説明

電磁波シールド材ロール体及びその製造方法、ディスプレイ用電磁波シールドフィルム

【課題】製造するディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせごとの生産計画を変更しても柔軟に対応できると共に、金属メッシュパターンのメッキ仕上がり品質が均一に安定した電磁波シールド材ロール体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に金属メッシュパターン22が設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体30であって、前記金属メッシュパターン22は、前記透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられるとともに、前記金属メッシュパターン22の上には、前記金属メッシュパターン22の長手方向に所定の間隔を介して配置された電極枠24が、積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)などの各種ディスプレイに用いられる電磁波シールド材及びその製造方法に関し、特に、ロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体及びその製造方法、ディスプレイ用電磁波シールドフィルムに関する
【背景技術】
【0002】
近年、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)などの各種ディスプレイにおいては、ディスプレイ前面から発生する電磁波が人体に悪影響を与えたり、周囲の電子機器を誤動作させることが問題とされるようになり、ディスプレイの画像の鮮明さとともに、ディスプレイが周囲へ与える影響への対策がますます重要視されつつある。
【0003】
従来、ディスプレイから発生する電磁波が外部に漏洩して人体への悪影響を防ぐという要求に対して、種々の透明導電性フィルムおよび電磁波シールドフィルムが開発されている。公知の電磁波シールド材は、大きくは、透明導電膜による電磁波シールド材と、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の2つに区分される。このうち、透明導電膜による電磁波シールド材は、金属メッシュによる電磁波シールド材に比べて透明性に優れる反面、表面抵抗率が大きく、電磁波シールド性能に劣る。このため、PDP等の強い電磁波を発生させる機器からの電磁波をシールドする用途では、金属メッシュによる電磁波シールド材が好ましい。
【0004】
さらに、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の作製方法としては、下記の(1)、(2)に示す方法が挙げられる。
(1)透明基材に金属箔を貼り合わせた後、フォトリソグラフ法により導電性金属パターンを形成するエッチング法(例えば、特許文献1参照)。
(2)透明基材に導電性薄膜からなるメッシュパターンを形成し、その上にメッキして導電性の金属メッシュを形成する方法であって、次のA.からD.のような方法がある。
A.蒸着膜のメッシュパターンの上にメッキする方法(例えば、特許文献2参照)。
B.導電性ペーストインキを印刷してメッシュパターンを形成し、その上にメッキする方法(例えば、特許文献3参照)。
C.無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷してメッシュパターンを形成し、その上に無電解メッキする方法(例えば、特許文献4)。
D.細線メッシュパターンを写真製法により現像された金属銀で形成した後、この金属銀を物理現像および/またはメッキすることにより導電性金属のメッシュパターンを形成する写真銀−メッキ法(例えば、特許文献5および特許文献6参照)。
【0005】
そして、写真製法により金属銀で細線メッシュパターンを形成する方法には、下記の(a)、(b)に示す2通りがある。
【0006】
(a)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成する方法(例えば、特許文献5参照)。この方法は、露光マスクに覆われて露光されなかった部分には現像銀は発現せず、露光マスクと比較して反転した形に現像銀が表れるネガ型の露光・現像法である。
【0007】
(b)透明基材上に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層とをこの順で有する感光材料を露光し、物理現像核上に任意の細線パターンで金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核上に設けられた層を除去した後、前記物理現像された金属銀を触媒核として金属をめっきする方法(例えば、特許文献6参照)。この方法は、露光マスクに覆われて露光されなかった部分に現像銀が発現し、露光マスクと同じ形に現像銀が表れるポジ型の露光・現像法(銀錯塩拡散転写法、以降DTR法と称す。)である。
【0008】
また、特許文献7には、金属箔のエッチングによるロール状電磁波遮蔽シートおよびディスプレイ用フィルターの製造方法が開示されており、ロールtoロールで連続的に、上記(1)のエッチング法を用いて金属箔の微細なメッシュパターンを形成するに際し、電磁波遮蔽用金属層(金属枠、すなわち電極枠)の形成がメッシュパターンの形成と同時に行なわれることが開示されている。
【特許文献1】特開平10−075087号公報
【特許文献2】特開2004−253587号公報
【特許文献3】特開2004−111822号公報
【特許文献4】特開平11−170420号公報
【特許文献5】特開2004−221564号公報
【特許文献6】国際公開第2004/007810号パンフレット
【特許文献7】特開2006−054291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記(1)のエッチング法においては、エッチングにより細線部分となるほんのわずかな部分のみを残し、それ以外のほとんど大部分の金属を溶解除去するのは資源を節減するという観点から問題である。また、一般に市販されている金属箔の最大規格寸法幅が約600mm以下であるから、金属箔を貼り合わせる方法ではこれ以上の寸法幅が広い電磁波シールド材は安価に製造できないという問題があった。
【0010】
上記(2)の導電性薄膜のメッシュパターンを形成し、その上にメッキする方法においては、メッシュパターン部にのみメッキ金属が積層されるため、上記(1)のエッチング法に比べて省資源であり、より好ましい金属メッシュによる電磁波シールド材の作製方法である。
特に、上記D.の写真銀−メッキ法においては、高い電磁波シールド性が得られ、また、透明基材の寸法に制約を受けることが無く、ロールtoロールで製造できて非常に生産性が高いことから好ましい製造方法である。
【0011】
ところで、従来の電磁波シールド材の用途としては、PDP(プラズマディスプレイ)から発生する電磁波をシールドするために、PDPの光学フィルターの中に組み込まれる電磁波シールドフィルムが主要なものである。
また、従来の電磁波シールド材ロール体の製造方法は、特許文献7のように、PDPの画面サイズごとのメッシュパターンをロール状のフィルム面上に一定間隔で間欠的に不連続に形成している。この場合、メッシュパターンをロール状のフィルム面上に形成するに当たり、露光・現像装置の露光マスクを、製造しようとする画面サイズに適したものに交換してから、露光・現像、及びエッチングの製造工程を行い、ディスプレイの画面サイズごとの電磁波シールド材ロール体を製造している。
また、プラズマディスプレイにおいては、電磁波シールド材の金属メッシュの最適なバイアス角度(電極枠に対する金属メッシュパターンのバイアス角度を指す。)は、当該金属メッシュパターンがディスプレイのブラックストライプパターンとの干渉により引き起こすモアレ現象を防止するために、ディスプレイパネルの解像度に因って異なることから、ディスプレイの画面サイズとディスプレイパネルの解像度の組み合わせに応じて露光マスクを交換し、最終的には、ディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせごとの電磁波シールド材ロール体を製造する必要があった。
【0012】
従来技術においては、電磁波シールド材ロール体を製造する最初の工程である、導電性薄膜のメッシュパターンを形成する工程から、ディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせに応じた生産計画で製造する必要があった。このため、ディスプレイ用の電磁波シールド材ロール体の製造工程の途中で、製造対象とするディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせを変更することができないという不都合があった。
