説明

電磁波減衰用シート及び電子機器

【課題】 ケースとカバーの間に生じる非常に小さな隙間から漏れ出る電磁波を抑制するための技術を提供することを課題とする。
【解決手段】 帯状の誘電体12の両面とその間で長手方向に延在する端面のうちの一方の端面とを覆うように電磁波反射層14を設ける。誘電体12上に形成された電磁波反射層14上に導電性接着材16を設ける。誘電体12の端面のうち他方の端面12aは電磁波反射層14から露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波減衰用シートに係り、より詳細には、光モジュールのような高周波信号を扱う電子機器の筐体の間隙から漏洩する電磁波を減衰させるための電磁波減衰用シート及びそのような電磁波減衰用シートが設けられた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の分野において、光信号を電気信号に変換し又は電気信号を光信号に変換するための装置として光モジュールが用いられる。一般的に、光モジュールでは、高周波信号処理を行う回路が形成されたプリント基板や光電変換を行なうための光半導体及びその他の構成部品が金属製の筐体に収納される。
【0003】
光モジュールの筐体は、内部の部品を交換したり修理したりできるように、ケースとカバーに分けられることが多い。ケースにカバーをネジ止めして内部の部品を完全に包囲する一つの筐体が形成される。これにより、ネジを外してカバーを開いてケースの中の部品にアクセスことができる。
【0004】
光モジュールは例えば10GHzといった高周波数の信号を扱うことが多い。そのうえ、光モジュールで扱う信号はデジタル信号であり、10GHzに対して2倍の20GHz、3倍の30GHzといった高調波が発生する。このような高周波数の電磁波は、ケースの僅かな隙間からでも漏れ出し易いことが知られている。したがって、ケースから漏れ出した電磁波が他の機器や人体に影響を及ばさないように、ケースから漏れ出る電磁波を抑制する必要がある。
【0005】
ここで、上述のようにケースにカバーをネジ止めした構造では、見た目ではケースとカバーの間に隙間が無いようであっても、細かく見ると非常に小さな隙間が形成されていることがある。上述の高調波のような高周波数の電磁波は、このような非常に小さな隙間を容易に通過する特性を有しており、隙間からケースの外に漏れ出してしまう。
【0006】
このような電磁波の漏洩を防ぐために、例えばネジ止め用のネジの本数を増やしてカバーをケースに強固に押し付けて隙間が生じないようにしている。この場合、完全に隙間を無くすことは難しく、また、ネジ孔の加工やネジ本数の増加及び組み立て作業が増えることにより光モジュールの製造コストが上昇するという問題がある。
【0007】
そこで、ケースと蓋の間に導電性クッション材を挟み込むことが提案されている。導電性クッション材は、例えばシリコンゴムなどの絶縁性のクッション材に導電性の微粒子や微小繊維を混ぜ合わせ、導電性を付与したものである。導電性クッション材は、ケースの端面とカバーの端面の両方に密着させる必要があるため、一般的に硬化前の柔らかい材料をケースあるいは蓋の面に塗布し、蓋をケースに組み付けてから硬化させることが多い。導電性クッション材は硬化した後も適度な弾性を有し、ケース及び蓋に密着した状態を維持することができる。
【0008】
上述の導電性クッション材は、ケース又はカバーの全周にわたってほぼ均一に塗布する必要があるが、塗布の方法にはある程度の技術が必要であり、専門の業者に委託することが多い。したがって、導電性クッション材を用いる方法も、光モジュールの製造工程数を増大させ、製造コストを上昇させるという問題を含んでいた。
【0009】
筐体の内面をシールドして漏洩電磁波を抑制する技術として、シールドケースの内面に薄い誘電体を貼り付け、その内側にさらに薄い導電体を貼り付けて、誘電体を導電体で挟み込んでサンドイッチ形状とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば、誘電体を導電体で挟み込むことにより、低周波数成分の電源ノイズを除去することができる。また、合成樹脂製のケースの内面に、ウレタン膜の間に銅膜を挟み込んだシートを貼り付けてシールドする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−231924号公報
