電磁波吸収体、パーティション、電波暗箱、建材、無線通信システムおよび無線通信方法
【課題】 厚み、材料による制約が少なく、吸収特性の制御が容易で薄型化も可能な電磁波吸収体を提供する。また、特定の周波数の電磁波を吸収するが、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体、パーティション、電波暗箱、建材、無線通信システムおよび無線通信方法を提供する。
【解決手段】 電磁波吸収体1は、パターン層2と、反射層3と、パターン層2と反射層3との間に介在して設けられる絶縁体層4とを含む。パターン層2は、導電性材料から成る複数の導電性パターン体5を含んで構成され、これら複数の導電性パターン体5は、相互に離間して形成される。反射層3は、導電性材料から成り、メッシュ状に形成される。絶縁体層4は、透明部材で構成される。電磁波吸収体1は、これを構成する各層が全て可視光および赤外線に対する透光性を有しているので、特定の周波数の電磁波を吸収することができ、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体1が得られる。
【解決手段】 電磁波吸収体1は、パターン層2と、反射層3と、パターン層2と反射層3との間に介在して設けられる絶縁体層4とを含む。パターン層2は、導電性材料から成る複数の導電性パターン体5を含んで構成され、これら複数の導電性パターン体5は、相互に離間して形成される。反射層3は、導電性材料から成り、メッシュ状に形成される。絶縁体層4は、透明部材で構成される。電磁波吸収体1は、これを構成する各層が全て可視光および赤外線に対する透光性を有しているので、特定の周波数の電磁波を吸収することができ、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体1が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を捉えて、吸収する電磁波吸収体、パーティション、電波暗箱、建材、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を用いる無線LAN(Local Area Network)を構築し、通信端末装置としてのコンピュータ間で無線通信する通信システムが利用されている。またFWA(Fixed
Wireless Access)と呼ばれる広域ネットワークに、通信端末装置が無線通信可能に接続される通信システムが利用されている。さらにZigbeeやBluetoothになどに代表される通信規格によって無線通信するWPAN(Wireless Personal Area Network
)を構築し、通信端末装置間で無線通信する通信システムが利用されている。さらにまたVoWLAN(Voice over Wireless Local Area Network)と呼ばれる無線LANを構築し、音声通話する携帯電話装置を用いる通信システムが提案されている。また通信システムの1つとして、UHFの電磁波を用いるRFID(Radio Frequency Identification)
システムの実用化が進んでいる。UHF帯は、国際的に周波数が統一されていないものの、UHFの電磁波を用いるRFIDシステムでは、10m近くもの通信距離が得られ、商品管理、物流管理、製品のトレーサビリティ等の広範囲な用途で用途展開されている。
【0003】
このような無線通信を行うための通信システムを接近させて構築する場合、または通信システムが構築されている環境において電子レンジおよび無線通信による盗難防止装置など電磁波を利用する装置を用いる場合、他波干渉と呼ばれる電磁波干渉を生じるおそれがある。またこれとは別に、マルチパス、自己干渉などと呼ばれる反射波などによる誤伝送を生じるおそれがある。その結果、通信端末機器間の伝送速度の低下、BER(Bit Error Rate)の増大すなわち通信環境の劣化、そして情報伝達に誤りを生じる。また通信システムの周辺に設けられる電子機器への影響も懸念され、最悪の事態では、電子機器の誤動作を生じるおそれがある。
【0004】
これらの問題を解決するために、電磁波吸収体が用いられている。通信システム間に電磁波吸収体を設置することで、空気中を伝搬する電磁波のうち他のシステムに影響を及ぼすような電磁波を吸収して他波干渉を防止している。また、壁面、床面、天井などに電磁波吸収体を設けることで、壁面、床面、天井で反射するはずの電磁波を吸収して反射波の発生を抑え、自己干渉を防止している。
【0005】
このような電磁波吸収体としては、ピラミッド型や平面型のものがあり、ピラミッド型については広い吸収帯域を持ち厚みが厚い、平面型については特定の周波数領域に吸収特性を持ち厚みが比較的薄いという特徴がある。
【0006】
平面型電磁波吸収体の構成としては、単層型や二層型、抵抗皮膜を用いたλ/4型の電磁波吸収体等が良く知られている。これらの吸収体は共振型の電磁波吸収体と呼ばれ、吸収する電磁波の波長λにたいしてλ/4相当の厚みを持つことで照射電波と共振する吸収体である。ほかに、導電性パターン体を有するパターン層を備えるパターン型電磁波吸収体などがあり、電磁波吸収体をさらに薄型化する方法が検討されている。
【0007】
平面型電磁波吸収体の設計方法としては伝送線路理論を用いる方法がよく知られており、伝送線路理論によると電磁波吸収体に垂直に電波を照射するモデルについて、空間を伝送線路に置き換え、電磁波吸収体を終端抵抗に置き換えて計算することができ、空間を伝搬する電磁波の電界と磁界との比率である空間の電波インピーダンスZ0と伝送線路の特性インピーダンスとが対応し、電磁波吸収体の表面インピーダンスZsと伝送線路の終端抵抗とが対応する。照射波の電界成分についての電磁波吸収体表面における複素振幅反射率をΓとするとき、電磁波吸収体の表面インピーダンスZsと電磁波吸収体表面における複素振幅反射率をΓは式1の関係にある。
【0008】
【数1】
【0009】
電磁波吸収体の表面インピーダンスZsは複素数であり、実数部をRs、虚数部をXs、虚数単位をjとすると式2で表すことができる。空間の電波インピーダンスZ0は120π(≒377)Ωであるので、式1より電磁波吸収体の表面インピーダンスZsについて実数部Rsが377Ω、虚数部Xsが0Ωに近いほど空間との整合がよくなり反射が小さくなる。
【0010】
【数2】
【0011】
反射層から誘電体によって間隔を空けた位置での波長λの照射電波に対する表面インピーダンスZaは、誘電体の材料定数の複素比誘電率をεr、複素比透磁率をμr、間隔をd、居数単位をjとすると、式3で表される。また、誘電体の表面インピーダンスZaは複素数であり、実数部をRa、虚数部をXa、虚数単位をjとすると式4で表すことができる。
【0012】
【数3】
【数4】
【0013】
単層型の電磁波吸収体では、誘電体表面の表面インピーダンスZaが吸収体の表面インピーダンスZsとなり、誘電体の材料定数と厚みから表面インピーダンスを制御することになる。誘電体の厚みdが照射電波波長の1/4に波長短縮率を考慮した厚みのときに、表面インピーダンスZaの虚数部Xaが0Ωとなり、電磁波吸収体が照射電波に共振する。表面インピーダンスZaの虚数部Xaが0Ωとなる条件を満たしながら、実数部Raが377Ωに近づくように誘電体の材料定数を設定する必要がある。
【0014】
電磁波吸収体に抵抗層を追加することによる効果は、伝送線路理論において並列アドミッタンス付加回路を負荷に追加することと見なすことができる。電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsは反射層から誘電体によって間隔を空けた位置での表面アドミッタンスYaにパターン層のアドミッタンスYpを追加した値となり、式5で表される。
【0015】
【数5】
【0016】
ここで、表面アドミッタンスと表面インピーダンスは互いに逆数の関係にあり、式6および式7で表される。
【0017】
【数6】
【数7】
【0018】
表面アドミッタンスYsは複素数であり、実数部をGs、虚数部をBs、虚数単位をjとすると式8で表すことができる。電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsについて実数部Gsが0.00265Sに、虚数部Bsが0Sに近いほど表面インピーダンスZsが377±j0Ωに近くなり、空間との整合がよくなって反射が小さくなる。
【0019】
【数8】
【0020】
λ/4型の電磁波吸収体では、誘電体表面に抵抗膜が設けられている。誘電体表面位置のアドミッタンスYaは複素数であり、実数部をGa、虚数部をBa、虚数単位をjとすると式9で表すことができる。誘電体の厚みが照射電波波長の1/4に波長短縮率を考慮した厚みのときに誘電体表面位置の表面インピーダンスZaの虚数部Xaが0Ωとなり、表面アドミッタンスYaの虚数部Baが0Sとなる。誘電層の誘電率が小さい場合は、誘電体表面位置の表面アドミッタンスの実部Gaは0Sに近く、表面抵抗率が377Ωの抵抗膜を追加することで、表面アドミッタンスYsの実数部Gsを0.00265Sに近づけられる。
【0021】
【数9】
【0022】
パターン型電磁波吸収体は、導電性パターン体を受信アンテナとして機能させて電磁波を捉え、その捉えた電磁波を導電性パターン体および損失層によって減衰させる。また吸収体は表面で反射する電磁波と一度吸収体内を通過して再放射する電磁波を打消し合うよう干渉させることで、反射を小さくして電磁波を効率よく取り込むように構成されている。また、パターン型電磁波吸収体では電波は反射板と導電性パターン体との間を通過して再放射するので、パターン体の寸法により再放射波の位相を調節できるため薄型化が可能となる。
【0023】
特許文献1〜3に示すように、電磁波吸収体は、パターン層と反射層とその間に設けられる誘電体層とを積層した積層構造を基本構造としている。
【0024】
たとえば特許文献1には一次元導電性線分パターン、不透明電磁波シールド層、および、絶縁性中間材からなる薄型・軽量の電磁波吸収シールド材が提案されている。
【0025】
また特許文献2には容量性のサセプタンスを有する抵抗皮膜を用いた電磁波吸収体であって、抵抗成分のみを有する抵抗皮膜を用いた電磁波吸収体に比べて薄く、且つ容易に設計および製造することのできる電磁波吸収体が提案されている。
【0026】
また特許文献3にはパターン層と損失層とが積層されて電磁波吸収体が構成される薄型の電磁波吸収体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開平9−148780号公報
【特許文献2】特開2005−12031号公報
【特許文献3】特開2008−270793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
単層型の電磁波吸収体では、設計の際に電磁波吸収体の表面インピーダンスZsを誘電体の材料定数と厚みから制御しなければならず、吸収体の厚みを照射電波波長の1/4相当に誘電体の波長短縮率をも考慮して合わせる必要がある。表面インピーダンスZsの虚数部Xsが0となる条件を満たしながら、実数部Raが377Ωに近づくように誘電体の材料定数をあわせる必要があり、電磁波吸収体の設計を行う上での制約が非常に大きいという問題がある。
【0029】
λ/4型の電磁波吸収体では、電磁波吸収体の表面インピーダンスZsについて虚数部Xsは吸収体の厚みで制御でき、実数部Rsは表面抵抗膜の表面抵抗率で制御できるため設計は容易になるが、単層型と同様に吸収体の厚みが照射電波波長の1/4相当必要であるので、低い周波数の電波を吸収させるには電磁波吸収体が厚くなるという問題がある。
【0030】
たとえば特許文献1および3のような表面に導体パターンを有する電磁波吸収体では薄型化が可能である。既存材料に電波吸収特性を持たせる場合、既存材料の表面に薄型電磁波吸収体を設置する構成となるため、既存材料の厚みを電波吸収に利用することができず、電磁波吸収体にはさらなる薄型化が求められる。パターン型電磁波吸収体を薄型化すると導体パターンと金属反射板とが近づく構成となり、導体パターンに対する金属反射板の影響が大きくなって、導体パターンについて吸収体表面を占める導体面積の割合を大きくして強く共振させないと空間との整合が取れなくなる傾向にある。また、強く共振させることによって吸収できる電波の周波数帯域が狭くなるという問題がある。
【0031】
たとえば特許文献2のような容量性のサセプタンスを有する抵抗皮膜を用いた電磁波吸収体は、抵抗成分のみを有する抵抗皮膜を用いたλ/4型の電磁波吸収体に比べて薄く、且つ容易に設計および製造することのできる電磁波吸収体が提案されている。しかしながら、抵抗皮膜の材料によって抵抗皮膜の抵抗成分とサセプタンスの調整は制御が困難であることが予想される。
【0032】
また、電磁波吸収体は、透光性を有さないものが多い。しかしながら、電磁波吸収体の応用範囲は広く、特定の周波数の電磁波は遮蔽したとしても可視光や赤外線などは透過できるほうが好ましい。
【0033】
工場内や倉庫内でパネル体としての電磁波吸収体を設置する場合、電磁波吸収体によって建物内の視認性が低下してしまうので、視認性向上のために可視光を透過できることが好ましい。また、電磁波特性の測定室の壁面に電磁波吸収体を設置する場合、外光は遮断されてしまうため、外光を採り入れるために可視光を透過できることが好ましい。
【0034】
さらに工場内で用いられる多くのセンサは、赤外線センサであり、電磁波吸収体によって赤外線が遮蔽されてしまうと、センサの設置位置が限られ、設備の設置自由度の低下を招くため、赤外線を透過できることが好ましい。
【0035】
本発明の目的は、厚み、材料による制約が少なく、吸収特性の制御が容易で薄型化も可能な電磁波吸収体を提供することである。また、特定の周波数の電磁波を吸収するが、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体、建材、無線通信システムおよび無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、目的周波数の電磁波を遮蔽および吸収する電磁波吸収体において、
導電性材料からなる少なくとも1層以上の反射層と
抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成される少なくとも1層以上のパターン層とを備え、
前記パターン層と、前記反射層とが予め定める間隔を空けて設けられることを特徴とする電磁波吸収体である。
【0037】
また本発明は、前記パターン層と前記反射層との間隔を前記予め定める間隔に規定する絶縁体層をさらに備え、
前記絶縁体層は、複数の誘電体層で構成され、前記複数の誘電体層の厚さの和が、前記予め定める距離と同じであることを特徴とする。
【0038】
また本発明は、前記反射層および前記絶縁体層が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0039】
また本発明は、前記パターン層を支持するための基材をさらに備え、
前記基材と前記反射層との間に空間が形成されることを特徴とする。
【0040】
また本発明は、前記基材と前記反射層とを、前記予め定める間隔を空けて支持する支持体をさらに含むことを特徴とする。
【0041】
また本発明は、前記反射層および前記基材が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0042】
また本発明は、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層の共振周波数をfp、目的周波数をftとすると1/2・ft≦fp≦2・ftの関係にあることを特徴とする。
【0043】
また本発明は、前記導電性パターン体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0044】
また本発明は、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0045】
また本発明は、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0046】
また本発明は、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0047】
また本発明は、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの実数部GpがGp<0.0080Sであることを特徴とする。
【0048】
また本発明は、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの虚数部BpがBp>0Sであることを特徴とする。
【0049】
また本発明は、前記パターン層は、複数の前記導電性パターン体が相互に離間して形成されることを特徴とする。
【0050】
また本発明は、前記導電性パターン体は、端部が開放された線形状に形成される部分を含むことを特徴とする。
【0051】
また本発明は、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に分岐部が形成されることを特徴とする。
【0052】
また本発明は、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に屈曲部が形成されることを特徴とする。
【0053】
また本発明は、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に折り返し部が形成されることを特徴とする。
【0054】
また本発明は、前記パターン層の複数の前記導電性パターン体のうち隣り合う導電性パターン体は、互いに向きを変えて配置されることを特徴とする。
【0055】
また本発明は、前記複数の導電性パターン体は、同一の矩形状に形成され、
隣り合う導電性パターン体は、長手方向が直交するように配置され、
一方の導電性パターン体の長手方向端部が、他方の導電性パターン体の長手方向中央部に近接するように配置されることを特徴とする。
【0056】
また本発明は、前記パターン層と、前記反射層との予め定める間隔は、前記目的周波数における電波の波長をλ、前記パターン層と前記反射層の間の空間を占める物体の比誘電率実数部をεr’、比透磁率実数部をμr’とするとき、前記間隔がλ/(16×(εr’×μr’)0.5)以上であることを特徴とする。