また、メッキ工程において、ディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせが異なると、電極枠の寸法、配置、メッシュの角度が異なることからメッキ槽の操作条件をその度に微調整する必要があり、複数種類のディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせのロール体を混在させて同じメッキ槽でメッキ処理すると、金属メッシュパターンのメッキ品質が均一には安定しないという不都合があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数種類のディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせに応じた電磁波シールド材ロール体を製造する場合において、ディスプレイ用の電磁波シールド材ロール体の製造工程の途中で、製造するディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせごとの生産計画を変更しても柔軟に対応できると共に、金属メッシュパターンのメッキ仕上がり品質が均一に安定した電磁波シールド材ロール体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に金属メッシュパターンが設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体であって、前記金属メッシュパターンは、前記透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられるとともに、前記金属メッシュパターンの上には、前記金属メッシュパターンの長手方向に所定の間隔を介して配置された電極枠が、積層されていることを特徴とする電磁波シールド材ロール体を提供する。
【0015】
前記電極枠は、印刷された導電性ペースト、または、貼合された導電性粘着シートのいずれかからなることが好ましい。
【0016】
前記金属メッシュパターンは、導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンとその上に無電解メッキ及び/又は電解メッキしたメッキ層とを有することが好ましい。
前記金属メッシュパターンの幅方向両外側に接する一定幅の電解メッキ用給電層が、前記透明基材の長手方向に連続して設けられることが好ましい。
【0017】
前記導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンは、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかであることが好ましい。
【0018】
前記写真製法により生成された現像銀メッシュパターンは、露光した部分に現像銀が発現するネガ型の現像方法により生成されたものであることが好ましい。
【0019】
前記写真製法により生成された現像銀メッシュパターンは、露光しない部分に現像銀が発現するポジ型の現像方法により生成されたものであることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記電磁波シールド材ロール体を用いたディスプレイ用電磁波シールドフィルムであって、透明基材の少なくとも一方の面に金属メッシュパターンが設けられ、前記金属メッシュパターンの上には、印刷された導電性ペースト、または、貼合された導電性粘着シートのいずれかからなる、ディスプレイの画面サイズに応じた電極枠が、積層されていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールドフィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に金属メッシュパターンが設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体の製造方法であって、前記透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続した導電性金属の薄膜のメッシュパターンが生成された原反ロールを製造する工程と、当該導電性金属の薄膜のメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記導電性金属の薄膜のメッシュパターンの上に無電解メッキ及び/又は電解メッキしたメッキ層を形成し、再び巻き取ってロール体とするメッキ工程と、当該メッキされたメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記メッキされたメッシュパターンの上に、電極枠を前記金属メッシュパターンの長手方向に所定の間隔を介して積層し、再び巻き取ってロール体とする電極枠の形成工程と、を少なくとも有することを特徴とする電磁波シールド材ロール体の製造方法を提供する。
【0022】
前記導電性金属の薄膜のメッシュパターンは、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかであることが好ましい。
【0023】
前記電極枠の形成工程は、導電性ペーストを用いた印刷、または、導電性粘着シートの貼り付けのいずれかの工程からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、PDP用等の電磁波シールド材ロール体の製造工程において、透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続して金属メッシュパターンを形成する工程の後で、製造するディスプレイの電極枠を造りこむことにより、ディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせごとの電磁波シールド材ロール体の生産計画を変更するのに柔軟に対応できる。また、製造するディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせに関係なく、メッキ工程において、完全に同一である一種類の金属メッシュパターンを形成するので、メッキ槽の操作条件を変更する必要がなく、金属メッシュパターンのメッキ仕上がり品質が安定した電磁波シールド材ロール体及びその製造方法を提供することが可能である。特に、電解メッキを行なう場合には、金属メッシュパターンのメッキ仕上がりの品質を従来技術に比べて著しく安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明を用いて製造された、例えばPDP用の電磁波シールド材ロール体の平面図である。図2は、本発明を用いて製造された電磁波シールド材ロール体の中間製品であって、導電性薄膜の上に無電解メッキ及び/又は電解メッキされた連続メッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。図3は、従来技術における、例えばPDP用の電磁波シールド材におけるメッシュパターン、電極枠、及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。図4は、本発明で用いられる電解メッキ装置の一例を示す概略図である。図5は、本発明で用いられる連続露光装置の一例を示す概略図である。図6は、本発明で用いられる無電解メッキ装置の一例を示す概略図である。
【0026】
図1において、本発明を用いて製造された完成品のロールシート30には、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に設けられた金属メッシュパターン22が、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられ、透明基材21の長手方向に連続した一定幅の連続給電層23、23が金属メッシュパターン22の幅方向の両外側に接して設けられ、金属メッシュパターン22の上には、ディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせに応じた電極枠24が、金属メッシュパターン22の長手方向に一定の間隔を介して積層されている。
【0027】
本発明は、図2に示す中間製品のロールシート20において、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられた金属メッシュパターン22の上に、印刷された導電性ペースト、または貼合された導電性粘着シートのいずれかの方法で電極枠24を、金属メッシュパターン22の長手方向に一定の間隔を介して積層し、図1に示す完成品のロールシート30を得るものである。
このため、図2のロールシート20は、製造するディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせに関係なく、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられた完全に同一である、単に1種類の金属メッシュパターン22を形成したものでよい。
この結果、導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンを形成した後の工程であるメッキ工程において、完全に同一である1種類の金属メッシュパターン22を形成すればよいので、メッキ槽の操作条件をその都度に変更する必要がなく、金属メッシュパターンのメッキ仕上がり品質を安定させることができる。特に、電解メッキを行なう場合には、金属メッシュパターンのメッキ仕上がりの品質を従来技術に比べて著しく安定させることができる。
【0028】
