説明

電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム

【課題】RF−IDタグの背面に金属がある場合では、RF−IDタグの通信距離等が低下する金属影響がある。
さらに、RF−ID用リーダーライターでは、RF−IDタグが読み出せるセキュリティ上の課題もある。
【解決手段】
本発明の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムは、グラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する印刷層の中をRF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を通過させることにより、金属表面にうず電流を発生させないことにより金属影響の課題を解決したものである。
さらに、電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムで包装されたRF−IDタグには、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波が到達しないため、RF−IDタグ用リーダーライターではRF−IDタグを読み取り等が不可能になることによりセキュリティ上の課題を解決したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキで印刷したシュリンク包装フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RF−ID(無線周波数識別:Radio Frequency−IDentification)システムは、電磁波を利用して、人等の所在管理及び物品等の物流・流通管理における自動認識が可能になるシステムであり、すでに物流分野及び流通分野等の一部で実用化が開始されている。
このような状況下、電磁波を利用したRF−IDタグシステムでは、問題点も指摘されている。
その問題点の一つが、例えば、金属製製品にRF−IDタグラベルを貼付し、物流分野及び流通分野での物品管理にRF−IDタグシステムを利用した場合にRF−IDタグラベルの通信距離等が低下する金属影響と称される問題である。
これは、RF−IDタグシステムがRF−IDタグとRF−IDタグ用リーダーライターとの情報通信信号等(RF−IDタグに電力を供給する搬送波と、その上に重ねられた情報を搬送する変調データ信号)に電磁波を利用している。
このため、RF−IDタグの背面に金属製製品がある場合では、RF−IDタグ用リーダーライターのアンテナより発生する磁束が金属製製品の表面を貫通するとファラディの法則により磁束を軸とした渦電流が金属製製品の表面に流れる。
この渦電流の回転方向は、RF−IDタグ用リーダーライターのアンテナに発生する交流磁界(搬送波)の磁極方向と反対方向の磁界である反磁界を生み出す方向に流れる。
即ち、RF−IDタグ用リーダーライターより、電磁誘導を利用したRF−IDタグへの情報通信信号等のすべてが、金属製製品の表面に誘起された反磁界に打ち消され、大きく減衰するため、RF−IDタグ用リーダーライターでのRF−IDタグとの通信距離等が低下するものである。
【0003】
この現象を防止する方法として、特許文献1には、データキャリアの裏面にアモルファス磁性体シートを配置することを紹介している。いわゆる金属対応RF−IDタグである。
なお、特許文献1では、RF−IDタグをデータキャリアと称し、RF−IDタグ用リーダーライターをリーダー/ライターと称している。
アモルファス軟磁体シートが、データキャリアと金属との間にあるため、リーダー/ライターよりの磁束がアモルファス軟磁体シートの中を通過するため、金属の表面には渦電流が発生しないものである。
【0004】
また、RF−IDタグシステムでは、RF−ID用リーダーライターで、RF−IDタグに記録しているID情報等が読み出せるため、セキュリティ上の配慮しなければならない問題がある。(非特許文献1参照)
例えば、RF−IDタグ製造業者より流通業者にRF−IDタグを納入際に宅配便等で送付した場合には、運送過程で、RF−IDタグの情報をスキミングされる可能性も否定できず、RF−IDタグシステム全体のセキュリティ性が低下することも想定できる。
【特許文献1】実開平6−5000号公報
【非特許文献1】日経BP社編「無線ICタグ導入ガイド」2004年11月11日発 行 164項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RF−IDタグ本格普及時に全ての物品等にRF−IDタグラベル等を貼付して物流分野及び流通分野での物品管理を実施した場合では、例えば、金属製製品には金属対応RF−IDタグ、木製製品等金属影響がない製品には一般のRF−IDタグと、RF−IDタグを貼付する物品等が金属製か否かを判断して、RF−IDタグを使いわける煩雑さが生じる課題がある。
これは、RF−IDタグシステムの本格普及時でも、金属対応RF−IDタグのほうが一般のRF−IDタグより高価となるからである。
さらに、RF−IDタグシステムでは、RF−ID用リーダーライターで、RF−IDタグの情報が読み出せるため、セキュリティ上の配慮しなければならない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムは、上記課題を解決するために本発明のシュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有するグラビア印刷インキ印刷層の中をRF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を通過させることにより、金属表面にうず電流を発生させないという原理に基づき金属影響及びセキュリティ上の配慮しなければならない問題を克服したものである。
即ち、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波は、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有するグラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることにより、金属表面にうず電流を発生させないという原理に基づき金属影響の問題を克服したものである。