【特許文献2】特開平9−172287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2で提案されている技術は、ケースとカバーの間に生じる隙間をシールドする方法ではなく、ケースの内面全体をシールドする技術である。これらの技術では、ケースとカバーの間に生じる非常に小さな隙間から漏れ出る電磁波を抑制することはできない。
【0011】
したがって、ケースとカバーの間に生じる非常に小さな隙間から漏れ出る電磁波を抑制するための技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の問題を解決するために、帯状の誘電体と、該誘電体の両面と該両面の間で長手方向に延在する端面のうちの一方の端面とを覆うように設けられた電磁波反射層とを有し、前記誘電体の前記端面のうち他方の端面は前記電磁波反射層から露出していることを特徴とする電磁波減衰用シートが提供される。
【0013】
また、作動時に不要な電磁波を周囲に放出する回路部品と、該回路部品を収容するケースと、該ケースの開口部を覆うカバーと、前記ケースと前記カバーのうち少なくとも一方の内面に貼り付けられた上述の第1の電磁波減衰用シートとを有し、前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体が露出した端面は、前記ケースと前記カバーとが当接する面に平行となるように配置されることを特徴とする電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0014】
上述の電磁波減衰用シートによれば、電子機器の筐体となるケースとカバーの当接面に形成される非常に小さな間隙から筐体外に電磁波が漏洩することを抑制することができる。すなわち、隙間から漏洩しようとする電磁波の位相と、電磁波減衰用シートの端面から入射して電磁波反射層で反射して該端面から出てきた電磁波の位相とが互いに180度異なるように設定しておけば、電磁波が打ち消し合い、漏洩しようとする電磁波が減衰する。したがって、ケース又はカバーの内面に電磁波減衰用シートを貼り付けるだけで、電磁波の漏洩を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は一実施形態による電磁波減衰用シート10の平面図である。図2は図1に示す電磁波減衰用シート10のII−II線に沿った断面図である。なお、図2において電磁波減衰用シート10の厚み方向の寸法は拡大して示されている。
【0017】
電磁波減衰用シート10は、後述のように電子機器の筐体の内壁に貼り付けて漏洩電磁波を減衰させるためのシート材である。電磁波減衰用シート10は、フィルム状あるいはテープ状のシート材であり、電磁波をシールドする機能を有することから、シールドテープとも称される。電磁波減衰用シート10は、図2に示されるように、ベースとなる誘電体フィルム12と、誘電体フィルム12の両面及び端面に形成された電磁波反射層14とを有する。
【0018】
誘電体フィルム12は、マイラー、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂のような誘電体により形成されたフィルム又はテープである。誘電体フィルム12の厚みに限定はないが、例えば0.05mm〜0.1mm程度の厚みであると柔軟性があり、ケースの内面に容易に貼り付けることができる。
【0019】
電磁波反射層14は電磁波を反射する材料であればどのような材料でもよいが、ケースと同電位(接地電位)とするために導電性を有することが好ましい。電磁波反射層14は、例えば誘電体フィルム12上に金属を蒸着して形成した金属膜とすることが好ましい。蒸着する金属としては、良導電性の金属として例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)が用いられる。銅を用いた場合、銅膜の上にニッケル(Ni)膜を形成しておくことが好ましい。電磁波反射層14の厚みに特に限定はないが、10μm程度の厚みがあれば十分である。
【0020】
電磁波反射層14は、誘電体フィルム12の両面及び端面を覆うように設けられるが、誘電体フィルム12の長手方向に延在する端面のうち一方の端面12aだけには設けられない。すなわち、誘電体フィルム12の長手方向に延在する端面12aだけは電磁波反射層14から露出した状態となっている。後述のように、端面12aから電磁波が誘電体フィルム12内に入り、反対側の端面に形成された電磁波反射層14で反射されて端面12aから出て行くようになっている。
【0021】