図2に示すように、本発明を用いて製造された中間製品のロールシート20は、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられた金属メッシュパターン22が形成され、透明基材21の長手方向に連続した一定幅の連続給電層23、23が金属メッシュパターン22の幅方向の両外側に接して設けられたものである。ここで金属メッシュパターン22は、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、及び無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかの方法を用いて形成された導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンと、この導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンの上に、無電解メッキ及び/又は電解メッキを施して作製したメッキ層とを有することが好ましい。
【0029】
従来技術では、中間製品であるロールシート50は、図3に示すように、長尺の透明基材51の上に一定の間隔でディスプレイの画面サイズのメッシュパターン52、52、…及びメッシュパターン52の周囲の電極枠54、54、…が配置され、それぞれの電極枠54の幅方向両外側に給電層53、53が設けられたものである。
このように、従来技術においては、ディスプレイ用の電磁波シールド材ロール体を製造する最初の工程である、導電性薄膜のメッシュパターンを形成する工程において、ディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせに応じた電極枠54が形成されるため、ディスプレイ用の電磁波シールド材ロール体の製造工程の途中で、製造対象とするディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせを変更することができなかった。
【0030】
また、従来技術では、図4に示す電解メッキ装置1において、移送ロール4、4、4、…によりロールシート3をステップ送りにて移送して、ロールシート3を間欠的に電解メッキ槽6に導入し、電解メッキ槽6内で1つの画面サイズに対応するメッシュパターン52毎に電解メッキを行う、間欠方式によるものである。このような従来技術では、連続したメッシュパターンを形成し、連続して電解メッキを行うという技術には対応することができなかった。
【0031】
本発明では、図4に示す電解メッキ装置1において、原反ロール2は、導電性金属の薄膜のメッシュパターンを長尺の透明基材上に設けたロールシート3をロール状に巻き取ったものである。原反ロール2から繰り出されたロールシート3は、所要箇所に配置された移送ロール4、4、4、…により、同図の左から右に移送される。ロールシート3は、まず、水洗浄槽5に通されて洗浄され、不要な異物や汚染物が除去される。必要であれば無電解メッキ槽(図示せず)に通されて導電性金属の薄膜からなるメッシュパターン上に無電解メッキされた後、少なくとも電解メッキ槽6に移送される。
【0032】
また、本発明において、図4に示す電解メッキ槽6では、陰極となる給電ロール7、7と陽極となる陽電極板8、8との間で電解メッキ液9を通して電解メッキが行われ、ロールシート3の導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンの上に、又はその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキ層が析出する。電解メッキ液9の温度は、所定温度となるように温度調整器(図示せず)にて制御される。給電ロール7、7は、電解メッキ槽6にロールシート3が出入するための出入口に設けられており、電解メッキ液9は、電解メッキ槽6の給電ロール7、7等の隙間から漏出して落下しうる。このため、電解メッキ槽6の下方には、漏出した電解メッキ液9を受ける受け槽10が設置されており、受け槽10に受け止められた電解メッキ液9が循環ポンプ11及びフィルター12を経て再び電解メッキ槽6に再循環するように構成されている。
電解メッキ槽6を出たロールシート3は、水洗浄槽13で不要な電解メッキ液9を洗い落としてから乾燥器14にて水切り乾燥され、再びロール形状に巻き取られる。
【0033】
ところで、導電性金属の薄膜のメッシュパターンを長尺の透明基材上に設けたロールシートをロール状に巻き取った原反ロールを作製するに当たり、当該導電性金属の薄膜メッシュパターンは、前記透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられる必要がある。
このため、例えば、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンを用いた原反ロールを作製する場合には、図5に一例として示すような、連続露光装置が使用される。
【0034】
図5に示す連続露光装置60は、写真製法における露光に用いられる光を透過する材質からなる円筒ドラム61と、円筒ドラム61の外周壁に設けられた露光マスク部分62と、円筒ドラム61の内部に配設された露光用光源63とを備え、円筒ドラム61の内側の光源63から出射した光によって円筒ドラム61に巻き付けられた透明基材64を露光する装置である。この連続露光装置60には、特定の照射方向に光を透過する開口部66を有する光源カバー65を露光用光源63の周囲に設けることができる。透明基材64を露光するパターンは、露光マスク部分62の光を透過する部分のパターンによって決定される。円筒ドラム61に対する露光マスク部分62の配設は、例えば、円筒ドラム61の外周壁の表面(内面又は外面)に設けられ、あるいは外周壁の内部に挿入又は挟み込まれることによって行われる。
【0035】
(金属メッシュパターンの積層された原反ロール)
透明基材の一方の面の上に、導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンを形成した後でロール状に巻取り、導電性金属の薄膜のメッシュパターンが生成された原反ロールが作製される。
ここで、前記導電性金属の薄膜のメッシュパターンは、次に示すように、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、及び無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかの方法で形成されたものである。
さらに、導電性金属の薄膜のメッシュパターンの上は、無電解メッキ及び/又は電解メッキによるメッキ層が施され、金属メッシュパターンの積層された原反ロールが作製される。
【0036】
本発明では、導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製方法として、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンがあるが、以下にそれぞれの方法による導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製方法と、併せて無電解メッキ及び電解メッキの方法を順に説明する。
【0037】
(写真製法により生成された現像銀メッシュパターン)
本発明に適用できる、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンの作製方法は、細線メッシュパターンを写真製法により現像された金属銀で形成するものである。
以下、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンの形成された原反ロール、さらに、現像銀メッシュパターンの上に電解メッキし金属メッシュパターンとした原反ロールの製造方法について説明する。
【0038】
この写真製法に基づく露光現像法には、上記のとおり、(a)露光マスクに覆われていなくて露光された部分に現像銀が発現する、即ち、露光マスクと反対の形に現像銀が表れるいわゆるネガ型の露光現像方法と、(b)露光マスクに覆われて露光されなかった部分には現像銀が発現する、即ち、露光マスクと同じ形に現像銀が表れるいわゆるポジ型の露光現像方法の2通りがある。本発明には、(a)ネガ型の露光・現像方法と、(b)ポジ型の露光・現像方法のいずれでも適用できる。
【0039】
(写真製法)
以下、ポジ型の露光・現像方法(DTR法)による現像銀メッシュパターンの作製方法について説明する。DTR法の場合、透明基材表面には、予め物理現像核層が設けられていることが好ましい。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によって透明基材上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0040】
透明基材は、塩化ビニリデンやポリウレタン等のポリマーラテックス層の接着層を設けることができ、また接着層と物理現像核層との間にはゼラチン等の親水性バインダーからなる中間層を設けることもできる。
【0041】
物理現像核層には、親水性バインダーを含有するのが好ましい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜300質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。物理現像核層には親水性バインダーの架橋剤を含有することもできる。
【0042】
