説明

電磁波発生素子、電磁波集積素子、及び電磁波検出装置

【課題】 伝搬させたい方向にエネルギー的に効率良くテラヘルツ波を伝搬させることのできる電磁波発生素子の提供。
【解決手段】 キャリア発生層101で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が、第1の領域106と、第2の領域107とを備えている。第1の領域106は、前記テラヘルツ波が第1の方向110に伝搬する領域である。第2の領域107は、該第1の領域106とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向110とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面108を構成する領域である。前記反射界面108を経由せずに前記第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとする。このとき、前記キャリア発生層101へ光が照射される照射位置109から前記反射界面108までの距離がD未満となるように、前記伝送線路が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を発生する素子に関する。また、本発明は、電磁波を発生する素子と電磁波を検出する素子とを集積した素子、及び電磁波を検出する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯域からテラヘルツ(THz)波帯域の電磁波(0.03THz〜30THz)を用いて、非破壊的に物質の分析や同定を行う検査技術が開発されている。生体分子等の物質は、その構造や状態に由来し、テラヘルツ波帯域に吸収スペクトルが存在する。テラヘルツ波はX線よりも安全であるため、イメージング技術への応用が期待されている。
【0003】
ここで、テラヘルツ波を発生する素子とテラヘルツ波を検出する素子とを、伝送線路に集積する技術が、非特許文献1に開示されている。非特許文献1の素子を上から見た模式図を、図20に示した。
【0004】
図20の素子は、第1の電極2201、第2の電極2202、テラヘルツ波発生部2204、誘電体2205から構成されている。第1の電極2201と第2の電極2202とに電圧を印加する。照射位置2203は、第1の電極2201と第2の電極2202との間に光を照射する位置である。照射位置2203に光を照射することにより、テラヘルツ波発生部2204でテラヘルツ波が発生する。
【0005】
ここで、第1の電極2201と第2の電極2202は、テラヘルツ波を伝搬させるための電極でもある。テラヘルツ波発生部2204で発生したテラヘルツ波は、各電極により構成される伝送線路に結合する。これにより、テラヘルツ波は伝送線路を伝搬する。
【非特許文献1】Applied Physics Letters,vol.70,p.2233,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1で示した形態の場合、発生したテラヘルツ波は、素子の構成上、主に2つの方向に伝搬する。第1の電極2201に結合して第1の方向2206に伝搬するテラヘルツ波と、第2の電極2202に結合して第2の方向2207に伝搬するテラヘルツ波である。前記素子の適用用途において必要なテラヘルツ波は、第1の方向2206に伝搬する成分だけの場合がある。この場合においては、発生したテラヘルツ波に対し、第2の方向2207に伝搬するテラヘルツ波は、エネルギー的な損失となり、好ましくない。できるだけ、第1の方向2206にテラヘルツ波を伝搬させた方が、発生したテラヘルツ波のエネルギーを有効利用でき、効率が良いと言える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電磁波発生素子は、
光照射によってキャリアを発生させるキャリア発生層と、
前記キャリア発生層の第1の面側に設けられ、且つ前記キャリア発生層に電圧を印加するための第1の電極と、
前記キャリア発生層の前記第1の面に対向する第2の面側に設けられ、且つ前記第1の電極に対して基準となる電位を規定するための基準電極と、を有する電磁波発生素子であって、
前記キャリア発生層で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が前記第1の電極を含み構成されており、
前記伝送線路は、前記テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面を構成する第2の領域とを備えており、且つ
前記反射界面を経由せずに前記第1の方向に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとした場合に、前記キャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記反射界面までの距離がD未満となるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、別の本発明に係る電磁波発生素子は、
光照射によってキャリアを発生させるキャリア発生層と、
前記キャリア発生層に設けられ、且つ前記キャリア発生層に電圧を印加するための第1の電極と、
前記キャリア発生層に設けられ、且つ前記第1の電極に対して基準となる電位を規定するための基準電極と、を有する電磁波発生素子であって、
前記キャリア発生層で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が前記第1の電極を含み構成されており、
前記伝送線路は、前記テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面を構成する第2の領域とを備えており、且つ
前記反射界面を経由せずに前記第1の方向に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとした場合に、前記キャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記反射界面までの距離がD未満となるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、別の本発明に係る電磁波発生素子は、
光照射によってキャリアを発生させるキャリア発生層と、
前記キャリア発生層の第1の面側に設けられ、且つ前記キャリア発生層に電圧を印加するための第1の電極と、
前記キャリア発生層の前記第1の面に対向する第2の面側に設けられ、且つ前記第1の電極に対して基準となる電位を規定するための基準電極と、を有する電磁波発生素子であって、
前記キャリア発生層で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が前記第1の電極を含み構成されており、
前記伝送線路は、
前記テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面を構成する第2の領域とを備えており、且つ
前記反射界面を経由せずに前記第1の方向に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとした場合に、前記キャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記反射界面までの距離が0.5D以下となるように構成され、前記第1の領域の屈折率が、前記第2の領域の屈折率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明した本発明によれば、発生したテラヘルツ波のエネルギーを有効利用することのできる電磁波発生素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態:電磁波発生素子)
第1の実施形態に係る電磁波発生素子について、図1を用いて説明する。ここで、本実施形態に係る素子は、ストリップ線路構造であるが、本発明はこれに限らず、例えば、コプレーナ導波路構造でも良い。
【0012】
図1(a)は、素子を上から見た模式図である。また、図1(b)は、図1(a)の素子を、A−A´を通る断面で切断したときの模式図である。
【0013】
