電磁波抑制放熱用組成物及び電磁波抑制放熱用組成物の製造方法
【課題】電磁波抑制放熱用組成物において、より多くの磁性粒子を母材の内部に充填し、放熱効果及び電磁波抑制効果の両方に優れた電磁波抑制放熱用組成物を提供する。
【解決手段】電磁波抑制放熱用組成物10を、高分子材料または低分子材料からなる母材11と、母材11内に充填された磁性粒子12または磁性粒子12及び熱伝導性粒子とで構成する。そして、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末または磁性粉末及び熱伝導性粉末を母材に混合して電磁波抑制放熱用組成物を作製する。
【解決手段】電磁波抑制放熱用組成物10を、高分子材料または低分子材料からなる母材11と、母材11内に充填された磁性粒子12または磁性粒子12及び熱伝導性粒子とで構成する。そして、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末または磁性粉末及び熱伝導性粉末を母材に混合して電磁波抑制放熱用組成物を作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波抑制放熱用組成物及びその製造方法に関し、より具体的には、例えば電子機器内で発生する電磁波を抑制するとともに放熱を効率良く行うための電磁波抑制放熱用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多種多様なアプリケーションを備える電子機器が開発されているが、近年では、それらの電子機器のサイズがより小さくなる傾向にある。しかしながら、電子機器が小さくなっても、アプリケーションの多様性には対応する必要があるので、電子機器で使用される電力量(発熱量)はそれほど変化しない。そのため、最近では、電子機器内における放熱対策がより一層重要視されている。
【0003】
電子機器内部の放熱対策(熱対策)として、例えば銅やアルミなどの熱伝導率の高い金属材料で作製された放熱板やヒートパイプ、あるいはヒートシンクなどの放熱部材が広く利用されている。これらの熱伝導性に優れた放熱部材は、一般に、電子機器内の発熱部(高温場所)に配置されるか、または、発熱部(高温場所)と低温場所と繋ぐように機器内に配置される。この際、放熱部材と発熱部等とは、高熱伝導充填材(例えば放熱シート等)を介して接続される。従来は、このようにして、放熱または電子機器内の温度緩和を図っている。
【0004】
しかしながら、これらの放熱部材は金属材料で形成されるので、その副作用として、電子機器内の電気信号の高調波成分が放熱部材を伝搬し、その結果、放熱部材から不要な電磁波が輻射されるという問題が生じる。その様子を図9に示す。
【0005】
図9に示すように、発熱部1とヒートシンクなどの金属製放熱部材4との間に放熱シート3(熱伝導シート)を設けると、発熱部1で発生した熱6は放熱シート3を介して放熱部材4に伝達し放熱される。しかしながら、電子機器内の発熱部1(高温場所)は、主に、電流密度の高い半導体素子(半導体パッケージ)などで構成される。すなわち、電流密度の高い発熱部1は、不要な電磁波の輻射の原因となりうる電界強度または磁界強度が大きい場所でもある。それゆえ、放熱部材4を発熱部1の近辺に配置すると、発熱部1から発せられる磁界2と放熱部材4とがカップリングして放熱部材4に起電力が生じ、高調波ノイズ成分5が発生する。この結果、放熱部材4には、熱6だけでなく、電気信号の高調波ノイズ成分5も伝搬する。すなわち、放熱部材4は、高調波ノイズ成分5の伝達経路となる。そして、この際、放熱部材4は金属製であるので、放熱部材4がアンテナとして作用し、伝搬する高調波ノイズ成分5を電磁波として外部に輻射するという現象が生じる。
【0006】
この不要な電磁波の輻射現象を低減するために、従来、放熱シートの代わりに電磁波抑制シートまたは放熱性を有する電磁波抑制シートを用いて、発熱部1及び放熱部材4間の磁界のカップリングを断ち切る手法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0007】
特許文献1〜3には、電磁波抑制シートが提案されている。これらの電磁波抑制シートは樹脂やゴムなどのシート母材と、その内部に充填された例えばフェライトなどの高透磁率を有する磁性粒子とで構成される。電磁波抑制シートでは、この磁性粒子により例えば発熱部から生じる磁界を吸収し、不要な電磁波の輻射を抑制する。
【0008】
また、特許文献4には、放熱性を有する電磁波抑制シート(以下、電磁波抑制放熱シートという)が提案されている。電磁波抑制放熱シートは、一般に、例えば、アルミナや窒化アルミなどの高熱伝導率を有する放熱用粉末と、フェライトなどの高透磁率を有する磁性粉末とを、例えば、シリコーン系やアクリル系等の高分子材(樹脂やゴム)に混合して作製される。すなわち、電磁波抑制放熱シートでは、母材に放熱用粉末(放熱フィラー)と磁性粉末(磁性フィラー)とを充填することにより、一つのシートで放熱作用及び電磁波抑制作用(磁界のデカップリング作用)の機能を両立させる。
【0009】
図10に、上述のような電磁波抑制放熱シートを発熱部1と放熱部材4との間に設けた場合の熱及び高調波ノイズ信号の伝搬の様子を示す。この場合には、発熱部1から発生する磁界2が電磁波抑制放熱シート7で吸収され、放熱部材4で発生する高調波ノイズ成分5も低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−196747号公報
【特許文献2】特開2003−209010号公報
【特許文献3】特開2003−332113号公報
【特許文献4】特開2002−371138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電磁波抑制放熱シートの放熱効果及び電磁波抑制効果は、各効果を与える材料(以下、目的材料という)の物性値だけでなく、母材に含まれる目的材料の充填量にも大きく影響される。一般に、目的材料の充填量が多いほど、目的材料により得られる効果が増大する。
【0012】
しかしながら、実際に、電磁波抑制放熱シートを作製する際に、例えば、樹脂やゴム等からなる母材に任意の放熱用粉末及び/又は磁性粉末(目的粉末)を単に混ぜるだけでは、それらの目的材料の充填量には限界があるという問題が生じる。この問題を、以下により具体的に説明する。
【0013】
現在、市販等されている放熱シートでは、母材に混合される放熱用粉末(熱伝導性粉末)として、例えば球状の放熱用粉末や破砕された放熱用粉末等が使用される。また、現在、市販等されている電磁波抑制シートでは、磁性粉末として、例えば偏平状の磁性粉末(例えば、特許文献2及び3参照)や破砕された磁性粉末等が使用される。ここで、これらの目的粉末を、例えば樹脂やゴム等からなる母材に混合して電磁波抑制放熱シートを作製する場合を考える。
【0014】
例えば、球状の放熱用粉末と偏平状の磁性粉末とを母材に混合する場合、これらの目的粉末の形状は互いに異なるので、母材と目的粉末とを単に練り合わせるというような単純な混合プロセスでは、これらの目的材料をシート内に最密充填させることは難しい。また、破砕された放熱用粉末と破砕された磁性粉末とを母材に混合する場合も、これらの破砕された目的粉末はそれぞれ多種多様な凹凸形状を有するので、これらの目的材料をシート内に最密充填させることは難しい。このような理由から、放熱用粉末及び磁性粉末と母材とを単に練り合わせるというような単純な混合プロセスで電磁波抑制放熱シートを作製する場合、シート内に充填できる熱伝導性材料及び磁性材料の量には限界がある。また、磁性粉末のみを母材に充填する場合においても、粉末は多種多様な形状を有するので同様の問題が生じる。
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、目的材料を母材内により多く充填して、電磁波抑制効果及び放熱効果の両方で優れた特性を有する電磁波抑制放熱用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題を解決するために、本発明の電磁波抑制放熱用組成物は、高分子材料または低分子材料からなる母材と、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を母材に混合することにより母材内に充填された磁性粒子とを備える構成とする。
【0017】
また、上記問題を解決するために、本発明の電磁波抑制放熱用組成物の製造方法は、次の手順で行う。まず、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を用意する。次いで、磁性粉末を高分子材料または低分子材料からなる母材に混合する。
【0018】
上述のように、本発明では、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を母材に混合することにより、電磁波抑制放熱用組成物を作製する。これにより、従来に比べて、より多くの磁性粒子を母材内に充填することができる。
【0019】
なお、本明細書でいう「電磁波抑制放熱用組成物」には、磁性粒子及び熱伝導性粒子が母材に充填されているものだけでなく、磁性粒子のみが母材に充填されているものも含まれる。これは、後述するように、磁性粒子のみが母材に充填されている場合であっても、本発明では、例えば、従来の電磁波抑制シート等に比べて放熱効果が向上するためである。
【0020】
また、本明細書では、母材に混合する前の磁性材料を「磁性粉末」と称し、母材に混合した後の磁性材料を「磁性粒子」と称す。同様に、母材に混合する前の放熱促進用の熱伝導性材料を「熱伝導性粉末(放熱用粉末)」と称し、母材に混合した後の熱伝導性材料を「熱伝導性粒子(放熱用粒子)」と称す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来に比べて、より多くの磁性粒子を母材の内部に充填することができるので、放熱効果及び電磁波抑制効果の両方に優れた電磁波抑制放熱用組成物を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の具体例1の電磁波抑制放熱シートの概略構成図である。
