説明

電磁波シールド膜及びその製造方法

【課題】 高い電磁波遮蔽性を有する電磁波シールド膜であって、細線状画像の形成が容易であり、しかも迅速に簡便な工程で製造でき、環境影響にも配慮した方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、銀イオン還元剤及びバインダーを含有する感光性層を有する銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料を、露光、熱現像することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部に沿って導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする電磁波シールド膜の製造方法及び電磁波シールド膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)又はフィールドエミッションディスプレイ(FED)の前面に使用する可視光透過性を有する電磁波シールド膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の使用増大のために電磁波障害(EMI)を低減する必要性が高まっている。EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、人体に対しても害を与えることが指摘されている。このため、電子機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
特に、プラズマ表示パネル(PDP)は、希ガスをプラズマ状態にして紫外線を放射させこの光線で蛍光体を発光させる原理に基づき、フィールドエミッションディスプレイ(FED)は平面状の電子放出源(エミッター)から真空中に電子を放ち、蛍光体にぶつけて発光させる原理に基づくために原理的に電磁波を発生する。又、このとき近赤外線も放射されるので、リモコン等の操作素子の誤動作を引き起こすので電磁波遮蔽能と同時に近赤外線の遮蔽も求められている。電磁波遮蔽能は、簡便には表面抵抗値で表すことができ、PDP用の透光性電磁波遮蔽材料では、10Ω/□以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、2Ω/□以下とする必要性が高く、より望ましくは0.2Ω/□以下という極めて高い導電性が要求されている。
【0004】
また、近赤外線放出の遮蔽に関する要求レベルは、60%以上、好ましくは80%以上が要求されており、更により高い遮蔽性が望まれている。
【0005】
更にPDPの機能を向上させるため、赤外線吸収の他に薄膜ガラス製のPDP本体に対する機械的強度の付与、外光の反射防止、色調補正が求められている。
【0006】
このために機械的強度を付与する目的で複数の透明基板を合わせたり、電磁波遮蔽目的で導電性層、赤外線遮蔽のために赤外線吸収層、外光の反射防止のために反射防止層、色調補正目的で、可視光領域に吸収のある色素を含有した層が組合わされ使用される。
【0007】
上記の問題のうち、特に電磁波防止と赤外吸収の課題を解決するために、開口部を有する金属メッシュを利用した電磁波遮蔽性と赤外吸収染料を使用した遮蔽性とを両立させる方法がこれまで提案されている。例えば、開口率の高い金属メッシュを焼き付けた硝子板に赤外線吸収フィルムを貼付して作製するという方法は、金属メッシュの焼き付けの製造工程が煩雑かつ複雑で、生産に熟練度が要求され又工程時間が長くかかるという間題点があった。
【0008】
一方、ハロゲン化銀粒子から得られる現像銀は金属銀であることから、製法次第では金銀のメッシュを作製することが可能である。例えば、ハロゲン化銀粒子を含む層を有する感光材料をメッシュ状の画像様に露光して現像処理すれば、銀粒子がメッシュ状に集合した導電性金属銀部が形成される。銀粒子間はバインダーが詰まっているので導電性を阻害するので、バインダーを少なくする必要があるが、それのみでは導電性が向上しない。そのために、メッキ処理をして導電性を向上させる方法が記載されて(例えば、特許文献1、2参照。)いる。しかし、上記方法では現像、定着工程において廃液が出てしまうため、処理廃液の出ない、環境影響に配慮した方式の提案が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2004−221565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高い電磁波遮蔽性を有する電磁波シールド膜であって、細線状画像の形成が容易であり、しかも迅速に簡便な工程で製造でき、環境影響にも配慮した方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
(1)支持体上に、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、銀イオン還元剤及びバインダーを含有する感光性層を有する銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料を、露光、熱現像することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部に沿って導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする電磁波シールド膜の製造方法。
【0012】
(2)前記金属銀部に沿って導電性金属粒子を担持させた導電性金属部の形成がメッキ処理によることを特徴とする(1)に記載の電磁波シールド膜の製造方法。
【0013】
(3)前記銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料が、塗布液の総質量の40〜99質量%が水からなる塗布液を塗布して製造された銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電磁波シールド膜の製造方法。
【0014】
(4)熱現像後に定着する工程を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電磁波シールド膜の製造方法。
【0015】
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の電磁波シールド膜の製造方法により製造されたことを特徴とする電磁波シールド膜。
【0016】
(6)プラズマディスプレイパネル又はフィールドエミッションディスプレイの電磁波シールド膜として用いることを特徴とする(5)に記載の電磁波シールド膜。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、高い電磁波遮蔽性を有する電磁波シールド膜であって、細線状画像の形成が容易であり、しかも迅速に簡便な工程で製造でき、環境影響にも配慮した方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を更に詳しく説明する。まず、本発明の銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料(光熱写真ドライイメージング材料、光熱写真感光材料、熱現像感光材料、単に熱現像材料又は感光材料ともいう。)について説明する。
【0019】
(非感光性脂肪族カルボン酸銀塩)
本発明に係る非感光性脂肪族カルボン酸銀塩(単に、脂肪族カルボン酸銀塩、非感光性有機銀塩又は有機銀塩ともいう)とは、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光性層において、銀画像を形成するための銀イオンを供給する供給源として機能し得る非感光性の有機銀塩である。
【0020】
すなわち、本発明に係る有機銀塩は、露光によって形成された潜像を粒子表面上に有する感光性ハロゲン化銀粒子(光触媒)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された熱現像過程において、銀イオン供給源として機能して銀イオンを供給し銀画像形成に寄与することができる銀塩である。
【0021】
このような非感光性有機銀塩については、従来、種々の化学構造を有する有機化合物の銀塩が知られており、例えば、特開平10−62899号公報の段落「0048」〜「0049」、欧州特許出願公開第803,764A1号明細書の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許出願公開第962,812A1号明細書、特開平11−349591号公報、特開2000−7683号公報、同2000−72711号公報、同2002−23301号公報、同2002−23303号公報、同2002−49119号公報、196446号公報、欧州特許出願公開第1246001A1号明細書、欧州特許出願公開第1258775A1号明細書、特開2003−140290号公報、特開2003−195445号公報、同2003−295378号公報、同2003−295379号公報、同2003−295380号公報、同2003−295381号公報、特開2003−270755号公報等に記載されている。
【0022】
本発明においては、上記の特許公報等に開示されている各種有機銀塩と併用して、又は、併用せずに、脂肪族カルボン酸の銀塩、特に、炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩を用いることができる。銀塩を生成するための脂肪族カルボン酸の分子量は好ましくは200〜500であり、より好ましくは250〜400である。脂肪族カルボン酸銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、およびこれらの混合物などを含む。
【0023】
本発明においては、これら脂肪族カルボン酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上99.9モル%以下、更に好ましくは90モル%以上99.9モル%以下のベヘン酸銀を用いることが好ましい。
【0024】
なお、脂肪族カルボン酸銀塩を調製するに先だって、脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩を調製することが必要であるが、その際に、使用できるアルカリ金属塩の種類の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。これらのうちの1種類のアルカリ金属塩、例えば、水酸化カリウムを用いることが好ましいが、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを併用することも好ましい。併用比率としては前記の水酸化塩の両者のモル比が10:90〜75:25の範囲であることが好ましい。脂肪族カルボン酸と反応して脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩となったときに上記の範囲で使用することで、反応液の粘度を良好な状態に制御できる。
【0025】
また、平均粒径が0.050μm以下のハロゲン化銀粒子の存在下で脂肪族カルボン酸銀を調製する場合には、特に、アルカリ金属塩のアルカリ金属はカリウムの比率が高い方が、ハロゲン化銀粒子の溶解及びオストワルド熟成が防止されるので好ましい。また、カリウム塩の比率が高いほど、脂肪酸銀塩粒子のサイズを小さくすることができる。好ましいカリウム塩の比率は、脂肪族カルボン酸銀を製造する工程において使用する全アルカリ金属塩に対して50〜100%である。アルカリ金属塩の濃度は、0.1〜0.3モル/1000mlが好ましい。
【0026】
非感光性脂肪族カルボン酸銀塩の平均球相当直径は、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩の1粒子の体積と同じ体積の球の直径を意味し、塗布後の試料を透過型電子顕微鏡により観察した粒子の投影面積と厚みから粒子体積を求め、その体積と同体積の球に換算した時の直径を平均することにより求めることができる。非感光性脂肪族カルボン酸銀塩の平均球相当直径を制御するためには上記したように脂肪族カルボン酸銀塩の調製時にカリウム塩の比率を高くして調製することや、感光性乳剤分散液の分散時に用いるジルコニアビーズの粒径、ミル周速、分散時間を適宜調整することで容易に行うことができる。本発明においては非感光性脂肪族カルボン酸銀塩の平均球相当直径は、熱現像後に十分な濃度を得るためには、0.05〜0.50μmであることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.45μm、特に好ましくは0.15〜0.40μmである。
【0027】
本発明で使用される非感光性脂肪族カルボン酸銀塩に加えて必要により使用してもよい有機銀としては、コア・シェル構造の有機銀塩(特開2002−23303号公報)、多価カルボン酸の銀塩(EP1246001号公報、特開2004−061948号公報)、ポリマー銀塩(特開2000−292881号公報、特開2003−295378〜2003−295381号公報)を用いることもできる。
【0028】
本発明に用いることができる脂肪族カルボン酸銀塩の形状としては、特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。本発明においては、りん片状の脂肪族カルボン酸銀塩及び長軸と短軸の長さの比が5以下の短針状又は直方体状の脂肪族カルボン酸銀塩が好ましく用いられる。
【0029】
本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
【0030】
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは20≧x(平均)≧2.0である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0031】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上、0.23μmが好ましく、0.1μm以上、0.20μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上、6以下、より好ましくは1.05以上、4以下、更に好ましくは1.1以上、3以下、特に好ましくは1.1以上、2以下である。
【0032】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては、例えば、液中に分散した有機銀塩にレーザ光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒径(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0033】
本発明に用いられる有機銀塩の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば、上記の特開平10−62899号公報、欧州特許出願公開第803,763A1号明細書、欧州特許出願公開第962,812A1号明細書、特開2001−167022号公報、同2000−7683号公報、同2000−72711号公報、同2001−163889号公報、同2001−163890号公報、同2001−163827号公報、同2001−33907号公報、同2001−188313号公報、同2001−83652号公報、同2002−6442号公報、同2002−31870号公報、同2003−280135号公報等を参考にすることができる。
【0034】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性ハロゲン化銀粒子のような感光性銀塩を共存させることができる。しかし、有機銀塩の分散時に、ハロゲン化銀粒子を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時にはハロゲン化銀粒子を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中でのハロゲン化銀粒子量は、その液中の有機銀塩1モルに対し1モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%以下であり、更に好ましいのは積極的なハロゲン化銀粒子の添加を行わないものである。
【0035】
本発明において有機銀塩水分散液と感光性ハロゲン化銀粒子分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性ハロゲン化銀粒子の割合は1〜30モル%の範囲が好ましく、更に2〜20モル%、特に3〜15モル%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩分散液と2種以上のハロゲン化銀粒子分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0036】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、より好ましくは0.3〜3g/m2、更に好ましくは0.5〜2g/m2である。
【0037】
(感光性ハロゲン化銀粒子)
次いで、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子(以下、単にハロゲン化銀粒子ともいう)について説明する。
【0038】
なお、本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収することができ、又は人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収することができ、かつ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内のいずれかの領域の光を吸収したときに、ハロゲン化銀結晶内又は結晶表面において、物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0039】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、又可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、いわゆるコントロールドダブルジェット法が好ましい。
【0040】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよいが、臭化銀、沃臭化銀又は沃化銀であることが特に好ましい。
【0041】
沃臭化銀の場合は、沃素含有量は0.02〜16mol%/銀molの範囲であることが好ましい。沃素はハロゲン化銀粒子全体に分布するように含有させても、あるいはハロゲン化銀粒子の特定個所、例えば、粒子の中心部の沃素の濃度を高くし、表面近傍における濃度を低く、又は実質上ゼロとなるようなコア/シェル型構造としてもよい。
【0042】
粒子形成は、通常、ハロゲン化銀種粒子(核粒子)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、あるいは核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件としては、pAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールができる点で好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法の場合には、先ず、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させて核生成(核生成工程)を行った後、コントロールされたpAg、pH等のもとで、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ、粒子成長させる粒子成長工程によりハロゲン化銀粒子を調製する。
【0043】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁や色調(黄色味)を低く抑えるため、及び良好な画質を得るためにハロゲン化銀粒子の粒径が小さい方が好ましく、平均粒径が0.02μm未満の粒子を計測対象外としたときの値として、0.030μm以上、0.055μm以下が好ましい。
【0044】
なお、ここでいう粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0045】
本発明において、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる粒径の変動係数が30%以下をいう。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0046】
粒径の変動係数=粒径の標準偏差/粒径の平均値×100(%)
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらのなかで、特に、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0047】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以上、100以下、より好ましくは2以上、50以下がよい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0048】
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については、特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。逆に、ミラー指数〔111〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔111〕面の占める割合を高めることが好ましい。なお、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
【0049】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に平均分子量が5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特に、ハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更には5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。
【0050】
核形成時の分散媒の濃度は、5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより有効である。
【0051】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に下記の一般式で示されるポリエチレンオキシド化合物を用いることができる。
【0052】
一般式
YO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)p(CH2CH2O)n
式中、Yは水素原子、−SO3M、または−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基にて置換されたアンモニウム基を表し、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは各々0〜50を表し、pは1〜100を表す。
【0053】
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、感光材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、ハロゲン化銀乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられてきたものであり、消泡剤として用いる技術は、例えば、特開昭44−9497号に記載されており、上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物も、核形成時の消泡剤としても機能する。
【0054】
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%で用いる。
【0055】
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくはハライド水溶液若しくは両方の水溶液に0.01〜2.0質量%で添加して用いることである。又、核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、粉末で添加しても、メタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
【0056】