101は、光照射によってキャリアを発生させるキャリア発生層である。キャリア発生層101としてガリウムヒ素(GaAs)やインジウムガリウムヒ素(InGaAs)等の半導体材料が適用できる。本発明において、キャリア発生層101の材料や膜厚は、特に限定されるものではなく、光照射によってキャリアが発生する材料であればよい。
【0014】
102は、前記キャリア発生層101の第1の面側(103は第1の面)に設けられ、且つ前記キャリア発生層101に電圧を印加するための第1の電極である。本発明において、第1の電極102の材料、厚み、大きさ等は特に限定されるものではなく、既知の導体を用いることができる。
【0015】
105は、前記キャリア発生層の前記第1の面103に対向する第2の面側(104は第2の面)に設けられ、且つ前記第1の電極102に対して基準となる電位を規定するための基準電極である。本発明において、基準電極105の材料、厚み、大きさ等は、特に限定されるものではなく、既知の導体を用いることができる。
【0016】
ここで、前記キャリア発生層101で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が、前記第1の電極102を含み構成されている。
【0017】
また、前記伝送線路は、第1の領域106と、第2の領域107とを備えている。
【0018】
前記第1の領域106は、前記テラヘルツ波が第1の方向110に伝搬する領域である。
【0019】
前記第2の領域107は、該第1の領域106とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向110とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面108を構成する領域である。
【0020】
ここで、前記反射界面108を経由せずに前記第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとする。このとき、前記キャリア発生層101へ光が照射される照射位置109から前記反射界面108までの距離がD未満となるように、前記伝送線路が構成されている。なお、上述した距離Dは、半値幅から換算され、前記伝送線路が有する屈折率分布を考慮した実効的な距離と換言できる。
【0021】
ここで、キャリア発生層101へ光が照射される照射位置109は、発生するテラヘルツ波が第1の電極102と結合することのできる位置であることが望ましい。
【0022】
また、本実施形態では、キャリア発生層101、第1の電極102と基準電極105によって、テラヘルツ波を伝搬する伝送線路を構成している。特に、図1の構成はマイクロストリップ線路と呼ばれる構造である。
【0023】
(その他の構造)
伝送線路の構造は、その他の態様を取り得ることも可能である。例えば、基準電極を第1の電極102の側端に対し、ある間隔をもって隣接するように第1の面103に形成したストリップ線路構造が適用できる。
【0024】
また、図23のように、基準電極2312を第1の電極2302の両側端に対し、ある間隔をもって電極を隣接させるコプレーナ導波路構造が適用できる。この構造の場合、基準電極2312は、第1の面2303に設けられている。
【0025】
また、図24のように、第2の基準電極2412を第1の電極102の両側端に対し、ある間隔をもって電極を隣接させるグランド付コプレーナ導波路構造が適用できる(この構造については実施例8で詳述する)。また、第1の電極102のみで構成する単一線路構造を適用してもよい。要は、キャリア発生層101に対して、電圧を印加し、発生したテラヘルツ波を伝送線路に結合し得る伝送線路構造であればよい。これらの伝送線路構造は、使用する素子構成や、外部のシステムとの結合、テラヘルツ波の伝搬モードや伝搬特性に応じて、適宜選択することができる。
【0026】
(a)反射界面
次に、反射界面を設けるための構成について説明する。
【0027】
(a−1)前記基準電極と前記第1の電極の少なくとも1つの端部
反射界面は、前記基準電極と前記第1の電極の少なくとも1つの端部を用いて構成することができる。
【0028】
図1は、基準電極105の端を第1の領域106と第2の領域107の界面に設けることにより、反射界面108を構成している。図23は、コプレーナ導波路について、この反射界面の一構成例を示した図である。図23のように、反射界面2308は、基準電極2312の端を第1の領域2306と第2の領域2307の界面に設けることによって構成している。また、図24は、グランド付コプレーナ導波路について、この反射界面の一構成例を示した図である。図24のように、反射界面2408は、第2の面2404に設けられた基準電極(第1の基準電極2405)の端を第1の領域2406と第2の領域2407の界面に設けることによって構成している。ただし、反射界面108の構成はこれに限らない。反射界面は、第1の領域と第2の領域のインピーダンスが異なるように構成することにより、設けることができる。
【0029】
例えば、図2のような構成でも良い。ここで、図2(a)は、素子を上から見た図である。また、図2(b)は、図2(a)の素子を、B−B´を通る断面で切断したときの模式図である。図1との違いは、第1の電極202の端を第1の領域206と第2の領域207の境界に設けることにより、反射界面208を構成している点である。この形態は、図1の伝送線路構造(ストリップ線路構造)だけではなく、他の導波路構造にも適用できる。例えば、図23の構造(コプレーナ導波路構造)や図24の構造(グランド付コプレーナ導波路構造)において、第1の電極の端を第1の領域と第2の領域の境界に設けることにより、反射界面を構成することができる。
【0030】
(a−2)第1の電極にスタブ電極
反射界面は、スタブ電極を第1の電極に設けることにより構成することもできる。
【0031】
前記スタブ電極は、前記反射界面から前記第1の方向とは反対方向に向かって、該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波の実効的な波長の1/4離れた位置に配置され、且つ、前記スタブ電極の長さは該波長の1/4である。このスタブ電極の長さや位置は、反射させたいテラヘルツ波の波長に応じて調整される。
【0032】
詳細については、実施例2で述べる。
【0033】
(a−3)第1の電極の幅が不連続:ステップ電極
反射界面は、第1の電極の幅を不連続にすることにより構成することもできる。
詳細については、実施例3で述べる。
【0034】
(a−4)基準電極と第1の電極との距離を不連続
反射界面は、キャリア発生層で、反射界面を構成する位置について、基準電極と第1の電極との距離を不連続にすることにより構成することもできる。
詳細については、実施例4で述べる。
【0035】
(a−5)電極以外
ここで、第1の領域と第2の領域のインピーダンスが異なるような構成は、電極を用いたものに限らない。例えば、第1の領域と第2の領域の界面で、素子の層の材料や構造を異なる構成にすることにより、反射界面を構成しても良い。
例えば、反射界面は、キャリア発生層に、該キャリア発生層の屈折率とは異なる屈折率からなる材料を設けることにより構成することもできる。
詳細については、実施例5で述べる。
【0036】
(b)時間波形の半値幅から換算される距離D
続いて、前記反射界面108を経由せずに前記第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離Dについて、図3を用いて説明する。なお、上述した距離Dは、半値幅から換算される実効的な距離(時間波形の半値幅とテラヘルツ波が伝搬する速度との積)と換言することもできる。ここで、テラヘルツ波が伝搬する速度は、光速をテラヘルツが伝搬する部分の屈折率で割ることにより、求めることができる。
【0037】
図3は、図1のような素子の構成において、照射位置109から反射界面108までの距離によって、第1の方向101に伝搬するテラヘルツ波の波形が変化した様子を導出したものである。
【0038】