電磁波減衰用シート10の片面には導電性接着材16が設けられている。導電性接着材16は、例えば導電性を有する粘着テープとすることが好ましい。導電性を有する粘着テープとして、例えば導電性を有する金属粉を粘着剤に混ぜたものが知られている。導電性接着材16は、粘着剤に限定されることはなく、導電性が付与された接着剤であってもよい。電磁波減衰用シート10に必ずしも導電性接着材16を設けておく必要はなく、電磁波減衰用シート10を貼り付ける側(すなわち、筐体の内面)に予め導電性接着材を貼り付け又は塗布しておき、電磁波減衰用シートを貼り付けることとしてもよい。電磁波減衰用シート10の機能として必要な構成要素は、誘電体フィルム12及び電磁波反射層14であり、導電性接着材16は貼り付けを容易にするための付加的な要素である。
【0022】
次に、電磁波減衰用シート10の作用について図3及び図4を参照しながら説明する。電磁波減衰用シート10は、図3に示すように、電子機器の筐体であるケース20の内面に貼り付けられる。ケース20は金属製の箱状の収容部材であり、金属製のカバー22を取り付けることによりケース20の開口部は閉鎖される。これにより、回路部品は金属製のケース20及びカバー22により形成された筐体の中に収容され、回路部品からの電磁波が筐体の外へ漏洩しない。ただし、ケース20とカバー22の間に隙間があると、非常に小さな隙間であっても高周波数の電磁波はこの隙間を通り抜けて筐体外部に漏れ出してしまう。この電磁波漏洩を抑制するために電磁波減衰用シート10が筐体の内面に貼り付けられる。
【0023】
図3に示す例では、筐体の一部であるケース20の内面の全周にわたって電磁波減衰用シート10が貼り付けられている。電磁波減衰用シート10は、図4に示すように、誘電体フィルム12の露出した端面12aがケース20の上端面20aに平行あるいは同一面となるように、ケース20の側壁に貼り付けられる。ケース20の上端面20aはカバー22の下端面22aが当接する面であるが、平面度や押し付け具合の関係で、上端面20aと下端面22aの間に非常に小さな隙間が形成されることがある。この隙間から電磁波が外に漏洩しようとすると、漏洩しようとする電磁波の一部は電磁波減衰用シート10の誘電体フィルム12の端面12aから誘電体フィルム12の内部へと入り込む。
【0024】
誘電体フィルム12の内部に入った電磁波は、端面12aの反対側の端面に進み、そこで電磁波反射層14により反射され、端面12aに戻ってくる。ここで、誘電体フィルムの長さL(誘電体フィルムの幅に相当する)が電磁波の波長λの1/4であるとすると、電磁波が端面12aに入ってから反対端面で反射され端面12aから出て行くまでに、電磁波は(λ/4)×2=λ/2の距離だけ誘電体フィルム12内を進んでいる。
【0025】
したがって、誘電体フィルム12の端面12aの上を通過していく漏洩電磁波に対して、誘電体フィルム12の端面12aから出てくる電磁波の位相は180度ずれて逆位相となっている。これにより漏洩しようとする電磁波と端面12aから出てきた電磁波は互いに打ち消しあって減衰することとなり、電磁波漏洩は抑制される。
【0026】
ここで、電磁波の波長λは、真空中での波長がλ0であるとすると、誘電体内ではλ0より短くなる。誘電体フィルム12内での波長λ1は、誘電体の比誘電率をεrとするとλ1=λ0/(εr)1/2で表される。例えば、ポリエステルフィルムの比誘電率εrは約3(εr≒3)であるから、誘電体フィルム12としてポリエステルフィルムを用いると、誘電体フィルム12内での波長λ1は、真空中の波長λ0の約0.6倍(1/31/2=1/1.732≒0.6)となる。
【0027】
このように、比誘電率の大きい誘電体を誘電体フィルム12として用いることで、誘電体フィルム12の幅(長さL)、すなわち電磁波減衰用シート10の幅を小さくすることができる。したがって、ケース20の内壁に十分な深さが無くても、取り付け可能な幅の電磁波減衰用シートとすることができる。
【0028】
例えば、10GHzの電磁波の漏洩を抑制しようとすると、10GHzの電磁波の真空中の波長λ0は約30mmであるから、誘電体フィルム12としてポリエステルフィルムを用いた場合、電磁波減衰用シート10の幅(すなわち誘電体フィルム12の幅≒λ1/4)は、λ1/4=λ0/4(εr)1/2により求められ、約4.2mmとなる。このような幅のテープであれば、ケースの厚みが小さくても内壁に貼り付けるスペースを確保することができる。
【0029】
図4に示す例ではケース20の内壁に電磁波減衰用シート10を貼り付けているが、図5に示すように電磁波減衰用シート10をケース20とカバー22の両方に貼り付けてもよい。あるいは、図示はしないが、ケース20に電磁波減衰用シート10を貼り付けるためのスペースが確保できないような場合は、カバー22だけに電磁波減衰用シート10を貼り付けることとしてもよい。