【図2】具体例1の電磁波抑制放熱シートの作製手順を示すフローチャートである。
【図3】具体例1の電磁波抑制放熱シートで用いた母材に含まれるポリアルキルアルケニルシロキサンの化学式である。
【図4】具体例1の電磁波抑制放熱シートで用いた母材に含まれるポリアルキル水素シロキサンの化学式である。
【図5】具体例1及び比較例の電磁波抑制放熱シートにおける磁性粉末の{タップ密度/密度}と磁性粒子の最大充填量との関係を示す図である。
【図6】シート内の目的粒子の充填量とシート全体の熱伝導率との関係を示す図である。
【図7】具体例1及び比較例の電磁波抑制放熱シートにおける磁性粒子の最大充填量と、電磁波抑制放熱効果との関係を示す図である。
【図8】具体例1及び2並びに市販されている電磁波抑制放熱シートにおける複素比透磁率の虚部と、シートの熱伝導率との関係を示す図である。
【図9】発熱部と放熱部材との間に放熱シートを設けた場合の熱及びノイズの伝達の様子を示す図である。
【図10】発熱部と放熱部材との間に電磁波抑制放熱シートを設けた場合の熱及びノイズの伝達の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る電磁波抑制放熱用組成物及びその製造方法の例を、次の順で説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
1.電磁波抑制放熱用組成物の基本構成例
2.具体例1:磁性粒子を含有する電磁波抑制放熱シート
3.具体例2:磁性粒子及び熱伝導性粒子を含有する電磁波抑制放熱シート
【0024】
<1.電磁波抑制放熱用組成物の基本構成例>
本発明の電磁波抑制放熱用組成物は、高分子材料または低分子材料からなる母材と、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末とを混合して作製される。ここで、まず、磁性粉末のパラメータ・{タップ密度/密度}について説明する。
【0025】
[磁性粉末の{タップ密度/密度}]
本発明では、電磁波抑制放熱用組成物において、磁性粒子の充填量を増大させて放熱効果及び電磁波抑制効果の両効果を向上させるために、母材と混合する磁性粉末の粉末形状に着目する。例えば、母材と磁性粉末とを練り合わせるというような単純な混合プロセスにおいて、磁性粒子の充填量を増大させるためには、磁性粉末の形状をより球形に近くすることが好ましい。しかしながら、実際に磁性粉末内の各粉末の形状を測定することは困難である。また、これまで、電磁波抑制放熱用組成物に関する分野において、磁性粉末の球形(球状度合)の定義や、最適な球状度合について議論されていない。
【0026】
そこで、本発明では、磁性粉末の球状度合を表すパラメータとして、磁性粉末の{タップ密度/密度}を用いる。タップ密度は、例えば、ある容器内に粉末を詰め、その容器に対して振動を与えたり、叩いたりした後の粉体密度であるので、粉末の形状が球形に近いほど容器に充填される粉末量が増え、タップ密度が大きくなる。すなわち、粉末の球状度合が大きいほど、粉末の{タップ密度/密度}が大きくなる。
【0027】
そして、本発明者等は、磁性粉末の{タップ密度/密度}を種々変化させて、電磁波抑制放熱シートを作製し、各シートの熱伝導性及び電磁波抑制特性を調べた。なお、この詳細は後述する具体例1及び2で説明する。その結果、磁性粉末の{タップ密度/密度}を0.58以上にすることにより、放熱効果及び電磁波抑制効果の両方において優れた特性が得られることが分かった。すなわち、本発明では、母材に混ぜる磁性粉末の{タップ密度/密度}を0.58以上にすることにより、上述した熱問題及びEMC(Electromagnetic Compatibility;電磁両立性)問題の両方を解決することができる。
【0028】
また、本発明の電磁波抑制放熱用組成物の作製方法は、{タップ密度/密度}≧0.58の磁性粉末を母材と単に混ぜ合わせるだけであるので、簡単な手法である。また、粉末作製時には磁性粉末の{タップ密度/密度}を指定するだけでよいので、粉末の作製も比較的容易である。それゆえ、本発明では、より簡単な方法で、放熱作用及び電磁波抑制作用の両方に優れた電磁波抑制放熱用組成物を作製することができる。
【0029】
なお、磁性粉末のパラメータ・{タップ密度/密度}の上限値は、理論上は1である。しかしながら、例えば、現在の粉末製造技術等を考慮すると、現状では、{タップ密度/密度}の上限値は約0.8〜0.9程度である。
【0030】
本発明の電磁波抑制放熱用組成物では、母材に混合する粉末は磁性粉末(後述の具体例1)だけでも良い。母材に磁性粉末のみを混合した場合であっても、本発明では、{タップ密度/密度}≧0.58を満たすことにより、より多くの磁性粒子を母材内に充填させることができるので、従来の磁性粒子のみを含有する電磁波抑制シートに比べて放熱効果が向上する。
【0031】
また、本発明では、電磁波抑制放熱用組成物の熱伝導率を一層高めるために、放熱促進用の熱伝導性粉末(放熱用粉末)を磁性粉末とともに母材に混合しても良い(後述の具体例2)。この際、{タップ密度/密度}≧0.58を満たす熱伝導性粉末を用いることが好ましい。この関係を満たすように熱伝導性粉末を母材に混合することにより、熱伝導性粒子の充填量をより増加させることができ、電磁波抑制放熱用組成物の放熱効果を一層向上させることができる。
【0032】
[電磁波抑制放熱用組成物の構成材料]
本発明の電磁波抑制放熱用組成物の母材としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、エポキシ系等の高分子または低分子材料(例えば、樹脂、ゴム等)を用いることができる。
【0033】
また、本発明の電磁波抑制放熱用組成物の磁性粉末としては、磁気特性(透磁率特性)が大きく、且つ、{タップ密度/密度}≧0.58を満たす材料であれば任意の材料を用いることができる。具体的には、磁性粉末としては、例えばボロン(B)や炭素(C)などを添加した磁性金属アモルファス粉末、結晶化した金属粉末、金属合金粉末、フェライト粉末等を用いることができる。
【0034】
磁性金属アモルファス粉末としては、例えば、Fe−Si−B系、Fe−Si−B−C系、Co−Si−B系等の粉末を用いることができる。
【0035】
結晶化した金属粉末としては、例えば、Fe系、Co系、Ni系等の粉末を用いることができる。また、金属合金粉末としては、例えば、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系等の粉末を用いることができる。なお、これらの粉末はそれぞれ単独で使用してもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、フェライト粉末としては、例えば、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Cu−Mg−Zn系フェライト、Mn−Mg−Al系フェライト、YIG系フェライト、Ba系フェライト等の鉄系酸化物の粉末が用い得る。なお、本発明に用い得る磁性粉末としては、上述した材料に限定されない。
【0037】
また、放熱用粉末(熱伝導性粉末)をさらに混合する場合には、放熱用粉末として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミ、炭化珪素などの高熱伝導性セラミックスの粉末を用いることができる。また、放熱用粉末として、例えば銅やアルミなどの金属粉末や、例えば銅やアルミなどの金属粉末を絶縁材料でコーティングした粉末等を用いてもよい。なお、これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。また、放熱用粉末としては、熱伝導率が10W/mK以上である材料を用いることが好ましい。なお、本発明に用い得る放熱用粉末としては、これらの材料に限定されない。
【0038】
[電磁波抑制放熱用組成物の使用形態]
電磁波抑制放熱用組成物の使用形態は、ペースト状、ゲル状等としてもよいし、例えばシート等の成形体としてもよい。これらの形態は、電磁波抑制放熱用組成物の用途に応じて、母材の材料を適宜選択することにより実現できる。
【0039】
電磁波抑制放熱用組成物の使用形態をペースト状とした場合には、電磁波抑制放熱用組成物を、例えば、電子機器内の半導体パッケージとヒートシンク部材(例えば、放熱板等)との間などの固体部材間に注入して使用することができる。また、この場合、電磁波抑制放熱用組成物を、例えばフリップチップ等の封止材として用いることもできる。
【0040】
また、電磁波抑制放熱用組成物の使用形態をゲル状とした場合には、電磁波抑制放熱用組成物を、例えば電子機器内の衝撃緩衝性が必要な箇所へ適用することができる。
【0041】
さらに、電磁波抑制放熱用組成物の使用形態を成形体とした場合には、電磁波抑制放熱用組成物を任意の形状に加工した状態で使用することができる。例えば、電磁波抑制放熱用組成物をシート状に成形した場合には、そのシートを半導体パッケージや基板等に直接貼り付けて使用することができる。なお、本発明の電磁波抑制放熱用組成物をシートとして構成した場合には、次のような効果も得られる。
【0042】
上述のように、現在、例えば市販されている電磁波抑制放熱シートでは、母材に混合する磁性粉末として例えば偏平状の磁性粉末や破砕された磁性粉末等を用いる。また、熱伝導性粉末としては、例えば球状の熱伝導性粉末や破砕された熱伝導性粉末等を使用する。それゆえ、これらの粉末を母材と混合してシートを作製する場合、これらの目的粒子の充填量が多いと、シート内では様々な凹凸形状を有する粒子同士が密接した状態となるため、シートのフレキシブル性が十分に得られなくなる。