ここで、前記キャリア発生層101において発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波は以下の方向に伝搬すると仮定している。すなわち、前記反射界面108を経由せずに前記第1の方向110と、該第1の方向110とは反対方向である。また、上記方向に伝搬する2つのテラヘルツ波の強度が、各方向に等分に分配されていると仮定している。また、前記反射界面108を経由せずに前記第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波のピーク強度を1としている。さらに、反射界面108では、テラヘルツ波の波長領域にわたって損失無く反射するものと仮定している。
【0039】
図3(a)は、照射位置109から反射界面108までの距離を、0.0D、0.5D、1.0Dと変化させた時の時間波形を示したものである。
【0040】
図3(b)は、半値幅から換算される距離Dに対する照射位置109から反射界面108までの距離の比を横軸とし、この比に対するテラヘルツ波のピーク強度をプロットしたものである。
【0041】
図3から、照射位置109から反射界面108までの距離がDを超える位置にある場合について、以下のことが分かる。
【0042】
すなわち、前記反射界面108を経由せずに第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波と、第1の方向110とは反対の方向に伝搬するテラヘルツ波が前記反射界面108で反射して第1の方向に伝搬するテラヘルツ波とが、それぞれ孤立した波に近くなる。
【0043】
そして、照射位置109から反射界面108までの距離がD未満の範囲において、伝搬するテラヘルツ波の強度が上がっていることが分かる。これは、上記2つの方向に伝搬するテラヘルツ波が重なり合うためである。
【0044】
ここで、照射位置109から反射界面108までの距離は、好ましくは0.5D以下、更に好ましくは、0.0Dである。0.0Dのとき、反射界面は照射位置に設けられていることを意味している。ただし、本発明はこれらに限るものではない。
【0045】
なお、テラヘルツ波の時間波形の半値幅は、素子構成や、測定条件によって変化するため、実効的な距離も変化する。
【0046】
(c)電圧を印加する電極
キャリア発生層に光を照射することによってキャリアが発生する。このキャリアからテラヘルツ波を発生させるために、キャリアに電界を印加する。
【0047】
例えば、図1の素子構成では、第1の電極102と基準電極105に電圧を印加する。これにより、キャリア発生層101に電界を印加することができる。
【0048】
このとき、素子の膜厚方向に電圧を印加しているため、素子の膜厚を制御することによって、前記伝送線路に印加される電界強度を制御することができる。膜厚を薄くすれば電極間が短くなるため、同一の電圧の大きさで比較した場合、素子に印加される電界強度は強くなる。
【0049】
また、図4に表す模式図のように、キャリア発生層の第1の面403側に第2の電極411を設けた素子構成にして、第1の電極402と第2の電極411に電圧を印加する。このとき、光照射の照射位置409は、第1の電極402と第2の電極411の間となる。ここで、図4の素子は、図1の素子構成に第2の電極411を設けた構成を有している点が大きく異なる。
【0050】
また、図23と図24の素子構成では、キャリア発生層の第1の面2303、2403側に第2の電極2311及び2411を設けている。図23のように、第2の電極2311は、基準電極2312と電気的に切断(絶縁)されるために、基準電極2312中にある間隔離れて設けられる。図24の素子構成も同様に、第2の電極2411は、第2の基準電極2412中にある間隔離れて設けられる。この間隔の値によっては、テラヘルツ波の反射界面として作用することもあるが、例えば、距離Dに対して十分小さい値に設定することで、反射パルスの位置が伝搬するテラヘルツ波パルスの内部に吸収され影響を軽減できる。好ましくは、伝搬するテラヘルツ波の実効的な最短波長に対して、1/20から1/100程度の値にすることにより、この間隔は、テラヘルツ波に対して構造として認識することが困難となり、より影響を軽減することができる。
【0051】
また、図24のような構成の場合、第2の電極2411を用いず、上述したように、第1の電極2402と第1の基準電極2405に電圧を印加する形態も取り得る。
【0052】
(d)テラヘルツ波
本実施形態に係る電磁波発生素子を用いたとき、テラヘルツ波が発生して第1の方向に伝搬するまでの作用を、図1を用いて説明する。ここで、本発明に係る電磁波素子ならば、矛盾がない限り適用可能である。
【0053】
まず、第1の電極102と基準電極105とに電圧を印加することにより、キャリア発生層101に電界を印加する。このとき、照射位置109に光を照射することにより、発生したキャリアが電界により加速され、テラヘルツ波が発生する。ここで、照射位置109に照射する光は、キャリアの吸収波長に相当する励起光であることが望ましい。
【0054】
前記キャリア発生層101において発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波は、伝送線路を伝搬する。ここで、前記伝送線路は、前記第1の電極102を含み構成され、第1の領域106と第2の領域107とを備えている。
【0055】
このとき、テラヘルツ波は主に2つの方向に伝搬する。前記第1の領域106である第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波と、前記第1の方向110とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波である。
【0056】
ここで、第1の方向110は、前記第1の電極102に対し、できるだけ沿う方向であることが望ましい。これは、前記キャリア発生層101において発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波が、第1の電極102に結合することにより、伝搬するためである。
【0057】
本実施形態に係る電磁波発生素子は、第2の領域107と第1の領域106とはインピーダンスが異なっているため、第1の方向110とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面108を構成している。
【0058】
ここで、前記反射界面108を経由せずに前記第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとする。このとき、前記伝送線路は、前記キャリア発生層101へ光が照射される照射位置109から前記反射界面108までの距離がD未満となるように構成されている。例えば、図4の素子のとき、反射界面408は、第1の電極402と垂直に交わる第2の電極411の中心線との距離がD未満となるように構成されている。
【0059】
このとき、第1の方向110とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波は、反射界面で反射し、第1の方向110に伝搬するテラヘルツ波と重なり合う。これにより、2つの方向に伝搬するテラヘルツ波が合成され、強度が高まった状態となる。この結果、発生したテラヘルツ波は、エネルギー的に効率良く、第1の方向110に伝搬する。
【0060】
ここで、上述した反射界面は、すべての波長領域のテラヘルツ波を反射させているが、本発明はこれに限らず、特定の波長領域を反射させる構成であってもよい。
【0061】
(e)屈折率
本実施形態に係る電磁波発生素子は、前記第1の領域106の屈折率が、前記第2の領域107の屈折率よりも大きいことが望ましい。なお、上記屈折率は、実効的な屈折率と換言できる。
【0062】
これにより、第1の方向110とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波が、同位相で反射することができる。この結果、第1の方向110へ伝搬するテラヘルツ波と、反射界面から反射するテラヘルツ波が干渉することにより、テラヘルツ波の強度が高まる方向に作用する。また、このような屈折率分布を有することで、第1の方向110へ伝搬するテラヘルツ波の割合を多くすることができる。このため、第1の方向110とは反対方向に伝搬することによる、テラヘルツ波への影響(例えば損失)を軽減することができる。
【0063】
(第2の実施形態:電磁波発生素子と検出素子が集積化)
第2の実施形態に係る電磁波集積素子について説明する。なお、電磁波集積素子は、電磁波発生素子と電磁波検出素子とを少なくとも含み集積した素子である。