物理現像核層や前記中間層等の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。本発明において物理現像核層は、上記したコーティング法によって、通常連続した均一な層として設けることが好ましい。
【0043】
物理現像核層に金属銀を析出させるためのハロゲン化銀の供給は、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に一体的に設ける方法、あるいは別の紙やプラスチック樹脂フィルム等の基材上に設けられたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する方法がある。コスト及び生産効率の面からは前者の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を一体的に設けるのが好ましい。
【0044】
前記ハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀写真感光材料の一般的なハロゲン化銀乳剤の製造方法に従って製造することができる。ハロゲン化銀乳剤は、通常、硝酸銀水溶液、塩化ナトリウムや臭化ナトリウムのハロゲン水溶液をゼラチンの存在下で混合熟成することによって作られる。
前記ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀組成は、塩化銀を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化銀であることが好ましい。塩化銀含有率を高くすることによって形成された物理現像銀の導電性が向上する。
【0045】
物理現像核層の上に直接にあるいは中間層を介してハロゲン化銀乳剤層が塗設された感光材料を用いて電磁波シールド材を作製する場合は、網目状パターンのような任意の細線パターンの透過原稿と上記感光材料を密着して露光、あるいは、任意の細線パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記感光材料に走査露光した後、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で処理することにより銀錯塩拡散転写現像(DTR現像)が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して細線パターンの物理現像銀薄膜を得ることができる。露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、ハロゲン化銀乳剤層及び中間層、あるいは必要に応じて設けられた保護層は水洗除去されて、細線パターンの物理現像銀薄膜が表面に露出する。
【0046】
DTR現像後、物理現像核層の上に設けられたハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。
【0047】
一方、物理現像核層が塗布された透明基材とは別の基材上に設けたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する場合、前述と同様にハロゲン化銀乳剤層に露光を与えた後、物理現像核層が塗布された透明基材と、ハロゲン化銀乳剤層が塗布された別の感光材料とを、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で重ね合わせて密着し、アルカリ液中から取り出した後、数十秒〜数分間経過した後に、両者を剥がすことによって、物理現像核上に析出した細線パターンの物理現像銀薄膜が得られる。
【0048】
(現像方法)
次に、銀錯塩拡散転写現像のために必要な可溶性銀錯塩形成剤、還元剤、及びアルカリ液について説明する。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物であり、これらの作用はアルカリ液中で行われる。
【0049】
本発明に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、アルカノールアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物等が挙げられる。
【0050】
前記還元剤としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0051】
上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、物理現像核層と一緒に透明基材に塗布してもよいし、ハロゲン化銀乳剤層中に添加してもよいし、またはアルカリ液中に含有させてもよく、更に複数の位置に含有してもよいが、少なくともアルカリ液中に含有させるのが好ましい。
【0052】
アルカリ液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
【0053】
アルカリ液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14の範囲が好ましい。銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留されたアルカリ液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた透明基材を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0054】
(露光方法)
前記ハロゲン化銀乳剤層は、各種の光源に対して感光性を有している。電磁波シールド材を作製するための1つの方法として、例えば網目状などの細線パターンの物理現像銀の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は細線パターン状に露光されるが、露光方法として、細線パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。前者の密着露光は、ハロゲン化銀の感光性は比較的低くても可能であるが、レーザー光を用いた走査露光の場合は比較的高い感光性が要求される。従って、後者の露光方法を用いる場合は、ハロゲン化銀の感光性を高めるために、ハロゲン化銀は化学増感あるいは増感色素による分光増感を施してもよい。化学増感としては、金化合物や銀化合物を用いた金属増感、硫黄化合物を用いた硫黄増感、あるいはこれらの併用が挙げられる。好ましくは、金化合物と硫黄化合物を併用した金−硫黄増感である。上記したレーザー光で露光する方法においては、450nm以下の発振波長の持つレーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることによって、明室下(明るいイエロー蛍光灯下)でも取り扱いが可能となる。
【0055】
(露光装置)
上記の露光方法による露光装置としては、枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いる枚葉処理方式の露光装置と、連続したパターンが形成できる連続露光装置とがある。枚葉処理方式の露光装置は、所定のマスクパターンが形成された枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いて、ロールシートを間欠送りで露光装置に送り、装置内を真空排気して露光マスクと基材とを密着させて隙間を無くしてから、例えば紫外線で露光する。枚葉処理方式の露光装置では、真空排気、露光、大気開放を間欠的に行うので処理速度は遅くなるとともに、繋ぎ目の無い連続パターンを得ることができない。
【0056】
これに対して本発明では、図5に例示するように、パターンを連続的に形成できる連続露光装置60を用いる。
図5に示す連続露光装置60は、写真製法における露光に用いられる光を透過する材質からなる円筒ドラム61と、円筒ドラム61の外周壁に設けられた露光マスク部分62と、円筒ドラム61の内部に配設された露光用光源63とを備え、円筒ドラム61の内側の光源63から出射した光によって円筒ドラム61に巻き付けられた透明基材64を露光する装置である。この連続露光装置60には、特定の照射方向に光を透過する開口部66を有する光源カバー65を露光用光源63の周囲に設けることができる。透明基材64を露光するパターンは、露光マスク部分62の光を透過する部分のパターンによって決定される。円筒ドラム61に対する露光マスク部分62の配設は、例えば、円筒ドラム61の外周壁の表面(内面又は外面)に設けられ、あるいは外周壁の内部に挿入又は挟み込まれることによって行われる。なお図5は、露光マスク部分62を円筒ドラム61の外周壁の外面に設けた場合を例示した図面である。
【0057】
この連続露光装置60では、円筒ドラム61は、連続的に移送される透明基材64と同じ速度で回転しているので、透明基材64の各部分が円筒ドラム61に巻き付けられた箇所において露光される間、透明基材64に対する露光マスク部分62のパターン(光を透過する部分と遮光する部分のパターン)がずれることがなく、所要時間の露光を継続することが可能である。
【0058】
(無電解メッキ層の形成方法)
導電性金属の薄膜のメッシュパターンの上に無電解メッキ層を形成するには、導電性金属の薄膜のメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、当該導電性金属の薄膜のメッシュパターンの上に少なくとも無電解メッキにより、メッキ層を形成して行なう。なお、メッキされたロールは、引き続いて電解メッキした後に再び巻き取ってロール体とし、次のディスプレイの画面サイズに応じた電極枠を形成する工程に移される。
