機構20により出入り口6の扉枠21に回転可能に取付けてある。この場合、開閉扉7の内側の電磁波シールド板8の端部に電磁波シールド性のあるパッキン22を被せ、そのパッキン22を開閉扉7と扉枠21の間に介在させ、更に、扉枠21に電磁波シールド性のあるパッキン23を配置固定して、開閉扉7と扉枠21との連結部をも電磁波シールド構造にしてある。図8では三枚の電磁波シールド板8のうち、最外層の電磁波シールドガラス板8の端部を突出させ、最内層の電磁波シールド板8の端部を中間層の電磁波シールド板8よりも突出させて、最内層の電磁波シールド板8の端部8bにパッキンを被せるようことができるようにしてある。図8のパッキン22、23は開閉扉7の縦方向全長に取付けられている。図8に示す開閉扉7の端部と反対側の端部と、図8に示す扉枠21と反対側の扉枠との双方又はいずれか一方にも電磁波シールド性のあるパッキンを取付けて両者間も電磁波シールド構造にしてある。図8のパッキン22は開閉扉7の縦方向全長に、パッキン23は扉枠21の縦方向全長に取付けてある。
【0031】
出入り口6(図3(b))は車椅子が出入りできる広さにすることができる。この場合、開閉扉7の底面と出入り口6の床材3の間も電磁波シ−ルドする必要があり、そのために例えば開閉扉7の底面と出入り口6の床材3との双方又はいずれか一方に電磁波シールド性のあるパッキンを取付けて開閉扉7を閉めたときに出入り口6の床面と開閉扉7との間も電磁波シ−ルドされるようにすることができる。
【0032】
本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板のシールド周波数帯域(遮蔽周波数帯域)は広い方が望ましいが、少なくとも携帯電話の使用周波数帯域をシールド(遮蔽)できるもの、例えば周波数選択電磁波シールドガラスを使用することもできる。これはガラスや内装材などの表面にアンテナを均等配列して電波反射面を形成して、アンテナ長に応じた周波数帯域の電波が反射されて遮蔽されるようにしたものである。
【0033】
本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板を使用したATM設置室は電磁波シールド室での悪質行為や携帯電話の使用状況等を外部から視認できるようにするのが好ましいため、積層電磁波シールド板には透視性のあるものを使用する。積層電磁波シールド板には遮熱性、断熱性、耐火性等に優れたものを使用して積層電磁波シールド板で囲われた室内に断冷房機能を持たせたり、耐火機能を持たせたりすることもできる。
【0034】
(電磁波シールド室用積層電磁波シールド板の実施形態2)
本発明の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板の連結構造も種々あるが、一例として図9に示すものは三層(三枚)構造の積層電磁波シールド板Pの連結構造であり、一方(図9の左側)の積層電磁波シールド板Pは中間の電磁波シールド板8の連結端部を両外側の電磁波シールド板8の連結端部よりも凹ませ、他方(図9の右側)の積層電磁波シールド板Pは中間の電磁波シールド板8の連結端部を両外側の電磁波シールド板8の連結端部よりも凸にして、前記凹部と凸部を嵌合して連結できるようにしてある。この場合は、図9の左側の積層電磁波シールド板Pの両外側の電磁波シールド板8の凸部にシールド性のあるパッキン34を被せ、図9の右側の積層電磁波シールド板Pの中間の電磁波シールド板8の凸部にシールド性のあるパッキン34を被せて、前記凹部に凸部を差し込んで電磁波シールド構造にして連結してある。
【0035】
(電磁波シールド室用積層電磁波シールド板の実施形態3)
図10(a)〜(f)は扉枠21と開閉扉7との連結に使用されるパッキンの各種形状(構造)を示すものである。図10(a)〜(f)のいずれの場合も、扉枠21は金属製であり内側に二段の凹部40、41がある。開閉扉7は電磁波シールド板8を三層(三枚)構造にした積層電磁波シールド板Pであり、最外層の電磁波シールド板8の突出端部を開閉機構20により扉枠21に連結してある。また、中間の電磁波シールド板8の端部をその両外側の電磁波シールド板8の端部よりも凹ませて、両外側の電磁波シールド板8の間に嵌合空間を設け、この嵌合空間にパッキン43を挟んである。
【0036】
前記パッキン43は金属粉混入或いは金属繊維埋設の樹脂製或いはゴム製として導電性(電磁波シールド性)をもたせてある。図10(a)〜(f)のパッキン43は前記嵌合空間に嵌合可能な嵌合部43aと内側の電磁波シールド板8と扉枠21との間に配置されるクッション部43bとが一体成型されている。図10(a)〜(f)のパッキン43の嵌合部43aの形状はいずれも同じであるが、クッション部43bの形状は全て異なる。図10(a)のクッション部43bは横長空間部44が、図10(b)のクッション部43bは三個の空間部45が、図10(c)のクッション部43bは二個の空間部46が形成されて弾性が具備されている。図10(c)の二個のクッション部は扉枠21の仕切り突起42で区画されている。図10(d)〜(f)のクッション部43bはいずれも空間部がないが、輪郭形状は図10(d)が図10(a)と、図10(e)が図10(b)と、図10(f)が図10(c)と夫々同じである。これらパッキン43はいずれも開閉扉7及び扉枠21の上下方向に縦長である。パッキンの形状、構造は図10(a)〜(f)に示すもの以外であってもよい。