なお、核形成時の温度は5〜60℃、好ましくは15〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を挙げ、核形成終了時の温度が40℃の様な場合)やその逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
【0057】
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は3.5モル/L以下が好ましく、更には0.01〜2.5モル/Lの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1L当たり1.5×10-3〜3.0×10-1モル/分が好ましく、更に好ましくは3.0×10-3〜8.0×10-2モル/分である。
【0058】
核形成時のpHは1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げるため、好ましくはpH2〜6である。又、核形成時のpBrは0.05〜3.0程度、好ましくは1.0〜2.5、更には1.5〜2.0がより好ましい。
【0059】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子においては、少なくとも熱現像後の露光時において、電子トラップ性ドーパントとして機能するドーパントをハロゲン化銀粒子の内部に含有させることが、感度及び画像保存性上好ましい。
【0060】
なお、熱現像前の画像形成のための露光の際には、正孔(ホール)トラップとして機能し、熱現像過程において変質し、熱現像後においては電子トラップとして機能することができるドーパントが、特に好ましい。
【0061】
ここで用いられる電子トラップ性ドーパントとは、ハロゲン化銀粒子を構成する銀及びハロゲン以外の元素又は化合物であって、当該ドーパント自身が自由電子をトラップ(捕獲)できる性質を有する又は当該ドーパントがハロゲン化銀粒子内に含有されることで電子トラップ性の格子欠陥等の部位が生じるものをいう。例えば、銀以外の金属イオン又はその塩若しくは錯体、硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲン(酸素族元素)又は窒素原子を含む無機化合物又は有機化合物若しくはそれらの金属錯体、希土類イオン又はその錯体等が挙げられる。
【0062】
金属イオン又はその塩若しくは錯体としては、鉛イオン、ビスマスイオン、金イオン等又は臭化鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、硫酸鉛、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、三塩化ビスマス、炭酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、塩化金酸、酢酸鉛、ステアリン酸鉛、酢酸ビスマス等を挙げることができる。
【0063】
硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲンを含む化合物としては、写真業界において、一般にカルコゲン増感剤として知られているカルコゲン放出性の種々の化合物を使用することができる。また、カルコゲン又は窒素を含有する有機物としては、ヘテロ環式化合物が好ましい。例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンである。
【0064】
なお、上記のヘテロ環式化合物は置換基を有していても良く、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基である。
【0065】
なお、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、上記のドーパントのように電子トラップ性ドーパントとして機能するように、或いはホールトラップ性ドーパントとして機能するように元素周期律表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させても良い。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが好ましい。
【0066】
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種或いは異種の化合物若しくは錯体を2種以上併用してもよい。ただし、少なくとも1種は、熱現後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
【0067】
なお、本発明においては、Ir、又はCuの錯体ないし塩のいずれか1種を単独で用いてドーピングする態様はあまり好ましくはない。
【0068】
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10-9〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-1モルの範囲がより好ましい。さらに、1×10-6〜1×10-2モルが好ましい。
【0069】
但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
【0070】
本発明においては、遷移金属錯体又は錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0071】
一般式〔ML6m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−又は4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0072】
これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に、核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回にわたって分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0073】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0074】
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することができる。
【0075】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、上記のドーパントが電子トラップ性を有するか否かについては、次のように、写真業界において従来一般的に用いられている方法で評価することができる。即ち、上記のドーパント又はその分解物がハロゲン化銀粒子内にドープされたハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤を、マイクロ波光伝導測定法等による光伝導測定によりドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を基準として光伝導の減少度を測定することにより評価できる。又は、当該ハロゲン化銀粒子の内部感度と表面感度の比較実験によってもできる。
【0076】
又は、光熱写真ドライイメージング材料とした後に本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、当該イメージング材料を露光前に通常の実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば30秒間)、白色光又は特定の分光増感領域の光(特定の波長域のレーザー光に対して分光増感を施した場合は、当該波長領域の光、例えば、赤外光に対して分光増感を施した場合には、赤外光)を光学楔を通して露光し、さらに同一の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線(センシトメトリーカーブ)に基づき得られる感度を当該電子トラップ性ドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を使用したイメージング材料の感度と比較することにより評価できる。即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の感度に比較して低くなっていることの確認が必要である。
【0077】
なお、当該材料に、一定時間(例えば30秒間)、白色光又は特定の分光増感領域の光(例えば、赤外光)を光学楔を通して、又は、レーザー光の感光材料面照度を段階的に変化させて、露光をした後に、通常の熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる当該試料の感度に対して露光前に通常の熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に上記と同一の一定時間、及び、一定の露光を施し、さらに通常の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/10以下、好ましくは、1/20以下、更にハロゲン化銀乳剤に化学増感を施した場合は、1/50以下の低感度であることが好ましい。更に、好ましくは実質的に感度が無い(ゼロ)状態になることである。
【0078】
本発明のハロゲン化銀粒子は、いかなる方法で感光性層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのが、高感度かつ高カバリングパワー(CP)のイメージング材料を得るためには、好ましい。
【0079】
本発明のハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製するための溶液に添加することが、ハロゲン化銀粒子調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱え、製造コントロール上も最も好ましいが、英国特許第第1,447,454号に記載されている様に、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際に、ハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで、脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させたハロゲン化銀粒子を併用することもできる。又、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製し、当該粒子を併用することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、又は脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
【0080】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例は、米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号及び特開昭53−27027号、同53−25420号等に開示されている。
【0081】
上述のように別途調製したハロゲン化銀粒子に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
【0082】
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モルで使用するのが好ましい。
【0083】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、脱塩工程により不要な塩類等を、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0084】
(化学増感)
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子には、化学増感を施すことができる。例えば、特開2001−249428号及び特開2001−249426号に記載されている方法等により、硫黄、セレン、テルル等のカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、感光性ハロゲン化銀粒子又は当該粒子上の分光増感色素の光励起によって生じた電子又は正孔(ホール)を捕獲することができる化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。特に、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。
【0085】
これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0086】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号、同11−218875号、同11−218876号、同11−194447号等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうち、カルコゲン原子が炭素原子又はリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。特に、複素環基を有するチオ尿素誘導体及びトリフェニルホスフィンサルファイド誘導体等が好ましい。
【0087】
化学増感を施す方法としては、従来の湿式処理用のハロゲン化銀感光材料の製造の際に慣用されている種々の化学増感技術に準じた技術が使用できる(参考文献:(1) T.H.James編”The Theory of the Photographic Process”第4版、Macmillan Publishing Co.,Ltd.1977、(2) 日本写真学会編”写真工学の基礎(銀塩写真編),コロナ社,1979)。特に、ハロゲン化銀粒子乳剤に予め化学増感を施し、その後に非感光性有機銀塩粒子と混合する場合には、従来の慣用方法により化学増感を施すことができる。
【0088】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり、10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルを用いる。
【0089】
化学増感を施す際の環境条件としては、特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀又は銀核を消滅或いはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、又特に銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましい場合がある。この場合の増感条件は、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、又温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0090】
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して、吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。含窒素複素環化合物において、複素環としては、例えば、ピラゾール環、ピリミジン環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,2,3,4−テトラゾール環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール環、ジアザインデン環、トリアザインデン環、ペンタアザインデン環などを挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えば、フタラジン環、ベンズイミダゾール環、インダゾール環、ベンズチアゾール環なども適用できる。
【0091】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、かつ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えば、ヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
【0092】
複素環にはヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などを有してもよい。
【0093】
これら含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、おおよその量はハロゲン化銀1モル当たりの量で10-6〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4〜10-1モルの範囲である。
【0094】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。なお、特開平11−194447号に開示されている金増感技術が参考となる。
【0095】
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物として、例えば、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0096】
本発明において、化学増感を施されるハロゲン化銀粒子は、脂肪族カルボン酸銀塩の存在下で形成されたのでも、当該有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
【0097】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子の表面に化学増感を施した場合においては、熱現像過程経過後に該化学増感の効果が実質的に消失することが必要である。ここで、化学増感の効果が実質的に消失するとは、前記の化学増感技術によって得た当該イメージング材料の感度が熱現像過程経過後に化学増感を施していない場合の感度の1.1倍以下に減少することを言う。なお、化学増感効果を熱現像過程において消失させるためには、熱現像時に、化学増感中心(化学増感核)を酸化反応によって破壊できる酸化剤、例えば、前記のハロゲンラジカル放出性化合物等の適当量を当該イメージング材料の乳剤層又は/及び非感光性層に含有含有させておくことが必要である。当該酸化剤の含有量については、酸化剤の酸化力、化学増感効果の減少幅等を考慮して調整することが好ましい。
【0098】
(分光増感)
本発明における感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0099】
本発明に使用される有用な増感色素は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643IV−A項(1978年12月p.23)、RD18431X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0100】
有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0101】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば米国特許第4,536,473号、同第4,515,888号、同第4,959,294号等に開示されている赤外分光増感色素が挙げられる。
【0102】
本発明の熱現像方法において用いられる銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、米国公開特許公報20040224266号明細書に記載されている一般式(1)で表される増感色素及び一般式(2)で表される増感色素のうちから少なくとも1種を選び含有することが好ましく、一般式(5)で表される増感色素及び一般式(6)で表される増感色素のうちから少なくとも1種を選び含有することがより好ましい。一般式(5)で表される増感色素及び一般式(6)で表される増感色素を併用することが露光時の露光波長依存性を改良するうえで特に好ましい。
【0103】
上記の赤外増感色素は、例えば、エフ・エム・ハーマー著、The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻、The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊、New York 1964年)に記載の方法によって容易に合成することができる。
【0104】
これらの赤外増感色素の添加時期は、ハロゲン化銀調製後の任意の時期でよく、例えば、溶剤に添加して、或いは微粒子状に分散した、いわゆる固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/脂肪族カルボン酸銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。又、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0105】
本発明において、上記の分光増感色素は1種類を単独に用いてもよいが、上述のように、分光増感色素の複数の種類の組合せを用いることが好ましく、そのような増感色素の組合せは、特に強色増感及び感光波長領域の拡大や調整等の目的でしばしば用いられる。
【0106】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、脂肪族カルボン酸銀塩を含有する乳剤は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
【0107】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質は、RD17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、強色増感剤としては、下記で表される複素芳香族メルカプト化合物が又はメルカプト誘導体化合物が好ましい。
【0108】
Ar−SM
〔式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。〕
好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンズチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンズセレナゾール、ベンズテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0109】
なお、脂肪族カルボン酸銀塩又はハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させたときに実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も含まれる。特に下記で表されるメルカプト誘導体化合物が、好ましい例として挙げられる。
【0110】
Ar−S−S−Ar
〔式中のArは上記で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。〕
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有しうる。
【0111】
上記の強色増感剤の他に、特開2001−330918号公報に開示されているヘテロ原子を有する大環状化合物も強色増感剤として使用できる。
【0112】
本発明に係る強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む感光性層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルで用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの量が好ましい。
【0113】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子の表面に分光増感色素を吸着せしめ分光増感が施されており、かつ熱現像過程経過後に該分光増感効果が実質的に消失することが必要である。ここで、分光増感効果が実質的に消失するとは、増感色素、強色増感剤等によって得た当該イメージング材料の感度が熱現像過程経過後に分光増感を施していない場合の感度の1.1倍以下に減少することを言う。
【0114】
なお、分光増感効果を熱現像過程において消失させるためには、熱現像時に、熱によってハロゲン化銀粒子より脱離しやすい分光増感色素を使用する又は/および分光増感色素を酸化反応によって破壊できる酸化剤、例えば、前記のハロゲンラジカル放出性化合物等の適当量を当該イメージング材料の乳剤層又は/及び非感光性層に含有含有させておくことが必要である。当該酸化剤の含有量については、酸化剤の酸化力、分光増感効果の減少幅等を考慮して調整することが好ましい。
【0115】
(還元剤)
本発明に係る還元剤は感光性層中で、銀イオンを還元し得るものであり、現像剤ともいう。還元剤としては、下記一般式(RD1)で表される化合物が挙げられる。
【0116】
【化1】