【0059】
無電解メッキ装置(例えば図6参照)は、導電性メッシュパターンが形成されたロール体に無電解メッキを連続して行う装置である。
図6に示す無電解メッキ装置16において、原反ロール2は、導電性金属の薄膜のメッシュパターンを長尺の透明基材上に設けたロールシート3をロール状に巻き取ったものである。原反ロール2から繰り出されたロールシート3は、所要箇所に配置された移送ロール4、4、4、…により、同図の左から右に移送される。ロールシート3は、水洗浄槽5に通されて洗浄され、不要な異物や汚染物が除去された後、無電解メッキ工程を行うため無電解メッキ槽17に移送される。
【0060】
無電解メッキ槽17では、無電解メッキ液18を通して無電解メッキが行われ、ロールシート3の表面の導電性メッシュパターン上に無電解メッキ層が析出する。無電解メッキ液18の温度は、所定温度となるように温度調整器(図示せず)にて制御される。無電解メッキ液18は、無電解メッキ槽17のロールシート3が通される隙間(スリット)から漏出して落下しうる。このため、無電解メッキ槽17の下方には、漏出した無電解メッキ液18を受ける受け槽10が設置されており、受け槽10に受け止められた無電解メッキ液18が循環ポンプ11及びフィルター12を経て再び無電解メッキ槽17に再循環するように構成されている。
【0061】
無電解メッキ槽17を出たロールシート3は、水洗浄槽13で不要な無電解メッキ液18を洗い落とした後、引き続いて電解メッキ工程を行なうか、又は乾燥器14にて水切り乾燥され、再び巻き取られてロール体15となる。
【0062】
(電解メッキ層の形成方法)
導電性金属の薄膜のメッシュパターン又は無電解メッキしたメッシュパターンの上にメッキ層を形成するには、導電性金属の薄膜のメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、当該導電性金属の薄膜のメッシュパターンの上に少なくとも電解メッキにより、メッキ層を形成して行なう。なお、メッキされたロールは、再び巻き取ってロール体とし、次のディスプレイの画面サイズに応じた電極枠を形成する工程に移される。
【0063】
図4に示す電解メッキ装置1は、導電性メッシュパターンが形成されたロール体に電解メッキを連続して行う装置である。図4に示す電解メッキ装置1において、原反ロール2は、導電性金属の薄膜のメッシュパターンを長尺の透明基材上に設けたロールシート3をロール状に巻き取ったものである。原反ロール2から繰り出されたロールシート3は、所要箇所に配置された移送ロール4、4、4、…により、同図の左から右に移送される。ロールシート3は、まず、水洗浄槽5に通されて洗浄され、不要な異物や汚染物が除去される。必要であれば無電解メッキ槽(図示せず)に通されて導電性金属の薄膜からなるメッシュパターン上に無電解メッキされた後、少なくとも電解メッキ槽6に移送される。
【0064】
電解メッキ槽6では、陰極となる給電ロール7、7と陽極となる陽電極板8、8との間で電解メッキ液9を通して電解メッキが行われ、ロールシート3の導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンの上に、又はその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキ層が析出する。電解メッキ液9の温度は、所定温度となるように温度調整器(図示せず)にて制御される。給電ロール7、7は、電解メッキ槽6にロールシート3が出入するための出入口に設けられており、電解メッキ液9は、電解メッキ槽6の給電ロール7、7等の隙間から漏出して落下しうる。このため、電解メッキ槽6の下方には、漏出した電解メッキ液9を受ける受け槽10が設置されており、受け槽10に受け止められた電解メッキ液9が循環ポンプ11及びフィルター12を経て再び電解メッキ槽6に再循環するように構成されている。
【0065】
電解メッキ槽6を出たロールシート3は、水洗浄槽13で不要な電解メッキ液9を洗い落としてから乾燥器14にて水切り乾燥され、再び巻き取られて、メッキされたメッシュパターンの形成されたロール形状の電磁波シールド材ロール体15となる。
【0066】
なお、必要であれば水洗浄槽5と電解メッキ槽6との間に無電解メッキ槽(図示せず)を配置し、露光・現像により生成した現像銀メッシュパターンの上に無電解メッキをした後、さらに電解メッキ槽6に移送して電解メッキを行う構成でも良い。このようにメッキ工程において無電解メッキと電解メッキを併用することにより、より性能の高い電磁波シールド材を得ることができる。
【0067】
本発明では、電解メッキ槽6における電解メッキの際には、ロールシート3上において長手方向に連続して設けられた電解メッキ用給電層(以下、「連続給電層」という場合がある。)を通じ、現像銀メッシュパターンに対して給電を行う。
連続給電層は、ロールシート3が電解メッキ槽6に導入された箇所の前後において陰極となる給電ロール7、7に接触する。これにより、電解メッキの際には、図2の連続給電層23を通じて電解電流がメッシュパターン22に給電され、現像銀メッシュパターン及び/又はその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキによるメッキ層が形成される。
【0068】
本発明では、図4に示すように、露光・現像済みの原反ロール2からロールシート3を連続的に繰り出し、移送ロール4、4、…の連続送りにて電解メッキ槽6に移送し、連続して間断なく電解メッキを行うため、図2に示すロールシート20のように、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に設けられた金属メッシュパターン22が、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられ、透明基材21の長手方向に連続した一定幅の連続給電層23、23が金属メッシュパターン22の幅方向の両外側に接して設けられたものが用いられる。
【0069】
連続給電層23は、ロールシート3が電解メッキ槽6に導入された箇所の前後において陰極となる給電ロール7、7に接触する。これにより、電解メッキの際には、連続給電層23を通じて電解電流がメッシュパターン22に給電され、現像銀メッシュパターン及び/又はその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキによるメッキ層が形成される。
【0070】
図4における原反ロール2は、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に、現像銀メッシュパターンと、透明基材21の長手方向に連続して設けられた一定幅の金属メッシュ又は金属薄膜からなる連続給電層23を形成したものである。現像銀メッシュパターンを透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けるため、本発明では、連続露光装置により連続したメッシュパターンが焼付けされた後に現像する。
【0071】
図1において、電磁波シールド材ロール体30におけるメッシュパターン22は、原反の現像銀メッシュパターンの上に少なくとも電解メッキによりメッキ層が形成されたものである。連続給電層23の幅は、使用している給電ロール7の幅にも依るが、およそ15〜100mmであり、より好ましくは15〜80mmであり、さらに好ましくは20〜60mmである。
【0072】
(透明基材)
本発明に使用される透明基材21としては、可視領域で透明性を有し、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。透明基材21に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0073】
(細線メッシュパターン)
前述したように、細線パターンとしては、たとえば線幅10〜100μm程度の細線を縦横に格子状に設けられたものがあるが、細線幅を小さくして格子の間隔を大きくすると透光性は上がるが導電性は低下し、逆に細線幅を大きくして格子の間隔を小さくすると透光性は低下して導電性は高くなる。本発明にかかる透明基材上に形成された任意の細線パターンの物理現像による銀画像は、全光線透過率50%以上の透光性と表面抵抗率10オーム/□以下の導電性とを同時に満足させることは困難である。具体的にはこの物理現像による銀画像は、表面抵抗率50オーム/□以下、好ましくは20オーム/□以下の導電性を有しているが、細線幅50μm以下、たとえば細線幅20μmのパターンで、全光線透過率50%以上とした場合には、表面抵抗率は数百オーム/□〜千オーム/□以上にもなってしまう。しかしながら、この物理現像による銀画像自身は、現像処理後に得られた銀画像を形成する金属銀粒子が極めて小さく、且つ銀画像中に存在する親水性バインダー量が極めて少ないことにより、銀画像を形成する金属銀粒子が最密充填状態に近い状態で銀画像が形成されて通電性を有しているため、銅やニッケルなどの金属による鍍金(メッキ)、特に電解メッキを施すことにより、細線パターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜50μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、好ましくは60%以上の透光性の細線パターンであっても、表面抵抗率10オーム/□以下、好ましくは7オーム/□以下の導電性を保持することができる。