【0064】
電磁波発生素子は、第1の実施形態に係る電磁波発生素子を矛盾がない限り本実施形態に適用することができる。
【0065】
電磁波検出素子は、電磁波発生素子から伝搬してきたテラヘルツ波を、光照射によって発生するキャリアによって検出するための素子である。電磁波検出素子は、第1の実施形態の係る電磁波発生素子の構成と同様の構成を矛盾がない限り適用することができる。テラヘルツ波が電磁波検出素子に伝搬してきたとき、光照射によって検出用のキャリア発生層にキャリアが発生する。キャリアはテラヘルツ波の電界強度によって変動する。この光電流を検出することにより、テラヘルツ波の強度を測定することができる。
【0066】
また、テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向に伝搬するテラヘルツ波に対して検出用反射界面を構成する第3の領域とを備えている。
【0067】
ここで、検出用反射界面と第3の領域について、実施例1を説明するための図5を用いて説明する。まず、検出用反射界面は、第2反射界面のことである。前記電磁波発生素子のキャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記検出用反射界面までの距離が前記D未満となるように構成されている。検出用反射界面には、第1の実施形態で述べた設け方を矛盾がない限り適用することができる。また、第3の領域は、前記第2反射界面より右側の素子のことを指している。
【0068】
また、この電磁波集積素子は、電磁波発生素子で発生したテラヘルツ波を、電磁波検出素子に伝搬させる伝搬部を有していてもよい。この伝搬部は、電磁波発生素子及び電磁波検出素子と同様の伝送線路型の構成である。すなわち、複数の電極と誘電体で構成され、これらの一部は、電磁波発生素子または電磁波検出素子と共用する。誘電体は、樹脂材料や半導体材料が適用できる。例えば、樹脂材料として、高周波用の樹脂材料としてよく使用されるベンゾシクロブテン(BCB)が適用可能である。また、ポリエチレン系やポリオレフィン系の樹脂材料を用いることができる。半導体材料を用いる場合、例えば、半絶縁性シリコン(SI−Si)のような半導体材料が適用できる。また、キャリア発生層と同じ材料を適用することもできる。好ましくは、これらの材料は、テラヘルツ波に対して損失の小さい材料がよい。
【0069】
以上の構成により、伝送線路を伝搬するテラヘルツ波が第2の反射界面で反射し、テラヘルツ波の強度が高まる。これにより、テラヘルツ波を効率的に検出することができる。
【0070】
(第3の実施形態:電磁波検出装置)
第3の実施形態に係る電磁波検出装置について説明する。
【0071】
まず、電磁波集積素子を有する。電磁波集積素子には、第2の実施形態に係る電磁波集積素子を用いることができる。
【0072】
次に、前記電磁波発生素子及び前記電磁波検出素子のキャリア発生層に光を照射する光照射手段を有する。
また、前記基準電極と前記第1の電極に電圧を印加する電圧印加手段を有する。
さらに、前記電磁波検出素子に伝搬されたテラヘルツ波の光電流を検出する光電流検出手段を有する。
【0073】
以上の電磁波検出装置は、検査装置等に用いることが可能である。検査装置については、実施例7で詳細に述べる。
【実施例】
【0074】
(実施例1:基準電極の端部)
実施例1について、図5を用いて説明する。
【0075】
図5(a)は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。テラヘルツ波を伝搬する伝送線路に、テラヘルツ波を発生する素子と検出する素子が集積されている。また、図5(b)は、本実施例の変形例を説明するための模式図である。
【0076】
図5のように、本実施例の電磁波集積素子は、伝搬部503、テラヘルツ波を発生する第1光伝導部502、テラヘルツ波を検出する第2光伝導部504とを有する。以下、励起光を照射する部分を含み、キャリア発生層の端部から反射界面までの領域を光伝導部と定義する。また、反射界面を介し、光伝導部と対向する領域を反射領域と定義する。本実施例における反射界面は、前記基準電極の端部を用いて構成している。
【0077】
テラヘルツ波は第1光伝導部502から発生する。第1反射界面515は、伝搬方向521とは逆の方向に伝搬するテラヘルツ波を反射する部分とする。第1反射領域501は、第1反射界面515を含み、テラヘルツ波を反射する機能を含む領域とする。第2反射界面516は、第2光伝導部504を介し、伝搬部503から伝搬するテラヘルツ波を、再び第2光伝導部504の方向に反射する部分とする。第2反射領域505は、第2反射界面を含み、テラヘルツ波を反射する機能を含む領域とする。
【0078】
これらの要素は基板514上に形成される。本実施例では、基板514としてシリコン(Si)を用いている。
【0079】
伝搬部503は、第1電極506と第1誘電体512と基準電極509によって、マイクロストリップ線路を構成する。本実施例では、第1電極506はチタン(Ti)と金(Au)を、それぞれ500Å、3000Å積層した導体であり、線幅は5μmである。基準電極509は、素子を構成する各部に基準の電位を与える平板状の電極である。ここでは、第1電極506と同様にTiとAuを用いる。
【0080】
また、第1誘電体512として、ベンゾシクロブテン(BCB)を用いる。第1誘電体512の膜厚は3μmである。伝搬部503の長さを600μmとする。
【0081】
本実施例では、第1光伝導部502と第2光伝導部504は、同じ構造である。第1光伝導部502と第2光伝導部504は、上記第1電極506と基準電極509を有している。そして、第1光伝導部502は、キャリアを発生するための第1キャリア発生層510と、発生したキャリアにバイアスを印加するための第2電極507を有している。また、第2光伝導部504は、キャリアを発生するための第2キャリア発生層511と、テラヘルツ波によって変化したキャリアを検出するための第3電極508を有している。第1キャリア発生層510と第2キャリア発生層511は、低温成長ガリウムヒ素(LT−GaAs)を用いる。第1キャリア発生層510と第2キャリア発生層511の膜厚は2μmである。LT−GaAsは、半絶縁性のガリウムヒ素(SI−GaAs)基板(比抵抗;>1×107Ω・cm)に対し、分子ビーム低温エピタキシャル成長(250℃)によって作製され、SI−GaAs基板より剥離して使用する。第2電極507と第3電極508は、上記各電極と同じくAuを用いる。これらの線幅は、5μmである。また、これらの電極は、第1電極506に対して、5μmの間隙を有している。
【0082】
また、図5(b)は、本実施例の変形例である。ここでは、第1誘電体512として、上述した膜厚2μmのLT−GaAsを用いる。各キャリア発生層と第1誘電体512の膜厚を容易に同じくすることができ、作製工程も簡略化できるので、テラヘルツ波の伝搬特性を良好に保つこともできる。
【0083】
バイアス印加部517は、第1電極506と第2電極507の間隙にバイアスを印加する部分である。本実施例では、上記間隙に、バイアス印加部517より10Vの電界を印加する。この状態で、上記間隙に、第1励起光519を照射することでテラヘルツ波を発生する。本実施例では、第1励起光519として、チタンサファイアレーザ装置より、中心波長800nm、パルス幅50fsec、繰り返し周波数76MHzの超短パルスレーザを用いる。光源としては、小型で安定なファイバレーザを用いてもよい。レーザの波長は、使用するキャリア発生部の吸収波長に調整される。
【0084】
ここで、図7のように、第1電極706と基準電極709との間にバイアスを印加する形態でもよい。図7は、この時のバイアス印加方法の構成例を示した模式図である。このとき、テラヘルツ波を発生させるために用いた第2電極507は、必須となる構成ではない。バイアスを第1キャリア発生層710に対し、膜厚方向に印加する構成をとることにより、膜厚の制御により、電界強度を制御することができる。そのため、第1電極706と基準電極709の間の距離を小さくすることが容易となる。その結果、電極間に印加する電界強度を強くすることも容易となり、より強いテラヘルツ波を発生することもできる。つまり、第1電極706と第2電極707の間隙によって、テラヘルツ波を発生する態様と同様のテラヘルツ波強度を、より小さなバイアスで取得可能となるため、素子、及び素子を含む装置の省電力化が可能となる。