さらに、電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムで包装されたRF−IDタグおいて、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波は、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有するグラビア印刷インキ印刷層の中を通過する。
このため、RF−IDタグ用リーダーライターではRF−IDタグの情報を読み取りできないという原理に基づきセキュリティの問題を克服したものである。
【0007】
本発明の第1の態様は、溶剤系のグラビア印刷インキにおいて、1回のグラビア印刷による軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層若しくは2回以上のグラビア印刷による2層以上の軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層をシュリンク包装用フィルムに形成し、金属製品を包装した場合でもRF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を前記軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムである。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムにてRF−IDタグラベル等を包装することで、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムの軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることで、前記RF−IDタグ用リーダーライターでの前記RF−IDタグラベル等への情報の読み出し/書き込みを不能とすることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムである。
【0009】
本発明の第3の態様は、電子線硬化型グラビア印刷インキにおいて、1回のグラビア印刷による軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層若しくは2回以上のグラビア印刷による2層以上の軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層をシュリンク包装用フィルムに形成し、金属製品を包装した場合でもRF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を前記軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムである。
【0010】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムにてRF−IDタグラベル等を包装することで、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムの軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることで、前記RF−IDタグ用リーダーライターでの前記RF−IDタグラベル等への情報の読み出し/書き込みを不能とすることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムは、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波をシュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有するグラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることにより、グラビア印刷された印刷物自体がRF−IDタグシステムでの金属影響及びセキュリティ上の配慮しなければならない課題を改善する優れた効果を有するものである。
なお、本発明は、電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムに関するものであり、既存のグラビア印刷機が利用可能であるため、印刷会社等での新たな設備投資を必要としない優れた効果を有するものである。
即ち、本発明の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムは、グラビア印刷による大量生産に適し、かつ、新たな設備投資を必要としないため製造コストの抑制効果を有する優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下には、本発明の実施形態について、図と共に説明する。
図1は、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層を電磁波が通過する説明図
【0013】
〈軟磁性体〉
軟磁性体金属粉としては、鉄ニッケル合金(パーマロイ、Fe−Ni合金)、鉄アルミ珪素合金(センダスト、Fe−Al−Si合金)、アモルファス合金等のいずれかのもの1種または2種以上混合して用いる。
さらに、軟磁性体金属粉の平均粒径は、1〜10μm程度のものを用いる。
なお、より好ましくは、軟磁性体金属粉の平均粒径を小さくすることにより、軟磁性体金属粉が電磁波通過グラビア印刷インキ中に50〜99重量%の範囲の高充填率で含有することが望ましい。
かかる高充填率の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキは、具体的には、平均最大でも粒径3μm程度の粒子の細かい軟磁性体金属粉で得ることで可能となる。
また、軟磁性体金属粉の形状は、球形や楕円球形よりも鱗片上形状のものがRF−IDタグ用リーダーライター2よりの電磁波の通過には好ましい。
さらに、必要に応じて軟磁性体金属粉には、表面酸化膜等の非良導性皮膜を設けて良い。これは、軟磁性体金属粉が、印刷皮膜における含有密度が高められ相互に接触させたほうが、RF−IDタグ用リーダーライター2よりの電磁波の通過上好ましいからである。
【0014】
〈グラビア印刷インキとしての組成〉
溶剤系の軟磁性体金属粉を含有したグラビア印刷インキ3aとしては、前記軟磁性体金属粉、ビヒクル、溶剤その他のものを配合して得る。
ビヒクル中のバインダー樹脂としては、ブチラール樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,セルロース系樹脂,アクリル樹脂,スチレン−マレイン酸共重合樹脂等が1種または2種以上混合して用いる。
