説明

電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器

【課題】従来と同等の結合強度を維持しつつ、より大きな結合範囲を実現する電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供する。
【解決手段】第1の平面に各々が離間して形成される複数の導電パタン2と、第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタン3と、第1の平面と第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、複数の導電パタン2のうち1つの導電パタン2に一端が接続され、他端とグランドパタン3間に給電がなされる第1の線状導体4と、第1の平面と第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、複数の導電パタン2の各々に対して1つ以上形成され、複数の導電パタン2の各々とグランドパタン3とを接続する複数の第2の線状導体5と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離に配置された情報通信機器間で静電界や誘導電界を用いて情報を伝達する無線通信システムに好適な電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁結合器としては、特許文献1に記載されている電磁結合器がある。この電磁結合器(高周波結合器)は、平板上の電極と直列インダクタ、並列インダクタを高周波信号伝送路により接続して構成される。また、電磁結合器は、送信機や受信機などの情報通信機器に配置される。この送信器と受信器をそれぞれの電磁結合器の電極同士が向かい合うように配置すると、2つの電極間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15以下の場合は、2つの電極は縦波の静電界成分によって結合し、1つの容量として動作し、全体としてバンドパスフィルタのように動作するため、2つの電磁結合器間で効率良く情報を伝達することができる。また、2つの電極間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15〜8λ/15の場合は、縦波の誘導電界を利用し情報の伝達が可能である。
【0003】
一方、電磁結合器間が一定値以上の遠距離である場合、情報の伝達が不可能である。このため、電磁結合器から生じる電磁波により他の無線通信システムを妨害することがなく、かつ電磁結合器を具備する情報通信機器を用いる無線通信システムが他の無線通信システムから干渉を受けることがないという特徴を持つ。これらの特徴に基づき、従来の電磁結合器を用いた無線通信システムによれば、近距離において縦波の静電界若しくは誘導電界を使い、広帯域信号を用いるUWB(Ultra Wide Band)通信方式により情報通信機器間で大容量のデータ通信を行うことが可能である。
【0004】
特許文献1の電磁結合器では、より具体的には、円柱状の誘電体に形成したスルーホールに導体を充填させると共に円柱状の誘電体の上端面に電極となる導体パタンを形成し、この円柱状の誘電体を、高周波伝送路となる導体パタンを形成したプリント基板に実装して、高周波伝送路と電極とをスルーホール内の導体を介して接続するようになっている。スルーホール内の導体は上述の直列インダクタの代用となり、高周波伝送路とグランドパタンとが並列インダクタを介して接続される。この電磁結合器に給電を行うと、スルーホール内の導体にて、スルーホール内の導体(スルーホール内の導体を流れる電流)と平行な方向に電界の縦波が発生し、その縦波を利用して情報を伝達するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4345851号公報
【特許文献2】特開2006−121315号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】羽石操、他2名、「小形・平面アンテナ」、社団法人電子情報通信学会、p.23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電磁結合器は、例えば、パソコン(パーソナルコンピュータ)や携帯電話、デジタルカメラなどに内蔵され、動画像などのデータを相互に送受信するために用いられる。電磁結合器は、携帯電話やデジタルカメラなどの小型の機器に内蔵されるため、薄型化が要求される。
【0008】
しかしながら、特許文献1の電磁結合器では、薄型化のためには、円柱状の誘電体を短くする必要があり、スルーホール内の導体が短くなってしまう。スルーホール内の導体が短くなると、スルーホール内の導体で発生する電界が小さくなり、情報の伝達に用いる電界の縦波も小さくなるので、送信側の電磁結合器と受信側の電磁結合器との間での結合強度が小さくなってしまうという問題が生じる。
【0009】
また、送信側の電磁結合器と受信側の電磁結合器との間での結合強度が小さくなるため、送信側の電磁結合器と受信側の電磁結合器との間の距離が長くなると、情報の伝達ができなくなり、送信側の電磁結合器に対して受信側の電磁結合器の位置が少しずれるだけで、情報の伝達ができなくなるという問題も生じる。
【0010】
より具体的には、2つの電磁結合器を平行に配置する場合、2つの電磁結合器の中心が1直線上になるよう平行に対向配置したときに両者の中心を通る直線をZ軸とするカルテシアン座標軸を考えると、Z軸に係る2つの電磁結合器間の距離が一定であれば、X軸およびY軸に係る2つの電磁結合器間の距離と、2つの電磁結合器間の結合強度は負の相関関係となる。これは、電磁結合器は電極から生じる縦波を用いて無線通信を行うが、X軸およびY軸に係る2つの電磁結合器間の距離の増加に伴い、縦波の発生源である電極との距離が大きくなることが要因である。このため、2つの電磁結合器を用いて無線通信を行う際に、上記のX軸およびY軸に係る2つの電磁結合器間の距離が大きくなると、結合強度が低下し、場合によっては、無線通信が不可能になるという問題が生じる。