【0117】
式中、X1はカルコゲン原子又はCHR1を表し、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。R2は少なくとも一方が2級または3級のアルキル基を表し、同一でも異なってもよい。R3は炭素数1〜20の置換されてもよいアルキル基を表す。R4はベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々0〜2の整数を表す。
【0118】
本発明においては、銀イオンの還元剤として、特に、還元剤の少なくとも1種が一般式(RD1)で表される化合物を単独又は他の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いることが好ましい。
【0119】
一般式(RD1)で表される化合物のうちでもR3が炭素数2〜20の置換されてもよいアルキル基である化合物を用いることが、迅速処理を行った場合の色調や濃度むらに優れる点で好ましい。
【0120】
また一般式(RD1)で表される化合物のうちでも特にR3の少なくとも1つの基がヒドロキシル基を置換基として有するアルキル基、または脱保護されることによりヒドロキシル基を形成しうる基を置換基として有するアルキル基である化合物(以降は(RD1a)の化合物と呼ぶ)を用いることが、高濃度で、光照射画像保存性に優れた銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料を得ることができる点でより好ましい。本発明においては、熱現像特性を制御するために(RD1a)の化合物と下記一般式(RD2)の化合物とを併用することもできる。
【0121】
【化2】

【0122】
式中、X2はカルコゲン原子又はCHR5を表し、R5は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。R6はアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、2級又は3級のアルキル基であることはない。R7は水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。R8はベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々0〜2の整数を表す。
【0123】
その併用比率としては、[(RD1a)の化合物の質量]:[一般式(RD2)の化合物の質量]が5:95〜45:55であることが好ましく、より好ましくは10:90〜40:60である。
【0124】
一般式(RD1)中、X1はカルコゲン原子又はCHR1を表す。カルコゲン原子としては、硫黄、セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。CHR1におけるR1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等であり、アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル等、アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等、アリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環等、複素環基としてはチオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール等の各基である。
【0125】
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基として具体的には、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(エチニル、1−プロピニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスホノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。特に好ましい置換基はアルキル基である。
【0126】
2はアルキル基を表し、少なくとも一方は2級又は3級のアルキル基である。アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、t−オクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−メチルシクロプロピル等の基が挙げられる。
【0127】
アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。又、(R4n及び(R4mと飽和環を形成してもよい。R2は好ましくは何れも2級又は3級のアルキル基であり、炭素数2〜20が好ましい。より好ましくは3級アルキル基であり、更に好ましくはt−ブチル、t−アミル、t−ペンチル、1−メチルシクロヘキシルであり、最も好ましくはt−ブチルである。
【0128】
3は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、R3は炭素数2〜15のアルキル基であることが好ましい。R3として好ましくは、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては前記R1で挙げた置換基を用いることができる。
【0129】
3は好ましくはヒドロキシル基又は脱保護されることによりヒドロキシル基を形成しうる基(以下プレカーサー基ともいう)を有する炭素数1〜20のアルキル基であるが、好ましくはヒドロキシル基又はプレカーサー基を有する炭素数2〜15のアルキル基である。アルキル基の炭素数は2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。脱保護されて水酸基を形成しうる基として好ましくは酸および/または熱の作用により脱保護して水酸基を形成する基が挙げられる。
【0130】
具体的には、エーテル基(メトキシ基、tert−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、トリフェニルメトキシ基、トリメチルシリルオキシ基等)、ヘミアセタール基(テトラヒドロピラニルオキシ基等)、エステル基(アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−ニトロベンゾイルオキシ基、ホルミルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等)、カルボナート基(エトキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニルオキシ基等)、スルホナート基(p−トルエンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基等)、カルバモイルオキシ基(フェニルカルバモイルオキシ基等)、チオカルボニルオキシ基(ベンジルチオカルボニルオキシ基等)、硝酸エステル基、スルフェナート基(2,4−ジニトロベンゼンスルフェニルオキシ基等)が挙げられる。
【0131】
3は最も好ましくはヒドロキシル基又はそのプレカーサー基を有する炭素数2〜5の第1級アルキル基であり、例えば2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピルである。R2及びR3の最も好ましい組合せは、R2が第3級アルキル基(t−ブチル、t−アミル基、t−ペンチル、1−メチルシクロヘキシル等)であり、R3がヒドロキシル基又はそのプレカーサー基を有する炭素数1〜20の第1級アルキル基(2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル等)である。複数のR2、R3は同じでも異なっていてもよい。一般式(RD1a)で表される化合物の具体例としては、米国特許6,800,431号明細書のカラム6〜16に記載の化合物R−1〜R−20、R−58〜R−59があげられる。
【0132】
4は水素原子又はベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル、パーフルオロオクチル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロペンチル等)、アルキニル基(プロパルギル等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル等)、複素環基(ピリジル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、フリル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、セレナゾリル、スリホラニル、ピペリジニル、ピラゾリル、テトラゾリル等)、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、フッ素)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド等)、スルファモイル基(アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等)、ウレタン基(メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、フェニルウレイド、2−ピリジルウレイド等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、ピリジノイル等)、カルバモイル基(アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル)、アミド基(アセトアミド、プロピオンアミド、ブタンアミド、ヘキサンアミド、ベンズアミド等)、スルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、フェニルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、アミノ基(アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、アニリノ、2−ピリジルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。又、これらの基は更にこれらの基で置換されてもよい。n及びmは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはn、m共に0の場合である。
【0133】
又、R4はR2、R3と飽和環を形成してもよい。R4は好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。複数のR4は同じでも異なっていても良い。
【0134】
一般式(RD2)中、R5はR1と同様の基であり、R7はR3と同様の基であり、R8はR4と同様の基である。R6はアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、2級又は3級のアルキル基であることはない。アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等の基が挙げられる。
【0135】
アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0136】
又、R6は(R8n及び(R8mと飽和環を形成してもよい。R6は、好ましくはメチルである。一般式(RD2)で表される化合物のうちでも好ましく用いられる化合物は欧州特許第1,278,101号明細書に記載の一般式(S)、一般式(T)を満足する化合物であり、具体的にはp21〜p28に記載の(1−24)、(1−28)〜(1−54)、(1−56)〜(1−75)の化合物があげられる。
【0137】
これら一般式(RD1)、一般式(RD2)で表されるビスフェノール化合物は、従来公知の方法により容易に合成することができる。
【0138】
本発明において、併用することができる還元剤としては、例えば、米国特許3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号の各明細書、RD17029号及び29963号、特開平11−119372号、特開2002−62616号の各公報等に記載されている還元剤が挙げられる。
【0139】
前記一般式(RD1)で表される化合物を初めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10-2〜10モル、特に好ましくは1×10-2〜1.5モルである。
【0140】
(バインダー)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、本発明に係る感光性層及び非感光性層に種々の目的でバインダーを含有させることができる。
【0141】
本発明に係る感光性層に含まれるバインダーは、有機銀塩、ハロゲン化銀粒子、還元剤、その他の成分を担持しうるものであり、好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマーや合成ポリマー、及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、特開2001−330918号の段落「0069」に記載のものが挙げられる。
【0142】
これらの内、当該感光性層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましくはポリビニルブチラールである。これらについては詳しく後述する。
【0143】
又、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0144】
バインダーには−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、−N(R)2、−N+(R)3(Mは水素原子、又はアルカリ金属塩基、Rは炭化水素基を表す)、エポキシ基、−SH、−CN等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましく、特に−SO3M、−OSO3M、が好ましい。この様な極性基の量は、1×10-1〜1×10-8モル/gであり、好ましくは1×10-2〜1×10-6モル/gである。
【0145】
この様なバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。
【0146】
効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、感光性層(画像形成層)において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2(質量比)が好ましく、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、感光性層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましく、更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0147】
本発明で用いるバインダーのガラス転移温度(Tg)は、70〜105℃であることが好ましい。Tgは示差走査熱量計で測定して求めることができ、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をTgとする。本発明におけるTgは、ブランドラップ等による「重合体ハンドブック」III−139〜179頁(1966年,ワイリーアンドサン社版)に記載の方法で求めたものである。
【0148】
バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
【0149】
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は±5℃である。
【0150】
Tgが70〜105℃のバインダーを用いると、画像形成において十分な最高濃度が得ることができ好ましい。
【0151】
本発明に係るバインダーとしては、Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。又、エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体については、特開2001−330918号の段落番号「0069」に記載のものが挙げられる。
【0152】
これらの内、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。この様な高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物でも、アセトアセタール構造を持つポリビニルアセタールであることがより好ましく、例えば米国特許2,358,836号、同3,003,879号、同2,828,204号、英国特許771,155号等に示されるポリビニルアセタールを挙げることができる。
【0153】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、特開2002−287299号公報の「0150」に記載の一般式(V)で表される化合物が、特に好ましい。
【0154】
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン等公知のものが使用できる。又、ポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシル基は、硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特に、ヒドロキシル基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは、分子末端にヒドロキシル基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合は、Tgが70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
【0155】
これらの高分子化合物(ポリマー)は単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。
【0156】
本発明に係る感光性層には上記ポリマーを主バインダーとして用いることが好ましい。ここで言う主バインダーとは、「感光性層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」をいう。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明のポリマーが可溶となる溶媒であれば特に制限はない。より好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0157】
感光性層に有機性ゲル化剤を含有せしめてもよい。尚、ここで言う有機性ゲル化剤とは、例えば多価アルコール類のように、有機液体に添加することにより、その系に降伏値を付与し、系の流動性を消失あるいは低下させる機能を有する化合物を言う。
【0158】
感光性層用塗布液が水性分散されたポリマーラテックスを含有するのも好ましい態様である。この場合、感光性層用塗布液中の全バインダーの50質量%以上が水性分散されたポリマーラテックスであることが好ましい。又、感光性層の調製においてポリマーラテックスを使用した場合、感光性層中の全バインダーの50質量%以上がポリマーラテックス由来のポリマーであることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。
【0159】
ここで、ポリマーラテックスとは、水不溶性の疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち、分子鎖自身が分子状分散したもの等、何れでもよい。分散粒子の平均粒径は1〜50,000nmが好ましく、より好ましくは5〜1,000nm程度の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも、単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0160】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外、所謂コア/シェル型のラテックスでもよい。この場合、コアとシェルはTgを変えると好ましい場合がある。本発明に係るポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は、−30〜90℃であることが好ましく、更に好ましくは0〜70℃程度である。又、最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。
【0161】
上記造膜助剤は可塑剤とも呼ばれ、ポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常、有機溶媒)であり、例えば「合成ラテックスの化学(室井宗一著,高分子刊行会発行,1970)」に記載されている。
【0162】
ポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はこれらの共重合体等がある。ポリマーとしては、直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、又、架橋されたポリマーでもよい。又、ポリマーとしては、単一のモノマーが重合した所謂ホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合は、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は、数平均分子量で、通常、5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度である。分子量が小さすぎるものは感光層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは製膜性が悪く、共に好ましくない。
【0163】
ポリマーラテックスは、25℃・60%RH(相対湿度)での平衡含水率が0.01〜2質量%以下のものが好ましく、更に好ましくは、0.01〜1質量%のものである。平衡含水率の定義と測定法については、例えば「高分子工学講座14,高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)」等を参考にすることができる。
【0164】
ポリマーラテックスの具体例としては、特開2002−287299号公報の「0173」に記載の各ラテックスが挙げられる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。ポリマーラテックスのポリマー種としては、アクリレート又はメタクリレート成分の如きカルボン酸成分を0.1〜10質量%程度含有するものが好ましい。
【0165】
更に、必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は前記感光性層の全バインダーの30質量%以下が好ましい。
【0166】
感光性層用塗布液の調製における有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスの添加の順序については、何れを先に添加してもよいし、同時に添加してもよいが、好ましくはポリマーラテックスが後である。
【0167】
更に、ポリマーラテックス添加前に有機銀塩、更には還元剤が混合されていることが好ましい。又、有機銀塩とポリマーラテックスを混合した後、経時させる温度が低すぎると塗布面状が損なわれ、高すぎるとカブリが上昇する問題があるので、混合後の塗布液は30〜65℃で上記時間経時されることが好ましい。更には、35〜60℃で経時されることが好ましく、特に35〜55℃での経時が好ましい。この様に温度を維持するには、塗布液の調液槽等を保温すればよい。
【0168】
感光性層用塗布液の塗布は、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスを混合した後、30分〜24時間経過した塗布液を用いるのが好ましく、更に好ましくは、混合した後、60分〜12時間経過させることであり、特に好ましくは、120分〜10時間経過した塗布液を用いることである。
【0169】
ここで、「混合した後」とは、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスを添加し、添加素材が均一に分散された後を言う。
【0170】
(架橋剤)
本発明に係る感光性層には、本発明に係るバインダー同士を橋かけ結合によってつなぐことができる架橋剤を含有させることができる。架橋剤を上記バインダーに対し用いることにより、膜付きが良くなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
【0171】
用いられる架橋剤としては、従来、写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば特開昭50−96216号に記載されるアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤が用いられるが、好ましくは、以下に示すイソシアネート系、シラン化合物系、エポキシ系化合物又は酸無水物である。
【0172】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個有しているイソシアネート類及びその付加体(アダクト体)であり、更に具体的には、脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼンジイソシアネート類、ナフタレンジイソシアネート類、ビフェニルイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート類、トリフェニルメタンジイソシアネート類、トリイソシアネート類、テトライソシアネート類、これらのイソシアネート類の付加体及びこれらのイソシアネート類と2価又は3価のポリアルコール類との付加体等が挙げられる。具体例として、特開昭56−5535号の10〜12頁に記載されるイソシアネート化合物を利用することができる。
【0173】
尚、イソシアネートとポリアルコールの付加体は、特に層間接着を良くし、層の剥離や画像のズレ及び気泡の発生を防止する能力が高い。かかるイソシアネートは、銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料のどの部分に置かれてもよい。例えば支持体中(特に支持体が紙の場合、そのサイズ組成中に含ませることができる)感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。
【0174】
又、本発明に使用可能なチオイソシアネート系架橋剤としては、上記のイソシアネート類に対応するチオイソシアネート構造を有する化合物も有用である。
【0175】
上記架橋剤の使用量は、銀1モルに対して、通常、0.001〜2モル、好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。
【0176】
本発明において含有させることができるイソシアネート化合物及びチオイソシアネート化合物は、上記の架橋剤として機能する化合物であることが好ましいが、当該官能基を1個のみ有する化合物であっても良い結果が得られる。
【0177】
シラン化合物の例としては、特開2001−264930号に開示されている一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0178】
又、架橋剤として使用できるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。又、エポキシ化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマー等の何れであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーの何れであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2,000〜20,000程度である。
【0179】
本発明に用いられる酸無水物は、下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。この様な酸無水基を1個以上有するものであればよく、酸無水基の数、分子量、その他に制限はない。
【0180】
−CO−O−CO−
上記のエポキシ化合物や酸無水物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。このエポキシ化合物や酸無水物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。
【0181】
(省銀化剤)
本発明に係る感光性層又は非感光性層には、省銀化剤を含有させることができる。ここでいう、省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。
【0182】
この必要な銀量を低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。この省銀化剤は感光性層又は非感光性層、更にはそのいずれにも存在せしめることができる。省銀化剤としては、ヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、4級オニウム化合物及びシラン化合物が好ましい例として挙げられる。
【0183】
ヒドラジン誘導体の具体例としては、米国特許第5,545,505号明細書カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号明細書カラム9〜11に記載の化合物1〜12、特開2001−27790号公報の段落「0042」〜「0052」に記載の化合物H−1−1〜H−1−28、H−2−1〜H−2−9、H−3−1〜H−3−12、H−4−1〜H−4−21、H−5−1〜H−5−5が挙げられる。
【0184】
ビニル化合物の具体例としては、米国特許第5,545,515号明細書のカラム13〜14に記載の化合物CN−01〜CN−13、米国特許第5,635,339号明細書のカラム10に記載の化合物HET−01〜HET−02、米国特許第5,654,130号明細書のカラム9〜10に記載の化合物MA−01〜MA−07の化合物、米国特許第5,705,324号明細書のカラム9〜10に記載の化合物IS−01〜IS−04、特開2001−125224号公報の段落「0043」〜「0088」記載の化合物1−1〜218−2が挙げられる。
【0185】
フェノール誘導体、ナフトール誘導体の具体例としては、特開2000−267222号公報の段落「0075」〜「0078」の記載の化合物A−1〜A−89、特開2003−66558号公報の段落「0025」〜「0045」に記載の化合物A−1〜A−258が挙げられる。
【0186】
4級オニウム化合物の具体例としては、トリフェニルテトラゾリウムが挙げられる。
【0187】
シラン化合物の具体例としては、特開2003−5324号公報の段落「0027」〜「0029」記載の化合物A1〜A33に示されるような一級または二級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物或いはその塩が挙げられる。
【0188】
上記省銀化剤の添加量は有機銀塩1モルに対し1×10-5〜1モル、好ましくは1×10-4〜5×10-1モルの範囲である。
【0189】
本発明の特に好ましい省銀化剤は下記一般式(SE1)および(SE2)で表される化合物である。
【0190】
一般式(SE1) Q1−NHNH−Q2
式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。
【0191】
一般式(SE1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0192】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0193】
2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0194】
2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0195】
2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0196】
2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0197】
次に、式(SE1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0198】
【化3】