【0085】
信号検出部518は、第2光伝導部504について、第1電極506と第3電極508の間隙に発生したキャリアが、テラヘルツ波の電界によって受ける変動を検出する部分である。キャリアは、第2励起光520によって発生する。本実施例では、第1励起光519と第2励起光520は同じものを使用するが、各励起光の照射タイミングは調整されている。
【0086】
第1反射領域501は、第1電極506に沿って、第1光伝導部502と対向する位置に配置されている。つまり、第1反射領域501は、第1光伝導部502からみて、テラヘルツ波の伝搬方向521とは逆の方向に配置されている。また、第2反射領域505は、第1反射領域501と同じく、第1電極506に沿って、第2光伝導部504と対向する位置に配置されている。ただし、第2反射領域505は、第2光伝導部504を介して、テラヘルツ波の伝搬方向521の延長線上に配置されている。
【0087】
第1反射領域501は、第1光伝導部502を構成する第1キャリア発生層510と第1電極506を有する。さらに、第2誘電体513を有する。第1反射領域501中の第1電極506は、テラヘルツ波の伝搬ではなく、基準電極509に対するある電位を規定する回路(例えばバイアス印加部517)への実装用の引出し線として利用される。本実施例では、第2誘電体513として、レジスト材料であるSU8を用いる。膜厚は6μmとする。上記したように、第1反射領域501を構成する第1電極506は、外部回路との接続に要する引出し線として使用するため、第2誘電体513の材料は、これに限らない。例えば、第1誘電体512と同じ材料を用いてもよい。また、半導体材料でもよい。また、敢えてテラヘルツ波に対を吸収するような材料(例えばガラスなど)を用いて、第1反射領域501に漏れたテラヘルツ波を吸収する構成としてもよい。
【0088】
本実施例では、第2反射領域505の構成も、第1反射領域501の構成と等価であるため、詳細な説明は省略する。
【0089】
反射領域中の反射界面で反射したテラヘルツ波と、伝搬方向521に伝搬するテラヘルツ波を第1光伝導部502で重ねることで、テラヘルツ波の強度を高める機能を有する。また、反射したテラヘルツ波と、伝搬方向521から伝搬するテラヘルツ波を第2光伝導部505で重ね合わせ、信号検出部518で検出される信号強度を高める機能を有する。本実施例では、このような反射界面を、基準電極509によって実現する。
【0090】
第1反射界面515或いは第2反射界面516の位置は、第1キャリア発生層510或いは第2キャリア発生層511下にある基準電極509の端部の位置により決定される。本実施例では、テラヘルツ波が発生する位置を、第2電極507の線幅の中心位置とする。第1伝導部502で発生したテラヘルツ波のうち、伝搬方向521に向かうテラヘルツ波の半値幅により、第1反射界面515の位置dが決定される。例えば、本実施例の素子構成において、テラヘルツ波の半値幅が2psecの場合、この半値幅から換算される距離Dは、およそ190μmである。このことから、反射界面の位置dは、距離D以内で調整する。本実施例では、第1反射界面515の位置dを3μmとする。同様に、本実施例では、テラヘルツ波が検出する位置を、第3電極508の線幅の中心位置とする時、第2反射界面516の位置dを3μmとする。この時、反射界面の位置dは、およそ0.015Dとなる。
【0091】
このような構成により、基準電極509の端部を介して、光伝導部側と反射領域側のインピーダンスが不連続になり、反射界面が現れる。また、反射界面の変形例として、テラヘルツ波を反射する反射界面が複数ある態様も可能である。この場合、複数の反射界面の一部、または全部が上記テラヘルツ波の半値幅から換算される実効的な距離以内にあることが望まれる。この場合でも、少なくとも一つの反射界面は、この実効的な距離以内にあり、この反射界面が、光伝導部と反射領域の境界面を形成する。
【0092】
尚、本実施例では、第1キャリア発生層510と第2キャリア発生層511は、第1電極506と基準電極509に挟まれ、第1誘電体512と第2誘電体513を分割しているが、この態様に限るものではない。例えば、第1電極506と基準電極509の間に他の誘電体層が介している構成も可能である。
【0093】
図6は、本実施例の素子について、第2光伝導部504で検出されるテラヘルツ波の電磁界解析結果である。図6(a)は、第2光伝導部504で検出されるテラヘルツ波の時間波形を示している。また、図6(b)は、第2光伝導部504で検出されるテラヘルツ波の周波数特性を示している。本実施例の素子においては、テラヘルツ波パルスのピーク強度が高まり、周波数特性も、ほぼ全波長領域で高まっていることがわかる。
【0094】
尚、本実施例では、第1光伝導部502と第2光伝導部504に反射界面を用いて、テラヘルツ波を反射させる態様を示しているが、これに限らない。第1光伝導部502または第2光伝導部504いずれか一方に反射界面を用いる態様も可能である。
【0095】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0096】
(実施例2:第1の電極にスタブ電極)
実施例2について、図8を用いて説明する。
【0097】
図8(a)は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。また、図8(b)は、図8(a)のCの領域を拡大した模式図である。
【0098】
本実施例が、上記実施例と異なるのは、反射領域中の反射界面を形成するための電極の構成が異なっている。具体的には、反射界面を形成するために、スタブ電極822を用いている。このスタブ電極822によって、特定のテラヘルツ波を反射させることを特徴とする。また、実施例1では、基準電極509の端部は励起光が照射される付近に存在していたが、本実施例では、基準電極809の端部は反射領域まで及んでいる所が異なる。
【0099】
第1反射領域801中のスタブ電極822は、第1電極806に沿って、第2電極807の中心(すなわち第1励起光820が照射されキャリアが発生する部分)から一定の距離(d+e)だけ離れて配置される。距離dは、第1反射界面815の位置である。距離eは、この第1反射界面815からスタブ電極822の縁までの距離である。さらに、スタブ電極822の長さは、距離eに等価である。距離eは、反射させたいテラヘルツ波の実効的な波長をλとすると、(1/4)λに設定する。また、この反射させたいテラヘルツ波が、連続した複数の波長領域を占有するものである場合、占有する波長領域の実効的な中心波長をλとする。
【0100】
このように、第1反射界面815からの距離とスタブ電極822の長さを設定することで、反射界面において、波長λのテラヘルツ波に対し、第1反射領域801と第1光伝導部802のインピーダンスが不連続となる。より具体的には、波長λのテラヘルツ波に対し、このインピーダンスの不連続の程度が最大となる。その結果、第1反射領域801に向かう、波長λのテラヘルツ波は、第1光伝導部802の方向へ反射する。そして、もともと第1光伝導部802から伝搬部803に向かう波長λのテラヘルツ波と重ね合わせることで、伝搬部803を伝搬する波長λのテラヘルツ波の強度を高めることができる。
【0101】
これまで、テラヘルツ波の発生する部分(第1光伝導部802)の説明を行ってきたが、テラヘルツ波を検出する部分(第2光伝導部804)にも適用可能である。すなわち、特定波長のテラヘルツ波の収集効率を向上させることもできる。
【0102】
本実施例では、テラヘルツ波が発生する位置を、第2電極807の線幅の中心位置とする時、第1反射界面815の位置dは、3μmとする。第1反射領域801のスタブ電極822の長さeは、50μmとする。そして、スタブ電極822の位置eも50μmとする。上述したように、スタブ電極822の長さや位置は、反射されるテラヘルツ波の実効的な波長λの1/4に相当する。この時、反射されるテラヘルツ波はおよそ0.5THzに相当する。また、スタブ電極822の線幅は、5μmとする。同様の構造のスタブ電極を、第2反射領域805に設ける。
【0103】