【0043】
上記フレキシブル性の問題をより具体的に説明する。いま、例えば、母材を形成する樹脂と偏平状の磁性粉末を混合して電磁波抑制放熱シートを作製する場合を考える。この場合、まず、樹脂中の偏平粒子をシート面内に配向した状態にする。次いで、樹脂と偏平粉末の混合物にある程度の圧力を加えながら押し出して、混合物をシート状に成形する。この製法では、磁性粒子(偏平粒子)の充填量が多くなると、シートの面内方向に偏平粒子が層状に配列した電磁波抑制放熱シートが得られ、シートの磁気特性(透磁率)を向上させることができる。しかしながら、このような構成の電磁波抑制放熱シートでは、樹脂と磁性粒子とが層状に重なった構造となるので、シートのフレキシブル性が低下する。また、このような層状構造の電磁波抑制シートでは、熱伝導率の低い樹脂がシートの厚み方向に層として存在するので、シートの厚み方向の熱抵抗が大きくなる。
【0044】
それに対して、本発明では、ほぼ同形状(球状)の磁性粉末、または、磁性粉末及び熱伝導性粉末を母材に混合するので、電磁波抑制放熱シートの内部に樹脂及び磁性粒子の層は形成されない。それゆえ、本発明の電磁波抑制放熱シートでは、従来に比べて、シートの厚さ方向の熱伝導性及びフレキシブル性を向上させることができる。また、本発明では、従来のように、磁性粒子の配向処理が不要になるので、より簡単に電磁波抑制放熱シートを作製することができる。
【0045】
<2.具体例1>
次に、実際に作製した電磁波抑制放熱用組成物の一例(具体例1)について説明する。具体例1では、例えば図10に示すような発熱部1と放熱部材4との間に設けられる電磁波抑制放熱シートを作製した。
【0046】
図1に、具体例1の電磁波抑制放熱シートの概略構成を示す。電磁波抑制放熱シート10は、シート母材11(母材)と、その内部に充填された略球形状の磁性粒子12とで構成される。なお、具体例1では、シート母材11に磁性粒子12のみを充填する例を説明する。
【0047】
[電磁波抑制放熱シートの作製方法]
具体例1の電磁波抑制放熱シート10の作製方法を、図2を参照しながら説明する。なお、図2は、この例の電磁波抑制放熱シート10の作製手順を示すフローチャートである。
【0048】
まず、母材として、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン及び白金化合物の混合物であるシリコーン系樹脂を用意する(ステップS1)。ここで、図3及び4に、それぞれポリアルキルアルケニルシロキサン及びポリアルキル水素シロキサンの化学式を示す。
【0049】
次いで、{タップ密度/密度}≧0.58となる磁性粉末を用意する(ステップS2)。具体例1では、密度(真密度)=7g/cm3、タップ密度=4.4g/cm3、すなわち、{タップ密度/密度}≒0.63の磁性金属アモルファス粉末を用いた。また、磁性粉末の平均粒径は、約10μm程度であった。
【0050】
次いで、母材と磁性粉末とを真空攪拌装置を用いて混合する(ステップS3)。そして、混合材料を所定の厚みのシートに成形加工する(ステップS4)。
【0051】
なお、ステップS4の具体的な処理は次の通りである。まず、母材及び磁性粉末の混合材料をローラを用いて所定厚さのシート状態にする。次いで、そのシート状態の混合材料を約100度で加熱して硬化させる。具体例1では、このようにして、電磁波抑制放熱シート10を作製する。
【0052】
[電磁波抑制放熱シートの特性評価]
(1)磁性粒子の最大充填量の評価
具体例1では、まず、磁性粉末の量を種々変化させながら、上述の作製方法に従って種々の電磁波抑制放熱シートを作製し、磁性粒子の最大充填量を調べた。なお、母材は一定量とした。
【0053】
なお、磁性粒子の最大充填量は、次のようにして測定した。まず、電磁波抑制放熱シートの作製過程において、真空攪拌(図2中のステップS3)後に母材と混合されない磁性粉末が残っているか否か確認する。または、混合材料をローラでシート状に成形する際(図2中のステップS4)に、混合材料が粉々になるか否か(シート化が可能か不可能か)を確認する。そして、ステップS3後に磁性粉末が残った場合や、ステップS4後に混合材料が粉々になってしまった場合には、母材と磁性粉末の混合が不可能と判断する。そして、混合可能(シート化が可能)であった磁性粉末の最大量を磁性粒子の最大充填量とする。
【0054】
上記測定の結果、具体例1の電磁波抑制放熱シートの磁性粒子の最大充填量は、約70.9vol%であった。なお、例えば、均一寸法の球体を最密充填した際の理論的な充填率がπ/{3・21/2}(≒0.74)であることを考慮すると、この例の電磁波抑制放熱シートでは、十分大きな磁性粒子の充填量が得られていることが分かる。
【0055】
ここで、具体例1と比較するため、市販等されている従来の3種類の磁性粉末(比較例:サンプルA〜C)を用いて、具体例1と同様に電磁波抑制放熱シートを作製し、各種磁性粉末を用いた際の最大充填量を測定した。なお、サンプルA〜Cの磁性粉末の{タップ密度/密度}としては、その平均粒径が具体例1と同様に約10μm程度である粉末を用いた。また、母材には具体例1と同じものを用いた。その結果、サンプルA〜Cの最大充填量は、それぞれ約60.2vol%、約63.1vol%及び約62.2vol%であった。
【0056】
具体例1及び比較例で用いた各磁性粉末の密度、タップ密度、{タップ密度/密度}及び磁性粒子の最大充填量を、下記表1にまとめる。なお、表1中のサンプルDは、具体例1の磁性粉末である。
【0057】
【表1】
【0058】
また、図5に、上記表1中のパラメータ{タップ密度/密度}と最大充填量との関係を表した特性を示す。なお、図5に示す特性の横軸は{タップ密度/密度}であり、縦軸は最大充填量である。上記表1及び図5から明らかなように、磁性粉末の{タップ密度/密度}が増加すると、磁性粒子の最大充填量が直線的に増加することが分かる。
【0059】
(2)放熱効果の評価
次に、磁性粒子の最大充填量と放熱効果(熱伝導率)との関係について説明する。
【0060】
一般に、熱伝導性材料を含むシートの放熱効果は、熱伝導性材料(具体例1では磁性粒子に対応)の充填率に影響される。シート内の熱伝導性材料の充填量とシート全体の熱伝導率との関係は、Bruggemanの式により、以下のように表される。
【0061】
【数1】
【0062】
なお、上記式(1)中のλはシート全体の熱伝導率であり、λdは熱伝導性材料の熱伝導率であり、λcは母材の熱伝導率であり、そして、φはシート全体に対する熱伝導性材料の体積分率である。
【0063】
ここで、熱伝導性材料の熱伝導率を10、30、50及び70W/mKとした場合における熱伝導性材料の充填量φとシート全体の熱伝導率λとの関係を上記式(1)を用いて計算した。なお、母材の形成材料は高分子材料とし、その熱伝導率λcは0.2W/mKとした。
【0064】
図6に、その計算結果を示す。なお、図6に示す特性の横軸はシート内の熱伝導性材料の充填量φであり、縦軸はシート全体の熱伝導率λである。図6から明らかなように、熱伝導性材料の熱伝導率(種類)に関係なく、その充填量の増加とともにシート全体の熱伝導率も増大し、特に、充填率が約65vol%以上になると急激にシート全体の熱伝導率が増大することが分かる。
【0065】
この図6の計算結果に基づいて、具体例1の電磁波抑制放熱シートの放熱効果を評価すると、具体例1では磁性粒子の最大充填量は約70.9vol%であり、熱伝導率が急激に向上し始める65vol%を越えている。それゆえ、図6の結果から、具体例1の電磁波抑制放熱シートは、優れた放熱効果を有することが分かる。
【0066】
また、図6の結果を考慮して、図5を用いて本発明における磁性粉末の{タップ密度/密度}の好適な範囲を求める。図5中の太波線から、放熱効果が急激に向上しはじめる最大充填量=約65vol%の{タップ密度/密度}を求めると、その値は約0.58となる。それゆえ、図5及び6の評価結果から、具体例1の電磁波抑制放熱シートでは、磁性粒子の{タップ密度/密度}を約0.58以上にすることにより、シートの熱伝導率(放熱効果)が急激に増大することが分かる。
【0067】
(3)電磁波抑制効果及び放熱効果の総合的な評価
上述のように、電磁波抑制放熱シートの放熱効果の評価指標には、上述したシート全体の熱伝導率λを用いることができる。一方、電磁波抑制効果の評価には、一般に、シートの複素比透磁率μr(=μr′−jμr″)の虚部μr″が用いられる。なお、複素比透磁率μrの虚部μr″は、磁気エネルギーの損失量に関するパラメータであり、虚部μr″が大きくなるとシートでの磁気エネルギーの損失量(吸収量)が大きくなる。すなわち、シートの複素比透磁率μrの虚部μr″が大きくなると、電磁波抑制の効果が大きくなる。
【0068】
一般に、電磁波抑制シートの複素比透磁率は、シート内の磁性材料の充填量により影響され、両者の間には、例えばLichteneckerの式により、次のような関係がある。
【0069】
【数2】
【0070】
なお、上記式(2)中のμrはシート全体の複素比透磁率であり、μr1は磁性材料の複素比透磁率であり、μr2はシート母材の複素比透磁率であり、ν1は磁性材料の体積分率であり、そして、ν2はシート母材の体積分率である。
【0071】
そこで、この例では、電磁波抑制効果及び放熱効果の両方(以下、電磁波抑制放熱効果という)を併せて評価する指標として、μr″×λというパラメータを用いる。なお、この例では、複素比透磁率μrの虚部μr″として、周波数500MHzにおける虚部μr″の値を用いる。この周波数500MHzは、例えば電子機器内の半導体パッケージ等から発生する磁界の典型的な周波数の一つである。また、パラメータλはシートの熱伝導率である。
【0072】