【0199】
一般式(SE2)において、R1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0200】
1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンソイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
【0201】
3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0202】
一般式(SE2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(SE1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(SE2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0203】
(熱溶剤)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料には熱溶剤が含まれていることが好ましい。ここで、熱溶剤とは、熱溶剤含有光熱写真ドライイメージング材料が、熱溶剤を含まない銀塩光熱写真ドライイメージング材料に比べて熱現像温度を1℃以上低くすることができる素材と定義する。さらに好ましくは、2℃以上熱現像温度を低くできる素材であり、特に好ましくは3℃以上低くできる素材である。例えば、熱溶剤を含む光熱写真ドライイメージング材料Aに対して、光熱写真ドライイメージング材料Aから熱溶剤を含まない光熱写真ドライイメージング材料をBとした時に、光熱写真ドライイメージング材料Bを露光し熱現像温度120℃、熱現像時間20秒で処理して得られる濃度を、光熱写真ドライイメージング材料Aで同一露光量、熱現像時間で得るための熱現像温度が119℃以下になる場合を熱溶剤とする。
【0204】
熱溶剤は極性基を置換基として有しており、一般式(TS)で表されるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0205】
一般式(TS)
(Y2n
一般式(TS)において、Y2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Zはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、リン酸アミド基、シアノ基、イミド、ウレイド、スルホキシド、スルホン、ホスフィン、ホスフィンオキシドまたは含窒素複素環基から選ばれる基を表す。nは1ないし3の整数を表し、Zが1価の基である場合には1、Zが2価以上の基である場合にはZの価数と同一である。nが2以上の場合、複数のY2は同一であっても異なっていても良い。
【0206】
2は更に置換基を有していても良く、置換基としてZで表される基を有していても良い。Y2についてさらに詳しく説明する。一般式(TS)において、Y2は直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは1〜30、特に好ましくは1〜25であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、sec−ブチル、t−ブチル、t−オクチル、n−アミル、tーアミル、n−ドデシル、n−トリデシル、オクタデシル、イコシル、ドコシル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは2〜30、特に好ましくは2〜25であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは6〜30、特に好ましくは6〜25であり、例えば、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、複素環基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えば、ピリジル、ピラジル、イミダゾイル、ピロリジルなどが挙げられる。)を表す。これらの置換基はさらに他の置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基は互いに結合して、環を形成していても良い。
【0207】
2は更に置換基を有していても良く、置換基の例としては、特開2004−21068号公報の「0015」に記載の置換基が挙げられる。熱溶剤を使用することにより現像活性となる理由としては、熱溶剤が現像温度付近で溶融することにより現像に関与する物質と相溶し、熱溶剤を添加しないときよりも低い温度での反応を可能としているためと考えられる。熱現像は、比較的極性の高いカルボン酸や銀イオン輸送体が関与している還元反応であるため、極性基を有している熱溶剤により適度の極性を有する反応場を形成することが好ましい。
【0208】
本発明に好ましく用いられる熱溶剤の融点は50℃以上200℃以下であるが、より好ましくは60℃以上150℃以下である。特に、本発明の目的であるような、画像保存性などの外的環境に対しての安定性を重視した銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料では、融点が100℃以上150℃以下の熱溶剤が好ましい。
【0209】
熱溶剤の具体例としては特開2004−21068号公報の「0017」に記載される化合物、米国公開特許US2002/0025498号公報の「0027」に記載の化合物、MF−1〜MF−3、MF6、MF−7、MF−9〜MF−12、MF−15〜MF−22をあげることができる。
【0210】
本発明において熱溶剤の添加量は0.01〜5.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2.5g/m2で、さらに好ましくは0.1〜1.5g/m2である。熱溶剤は感光性層に含有させることが好ましい。また、上記熱溶剤は単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において熱溶剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0211】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0212】
また、固体微粒子分散法としては、熱溶剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
【0213】
(カブリ防止及び画像安定化剤)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料のいずれかの構成層には、熱現像前の保存時におけるカブリ発生を防止するためのカブリ防止剤、及び熱現像後における画像の劣化を防止するための画像安定化剤を含有させておくことが好ましい。
【0214】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
【0215】
本発明に係る還元剤として、主にビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンを持った還元剤が用いられているので、これらの水素を安定化し還元剤を不活性化し、銀イオンを還元する反応を防止防止できる化合物が含有されていることが好ましい。また、生フィルムや画像の保存時に生成する銀原子ないし金属銀(銀クラスター)を酸化漂白できる化合物が含有されていることが好ましい。これらの機能を有する化合物の具体例としてビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物を挙げることができる。上記のビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物の添加量は0.001〜0.1モル/m2、好ましくは0.005〜0.05モル/m2の範囲である。
【0216】
本発明に用いる還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)を有する場合、特にビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物の具体例としては、例えば、特開2002−90937号公報の段落「0061」〜「0064」に記載の化合物(II−1)〜(II−40)が挙げられる。
【0217】
また、一方、カブリ防止及び画像安定化剤として、ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も多くのものが知られている。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、特開2002−287299号公報の[0264]〜[0271]に記載の一般式(9)の化合物が挙げられる。
【0218】
これらの化合物の添加量は、当該化合物から放出されるハロゲンと銀イオンが反応してハロゲン化銀の生成によるプリントアウト銀の増加が実質的に問題にならない範囲が好ましい。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、上記の公報の他に、特開2002−169249号公報の段落「0086」〜「0087」に記載されている化合物(III−1)〜(III−23)、特開2003−50441号公報の段落「0031」〜「0034」記載の化合物1−1a〜1−1o、1−2a〜1−2o、段落「0050」〜「0056」記載の化合物2a〜2z、2aa〜2ll、2−1a〜2−1f、特開2003−91054号公報の段落「0055」〜「0058」記載の化合物4−1〜4−32、段落「0069」〜「0072」記載の化合物5−1〜5−10を挙げることができる。
【0219】
本発明で好ましく使用されるカブリ防止剤としては、例えば、特開平8−314059号公報の段落「0012」に記載の化合物例a〜j、特開平7−209797号公報の段落「0028」に記載のチオスルホネートエステルA〜K、特開昭55−140833号公報のp14から記載の化合物例(1)〜(44)、特開2001−13627号公報の段落「0063」記載の化合物(I−1)〜(I−6)、段落「0066」記載の(C−1)〜(C−3)、特開2002−90937号公報の段落「0027」記載の化合物(III−1)〜(III−108)、ビニルスルホン類及び/又はβ−ハロスルホン類の化合物として特開平6−208192号公報の段落「0013」に記載の化合物VS−1〜VS−7、化合物HS−1〜HS−5、スルホニルベンゾトリアゾール化合物として特開2000−330235号公報に記載のKS−1〜KS−8の化合物、置換されたプロペンニトリル化合物として特表2000−515995号公報に記載のPR−01〜PR−08、特開2002−207273号公報の段落「0042」〜「0051」に記載の化合物(1)−1〜(1)−132、を挙げることができる。
【0220】
上記カブリ防止剤は一般に銀のモルに対して少なくとも0.001モル用いる。通常、その範囲は銀のモルに対して化合物は0.01〜5モル、好ましくは銀のモルに対して化合物は0.02〜0.6モルである。
【0221】
尚、上記の化合物の他に、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料中には、従来カブリ防止剤として知られている各種化合物が含まれてもよいが、上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同4,546,075号、同4,452,885号の各明細書、特開昭59−57234号公報、米国特許第3,874,946号明細書、同4,756,999号明細書、特開平9−288328号公報、同9−90550号公報に記載されている化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同605,981号、同631,176号の各明細書に開示されている化合物が挙げられる。
【0222】
(フッ素系界面活性剤)
本発明ではレーザイメージャー(熱現像処理装置)でのフィルム搬送性や環境適性(生体内への蓄積性)を改良するために下記一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤が好ましく用いられる。
一般式(SF)
(Rf−(L1m1−)p−(Y)n1−(A)q
式中、Rfはフッ素原子を含有する置換基を表し、L1はフッ素原子を有しない2価の連結基を表し、Yはフッ素原子を有さない(p+q)価の連結基を表し、Aはアニオン基またはその塩を表し、m1、n1は各々0または1の整数を表し、pは1〜3の整数を表し、qは1〜3の整数を表す。但し、qが1の時は、m1とn1は同時に0とはならない。
【0223】
一般式(SF)において、Rfはフッ素原子を含有する置換基を表すが、該フッ素原子を含有する置換基としては例えば、炭素数1〜25のフッ化アルキル基(例えば、トリフロロメチル基、トリフロロエチル基、パーフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基、パーフロロドデシル基及びパーフロロオクタデシル基等)またはフッ化アルケニル基(例えば、パーフロロプロペニル基、パーフロロブテニル基、パーフロロノネニル基及びパーフロロドデセニル基等)等が挙げられる。Rfは炭素数2〜8であることが好ましく、より好ましくは炭素数が2〜6である。またRfはフッ素原子数2〜12であることが好ましく、より好ましくはフッ素原子数が3〜12である。
【0224】
1はフッ素原子を有さない2価の連結基を表すが、当該フッ素原子を有さない2価の連結基としては例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等)、アルキレンオキシ基(メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、ブチレンオキシ基等)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシブチレン基等)、オキシアルキレンオキシ基(例えば、オキシメチレンオキシ基、オキシエチレンオキシ基、オキシエチレンオキシエチレンオキシ基等)、フェニレン基、オキシフェニレン基、フェニルオキシ基、オキシフェニルオキシ基またはこれらの基を組合せた基等が挙げられる。
【0225】
Aはアニオン基またはその塩を表すが、例えば、カルボン酸基またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、スルホン酸基またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、硫酸ハーフエステル基またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、及び燐酸基またはその塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)等が挙げられる。
【0226】
Yはフッ素原子を有さない(p+q)価の連結基を表すが、例えば、フッ素原子を有さない3価または4価の連結基としては、窒素原子または炭素原子を中心にして構成される原子群が挙げられる。n1は0または1の整数を表すが、1であるのが好ましい。
【0227】
一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤は、フッ素原子を導入した炭素数1〜25のアルキル化合物(例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基及びパーフロロオクタデシル基等を有する化合物)及びアルケニル化合物(例えば、パーフロロヘキセニル基及びパーフロロノネニル基等)と、それぞれフッ素原子を導入していない3価〜6価のアルカノール化合物、水酸基を3〜4個有する芳香族化合物またはヘテロ化合物との付加反応や縮合反応によって得られた化合物(一部Rf化されたアルカノール化合物)に、更に例えば硫酸エステル化等によりアニオン基(A)を導入することにより得ることができる。
【0228】
上記3〜6価のアルカノール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンテン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ブタノール)−3、脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール等が挙げられる。
【0229】
また、上記水酸基を3〜4個有する芳香族化合物及びへテロ化合物としては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン及び2,4,6−トリヒドロキシピリジン等が挙げられる。
【0230】
上記したフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2003−149766号公報の段落「0029」〜「0040」に記載の化合物(FS−1)〜(FS−66)、特開2004−021084号公報の段落「0014」に記載の化合物1−1〜1−4、段落「0019」に記載の化合物2−1〜2−10、特開2004−077792号公報の段落「0025」に記載の化合物、段落「0030」に記載の化合物が挙げられる。
【0231】
また上記した以外のフッ素系界面活性剤として、特開2004−117505号公報の段落「0035」に記載の化合物、特開2000−214554号公報、特開2003−156819号公報、特開2003−177494号公報、特開2003−114504号公報、特開2003−270754号公報、特開2003−270760号公報に記載された化合物を使用しても良い。本発明においては一般式(SF)で表されるアニオン性含フッ素界面活性剤と公知の非イオン性含フッ素界面活性剤を組み合わせて使用することが帯電特性、塗布性向上の観点から特に好ましい。
本発明の一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤を塗布液に添加する方法としては公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。また、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザ分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤は、最外層の保護層に添加することが好ましい。
【0232】
本発明の一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤の添加量は1m2当たり1×10-8〜1×10-1モルが好ましく、1×10-5〜1×10-2モルが特に好ましい。前者の範囲未満では、帯電特性が得られず、前者の範囲を越えると、湿度依存性が大きく高湿下の保存性が劣化する。
【0233】
(潤滑剤)