【0011】
以下、本明細書では、Z軸に係る2つの電磁結合器間の距離を一定とした場合に、無線通信が可能であるX軸およびY軸に係る範囲を結合範囲と呼称する。電磁結合器では、少々の位置ずれでは無線通信に支障が出ないように、結合範囲は大きいことが望ましい。
【0012】
さらに、特許文献1の電磁結合器では、薄型化すると電極がグランドに近づき、インピーダンス特性(周波数に対するインピーダンスの特性)が急峻となってしまい、これに対して給電系の入力インピーダンスは一定であるため、使用できる周波数帯域(つまり電磁結合器と給電系との間の整合条件が良い周波数帯域)が狭くなってしまうという問題も生じる。
【0013】
また、特許文献1の電磁結合器では、2つの電磁結合器の電極間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15以下の場合は、バンドパスフィルタを実現することにより情報を効率よく伝達するが、相手の電磁結合器との相性が良くない場合に信号伝達の効率が劣化するという問題がある。
【0014】
さらに、例えば、特許文献1の電磁結合器を装置内部に搭載し無線通信を行う場合、電磁結合器間には誘電体を含む装置のカバー等があり、これにより電磁結合器間の誘電率が変化する。そうすると、2つの電磁結合器の電極間の容量値が変化し、バンドパスフィルタの周波数特性が変化し、場合によっては所望の周波数帯域での情報伝達特性が劣化するという問題がある。この場合に、これら誘電率の変化を踏まえ電磁結合器の設計を行ったとしても、無線通信を行う装置がさらに別のものである場合、電磁結合器間の誘電率がさらに別の値になり、同様に無線通信の情報伝達特性が劣化してしまう。
【0015】
また、特許文献1の電磁結合器では、2つの電磁結合器の電極間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15〜8λ/15の場合は、縦波の誘導電界成分を利用し情報の伝達を行うが、この際、2つの電磁結合器の配置と周囲環境を一定とした場合、情報伝達特性は電磁結合器と給電系との間の整合条件に依存する。つまり、整合条件が良い場合は電磁結合器から給電系を含む通信モジュールへの信号強度が大きくなり、反対に整合条件が悪い場合は電磁結合器から給電系を含む通信モジュールへの信号強度が小さくなる。
【0016】
よって、特許文献1の電磁結合器では、電磁結合器間の距離(2つの電極間の距離)が使用する周波数の波長の2λ/15以下の場合にはバンドパスフィルタを実現し、かつ、電磁結合器間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15〜8λ/15の場合における整合条件が良好となるように、電磁結合器の設計を行わなければならない。このため、例えば電磁結合器間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15〜8λ/15の場合において信号強度が不十分な場合、電磁結合器間の距離が使用する周波数の波長の2λ/15以下の場合におけるバンドパスフィルタの実現も含め再設計が必要であり、電磁結合器の設計に手間がかかる。さらに、使用する周波数帯域が広帯域な場合、整合条件が適当となる周波数を多く実現する必要があり、さらに設計の手間がかかる。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、従来と同等の結合強度を維持しつつ、より大きな結合範囲を実現する電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供することにある。
【0018】
また、本発明の目的は、薄型とした場合であっても、結合強度を高くし、かつ、使用する周波数帯域を広帯域とすることが可能な電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供することにある。
【0019】
さらに、本発明の目的は、従来と同等の情報伝達特性を維持しつつ、情報伝達特性が電磁結合器間の誘電率に殆ど依存しない電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供することにある。
【0020】
さらにまた、本発明の目的は、従来と同等の情報伝達特性を維持しつつ、給電系との整合調整及び周波数帯域の調整を容易に行うことが可能な電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、第1の平面に形成されると共に、各々が離間して形成される複数の導電パタンと、前記第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタンと、前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンのうち1つの導電パタンに一端が接続され、他端と前記グランドパタン間に給電がなされる第1の線状導体と、前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンの各々に対して1つ以上形成され、前記複数の導電パタンの各々と前記グランドパタンとを接続する複数の第2の線状導体と、を備えた電磁結合器である。
【0022】
前記第1の平面は、プリント基板の一方の面であり、前記第2の平面は、前記プリント基板の他方の面であり、前記第1の線状導体と前記第2の線状導体は、前記プリント基板に形成されたスルーホールの内部に形成された導体であってもよい。
【0023】