図9は、本実施例の素子について、第2光伝導部804で検出されるテラヘルツ波の電磁界解析結果である。図9(a)は、第2光伝導部804で検出されるテラヘルツ波の時間波形を示している。また、図9(b)は、第2光伝導部804で検出されるテラヘルツ波の周波数特性を示している。およそ0.5THz付近を中心に、テラヘルツ波の収集効率が向上していることがわかる。
【0104】
ここで、時間波形のピーク強度は小さくなっているが、これはスタブ電極の構成を調整することで改善される。すなわち、反射界面からスタブ電極に至る電極の線幅や、スタブ電極自体の線幅を調整することで、反射されるテラヘルツ波の波長領域を調整することができる。例えば、この波長領域を広げる方向に調整することで、反射界面で反射し、重なる波長の割合が増えるので、ピーク強度を改善すると考えられる。波長領域を広げるためには、反射界面からスタブ電極に至る電極の線幅を狭くするか、スタブ電極の線幅を広げることで実現できると考えられる。場合によっては、反射界面からスタブ電極に至る電極の線幅と、スタブ電極の線幅を同時に調整してもよい。また、スタブ電極の形状について、例えば扇型にするなど、所望の周波数特性が得られるように電極形状を調整してもよい。
【0105】
また、本実施例の変形例として、発生側又は検出側で用いるスタブ電極が複数ある態様も取り得る。例えば、第1電極806に沿って、複数波長に対応するスタブ電極を配置する。また、これら複数のスタブ電極によって形成される反射界面の同一箇所にある必要はない。例えば、上述したように、テラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される実効的な距離を超えない範囲であれば、反射界面の位置は任意に設定できる。または、複数ある反射界面について、少なくとも、光伝導部に最も近い界面が、この範囲に収まっている形態であればよい。
【0106】
本実施例では、素子を構成する誘電体上の電極パターンによって、反射領域を設定できる。そのため、より簡易に、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0107】
(実施例3:第1の電極の幅が不連続:ステップ電極)
実施例3について、図10を用いて説明する。
【0108】
図10(a)は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。なお、これまでの説明と共通する部分の記述は省略する。
【0109】
本実施例は、反射領域中の反射界面を形成するための電極の構成が、上記実施例と異なっている。具体的には、反射界面を構成するために、ステップ電極1023を用いている。ステップ電極1023は、第1電極1006の幅を不連続にすることにより構成している。また、基準電極1009の端部は、実施例1や2と同じく反射領域まで及んでいる。
【0110】
第1反射領域1001中のステップ電極1023は、第1反射界面1015を介して、第1電極1006の長手方向に接続されている。ステップ電極1023の線幅は、第1電極1006の線幅と異なっている。そのため、第1反射界面1015を介して、インピーダンスの不整合が生じ、第1反射領域1001に向かうテラヘルツ波は、第1光伝導部1002の方向へ反射する。上述したように、この反射界面の位置を適切に選択することで、伝搬部1003を伝搬するテラヘルツ波の強度を高めることができる。
【0111】
また、上述したように、ステップ電極1023は、テラヘルツ波を検出する部分(第2光伝導部104)にも適用可能である。このステップ電極によって、テラヘルツ波の収集効率を高めることが可能となる。
【0112】
尚、本実施例では、反射界面が一つの場合を説明してきたが、複数あってもよい。図10(b)のように、ステップ電極1023によって、複数の反射界面1025が形成する形態も可能である。好ましくは、複数の反射界面1025は、テラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される実効的な距離D未満の範囲にあることが望ましい。しかし、すべての界面がこの範囲にある必要は必ずしもなく、少なくとも、光伝導部に最も近い界面が、この範囲に収まっている形態であればよい。
【0113】
また、複数の反射界面1025を周期的に配置することで、特定の波長に対する反射率を高める構成とすることも可能である。
【0114】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0115】
(実施例4:第1電極と基準電極の距離が不連続)
実施例4について、図11を用いて説明する。
【0116】
図11は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。なお、これまでの説明と共通する部分の記述は省略する。
【0117】
反射界面は、キャリア発生層で、第1電極1106と基準電極1009の距離を不連続にすることにより構成されている。具体的には、キャリア発生層の一部の領域(反射領域中のキャリア発生層に相当)と基準電極1109との間に誘電体層を挿入している。
【0118】
素子を構成する基板1114は、凹凸構造を有している。本実施例では、基板1114は凸形状であり、凸部の境界が反射界面に相当している。そして、図11のように、凸部の高低差を埋めるように、第2誘電体1113が、第1キャリア発生層1110及び第2キャリア発生層1111と、基板1114の形状に沿った基準電極1109の間に挿入される。このような構成により、反射界面を介して、伝送線路を構成する誘電体の厚みが変化する。その結果、この反射界面を境にインピーダンスの不整合が発生する。上述したように、このような反射界面を用いることで、伝搬するテラヘルツ波の強度や、テラヘルツ波の収集効率を高めることを可能とする。尚、本実施例では、凹凸部は一つであるが、複数あってもよい。また、反射界面が、テラヘルツ波発生側及び検出側にあるが、どちらか一方の態様も取り得る。
【0119】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0120】
(実施例5:キャリア発生層に空孔部)
実施例5について、図12を用いて説明する。
【0121】
図12は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。
【0122】
本実施例では、本発明を実施し得る素子の別の構成例を示す。具体的には、反射領域の他の構成を示す。尚、これまでの説明と共通する部分の記述は省略する。
【0123】
本実施例は、反射領域中の反射界面を形成するためのキャリア発生層の構成が、他の実施例と異なっている。具体的には、キャリア発生層の一部の領域に空孔部1224を有している。
【0124】
この空孔部1224によって、キャリア発生層の実効的な屈折率が変化する。例えば、空孔部1224によって、反射界面を境に光伝導部と反射領域を構成するキャリア発生層の屈折率を変化させる。その結果、この反射界面を境にインピーダンスの不整合が発生する。このような反射界面を用いることで、伝搬するテラヘルツ波の強度や、テラヘルツ波の収集効率を高めることを可能とする。尚、本実施例では、空孔部1224は、第1キャリア発生層1210と第2キャリア発生層1211にあるが、どちらか一方にある態様でもよい。また、この空孔部1224が別の誘電材料で充填されている構成でもよい。さらに、空孔部1224が複数あり、この空孔部1224が周期的な配置をしている構成でもよい。
【0125】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0126】
(実施例6:第1の電極の端部)
実施例6について、図13を用いて説明する。
【0127】
図13は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。
【0128】
本実施例では、本発明を実施し得る素子の別の構成例を示す。具体的には、反射領域の他の構成を示す。尚、これまでの説明と共通する部分の記述は省略する。
【0129】
本実施例は、反射領域中の反射界面を形成するための電極の構成が、他の実施例とは異なる。具体的には、反射界面を形成するために、第1電極1306の端部を第1反射界面1315の位置に調整する構成である。また、基準電極1309の端部は、反射領域まで及んでいる。そして、バイアス印加部1317は、第1電極1306と基準電極1309の間にバイアスを印加する構成である。