潤滑剤としては例えば特開平11−84573号の段落「0061」〜「0064」に記載されている公知の潤滑剤を使用することができるが、固体潤滑剤粒子や常温で液体の潤滑剤を用いることが好ましい。常温で液体の潤滑剤としては例えば特開2003−15259号の段落「0019」に記載されている化合物があげられる。固体潤滑剤粒子としては、平均粒径が1〜30μmの有機固体潤滑剤粒子を使用することが好ましく、また有機固体潤滑剤粒子の融点が、110℃以上、200℃以下であることが好ましい。
【0234】
(支持体)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(アルミニウム等)等が挙げられるが、情報記録材料としての取扱い上は、可撓性のあるシート又はロールに加工できるものが好適である。従って、本発明の光熱写真ドライイメージング材料における支持体としては、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルム(TAC)又はポリカーボネート(PC)フィルム等のプラスチックフィルムが好ましく、特に2軸延伸したPETフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0235】
帯電性を改良するために金属酸化物及び/又は導電性ポリマー等の導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらは何れの層に含有させてもよいが、好ましくはバッキング層又は感光性層側の表面保護層、下引層等に含まれる。米国特許5,244,773号のカラム14〜20に記載された導電性化合物等が好ましく用いられる。中でも、本発明では、バッキング層側の表面保護層に導電性金属酸化物を含有することが好ましい。このことで、更に本発明の効果(特に熱現像処理時の搬送性)を高められることが判った。
【0236】
ここで、導電性金属酸化物とは、結晶性の金属酸化物粒子であり、酸素欠陥を含むもの及び用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等は、一般的に言って導電性が高いので特に好ましく、特に後者はハロゲン化銀乳剤にカブリを与えないので特に好ましい。金属酸化物の例としてZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V25等、又はこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、又、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜30モル%の範囲が好ましいが、0.1〜10モル%であれば特に好ましい。更に又、微粒子分散性、透明性改良のために、微粒子作製時に珪素化合物を添加してもよい。
【0237】
本発明に用いられる金属酸化物微粒子は導電性を有しており、その体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下である。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号等に記載されている。更に又、特公昭59−6235号に記載の如く、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(酸化チタン等)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。
【0238】
利用できる粒子サイズは1μm以下が好ましいが、0.5μm以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。又、光散乱性をできるだけ小さくするために、0.3μm以下の導電性粒子を利用すると、透明感光材料を形成することが可能となり大変好ましい。又、導電性金属酸化物が針状あるいは繊維状の場合は、その長さは30μm以下で直径が1μm以下が好ましく、特に好ましいのは長さが10μm以下で直径0.3μm以下であり、長さ/直径比が3以上である。尚、SnO2としては、石原産業社より市販されており、SNS10M、SN−100P、SN−100D、FSS10M等を用いることができる。
【0239】
(構成層)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、支持体上に少なくとも1層の画像形成層である感光性層を有している。支持体上に感光性層のみを形成してもよいが、感光性層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。例えば、感光性層の上には保護層が、感光性層を保護する目的で設けられることが好ましく、又、支持体の反対の面には、感光材料間の、あるいは感光材料ロールにおける「くっつき」を防止するために、バックコート層が設けられる。
【0240】
これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては、感光性層よりもガラス転位点(Tg)が高く、擦傷や、変形の生じ難いポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。
【0241】
尚、階調調整等のために、感光性層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0242】
(構成層の塗布)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば、感光性層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下(より好ましくは90質量%以下)となる前に、上層を設けることである。
【0243】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、リバースロール塗布法、グラビア塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。
【0244】
上記の各種方法のうち、より好ましくはスライド塗布法、エクストリュージョン塗布法である。これらの塗布方法は感光性層を有する側について述べたが、バック層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。光熱写真ドライイメージング材料における同時重層塗布方法に関しては、特開2000−15173号公報に詳細な記載がある。
【0245】
尚、本発明において、塗布銀量は銀塩光熱写真ドライイメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、0.3g/m2以上、1.5g/m2以下が好ましく、0.5g/m2以上、1.5g/m2以下がより好ましい。当該塗布銀量のうち、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましい、更には5〜15%が好ましい。
【0246】
また、本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014個/m2以上、1×1018個/m2以下が好ましい。更には1×1015個/m2以上、1×1017個/m2以下が好ましい。
【0247】
更に、前記の非感光性長鎖脂肪族カルボン酸銀の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり、1×10-17g以上、1×10-14g以下が好ましく、1×10-16g以上、1×10-15g以下がより好ましい。
【0248】
上記のような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
【0249】
本発明においては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料が現像時に溶剤を5〜1,000mg/m2の範囲で含有していることが好ましい。10〜150mg/m2であるように調整することがより好ましい。それにより、高感度、低カブリ、最高濃度の高い銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料となる。溶剤としては、特開2001−264930号公報の段落「0030」に記載のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。また、これらの溶剤は単独または数種類組合せて用いることができる。
【0250】
尚、銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。また、当該溶剤の含有量は、含有させた溶剤を検出するために適した条件下におけるガスクロマトグラフィーで測定できる。
【0251】
(銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光)
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光に用いられる露光、あるいは、本発明の画像形成方法における露光については、目的とする適切な画像を得るために適した光源、露光時間等に関し、種々の条件を採用することができる。
【0252】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、画像記録する際にレーザ光線を用いるのが好ましい。また、本発明においては、当該感光材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば当該感光材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
【0253】
また特に本発明の光熱写真ドライイメージング材料は、好ましくは光量が1mW/mm2以上の高照度の光で短時間露光されることでその特性を発揮する。ここでの照度は熱現像後の感光材料が3.0の光学濃度がでるときの照度を言う。このような高照度で露光を行うと必要な光学濃度を得るために必要な光量(=照度*露光時間)が少なくてすみ、高感度システムを設計できる。より好ましくはその光量は2mW/mm2以上50W/mm2以下であり、さらに好ましくは10mW/mm2以上50W/mm2以下である。
【0254】
上記のような光源であればどのようなものでも構わないが、レーザであることによって好ましく達成できる。本発明の感光材料にこのましく用いられるレーザとしては、ガスレーザ(Ar+、Kr+、He−Ne)、YAGレーザ、色素レーザ、半導体レーザなどが好ましい。また、半導体レーザと第2高調波発生素子などを用いることもできる。また青〜紫発光の半導体レーザ(波長350nm〜440nmにピーク強度を持つもの等)を用いることができる。青〜紫発光の高出力半導体レーザとしては日亜化学のNLHV3000E半導体レーザを挙げることができる。
【0255】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0256】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ光走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0257】
レーザ光が感光材料に走査される時の、感光材料露光面でのビームスポット直径は好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方が、レーザ光入射角度の垂直からの「ずらし角度」を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。この様なレーザ走査露光を行うことにより、干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
【0258】
又、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳を掛ける、等の方法がよい。尚、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0259】
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザ光を用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。この様な複数本のレーザ光を利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャー等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0260】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは、互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは、1インチ=2.54cm当たりのドット数を表す)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。この様な、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成することが好ましい。この際、通常の1本のレーザ光(波長λ[nm])で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEであり、露光に使用するN本のレーザ光線が同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)である場合に、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。この様にすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光線の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
【0261】
尚、上述では複数本のレーザ光の波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合には、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0262】
尚、上述した第1、第2及び第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でも、メンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザによるレーザ光を用いるのが好ましい。尚、レーザイメージャやレーザイメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩光熱写真ドライイメージング材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩光熱写真ドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、光熱写真ドライイメージング材料毎に最適な値に設定することができる。
【0263】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料は、如何なる方法で現像されてもよいが、イメージワイズに露光した銀塩光熱ドライイメージング材料を昇温し、80〜250℃で熱現像処理を行うことが好ましく、より好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、5〜30秒が更に好ましい。
【0264】
(メッキ処理)
本発明では、前記露光及び熱現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるためメッキ処理を行う。本発明ではメッキ処理のみで導電性金属粒子を金属性部に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とメッキ処理を組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させることもできる。
【0265】
本発明における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオンなどの金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフィルム、インスタントスライドフィルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
【0266】
本発明において、メッキ処理は、無電解メッキ(化学還元メッキや置換メッキ)、電解メッキ、又は無電解メッキと電解メッキの両方を用いることができる。本発明における無電解メッキは、公知の無電解メッキ技術を用いることができ、例えば、プリント配線板などで用いられている無電解メッキ技術を用いることができ、無電解メッキは無電解銅メッキであることが好ましい。
【0267】
無電解銅メッキ液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やメッキ皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅メッキ浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0268】
本発明におけるメッキ処理時のメッキ速度は、緩やかな条件で行うことができ、さらに5μm/hr以上の高速メッキも可能である。メッキ処理において、メッキ液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTAなどの配位子など種々の添加剤を用いることができる。
【0269】
(酸化処理)
本発明では、熱現像処理後の金属銀部、並びにメッキ処理後に形成される導電性金属部には、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0270】
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び熱現像処理後、あるいは物理現像又はメッキ処理後に行うことができ、さらに熱現像処理後と物理現像又はメッキ処理後のそれぞれで行ってもよい。
【0271】
本発明では、さらに露光及び熱現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により無電解メッキ又は物理現像速度を促進させることができる。
【0272】
(定着処理)
本発明では、熱現像後に光透過性部に残った不要な銀イオンを除去するため、定着剤を用いて定着処理を施すことが好ましい。定着剤にはアルキルチオエーテルタイプとして下記Fixer−1が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0273】
下記Fixer−1を水、メタノールなどの溶媒に1〜5質量%程度溶解し、30℃程度に加温した定着液に、メッキ処理および酸化処理を施した後に、サンプルを30秒〜2分程度浸漬することで、光透過性部に残った余分な銀イオンが除去され、光や熱に対して安定な電磁波シールド膜が得られる。
【0274】
【化4】