具体例1(サンプルD)の電磁波抑制放熱シートでは、周波数500MHzにおける複素比透磁率μrの虚部μr″が6.94であり、熱伝導率λは2.2(W/mK)であった。すなわち、具体例1の電磁波抑制放熱シートでは、パラメータμr″×λ=15.268となる。一方、比較例(サンプルA〜C)の電磁波抑制放熱シートのパラメータμr″×λはそれぞれ11.143、13.066及び9.877であり、具体例1より小さくなった。
【0073】
また、図7に、具体例1(サンプルD)及び比較例(サンプルA〜C)の磁性粒子の最大充填量と電磁波抑制放熱効果との関係をより具体的に示した特性を示す。なお、図7に示す特性の横軸は磁性粒子の最大充填量であり、縦軸は電磁波抑制放熱効果を示すパラメータμr″×λである。図7から明らかなように、電磁波抑制放熱シートでは、磁性粒子の最大充填量の増加に伴い、電磁波抑制放熱効果(μr″×λ)も向上することが分かる。
【0074】
また、ここでは、上述した電磁波抑制放熱効果(パラメータμr″×λ)についての評価とは別の視点から、電磁波抑制効果及び放熱効果の両効果について総合的に評価を行う。
【0075】
実際に、電磁波抑制放熱シートを作製する際には、その使用用途や使用箇所等に応じて、電磁波抑制効果及び放熱効果のどちらに重点を置くかを考慮して、磁性粉末と放熱用粉末との配合比を変えることが多い。この場合、その配合比に応じて、両効果のバランスが変化する。ここでは、電磁波抑制効果及び放熱効果のバランスについて評価を行い、この評価においても、本発明では従来に比べて優れた特性の電磁波抑制放熱シートが得られることを説明する。
【0076】
図8に、具体例1で作製した電磁波抑制放熱シートと、現在市販等されている電磁波抑制放熱シート(以下、市販シートともいう)との特性比較の図を示す。図8は、電磁波抑制放熱シートにおける電磁波抑制効果と放熱効果との関係を示す特性であり、図8の横軸は、周波数500MHzにおけるシートの複素比透磁率の虚部μr″であり、縦軸はシートの熱伝導率λである。すなわち、図8の横軸が電磁波抑制効果を示す指標であり、縦軸が放熱効果を示す指標である。なお、図8中の黒丸印が具体例1の特性を示し、白丸印が後述する具体例2の特性を示し、そして、黒菱形印が市販シートの特性を示す。ただし、図8中の市販シートの特性には、参考のため磁性材料を含まない放熱シートの特性も示している(図8中の虚部μr″=0のデータ)。
【0077】
図8から明らかなように、電磁波抑制放熱シートでは、複素比透磁率の虚部μr″(電磁波抑制効果)が増加すると、熱伝導率λ(放熱効果)が低下することが分かる。また、逆に、熱伝導率λ(放熱効果)が増加すると、複素比透磁率の虚部μr″(電磁波抑制効果)が低下することが分かる。これは、主に、シート内の磁性粒子の充填量と放熱用粒子の充填量との割合が変化するためである。
【0078】
また、図8から明らかなように、市販シートの特性は、図8中の破線で表される境界線Bより放熱効果または電磁波抑制効果が小さくなる領域Rc(境界線Bより左下側の領域)に存在する。この境界線Bは、現在市販されている電磁波抑制放熱シートにおいて得られる特性の上限レベルを示しており、現在市販されている電磁波抑制放熱シートの特性は、領域Rcに存在する。
【0079】
それに対して、図8中において境界線Bより右上側の領域Rnは、従来のシートに比べて放熱効果及び/または電磁波抑制効果が大きくなる領域であり、両効果のバランスを考慮した場合には、従来より高性能な特性が得られる領域になる。それゆえ、図8から、領域Rn内の特性を有する具体例1の電磁波抑制放熱シートは、電磁波抑制効果及び放熱効果を総合的に評価した場合、従来に比べて高性能の電磁波抑制シートであることが分かる。
【0080】
<3.具体例2>
具体例2では、放熱効果をさらに向上させるために、母材に磁性粉末だけでなく、放熱用粉末を混合して電磁波抑制放熱シートを作製した。なお、この例では、放熱用粉末をさらに混合したこと以外は、具体例1と同様にして電磁波抑制放熱シートを作製した。
【0081】
この例では、放熱用粉末として、平均粒径が約1μmの窒化アルミの粉末及び平均粒径が約0.2μmのアルミナの粉末を用いた。
【0082】
また、磁性粉末としては、具体例1と同様に、{タップ密度/密度}≒0.63であり且つ平均粒径が約10μmの磁性粉末(磁性金属アモルファス粉末)を用いた。さらに、母材には、具体例1と同様に、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン及び白金化合物の混合物からなるシリコーン系樹脂を用いた。
【0083】
なお、この例では、主に、熱伝導率を増加させることを目的として放熱用粉末を混合するので、具体例1のように磁性粒子を最大充填量まで充填しない。また、この例では、3種の異なる材料および粒径の粉末の最適配合比を検討しながら電磁波抑制放熱シートを作製した。
【0084】
その結果、この例では、3種の目的粒子の充填量の合計(最大充填量)を約80vol%とすることができた。より具体的には、例えば、磁性粒子を約60vol%、窒化アルミ粒子を約16vol%、アルミナ粒子を約4vol%で充填することができた。上述したように均一寸法の球体を最密充填した際の理論的な充填率は約0.74であることを考慮すると、この例の電磁波抑制放熱シートでは目的粒子の充填量が非常に大きくなることが分かる。
【0085】
また、3種の粉末を上記配合比で混合した場合には、周波数500MHzにおけるシートの複素比透磁率μrの虚部μr″が3.0であり、シートの熱伝導率λは4.0(W/mK)であった。すなわち、この例では、具体例1より大きな熱伝導率λを得ることができた。
【0086】
また、図8に示す電磁波抑制放熱シートにおける電磁波抑制効果と放熱効果との関係を示す特性から明らかなように、具体例2の電磁波抑制放熱シートの特性は、図8中の領域Rnに存在する。それゆえ、具体例2の電磁波抑制放熱シートもまた、電磁波抑制効果及び放熱効果を総合的に評価した場合、従来に比べて高性能の電磁波抑制シートであることが分かる。
【0087】
なお、上記具体例1及び2では、磁性粉末として、磁性金属アモルファス粉末を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明者等の検証実験によれば、磁性粉末として、結晶化した金属粉末、金属合金粉末、フェライト粉末等を用いても、それらの粉末の{タップ密度/密度}が約0.58以上となる場合には同様の結果が得られた。なお、この際、母材には、上記具体例1及び2と同じ母材を用いることができた。
【0088】
以上のように、本発明の電磁波抑制放熱用組成物では、{タップ密度/密度}≧0.58の磁性粉末、または、磁性粉末及び熱伝導性粉末を母材に混合して作製することにより、電磁波抑制作用及び放熱作用の両方で優れた特性が得られる。
【0089】
また、本発明では、磁性粉末及び熱伝導性粉末の混合比を調整することにより、電磁波抑制作用及び放熱作用のバランスを容易に調整することができる。それゆえ、本発明の電磁波抑制放熱用組成物は、あらゆる用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…発熱部、3…放熱シート、4…放熱部材、7,10…電磁波抑制放熱シート、11…シート母材、12…磁性粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波抑制放熱用組成物及びその製造方法に関し、より具体的には、例えば電子機器内で発生する電磁波を抑制するとともに放熱を効率良く行うための電磁波抑制放熱用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多種多様なアプリケーションを備える電子機器が開発されているが、近年では、それらの電子機器のサイズがより小さくなる傾向にある。しかしながら、電子機器が小さくなっても、アプリケーションの多様性には対応する必要があるので、電子機器で使用される電力量(発熱量)はそれほど変化しない。そのため、最近では、電子機器内における放熱対策がより一層重要視されている。
【0003】
電子機器内部の放熱対策(熱対策)として、例えば銅やアルミなどの熱伝導率の高い金属材料で作製された放熱板やヒートパイプ、あるいはヒートシンクなどの放熱部材が広く利用されている。これらの熱伝導性に優れた放熱部材は、一般に、電子機器内の発熱部(高温場所)に配置されるか、または、発熱部(高温場所)と低温場所と繋ぐように機器内に配置される。この際、放熱部材と発熱部等とは、高熱伝導充填材(例えば放熱シート等)を介して接続される。従来は、このようにして、放熱または電子機器内の温度緩和を図っている。
【0004】
しかしながら、これらの放熱部材は金属材料で形成されるので、その副作用として、電子機器内の電気信号の高調波成分が放熱部材を伝搬し、その結果、放熱部材から不要な電磁波が輻射されるという問題が生じる。その様子を図9に示す。
【0005】
図9に示すように、発熱部1とヒートシンクなどの金属製放熱部材4との間に放熱シート3(熱伝導シート)を設けると、発熱部1で発生した熱6は放熱シート3を介して放熱部材4に伝達し放熱される。しかしながら、電子機器内の発熱部1(高温場所)は、主に、電流密度の高い半導体素子(半導体パッケージ)などで構成される。すなわち、電流密度の高い発熱部1は、不要な電磁波の輻射の原因となりうる電界強度または磁界強度が大きい場所でもある。それゆえ、放熱部材4を発熱部1の近辺に配置すると、発熱部1から発せられる磁界2と放熱部材4とがカップリングして放熱部材4に起電力が生じ、高調波ノイズ成分5が発生する。この結果、放熱部材4には、熱6だけでなく、電気信号の高調波ノイズ成分5も伝搬する。すなわち、放熱部材4は、高調波ノイズ成分5の伝達経路となる。そして、この際、放熱部材4は金属製であるので、放熱部材4がアンテナとして作用し、伝搬する高調波ノイズ成分5を電磁波として外部に輻射するという現象が生じる。
【0006】