【0057】
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とするパーティションである。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする電波暗箱である。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする建材である。
【0058】
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信システムである。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、目的周波数の電磁波を遮蔽および吸収する電磁波吸収体において、導電性材料からなる少なくとも1層以上の反射層と、抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成される少なくとも1層以上のパターン層とを備え、前記パターン層と、前記反射層とが予め定める間隔を空けて設けられる。
【0060】
これにより、導電性材料からなる反射層を有することで目的周波数の電磁波を反射し、遮蔽することができる。また、抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成されるパターン層を有することで、導電性パターン体において目的周波数の電磁波を受信し、導電性パターン体に電流を誘導した後、ジュール熱によって熱に変換して損失させることができる。また、前記パターン層と前記反射層との間に空けられる間隔によって、電磁波吸収体の表面反射波と再放射波との経路差および位相差を制御することができ、表面反射波と再放射波とが逆相で打ち消し合う条件では、照射電波に電磁波吸収体が共振し、より効率よく電波を熱に変換する。したがって、吸収特性の優れた電磁波吸収体を得ることが可能になる。
【0061】
また本発明によれば、前記パターン層と前記反射層との間隔を前記予め定める間隔に規定する絶縁体層をさらに備え、前記絶縁体層が少なくとも1層以上の誘電体層から構成され、前記誘電体層の厚さの和が、前記間隔と同じであることを特徴とする。
【0062】
これにより、既存材料である誘電体層に電波遮蔽機能を有する前記反射層および電波吸収機能を有する前記パターン層とを追加することで、前記既存材料に電磁波吸収体としての機能を追加することが可能になる。また、誘電率の大きな誘電体中は電波の伝搬速度が遅いため前記間隔を薄くすることが可能になる。
【0063】
また本発明によれば、前記反射層および前記絶縁体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0064】
これにより、前記反射層および前記絶縁体が透光性を持ち、パターン層は、少なくとも導電性パターン体が形成されていない領域において、可視光および赤外線の透過性を有するので、可視光および赤外線の透過性を有する電磁波吸収体を得ることが可能になる。
【0065】
また本発明によれば、前記パターン層を支持するための基材がさらに設けられ、前記基材と前記反射層との間に空間が形成されることを特徴とする。
【0066】
これにより、誘電材料を用いて前記パターン層と前記反射層との間の間隔を設けた構成よりも軽量な電磁波吸収体を提供することが可能になる。
【0067】
また本発明によれば、前記基材と前記反射層とを、前記予め定める間隔を空けて支持するための支持体をさらに含むことを特徴とする。
【0068】
これにより、前記基材の位置がより精度良く固定でき、前記パターン層と前記反射層との間隔を安定させることが可能になる。
【0069】
また本発明によれば、前記反射層および前記基材が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0070】
これにより、前記反射層および前記基材が透光性を持ち、前記パターン層のパターン体の導体には隙間があるため、全体として透光性を有する電磁波吸収体を得ることが可能になる。
【0071】
また本発明によれば、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層の共振周波数をfp、目的周波数をftとすると1/2・ft≦fp≦2・ftの関係にあることを特徴とする。
【0072】
これにより、前記パターン層の共振周波数付近の周波数の電波においては前記導電性パターン体に強い電流が誘導されやすくなり、抵抗損失を持つ前記導電性パターン体に強い電流が流れることにより電波のエネルギー損失を大きくさせることが可能になる。
【0073】
また、これにより、前記導電性パターン体に強い電流が誘導され、誘導された電流から電波が放射される。前記導電性パターン体からの放射電波の一部は表面反射波となり、残りは照射電波と合成されて透過波となる。透過波は反射層で反射され、前記パターン層をさらに透過したものについては再放射波として電磁波吸収体から再放射される。照射電波の周波数と前記パターン層の共振周波数fpが同じ場合は、照射電波と放射電波の電界向きは逆(位相差180°)であるが、照射電波の周波数と前記パターン層の共振周波数fpが異なる場合は放射電波の位相がずれる。照射電波の周波数が前記パターン層の共振周波数fpよりも低い場合は、前記導電性パターン体の寸法が共振寸法より短くなるため、前記導電性パターン体から放射される電波の位相が進み、前記パターン層で反射する電波の位相も進む。前記パターン層を透過する電波については、前記導電性パターン体から放射される電波と照射電波との合成波であるため位相が遅れる。よって、電磁波吸収体の表面反射波の位相が進み、再放射波の位相が遅れることになる。照射電波の周波数が前記パターン層の共振周波数fpよりも高い場合は、表面反射波の位相が遅れ、再放射波の位相が進む。したがって、本発明によれば、前記パターン層により電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の位相を制御することが可能になる。
【0074】
したがって、前記導電性パターン体の形状および表面抵抗率により、前記導電性パターン体に誘導される電流を制御することができ、照射電波に対する前記パターン層での反射、透過および損失量を制御でき、電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の強度および位相を制御することが可能になる。言い換えると、前記パターン層によって電磁波吸収体の表面インピーダンスZsの実数部Rsのみでなく虚数部Xsも制御することが可能となる。したがって、前記パターン層と前記反射層との間隔が照射電波の波長の実効長の1/4相当でなくても照射電波と共振する、吸収特性の優れる電磁波吸収体を提供することができ、電磁波吸収体の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0075】
また本発明によれば、前記パターン層の前記パターン体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
これにより、透光性がさらに優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0076】
このような構成により、特定の周波数の電磁波を吸収することができ、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体が得られる。
【0077】
また本発明によれば、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成され、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0078】
これにより、吸収特性が−6dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0079】
また本発明によれば、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成され、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0080】
これにより、吸収特性が−10dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0081】
また本発明によれば、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成され、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0082】
これにより、吸収特性が−15dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0083】
また本発明によれば、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、前記パターン層の前記目的周波数におけるアドミッタンスYpの実数部GpがGp<0.0080Sであることを特徴とする。
【0084】
これにより、パターン体での抵抗損失が大きくなり、吸収特性が−6dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0085】
また本発明によれば、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bpで表したとき、前記パターン層の前記目的周波数におけるアドミッタンスYpの虚数部BpがBp>0Sであることを特徴とする。
【0086】
これにより、前記パターン層により電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsの虚数部Bsを大きくすることができる。前記パターン層と前記反射層の間の前記間隔がλ/4相当より近くなると、前記反射層から前記間隔だけ離れた位置での表面アドミッタンスYaの虚数部Gaが負になり、間隔が狭くなるとGaがさらに小さくなる。パターン層のアドミッタンスYpの虚数部Bsを大きくすることで、厚みが小さくても表面アドミッタンスYsの虚数部Bsを共振条件の0Sに近づけることが可能となり、電磁波吸収体の薄型化が可能となる。
【0087】
また本発明によれば、前記パターン層は、複数の前記導電性パターン体が相互に離間して形成されることを特徴とする。
【0088】
これにより、パターン層は、少なくとも導電性パターン体が形成されていない領域において、可視光および赤外線の透過性を有する電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0089】
また本発明によれば、前記導電性パターン体は、端部が開放された線形状に形成される部分を含むことを特徴とする。
【0090】
これにより、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層により電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の位相を制御することが可能になる。
【0091】
また本発明によれば、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に分岐部が形成されることを特徴とする。
【0092】
これにより、分岐部を挟む両側の線形状部分の向きが変わることで照射電波の偏波に対するパターン層の効果の依存性を低減することが可能である。
【0093】
また本発明によれば、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に屈曲部が形成されることを特徴とする。
【0094】
これにより、共振周波数を変えずに導電性パターン体の寸法を小型化することができる。単位面積あたりの導電性パターン体の数が増えることにより、電磁波吸収体の寸法を変更したときの性能差を小さくすることが可能になる。また、照射電波の送信源からの距離に対する導電性パターン体の寸法比が小さくなるので、球面波の照射電波を当てたときの性能の変化を小さくすることが可能である。
【0095】
また本発明によれば、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に折り返し部が形成されることを特徴とする。
【0096】
これにより、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bpで表したとき、前記パターン層の前記目的周波数におけるアドミッタンスの虚数部Bpが大きくなるので吸収体の薄型化が可能となる。
【0097】
また本発明によれば、前記パターン層の複数の前記導電性パターン体のうち隣り合う導電性パターン体は、互いに向きを変えて配置されることを特徴とする。
【0098】
これにより、線形状部分の向きが変わることで照射電波の偏波に対するパターン層の効果の依存性を低減することが可能である。
【0099】
また本発明によれば、前記複数の導電性パターン体は、同一の矩形状に形成され、隣り合う導電性パターン体は、長手方向が直交するように配置され、一方の導電性パターン体の長手方向端部が、他方の導電性パターン体の長手方向中央部に近接するように配置されることを特徴とする。
【0100】
これにより、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層により電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の位相を制御することが可能になる。また、線形状部分の向きが変わることで照射電波の偏波に対するパターン層の効果の依存性を低減することが可能である。
【0101】
また本発明によれば、前記パターン層と、前記反射層との間隔について、前記目的周波数における電波の波長をλ、前記パターン層と前記反射層の間の空間を占める物体の比誘電率実数部をεr’、比透磁率実数部をμr’とするとき、前記間隔がλ/(16×(εr’×μr’)0.5)以上であることを特徴とする。
【0102】
これにより、前記パターン層に誘導される電流と前記反射層に誘導される電流の干渉が少なくなるため、前記パターン体の寸法による前記パターン層のアドミッタンスYpの制御が容易となる。
【0103】
これにより、電波暗箱の出入り口に設置可能な電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0104】
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いたパーティションを提供することが可能となる。
【0105】
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた電波暗箱を提供することが可能となる。
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた建材を提供することができる。
【0106】
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた無線通信システムを提供することができる。
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた無線通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態である電磁波吸収体1の構成を示す断面図である。
【図2】導電性パターン体5の形状および配置の一例を示す平面図である。
【図3】導電性パターン体5の形状および配置の他の例を示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態である電磁波吸収体10の構成を示す断面図である。
【図5】マルチゲートシステム70を示す概略図である。
【図6】実施例1および比較例1,2の吸収特性を示す図である。
【図7】実施例1の表面アドミッタンスYsを示す図である。
【図8】反射層からλ/8(39.32mm)の間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaを示す図である。
【図9】実施例1のパターン層によるアドミッタンスYpを示す図である。
【図10】実施例2の吸収特性を示す図である。
【図11】実施例2の表面アドミッタンスYsを示す図である。
【図12】反射層から30mmの間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaを示す図である。
【図13】実施例2の表面アドミッタンスYsを示す図である。
【図14】実施例3の吸収特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、本発明の第1実施形態である電磁波吸収体1の構成を示す断面図である。
電磁波吸収体1は、パターン層2と、反射層3と、パターン層2と反射層3との間に介在して設けられる絶縁体層4とを含む。
【0109】
パターン層2は、導電性材料から成る複数の導電性パターン体5を含んで構成され、これら複数の導電性パターン体5は、相互に離間して形成される。反射層3は、導電性材料から形成される。
【0110】
絶縁体層4は、パターン層2と反射層3との間に設けられ、この絶縁体層4によってパターン層2と反射層3とが予め定める間隔Tを空けて設けられる。パターン層2と反射層3との間隔は、たとえば、電磁波吸収体1が吸収しようとする電磁波(以下では「吸収電磁波」という)の波長の1/16以上、特に波長の1/8から3/8に設定される。
【0111】
図2は、導電性パターン体5の形状および配置の一例を示す平面図である。
導電性パターン体5は、図2に示すように同一の矩形状に形成される。矩形状の導電性パターン体5の長手方向長さ(以下では、単に「長さ」ともいう)をL、短手方向長さ(以下では、「幅」ともいう)をWとする。また隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bの距離をDとする。
【0112】
導電性パターン体5の長さLは、電磁波吸収体1が照射電波に共振するように設定される。後で詳しく述べるが、電磁波吸収体1の共振周波数はパターン層2と反射層3との間隔Tと、導電性パターン体5の長さLとによって決まり、吸収電磁波の周波数が950MHzで間隔Tが78.8mmの場合は、Lは150〜165mmに設定され、間隔Tが39.4mmの場合は、Lは110〜140mmに設定される。