【0275】
(導電性金属部)
次に、本発明における導電性金属部について説明する。
【0276】
本発明では、導電性金属部は、前述した露光及び熱現像処理により形成された金属銀部をメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成される。
【0277】
金属銀は、露光部に形成させる場合と、未露光部に形成させる場合がある。物理現像核を利用した銀塩拡散転写法(DTR法)は、未露光部に金属銀を形成させるものである。本発明においては、透明性を高めるために露光部に金属銀を形成させることが好ましい。
【0278】
前記金属部に担持させる導電性金属粒子としては、上述した銀のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、又はこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等の観点から導電性金属粒子は、銅、アルミニウム又はニッケルの粒子であることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属粒子として常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
【0279】
上記導電性金属部において、コントラストを高くし、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色されるのを防止する観点からは、導電性金属部に含まれる導電性金属粒子は銅粒子であることが好ましく、少なくともその表面が黒化処理されたものであることがさらに好ましい。黒化処理は、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができ
る。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、リン酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中で、95℃で2分間処理することにより黒化処理を行うことができる。
【0280】
上記導電性金属部は、該導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。銀を50質量%以上含有すれば、メッキ処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させ、かつ低コストとすることができる。
【0281】
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅及びパラジウムが用いられる場合、銀、銅及びパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0282】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、本発明の透光性電磁波シールド膜(導電性金属部)の表面抵抗値は、10Ω/sq以下であることが好ましく、2.5Ω/sq以下であることがより好ましく、1.5Ω/sq以下であることがさらに好ましく、0.1Ω/sq以下であることが最も好ましい。
【0283】
本発明の導電性金属部は、透光性電磁波シールド材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、これらの幾何学図形からなるメッシュ状であることがさらに好ましい。EMIシールド性の観点からは三角形の形状が最も有効であるが、可視光透過性の観点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がり可視光透過性が大きくなるので有利である。
【0284】
なお、導電性配線材料の用途である場合、前記導電性金属部の形状は特に限定されず、目的に応じて任意の形状を適宜決定することができる。
【0285】
透光性電磁波シールド材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は18μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましく、14μm未満であることがさらに好ましく、10μm未満であることがさらにより好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
【0286】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
【0287】
(光透過性部)
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波シールド膜のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【実施例】
【0288】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0289】
実施例1
《下引加工した写真用支持体の作製》
光学濃度0.150(コニカ(株)製デンシトメータPDA−65で測定)に下記青色染料で着色した2軸延伸熱固定した厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に、8W・分/m2のコロナ放電処理を施した写真用支持体に、下引加工を行った。即ち、この写真用支持体の一方の面に下引塗布液a−1を乾燥膜厚が0.2μmになるように22℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥して感光性層(画像形成層)側下引層を形成した(下引下層A−1という)。また、反対側の面にバッキング層下引層として下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚が0.12μmになるように22℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥させてバッキング層側に帯電防止機能を持つ下引導電層(下引下層B−1という)を塗設した。下引下層A−1と下引下層B−1の上表面に、8W・分/m2のコロナ放電を施し、下引下層A−1の上には下記下引塗布液a−2を乾燥膜厚0.03μmになるように33℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥させて下引上層A−2とし、下引下層B−1の上には下記下引塗布液b−2を乾燥膜厚0.2μmになるように33℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥させて下引上層B−2とし、更に123℃で2分間支持体を熱処理し25℃、50%RHの条件下で巻き取り、下引済み試料を作製した。
【0290】
【化5】