【0130】
このような構成によると、第1反射界面1315の位置にある第1電極1306の端部を介して、インピーダンスの不整合が生じ、第1反射領域1301に向かうテラヘルツ波は、第1光伝導部1302の方向へ反射する。この反射界面の位置を適切に選択することで、伝搬部1303を伝搬するテラヘルツ波の強度を高めることができる。
【0131】
尚、テラヘルツ波を検出する部分(第2光伝導部1304)には、この反射界面を形成する構成がないが、上記実施例と同じく、反射界面を設けることも可能である。このような構成によって、テラヘルツ波の収集効率を高めることが可能となる。
【0132】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0133】
(実施例7:検査装置)
実施例7について、図19を用いて説明する。
【0134】
本実施例は、検体を検査するための検査装置に電磁波検出装置を用いたものである。
【0135】
ここで、前記電磁波検出装置は、以下の構成を有する。
【0136】
まず、電磁波発生素子及び電磁波検出素子のキャリア発生層に光を照射する光照射手段を有する。
【0137】
次に、基準電極と第1の電極に電圧を印加する電圧印加手段を有する。
【0138】
さらに、電磁波検出素子に伝搬されたテラヘルツ波の光電流を検出する光電流検出手段を有する。
【0139】
図19は、上記実施例の電磁波集積素子を、検体1931の検査を行うための検査素子1927とし、検査装置へ適用した一構成例を示している。
【0140】
検査素子1927は、テラヘルツ波を発生する部分と検出する部分を有し、各部分は伝送線路によって集積されている。検査素子1927は、テラヘルツ波の発生素子と検出素子の少なくとも一方に、上記反射領域を有する。反射領域により、検査素子1927は、伝送線路を伝搬するテラヘルツ波の強度を高める、或いは検出時の収集効率を高める機能を有している。
【0141】
検体1931は、上記伝送線路上に保持されている。
【0142】
本実施例は、基準電極と第1の電極に電圧を印加する電圧印加手段として、バイアス印加部1917を有している。前記バイアス印加部1917は、テラヘルツ波を発生する部分の光伝導部にバイアスを印加する部分である。
【0143】
また、本実施例は、電磁波検出素子に伝搬されたテラヘルツ波の光電流を検出する光電流検出手段として、信号検出部1918を有している。前記信号検出部1918は、テラヘルツ波を検出する部分の光伝導部より、テラヘルツ波の強度に対応した電流信号を検出する部分である。
【0144】
さらに、本実施例は、電磁波発生素子及び電磁波検出素子のキャリア発生層に光を照射する光照射手段として、励起光発生部1928を有している。前記励起光発生部1928から発生した励起光は、第1励起光1919と第2励起光1920に分岐する構成としているが、これに限らない。ここでは、第1励起光1919は、テラヘルツ波発生用に用い、第2励起光1920は、テラヘルツ波検出用に用いる。遅延光学部1929は、第1励起光1919と第2励起光1920が検査素子1927に到達するタイミングを調整する部分である。
【0145】
例えば、処理部1930において、このタイミングの調整による信号検出部1918の出力をプロットすることで、検査素子1927上に伝搬するテラヘルツ波の時間波形を取得する。そして、この時間波形の変化より、検体1931の状態を検査する。
【0146】
(実施例8)
実施例8では、本発明を実施し得る素子の別の構成例を示す。具体的には、素子を構成する線路の構成を示す。尚、これまでの説明と共通する部分の記述は省略する。
【0147】
これまでの実施例では、誘電体を二つの電極で挟むマイクロストリップ線路を用いた構成を説明してきたが、本実施例では、他の伝送線路の構成を用いる所が異なる。
【0148】
図14は、基板1414上に形成される第1基準電極1409の端部によって反射界面の位置を決める態様の素子構成である。本素子は、これまでの実施例で用いた素子構成に加え、第1電極1406が形成される面に、第1電極1406とある間隔をとって配置される複数の第2基準電極1426をさらに有している。このような伝送線路は、グランド付コプレーナ導波路と呼ばれる。基板1414上に形成される第1基準電極1406によって、反射界面を形成する。
【0149】
図15及び図16は、図14で示した素子の変形例である。
図15の素子では、第1電極1506と同じ面にある複数の第2基準電極1509の端部によって、反射界面を形成する。
また、図16の素子では、基板1614上に形成される第1基準電極1609及び第1電極1606と同じ面にある複数の第2基準電極1626によって、反射界面を形成する。
【0150】
図17で示した素子は、伝送線路としてグランド付コプレーナ導波路を適用し、スタブ電極1727によって反射界面の位置を決める態様の素子である。スタブ電極1727に対し、所定の間隙で第2基準電極1726が配置されている。このとき、スタブ電極1727に至る電極の線幅や、スタブ電極自体の線幅によって、反射するテラヘルツ波の周波数特性を決定している。スタブ電極1727と第2基準電極1726の間隙によって、特性を調整することも可能である。
【0151】
また、図18で示した素子は、伝送線路としてグランド付コプレーナ導波路を適用し、ステップ電極1828によって反射界面の位置を決める態様の素子である。ステップ電極1828に対し、所定の間隙で第2基準電極1826が配置されている。このとき、このステップ電極の線幅によって、反射するテラヘルツ波の特性を調整している。ステップ電極1828と第2基準電極1826の間隙によって、特性を調整することも可能である。
【0152】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0153】
以上の実施例で述べた構成や思想を適宜組み合わせた素子を提供する。また、本発明の思想を逸脱しない範囲であれば、他の素子構成を排除するものではない。
【0154】
ここで、電磁波発生素子と電磁波検出素子の機能を1つの素子により構成することができる。例えば、素子に照射する光のタイミングによって、素子にバイアスを印加する部分と、テラヘルツ波によって発生した電流を取得する部分を切り替えることによって、電磁波の発生と検出の機能を兼ねる素子を構成することができる。
【0155】
(実施例9:実施例1の基準電極の端部)
実施例9について、図5を用いて説明する。図5(a)は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。テラヘルツ波を伝搬する伝送線路に、テラヘルツ波を発生する素子と検出する素子が集積されている。本実施例では、実施例1で示した反射界面の位置dの値が異なっている。尚、実施例1と共通する部分の説明は省略する。
【0156】
本実施例では、第1反射界面515の位置dを170μmとする。同様に、第2反射界面516の位置dを170μmとする。この時、反射界面の位置dは、およそ0.9Dとなる。
【0157】
図21は、本実施例の素子について、第2光伝導部504で検出されるテラヘルツ波の電磁界解析結果である。図のように、反射界面の位置dがD未満であれば、テラヘルツ波パルスのピーク強度を強めることができることがわかる。
【0158】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【0159】
(実施例10:実施例1の基準電極の端部)
実施例10について、図5を用いて説明する。図5(a)は、本実施例の電磁波集積素子を説明するための模式図である。テラヘルツ波を伝搬する伝送線路に、テラヘルツ波を発生する素子と検出する素子が集積されている。本実施例では、実施例1で示した反射界面の位置dの値が異なっている。尚、実施例1と共通する部分の説明は省略する。
【0160】
本実施例では、第1反射界面515の位置dを80μmとする。同様に、第2反射界面516の位置dを80μmとする。この時、反射界面の位置dは、およそ0.42Dとなる。
【0161】
図22は、本実施例の素子について、第2光伝導部504で検出されるテラヘルツ波の電磁界解析結果である。図のように、反射界面の位置dが、0.5D以下であれば、テラヘルツ波パルスのピーク強度を高めつつ、伝搬するテラヘルツ波が分裂しないことがわかる。