この不要な電磁波の輻射現象を低減するために、従来、放熱シートの代わりに電磁波抑制シートまたは放熱性を有する電磁波抑制シートを用いて、発熱部1及び放熱部材4間の磁界のカップリングを断ち切る手法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0007】
特許文献1〜3には、電磁波抑制シートが提案されている。これらの電磁波抑制シートは樹脂やゴムなどのシート母材と、その内部に充填された例えばフェライトなどの高透磁率を有する磁性粒子とで構成される。電磁波抑制シートでは、この磁性粒子により例えば発熱部から生じる磁界を吸収し、不要な電磁波の輻射を抑制する。
【0008】
また、特許文献4には、放熱性を有する電磁波抑制シート(以下、電磁波抑制放熱シートという)が提案されている。電磁波抑制放熱シートは、一般に、例えば、アルミナや窒化アルミなどの高熱伝導率を有する放熱用粉末と、フェライトなどの高透磁率を有する磁性粉末とを、例えば、シリコーン系やアクリル系等の高分子材(樹脂やゴム)に混合して作製される。すなわち、電磁波抑制放熱シートでは、母材に放熱用粉末(放熱フィラー)と磁性粉末(磁性フィラー)とを充填することにより、一つのシートで放熱作用及び電磁波抑制作用(磁界のデカップリング作用)の機能を両立させる。
【0009】
図10に、上述のような電磁波抑制放熱シートを発熱部1と放熱部材4との間に設けた場合の熱及び高調波ノイズ信号の伝搬の様子を示す。この場合には、発熱部1から発生する磁界2が電磁波抑制放熱シート7で吸収され、放熱部材4で発生する高調波ノイズ成分5も低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−196747号公報
【特許文献2】特開2003−209010号公報
【特許文献3】特開2003−332113号公報
【特許文献4】特開2002−371138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電磁波抑制放熱シートの放熱効果及び電磁波抑制効果は、各効果を与える材料(以下、目的材料という)の物性値だけでなく、母材に含まれる目的材料の充填量にも大きく影響される。一般に、目的材料の充填量が多いほど、目的材料により得られる効果が増大する。
【0012】
しかしながら、実際に、電磁波抑制放熱シートを作製する際に、例えば、樹脂やゴム等からなる母材に任意の放熱用粉末及び/又は磁性粉末(目的粉末)を単に混ぜるだけでは、それらの目的材料の充填量には限界があるという問題が生じる。この問題を、以下により具体的に説明する。
【0013】
現在、市販等されている放熱シートでは、母材に混合される放熱用粉末(熱伝導性粉末)として、例えば球状の放熱用粉末や破砕された放熱用粉末等が使用される。また、現在、市販等されている電磁波抑制シートでは、磁性粉末として、例えば偏平状の磁性粉末(例えば、特許文献2及び3参照)や破砕された磁性粉末等が使用される。ここで、これらの目的粉末を、例えば樹脂やゴム等からなる母材に混合して電磁波抑制放熱シートを作製する場合を考える。
【0014】
例えば、球状の放熱用粉末と偏平状の磁性粉末とを母材に混合する場合、これらの目的粉末の形状は互いに異なるので、母材と目的粉末とを単に練り合わせるというような単純な混合プロセスでは、これらの目的材料をシート内に最密充填させることは難しい。また、破砕された放熱用粉末と破砕された磁性粉末とを母材に混合する場合も、これらの破砕された目的粉末はそれぞれ多種多様な凹凸形状を有するので、これらの目的材料をシート内に最密充填させることは難しい。このような理由から、放熱用粉末及び磁性粉末と母材とを単に練り合わせるというような単純な混合プロセスで電磁波抑制放熱シートを作製する場合、シート内に充填できる熱伝導性材料及び磁性材料の量には限界がある。また、磁性粉末のみを母材に充填する場合においても、粉末は多種多様な形状を有するので同様の問題が生じる。
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、目的材料を母材内により多く充填して、電磁波抑制効果及び放熱効果の両方で優れた特性を有する電磁波抑制放熱用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題を解決するために、本発明の電磁波抑制放熱用組成物は、高分子材料または低分子材料からなる母材と、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を母材に混合することにより母材内に充填された磁性粒子とを備える構成とする。
【0017】
また、上記問題を解決するために、本発明の電磁波抑制放熱用組成物の製造方法は、次の手順で行う。まず、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を用意する。次いで、磁性粉末を高分子材料または低分子材料からなる母材に混合する。
【0018】
上述のように、本発明では、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を母材に混合することにより、電磁波抑制放熱用組成物を作製する。これにより、従来に比べて、より多くの磁性粒子を母材内に充填することができる。
【0019】
なお、本明細書でいう「電磁波抑制放熱用組成物」には、磁性粒子及び熱伝導性粒子が母材に充填されているものだけでなく、磁性粒子のみが母材に充填されているものも含まれる。これは、後述するように、磁性粒子のみが母材に充填されている場合であっても、本発明では、例えば、従来の電磁波抑制シート等に比べて放熱効果が向上するためである。
【0020】
また、本明細書では、母材に混合する前の磁性材料を「磁性粉末」と称し、母材に混合した後の磁性材料を「磁性粒子」と称す。同様に、母材に混合する前の放熱促進用の熱伝導性材料を「熱伝導性粉末(放熱用粉末)」と称し、母材に混合した後の熱伝導性材料を「熱伝導性粒子(放熱用粒子)」と称す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来に比べて、より多くの磁性粒子を母材の内部に充填することができるので、放熱効果及び電磁波抑制効果の両方に優れた電磁波抑制放熱用組成物を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の具体例1の電磁波抑制放熱シートの概略構成図である。
【図2】具体例1の電磁波抑制放熱シートの作製手順を示すフローチャートである。
【図3】具体例1の電磁波抑制放熱シートで用いた母材に含まれるポリアルキルアルケニルシロキサンの化学式である。
【図4】具体例1の電磁波抑制放熱シートで用いた母材に含まれるポリアルキル水素シロキサンの化学式である。
【図5】具体例1及び比較例の電磁波抑制放熱シートにおける磁性粉末の{タップ密度/密度}と磁性粒子の最大充填量との関係を示す図である。
【図6】シート内の目的粒子の充填量とシート全体の熱伝導率との関係を示す図である。
【図7】具体例1及び比較例の電磁波抑制放熱シートにおける磁性粒子の最大充填量と、電磁波抑制放熱効果との関係を示す図である。
【図8】具体例1及び2並びに市販されている電磁波抑制放熱シートにおける複素比透磁率の虚部と、シートの熱伝導率との関係を示す図である。
【図9】発熱部と放熱部材との間に放熱シートを設けた場合の熱及びノイズの伝達の様子を示す図である。
【図10】発熱部と放熱部材との間に電磁波抑制放熱シートを設けた場合の熱及びノイズの伝達の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る電磁波抑制放熱用組成物及びその製造方法の例を、次の順で説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
1.電磁波抑制放熱用組成物の基本構成例
2.具体例1:磁性粒子を含有する電磁波抑制放熱シート
3.具体例2:磁性粒子及び熱伝導性粒子を含有する電磁波抑制放熱シート
【0024】
<1.電磁波抑制放熱用組成物の基本構成例>
本発明の電磁波抑制放熱用組成物は、高分子材料または低分子材料からなる母材と、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末とを混合して作製される。ここで、まず、磁性粉末のパラメータ・{タップ密度/密度}について説明する。
【0025】
[磁性粉末の{タップ密度/密度}]
本発明では、電磁波抑制放熱用組成物において、磁性粒子の充填量を増大させて放熱効果及び電磁波抑制効果の両効果を向上させるために、母材と混合する磁性粉末の粉末形状に着目する。例えば、母材と磁性粉末とを練り合わせるというような単純な混合プロセスにおいて、磁性粒子の充填量を増大させるためには、磁性粉末の形状をより球形に近くすることが好ましい。しかしながら、実際に磁性粉末内の各粉末の形状を測定することは困難である。また、これまで、電磁波抑制放熱用組成物に関する分野において、磁性粉末の球形(球状度合)の定義や、最適な球状度合について議論されていない。
【0026】
そこで、本発明では、磁性粉末の球状度合を表すパラメータとして、磁性粉末の{タップ密度/密度}を用いる。タップ密度は、例えば、ある容器内に粉末を詰め、その容器に対して振動を与えたり、叩いたりした後の粉体密度であるので、粉末の形状が球形に近いほど容器に充填される粉末量が増え、タップ密度が大きくなる。すなわち、粉末の球状度合が大きいほど、粉末の{タップ密度/密度}が大きくなる。
【0027】
そして、本発明者等は、磁性粉末の{タップ密度/密度}を種々変化させて、電磁波抑制放熱シートを作製し、各シートの熱伝導性及び電磁波抑制特性を調べた。なお、この詳細は後述する具体例1及び2で説明する。その結果、磁性粉末の{タップ密度/密度}を0.58以上にすることにより、放熱効果及び電磁波抑制効果の両方において優れた特性が得られることが分かった。すなわち、本発明では、母材に混ぜる磁性粉末の{タップ密度/密度}を0.58以上にすることにより、上述した熱問題及びEMC(Electromagnetic Compatibility;電磁両立性)問題の両方を解決することができる。