【0113】
また、導電性パターン体5の幅Wは、導電性パターン体5に誘導される電流量を調節して損失が最大になるように設定され、たとえば、導電性パターン体5の表面抵抗率が10Ω/□の場合は幅Wを2〜10mmに設定する。
【0114】
また、導電性パターン体5の表面抵抗率を小さくすれば導電性パターン体5の幅Wを細くできるが、導電性パターン体5の幅Wの加工精度が要求されるため、導電性パターン体5の表面抵抗率を1〜100Ω/□にし、幅Wが数mm程度とすることが好ましい。
【0115】
図2に示すように、隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bは、長手方向が直交するように配置され、一方の導電性パターン体5aの長手方向端部が、他方の導電性パターン体5bの長手方向中央部に近接するように配置される。
【0116】
隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bは、パターン層2の全体にわたってこのような配置関係で配置される。
【0117】
したがって、パターン層2には、導電性パターン体5a,5bが設けられていない領域2aが存在し、この領域2aは、可視光および赤外線を透過させる透光領域となる。透光領域2aは、がマトリクス状に配置されることになる。一辺の長さXは、X=(L−W)/2+Dで表わされる。
【0118】
長さLは、吸収電磁波の波長によって決まる長さであるから、吸収電磁波の周波数が高くなる、すなわち波長が短くなるとLが短くなるので、Xが小さくなり透光領域2aの大きさが小さくなる。その場合は、Dを大きくすることによって透光領域2aの大きさを所望の透光性を有する程度の大きさとすることができる。
【0119】
ここで、所望の透光性としては、パターン層2の開口率によって設定することができる。開口率は、たとえば、一辺の長さがXである正方形状の透光領域2aを開口とし、導電性パターン体5を遮光部分とすると、単位面積に占める透光領域2aの面積割合(%)で求められる。先に述べたように、導電性パターン体5の表面抵抗率を小さくすればパターン体の幅Wを細くできて開口率を大きくすることが可能であるが、加工精度を考慮するとパターン体の幅Wは数mm程度が好ましい。所望の透光性を得るための好ましい開口率としては、70%〜95%である。
【0120】
一例として、導電性パターン体5の長さL=125mm、幅W=4mm、隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bの距離D=4mmとしたときの開口率は、およそ90%となる。
【0121】
このように、パターン層2は、複数の導電性パターン体5が、相互に離間して形成されることによって透光性を有する。
【0122】
また、図3の平面図に示す例のように、導電性パターン体5a,5bには分岐部や屈曲部や折り返し部があっても良い。この例では、長手方向が直交するように配置され、一方の導電性パターン体5aの長手方向端部が、他方の導電性パターン体5bの長手方向中央部に近接するように配置される。
【0123】
パターン体に屈曲部や折り返し部を有することでパターン体形状を小型化することができる。また、分岐部を設けることにより、パターン体に誘導される電流経路が増えるので、吸収帯域を増やしたり、パターン層2によるアドミッタンスYpの制御できる範囲を増やしたりできるため電磁波吸収体1を薄型化することも可能となる。
【0124】
第1実施形態では、パターン層2は、絶縁体層4を基材として絶縁体層4の表面に複数の導電性パターン体5を形成してもよく、絶縁体層4とは別にパターン層2を構成する基材を用いて、この基材表面に複数の導電性パターン体5を形成してもよい。絶縁体層4およびパターン層2を構成する基材は、絶縁体であれば無機材料、有機材料を問わずどのような材料であっても良いが、電磁波吸収体に透光性を持たせる場合はいずれも透明部材である必要がある。本発明における透明部材とは、可視光および赤外線に対して透明、すなわち可視光および赤外線の透過性を有するものである。
【0125】
導電性パターン体5は、所望する表面抵抗率が得られていれば材料は問わない。たとえば金属粒子などの導電フィラーを含んだ導電性インクを印刷したり、金属箔を転写したりするなどして形成することができ、金属としては、金、銀、銅、アルミニウムなどを用いることができる。表皮厚よりも小さな厚みであれば、導電性パターン体5の表面抵抗率は材料の体積抵抗率と厚みにより決まり、厚みを薄くすれば表面抵抗率が高くなるので、金属のような導電率が高い材料でも蒸着膜などの薄膜であれば損失の大きな導体として用いることができる。また、銀ナノワイヤーを含有するインクやITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜によって導電性パターン体5を形成してもよい。
【0126】
導電性パターン体5が絶縁体層4の表面に設けられる場合は、導電性パターン体5が他の部材などと接触するおそれがあるので、導電性パターン体5を被覆し、損傷から保護するための保護膜を設けることが好ましい。
【0127】
反射層3は、導電率の高い材料により構成され、機能上はパターン層2から入射する電磁波を反射するように構成されればよい。反射層3が、メッシュ状に構成されたり透明導電膜により構成されたりすることでメッシュの開口を可視光および赤外線が透過し、反射層3としては透光性を有することになる。
【0128】
反射層3は、たとえば、金属製繊維を網目状に編み込んだもの、化学繊維を網目状に編み込み、表面に金属塗料を塗布したものなど、上記の構造および機能を有するものであれば用いることができる。
【0129】
また、反射層3は上記のようなメッシュ部材のみで構成されていてもよく、パターン層2と同様に、透明基材上にメッシュ部材を設けた構成であってもよい。
【0130】
反射層3の一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の繊維(直径40μm)に銅メッキを行い、さらに黒色塗料を塗布して可視光の反射を低減したものを網目状に編み込んだメッシュ部材(開口率72%)を使用することができる。
【0131】
絶縁体層4は、誘電体層などの絶縁部材で構成される。絶縁体層4は、入射した電磁波をその内部で熱変換させるような損失材としての機能は必須ではない。たとえば、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機誘電材料や、セラミックや石膏などの無機誘電材料などを用いることができる。電磁波吸収体に透光性を持たせる場合、絶縁体層4が透明部材であればよいので、たとえば、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂などの透光性の有機材料や、石英や硝子などの透光性の無機材料などを用いることができる。
【0132】
絶縁体層4としては、その厚さが電磁波吸収体の共振周波数に影響するので重要であり、吸収電磁波の波長の1/16以上で特に1/8から3/8に設定される。絶縁体層4の一方面に設けられるパターン層2と他方面に設けられる反射層3との間隔Tは、絶縁体層4の厚みによって規制され、その間隔を吸収電磁波の波長の1/16以上に容易に設定することができる。
【0133】
本発明の電磁波吸収体1の特徴は、電磁波吸収体1全体として吸収電磁波に対する無反射条件を満たすことである。無反射条件は、電磁波吸収体1のパターン層2における導電性パターン体5の表面インピーダンスが377+j0Ωとなることである。このようなインピーダンスに整合できれば、吸収電磁波が無反射となり優れた電磁波吸収性能を発揮する。
【0134】
導電性パターン体5の表面インピーダンスが377+j0Ωであることは、言い換えれば、導電性パターン体5の表面アドミッタンスが0.0027+j0Sであることである。ここで、単位Sは「ジーメンス」である。すなわち、吸収電磁波に対するアドミッタンスの実部が0.0027S、虚部が0となるように電磁波吸収体1が構成されればよい。
【0135】
アドミッタンスは、パターン層2の構成、反射層3の構成およびパターン層2と反射層3との間隔によって規定される。パターン層2の構成としては、導電性パターン体5の形状、大きさ、面積が挙げられる。ここで、面積は上記の開口率に変換することができる。反射層3は、吸収電磁波を、パターン層2に臨む表面で反射できればよいが、本発明においては、透光性を備えた上で吸収電磁波を反射可能な構成とする必要がある。
【0136】
パターン層2と反射層3との間隔は、吸収電磁波の波長の1/16以上、特に波長の1/8から3/8であることが好ましく、1つの目安とはなるがパターン層2および反射層3の構成によっては、λ/8よりも薄くすることも可能である。
【0137】
電磁波吸収体1は、外部から到来する電磁波のうち、パターン層2側から入射する電磁波を内部に取り込み、反射層3で反射させ、パターン層2の導電性パターン体5で共振させて、導電性パターン体5によって導体損失を生じさせる。これにより特定の周波数を有する電磁波を吸収することができる。
【0138】
アドミッタンスは、次のようにして実験的に測定することができる。詳細は、長野、“円形金属パターンを表面層に用いたITS用薄形電波吸収体”、塗料の研究、No.140、p29−34、2003年5月に記載されている。
【0139】
金属板上に基材を設け、その入力インピーダンスをZaとし、基材表面に金属パターン層を設けその入力インピーダンスをZsとする。金属パターン層は、負荷Zaに対して並列にアドミッタンスYpを接続することになるので、ZaおよびZsを測定すればアドミッタンスYpを算出することができる。具体的には、測定したインピーダンスZaおよびZsから、それぞれの逆数であるアドミッタンスYa(=1/Za)およびYs(=1/Zs)を算出し、Yp=Ys−Yaで算出することができる。
【0140】
ここで、本発明の電磁波吸収体1では、金属板が反射層3に相当し、基材が絶縁体層4に相当し、金属パターン層がパターン層2に相当するので、電磁波吸収体1に対してアドミッタンスを測定することができる。
【0141】
パターン層2の構成、反射層3の構成およびパターン層2と反射層3との間隔を変化させながら、上記の測定方法でアドミッタンスを測定し、実部が0.0027S、虚部が0となるように各構成を決定する。
【0142】
詳しく述べると、導電性パターン体5の長さLにより、パターン層2の共振周波数が決定される。パターン層2の共振周波数において、パターン層2によるアドミッタンスYpの実数部Gpが最大となる。パターン層2によるアドミッタンスYpの虚数部Bpはパターン層2の共振周波数よりも低い周波数帯域ではBp>0Sとなり、高い周波数帯域ではBp<0Sとなる。電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsは、パターン層2の設置位置でのアドミッタンスYaとパターン層2のアドミッタンスYpの合計で表される。パターン層2の設置位置でのアドミッタンスYaは反射板からの間隔Tが波長の1/2よりも小さい領域において、間隔Tが大きくなると増大する傾向にあり、アドミッタンスYaの虚数部Baは間隔Tが波長の1/4相当の長さよりも小さい場合はBa<0Sとなり、波長の1/4相当の長さより大きい場合はBa>0Sとなる。電磁波吸収体が照射電波と共振するのは電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsの虚数部BsがBs=0Sのときであり、パターン層2と反射層3との間隔Tが1/4相当の長さに近い場合は、導電性パターン体5の長さLを波長の1/2相当に近づけると良い。パターン層2と反射層3との間隔Tが1/4相当の長さより小さくなる場合は、パターン体5の長さLを波長の1/2相当より短くして表面アドミッタンスYsの虚数部Bsを大きくして0Sに近づけると良い。逆に間隔が波長の1/4相当の長さより大きくなる場合は、導電性パターン体5の長さLは波長の1/2相当よりの長さより大きくする方が良い。
【0143】
また、導電性パターン体5の幅Wを太くしたり表面抵抗率を小さくしたりすると導電性パターン体5に電流が流れやすくなり、パターン層2によるアドミッタンスYpの実数部Gpが大きくなる傾向にある。パターン層2の設置位置でのアドミッタンスYaの実数部Gaは反射層3からの間隔Tが波長の1/2以外の領域においてはGa≒0であり、表面アドミッタンスYsの実数部Gsはパターン層2によるアドミッタンスYpの実数部Gpとほぼ等しくなる。したがって、間隔Tと導電性パターン体5の長さL、幅W、表面抵抗率によって電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsを制御することができ、中でも導電性パターン体5の長さL、幅Wの寸法によって表面インピーダンスYsが制御可能であるので制御が行いやすい。
【0144】
以上のように、電磁波吸収体1は、パターン層2により表面アドミッタンスYsを制御できるので、厚みおよび材料による制約が少なく、吸収特性の制御が容易で薄型化も可能な電磁波吸収体が得られる。また、これを構成する各層が全て可視光および赤外線に対する透光性を持たせることで、特定の周波数の電磁波を吸収することができ、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体1が得られる。
【0145】
また電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成し、表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成することが好ましい。これにより、吸収特性が−6dBより優れる電磁波吸収体を提供することができる。
【0146】
また電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成し、虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成することがさらに好ましい。これにより、吸収特性が−10dBより優れる電磁波吸収体を提供することができる。
【0147】
また電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、の実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成し、虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成することが最も好ましい。これにより、吸収特性が−15dBより優れる電磁波吸収体を提供することができる。
【0148】
図4は、本発明の第2実施形態である電磁波吸収体10の構成を示す断面図である。
電磁波吸収体10は、パターン層12と、反射層13と、パターン層12と反射層13とを、予め定める間隔を空けて支持する枠体14とを含む。本実施形態は、図1に示した第1実施形態とは異なり、パターン層12と反射層13との間には、空間15が形成される。
【0149】
パターン層12は、透明基材16と導電性パターン体17とで構成され、透明基材16の表面に、導電性パターン体17が形成される。導電性パターン体17は、第1実施形態の導電性パターン体5と同じである。
【0150】
基材16は絶縁材料であればどのようなものでも良く、たとえば、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機材料や、セラミックや石膏などの無機材料などを用いることができる。また、電磁波吸収体10に透光性を持たせる場合は、基材16は、可視光および赤外線が透過する材質であればどのような材質でも用いることができ、たとえば、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂などの透光性の有機材料や、石英や硝子などの透光性の無機材料を用いることができる。
【0151】
本実施形態では、導電性パターン体17は、反射層13と対向する面、すなわち透明基材16の空間15に臨む面に設けられる。導電性パターン体17が空間15に臨む面に設けられることで、導電性パターン体17が露出しないので、他の部材との接触などを防止することができる。第1実施形態では、保護膜などが必要であったが、本実施形態では、導電性パターン体17が露出しないので、保護膜も不要である。
【0152】
反射層13は、透明基材18と導電部材19とで構成され、透明基材18の表面に、導電部材19が設けられる。導電部材19は、第1実施形態の反射層3に相当する。また、電磁波吸収体1に透光性を持たせる場合は、導電部材19がメッシュ状に構成または透明導電膜から構成され、透明基材18が透明材料から構成されることで、反射層13に透光性を持たせることが望ましい。
【0153】
透明基材18は、パターン層12の透明基材16と同様に、絶縁材料であればどのようなものでも良く、たとえば、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機材料や、セラミックや石膏などの無機材料などを用いることができる。また、電磁波吸収体1に透光性を持たせる場合は、透明基材18は可視光および赤外線が透過する材質であればどのような材質でも用いることができ、たとえば、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂などの透光性の有機材料や、石英や硝子などの透光性の無機材料を用いることができる。
【0154】
本実施形態では、導電部材19は、パターン層12と対向する面、すなわち透明基材18の空間15に臨む面に設けられる。導電部材19が空間15に臨む面に設けられることで、導電部材19が露出しないので、他の部材との接触などを防止することができる。
【0155】
枠体14は、パターン層12と反射層13とを、予め定める間隔である吸収電磁波の波長の1/16以上空けて支持することができるものであればよく、材質は特に限定されない。たとえば、アルミニウム製フレームなどを用いることができる。
【0156】
枠体14は、パターン層12と反射層13の外周の一部または全部を支持する支持体であり、パターン層12と反射層13とを、吸収電磁波の波長の1/16以上空けて支持することができるものであればよい。上記のように、パターン層12と反射層13とは、それぞれ透明基材16および透明基材18を有しているので枠体14は、これら透明基材16および透明基材18を支持すればよい。