【0291】
[水性ポリエステルA−1溶液の調製]
テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム・一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。
【0292】
その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、水性ポリエステルA−1を合成した。得られた水性ポリエステルA−1の固有粘度は0.33、平均粒径は40nm、Mw=80000〜100000であった。
【0293】
次いで、撹拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの3つ口フラスコに、純水850mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、水性ポリエステルA−1を150g徐々に添加した。室温でこのまま30分間撹拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、15質量%の水性ポリエステルA−1溶液を調製した。
【0294】
[変性水性ポリエステルB−1〜2溶液の調製]
撹拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの4つ口フラスコに、前記15質量%の水性ポリエステルA−1溶液1900mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24質量%水溶液を6.52ml加え、モノマー混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−1溶液(ビニル系成分変性比率20質量%)を調製した。
【0295】
ビニル変性比率を36質量%にし、変性成分をスチレン:グリシジルメタクリレート:アセトアセトキシエチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート=39.5:40:20:0.5にした以外は同様にして、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−2溶液(ビニル系成分変性比率20質量%)を調製した。
【0296】
[アクリル系ポリマーラテックスC−1〜C−3の作製]
乳化重合により、表1に示すモノマー組成を有するアクリル系ポリマーラテックスC−1〜C−3を合成した。固形分濃度は全て30質量%とした。
【0297】
【表1】

【0298】
[感光性層側下引下層用塗布液a−1]
アクリル系ポリマーラテックスC−3(固形分30%) 70.0g
エトキシ化アルコールとエチレンホモポリマーの水分散物(固形分10%)
5.0g
界面活性剤(A) 0.1g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0299】
《感光性層側下引上層用塗布液a−2》
変性水性ポリエステルB−2(18質量%) 30.0g
界面活性剤(A) 0.1g
真球状シリカマット剤(日本触媒(株)製 シーホスターKE−P50)
0.04g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0300】
[バッキング層側下引下層用塗布液b−1]
アクリル系ポリマーラテックスC−1(固形分30%) 30.0g
アクリル系ポリマーラテックスC−2(固形分30%) 7.6g
SnO2ゾル 180g
(特公昭35−6616号公報の実施例1に記載の方法で合成したSnO2ゾルを固形分濃度が10質量%になるように加熱濃縮した後、アンモニア水でpH=10に調整したもの)
界面活性剤(A) 0.5g
PVA−613(クラレ(株)製 PVA)5質量%水溶液 0.4g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0301】
[バッキング層側下引上層用塗布液b−2]
変性水性ポリエステルB−1(18質量%) 145.0g
真球状シリカマット剤(日本触媒(株)製 シーホスターKE−P50) 0.2g
界面活性剤(A) 0.1g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0302】
なお、前記下引層を施した支持体の下引層B−2上には下記の組成のバックコート層、バックコート層保護層を塗設した。
【0303】
【化6】

【0304】
〈バックコート層塗布液の調製〉
メチルエチルケトン(MEK)830gを撹拌しながら、セルロースアセテートプロピオネート(Eastman Chemical社製:CAP482−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社:VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。次に、溶解した液に0.30gの下記赤外染料1を添加し、更にメタノール43.2gに溶解したフッ素系界面活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)4.5gとフッ素系界面活性剤(大日本インキ社製:メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。次にオレイルオレートの2.5gを添加、撹拌しバックコート層塗布液を調製した。
【0305】
【化7】

【0306】
〈バックコート層保護層(表面保護層)塗布液の調製〉
バックコート層保護層についても下記の組成比率でバックコート層塗布液と同様にして調製した。シリカについてはMEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散を行い、最後に添加した。
【0307】
セルロースアセテートプロピオネート(10%MEK溶液) 15g
(Eastman Chemical社製:CAP482−20)
単分散度15%の単分散シリカ(平均粒径:10μm) 0.03g
(シリカ全質量の1%のアルミニウムで表面処理)
817(CH2CH2O)12817 0.075g
フッ素系界面活性剤(SF−1) 0.01g
フッ素系ポリマー(FM−1) 0.05g
ステアリン酸 0.1g
ステアリン酸ブチル 0.1g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
【0308】
【化8】

【0309】
〈感光性ハロゲン化銀粒子乳剤A1の調製〉
(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(AO−1)の10%メタノール水溶液 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる。
【0310】
(B1)
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 50.69g
沃化カリウム 2.66g
水で660mlに仕上げる。
【0311】
(D1)
臭化カリウム 151.6g
沃化カリウム 7.67g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム:K2(IrCl6)(1%水溶液)
0.93ml
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 0.004g
ヘキサクロロオスミウム(IV)酸カリウム 0.004g
水で1982mlに仕上げる。
【0312】
(E1)
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる。
【0313】
(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる。
【0314】
AO−1:HO(CH2CH2O)n〔CH(CH3)CH2O〕17(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)。
【0315】
特公昭58−58288号に示される混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を20℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後に溶液(F1)の全量を添加した後に、下記の化合物(TPPS)の0.1%エタノール溶液を4ml添加した。この間、pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、20℃、pAg8.09に制御しながら、14分15秒かけて同時混合法により添加した。5分間撹拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀粒子乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀粒子乳剤A1を得た。
【0316】
この乳剤は、平均粒径25nm、粒径の変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
【0317】
【化9】

【0318】
〈粉末有機銀塩Aの調製〉
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸カリウム溶液を得た。上記の脂肪酸カリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、感光性ハロゲン化銀粒子乳剤A45.3gと純水450mlを添加し5分間撹拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液468.4mlを2分間かけて添加し、10分間撹拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて撹拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機熱風温度の運転条件(入口65℃、出口40℃)により含水率が0.1%になるまで乾燥して乾燥済みの粉末有機銀塩Aを得た。尚、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0319】
〈予備分散液Aの調製〉
感光性層(画像形成層)のバインダーとして、SO3K基含有ポリビニルブチラール(Tg75℃、−SO3K基を0.2ミリモル/g含む)14.57gをMEK1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて撹拌しながら、上記粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0320】
〈感光性乳剤分散液Aの調製〉
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行うことにより感光性乳剤分散液Aを調製した。
【0321】
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0322】
〈赤外増感色素液Aの調製〉
9.6mgの赤外増感色素1、9.6mgの赤外増感色素2、1.488gの2−クロロ安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0323】
〈添加液aの調製〉
還元剤RD−1の4.20g、RD−2の23.78g、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEK110.0gに溶解し、添加液aとした。
【0324】
〈添加液bの調製〉
1.56gのカブリ防止剤2、0.5gのカブリ防止剤3、0.5gのカブリ防止剤4、0.5gのカブリ防止剤5、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
【0325】
〈添加液cの調製〉
省銀化剤(SE1−1)0.05g、をMEK39.95gに溶解し添加液cとした。
【0326】
〈添加液dの調製〉
0.1gの強色増感剤1をMEK9.9gに溶解し、添加液dとした。
【0327】
〈添加液eの調製〉
0.5gのp−トルエンチオスルホン酸カリウム、0.5gのカブリ防止剤6をMEK9.0gに溶解し、添加液eとした。
【0328】
〈添加液fの調製〉
1.0gのビニルスルホン〔(CH2=CH−SO2CH22CHOH〕を含有するカブリ防止剤をMEK9.0gに溶解し、添加液fとした。
【0329】
〈感光性層塗布液の調製〉
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液A1の36.2gとB1の9.1g及びMEK15.11gを撹拌しながら21℃に保温し、化学増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にカブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加えて1時間撹拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に上記の有機化学増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分撹拌した。続いて、安定剤液167μlを添加して10分間撹拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間撹拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分撹拌した。13℃に保温したまま、0.5gの添加液d、0.5gの添加液e、0.5gの添加液f、予備分散液Aで使用したバインダー13.31gを添加して30分撹拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間撹拌した。更に撹拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液b、4.0gの添加液cを順次添加し撹拌することにより感光性層塗布液を得た。
【0330】
安定剤液を初めとする各塗布液、感光性層塗布液の調製に用いた添加剤の化学構造を以下に示す。
【0331】
【化10】

【0332】
【化11】

【0333】
〈感光性層保護層下層(表面保護層下層)の調製〉
アセトン 5g
MEK 21g
セルロースアセテートプロピオネート 2.3g
(Eastman Chemical社製:CAP−141−20、ガラス転移温度Tg=190℃)
メタノール 7g
フタラジン 0.25g
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2 0.035g
1225(CH2CH2O)101225 0.01g
フッ素系界面活性剤(SF−1) 0.01g
ステアリン酸 0.1g
ステアリン酸ブチル 0.1g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
〈感光性層保護層上層(表面保護層上層)の調製〉
アセトン 5g
メチルエチルケトン 21g
セルロースアセテートプロピオネート 2.3g
(Eastman Chemical社製:CAP−141−20ガラス転移温度Tg=190℃)
パラロイドA−21(ロームアンドハース社製) 0.08g
ベンゾトリアゾール 0.03g
メタノール 7g
フタラジン 0.25g
単分散度15%単分散シリカ(平均粒径: 3μm) 0.140g
(シリカ全質量の1質量%のアルミニウムで表面処理)
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2 0.035g
1225(CH2CH2O)101225 0.01g
フッ素系界面活性剤(SF−1) 0.005g
フッ素系ポリマー(FM−1) 0.01g
ステアリン酸 0.1g
ステアリン酸ブチル 0.1g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
なお感光性層保護層上層、下層については上記の組成比率でバックコート層塗布液の調製と同様な方法によって行った。シリカについてはバックコート層保護層と同様にMEKに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散を行い、最後に添加、撹拌することにより感光性層保護層上層、下層の塗布液を得た。
【0334】
〈銀塩光熱写真ドライイメージング材料の作製〉
前記のように調製したバックコート層塗布液、バックコート層保護層塗布液を、乾燥膜厚がそれぞれ3.5μmになるように、下引上層B−2上に押出しコーターにて塗布速度50m /minにて塗布を行った。尚、乾燥は乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて行った。
【0335】
前記感光性層塗布液と感光性層保護層(表面保護層)塗布液を押出し(エクストルージョン)コーターを用いて塗布速度50m/minにて、下引上層A−2上に同時重層塗布することにより表2に示す感光材料試料Aを作製した。塗布は、塗布銀量が1.5g/m2、感光性層保護層(表面保護層)は乾燥膜厚で3.0μm(表面保護層上層1.5μm、表面保護層下層1.5μm)になる様に行った後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行い、銀塩光熱写真ドライイメージング材料Aを作製した。
【0336】
〈露光及び現像処理〉
上記のように作製した各試料の感光性層塗設面側から、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査により格子状にパターン露光(ライン/スペース=10μm/190μm)を与えた。
この際に、試料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。この方法は、当該角度を90度とした場合に比べ、ムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。
【0337】
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、試料の表面保護層とドラム表面が接触するようにして、123℃で15秒の熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0338】
メッキ処理
上記のように露光、現像処理した各試料を、メッキ液(硫酸銅0.06mol/L、ホルマリン0.22mol/L、トリエタノールアミン0.12mol/L、ポリエチレングリコール100ppm、黄血塩50ppm、α,α′ビピリジン20ppmを含有する、pH=12.5の無電解Cuメッキ液)を用い、45℃にて無電解銅メッキ処理を行ったのち、10ppmのFe(III)イオンを含有する水溶液で酸化処理を行い、本発明の試料Aを得た。
【0339】
比較例1
従来知られている金属メッシュからなる電磁波シールド膜の比較例として、特開2003−46293号公報の実施例1に記載のものを比較例1とした。結果を表2に示す。
【0340】
比較例2
銀塩を用いる比較例として、特開2004−221564号公報の実施例1に記載のサンプルBを比較例2とした。
【0341】
評価方法
(表面抵抗値)
表面抵抗値は横川電機製デジタルマルチメーター7541を用い抵抗値を測定した。本発明では、金属線のメッシュの上に保護膜で保護されているのでこの保護膜上から抵抗値を測定した。抵抗値の測定は23℃相対湿度50%の部屋で行った。
【0342】
(透過率)
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0343】
(モアレ評価)
日立製PDP及び松下電器製PDP前面に、モアレが最小のバイアス角度で電磁波シールド膜を設置し、目視による官能評価を行った。PDPに正対して観察すると共に、PDPに対して視点を様々な位置に置いてPDP画像表示面に対して斜め方向から観察を行った。いずれのモアレが顕在化しなかった場合を○、モアレが顕在化したサンプルを×と評価した。以上の結果を表2に示す。
【0344】
【表2】