【0028】
また、本発明の電磁波抑制放熱用組成物の作製方法は、{タップ密度/密度}≧0.58の磁性粉末を母材と単に混ぜ合わせるだけであるので、簡単な手法である。また、粉末作製時には磁性粉末の{タップ密度/密度}を指定するだけでよいので、粉末の作製も比較的容易である。それゆえ、本発明では、より簡単な方法で、放熱作用及び電磁波抑制作用の両方に優れた電磁波抑制放熱用組成物を作製することができる。
【0029】
なお、磁性粉末のパラメータ・{タップ密度/密度}の上限値は、理論上は1である。しかしながら、例えば、現在の粉末製造技術等を考慮すると、現状では、{タップ密度/密度}の上限値は約0.8〜0.9程度である。
【0030】
本発明の電磁波抑制放熱用組成物では、母材に混合する粉末は磁性粉末(後述の具体例1)だけでも良い。母材に磁性粉末のみを混合した場合であっても、本発明では、{タップ密度/密度}≧0.58を満たすことにより、より多くの磁性粒子を母材内に充填させることができるので、従来の磁性粒子のみを含有する電磁波抑制シートに比べて放熱効果が向上する。
【0031】
また、本発明では、電磁波抑制放熱用組成物の熱伝導率を一層高めるために、放熱促進用の熱伝導性粉末(放熱用粉末)を磁性粉末とともに母材に混合しても良い(後述の具体例2)。この際、{タップ密度/密度}≧0.58を満たす熱伝導性粉末を用いることが好ましい。この関係を満たすように熱伝導性粉末を母材に混合することにより、熱伝導性粒子の充填量をより増加させることができ、電磁波抑制放熱用組成物の放熱効果を一層向上させることができる。
【0032】
[電磁波抑制放熱用組成物の構成材料]
本発明の電磁波抑制放熱用組成物の母材としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、エポキシ系等の高分子または低分子材料(例えば、樹脂、ゴム等)を用いることができる。
【0033】
また、本発明の電磁波抑制放熱用組成物の磁性粉末としては、磁気特性(透磁率特性)が大きく、且つ、{タップ密度/密度}≧0.58を満たす材料であれば任意の材料を用いることができる。具体的には、磁性粉末としては、例えばボロン(B)や炭素(C)などを添加した磁性金属アモルファス粉末、結晶化した金属粉末、金属合金粉末、フェライト粉末等を用いることができる。
【0034】
磁性金属アモルファス粉末としては、例えば、Fe−Si−B系、Fe−Si−B−C系、Co−Si−B系等の粉末を用いることができる。
【0035】
結晶化した金属粉末としては、例えば、Fe系、Co系、Ni系等の粉末を用いることができる。また、金属合金粉末としては、例えば、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系等の粉末を用いることができる。なお、これらの粉末はそれぞれ単独で使用してもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、フェライト粉末としては、例えば、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Cu−Mg−Zn系フェライト、Mn−Mg−Al系フェライト、YIG系フェライト、Ba系フェライト等の鉄系酸化物の粉末が用い得る。なお、本発明に用い得る磁性粉末としては、上述した材料に限定されない。
【0037】
また、放熱用粉末(熱伝導性粉末)をさらに混合する場合には、放熱用粉末として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミ、炭化珪素などの高熱伝導性セラミックスの粉末を用いることができる。また、放熱用粉末として、例えば銅やアルミなどの金属粉末や、例えば銅やアルミなどの金属粉末を絶縁材料でコーティングした粉末等を用いてもよい。なお、これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。また、放熱用粉末としては、熱伝導率が10W/mK以上である材料を用いることが好ましい。なお、本発明に用い得る放熱用粉末としては、これらの材料に限定されない。
【0038】
[電磁波抑制放熱用組成物の使用形態]
電磁波抑制放熱用組成物の使用形態は、ペースト状、ゲル状等としてもよいし、例えばシート等の成形体としてもよい。これらの形態は、電磁波抑制放熱用組成物の用途に応じて、母材の材料を適宜選択することにより実現できる。
【0039】
電磁波抑制放熱用組成物の使用形態をペースト状とした場合には、電磁波抑制放熱用組成物を、例えば、電子機器内の半導体パッケージとヒートシンク部材(例えば、放熱板等)との間などの固体部材間に注入して使用することができる。また、この場合、電磁波抑制放熱用組成物を、例えばフリップチップ等の封止材として用いることもできる。
【0040】
また、電磁波抑制放熱用組成物の使用形態をゲル状とした場合には、電磁波抑制放熱用組成物を、例えば電子機器内の衝撃緩衝性が必要な箇所へ適用することができる。
【0041】
さらに、電磁波抑制放熱用組成物の使用形態を成形体とした場合には、電磁波抑制放熱用組成物を任意の形状に加工した状態で使用することができる。例えば、電磁波抑制放熱用組成物をシート状に成形した場合には、そのシートを半導体パッケージや基板等に直接貼り付けて使用することができる。なお、本発明の電磁波抑制放熱用組成物をシートとして構成した場合には、次のような効果も得られる。
【0042】
上述のように、現在、例えば市販されている電磁波抑制放熱シートでは、母材に混合する磁性粉末として例えば偏平状の磁性粉末や破砕された磁性粉末等を用いる。また、熱伝導性粉末としては、例えば球状の熱伝導性粉末や破砕された熱伝導性粉末等を使用する。それゆえ、これらの粉末を母材と混合してシートを作製する場合、これらの目的粒子の充填量が多いと、シート内では様々な凹凸形状を有する粒子同士が密接した状態となるため、シートのフレキシブル性が十分に得られなくなる。
【0043】
上記フレキシブル性の問題をより具体的に説明する。いま、例えば、母材を形成する樹脂と偏平状の磁性粉末を混合して電磁波抑制放熱シートを作製する場合を考える。この場合、まず、樹脂中の偏平粒子をシート面内に配向した状態にする。次いで、樹脂と偏平粉末の混合物にある程度の圧力を加えながら押し出して、混合物をシート状に成形する。この製法では、磁性粒子(偏平粒子)の充填量が多くなると、シートの面内方向に偏平粒子が層状に配列した電磁波抑制放熱シートが得られ、シートの磁気特性(透磁率)を向上させることができる。しかしながら、このような構成の電磁波抑制放熱シートでは、樹脂と磁性粒子とが層状に重なった構造となるので、シートのフレキシブル性が低下する。また、このような層状構造の電磁波抑制シートでは、熱伝導率の低い樹脂がシートの厚み方向に層として存在するので、シートの厚み方向の熱抵抗が大きくなる。
【0044】
それに対して、本発明では、ほぼ同形状(球状)の磁性粉末、または、磁性粉末及び熱伝導性粉末を母材に混合するので、電磁波抑制放熱シートの内部に樹脂及び磁性粒子の層は形成されない。それゆえ、本発明の電磁波抑制放熱シートでは、従来に比べて、シートの厚さ方向の熱伝導性及びフレキシブル性を向上させることができる。また、本発明では、従来のように、磁性粒子の配向処理が不要になるので、より簡単に電磁波抑制放熱シートを作製することができる。
【0045】
<2.具体例1>
次に、実際に作製した電磁波抑制放熱用組成物の一例(具体例1)について説明する。具体例1では、例えば図10に示すような発熱部1と放熱部材4との間に設けられる電磁波抑制放熱シートを作製した。
【0046】
図1に、具体例1の電磁波抑制放熱シートの概略構成を示す。電磁波抑制放熱シート10は、シート母材11(母材)と、その内部に充填された略球形状の磁性粒子12とで構成される。なお、具体例1では、シート母材11に磁性粒子12のみを充填する例を説明する。
【0047】
[電磁波抑制放熱シートの作製方法]
具体例1の電磁波抑制放熱シート10の作製方法を、図2を参照しながら説明する。なお、図2は、この例の電磁波抑制放熱シート10の作製手順を示すフローチャートである。
【0048】
まず、母材として、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン及び白金化合物の混合物であるシリコーン系樹脂を用意する(ステップS1)。ここで、図3及び4に、それぞれポリアルキルアルケニルシロキサン及びポリアルキル水素シロキサンの化学式を示す。
【0049】
次いで、{タップ密度/密度}≧0.58となる磁性粉末を用意する(ステップS2)。具体例1では、密度(真密度)=7g/cm3、タップ密度=4.4g/cm3、すなわち、{タップ密度/密度}≒0.63の磁性金属アモルファス粉末を用いた。また、磁性粉末の平均粒径は、約10μm程度であった。
【0050】
次いで、母材と磁性粉末とを真空攪拌装置を用いて混合する(ステップS3)。そして、混合材料を所定の厚みのシートに成形加工する(ステップS4)。
【0051】
なお、ステップS4の具体的な処理は次の通りである。まず、母材及び磁性粉末の混合材料をローラを用いて所定厚さのシート状態にする。次いで、そのシート状態の混合材料を約100度で加熱して硬化させる。具体例1では、このようにして、電磁波抑制放熱シート10を作製する。
【0052】
[電磁波抑制放熱シートの特性評価]
(1)磁性粒子の最大充填量の評価
具体例1では、まず、磁性粉末の量を種々変化させながら、上述の作製方法に従って種々の電磁波抑制放熱シートを作製し、磁性粒子の最大充填量を調べた。なお、母材は一定量とした。
【0053】
