説明

電磁石装置のコイル端子部

【課題】端子台の溝に圧入装着した端子金具が所定の組立位置で確実に固定保持できるよう改良した電磁石装置のコイル端子部組立構造を提供する。
【解決手段】操作コイル2を巻装したコイル巻枠3に端子台10を設け、該端子台に端子金具11を装着して操作コイルに接続した電磁石装置のコイル端子部であって、前記端子金具11は導体片の前端に端子ねじ12を螺設するねじ座部11aを、後端にリード線接続部11bを形成した構成になり、該導体片を端子台10の側面に形成したスリット状の嵌合溝10cに側方から圧入して固定したものにおいて、前記リード線接続部11bの上縁部に抜け止め用の係合爪部11cを形成し、端子金具の圧入装着位置で係合爪部を端子台に形成した係合溝10fに係止固定するものとし、具体的には係合爪部11cを圧入側にテーパーを付した鋸歯状の三角突起となし、係合溝10fは端子台の上面側から角穴を型抜きして形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器などに適用する電磁石装置のコイル端子部に関し、詳しく端子台に装着する端子金具の固定支持構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器に装備した操作コイルの端子部として、コイルを巻装したコイル巻枠と一体に端子台を設け、この端子台に形成した端子の嵌合溝に一対の端子金具を圧入固着した上で、該端子金具に操作コイルから引出したリード線を接続するようにしたコイル端子部の組立構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
次に、既に市場に展開している電磁接触器の製品構成を図3に、またこの電磁接触器に装備した操作コイルの巻枠および端子部の従来構造を図4〜図6に示す。
【0004】
まず、図3において、1はフレーム、2はコイル巻枠3(モールド樹脂製のボビン)に巻装した操作コイル、4は固定鉄心、5は可動鉄心、6は復帰ばね、7は可動鉄心5に連結した接触子ホルダー、8は接触子ホルダーに装着した橋絡形の可動接触子、9は固定接触子である。また、前記のコイル巻枠3には後述のように巻枠と一体に成形した端子台10が設けてあり、該端子台10に装着した一対の端子金具11に操作コイル2から引出した巻き始め,巻き終わりのリード線を接続し、端子金具11に螺設した端子ねじ12を介して外部回路の電線を接続するようにしている。
【0005】
ここで、前記の端子台10は、図4〜図6で示すようにコイル巻枠3から側方へコ字形に張り出すように一体成形され、この端子台10には左右に分けて一対の端子金具11を固定支持するように端子金具の取付座面10a,絶縁隔壁10b,前記取付座面10aから後方に向けて延在するスリット状の嵌合溝10c、および該嵌合溝10cから分岐した縦向きの溝10d,10eが形成されている。
【0006】
一方、端子台10に装着する端子金具11は、導体片の前端に端子ねじ12を螺設するねじ座部11aを、後端にはL字形に起立したリード線接続部11bを形成し、かつねじ座部11aには端子ねじ12を螺設するねじ穴11a−1,およびねじ座部の後縁からL字形に起立する係合突起11a−2を形成した構造になる。
【0007】
そして、この端子金具11を端子台10に装着するには、端子金具11を側方から端子台10の左右側面に形成したスリット状の嵌合溝10に押し込み、さらに端子金具11のねじ座部後縁か起立する係合突起11a−2,および導体片の後端から起立するリード線接続部11bをそれぞれ端子台10に形成した溝10d,10eに圧入して所定位置に固着する。その上で、操作コイル2から引出した巻き始め,巻き終わりのリード線2a,2bをそれぞれ端子金具11のリード線接続部11bに半田接合する。また、ねじ座部11aのねじ穴11a−1には端子ねじ12を螺設する。
【特許文献1】特開2000−57924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記した従来製品のコイル端子部構造では、外部の電線を接続するために端子台10に装着した端子金具11に螺合した端子ねじ12を強い力で締め付けると、次記のような不具合が生じる。
【0009】
すなわち、端子ねじ12に強力な締め付け力を加えると、その締め付けトルクを受けて端子台10に形成した溝10c,10d,10eに圧入保持した端子金具11が端子ねじ12を中心にして締め付け力を加えた方向にずれ動き、しかも端子金具11が当初の圧入位置から一旦ずれ動くと端子台10(樹脂モールド品)による圧入保持力が極端に低下して動き易くなってしまう。このために、電磁接触器の開閉動作の繰り返しに伴う電磁石の振動,衝撃によって端子金具11の緩み,ずれ動きが助長され、遂には端子金具11のリード線接続部11bに半田接合した操作コイル2のリード線2a,2bが端子金具に引っ張られて断線するといったトラブルに進展する。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、端子ねじの強力な締め付け力にも十分に耐えて端子台の溝に圧入装着した端子金具が所定の組立位置から動かないように改良した電磁石装置のコイル端子部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、操作コイルを巻装したコイル巻枠に端子台を設け、該端子台に端子金具を装着して操作コイルに接続した電磁石装置のコイル端子部であり、前記端子金具は導体片の前端に端子ねじを螺設するねじ座部を有し、後端にリード線接続部を形成した構成になり、該導体片を端子台の側面に形成したスリット状の嵌合溝に側方から圧入して固着したものにおいて、