【0030】
また、図6に示すように、ケース20には幅Lの誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10を貼り付け、カバー20には幅の異なる電磁波減衰用シート10を貼り付けてもよい。これにより、異なる周波数の複数の電磁波に対して漏洩を抑制することができる。図6に示す例の場合、カバー22側に幅L/2の誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10を貼り付けている。したがって、ケース20側の幅Lの誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10によって例えば10GHzの電磁波の漏洩を抑制しているとすると、カバー22側の幅L/2の誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10により20GHzの電磁波の漏洩を抑制することができる。
【0031】
誘電体フィルム12の幅は、L/2に限られず漏洩を抑制したい周波数に合わせて決定することができる。例えば、10GHzの電磁波と15GHzの電磁波の漏洩を抑制したいのであれば、10GHz用として幅Lの誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10と、15GHz用として幅2L/3の誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10を用いればよい。
【0032】
2枚以上の電磁波減衰用シート10を貼り付ける場合、図7に示すように、幅の大きい電磁波減衰用シート10の上に幅の小さな電磁波減衰用シートを貼り付けることとしてもよい。図7に示す例の場合、幅L/2の誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10を幅Lの誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10の上に重ねて貼り付けている。したがって、図6に示す例と同様に、幅Lの誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10によって例えば10GHzの電磁波の漏洩を抑制しているとすると、重ねて貼り付けた幅L/2の誘電体フィルム12を有する電磁波減衰用シート10により20GHzの電磁波の漏洩を抑制することができる。
【0033】
ここで、電磁波減衰用シート10による電磁波漏洩の抑制効果を確認するために行なったシミュレーションの結果について説明する。
【0034】
図8はシミュレーションで求めた電磁波の減衰量を示すグラフである。図8に示すグラフにおいて、周波数5GHzから40GHzまで電磁波の減衰量が示されている。点線は、ケースとカバーの間の隙間を0.1mmとした場合の減衰量を示し、実線は0.1mmの隙間の近傍に10GHzの電磁波を抑制するための電磁波減衰用シート10を設けた場合の減衰量を示している。減衰させるべき電磁波の周波数を10GHzとし、誘電体フィルム12の比誘電率εrは4とした。この条件で、誘電体フィルム12の長さL(幅)は3.75mmとなる。
【0035】
電磁波減衰用シート10が設けられない場合(点線で示す)でも、隙間が0.1mmと小さいので、電磁波はある程度減衰し、5GHz〜40GHzの間で減衰量はほぼ70dB程度となる。一方、10GHz用の電磁波減衰用シート10を設けた場合(実線で示す)は、10GHzにおいて減衰量は80dBを越え、且つ30GHzにおいて減衰量は90dBとなる。30GHzにおいても減衰量のピークが現れるのは、10GHzに対する波長(λ/4)×2=λ/2は、30GHzに対する波長3λ/4×2=3λ/2となり、30GHzの電磁波に対しても打ち消し合いが生じて減衰するためである。
【0036】
上述のシミュレーション条件において、誘電体フィルム12の長さL(幅)を半分の1.875mmとして同様にシミュレーションを行なった。その結果を図9に示す。誘電体フィルム12の長さL(幅)を半分とすることは、10GHの倍の20GHzの波長のλ/4とすることであり、20GHzに対して減衰の効果が現れる。図9に示すグラフでは20GHzにおいて減衰率が80dBを越えおり、10dB以上の改善が見られる。
【0037】