金属メッシュの全光線透過率を向上させるためには、細線が設けられた領域の面積に対して、細線間の光透過部の面積を十分に広くする必要がある。このため、細線の間隔は、100〜900μmであることが好ましく、より好ましくは150〜700μmである。
【0074】
金属メッキした細線パターンの厚みは所望とする特性により任意に変えることができるが、0.5〜15μm、好ましくは2〜12μmの範囲である。また上述の方法によって作製された電磁波シールド材は、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を得ることができる。
【0075】
細線パターンの物理現像銀のメッキは、無電解メッキ法、電解メッキ法あるいは両者を組み合わせたメッキ法のいずれでも可能であるが、透明基材上に電磁波シールド層を作製するにあたり、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を設けたロール状の長尺ウェブに、少なくとも細線パターンの露光、現像処理およびメッキ処理という一連の処理を施すことができる観点からも、電解メッキによる方法が好ましい。
【0076】
本発明において、金属メッキ法は公知の方法で行うことができるが、たとえば電解メッキ法は、銅、ニッケル、銀、金、半田、あるいは銅/ニッケルの多層あるいは複合系などの従来公知の方法を使用でき、これらについては、「表面処理技術総覧;(株)技術資料センター、1987年12月21日初版、281〜422頁」等の文献を参照することができる。
【0077】
メッキが容易で、かつ導電性に優れ、さらに厚膜にメッキでき、低コスト等の理由により、銅および/またはニッケルを用いることが好ましい。電解メッキの一例を挙げると、硫酸銅、硫酸等を主成分とする浴中に前述した物理現像銀が形成された透明基材を浸漬し、10〜40℃で、電流密度1〜20アンペア/dm2で通電することによりメッキすることができる。
使用する電解メッキ槽6の型式は、竪型、横型のいずれであっても構わないが、所定のメッキ滞留時間を確保できるようにロールシート3の移送速度に応じて電解メッキ槽の長さを決定する。
【0078】
上記方法によって得られる電磁波シールド層(金属メッシュパターン)は、メッシュパターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜50μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、かつ表面抵抗率が10オーム/□以下という優れた透光性能と導電性能を持ち、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を発揮することができる。
【0079】
(金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン)
金属の蒸着膜による導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製においても、上記の写真製法によるメッシュパターンの形成と同様な、透明基材、細線メッシュパターンが用いられる。
ここでは、重複した説明を避けるため、金属の蒸着膜による導電性金属の薄膜のメッシュパターンに特有の項目についてのみ、以下に説明する。
【0080】
本発明に用いられる蒸着の方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができるが、操作の簡便さから真空蒸着法が好適に使用される。
蒸着の膜厚みが0.01〜0.2μmである真空蒸着膜の上に、メッキ膜厚みが2〜20μmの電解メッキを処理する。
蒸着する金属の種類としては、銅または銀が好適に用いられる。
蒸着の膜厚みが0.2μmよりも厚い場合は、処理時間が大幅に長くなりコスト高となる。
【0081】
本発明では、透明基材の一方の面に蒸着膜を形成した後、公知のフォトリソグラフ法を用いてエッチング処理を行い、金属の蒸着膜によるメッシュパターンの原反を作製する。
すなわち、金属の蒸着膜層上にフォトレジストを塗布し、当該フォトレジスト上にマスクフィルムを密着させながら露光し、露光部分を現像液にて溶解除去して洗浄乾燥後、エッチング液を塗布してエッチング処理を行う。さらに、有機溶剤を用いて残存するフォトレジストを除去し、金属の蒸着膜による導電性金属の薄膜のメッシュパターンを作製する。
フォトレジストには、水溶性カゼインなどを用いることができる。エッチング液としては、塩化第二鉄、塩化第二銅などを用いることができる。
【0082】
金属の蒸着膜による導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製においても、上記の写真製法によるメッシュパターンの形成と同様な、透明基材、細線メッシュパターンが用いられ、薄膜のメッシュパターンの形成された原反ロールが作製され、さらに、電解メッキされた原反ロールが作製される。
【0083】
本発明において、電解メッキ法に用いるメッキ金属の種類は、銅、ニッケル、銀、金、半田、あるいは銅/ニッケルの多層あるいは複合系などの従来公知のものを使用できるが、メッキが容易で、かつ導電性に優れ、さらに厚膜にメッキでき、低コスト等の理由により、銅またはニッケルを用いることが好ましい。
銅またはニッケルの電解メッキの表面には、ニッケル系黒化処理液を用いて黒化処理を行い、メッキ表面の金属光沢を抑えて、ディスプレイの画像コントラストを高めることができる。
【0084】
(導電性ペーストインキ又は無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターン)
印刷による導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製においても、上記の写真製法によるメッシュパターンの形成と同様な、透明基材、細線メッシュパターンが用いられる。
ここでは、重複した説明を避けるため、印刷メッシュパターンに特有の項目についてのみ、以下に説明する。
本発明に適用できる、印刷による導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製は、例えば、輪転式凹版オフセット印刷によりおこなう。導電性ペーストインキを用いて印刷し、細線メッシュパターンを作製する。
なお、導電性ペーストインキの中に無電解メッキの触媒核を含有させてメッシュパターンを印刷する場合は、電解メッキ加工に先立って無電解メッキ加工を施し、その上に電解メッキを施すことにより、さらに導電性に優れた金属メッキされたメッシュパターンとなる。
【0085】
輪転式凹版オフセット印刷による場合、凹版胴に供給されたペーストインキをシリコンゴム製のブランケットに写し、ブランケットと圧胴の間に通された透明基材フィルムにペーストインキを転写させることにより、透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられた細線メッシュパターンが印刷される。
また、凹版の線幅、深さ、ピッチを所定の範囲で設定することにより、メッシュパターンの線幅、厚み、ピッチを調整し、電磁波シールド性、視認性、及び光透過性に優れたメッシュパターンを得ることができる。
【0086】
本発明に用いる導電性ペーストインキは、メッシュパターンを印刷し、硬化させた後に無電解メッキ及び/又は電解メッキ加工を施すことから、通常は金属粉末をバインダーとなる樹脂成分に混ぜ込んだ導電性ペーストが用いられる。導電性ペーストインキの中に無電解メッキの触媒核を含有させてメッシュパターンを印刷する場合は、電解メッキ加工に先立って、無電解メッキ加工を施すことにより、電解メッキ加工を容易に行なえるようになる。
前記の金属粉末としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉が用いられるが、導電性、価格の点から銅または銀の微粉末を用いるのが好ましい。
【0087】
印刷するメッシュパターンの細線幅は、視認性の観点から10〜40μm程度であるのが好ましいことから、金属粉末の粒子径は、0.01〜2μmが好ましい。
例えば、印刷された細線の線幅が10〜20μmと狭く、細線の厚みが2〜10μmと薄い条件においては、金属粉末の粒子径が2μmよりも大きいと、導電性を高めるのが困難となる。
印刷した薄膜のメッシュパターンの金属光沢を消して外光の反射を抑えディスプレイの画像コントラストを高めるために、カーボンブラックなどの黒色顔料を混ぜ込むのが好ましい。黒色顔料は、導電性ペーストインキ中に0.1〜10重量%で含有させるのが好ましい。
【0088】
導電性ペーストインキに用いられる樹脂成分としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化型であってもよい。
導電性ペーストインキは、これらの樹脂成分に金属粉末、及び黒色顔料、さらに必要に応じて触媒核、を混ぜ込んだ後にアルコールやエーテルなどの有機溶剤を加えて粘度調整を行なう。
【0089】