【0162】
このような構成により、発生したテラヘルツ波の利用効率を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本実施形態に係る電磁波発生素子を説明するための模式図
【図2】本実施形態に係る電磁波発生素子を説明するための模式図
【図3】テラヘルツ波形の半値幅から換算される距離Dを説明するためのグラフ
【図4】本実施形態に係る電磁波発生素子を説明するための模式図
【図5】実施例1における電磁波発生素子を説明するための模式図
【図6】実施例1における解析結果を説明するためのグラフ
【図7】実施例1の変形例を説明するための模式図
【図8】実施例2における電磁波発生素子を説明するための模式図
【図9】実施例2における解析結果を説明するためのグラフ
【図10】実施例3における電磁波発生素子を説明するための模式図
【図11】実施例4における電磁波発生素子を説明するための模式図
【図12】実施例5における電磁波発生素子を説明するための模式図
【図13】実施例6における電磁波発生素子を説明するための模式図
【図14】実施例1の変形例を説明するための模式図
【図15】実施例1の変形例を説明するための模式図
【図16】実施例1の変形例を説明するための模式図
【図17】実施例2の変形例を説明するための模式図
【図18】実施例3の変形例を説明するための模式図
【図19】検査装置を説明するための模式図
【図20】先行技術を説明するための模式図
【図21】実施例9における解析結果を説明するためのグラフ
【図22】実施例10における解析結果を設営するためのグラフ
【図23】本実施形態に係る電磁波発生素子を説明するための模式図
【図24】本実施形態に係る電磁波発生素子を説明するための模式図
【符号の説明】
【0164】
101 キャリア発生層
102 第1の電極
103 第1の面
104 第2の面
105 基準電極
106 第1の領域
107 第2の領域
108 反射界面
109 照射位置
110 第1の方向
411 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射によってキャリアを発生させるキャリア発生層と、
前記キャリア発生層に設けられ、且つ前記キャリア発生層に電圧を印加するための第1の電極と、
前記キャリア発生層に設けられ、且つ前記第1の電極に対して基準となる電位を規定するための基準電極と、を有する電磁波発生素子であって、
前記キャリア発生層で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が前記第1の電極を含み構成されており、
前記伝送線路は、前記テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面を構成する第2の領域とを備えており、且つ
前記反射界面を経由せずに前記第1の方向に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとした場合に、前記キャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記反射界面までの距離がD未満となるように構成されていることを特徴とする電磁波発生素子。
【請求項2】
前記照射位置から前記反射界面までの距離が0.5D以下であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生素子。
【請求項3】
前記第1の領域の屈折率が、前記第2の領域の屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項1或いは2に記載の電磁波発生素子。
【請求項4】
前記反射界面を、前記基準電極と前記第1の電極の少なくとも1つの端部を用いて構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項5】
前記キャリア発生層へ光が照射される照射位置からの距離がD未満となるように構成されている前記反射界面を、前記第1の電極に設けるスタブ電極により構成し、
前記スタブ電極は、前記反射界面から前記第1の方向とは反対方向に向かって、該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波の実効的な波長の1/4離れた位置に配置され、且つ、前記スタブ電極の長さは該波長の1/4であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項6】
前記反射界面を、前記第1の電極の幅を不連続にすることにより構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項7】
前記反射界面を、キャリア発生層で、前記基準電極と前記第1の電極との距離を不連続にすることにより構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項8】
前記反射界面を、前記キャリア発生層に、該キャリア発生層の屈折率とは異なる屈折率からなる材料を設けることにより構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項9】
前記第1の電極は、前記キャリア発生層の第1の面側に設けられ、
前記基準電極は、前記キャリア発生層の前記第1の面に対向する第2の面側に設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電磁波発生素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電磁波発生素子と、
光照射によって発生するキャリアによってテラヘルツ波を検出する電磁波検出素子と、を集積した電磁波集積素子であって、
前記テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向に伝搬するテラヘルツ波に対して検出用反射界面を構成する第3の領域とを備えており、且つ
前記電磁波発生素子のキャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記検出用反射界面までの距離が前記D未満となるように構成されていることを特徴とする電磁波集積素子。
【請求項11】
請求項10に記載の電磁波集積素子と、
前記電磁波発生素子及び前記電磁波検出素子のキャリア発生層に光を照射する光照射手段と、
前記基準電極と前記第1の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電磁波検出素子に伝搬されたテラヘルツ波の光電流を検出する光電流検出手段と、を有することを特徴とする電磁波検出装置。
【請求項12】
光照射によってキャリアを発生させるキャリア発生層と、
前記キャリア発生層の第1の面側に設けられ、且つ前記キャリア発生層に電圧を印加するための第1の電極と、
前記キャリア発生層の前記第1の面に対向する第2の面側に設けられ、且つ前記第1の電極に対して基準となる電位を規定するための基準電極と、を有する電磁波発生素子であって、
前記キャリア発生層で発生したキャリアに基づき生じるテラヘルツ波を伝搬させるための伝送線路が前記第1の電極を含み構成されており、
前記伝送線路は、
前記テラヘルツ波が第1の方向に伝搬する第1の領域と、該第1の領域とはインピーダンスが異なり、且つ該第1の方向とは反対方向に伝搬するテラヘルツ波に対して反射界面を構成する第2の領域とを備えており、且つ
前記反射界面を経由せずに前記第1の方向に伝搬するテラヘルツ波の時間波形の半値幅から換算される距離をDとした場合に、前記キャリア発生層へ光が照射される照射位置から前記反射界面までの距離が0.5D以下となるように構成され、前記第1の領域の屈折率が、前記第2の領域の屈折率よりも大きいことを特徴とする電磁波発生素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−158926(P2009−158926A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286728(P2008−286728)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】