次に、上述の誘電体フィルム12の長さL(幅)を3.75mmとした電磁波減衰用シート10に、誘電体フィルム12の長さL(幅)を1.875mmとした電磁波減衰用シート10を重ねて貼り付けた場合を想定してシミュレーションを行なった。図10はシミュレーション結果を示すグラフである。図10のグラフからわかるように、電磁波減衰用シート10を重ね貼りした場合(実線で示す)は、電磁波減衰用シート10を設けない場合(点線で示す)より、5GHz〜40GHzのほぼ全域にわたって減衰量が10〜20dB改善されることがわかった。また、減衰量としても、10GHzにおいて80dBを越えており、十分な抑制効果があることがわかった。
【0038】
上述の電磁波減衰用シート10は、不要な電磁波を周囲に放出する回路部品を筐体内に収容した電子機器に用いられる。そのような電子機器の一例として、光通信に用いられる光モジュールがある。
【0039】
図11は光モジュールのカバーを開いた状態の斜視図である。光モジュールの構成部品は金属製のケース30内に収容され、金属製のカバー32によりケース30の開口部が閉鎖される。ケース30とカバー32により筐体が形成される。
【0040】
ケース30内に収容される構成部品として、光ファイバ34からの光信号を電気信号に変換するフォトダイオード36、電気信号を光信号に変換するレーザダイオード38などがある。フォトダイオード36、レーザダイオード38、及び信号処理回路を形成する電子部品は、電気回路基板40に搭載され、電気回路基板40がケース30に収容される。ケース30内には、レーザダイオードからの光信号を変調する光変調器42なども収容される。
【0041】
電気回路基板40に搭載されたフォトダイオード36やレーザダイオード38及び電子部品は高周波デジタル信号を扱うものであり、これらの回路部品からは不要な電磁波が周囲に放出される。ケース30とカバー32の間に隙間があると、不要な電磁波はこの隙間を通過して光モジュールの外部に漏洩してしまう。そこで、図11に示す光モジュールでは、カバー32の内側面32aに電磁波減衰用シート10を貼り付けて、電磁波の漏洩を抑制する。図11に示す光モジュールでは、ケース30の内側面に電磁波減衰用シート10を貼り付けるスペースが無いので、カバー32の内側面32aに電磁波減衰用シート10を貼り付けている。ケース30側にスペースを確保できるのであれば、ケース30の内側面に電磁波減衰用シートを貼り付けてもよい。
【0042】
以上の如く、本明細書は以下の事項を開示する。
(付記1)
帯状の誘電体と、
該誘電体の両面と該両面の間で長手方向に延在する端面のうちの一方の端面とを覆うように設けられた電磁波反射層と
を有し、
前記誘電体の前記端面のうち他方の端面は前記電磁波反射層から露出していることを特徴とする電磁波減衰用シート。
(付記2)
付記1記載の電磁波減衰用シートであって、
前記電磁波反射層上に設けられた導電性接着材をさらに有することを特徴とする電磁波減衰用シート。
(付記3)
付記1又は2記載の電磁波減衰用シートであって、
前記誘電体は帯状の樹脂フィルムであり、前記電磁波反射層は該樹脂フィルム上に生成した金属膜であることを特徴とする電磁波減衰用シート。
(付記4)
作動時に不要な電磁波を周囲に放出する回路部品と、
該回路部品を収容するケースと、
該ケースの開口部を覆うカバーと、
前記ケースと前記カバーのうち少なくとも一方の内面に貼り付けられた付記1乃至3のうちいずれか一項記載の第1の電磁波減衰用シートと
を有し、
前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体が露出した端面は、前記ケースと前記カバーとが当接する面に平行となるように配置されることを特徴とする電子機器。
(付記5)
付記4記載の電子機器であって、
前記第1の電磁波減衰用シートは、前記ケースの内面の全周にわたって設けられていることを特徴とする電子機器。
(付記6)
付記4又は5記載の電子機器であって、
前記回路部品が周囲に放出する電磁波の波長をλ0とし、前記誘電体の比誘電率をεrとすると、前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体の幅はλ0/(4(εr)1/2)であることを特徴とする電子機器。
(付記7)
付記4乃至6のうちいずれか一項記載の電子機器であって、
付記1又は2記載の第2の電磁波減衰用シートをさらに有し、
前記第1の電磁波減衰用シートは前記ケースの内面に貼り付けられ、前記第2の電磁波減衰用シートは前記カバーの内面に貼り付けられることを特徴とする電子機器。
(付記8)
付記4乃至6のうちいずれか一項記載の電子機器であって、
付記1又は2記載の第2の電磁波減衰用シートをさらに有し、