前記リード線接続部の端縁に抜け止め用の係合爪部を形成し、端子金具の圧入装着位置で前記係合爪部を端子台に形成した係合溝に係止固定するものとし(請求項1)、具体的には前記係合爪部を圧入側にテーパーを付した鋸歯状の三角突起となし、該突起を係止する係合溝として端子台には、端子金具を圧入するスリット状の嵌合溝と直交方向に角穴を形成する(請求項2)。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成によれば、端子台に端子金具を圧入装着した状態で、端子金具の後端側に起立するリード接続部に形成した鋸歯状の係合爪部を端子台に形成した係合溝(角穴)に嵌め合わせて係止させたことにより、端子金具の前端側に螺設した端子ねじに強力な締め付け力を加えても、端子金具の圧入保持状態が緩んで所定の装着位置からずれ動くことがなく、これにより電磁接触器の繰り返し開閉動作に伴い電磁石の振動,衝撃力が加わっても端子金具を定位置に確実に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1(a),(b)および図2(a),(b)に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図5,図6に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0014】
すなわち、図示実施例のコイル端子部は、基本的に図4〜図6で述べた従来構造と同様であるが、端子金具11についてはその後端に起立形成したリード線接続部11bの上縁に抜け止め用の係合爪部11cが追加形成されており、この係合爪部11cに対応して端子台10には係合溝10fが形成されている。
【0015】
ここで、前記の係合爪部11cは図1(b)で表すように端子金具11の圧入側に緩いテーパーを付した鋸歯状の三角突起になる。また、端子台10に形成した係合溝10fは、モールド金型によりコイル巻枠3をモールド成形する際に、端子台10の上面側から型抜きしてリード線接続部11bを圧入する係合溝10eと連なるように形成した角穴になり、その角穴は係合爪部11cが丁度穴の中に収まるようなサイズに定めている。なお、前記のようにモールド成形時に係合溝10fを型抜き形成することで、面倒なアンダーカット加工が不要となる。
【0016】
上記の構成で、従来構造の組立方法と同様に端子金具11を側方から端子台10に形成したスリット状の嵌合溝10cに押し込むと、図2(b)で示すように後端側のリード線接続部11bの上縁から突き出した係合爪部11cのテーパー面が端子台10の溝10eの壁を摺動しながら前進し、前記した角穴の係合溝10fに収まった状態で爪の後端が溝の縁に引っ掛かって図2(b)の組立位置に係止固定される。この組立状態では、端子金具11,特に導体片の後端側に形成したリード線接続部11bがずれ動いたり、端子台10から抜け出すことなく所定の組立位置に保持される。したがって、端子金具11の前端側のねじ座部11aに螺設した端子ねじ12に強力な締め付け力を加えても、その締め付けトルクにより端子金具11、特に操作コイル2の引出しリード線に半田接合した後端側のリード線接続部11bがずれ動いてリード線が断線するトラブルを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例によるコイル端子部の構造図で、(a)は分解斜視図、(b)は(a)におけるA部の拡大図
【図2】図1の組立状態を表す図で、(a)は外観図、(b)は(a)におけるB部の拡大断面図
【図3】電磁接触器全体の構成断面図
【図4】図3の電磁接触器に装備した電磁石装置の分解斜視図
【図5】図4におけるコイル端子部の従来構造を示す分解斜視図
【図6】図5におけるコイル端子部の組立状態での外観図
【符号の説明】
【0018】
2 操作コイル
3 コイル巻枠
10端子台
10c スリット状嵌合溝
10f 係合溝(角穴)
11 端子金具
11a ねじ座部
11b リード線接続部
11c 係合爪部
12 端子ねじ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作コイルを巻装したコイル巻枠に端子台を設け、該端子台に端子金具を装着して操作コイルに接続した電磁石装置のコイル端子部であり、前記端子金具は導体片の前端に端子ねじを螺設するねじ座部を有し、後端にリード線接続部を形成した構成になり、該導体片を端子台の側面に形成したスリット状の嵌合溝に側方から圧入して固定したものにおいて、
前記リード線接続部の端縁に抜け止め用の係合爪部を形成し、端子金具の圧入装着位置で前記係合爪部を端子台に形成した係合溝に係止固定したことを特徴とする電磁石装置のコイル端子部。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル端子部において、係合爪が圧入側にテーパーを付した鋸歯状の三角突起であり、該突起を係止する係合溝として端子台には、端子金具を圧入するスリット状嵌合溝と直交方向に角穴を形成したことを特徴とする電磁石装置のコイル端子部。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−300328(P2008−300328A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148275(P2007−148275)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(503361927)富士電機アセッツマネジメント株式会社 (402)
【Fターム(参考)】