【0157】
枠体14として軽量の材質を用いれば、絶縁体層4を用いない分、第2実施形態の電磁波吸収体10のほうが第1実施形態の電磁波吸収体1よりも軽量化することが可能である。特に面積の広い壁面材などに使用する場合は、第2実施形態の電磁波吸収体10を採用するほうが好ましい。
【0158】
また電磁波吸収体1,10は、難燃性、準不燃性または不燃性を有している。難燃性としてはUL94V0の評価を得ることが目安である。電磁波吸収体1,10の用途は限定されないが、たとえば建材の構成部材として用いられる。難燃性、準不燃性または不燃性を有する電磁波吸収体1,10は、好適に建材を構成することができる。建材は、建築物を建立するために用いられる素材であり、たとえば内装材、壁材、床材、衝立材、天板材、表面材である。電磁波吸収体1,10に、難燃性、準不燃性、または不燃性を付与するにあたっては、電磁波吸収体1,10に、たとえば難燃剤または難燃助剤が添加される。難燃剤または難燃助剤は、たとえば誘電体層、透明基材16,18などに添加される。
【0159】
難燃剤としては、公知なものを単独またはブレンドして用いることができる。難燃剤としては、たとえば燐化合物系難燃剤、ホウ素化合物、ハロゲン系難燃剤、亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤および水酸化物系難燃剤を用いることができる。燐化合物系難燃剤としては、燐酸エステルなどが挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤などが挙げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。窒素系難燃剤としては、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、メラミン系化合物が挙げられる。水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また難燃助剤としては、カーボンブラック、脂肪酸金属塩などを用いることができる。これらの難燃剤および難燃助剤を用い、UL94V0などの難燃性を達成すべく配合設計する。
【0160】
さらに、電磁波吸収体1,10は無線通信システムとして、特に物流システムなどにおいて、たとえば倉庫出入り口などで製品の出入りを管理するためのマルチゲートシステムに適用される。
【0161】
図5は、マルチゲートシステム70を示す概略図である。マルチゲートシステム70は、UHF帯の周波数を用いた無線通信により、製品80に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート71と、ゲート71間に設置される電磁波吸収パーティションボード50とから構成される。ゲート71間に電磁波吸収パーティションボード50を設置することで、隣接するゲートから照射される情報読み取りのための電磁波による電波干渉を抑制することができる。
【0162】
電磁波吸収パーティションボード50は、電磁波吸収体1,10を使用し、電磁波吸収体1,10にパーティションボードの構成としての脚部などを取り付けることで実現できる。特に、第2実施形態の電磁波吸収体10は、枠体14を備えているので、枠体14に脚部を容易に取り付けることができ、好ましい。
【0163】
電磁波吸収パーティションボード50を設置しない場合、隣接するゲート71からの電磁波を受けてしまい、本来のゲート71で読み取るべきICタグと無線通信できなくなってしまう。さらには、隣接のレーンを通過するICタグを読み取ってしまうなど、誤検出が発生する。これらに対し、電磁波吸収パーティションボード50を設置することにより、電磁波吸収体の吸収機能及び遮蔽機能により、各レーン内の電磁波環境を安定化させることができ、全てのゲート71がICタグを正常に読み取ることができた。
【0164】
このような適応例以外にも、オフィスなどの電磁波環境空間の形成する床材、壁材、天井材として、あるいは家具や事務機器の金属面の被覆材として、あるいは衝立等として、本発明に従う電磁波吸収体を配置することにより、電磁波環境の改善を行う。具体的には、自波干渉や他波干渉による電子機器(医療用機器)の誤動作防止、人体保護、および伝送遅延対策や電磁波通信環境の保全対策である。そして電磁波環境については、オフィスだけではなく、倉庫、物流センター、配送センター、運送設備、コンテナ、家庭内、病院、コンサートホール、工場、研究施設、駅舎、展示場、道路側壁等の屋外施設等でも利用できる。それぞれ想定できる環境での壁、床、天井、柱、パネル、広告板、スチール製品等において、必要とされる箇所ごとに利用できる。
【実施例】
【0165】
以下、電磁界シミュレーションによる実施例について説明する。電磁波吸収体に対して電磁波を垂直に照射したときの反射特性について、CST社の電磁界解析ソフトMicro−stripesを用いてTLM法( Transmission Line Matrix:伝送線路行列法)にて評価した。
【0166】
(実施例1)
アルミニウム(導電率3.54e7S/m)からなる反射層3から、39.32mm距離を空けてパターン層2を設置、パターン層2の導電性パターン体5の形状は図2に示す形状で寸法はL=125mm、W=4mm、D=4mm、パターン層2の表面抵抗率は10Ω/□(導電率1000S/m、導体厚0.1mm)とした。
【0167】
(比較例1)
アルミニウムからなる反射層3から、78.64mm距離を空けて抵抗皮膜層を設置、導電被膜層の表面抵抗率は377Ω/□(導電率26.5S/m、導体厚0.1mm) とした。
【0168】
(比較例2)
アルミニウムからなる反射層3から、39.32mm距離を空けて抵抗皮膜層を設置、導電被膜層の表面抵抗率は377Ω/□とした。
【0169】
本発明の構成を有する実施例1では、電磁波吸収体の厚み寸法が39.32mmで、950MHzの波長に対して約1/8であり、λ/4型電磁波吸収体と比較すると厚みが約半分の電磁波吸収体が得られた。実施例1と同じ吸収帯域を持ち、厚みが78.64mmのλ/4型吸収体を比較例1に、実施例1と同じ厚みのλ/4型吸収体を比較例2として挙げた。吸収特性について表1および図6に示す。
【0170】
実施例1では967MHzに吸収ピークを持ち950MHzでの吸収特性が−22.42dBであった。比較例1では949MHz付近に吸収ピークを持ち、950MHzにおける吸収特性として−49.45dBが得られたが、電磁波吸収体の厚みが78.64mmと厚かった。比較例2のように厚みを半分にすると共振周波数が1.908GHzにシフトしてしまい、950MHz付近の吸収特性が−7.01dBに低下した。
【0171】
実施例1の電磁波吸収体の反射率から表面インピーダンスZsを算出し、逆数をとって表面アドミッタンスYsを算出したところ、図7に示すような結果が得られた。パターン層2を取り除いたモデルの表面アドミッタンスYaについても同様に反射率から算出したところ、図8に示すような結果が得られた。YsからYaを引いてパターン層のアドミッタンスYpの変化を算出したところ、図9に示すような結果が得られた。図8から、反射層から39.32mm間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaは950MHzにおいて、Ya≒0−j0.00267Sであることが確認でき、無反射条件は表面アドミッタンスYsがYs=0.00265±j0Sであるので、パターン層のアドミッタンスYpをYp≒0.00265+j0.00267Sに近づけると電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsは無反射条件に近づき、吸収特性が向上すると考えられる。
【0172】
実施例1では、図9に示すように、パターン層のアドミッタンスYpの実数部Gpがパターン層の共振周波数で極大値をとり、虚数部Bpは共振周波数よりも低周波数側でBp>0Sとなり、高周波数側でBp<0Sとなる現象を利用して、パターン層のアドミッタンスYpが目的の値に近づくよう調整を行った。導電性パターン体5の長さLを125mmとすることで、パターン層の共振周波数を1.2GHz付近に合わせ、パターン層のアドミッタンスYpの虚数部Bpが950MHz付近で極大値をとるように調整した。また、導電性パターン体5の幅Wを4mmとすることで、パターン層のアドミッタンスYpの実数部のピークを0.0045S付近に調節し、950MHz付近のパターン層のアドミッタンスYpが目標値に近づくよう調整した。
【0173】
【表1】
【0174】
(実施例2)
アルミニウムからなる反射層から、30mmの距離を空けてパターン層2を設置し、パターン層2の導電性パターン体5の形状は、図3に示す形状で、寸法はL1=64mm、L2=20mm、L3=15mm、W1=2mm、W2=5mm、W3=3mm、D=4mm、パターン層の表面抵抗率を10Ω/□とした。
【0175】
本発明の構成を有する実施例2では、電磁波吸収体の厚み寸法が30mmとなっており、実施例1よりも薄型化が可能となった。実施例2の電磁波吸収体の吸収特性について表2および図10に示す。
【0176】
実施例2では939MHzに吸収ピークを持ち950MHzでの吸収特性が−22.60dBであった。
【0177】
実施例2についても電磁波吸収体の反射率から表面インピーダンスZsを算出し、逆数をとって表面アドミッタンスYsを算出したところ、図11に示すような結果が得られた。パターン層2を取り除いたモデルの表面アドミッタンスYaについても同様に反射率から算出したところ、図12に示すような結果が得られた。YsからYaを差し引いてパターン層のアドミッタンスYpの変化を算出したところ、図13に示すような結果が得られた。図12から、反射層から30mm間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaは950MHzにおいて、Ya≒0−j0.00390Sであることが確認でき、薄型化によってアドミッタンス虚数部Baが小さくなった。無反射条件は表面アドミッタンスYsがYs=0.00265±j0Sであるので、パターン層のアドミッタンスYpの目標値はYp≒0.00265+j0.00390Sとなり、アドミッタンスYpの虚数部Bpを大きくする必要がある。
【0178】
実施例2では、導電性パターン体5が分岐部や折り返し部分を有しており、電磁波吸収体の向きを変えると1GHz付近と2.3GHz付近の2つの異なる周波数で共振し、パターン層のアドミッタンスYpは図13に示すように、2つの共振モードが合成されたアドミッタンスとなった。導電性パターン体5の寸法を調節することで、低周波数側の共振モードを制御してアドミッタンスYpの虚数部Bpが950MHz付近で極大値をとるように調整した。共振モードを制御してアドミッタンスYpの虚数部Bpを大きくして、パターン層のアドミッタンスYpが目的の値に近づくよう調整を行った。
【0179】
【表2】
【0180】
以下、フリースペース法による実施例について説明する。フリースペース法は、自由空間に置かれた測定試料である電磁波吸収体に平面波を照射し、そのときの反射係数を得る測定方法である。金属板(SUS板)での反射係数を基準(0dB)とした場合の反射係数を評価した。入射角を10°としてTE波、TM波についてそれぞれ測定を行った。使用した測定機器は、ベクトルネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製、商品名8720ES)であり、アンテナはダブルリジッドアンテナ(ローデアンドシュワルツ社製、商品名HF906)である。電磁波吸収体1である測定試料の矩形の各辺のサイズは900×900(mm)である。
【0181】
(実施例3)
SUS板からなる反射層から、発泡スチロールにより49.8mm距離を空けてパターン層2を設置しさらに3mmの透明アクリル板を上に重ねた。パターン層の導電性パターン体5は表面抵抗率が11Ω/□となる厚み180Åのアルミ蒸着フィルムを、30μm厚のPETフィルムを基材とするアクリル系両面粘着フィルムに転写し厚み100μmのPETフィルムに貼り付けて配置した。導電性パターン体の形状は図2に示す形状であり、寸法はL=130mm、W=6mm、D=4mmとした。
【0182】
実施例3の構成の電磁波吸収体では、表3および図14に示すように、850〜950MHzの周波数帯域においてTE波およびTM波いずれも−15dBよりも優れる吸収特性が得られた。
【0183】
【表3】
【符号の説明】
【0184】
1,10 電磁波吸収体
2,12 パターン層
3,13 反射層
4 誘電体層
5,17 導電性パターン体
14 枠体
16,18 基材
19 導電部材
50 電磁波吸収パーティションボード
70 マルチゲートシステム
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を捉えて、吸収する電磁波吸収体、パーティション、電波暗箱、建材、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を用いる無線LAN(Local Area Network)を構築し、通信端末装置としてのコンピュータ間で無線通信する通信システムが利用されている。またFWA(Fixed
Wireless Access)と呼ばれる広域ネットワークに、通信端末装置が無線通信可能に接続される通信システムが利用されている。さらにZigbeeやBluetoothになどに代表される通信規格によって無線通信するWPAN(Wireless Personal Area Network
)を構築し、通信端末装置間で無線通信する通信システムが利用されている。さらにまたVoWLAN(Voice over Wireless Local Area Network)と呼ばれる無線LANを構築し、音声通話する携帯電話装置を用いる通信システムが提案されている。また通信システムの1つとして、UHFの電磁波を用いるRFID(Radio Frequency Identification)
システムの実用化が進んでいる。UHF帯は、国際的に周波数が統一されていないものの、UHFの電磁波を用いるRFIDシステムでは、10m近くもの通信距離が得られ、商品管理、物流管理、製品のトレーサビリティ等の広範囲な用途で用途展開されている。
【0003】
このような無線通信を行うための通信システムを接近させて構築する場合、または通信システムが構築されている環境において電子レンジおよび無線通信による盗難防止装置など電磁波を利用する装置を用いる場合、他波干渉と呼ばれる電磁波干渉を生じるおそれがある。またこれとは別に、マルチパス、自己干渉などと呼ばれる反射波などによる誤伝送を生じるおそれがある。その結果、通信端末機器間の伝送速度の低下、BER(Bit Error Rate)の増大すなわち通信環境の劣化、そして情報伝達に誤りを生じる。また通信システムの周辺に設けられる電子機器への影響も懸念され、最悪の事態では、電子機器の誤動作を生じるおそれがある。
【0004】
これらの問題を解決するために、電磁波吸収体が用いられている。通信システム間に電磁波吸収体を設置することで、空気中を伝搬する電磁波のうち他のシステムに影響を及ぼすような電磁波を吸収して他波干渉を防止している。また、壁面、床面、天井などに電磁波吸収体を設けることで、壁面、床面、天井で反射するはずの電磁波を吸収して反射波の発生を抑え、自己干渉を防止している。
【0005】
このような電磁波吸収体としては、ピラミッド型や平面型のものがあり、ピラミッド型については広い吸収帯域を持ち厚みが厚い、平面型については特定の周波数領域に吸収特性を持ち厚みが比較的薄いという特徴がある。
【0006】
平面型電磁波吸収体の構成としては、単層型や二層型、抵抗皮膜を用いたλ/4型の電磁波吸収体等が良く知られている。これらの吸収体は共振型の電磁波吸収体と呼ばれ、吸収する電磁波の波長λにたいしてλ/4相当の厚みを持つことで照射電波と共振する吸収体である。ほかに、導電性パターン体を有するパターン層を備えるパターン型電磁波吸収体などがあり、電磁波吸収体をさらに薄型化する方法が検討されている。
【0007】
平面型電磁波吸収体の設計方法としては伝送線路理論を用いる方法がよく知られており、伝送線路理論によると電磁波吸収体に垂直に電波を照射するモデルについて、空間を伝送線路に置き換え、電磁波吸収体を終端抵抗に置き換えて計算することができ、空間を伝搬する電磁波の電界と磁界との比率である空間の電波インピーダンスZ0と伝送線路の特性インピーダンスとが対応し、電磁波吸収体の表面インピーダンスZsと伝送線路の終端抵抗とが対応する。照射波の電界成分についての電磁波吸収体表面における複素振幅反射率をΓとするとき、電磁波吸収体の表面インピーダンスZsと電磁波吸収体表面における複素振幅反射率をΓは式1の関係にある。
【0008】
【数1】
【0009】
電磁波吸収体の表面インピーダンスZsは複素数であり、実数部をRs、虚数部をXs、虚数単位をjとすると式2で表すことができる。空間の電波インピーダンスZ0は120π(≒377)Ωであるので、式1より電磁波吸収体の表面インピーダンスZsについて実数部Rsが377Ω、虚数部Xsが0Ωに近いほど空間との整合がよくなり反射が小さくなる。
【0010】
【数2】
【0011】
反射層から誘電体によって間隔を空けた位置での波長λの照射電波に対する表面インピーダンスZaは、誘電体の材料定数の複素比誘電率をεr、複素比透磁率をμr、間隔をd、居数単位をjとすると、式3で表される。また、誘電体の表面インピーダンスZaは複素数であり、実数部をRa、虚数部をXa、虚数単位をjとすると式4で表すことができる。
【0012】
【数3】
【数4】
【0013】
単層型の電磁波吸収体では、誘電体表面の表面インピーダンスZaが吸収体の表面インピーダンスZsとなり、誘電体の材料定数と厚みから表面インピーダンスを制御することになる。誘電体の厚みdが照射電波波長の1/4に波長短縮率を考慮した厚みのときに、表面インピーダンスZaの虚数部Xaが0Ωとなり、電磁波吸収体が照射電波に共振する。表面インピーダンスZaの虚数部Xaが0Ωとなる条件を満たしながら、実数部Raが377Ωに近づくように誘電体の材料定数を設定する必要がある。
【0014】