さらに、必要に応じて、ニトリルゴム等のゴム系樹脂あるいはウレタンエラストマー等を添加する。
溶剤としては、特殊な制約がないため、公知の広い範囲のものが使用でき、グラビア印刷インキの乾燥性等のグラビア印刷に適正の良好なものを適宜単独または2種以上混合して用いる。
その他のものとしては、必要に応じて、界面活性剤,シランカップリング剤,可塑剤,ワックス,シリコーンオイル等を添加する。
【0015】
本発明の電子線硬化型の軟磁性体金属粉を含有するグラビア印刷インキ3bは、前記軟磁性体金属粉を公知の電離放射線硬化性樹脂を用途に応じて使用すれば良い。
この様な電離放射線硬化性樹脂としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合、または、エポキシ基等のカチオン重合性官能基を有するプレポリマー、モノマー、またはポリマー、若しくはポリチオール化合物からなり、これらを1種のみまたは2種以上適宜混合した組成物を用いることができる。
【0016】
前記分子中に重合性不飽和結合を有するプレポリマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類がある〔なお、本明細書では(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートの意味で用いる。以下同様〕。
前記分子中に重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等の単官能(メタ)アクリル酸エステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)エチル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、分子中に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。
【0017】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂等、脂肪環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル系樹脂、スピロ系化合物等のプレポリマー等がある。
【0018】
以上の化合物を必要に応じ1種若しくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常のグラビア印刷適性を付与するために、前記プレポリマーまたはオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/またはポリチオールを95重量%以下とすることが好ましい。
また、硬化収縮、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調節するために前記プレポリマー、オリゴマー、モノマーの少なくとも1種に対して、以下の様な電離放射線非硬化性樹脂を1〜70重量%程度混合して用いることができる。
電離放射線非硬化性樹脂としてはウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0019】
特に紫外線で硬化させる場合には前記電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤を添加する。
分子中にラジカル重合性不飽和結合を有する化合物に対しては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類等がある。分子中にカチオン重合性官能基を有する化合物に対しては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、ジアリルヨードシル塩等がある。または、必要に応じて、さらに、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0020】
〈グラビア印刷〉
シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1は、公知のグラビア印刷適正のあるシュリンクラベル用フィルムに公知のグラビア印刷法により、塗工,乾燥して得ることが可能である。
なお、公知のシュリンク包装フィルムは、熱収縮性のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、低密度直鎖状ポリエチレンフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等の樹脂から製膜されたポリオレフィン系フィルム、塩素化ポリエチレン,塩素化ポリプロピレンなどの樹脂から製膜された変性ポリオレフィンフィルム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の樹脂から製膜されたフィルム、アクリル系樹脂系フィルム等が使用可能である。
また、グラビア印刷であるため、数回のグラビア印刷によりシュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1の厚さを厚くしても良い。
これは、RF−IDタグ用リーダーライター3よりの電磁波が、より多く、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1の中を通過するからである。
【0021】
電子線硬化型の軟磁性体金属粉を含有するグラビア印刷インキ3bを硬化させるための電離放射線としては、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギーを有するものを意味し、紫外線、可視光線、X線、電子線、α線等があるが、通常紫外線、または電子線を用いる。
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源を使用する。
電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子照射が望ましい。
【0022】
〈電磁波通過〉
RF−IDタグ用リーダーライター2よりの電磁波が、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1の通過することにより、金属製製品5の表面に渦電流を発生させないことをRF−IDタグラベル4で説明する。