印刷による導電性金属の薄膜のメッシュパターンの作製においても、上記の写真製法によるメッシュパターンの形成と同様な、透明基材、細線メッシュパターンが用いられ、薄膜のメッシュパターンの形成された原反ロールが作製され、さらに、電解メッキされた原反ロールが作製される。
本発明において、電解メッキ法は、銅、ニッケル、銀、金、半田、あるいは銅/ニッケルの多層あるいは複合系などの従来公知の方法を使用できるが、メッキが容易で、かつ導電性に優れ、さらに厚膜にメッキでき、低コスト等の理由により、銅またはニッケルを用いることが好ましい。
【0090】
(電極枠の形成方法)
次に、金属メッシュパターンの上に、電極枠を積層する方法を説明する。
ディスプレイの画面サイズに応じた電極枠の形成方法は、メッキされたメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記メッキされたメッシュパターンの上に、ディスプレイの画面サイズに応じた電極枠を前記金属メッシュパターンの長手方向に一定の間隔を介して積層し、再び巻き取ってロール体とすることにより行なう。
電極枠の形成は、導電性ペーストを用いた印刷、または、導電性粘着シートの貼り付けのいずれかの方法により行なう。
【0091】
(導電性ペーストを用いた印刷による電極枠)
本発明は、図2に示す中間製品のロールシート20において、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられた金属メッシュパターン22の上に、導電性ペーストを用いて印刷する方法を用いて電極枠24を積層し、図1に示すロールシート30を得るものである。
【0092】
当該金属メッシュパターンは、導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンとその上に無電解メッキ及び/又は電解メッキしたメッキ層とを有する金属メッシュパターンである。また、当該導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンは、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、及び無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンからなる群の中から選択されたいずれか1つの方法で形成されている。
【0093】
本発明に用いる導電性ペーストは、電極枠として金属メッシュパターンの電極となるものであるから、通常は金属粉末をバインダーとなる樹脂成分に混ぜ込んだ導電性ペーストが用いられる。前記の金属粉末としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉が用いられるが、導電性、価格の点から銅または銀の微粉末を用いるのが好ましい。
【0094】
印刷した電極枠に含まれる金属粉末に起因する金属光沢を消して外光の反射を抑え、ディスプレイの画像コントラストを高めるために、導電性ペーストの中にカーボンブラックなどの黒色顔料を混ぜ込むのが好ましい。黒色顔料は、導電性ペーストの中に0.1〜10重量%で含有させるのが好ましい。
【0095】
印刷する電極枠の線幅は5〜20mm程度であり、金属メッシュパターンの細線幅に比べて幅広であることから、導電性ペーストに用いる金属粉末は、特別な超微粒子である必要性はなく、金属粉末の粒子径は0.1〜10μmであればよい。
印刷した電極枠の厚みは、特に制限されないが、1μm〜1mm程度である。
【0096】
導電性ペーストに用いられる樹脂成分としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化型であってもよい。
導電性ペーストは、これらの樹脂成分に金属粉末、及び黒色顔料を混ぜ込んだ後にアルコールやエーテルなどの有機溶剤を加えて粘度調整を行なう。
【0097】
導電性ペーストを塗布して電極枠を形成する方法は特に制限されないが、簡便さからスクリーン印刷にて印刷するのが好ましい。
【0098】
(導電性粘着シートの貼り付けによる電極枠)
本発明は、図2に示す中間製品のロールシート20において、透明基材21の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられた金属メッシュパターン22の上に、導電性粘着シートからなる電極枠24を貼り合せて積層し、図1に示すロールシート30を得るものである。
当該金属メッシュパターンは、導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンとその上に電解メッキしたメッキ層とを有する金属メッシュパターンである。
【0099】
また、当該導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンは、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかの方法で形成されている。
【0100】
本発明に使用する導電性粘着シートは、少なくとも導電性粒子を混ぜた導電性の粘着剤を剥離用の基材に塗布した導電性粘着シートであって、金属箔の一方の面に導電性粒子を混ぜた導電性の粘着剤を塗布して剥離用の基材を積層した導電性粘着シートとしてもよい。
剥離用の基材を剥がして金属メッシュパターンの上に貼り合せて積層し電極枠とするものである。
【0101】
すなわち、本発明では、電極枠として、導電性の粘着剤のみを用いてもよいし、導電性の粘着剤に金属箔を積層したものを用いてもよい。
なお、導電性粘着シートとして、導電性の粘着剤に金属箔を積層した場合には、必要な期間に渡って、金属メッシュパターンに接しないで電極枠の表面となる電極面を保護するため、糊残りを避けることができる粘着力の弱い粘着剤を用いて、保護フィルムを電極面に貼り合せて置くのが好ましい。
【0102】
上記の導電性粒子は、金属粒子、導電性メッキを施したプラスチック樹脂、導電性メッキを施したガラス粒子などを用いることができる。導電性粒子は、導電性、価格の点から、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉が用いられるが、特に、銅または銀の微粉末が好適に用いられる。
金属メッシュパターンの上に積層した導電性の粘着剤に混ぜた金属粉末に起因する金属光沢及び、積層した金属箔の金属光沢を消して外光の反射を抑え、ディスプレイの画像コントラストを高めるために、導電性の粘着剤の中にカーボンブラックなどの黒色顔料を混ぜ込むと共に、金属箔の表面を黒化処理することで、電極枠が得られる。
【0103】
上記の導電性粘着シートに用いられる粘着剤としては、特に限定されず、従来公知の粘着剤を用いることができるが、アクリル系の粘着剤が好適に用いられる。
【0104】
上記金属箔としては、導電性や価格の点から銅箔が好適に用いられる。金属箔の厚みは、3〜100μmである。3μmよりも薄い金属箔は、基材及び金属メッシュパターンに貼り合せるのが困難であって、取扱いが難しいからである。また、100μmよりも厚い金属箔は、腰が強くなり過ぎて柔軟性に欠けるからである。金属箔の厚みは、6〜50μmがより好ましい。
【0105】
導電性の粘着剤を基材に積層した導電性粘着シートの場合、導電性の粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、電極枠の外観を黒色としながら導電性を発揮させるためには、2〜100μm程度の厚みが好ましい。導電性粘着シートの厚みが2μmよりも薄いと、電極枠の外観を黒色にするために、黒色顔料の含有量を過剰に多くする必要あり、100μmよりも厚いと、均一な膜厚みに塗布するのが困難である。導電性の粘着剤層の厚みは、5〜50μmがより好ましい。
【0106】
(ディスプレイ用電磁波シールドフィルム)
本発明の電磁波シールド材ロール体をディスプレイ用電磁波シールドフィルムに適用する場合、金属メッシュパターン22の上には、ディスプレイの画面サイズに応じた電極枠24を積層する(図1を参照)。電磁波シールド材ロール体における電極枠の寸法、配置パターンは、ディスプレイの画面サイズとバイアス角度θの組み合わせに応じて変更する必要がある。ディスプレイの解像度に応じて、電極枠24に対する金属メッシュパターン22のバイアス角度θの最適値が決まるからである。ディスプレイの画面サイズは、代表的には42インチ、50インチ、60インチ、65インチなどがある。
また、ディスプレイの解像度の代表例を次に挙げる。
【0107】
・ VGA: 640× 480= 31万画素
・ XGA:1024× 768= 79万画素
・SXGA:1280×1024=131万画素
・ HD:1280×1080=138万画素
・フルHD:1920×1080=207万画素
【0108】
ディスプレイ用電磁波シールドフィルムにおいては、ディスプレイのブラックマトリックスパターンと電磁波シールドフィルムの金属メッシュパターンとの干渉により発生するモアレを最小にするため、電極枠24に対する金属メッシュパターン22のバイアス角度θを調節する(図7、8を参照)。このとき、ディスプレイの画面サイズとバイアス角度の組み合わせに応じた電磁波シールドフィルムの面取りの無駄を抑制するためには、以下のような思想に基づいて、透明基材21上に金属メッシュパターン22を設けるとき、透明基材21の長手方向に対するメッシュ格子の角度αを調節しておくことが好ましい。
【0109】