前記第1の電磁波減衰用シートは前記ケースの内面に貼り付けられ、前記第2の電磁波減衰用シートは前記第1の電磁波減衰用シートに貼り付けられることを特徴とする電子機器。
(付記9)
付記7又は8記載の電子機器であって、
前記第2の電磁波減衰用シートの誘電体の幅は、前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体の幅とは異なることを特徴とする電子機器。
(付記10)
付記9記載の電子機器であって、
前記第2の電磁波減衰用シートの誘電体の幅は、前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体の幅の1/2であることを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電磁波減衰用シートの平面図である。
【図2】図1に示す電磁波減衰用シートのII−II線に沿った断面図である。
【図3】電子機器のケースに電磁波減衰用シートを貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】電磁波減衰用シートをケースに貼り付けた状態の断面図である。
【図5】電磁波減衰用シートをケースとカバーの両方に貼り付けた状態の断面図である。
【図6】幅の異なる電磁波減衰用シートをケースとカバーに貼り付けた状態の断面図である。
【図7】複数の電磁波減衰用シートをケースに重ね貼りした状態の断面図である。
【図8】10GHzの電磁波の漏洩を抑制する条件でシミュレーションを行なった結果を示すグラフである。
【図9】20GHzの電磁波の漏洩を抑制する条件でシミュレーションを行なった結果を示すグラフである。
【図10】10GHz及び20GHzの電磁波の漏洩を抑制する条件でシミュレーションを行なった結果を示すグラフである。
【図11】光モジュールのカバーを開いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10 電磁波減衰用シート
12 誘電体フィルム
12a 端面
14 電磁波反射層
16 導電性接着材
20 ケース
20a 上端面
22 カバー
22a 下端面
30 ケース
32 カバー
32a 内側面
34 光ファイバ
36 フォトダイオード
38 レーザダイオード
40 電気回路基板
42 光変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の誘電体と、
該誘電体の両面と該両面の間で長手方向に延在する端面のうちの一方の端面とを覆うように設けられた電磁波反射層と
を有し、
前記誘電体の前記端面のうち他方の端面は前記電磁波反射層から露出していることを特徴とする電磁波減衰用シート。
【請求項2】
請求項1記載の電磁波減衰用シートであって、
前記誘電体は帯状の樹脂フィルムであり、前記電磁波反射層は該樹脂フィルム上に生成した金属膜であることを特徴とする電磁波減衰用シート。
【請求項3】
作動時に不要な電磁波を周囲に放出する回路部品と、
該回路部品を収容するケースと、
該ケースの開口部を覆うカバーと、
前記ケースと前記カバーのうち少なくとも一方の内面に貼り付けられた請求項1又は2記載の第1の電磁波減衰用シートと
を有し、
前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体が露出した端面は、前記ケースと前記カバーとが当接する面に平行となるように配置されることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3記載の電子機器であって、
前記回路部品が周囲に放出する電磁波の波長をλ0とし、前記誘電体の比誘電率をεrとすると、前記第1の電磁波減衰用シートの誘電体の幅はλ0/(4(εr)1/2)であることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3又は4記載の電子機器であって、
請求項1又は2記載の第2の電磁波減衰用シートをさらに有し、
前記第1の電磁波減衰用シートは前記ケースの内面に貼り付けられ、前記第2の電磁波減衰用シートは前記カバーの内面に貼り付けられることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−45154(P2010−45154A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207761(P2008−207761)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】