RF−IDタグラベル4は、公知のEEPROM(Electroically Erasable and Progurammable Read Only Memory)等の不揮発メモリーを搭載したRF−IDタグ用チップのボンディングパットに公知のスタッドバンプを形成後、公知の異方性導電材料等にて公知の透明ポリエステルシート等の片面にアルミ等製アンテナを形成しているアンテナシートのアンテナ接続パットに実装後に公知の方法でラベル化した公知の一般のRF−IDタグラベル4である。
【0023】
なお、本発明で対象とするRF−IDタグ用リーダーライター2とRF−IDタグラベル4よりなるRF−IDタグシステムは、VHF(Very High Frequency)帯(例えば、13.56Mz)、UHF帯(Ultra−High Frequency)帯、マイクロ波帯(例えば、2.45Gz)等の公知のRF−IDタグシステムを対象とする。
【0024】
図1には、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1により、金属製製品5があってもRF−IDタグ用リーダーライター2でのRF−IDタグラベル4の情報の読み取り/書き込みに支障がないことを説明する。
図1の上図に示す如く、RF−IDタグ用リーダーライター2とRF−IDタグラベル4との電磁誘導を利用する情報通信等(RF−IDタグラベル4に電力を供給する搬送波と、その上に重ねられた情報を搬送する変調データ信号)の際に、RF−IDタグラベル4の背面に金属製製品5があると、RF−IDタグ用リーダーライター2のアンテナより発生する磁束が金属製製品5を貫通すると、図1では省略しているが、ファラディの法則により磁束を軸とした渦電流が金属製製品5の表面に流れる。
この渦電流の回転方向は、RF−IDタグ用リーダーライター2のアンテナに発生する交流磁界(搬送波)の磁極方向と反対方向の磁界である反磁界6を生み出す方向に流れる。
つまり、RF−IDタグ用リーダーライター2より、RF−IDタグラベル4に電磁誘導を利用する情報通信信号等のすべてが、金属製製品5の表面に誘起された反磁界6に打ち消され、大きく減衰するためである。
しかしながら、図1の下図に示す如く、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1では、RF−IDタグ用リーダーライター2よりの磁束がシュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1に含まれる軟磁性体金属粉の中を通過するため、金属製製品5の表面に渦電流が発生しない。
したがって、金属製製品5があってもRF−IDタグ用リーダーライター2でのRF−IDタグラベル4の読み取り/書き込みには支障がないものである。
【0025】
また、図示はしていないが、電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム7でRF−IDタグラベル4を包装する。
この場合には、RF−IDタグ用リーダーライター3の電磁波が、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1を通過するのみで、RF−IDタグラベル4に到達しない。
このため、RF−IDタグ用リーダーライターでは、RF−IDタグラベル4への情報の読み取り/書き込みが不可能となるため、セキュリティ性が向上するものである。
【0026】
〈応用用途〉
本発明の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム7の応用用途は、まず、清涼飲料水等のアルミボトル用シュリンク包装に利用することを説明する。
まず、公知の連続状の透明シュリンク包装用フィルムを公知のグラビア印刷機の給紙側にセットし、透明シュリンク包装基紙の裏面に絵柄を逆刷後に乾燥し、必要に応じて白色度を向上させるための白色全面グラビア印刷等後の乾燥後に公知のグラビア印刷機で本発明の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ3を全面にコーティング後に乾燥して、公知のグラビア印刷機の巻き上げ側で巻き上げる。
グラビア印刷後の加工工程は、公知方法で筒状に加工する。アルミボトルへの包装工程は、所定のサイズに断裁しながら、アルミボトルに被せ、加熱して、アルミボトルに密着させることで、アルミボトル用シュリンク包装が完了する。
アルミボトル用シュリンク包装自体が、金属影響を排除することになるため、RF−IDタグラベル4を貼付するのみになる。
即ち、RF−IDタグ用リーダーライター2よりの電磁波は、アルミボトル用シュリンク包装のシュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1の中を通過することになり、アルミボトル表面に渦電流が発生しない。
したがって、RF−IDタグ用リーダーライター3よりは、金属対応RF−IDタグを使用した場合と等価となり、アルミボトル用シュリンク包装の上に貼付したRF−IDタグラベル4の読み取り/書き込みが可能となる。
即ち、アルミボトル用シュリンク包装では、金属製製品5には金属対応RF−IDタグラベル、木製製品等金属影響がない製品にはRF−IDタグラベル4と、RF−IDタグラベルを貼付する物品等が金属製か否かを判断して、金属対応RF−IDタグラベルとRF−IDタグラベル4とを使いわける煩雑さの解決が可能となる。
【0027】
電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム7の次の応用用途は、例えば、図示はしていないが、RF−IDタグ製造業者より、流通業者にRF−IDタグラベル4を納入際のシュリンクセキュリティ包装に関して説明する。
公知の連続状の透明シュリンク包装用フィルムを公知のグラビア印刷機の給紙側にセットし、公知のグラビア印刷機で本発明の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ3を全面にコーティング後、乾燥して、公知のグラビア印刷機の巻き上げ側で巻き上げる。
グラビア印刷後の加工工程は、公知方法で筒状に加工する。
RF−IDタグ製造業者の包装工程は、例えば、連続状で多数のリールに巻かれたRF−IDタグラベル4を梱包している個装箱への包装工程は、筒状の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム7を所定のサイズに断裁しながら、RF−IDタグラベル4を梱包している個装箱に被せ、加熱して、RF−IDタグラベル4を梱包している個装箱に密着させることで、RF−IDタグ製造業者よりのRF−IDタグラベル4出荷時のシュリンクセキュリティ包装が完了する。