【0037】
電磁波シールド室Aの形状、広さ等はATMの設置台数に合わせて選択することができ、出入り口の開口方向は設置するロビー、店舗等の配置に合わせて選択する。出入り口は車椅子が出入りできる広さにし、その部分の床はバリアフリー式が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の電磁波シールド室用電磁波シールド板及び積層電磁波シールド板は、電磁波障害を回避したい場所、例えば、オフィス、病院などの個室として利用することもできる。その場合は、電磁波シールド室内にATMの代わりに必要なオフィス機器や医療機器等を設置する。電磁波シールド室の床材、周壁、天井、開閉扉には電磁波シールド室内の機器に障害となる周波数帯の電磁波をシールドできる電磁波シールド板を使用する。電磁波シールド板は透視しにくいもの或いは透視できないものに代えることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 シールド材
1a 小孔
1b 引き出し部
2 基板
3 床材
4 周壁
5 天井
6 出入り口
7 開閉扉
8 電磁波シールド板
8b 電磁波シールド板の端部
9 金属テープ
10 床取付けランナー
11 固定ネジ(ボルト)
12 周枠
13 支柱
14 下枠
15 上枠
16 受縁
17 押縁
18 天井取付けランナー
20 開閉機構
21 扉枠
22、23 パッキン
25 パッキン
26 支持板
26a 支持部
27 パッキン
28 パッキン
30 導電性パッキン
31 シーリング材
33 天井枠
34 導電性パッキン
40、41 扉枠の凹部
42 扉枠の切り突起
43 パッキン
43a パッキンの嵌合部
43b パッキンのクッション部
44 横長空間部
45、46 空間部
50 ATM
A 電磁波シールド室
P 積層電磁波シールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波シールド性と透視性のあるフィルム状、膜状、箔状、線状のシールド材を、透視性のある基板の全面又は一部の面に形成したことを特徴とする電磁波シールド室用電磁波シールド板。
【請求項2】
請求項1記載の電磁波シールド室用電磁波シールド板において、シールド材が電磁波シールド性と透視性のあるフィルム状であり、そのシールド材が透視性のある基板に貼り付けられたことを特徴とする電磁波シールド室用電磁波シールド板。
【請求項3】
請求項1記載の電磁波シールド室用電磁波シールド板において、シールド材が透視性のある基板にコーティング、蒸着により薄膜状に形成され、それら薄膜状のシールド材が後処理により透視性が付与されたことを特徴とする電磁波シールド室用電磁波シールド板。
【請求項4】
請求項1記載の電磁波シールド室用電磁波シールド板において、シールド材がメッシュ状に透視性のある基板に印刷されて透視性が付与されたことを特徴とする電磁波シールド室用電磁波シールド板。
【請求項5】
請求項1記載の電磁波シールド室用電磁波シールド板において、シールド材が透視性のある基板に圧入して形成されたことを特徴とする電磁波シールド室用電磁波シールド板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電磁波シールド室用電磁波シールド板において、シールド材が透視性のある二枚の基板間に挟まれたことを特徴とする電磁波シールド室用電磁波シールド板。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電磁波シールド室用電磁波シールド板が二枚以上積層されたことを特徴とする電磁波シールド室用積層電磁波シールド板。
【請求項8】
請求項7記載の電磁波シールド室用積層電磁波シールド板において、電磁波シールド板が支持板と積層され、支持板が電磁波シールド板又は電磁波非シールド板であることを特徴とする電磁波シールド室用積層電磁波シールド板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−177575(P2010−177575A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20659(P2009−20659)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000155045)株式会社本宏製作所 (41)
【Fターム(参考)】