【0345】
表2から、本発明の試料Aは各特性において比較に対して優れていることが判る。
【0346】
実施例2
1.PET支持体の作製
製膜
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
【0347】
これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロールを得た。
【0348】
表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分・m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0349】
下塗り
〈下塗り支持体の作製〉
下記組成の下塗り層塗布液を調製した。
(画像形成層側下塗り層塗布液)
高松油脂社製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル(平均エチレンオキシド数=8.5,10%溶液) 5.4g
綜研化学社製MP−1000(ポリマー微粒子,平均粒径0.4μm) 0.91g
蒸留水 935ml
(バックコート面側第1下塗り層塗布液)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(スチレン/ブタジエン質量比=68/32,固形分40%) 158g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩(8%水溶液)
20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1%水溶液 10ml
蒸留水 854ml
(バックコート面側第2下塗り層塗布液)
SnO2/SbO(9/1質量比,平均粒径0.038μm,17質量%分散物)
84g
ゼラチン(10%水溶液) 89.2g
信越化学社製メトローズTC−5(2%水溶液) 8.6g
綜研化学社製MP−1000(前出) 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1%水溶液 10ml
水酸化ナトリウムの1%水溶液 6ml
ICI社製プロキセル 1ml
蒸留水 805ml
前記厚さ175μmの2軸延伸PET支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(画像形成層側面)に上記画像形成層側下塗り層塗布液をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、次いで、この裏面(バックコート層側面)に上記バックコート面側第1下塗り層塗布液をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更にその上に、上記バックコート面側第2下塗り層塗布液をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布し、180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を得た。
【0350】
2.バック層
バック層塗布液の調製
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)
塩基プレカーサー化合物1を2.5kg、および界面活性剤(商品名:デモールN、花王(株)製)300g、ジフェニルスルホン800g、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩1.0gおよび蒸留水を加えて総量を8.0kgに合わせて混合し、混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散した。分散方法は、混合液をを平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したUVM−2にダイアフラムポンプで送液し、内圧50hPa以上の状態で、所望の平均粒径が得られるまで分散した。
【0351】
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における450nmにおける吸光度と650nmにおける吸光度の比(D450/D650)が3.0まで分散した。得られた分散物は、塩基プレカーサーの濃度で25質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにろ過(平均細孔径:3μmのポリプロピレン製フィルター)を行って実用に供した。
【0352】
染料固体微粒子分散液の調製
シアニン染料化合物−1を6.0kgおよびp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0kg、花王(株)製界面活性剤デモールSNB0.6kg、および消泡剤(商品名:サーフィノール104E、日信化学(株)製)0.15kgを蒸留水と混合して、総液量を60kgとした。混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いて、0.5mmのジルコニアビーズで分散した。
【0353】
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における650nmにおける吸光度と750nmにおける吸光度の比(D650/D750)が5.0以上であるところまで分散した。得られた分散物は、シアニン染料の濃度で6質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにフィルターろ過(平均細孔径:1μm)を行って実用に供した。
【0354】
ハレーション防止層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)20g、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水490mlを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2.3ml、上記染料固体微粒子分散液40g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)を90g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液12ml、SBRラテックス10質量%液180g、を混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液80mlを混合し、ハレーション防止層塗布液とした。
【0355】
バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、ベンゾイソチアゾリノン35mg、水840mlを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液5.8ml、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.5g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5%水溶液10ml、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3%水溶液20ml、フッ素系界面活性剤(F−1)2%溶液を2.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)2%溶液を2.4ml、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液32gを混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4%水溶液25mlを混合しバック面保護層塗布液とした。
【0356】
バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.52g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。
【0357】
【化12】

【0358】
3.画像形成層、中間層、および表面保護層
3−1.塗布用材料の準備
ハロゲン化銀乳剤
《ハロゲン化銀乳剤1の調製》
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cと臭化カリウム44.2gとヨウ化カリウム2.2gを蒸留水にて容量400mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0359】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。その後、分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10-3モル加え、1分後にN,N’−ジヒドロキシ−N”,N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0360】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.042μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて80%と求められた。
【0361】
《ハロゲン化銀乳剤2の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を47℃に変更し、溶液Bは臭化カリウム15.9gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈することに変更し、溶液Dは臭化カリウム45.8gを蒸留水にて容量400mlに希釈することに変更し、溶液Cの添加時間を30分にして、六シアノ鉄(II)カリウムを除去した以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤2の調製を行った。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に、テルル増感剤Cの添加量を銀1モル当たり1.1×10-4モル、分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液の添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として7.0×10-4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを銀1モルに対して3.3×10-3モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩を銀1モルに対して4.7×10-3モル添加に変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。ハロゲン化銀乳剤2の乳剤粒子は、平均球相当径0.080μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子であった。
【0362】
《ハロゲン化銀乳剤3の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を27℃に変更する以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤3の調製を行った。また、ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で1:1を固体分散物(ゼラチン水溶液)として添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として6×10-3モル、テルル増感剤Cの添加量を銀1モル当たり5.2×10-4モルに変え、テルル増感剤の添加3分後に臭化金酸を銀1モル当たり5×10-4モルとチオシアン酸カリウムを銀1モルあたり2×10-3モルを添加したこと以外は乳剤1と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3を得た。ハロゲン化銀乳剤3の乳剤粒子は、平均球相当径0.034μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。
【0363】
《塗布液用混合乳剤Aの調製》
ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水し、塗布液用混合乳剤1kgあたり0.34gとなるように1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。
【0364】
さらに「1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物」として、化合物No.1、No.2、およびNo.3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量を添加した。
【0365】
【化13】

【0366】
非感光性脂肪族カルボン酸銀塩分散物の調製
<再結晶ベヘン酸の調製>
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名EdenorC22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の冷却スピードは、3℃/
時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
【0367】
<非感光性脂肪族カルボン酸銀塩分散物の調製>
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液Bの全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液Bのみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調整した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調整した。
【0368】
ベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして非感光性脂肪族カルボン酸銀塩塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0369】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0370】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0371】
還元剤分散物の調製
<還元剤−1分散物の調製>
還元剤−1(2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤−1分散物を得た。こうして得た
還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0372】
水素結合性化合物−1分散物の調製
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調整した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物−1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0373】
現像促進剤−1分散物の調製
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調整し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0374】
ポリハロゲン化合物の調製
《有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調整し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0375】
《有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調整した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0376】
フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0377】
メルカプト化合物の調製
《メルカプト化合物−1水溶液の調製》
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0378】
《メルカプト化合物−2水溶液の調製》
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0379】
顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、水を加えて顔料の濃度が5質量%になるように調整して顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0380】
SBRラテックス液の調製
SBRラテックスは以下により調製した。
【0381】
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5%)7.73g、1mol/リットルNaOH14.06ml、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mlに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/リットルのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4+イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスを774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
【0382】
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(44質量%)を25℃にて測定)であった。
【0383】
2.塗布液の調製
画像形成層塗布液の調製
上記で得た非感光性脂肪族カルボン酸銀塩分散物1000g、水276mlに顔料−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−2分散物、フタラジン化合物−1溶液、SBRラテックス(Tg=17℃)液、還元剤分散物−1、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤分散物−1、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液を順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀混合乳剤Aを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液した。
【0384】
中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物163g、青色染料化合物−1(日本化薬(株)製:カヤフェクトターコイズRNリキッド150)水溶液33g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5%水溶液27ml、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液4200mlにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135ml、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、8.9ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
【0385】
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
【0386】
表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水840mlに溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を46ml、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を5.4mlを加えて混合し、塗布直前に4質量%のクロムみょうばん40mlをスタチックミキサーで混合したものを塗布液量が26.1ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
【0387】
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0388】
表面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水800mlに溶解し、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして8.0g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸15質量%メタノール溶液40ml、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を5.5ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を5.5ml、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21gを混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
【0389】
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0390】
3.銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料Bの作製
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料Bを作製した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は31℃に、表面保護層第一層の塗布液は36℃に、表面保護層第二層の塗布液は37℃に温度調整した。
【0391】
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0392】
非感光性脂肪族カルボン酸銀塩 3.80g/m2
顔料(CI Pigment Blue60) 0.036g/m2
ポリハロゲン化合物−1 0.08g/m2
ポリハロゲン化合物−2 0.18g/m2
フタラジン化合物−1 0.13g/m2
SBRラテックス 6.80g/m2
還元剤分散物−1 1.7×10-3mol/m2
水素結合性化合物−1 0.41g/m2
現像促進剤分散物−1 5.0×10-5mol/m2
メルカプト化合物−1 0.001g/m2
メルカプト化合物−2 0.008g/m2
ハロゲン化銀混合乳剤A(Agとして) 0.07g/m2
【0393】
【化14】

【0394】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
【0395】
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0396】
作製された銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料Bのマット度はベック平滑度で感光性層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、感光層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0397】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料Bの感光性層塗設面側から、最大50mW出力の660nm半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査により格子状にパターン露光(ライン/スペース=10μm/190μm)を与えた。この際に、試料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。この方法は、当該角度を90度とした場合に比べ、ムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。
【0398】
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、試料の表面保護層とドラム表面が接触するようにして、123℃で15秒の熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0399】
<メッキ処理>
実施例1と同様にしてメッキ処理及び酸化処理を行い、本発明の試料Bを得た。
【0400】
<定着処理>
実施例1と同様にしてメッキ処理及び酸化処理を行い、本発明の試料Bを得た後に、Fixer−1の3質量%のメタノール液(30℃に加温)に1分間浸漬し、更にメタノールで30秒間洗浄し、試料Cを得た。
【0401】
評価方法
表面抵抗、透過率及びモアレ評価は実施例1と同様に行い結果は表3に示す。
【0402】
<光透過性部の耐光性の評価>
上記感度測定と同様の方法で作製した熱現像済みの各試料を、45℃、55%RHの環境下で、市販の白色蛍光灯を試料表面における照度が500luxとなるように配置し、3日間連続照射を施した。蛍光灯照射済み試料の最小濃度(D2)と蛍光灯未照射試料の最小濃度(D1)をそれぞれ測定し、下式より最小濃度変化率(%)を算出し、これを耐光性とした。
【0403】
最小濃度変化率=D2/D1×100(%)
【0404】
【表3】

【0405】
表3から、本発明の試料はいずれも表面抵抗が低く(高い電磁波遮蔽性)、透過率、モアレ評価、耐光性も優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、非感光性脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、銀イオン還元剤及びバインダーを含有する感光性層を有する銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料を、露光、熱現像することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部に沿って導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項2】
前記金属銀部に沿って導電性金属粒子を担持させた導電性金属部の形成がメッキ処理によることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項3】
前記銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料が、塗布液の総質量の40〜99質量%が水からなる塗布液を塗布して製造された銀塩光熱写真ドライフォトイメージング材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項4】
熱現像後に定着する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波シールド膜の製造方法により製造されたことを特徴とする電磁波シールド膜。
【請求項6】
プラズマディスプレイパネル又はフィールドエミッションディスプレイの電磁波シールド膜として用いることを特徴とする請求項5に記載の電磁波シールド膜。

【公開番号】特開2007−88335(P2007−88335A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277391(P2005−277391)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】