電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム7では、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1の中をRF−IDタグ用リーダーライター2の電磁波が通過するのみである。このため、包装したRF−IDタグラベル4には電磁波が到達しないため、RF−IDタグラベルの情報が保護されるものである。
即ち、RF−IDタグシステム全体のセキュリティ性が向上するものである。
【0028】
なお、前記の応用例としてのアルミボトル用シュリンク包装及びシュリンクセキュリティ包装とも使用する軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ3は、溶剤系の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ3aでも、電子硬化型の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ3bであっても良い。
また、印刷回数は、複数回であってもかまわない。
これは、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1を厚く形成することにより、RF−IDタグ用リーダーライター2よりの電磁波が、より多く、シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層1を通過するからである。
なお、本発明は、以上説明した応用例に拘泥されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
RF−IDタグ利用物流管理システム及ぶRF−IDタグ利用流通管理システムでは、包装若しくは梱包する内容物によって、通信距離等が低下することによる自動認識率の低下が指摘されている。
即ち、包装若しくは梱包する内容物が、金属製製品と木製製品等金属影響がない製品とは、それぞれの製品に貼付したRF−IDタグラベルのRF−IDタグ用リーダーライターでの通信距離及び自動認識率が異なるためである。これは、RF−IDタグシステムの普及阻害要因の一因となっている。
さらに、RF−IDタグシステムでは、セキュリティ上、色々な点に考慮する必要がある。
本発明は、RF−IDタグ用リーダーライターでのRF−IDタグ自動認識率向上及びRF−IDタグシステム全体のセキュリティ向上にも貢献するため、RF−IDタグシステムの本格普及の一助となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】電磁波通過説明図
【符号の説明】
【0031】
1 :シュリンク包装フィルム上のグラビア印刷による軟磁性体金属粉を含有する
電磁波通過グラビア印刷インキ印刷層
2 :RF−IDタグ用リーダーライター
3 :軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ
3a:溶剤系の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ
3b:電子硬化型の軟磁性体金属粉を含有する電磁波通過グラビア印刷インキ
4 :RF−IDタグラベル
5 :金属製製品
6 :反磁界
7 :電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤系のグラビア印刷インキにおいて、1回のグラビア印刷による軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層若しくは2回以上のグラビア印刷による2層以上の軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層をシュリンク包装用フィルムに形成し、金属製品を包装した場合でもRF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を前記軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムにてRF−IDタグラベル等を包装することで、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムの軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることで、前記RF−IDタグ用リーダーライターでの前記RF−IDタグラベル等への情報の読み出し/書き込みを不能とすることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム。
【請求項3】
電子線硬化型グラビア印刷インキにおいて、1回のグラビア印刷による軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層若しくは2回以上のグラビア印刷による2層以上の軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層をシュリンク包装用フィルムに形成し、金属製品を包装した場合でもRF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を前記軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムにてRF−IDタグラベル等を包装することで、RF−IDタグ用リーダーライターの電磁波を電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルムの軟磁性体金属粉含有グラビア印刷インキ印刷層の中を通過させることで、前記RF−IDタグ用リーダーライターでの前記RF−IDタグラベル等への情報の読み出し/書き込みを不能とすることを特徴とする電磁波通過グラビア印刷インキ印刷済みシュリンク包装フィルム。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−150098(P2008−150098A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342693(P2006−342693)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】