電磁波吸収体に抵抗層を追加することによる効果は、伝送線路理論において並列アドミッタンス付加回路を負荷に追加することと見なすことができる。電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsは反射層から誘電体によって間隔を空けた位置での表面アドミッタンスYaにパターン層のアドミッタンスYpを追加した値となり、式5で表される。
【0015】
【数5】
【0016】
ここで、表面アドミッタンスと表面インピーダンスは互いに逆数の関係にあり、式6および式7で表される。
【0017】
【数6】
【数7】
【0018】
表面アドミッタンスYsは複素数であり、実数部をGs、虚数部をBs、虚数単位をjとすると式8で表すことができる。電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsについて実数部Gsが0.00265Sに、虚数部Bsが0Sに近いほど表面インピーダンスZsが377±j0Ωに近くなり、空間との整合がよくなって反射が小さくなる。
【0019】
【数8】
【0020】
λ/4型の電磁波吸収体では、誘電体表面に抵抗膜が設けられている。誘電体表面位置のアドミッタンスYaは複素数であり、実数部をGa、虚数部をBa、虚数単位をjとすると式9で表すことができる。誘電体の厚みが照射電波波長の1/4に波長短縮率を考慮した厚みのときに誘電体表面位置の表面インピーダンスZaの虚数部Xaが0Ωとなり、表面アドミッタンスYaの虚数部Baが0Sとなる。誘電層の誘電率が小さい場合は、誘電体表面位置の表面アドミッタンスの実部Gaは0Sに近く、表面抵抗率が377Ωの抵抗膜を追加することで、表面アドミッタンスYsの実数部Gsを0.00265Sに近づけられる。
【0021】
【数9】
【0022】
パターン型電磁波吸収体は、導電性パターン体を受信アンテナとして機能させて電磁波を捉え、その捉えた電磁波を導電性パターン体および損失層によって減衰させる。また吸収体は表面で反射する電磁波と一度吸収体内を通過して再放射する電磁波を打消し合うよう干渉させることで、反射を小さくして電磁波を効率よく取り込むように構成されている。また、パターン型電磁波吸収体では電波は反射板と導電性パターン体との間を通過して再放射するので、パターン体の寸法により再放射波の位相を調節できるため薄型化が可能となる。
【0023】
特許文献1〜3に示すように、電磁波吸収体は、パターン層と反射層とその間に設けられる誘電体層とを積層した積層構造を基本構造としている。
【0024】
たとえば特許文献1には一次元導電性線分パターン、不透明電磁波シールド層、および、絶縁性中間材からなる薄型・軽量の電磁波吸収シールド材が提案されている。
【0025】
また特許文献2には容量性のサセプタンスを有する抵抗皮膜を用いた電磁波吸収体であって、抵抗成分のみを有する抵抗皮膜を用いた電磁波吸収体に比べて薄く、且つ容易に設計および製造することのできる電磁波吸収体が提案されている。
【0026】
また特許文献3にはパターン層と損失層とが積層されて電磁波吸収体が構成される薄型の電磁波吸収体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開平9−148780号公報
【特許文献2】特開2005−12031号公報
【特許文献3】特開2008−270793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
単層型の電磁波吸収体では、設計の際に電磁波吸収体の表面インピーダンスZsを誘電体の材料定数と厚みから制御しなければならず、吸収体の厚みを照射電波波長の1/4相当に誘電体の波長短縮率をも考慮して合わせる必要がある。表面インピーダンスZsの虚数部Xsが0となる条件を満たしながら、実数部Raが377Ωに近づくように誘電体の材料定数をあわせる必要があり、電磁波吸収体の設計を行う上での制約が非常に大きいという問題がある。
【0029】
λ/4型の電磁波吸収体では、電磁波吸収体の表面インピーダンスZsについて虚数部Xsは吸収体の厚みで制御でき、実数部Rsは表面抵抗膜の表面抵抗率で制御できるため設計は容易になるが、単層型と同様に吸収体の厚みが照射電波波長の1/4相当必要であるので、低い周波数の電波を吸収させるには電磁波吸収体が厚くなるという問題がある。
【0030】
たとえば特許文献1および3のような表面に導体パターンを有する電磁波吸収体では薄型化が可能である。既存材料に電波吸収特性を持たせる場合、既存材料の表面に薄型電磁波吸収体を設置する構成となるため、既存材料の厚みを電波吸収に利用することができず、電磁波吸収体にはさらなる薄型化が求められる。パターン型電磁波吸収体を薄型化すると導体パターンと金属反射板とが近づく構成となり、導体パターンに対する金属反射板の影響が大きくなって、導体パターンについて吸収体表面を占める導体面積の割合を大きくして強く共振させないと空間との整合が取れなくなる傾向にある。また、強く共振させることによって吸収できる電波の周波数帯域が狭くなるという問題がある。
【0031】
たとえば特許文献2のような容量性のサセプタンスを有する抵抗皮膜を用いた電磁波吸収体は、抵抗成分のみを有する抵抗皮膜を用いたλ/4型の電磁波吸収体に比べて薄く、且つ容易に設計および製造することのできる電磁波吸収体が提案されている。しかしながら、抵抗皮膜の材料によって抵抗皮膜の抵抗成分とサセプタンスの調整は制御が困難であることが予想される。
【0032】
また、電磁波吸収体は、透光性を有さないものが多い。しかしながら、電磁波吸収体の応用範囲は広く、特定の周波数の電磁波は遮蔽したとしても可視光や赤外線などは透過できるほうが好ましい。
【0033】
工場内や倉庫内でパネル体としての電磁波吸収体を設置する場合、電磁波吸収体によって建物内の視認性が低下してしまうので、視認性向上のために可視光を透過できることが好ましい。また、電磁波特性の測定室の壁面に電磁波吸収体を設置する場合、外光は遮断されてしまうため、外光を採り入れるために可視光を透過できることが好ましい。
【0034】
さらに工場内で用いられる多くのセンサは、赤外線センサであり、電磁波吸収体によって赤外線が遮蔽されてしまうと、センサの設置位置が限られ、設備の設置自由度の低下を招くため、赤外線を透過できることが好ましい。
【0035】
本発明の目的は、厚み、材料による制約が少なく、吸収特性の制御が容易で薄型化も可能な電磁波吸収体を提供することである。また、特定の周波数の電磁波を吸収するが、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体、建材、無線通信システムおよび無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、目的周波数の電磁波を遮蔽および吸収する電磁波吸収体において、
導電性材料からなる少なくとも1層以上の反射層と
抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成される少なくとも1層以上のパターン層とを備え、
前記パターン層と、前記反射層とが予め定める間隔を空けて設けられることを特徴とする電磁波吸収体である。
【0037】
また本発明は、前記パターン層と前記反射層との間隔を前記予め定める間隔に規定する絶縁体層をさらに備え、
前記絶縁体層は、複数の誘電体層で構成され、前記複数の誘電体層の厚さの和が、前記予め定める距離と同じであることを特徴とする。
【0038】
また本発明は、前記反射層および前記絶縁体層が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0039】
また本発明は、前記パターン層を支持するための基材をさらに備え、
前記基材と前記反射層との間に空間が形成されることを特徴とする。
【0040】
また本発明は、前記基材と前記反射層とを、前記予め定める間隔を空けて支持する支持体をさらに含むことを特徴とする。
【0041】
また本発明は、前記反射層および前記基材が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0042】
また本発明は、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層の共振周波数をfp、目的周波数をftとすると1/2・ft≦fp≦2・ftの関係にあることを特徴とする。
【0043】
また本発明は、前記導電性パターン体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0044】
また本発明は、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0045】
また本発明は、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0046】
また本発明は、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0047】
また本発明は、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの実数部GpがGp<0.0080Sであることを特徴とする。
【0048】
また本発明は、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの虚数部BpがBp>0Sであることを特徴とする。
【0049】
また本発明は、前記パターン層は、複数の前記導電性パターン体が相互に離間して形成されることを特徴とする。
【0050】
また本発明は、前記導電性パターン体は、端部が開放された線形状に形成される部分を含むことを特徴とする。
【0051】
また本発明は、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に分岐部が形成されることを特徴とする。
【0052】
また本発明は、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に屈曲部が形成されることを特徴とする。
【0053】
また本発明は、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に折り返し部が形成されることを特徴とする。
【0054】
また本発明は、前記パターン層の複数の前記導電性パターン体のうち隣り合う導電性パターン体は、互いに向きを変えて配置されることを特徴とする。
【0055】
また本発明は、前記複数の導電性パターン体は、同一の矩形状に形成され、
隣り合う導電性パターン体は、長手方向が直交するように配置され、
一方の導電性パターン体の長手方向端部が、他方の導電性パターン体の長手方向中央部に近接するように配置されることを特徴とする。
【0056】
また本発明は、前記パターン層と、前記反射層との予め定める間隔は、前記目的周波数における電波の波長をλ、前記パターン層と前記反射層の間の空間を占める物体の比誘電率実数部をεr’、比透磁率実数部をμr’とするとき、前記間隔がλ/(16×(εr’×μr’)0.5)以上であることを特徴とする。
【0057】
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とするパーティションである。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする電波暗箱である。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする建材である。
【0058】
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信システムである。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、目的周波数の電磁波を遮蔽および吸収する電磁波吸収体において、導電性材料からなる少なくとも1層以上の反射層と、抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成される少なくとも1層以上のパターン層とを備え、前記パターン層と、前記反射層とが予め定める間隔を空けて設けられる。
【0060】
これにより、導電性材料からなる反射層を有することで目的周波数の電磁波を反射し、遮蔽することができる。また、抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成されるパターン層を有することで、導電性パターン体において目的周波数の電磁波を受信し、導電性パターン体に電流を誘導した後、ジュール熱によって熱に変換して損失させることができる。また、前記パターン層と前記反射層との間に空けられる間隔によって、電磁波吸収体の表面反射波と再放射波との経路差および位相差を制御することができ、表面反射波と再放射波とが逆相で打ち消し合う条件では、照射電波に電磁波吸収体が共振し、より効率よく電波を熱に変換する。したがって、吸収特性の優れた電磁波吸収体を得ることが可能になる。
【0061】
また本発明によれば、前記パターン層と前記反射層との間隔を前記予め定める間隔に規定する絶縁体層をさらに備え、前記絶縁体層が少なくとも1層以上の誘電体層から構成され、前記誘電体層の厚さの和が、前記間隔と同じであることを特徴とする。
【0062】
これにより、既存材料である誘電体層に電波遮蔽機能を有する前記反射層および電波吸収機能を有する前記パターン層とを追加することで、前記既存材料に電磁波吸収体としての機能を追加することが可能になる。また、誘電率の大きな誘電体中は電波の伝搬速度が遅いため前記間隔を薄くすることが可能になる。
【0063】
また本発明によれば、前記反射層および前記絶縁体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0064】
これにより、前記反射層および前記絶縁体が透光性を持ち、パターン層は、少なくとも導電性パターン体が形成されていない領域において、可視光および赤外線の透過性を有するので、可視光および赤外線の透過性を有する電磁波吸収体を得ることが可能になる。
【0065】
また本発明によれば、前記パターン層を支持するための基材がさらに設けられ、前記基材と前記反射層との間に空間が形成されることを特徴とする。
【0066】
これにより、誘電材料を用いて前記パターン層と前記反射層との間の間隔を設けた構成よりも軽量な電磁波吸収体を提供することが可能になる。
【0067】
また本発明によれば、前記基材と前記反射層とを、前記予め定める間隔を空けて支持するための支持体をさらに含むことを特徴とする。
【0068】
これにより、前記基材の位置がより精度良く固定でき、前記パターン層と前記反射層との間隔を安定させることが可能になる。
【0069】
また本発明によれば、前記反射層および前記基材が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
【0070】
これにより、前記反射層および前記基材が透光性を持ち、前記パターン層のパターン体の導体には隙間があるため、全体として透光性を有する電磁波吸収体を得ることが可能になる。
【0071】
また本発明によれば、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層の共振周波数をfp、目的周波数をftとすると1/2・ft≦fp≦2・ftの関係にあることを特徴とする。
【0072】
これにより、前記パターン層の共振周波数付近の周波数の電波においては前記導電性パターン体に強い電流が誘導されやすくなり、抵抗損失を持つ前記導電性パターン体に強い電流が流れることにより電波のエネルギー損失を大きくさせることが可能になる。
【0073】
また、これにより、前記導電性パターン体に強い電流が誘導され、誘導された電流から電波が放射される。前記導電性パターン体からの放射電波の一部は表面反射波となり、残りは照射電波と合成されて透過波となる。透過波は反射層で反射され、前記パターン層をさらに透過したものについては再放射波として電磁波吸収体から再放射される。照射電波の周波数と前記パターン層の共振周波数fpが同じ場合は、照射電波と放射電波の電界向きは逆(位相差180°)であるが、照射電波の周波数と前記パターン層の共振周波数fpが異なる場合は放射電波の位相がずれる。照射電波の周波数が前記パターン層の共振周波数fpよりも低い場合は、前記導電性パターン体の寸法が共振寸法より短くなるため、前記導電性パターン体から放射される電波の位相が進み、前記パターン層で反射する電波の位相も進む。前記パターン層を透過する電波については、前記導電性パターン体から放射される電波と照射電波との合成波であるため位相が遅れる。よって、電磁波吸収体の表面反射波の位相が進み、再放射波の位相が遅れることになる。照射電波の周波数が前記パターン層の共振周波数fpよりも高い場合は、表面反射波の位相が遅れ、再放射波の位相が進む。したがって、本発明によれば、前記パターン層により電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の位相を制御することが可能になる。
【0074】
したがって、前記導電性パターン体の形状および表面抵抗率により、前記導電性パターン体に誘導される電流を制御することができ、照射電波に対する前記パターン層での反射、透過および損失量を制御でき、電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の強度および位相を制御することが可能になる。言い換えると、前記パターン層によって電磁波吸収体の表面インピーダンスZsの実数部Rsのみでなく虚数部Xsも制御することが可能となる。したがって、前記パターン層と前記反射層との間隔が照射電波の波長の実効長の1/4相当でなくても照射電波と共振する、吸収特性の優れる電磁波吸収体を提供することができ、電磁波吸収体の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0075】
また本発明によれば、前記パターン層の前記パターン体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする。
これにより、透光性がさらに優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0076】