なお、磁性粒子の最大充填量は、次のようにして測定した。まず、電磁波抑制放熱シートの作製過程において、真空攪拌(図2中のステップS3)後に母材と混合されない磁性粉末が残っているか否か確認する。または、混合材料をローラでシート状に成形する際(図2中のステップS4)に、混合材料が粉々になるか否か(シート化が可能か不可能か)を確認する。そして、ステップS3後に磁性粉末が残った場合や、ステップS4後に混合材料が粉々になってしまった場合には、母材と磁性粉末の混合が不可能と判断する。そして、混合可能(シート化が可能)であった磁性粉末の最大量を磁性粒子の最大充填量とする。
【0054】
上記測定の結果、具体例1の電磁波抑制放熱シートの磁性粒子の最大充填量は、約70.9vol%であった。なお、例えば、均一寸法の球体を最密充填した際の理論的な充填率がπ/{3・21/2}(≒0.74)であることを考慮すると、この例の電磁波抑制放熱シートでは、十分大きな磁性粒子の充填量が得られていることが分かる。
【0055】
ここで、具体例1と比較するため、市販等されている従来の3種類の磁性粉末(比較例:サンプルA〜C)を用いて、具体例1と同様に電磁波抑制放熱シートを作製し、各種磁性粉末を用いた際の最大充填量を測定した。なお、サンプルA〜Cの磁性粉末の{タップ密度/密度}としては、その平均粒径が具体例1と同様に約10μm程度である粉末を用いた。また、母材には具体例1と同じものを用いた。その結果、サンプルA〜Cの最大充填量は、それぞれ約60.2vol%、約63.1vol%及び約62.2vol%であった。
【0056】
具体例1及び比較例で用いた各磁性粉末の密度、タップ密度、{タップ密度/密度}及び磁性粒子の最大充填量を、下記表1にまとめる。なお、表1中のサンプルDは、具体例1の磁性粉末である。
【0057】
【表1】
【0058】
また、図5に、上記表1中のパラメータ{タップ密度/密度}と最大充填量との関係を表した特性を示す。なお、図5に示す特性の横軸は{タップ密度/密度}であり、縦軸は最大充填量である。上記表1及び図5から明らかなように、磁性粉末の{タップ密度/密度}が増加すると、磁性粒子の最大充填量が直線的に増加することが分かる。
【0059】
(2)放熱効果の評価
次に、磁性粒子の最大充填量と放熱効果(熱伝導率)との関係について説明する。
【0060】
一般に、熱伝導性材料を含むシートの放熱効果は、熱伝導性材料(具体例1では磁性粒子に対応)の充填率に影響される。シート内の熱伝導性材料の充填量とシート全体の熱伝導率との関係は、Bruggemanの式により、以下のように表される。
【0061】
【数1】
【0062】
なお、上記式(1)中のλはシート全体の熱伝導率であり、λdは熱伝導性材料の熱伝導率であり、λcは母材の熱伝導率であり、そして、φはシート全体に対する熱伝導性材料の体積分率である。
【0063】
ここで、熱伝導性材料の熱伝導率を10、30、50及び70W/mKとした場合における熱伝導性材料の充填量φとシート全体の熱伝導率λとの関係を上記式(1)を用いて計算した。なお、母材の形成材料は高分子材料とし、その熱伝導率λcは0.2W/mKとした。
【0064】
図6に、その計算結果を示す。なお、図6に示す特性の横軸はシート内の熱伝導性材料の充填量φであり、縦軸はシート全体の熱伝導率λである。図6から明らかなように、熱伝導性材料の熱伝導率(種類)に関係なく、その充填量の増加とともにシート全体の熱伝導率も増大し、特に、充填率が約65vol%以上になると急激にシート全体の熱伝導率が増大することが分かる。
【0065】
この図6の計算結果に基づいて、具体例1の電磁波抑制放熱シートの放熱効果を評価すると、具体例1では磁性粒子の最大充填量は約70.9vol%であり、熱伝導率が急激に向上し始める65vol%を越えている。それゆえ、図6の結果から、具体例1の電磁波抑制放熱シートは、優れた放熱効果を有することが分かる。
【0066】
また、図6の結果を考慮して、図5を用いて本発明における磁性粉末の{タップ密度/密度}の好適な範囲を求める。図5中の太波線から、放熱効果が急激に向上しはじめる最大充填量=約65vol%の{タップ密度/密度}を求めると、その値は約0.58となる。それゆえ、図5及び6の評価結果から、具体例1の電磁波抑制放熱シートでは、磁性粒子の{タップ密度/密度}を約0.58以上にすることにより、シートの熱伝導率(放熱効果)が急激に増大することが分かる。
【0067】
(3)電磁波抑制効果及び放熱効果の総合的な評価
上述のように、電磁波抑制放熱シートの放熱効果の評価指標には、上述したシート全体の熱伝導率λを用いることができる。一方、電磁波抑制効果の評価には、一般に、シートの複素比透磁率μr(=μr′−jμr″)の虚部μr″が用いられる。なお、複素比透磁率μrの虚部μr″は、磁気エネルギーの損失量に関するパラメータであり、虚部μr″が大きくなるとシートでの磁気エネルギーの損失量(吸収量)が大きくなる。すなわち、シートの複素比透磁率μrの虚部μr″が大きくなると、電磁波抑制の効果が大きくなる。
【0068】
一般に、電磁波抑制シートの複素比透磁率は、シート内の磁性材料の充填量により影響され、両者の間には、例えばLichteneckerの式により、次のような関係がある。
【0069】
【数2】
【0070】
なお、上記式(2)中のμrはシート全体の複素比透磁率であり、μr1は磁性材料の複素比透磁率であり、μr2はシート母材の複素比透磁率であり、ν1は磁性材料の体積分率であり、そして、ν2はシート母材の体積分率である。
【0071】
そこで、この例では、電磁波抑制効果及び放熱効果の両方(以下、電磁波抑制放熱効果という)を併せて評価する指標として、μr″×λというパラメータを用いる。なお、この例では、複素比透磁率μrの虚部μr″として、周波数500MHzにおける虚部μr″の値を用いる。この周波数500MHzは、例えば電子機器内の半導体パッケージ等から発生する磁界の典型的な周波数の一つである。また、パラメータλはシートの熱伝導率である。
【0072】
具体例1(サンプルD)の電磁波抑制放熱シートでは、周波数500MHzにおける複素比透磁率μrの虚部μr″が6.94であり、熱伝導率λは2.2(W/mK)であった。すなわち、具体例1の電磁波抑制放熱シートでは、パラメータμr″×λ=15.268となる。一方、比較例(サンプルA〜C)の電磁波抑制放熱シートのパラメータμr″×λはそれぞれ11.143、13.066及び9.877であり、具体例1より小さくなった。
【0073】
また、図7に、具体例1(サンプルD)及び比較例(サンプルA〜C)の磁性粒子の最大充填量と電磁波抑制放熱効果との関係をより具体的に示した特性を示す。なお、図7に示す特性の横軸は磁性粒子の最大充填量であり、縦軸は電磁波抑制放熱効果を示すパラメータμr″×λである。図7から明らかなように、電磁波抑制放熱シートでは、磁性粒子の最大充填量の増加に伴い、電磁波抑制放熱効果(μr″×λ)も向上することが分かる。
【0074】
また、ここでは、上述した電磁波抑制放熱効果(パラメータμr″×λ)についての評価とは別の視点から、電磁波抑制効果及び放熱効果の両効果について総合的に評価を行う。
【0075】
実際に、電磁波抑制放熱シートを作製する際には、その使用用途や使用箇所等に応じて、電磁波抑制効果及び放熱効果のどちらに重点を置くかを考慮して、磁性粉末と放熱用粉末との配合比を変えることが多い。この場合、その配合比に応じて、両効果のバランスが変化する。ここでは、電磁波抑制効果及び放熱効果のバランスについて評価を行い、この評価においても、本発明では従来に比べて優れた特性の電磁波抑制放熱シートが得られることを説明する。
【0076】
図8に、具体例1で作製した電磁波抑制放熱シートと、現在市販等されている電磁波抑制放熱シート(以下、市販シートともいう)との特性比較の図を示す。図8は、電磁波抑制放熱シートにおける電磁波抑制効果と放熱効果との関係を示す特性であり、図8の横軸は、周波数500MHzにおけるシートの複素比透磁率の虚部μr″であり、縦軸はシートの熱伝導率λである。すなわち、図8の横軸が電磁波抑制効果を示す指標であり、縦軸が放熱効果を示す指標である。なお、図8中の黒丸印が具体例1の特性を示し、白丸印が後述する具体例2の特性を示し、そして、黒菱形印が市販シートの特性を示す。ただし、図8中の市販シートの特性には、参考のため磁性材料を含まない放熱シートの特性も示している(図8中の虚部μr″=0のデータ)。
【0077】
図8から明らかなように、電磁波抑制放熱シートでは、複素比透磁率の虚部μr″(電磁波抑制効果)が増加すると、熱伝導率λ(放熱効果)が低下することが分かる。また、逆に、熱伝導率λ(放熱効果)が増加すると、複素比透磁率の虚部μr″(電磁波抑制効果)が低下することが分かる。これは、主に、シート内の磁性粒子の充填量と放熱用粒子の充填量との割合が変化するためである。
【0078】
また、図8から明らかなように、市販シートの特性は、図8中の破線で表される境界線Bより放熱効果または電磁波抑制効果が小さくなる領域Rc(境界線Bより左下側の領域)に存在する。この境界線Bは、現在市販されている電磁波抑制放熱シートにおいて得られる特性の上限レベルを示しており、現在市販されている電磁波抑制放熱シートの特性は、領域Rcに存在する。
【0079】
それに対して、図8中において境界線Bより右上側の領域Rnは、従来のシートに比べて放熱効果及び/または電磁波抑制効果が大きくなる領域であり、両効果のバランスを考慮した場合には、従来より高性能な特性が得られる領域になる。それゆえ、図8から、領域Rn内の特性を有する具体例1の電磁波抑制放熱シートは、電磁波抑制効果及び放熱効果を総合的に評価した場合、従来に比べて高性能の電磁波抑制シートであることが分かる。
【0080】
<3.具体例2>
具体例2では、放熱効果をさらに向上させるために、母材に磁性粉末だけでなく、放熱用粉末を混合して電磁波抑制放熱シートを作製した。なお、この例では、放熱用粉末をさらに混合したこと以外は、具体例1と同様にして電磁波抑制放熱シートを作製した。