図7は、メッシュ格子が透明基材の幅方向と直行する場合の電極枠の配置の一例を示す。このとき、透明基材に対する電極枠24の傾斜角度によってバイアス角度θを持たせるため、電極枠24の配置に無駄なスペースが生じ、電極枠24の印刷間隔が長くなってしまう。これに対して図8は、メッシュ格子に透明基材の幅方向に対する一定の角度を持たせた場合を示しており、所定のバイアス角度θになるように、電極枠24の傾きで微調整すればよいようにしている。この場合は、電極枠24の透明基材の幅方向に対する傾斜角度が小さく、電極枠24の配置に無駄なスペースを少なくすることができる。
【0110】
電磁波シールド材ロール体からディスプレイ用電磁波シールドフィルムを切り出すには、図7、図8に切り取り線25を破線で示すように、電極枠24に沿ってフィルムを切断すればよい。ロールシートに設ける電極枠24の幅としては、切り取り線25の外側での幅Mが3〜5mm、切り取り線25の内側での幅Nが5〜50mm程度が好ましい。電極枠24の配置間隔としては、電極枠24の外縁部における隣り同士の間隔Gが0〜5mm、切り取り線25における隣り同士の間隔Hが5〜10mm程度が好ましい。切り取り代に余裕を持たせる場合は、電極枠24が隣り同士で接触しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、従来の製造方法では対応できない、複数種類のディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせに応じた電磁波シールド材ロール体を製造する場合において、ディスプレイ用の電磁波シールド材ロール体の製造工程の途中で、製造するディスプレイ画面サイズとバイアス角度の組み合わせごとの生産計画を変更しても柔軟に対応できると共に、金属メッシュパターンのメッキ品質が安定した電磁波シールド材ロール体を製造できるので、品質向上やコスト削減などに益するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明を用いて製造された、例えばPDP用の電磁波シールド材ロール体の平面図である。
【図2】本発明を用いて製造された電磁波シールド材ロール体の中間製品における、導電性薄膜の上にメッキされた連続メッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【図3】従来技術における、例えばPDP用の電磁波シールド材におけるメッシュパターン、電極枠、及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【図4】本発明で用いられる電解メッキ装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明で用いられる連続露光装置の一例を示す概略図である。
【図6】本発明で用いられる無電解メッキ装置の一例を示す概略図である。
【図7】メッシュ格子が透明基材の幅方向と直行する場合の電極枠の配置の一例を示す平面図である。
【図8】メッシュ格子が透明基材の幅方向に対して一定の角度で傾斜する場合の電極枠の配置の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0113】
1…電解メッキ装置、2…原反ロール、3…ロールシート、4…移送ロール、5…水洗浄槽、6…電解メッキ槽、7…給電ロール、8…陽電極板、9…電解メッキ液、10…受け槽、11…循環ポンプ、12…フィルター、13…水洗浄槽、14…乾燥器、15…電磁波シールド材ロール体の中間製品、16…無電解メッキ装置、17…無電解メッキ槽、18…無電解メッキ液、20…ロールシートの中間製品、21…透明基材、22…金属メッシュパターン、23…連続給電層、24…電極枠、30…本発明によるロールシートの完成品、50…従来技術のロールシートの中間製品、51…透明基材、52…金属メッシュパターン、53…給電層、54…電極枠、60…連続露光装置、61…円筒ドラム、62…露光マスク部分、63…露光用光源、64…透明基材、65…光源カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の透明基材の少なくとも一方の面に金属メッシュパターンが設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体であって、
前記金属メッシュパターンは、前記透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続して設けられるとともに、前記金属メッシュパターンの上には、前記金属メッシュパターンの長手方向に所定の間隔を介して配置された電極枠が、積層されていることを特徴とする電磁波シールド材ロール体。
【請求項2】
前記電極枠は、印刷された導電性ペースト、または、貼合された導電性粘着シートのいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項3】
前記金属メッシュパターンは、導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンとその上に無電解メッキ及び/又は電解メッキしたメッキ層とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項4】
前記金属メッシュパターンの幅方向両外側に接する一定幅の電解メッキ用給電層が、前記透明基材の長手方向に連続して設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項5】
前記導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンは、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項6】
前記導電性金属の薄膜からなるメッシュパターンは、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項7】
前記写真製法により生成された現像銀メッシュパターンは、露光した部分に現像銀が発現するネガ型の現像方法により生成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項8】
前記写真製法により生成された現像銀メッシュパターンは、露光しない部分に現像銀が発現するポジ型の現像方法により生成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の電磁波シールド材ロール体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体を用いたディスプレイ用電磁波シールドフィルムであって、
透明基材の少なくとも一方の面に金属メッシュパターンが設けられ、前記金属メッシュパターンの上には、印刷された導電性ペースト、または、貼合された導電性粘着シートのいずれかからなる、ディスプレイの画面サイズに応じた電極枠が、積層されていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールドフィルム。
【請求項10】
長尺の透明基材の少なくとも一方の面に金属メッシュパターンが設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体の製造方法であって、
前記透明基材の長手方向に繋ぎ目無く連続した導電性金属の薄膜のメッシュパターンが生成された原反ロールを製造する工程と、当該導電性金属の薄膜のメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記導電性金属の薄膜のメッシュパターンの上に無電解メッキ及び/又は電解メッキしたメッキ層を形成し、再び巻き取ってロール体とするメッキ工程と、当該メッキされたメッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記メッキされたメッシュパターンの上に、電極枠を前記金属メッシュパターンの長手方向に所定の間隔を介して積層し、再び巻き取ってロール体とする電極枠の形成工程と、を少なくとも有することを特徴とする電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項11】
前記導電性金属の薄膜のメッシュパターンは、写真製法により生成された現像銀メッシュパターン、金属の蒸着により生成された蒸着膜メッシュパターン、導電性ペーストインキを印刷して生成された印刷メッシュパターン、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して生成された印刷メッシュパターンの中から選択されたいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項12】
前記電極枠の形成工程は、導電性ペーストを用いた印刷、または、導電性粘着シートの貼り付けのいずれかの工程からなることを特徴とする請求項10または11に記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−147507(P2008−147507A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334547(P2006−334547)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】