このような構成により、特定の周波数の電磁波を吸収することができ、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体が得られる。
【0077】
また本発明によれば、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成され、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0078】
これにより、吸収特性が−6dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0079】
また本発明によれば、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成され、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0080】
これにより、吸収特性が−10dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0081】
また本発明によれば、前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成され、前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成されることを特徴とする。
【0082】
これにより、吸収特性が−15dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0083】
また本発明によれば、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、前記パターン層の前記目的周波数におけるアドミッタンスYpの実数部GpがGp<0.0080Sであることを特徴とする。
【0084】
これにより、パターン体での抵抗損失が大きくなり、吸収特性が−6dBより優れる電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0085】
また本発明によれば、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bpで表したとき、前記パターン層の前記目的周波数におけるアドミッタンスYpの虚数部BpがBp>0Sであることを特徴とする。
【0086】
これにより、前記パターン層により電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsの虚数部Bsを大きくすることができる。前記パターン層と前記反射層の間の前記間隔がλ/4相当より近くなると、前記反射層から前記間隔だけ離れた位置での表面アドミッタンスYaの虚数部Gaが負になり、間隔が狭くなるとGaがさらに小さくなる。パターン層のアドミッタンスYpの虚数部Bsを大きくすることで、厚みが小さくても表面アドミッタンスYsの虚数部Bsを共振条件の0Sに近づけることが可能となり、電磁波吸収体の薄型化が可能となる。
【0087】
また本発明によれば、前記パターン層は、複数の前記導電性パターン体が相互に離間して形成されることを特徴とする。
【0088】
これにより、パターン層は、少なくとも導電性パターン体が形成されていない領域において、可視光および赤外線の透過性を有する電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0089】
また本発明によれば、前記導電性パターン体は、端部が開放された線形状に形成される部分を含むことを特徴とする。
【0090】
これにより、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層により電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の位相を制御することが可能になる。
【0091】
また本発明によれば、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に分岐部が形成されることを特徴とする。
【0092】
これにより、分岐部を挟む両側の線形状部分の向きが変わることで照射電波の偏波に対するパターン層の効果の依存性を低減することが可能である。
【0093】
また本発明によれば、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に屈曲部が形成されることを特徴とする。
【0094】
これにより、共振周波数を変えずに導電性パターン体の寸法を小型化することができる。単位面積あたりの導電性パターン体の数が増えることにより、電磁波吸収体の寸法を変更したときの性能差を小さくすることが可能になる。また、照射電波の送信源からの距離に対する導電性パターン体の寸法比が小さくなるので、球面波の照射電波を当てたときの性能の変化を小さくすることが可能である。
【0095】
また本発明によれば、前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に折り返し部が形成されることを特徴とする。
【0096】
これにより、前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bpで表したとき、前記パターン層の前記目的周波数におけるアドミッタンスの虚数部Bpが大きくなるので吸収体の薄型化が可能となる。
【0097】
また本発明によれば、前記パターン層の複数の前記導電性パターン体のうち隣り合う導電性パターン体は、互いに向きを変えて配置されることを特徴とする。
【0098】
これにより、線形状部分の向きが変わることで照射電波の偏波に対するパターン層の効果の依存性を低減することが可能である。
【0099】
また本発明によれば、前記複数の導電性パターン体は、同一の矩形状に形成され、隣り合う導電性パターン体は、長手方向が直交するように配置され、一方の導電性パターン体の長手方向端部が、他方の導電性パターン体の長手方向中央部に近接するように配置されることを特徴とする。
【0100】
これにより、前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層により電磁波吸収体の表面反射波および再放射波の位相を制御することが可能になる。また、線形状部分の向きが変わることで照射電波の偏波に対するパターン層の効果の依存性を低減することが可能である。
【0101】
また本発明によれば、前記パターン層と、前記反射層との間隔について、前記目的周波数における電波の波長をλ、前記パターン層と前記反射層の間の空間を占める物体の比誘電率実数部をεr’、比透磁率実数部をμr’とするとき、前記間隔がλ/(16×(εr’×μr’)0.5)以上であることを特徴とする。
【0102】
これにより、前記パターン層に誘導される電流と前記反射層に誘導される電流の干渉が少なくなるため、前記パターン体の寸法による前記パターン層のアドミッタンスYpの制御が容易となる。
【0103】
これにより、電波暗箱の出入り口に設置可能な電磁波吸収体を提供することが可能となる。
【0104】
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いたパーティションを提供することが可能となる。
【0105】
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた電波暗箱を提供することが可能となる。
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた建材を提供することができる。
【0106】
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた無線通信システムを提供することができる。
また本発明によれば、上記の電磁波吸収体を用いた無線通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態である電磁波吸収体1の構成を示す断面図である。
【図2】導電性パターン体5の形状および配置の一例を示す平面図である。
【図3】導電性パターン体5の形状および配置の他の例を示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態である電磁波吸収体10の構成を示す断面図である。
【図5】マルチゲートシステム70を示す概略図である。
【図6】実施例1および比較例1,2の吸収特性を示す図である。
【図7】実施例1の表面アドミッタンスYsを示す図である。
【図8】反射層からλ/8(39.32mm)の間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaを示す図である。
【図9】実施例1のパターン層によるアドミッタンスYpを示す図である。
【図10】実施例2の吸収特性を示す図である。
【図11】実施例2の表面アドミッタンスYsを示す図である。
【図12】反射層から30mmの間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaを示す図である。
【図13】実施例2の表面アドミッタンスYsを示す図である。
【図14】実施例3の吸収特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、本発明の第1実施形態である電磁波吸収体1の構成を示す断面図である。
電磁波吸収体1は、パターン層2と、反射層3と、パターン層2と反射層3との間に介在して設けられる絶縁体層4とを含む。
【0109】
パターン層2は、導電性材料から成る複数の導電性パターン体5を含んで構成され、これら複数の導電性パターン体5は、相互に離間して形成される。反射層3は、導電性材料から形成される。
【0110】
絶縁体層4は、パターン層2と反射層3との間に設けられ、この絶縁体層4によってパターン層2と反射層3とが予め定める間隔Tを空けて設けられる。パターン層2と反射層3との間隔は、たとえば、電磁波吸収体1が吸収しようとする電磁波(以下では「吸収電磁波」という)の波長の1/16以上、特に波長の1/8から3/8に設定される。
【0111】
図2は、導電性パターン体5の形状および配置の一例を示す平面図である。
導電性パターン体5は、図2に示すように同一の矩形状に形成される。矩形状の導電性パターン体5の長手方向長さ(以下では、単に「長さ」ともいう)をL、短手方向長さ(以下では、「幅」ともいう)をWとする。また隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bの距離をDとする。
【0112】
導電性パターン体5の長さLは、電磁波吸収体1が照射電波に共振するように設定される。後で詳しく述べるが、電磁波吸収体1の共振周波数はパターン層2と反射層3との間隔Tと、導電性パターン体5の長さLとによって決まり、吸収電磁波の周波数が950MHzで間隔Tが78.8mmの場合は、Lは150〜165mmに設定され、間隔Tが39.4mmの場合は、Lは110〜140mmに設定される。
【0113】
また、導電性パターン体5の幅Wは、導電性パターン体5に誘導される電流量を調節して損失が最大になるように設定され、たとえば、導電性パターン体5の表面抵抗率が10Ω/□の場合は幅Wを2〜10mmに設定する。
【0114】
また、導電性パターン体5の表面抵抗率を小さくすれば導電性パターン体5の幅Wを細くできるが、導電性パターン体5の幅Wの加工精度が要求されるため、導電性パターン体5の表面抵抗率を1〜100Ω/□にし、幅Wが数mm程度とすることが好ましい。
【0115】
図2に示すように、隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bは、長手方向が直交するように配置され、一方の導電性パターン体5aの長手方向端部が、他方の導電性パターン体5bの長手方向中央部に近接するように配置される。
【0116】
隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bは、パターン層2の全体にわたってこのような配置関係で配置される。
【0117】
したがって、パターン層2には、導電性パターン体5a,5bが設けられていない領域2aが存在し、この領域2aは、可視光および赤外線を透過させる透光領域となる。透光領域2aは、がマトリクス状に配置されることになる。一辺の長さXは、X=(L−W)/2+Dで表わされる。
【0118】
長さLは、吸収電磁波の波長によって決まる長さであるから、吸収電磁波の周波数が高くなる、すなわち波長が短くなるとLが短くなるので、Xが小さくなり透光領域2aの大きさが小さくなる。その場合は、Dを大きくすることによって透光領域2aの大きさを所望の透光性を有する程度の大きさとすることができる。
【0119】
ここで、所望の透光性としては、パターン層2の開口率によって設定することができる。開口率は、たとえば、一辺の長さがXである正方形状の透光領域2aを開口とし、導電性パターン体5を遮光部分とすると、単位面積に占める透光領域2aの面積割合(%)で求められる。先に述べたように、導電性パターン体5の表面抵抗率を小さくすればパターン体の幅Wを細くできて開口率を大きくすることが可能であるが、加工精度を考慮するとパターン体の幅Wは数mm程度が好ましい。所望の透光性を得るための好ましい開口率としては、70%〜95%である。
【0120】
一例として、導電性パターン体5の長さL=125mm、幅W=4mm、隣り合う2つの導電性パターン体5a,5bの距離D=4mmとしたときの開口率は、およそ90%となる。
【0121】
このように、パターン層2は、複数の導電性パターン体5が、相互に離間して形成されることによって透光性を有する。
【0122】
また、図3の平面図に示す例のように、導電性パターン体5a,5bには分岐部や屈曲部や折り返し部があっても良い。この例では、長手方向が直交するように配置され、一方の導電性パターン体5aの長手方向端部が、他方の導電性パターン体5bの長手方向中央部に近接するように配置される。
【0123】
パターン体に屈曲部や折り返し部を有することでパターン体形状を小型化することができる。また、分岐部を設けることにより、パターン体に誘導される電流経路が増えるので、吸収帯域を増やしたり、パターン層2によるアドミッタンスYpの制御できる範囲を増やしたりできるため電磁波吸収体1を薄型化することも可能となる。
【0124】
第1実施形態では、パターン層2は、絶縁体層4を基材として絶縁体層4の表面に複数の導電性パターン体5を形成してもよく、絶縁体層4とは別にパターン層2を構成する基材を用いて、この基材表面に複数の導電性パターン体5を形成してもよい。絶縁体層4およびパターン層2を構成する基材は、絶縁体であれば無機材料、有機材料を問わずどのような材料であっても良いが、電磁波吸収体に透光性を持たせる場合はいずれも透明部材である必要がある。本発明における透明部材とは、可視光および赤外線に対して透明、すなわち可視光および赤外線の透過性を有するものである。
【0125】
導電性パターン体5は、所望する表面抵抗率が得られていれば材料は問わない。たとえば金属粒子などの導電フィラーを含んだ導電性インクを印刷したり、金属箔を転写したりするなどして形成することができ、金属としては、金、銀、銅、アルミニウムなどを用いることができる。表皮厚よりも小さな厚みであれば、導電性パターン体5の表面抵抗率は材料の体積抵抗率と厚みにより決まり、厚みを薄くすれば表面抵抗率が高くなるので、金属のような導電率が高い材料でも蒸着膜などの薄膜であれば損失の大きな導体として用いることができる。また、銀ナノワイヤーを含有するインクやITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜によって導電性パターン体5を形成してもよい。
【0126】
導電性パターン体5が絶縁体層4の表面に設けられる場合は、導電性パターン体5が他の部材などと接触するおそれがあるので、導電性パターン体5を被覆し、損傷から保護するための保護膜を設けることが好ましい。
【0127】
反射層3は、導電率の高い材料により構成され、機能上はパターン層2から入射する電磁波を反射するように構成されればよい。反射層3が、メッシュ状に構成されたり透明導電膜により構成されたりすることでメッシュの開口を可視光および赤外線が透過し、反射層3としては透光性を有することになる。
【0128】
反射層3は、たとえば、金属製繊維を網目状に編み込んだもの、化学繊維を網目状に編み込み、表面に金属塗料を塗布したものなど、上記の構造および機能を有するものであれば用いることができる。
【0129】
また、反射層3は上記のようなメッシュ部材のみで構成されていてもよく、パターン層2と同様に、透明基材上にメッシュ部材を設けた構成であってもよい。
【0130】
反射層3の一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の繊維(直径40μm)に銅メッキを行い、さらに黒色塗料を塗布して可視光の反射を低減したものを網目状に編み込んだメッシュ部材(開口率72%)を使用することができる。
【0131】
絶縁体層4は、誘電体層などの絶縁部材で構成される。絶縁体層4は、入射した電磁波をその内部で熱変換させるような損失材としての機能は必須ではない。たとえば、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機誘電材料や、セラミックや石膏などの無機誘電材料などを用いることができる。電磁波吸収体に透光性を持たせる場合、絶縁体層4が透明部材であればよいので、たとえば、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂などの透光性の有機材料や、石英や硝子などの透光性の無機材料などを用いることができる。
【0132】
絶縁体層4としては、その厚さが電磁波吸収体の共振周波数に影響するので重要であり、吸収電磁波の波長の1/16以上で特に1/8から3/8に設定される。絶縁体層4の一方面に設けられるパターン層2と他方面に設けられる反射層3との間隔Tは、絶縁体層4の厚みによって規制され、その間隔を吸収電磁波の波長の1/16以上に容易に設定することができる。
【0133】