【0081】
この例では、放熱用粉末として、平均粒径が約1μmの窒化アルミの粉末及び平均粒径が約0.2μmのアルミナの粉末を用いた。
【0082】
また、磁性粉末としては、具体例1と同様に、{タップ密度/密度}≒0.63であり且つ平均粒径が約10μmの磁性粉末(磁性金属アモルファス粉末)を用いた。さらに、母材には、具体例1と同様に、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン及び白金化合物の混合物からなるシリコーン系樹脂を用いた。
【0083】
なお、この例では、主に、熱伝導率を増加させることを目的として放熱用粉末を混合するので、具体例1のように磁性粒子を最大充填量まで充填しない。また、この例では、3種の異なる材料および粒径の粉末の最適配合比を検討しながら電磁波抑制放熱シートを作製した。
【0084】
その結果、この例では、3種の目的粒子の充填量の合計(最大充填量)を約80vol%とすることができた。より具体的には、例えば、磁性粒子を約60vol%、窒化アルミ粒子を約16vol%、アルミナ粒子を約4vol%で充填することができた。上述したように均一寸法の球体を最密充填した際の理論的な充填率は約0.74であることを考慮すると、この例の電磁波抑制放熱シートでは目的粒子の充填量が非常に大きくなることが分かる。
【0085】
また、3種の粉末を上記配合比で混合した場合には、周波数500MHzにおけるシートの複素比透磁率μrの虚部μr″が3.0であり、シートの熱伝導率λは4.0(W/mK)であった。すなわち、この例では、具体例1より大きな熱伝導率λを得ることができた。
【0086】
また、図8に示す電磁波抑制放熱シートにおける電磁波抑制効果と放熱効果との関係を示す特性から明らかなように、具体例2の電磁波抑制放熱シートの特性は、図8中の領域Rnに存在する。それゆえ、具体例2の電磁波抑制放熱シートもまた、電磁波抑制効果及び放熱効果を総合的に評価した場合、従来に比べて高性能の電磁波抑制シートであることが分かる。
【0087】
なお、上記具体例1及び2では、磁性粉末として、磁性金属アモルファス粉末を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明者等の検証実験によれば、磁性粉末として、結晶化した金属粉末、金属合金粉末、フェライト粉末等を用いても、それらの粉末の{タップ密度/密度}が約0.58以上となる場合には同様の結果が得られた。なお、この際、母材には、上記具体例1及び2と同じ母材を用いることができた。
【0088】
以上のように、本発明の電磁波抑制放熱用組成物では、{タップ密度/密度}≧0.58の磁性粉末、または、磁性粉末及び熱伝導性粉末を母材に混合して作製することにより、電磁波抑制作用及び放熱作用の両方で優れた特性が得られる。
【0089】
また、本発明では、磁性粉末及び熱伝導性粉末の混合比を調整することにより、電磁波抑制作用及び放熱作用のバランスを容易に調整することができる。それゆえ、本発明の電磁波抑制放熱用組成物は、あらゆる用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…発熱部、3…放熱シート、4…放熱部材、7,10…電磁波抑制放熱シート、11…シート母材、12…磁性粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料または低分子材料からなる母材と、
{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を前記母材に混合することにより前記母材内に充填された磁性粒子と
を備える電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項2】
さらに、前記母材内に充填された放熱促進用の熱伝導性粒子を備える
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性粒子が、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する熱伝導性粉末を前記母材に混合することにより前記母材内に充填される
請求項2に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項4】
前記磁性粒子が、アモルファス金属粒子である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項5】
前記磁性粒子が、結晶化した金属粒子及び金属合金粒子の少なくとも一方である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項6】
前記磁性粒子が、フェライト粒子である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性粉末が、熱伝導性セラミックスの粉末、金属粉末、及び、絶縁材料でコーティングされた金属粉末からなる群から選ばれる少なくとも一つである
請求項3に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項8】
前記電磁波抑制放熱用組成物が成形体である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項9】
前記電磁波抑制放熱用組成物がシート状部材である
請求項8に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項10】
前記電磁波抑制放熱用組成物がペースト状組成物である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項11】
前記電磁波抑制放熱用組成物がゲル状組成物である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項12】
{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を用意するステップと、
前記磁性粉末を高分子材料または低分子材料からなる母材に混合するステップと
を含む電磁波抑制放熱用組成物の製造方法。
【請求項13】
さらに、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する放熱促進用の熱伝導性粉末を前記母材に混合するステップを含む
請求項12に記載の電磁波抑制放熱用組成物の製造方法。
【請求項1】
高分子材料または低分子材料からなる母材と、
{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を前記母材に混合することにより前記母材内に充填された磁性粒子と
を備える電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項2】
さらに、前記母材内に充填された放熱促進用の熱伝導性粒子を備える
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性粒子が、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する熱伝導性粉末を前記母材に混合することにより前記母材内に充填される
請求項2に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項4】
前記磁性粒子が、アモルファス金属粒子である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項5】
前記磁性粒子が、結晶化した金属粒子及び金属合金粒子の少なくとも一方である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項6】
前記磁性粒子が、フェライト粒子である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性粉末が、熱伝導性セラミックスの粉末、金属粉末、及び、絶縁材料でコーティングされた金属粉末からなる群から選ばれる少なくとも一つである
請求項3に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項8】
前記電磁波抑制放熱用組成物が成形体である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項9】
前記電磁波抑制放熱用組成物がシート状部材である
請求項8に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項10】
前記電磁波抑制放熱用組成物がペースト状組成物である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項11】
前記電磁波抑制放熱用組成物がゲル状組成物である
請求項1に記載の電磁波抑制放熱用組成物。
【請求項12】
{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する磁性粉末を用意するステップと、
前記磁性粉末を高分子材料または低分子材料からなる母材に混合するステップと
を含む電磁波抑制放熱用組成物の製造方法。
【請求項13】
さらに、{タップ密度/密度}≧0.58の関係を有する放熱促進用の熱伝導性粉末を前記母材に混合するステップを含む
請求項12に記載の電磁波抑制放熱用組成物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−183033(P2010−183033A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27744(P2009−27744)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]