本発明の電磁波吸収体1の特徴は、電磁波吸収体1全体として吸収電磁波に対する無反射条件を満たすことである。無反射条件は、電磁波吸収体1のパターン層2における導電性パターン体5の表面インピーダンスが377+j0Ωとなることである。このようなインピーダンスに整合できれば、吸収電磁波が無反射となり優れた電磁波吸収性能を発揮する。
【0134】
導電性パターン体5の表面インピーダンスが377+j0Ωであることは、言い換えれば、導電性パターン体5の表面アドミッタンスが0.0027+j0Sであることである。ここで、単位Sは「ジーメンス」である。すなわち、吸収電磁波に対するアドミッタンスの実部が0.0027S、虚部が0となるように電磁波吸収体1が構成されればよい。
【0135】
アドミッタンスは、パターン層2の構成、反射層3の構成およびパターン層2と反射層3との間隔によって規定される。パターン層2の構成としては、導電性パターン体5の形状、大きさ、面積が挙げられる。ここで、面積は上記の開口率に変換することができる。反射層3は、吸収電磁波を、パターン層2に臨む表面で反射できればよいが、本発明においては、透光性を備えた上で吸収電磁波を反射可能な構成とする必要がある。
【0136】
パターン層2と反射層3との間隔は、吸収電磁波の波長の1/16以上、特に波長の1/8から3/8であることが好ましく、1つの目安とはなるがパターン層2および反射層3の構成によっては、λ/8よりも薄くすることも可能である。
【0137】
電磁波吸収体1は、外部から到来する電磁波のうち、パターン層2側から入射する電磁波を内部に取り込み、反射層3で反射させ、パターン層2の導電性パターン体5で共振させて、導電性パターン体5によって導体損失を生じさせる。これにより特定の周波数を有する電磁波を吸収することができる。
【0138】
アドミッタンスは、次のようにして実験的に測定することができる。詳細は、長野、“円形金属パターンを表面層に用いたITS用薄形電波吸収体”、塗料の研究、No.140、p29−34、2003年5月に記載されている。
【0139】
金属板上に基材を設け、その入力インピーダンスをZaとし、基材表面に金属パターン層を設けその入力インピーダンスをZsとする。金属パターン層は、負荷Zaに対して並列にアドミッタンスYpを接続することになるので、ZaおよびZsを測定すればアドミッタンスYpを算出することができる。具体的には、測定したインピーダンスZaおよびZsから、それぞれの逆数であるアドミッタンスYa(=1/Za)およびYs(=1/Zs)を算出し、Yp=Ys−Yaで算出することができる。
【0140】
ここで、本発明の電磁波吸収体1では、金属板が反射層3に相当し、基材が絶縁体層4に相当し、金属パターン層がパターン層2に相当するので、電磁波吸収体1に対してアドミッタンスを測定することができる。
【0141】
パターン層2の構成、反射層3の構成およびパターン層2と反射層3との間隔を変化させながら、上記の測定方法でアドミッタンスを測定し、実部が0.0027S、虚部が0となるように各構成を決定する。
【0142】
詳しく述べると、導電性パターン体5の長さLにより、パターン層2の共振周波数が決定される。パターン層2の共振周波数において、パターン層2によるアドミッタンスYpの実数部Gpが最大となる。パターン層2によるアドミッタンスYpの虚数部Bpはパターン層2の共振周波数よりも低い周波数帯域ではBp>0Sとなり、高い周波数帯域ではBp<0Sとなる。電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsは、パターン層2の設置位置でのアドミッタンスYaとパターン層2のアドミッタンスYpの合計で表される。パターン層2の設置位置でのアドミッタンスYaは反射板からの間隔Tが波長の1/2よりも小さい領域において、間隔Tが大きくなると増大する傾向にあり、アドミッタンスYaの虚数部Baは間隔Tが波長の1/4相当の長さよりも小さい場合はBa<0Sとなり、波長の1/4相当の長さより大きい場合はBa>0Sとなる。電磁波吸収体が照射電波と共振するのは電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsの虚数部BsがBs=0Sのときであり、パターン層2と反射層3との間隔Tが1/4相当の長さに近い場合は、導電性パターン体5の長さLを波長の1/2相当に近づけると良い。パターン層2と反射層3との間隔Tが1/4相当の長さより小さくなる場合は、パターン体5の長さLを波長の1/2相当より短くして表面アドミッタンスYsの虚数部Bsを大きくして0Sに近づけると良い。逆に間隔が波長の1/4相当の長さより大きくなる場合は、導電性パターン体5の長さLは波長の1/2相当よりの長さより大きくする方が良い。
【0143】
また、導電性パターン体5の幅Wを太くしたり表面抵抗率を小さくしたりすると導電性パターン体5に電流が流れやすくなり、パターン層2によるアドミッタンスYpの実数部Gpが大きくなる傾向にある。パターン層2の設置位置でのアドミッタンスYaの実数部Gaは反射層3からの間隔Tが波長の1/2以外の領域においてはGa≒0であり、表面アドミッタンスYsの実数部Gsはパターン層2によるアドミッタンスYpの実数部Gpとほぼ等しくなる。したがって、間隔Tと導電性パターン体5の長さL、幅W、表面抵抗率によって電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsを制御することができ、中でも導電性パターン体5の長さL、幅Wの寸法によって表面インピーダンスYsが制御可能であるので制御が行いやすい。
【0144】
以上のように、電磁波吸収体1は、パターン層2により表面アドミッタンスYsを制御できるので、厚みおよび材料による制約が少なく、吸収特性の制御が容易で薄型化も可能な電磁波吸収体が得られる。また、これを構成する各層が全て可視光および赤外線に対する透光性を持たせることで、特定の周波数の電磁波を吸収することができ、赤外線および可視光は透過する電磁波吸収体1が得られる。
【0145】
また電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成し、表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成することが好ましい。これにより、吸収特性が−6dBより優れる電磁波吸収体を提供することができる。
【0146】
また電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成し、虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成することがさらに好ましい。これにより、吸収特性が−10dBより優れる電磁波吸収体を提供することができる。
【0147】
また電磁波吸収体1の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bsで表したとき、の実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成し、虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成することが最も好ましい。これにより、吸収特性が−15dBより優れる電磁波吸収体を提供することができる。
【0148】
図4は、本発明の第2実施形態である電磁波吸収体10の構成を示す断面図である。
電磁波吸収体10は、パターン層12と、反射層13と、パターン層12と反射層13とを、予め定める間隔を空けて支持する枠体14とを含む。本実施形態は、図1に示した第1実施形態とは異なり、パターン層12と反射層13との間には、空間15が形成される。
【0149】
パターン層12は、透明基材16と導電性パターン体17とで構成され、透明基材16の表面に、導電性パターン体17が形成される。導電性パターン体17は、第1実施形態の導電性パターン体5と同じである。
【0150】
基材16は絶縁材料であればどのようなものでも良く、たとえば、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機材料や、セラミックや石膏などの無機材料などを用いることができる。また、電磁波吸収体10に透光性を持たせる場合は、基材16は、可視光および赤外線が透過する材質であればどのような材質でも用いることができ、たとえば、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂などの透光性の有機材料や、石英や硝子などの透光性の無機材料を用いることができる。
【0151】
本実施形態では、導電性パターン体17は、反射層13と対向する面、すなわち透明基材16の空間15に臨む面に設けられる。導電性パターン体17が空間15に臨む面に設けられることで、導電性パターン体17が露出しないので、他の部材との接触などを防止することができる。第1実施形態では、保護膜などが必要であったが、本実施形態では、導電性パターン体17が露出しないので、保護膜も不要である。
【0152】
反射層13は、透明基材18と導電部材19とで構成され、透明基材18の表面に、導電部材19が設けられる。導電部材19は、第1実施形態の反射層3に相当する。また、電磁波吸収体1に透光性を持たせる場合は、導電部材19がメッシュ状に構成または透明導電膜から構成され、透明基材18が透明材料から構成されることで、反射層13に透光性を持たせることが望ましい。
【0153】
透明基材18は、パターン層12の透明基材16と同様に、絶縁材料であればどのようなものでも良く、たとえば、ポリエチレン樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機材料や、セラミックや石膏などの無機材料などを用いることができる。また、電磁波吸収体1に透光性を持たせる場合は、透明基材18は可視光および赤外線が透過する材質であればどのような材質でも用いることができ、たとえば、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂などの透光性の有機材料や、石英や硝子などの透光性の無機材料を用いることができる。
【0154】
本実施形態では、導電部材19は、パターン層12と対向する面、すなわち透明基材18の空間15に臨む面に設けられる。導電部材19が空間15に臨む面に設けられることで、導電部材19が露出しないので、他の部材との接触などを防止することができる。
【0155】
枠体14は、パターン層12と反射層13とを、予め定める間隔である吸収電磁波の波長の1/16以上空けて支持することができるものであればよく、材質は特に限定されない。たとえば、アルミニウム製フレームなどを用いることができる。
【0156】
枠体14は、パターン層12と反射層13の外周の一部または全部を支持する支持体であり、パターン層12と反射層13とを、吸収電磁波の波長の1/16以上空けて支持することができるものであればよい。上記のように、パターン層12と反射層13とは、それぞれ透明基材16および透明基材18を有しているので枠体14は、これら透明基材16および透明基材18を支持すればよい。
【0157】
枠体14として軽量の材質を用いれば、絶縁体層4を用いない分、第2実施形態の電磁波吸収体10のほうが第1実施形態の電磁波吸収体1よりも軽量化することが可能である。特に面積の広い壁面材などに使用する場合は、第2実施形態の電磁波吸収体10を採用するほうが好ましい。
【0158】
また電磁波吸収体1,10は、難燃性、準不燃性または不燃性を有している。難燃性としてはUL94V0の評価を得ることが目安である。電磁波吸収体1,10の用途は限定されないが、たとえば建材の構成部材として用いられる。難燃性、準不燃性または不燃性を有する電磁波吸収体1,10は、好適に建材を構成することができる。建材は、建築物を建立するために用いられる素材であり、たとえば内装材、壁材、床材、衝立材、天板材、表面材である。電磁波吸収体1,10に、難燃性、準不燃性、または不燃性を付与するにあたっては、電磁波吸収体1,10に、たとえば難燃剤または難燃助剤が添加される。難燃剤または難燃助剤は、たとえば誘電体層、透明基材16,18などに添加される。
【0159】
難燃剤としては、公知なものを単独またはブレンドして用いることができる。難燃剤としては、たとえば燐化合物系難燃剤、ホウ素化合物、ハロゲン系難燃剤、亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤および水酸化物系難燃剤を用いることができる。燐化合物系難燃剤としては、燐酸エステルなどが挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤などが挙げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。窒素系難燃剤としては、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、メラミン系化合物が挙げられる。水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また難燃助剤としては、カーボンブラック、脂肪酸金属塩などを用いることができる。これらの難燃剤および難燃助剤を用い、UL94V0などの難燃性を達成すべく配合設計する。
【0160】
さらに、電磁波吸収体1,10は無線通信システムとして、特に物流システムなどにおいて、たとえば倉庫出入り口などで製品の出入りを管理するためのマルチゲートシステムに適用される。
【0161】
図5は、マルチゲートシステム70を示す概略図である。マルチゲートシステム70は、UHF帯の周波数を用いた無線通信により、製品80に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート71と、ゲート71間に設置される電磁波吸収パーティションボード50とから構成される。ゲート71間に電磁波吸収パーティションボード50を設置することで、隣接するゲートから照射される情報読み取りのための電磁波による電波干渉を抑制することができる。
【0162】
電磁波吸収パーティションボード50は、電磁波吸収体1,10を使用し、電磁波吸収体1,10にパーティションボードの構成としての脚部などを取り付けることで実現できる。特に、第2実施形態の電磁波吸収体10は、枠体14を備えているので、枠体14に脚部を容易に取り付けることができ、好ましい。
【0163】
電磁波吸収パーティションボード50を設置しない場合、隣接するゲート71からの電磁波を受けてしまい、本来のゲート71で読み取るべきICタグと無線通信できなくなってしまう。さらには、隣接のレーンを通過するICタグを読み取ってしまうなど、誤検出が発生する。これらに対し、電磁波吸収パーティションボード50を設置することにより、電磁波吸収体の吸収機能及び遮蔽機能により、各レーン内の電磁波環境を安定化させることができ、全てのゲート71がICタグを正常に読み取ることができた。
【0164】
このような適応例以外にも、オフィスなどの電磁波環境空間の形成する床材、壁材、天井材として、あるいは家具や事務機器の金属面の被覆材として、あるいは衝立等として、本発明に従う電磁波吸収体を配置することにより、電磁波環境の改善を行う。具体的には、自波干渉や他波干渉による電子機器(医療用機器)の誤動作防止、人体保護、および伝送遅延対策や電磁波通信環境の保全対策である。そして電磁波環境については、オフィスだけではなく、倉庫、物流センター、配送センター、運送設備、コンテナ、家庭内、病院、コンサートホール、工場、研究施設、駅舎、展示場、道路側壁等の屋外施設等でも利用できる。それぞれ想定できる環境での壁、床、天井、柱、パネル、広告板、スチール製品等において、必要とされる箇所ごとに利用できる。
【実施例】
【0165】
以下、電磁界シミュレーションによる実施例について説明する。電磁波吸収体に対して電磁波を垂直に照射したときの反射特性について、CST社の電磁界解析ソフトMicro−stripesを用いてTLM法( Transmission Line Matrix:伝送線路行列法)にて評価した。
【0166】
(実施例1)
アルミニウム(導電率3.54e7S/m)からなる反射層3から、39.32mm距離を空けてパターン層2を設置、パターン層2の導電性パターン体5の形状は図2に示す形状で寸法はL=125mm、W=4mm、D=4mm、パターン層2の表面抵抗率は10Ω/□(導電率1000S/m、導体厚0.1mm)とした。
【0167】
(比較例1)
アルミニウムからなる反射層3から、78.64mm距離を空けて抵抗皮膜層を設置、導電被膜層の表面抵抗率は377Ω/□(導電率26.5S/m、導体厚0.1mm) とした。
【0168】
(比較例2)
アルミニウムからなる反射層3から、39.32mm距離を空けて抵抗皮膜層を設置、導電被膜層の表面抵抗率は377Ω/□とした。
【0169】
本発明の構成を有する実施例1では、電磁波吸収体の厚み寸法が39.32mmで、950MHzの波長に対して約1/8であり、λ/4型電磁波吸収体と比較すると厚みが約半分の電磁波吸収体が得られた。実施例1と同じ吸収帯域を持ち、厚みが78.64mmのλ/4型吸収体を比較例1に、実施例1と同じ厚みのλ/4型吸収体を比較例2として挙げた。吸収特性について表1および図6に示す。
【0170】
実施例1では967MHzに吸収ピークを持ち950MHzでの吸収特性が−22.42dBであった。比較例1では949MHz付近に吸収ピークを持ち、950MHzにおける吸収特性として−49.45dBが得られたが、電磁波吸収体の厚みが78.64mmと厚かった。比較例2のように厚みを半分にすると共振周波数が1.908GHzにシフトしてしまい、950MHz付近の吸収特性が−7.01dBに低下した。
【0171】
実施例1の電磁波吸収体の反射率から表面インピーダンスZsを算出し、逆数をとって表面アドミッタンスYsを算出したところ、図7に示すような結果が得られた。パターン層2を取り除いたモデルの表面アドミッタンスYaについても同様に反射率から算出したところ、図8に示すような結果が得られた。YsからYaを引いてパターン層のアドミッタンスYpの変化を算出したところ、図9に示すような結果が得られた。図8から、反射層から39.32mm間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaは950MHzにおいて、Ya≒0−j0.00267Sであることが確認でき、無反射条件は表面アドミッタンスYsがYs=0.00265±j0Sであるので、パターン層のアドミッタンスYpをYp≒0.00265+j0.00267Sに近づけると電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsは無反射条件に近づき、吸収特性が向上すると考えられる。
【0172】
実施例1では、図9に示すように、パターン層のアドミッタンスYpの実数部Gpがパターン層の共振周波数で極大値をとり、虚数部Bpは共振周波数よりも低周波数側でBp>0Sとなり、高周波数側でBp<0Sとなる現象を利用して、パターン層のアドミッタンスYpが目的の値に近づくよう調整を行った。導電性パターン体5の長さLを125mmとすることで、パターン層の共振周波数を1.2GHz付近に合わせ、パターン層のアドミッタンスYpの虚数部Bpが950MHz付近で極大値をとるように調整した。また、導電性パターン体5の幅Wを4mmとすることで、パターン層のアドミッタンスYpの実数部のピークを0.0045S付近に調節し、950MHz付近のパターン層のアドミッタンスYpが目標値に近づくよう調整した。
【0173】
【表1】
【0174】
(実施例2)
アルミニウムからなる反射層から、30mmの距離を空けてパターン層2を設置し、パターン層2の導電性パターン体5の形状は、図3に示す形状で、寸法はL1=64mm、L2=20mm、L3=15mm、W1=2mm、W2=5mm、W3=3mm、D=4mm、パターン層の表面抵抗率を10Ω/□とした。
【0175】
本発明の構成を有する実施例2では、電磁波吸収体の厚み寸法が30mmとなっており、実施例1よりも薄型化が可能となった。実施例2の電磁波吸収体の吸収特性について表2および図10に示す。
【0176】
実施例2では939MHzに吸収ピークを持ち950MHzでの吸収特性が−22.60dBであった。
【0177】
実施例2についても電磁波吸収体の反射率から表面インピーダンスZsを算出し、逆数をとって表面アドミッタンスYsを算出したところ、図11に示すような結果が得られた。パターン層2を取り除いたモデルの表面アドミッタンスYaについても同様に反射率から算出したところ、図12に示すような結果が得られた。YsからYaを差し引いてパターン層のアドミッタンスYpの変化を算出したところ、図13に示すような結果が得られた。図12から、反射層から30mm間隔を空けた位置でのアドミッタンスYaは950MHzにおいて、Ya≒0−j0.00390Sであることが確認でき、薄型化によってアドミッタンス虚数部Baが小さくなった。無反射条件は表面アドミッタンスYsがYs=0.00265±j0Sであるので、パターン層のアドミッタンスYpの目標値はYp≒0.00265+j0.00390Sとなり、アドミッタンスYpの虚数部Bpを大きくする必要がある。
【0178】
実施例2では、導電性パターン体5が分岐部や折り返し部分を有しており、電磁波吸収体の向きを変えると1GHz付近と2.3GHz付近の2つの異なる周波数で共振し、パターン層のアドミッタンスYpは図13に示すように、2つの共振モードが合成されたアドミッタンスとなった。導電性パターン体5の寸法を調節することで、低周波数側の共振モードを制御してアドミッタンスYpの虚数部Bpが950MHz付近で極大値をとるように調整した。共振モードを制御してアドミッタンスYpの虚数部Bpを大きくして、パターン層のアドミッタンスYpが目的の値に近づくよう調整を行った。
【0179】
【表2】
【0180】
以下、フリースペース法による実施例について説明する。フリースペース法は、自由空間に置かれた測定試料である電磁波吸収体に平面波を照射し、そのときの反射係数を得る測定方法である。金属板(SUS板)での反射係数を基準(0dB)とした場合の反射係数を評価した。入射角を10°としてTE波、TM波についてそれぞれ測定を行った。使用した測定機器は、ベクトルネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製、商品名8720ES)であり、アンテナはダブルリジッドアンテナ(ローデアンドシュワルツ社製、商品名HF906)である。電磁波吸収体1である測定試料の矩形の各辺のサイズは900×900(mm)である。
【0181】
(実施例3)
SUS板からなる反射層から、発泡スチロールにより49.8mm距離を空けてパターン層2を設置しさらに3mmの透明アクリル板を上に重ねた。パターン層の導電性パターン体5は表面抵抗率が11Ω/□となる厚み180Åのアルミ蒸着フィルムを、30μm厚のPETフィルムを基材とするアクリル系両面粘着フィルムに転写し厚み100μmのPETフィルムに貼り付けて配置した。導電性パターン体の形状は図2に示す形状であり、寸法はL=130mm、W=6mm、D=4mmとした。
【0182】
実施例3の構成の電磁波吸収体では、表3および図14に示すように、850〜950MHzの周波数帯域においてTE波およびTM波いずれも−15dBよりも優れる吸収特性が得られた。
【0183】
【表3】
【符号の説明】
【0184】
1,10 電磁波吸収体
2,12 パターン層
3,13 反射層
4 誘電体層
5,17 導電性パターン体
14 枠体
16,18 基材
19 導電部材
50 電磁波吸収パーティションボード
70 マルチゲートシステム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的周波数の電磁波を遮蔽および吸収する電磁波吸収体において、
導電性材料からなる少なくとも1層以上の反射層と
抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成される少なくとも1層以上のパターン層とを備え、
前記パターン層と、前記反射層とが予め定める間隔を空けて設けられることを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記パターン層と前記反射層との間隔を前記予め定める間隔に規定する絶縁体層をさらに備え、
前記絶縁体層は、複数の誘電体層で構成され、前記複数の誘電体層の厚さの和が、前記予め定める距離と同じであることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記反射層および前記絶縁体層が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記パターン層を支持するための基材をさらに備え、
前記基材と前記反射層との間に空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記基材と前記反射層とを、前記予め定める間隔を空けて支持する支持体をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
前記反射層および前記基材が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする請求項4または5に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層の共振周波数をfp、目的周波数をftとすると1/2・ft≦fp≦2・ftの関係にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
前記導電性パターン体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項9】
前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項10】
前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項11】
前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項12】
前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの実数部GpがGp<0.0080Sであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項13】
前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの虚数部BpがBp>0Sであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項14】
前記パターン層は、複数の前記導電性パターン体が相互に離間して形成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項15】
前記導電性パターン体は、端部が開放された線形状に形成される部分を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項16】
前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に分岐部が形成されることを特徴とする請求項15に記載の電磁波吸収体。
【請求項17】
前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に屈曲部が形成されることを特徴とする請求項15または16に記載の電磁波吸収体。
【請求項18】
前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に折り返し部が形成されることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項19】
前記パターン層の複数の前記導電性パターン体のうち隣り合う導電性パターン体は、互いに向きを変えて配置されることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項20】
前記複数の導電性パターン体は、同一の矩形状に形成され、
隣り合う導電性パターン体は、長手方向が直交するように配置され、
一方の導電性パターン体の長手方向端部が、他方の導電性パターン体の長手方向中央部に近接するように配置されることを特徴とする請求項19に記載の電磁波吸収体。
【請求項21】
前記パターン層と、前記反射層との予め定める間隔は、前記目的周波数における電波の波長をλ、前記パターン層と前記反射層の間の空間を占める物体の比誘電率実数部をεr’、比透磁率実数部をμr’とするとき、前記間隔がλ/(16×(εr’×μr’)0.5)以上であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とするパーティション。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする電波暗箱。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする建材。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信システム。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
目的周波数の電磁波を遮蔽および吸収する電磁波吸収体において、
導電性材料からなる少なくとも1層以上の反射層と
抵抗損失を有する導電性材料によって幾何学形状に形成される導電性パターン体から構成される少なくとも1層以上のパターン層とを備え、
前記パターン層と、前記反射層とが予め定める間隔を空けて設けられることを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記パターン層と前記反射層との間隔を前記予め定める間隔に規定する絶縁体層をさらに備え、
前記絶縁体層は、複数の誘電体層で構成され、前記複数の誘電体層の厚さの和が、前記予め定める距離と同じであることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記反射層および前記絶縁体層が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記パターン層を支持するための基材をさらに備え、
前記基材と前記反射層との間に空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記基材と前記反射層とを、前記予め定める間隔を空けて支持する支持体をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
前記反射層および前記基材が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする請求項4または5に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記パターン層が共振特性を有し、前記パターン層の共振周波数をfp、目的周波数をftとすると1/2・ft≦fp≦2・ftの関係にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
前記導電性パターン体が、透光性を有する物質により構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項9】
前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0008S<Gs<0.0080Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0036S<Bs<0.0036Sとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項10】
前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0013S<Gs<0.0051Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0019S<Bs<0.0019Sとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項11】
前記電磁波吸収体の表面アドミッタンスYsをYs=Gs+j・Bs(Gs:実数部、Bs:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの実数部Gsが0.0018S<Gs<0.0038Sとなるように構成され、
前記目的周波数における前記表面アドミッタンスYsの虚数部Bsが−0.0010S<Bs<0.0010Sとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項12】
前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの実数部GpがGp<0.0080Sであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項13】
前記パターン層のアドミッタンスYpをYp=Gp+j・Bp(Gp:実数部、Bp:虚数部、j:虚数単位)で表したとき、
前記パターン層の前記目的周波数における前記アドミッタンスYpの虚数部BpがBp>0Sであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項14】
前記パターン層は、複数の前記導電性パターン体が相互に離間して形成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項15】
前記導電性パターン体は、端部が開放された線形状に形成される部分を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項16】
前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に分岐部が形成されることを特徴とする請求項15に記載の電磁波吸収体。
【請求項17】
前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に屈曲部が形成されることを特徴とする請求項15または16に記載の電磁波吸収体。
【請求項18】
前記導電性パターン体の前記線形状部分の一部に折り返し部が形成されることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項19】
前記パターン層の複数の前記導電性パターン体のうち隣り合う導電性パターン体は、互いに向きを変えて配置されることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項20】
前記複数の導電性パターン体は、同一の矩形状に形成され、
隣り合う導電性パターン体は、長手方向が直交するように配置され、
一方の導電性パターン体の長手方向端部が、他方の導電性パターン体の長手方向中央部に近接するように配置されることを特徴とする請求項19に記載の電磁波吸収体。
【請求項21】
前記パターン層と、前記反射層との予め定める間隔は、前記目的周波数における電波の波長をλ、前記パターン層と前記反射層の間の空間を占める物体の比誘電率実数部をεr’、比透磁率実数部をμr’とするとき、前記間隔がλ/(16×(εr’×μr’)0.5)以上であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とするパーティション。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする電波暗箱。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする建材。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信システム。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−66094(P2011−66094A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213851(P2009−213851)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
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