前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンは、前記第1の線状導体との接続点に対して点対称となる形状に形成され、前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンには、平面視で前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に、複数の前記第2の線状導体が接続されてもよい。
【0024】
前記複数の第2の線状導体は、前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に形成されてもよい。
【0025】
前記複数の導電パタンは、点対称となる形状に形成され、前記複数の第2の線状導体は、接続される前記導電パタンの対称点に対して点対称となる位置に形成されてもよい。
【0026】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される平面視で正方形状の第1の導電パタンと、該第1の導電パタンの周囲を囲むように平面視で正方形の枠状に形成された第2の導電パタンとからなってもよい。
【0027】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、前記複数の第2の導電パタンは、その平面視における基準点としての中心が、前記第1の線状導体を中心とする同心円の円周を等分する位置にくるように配置されてもよい。
【0028】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、前記第1の導電パタンの平面視における基準点としての中心と、前記複数の第2の導電パタンの平面視における基準点としての中心が一直線状となるように配置されてもよい。
【0029】
平面視で前記複数の導電パタンと前記グランドパタンとを囲むように、電磁誘導により無線通信を行うためのコイルを配置してもよい。
【0030】
前記第1の線状導体の他端と前記グランドパタン間には、同軸ケーブルで給電がなされてもよい。
【0031】
また、本発明は、電磁結合器を搭載し、静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて情報を伝達する情報通信機器であって、前記電磁結合器は、第1の平面に形成されると共に、各々が離間して形成される複数の導電パタンと、前記第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタンと、前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンのうち1つの導電パタンに一端が接続され、他端と前記グランドパタン間に給電がなされる第1の線状導体と、前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンの各々に対して1つ以上形成され、前記複数の導電パタンの各々と前記グランドパタンとを接続する複数の第2の線状導体と、を備えた情報通信機器である。
【0032】
前記第1の平面は、プリント基板の一方の面であり、前記第2の平面は、前記プリント基板の他方の面であり、前記第1の線状導体と前記第2の線状導体は、前記プリント基板に形成されたスルーホールの内部に形成された導体であってもよい。
【0033】
前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンは、前記第1の線状導体との接続点に対して点対称となる形状に形成され、前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンには、平面視で前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に、複数の前記第2の線状導体が接続されてもよい。
【0034】
前記複数の第2の線状導体は、前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に形成されてもよい。
【0035】
前記複数の導電パタンは、点対称となる形状に形成され、前記複数の第2の線状導体は、接続される前記導電パタンの対称点に対して点対称となる位置に形成されてもよい。
【0036】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される平面視で正方形状の第1の導電パタンと、該第1の導電パタンの周囲を囲むように平面視で正方形の枠状に形成された第2の導電パタンとからなってもよい。
【0037】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、前記複数の第2の導電パタンは、その平面視における基準点としての中心が、前記第1の線状導体を中心とする同心円の円周を等分する位置にくるように配置されてもよい。
【0038】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、前記第1の導電パタンの平面視における基準点としての中心と、前記複数の第2の導電パタンの平面視における基準点としての中心が一直線状となるように配置されてもよい。
【0039】
平面視で前記複数の導電パタンと前記グランドパタンとを囲むように、電磁誘導により無線通信を行うためのコイルを配置してもよい。
【0040】
前記第1の線状導体の他端と前記グランドパタン間には、同軸ケーブルで給電がなされてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、従来と同等の結合強度を維持しつつ、より大きな結合範囲を実現する電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供できる。
【0042】
また、本発明によれば、薄型とした場合であっても、結合強度を高くし、かつ、使用する周波数帯域を広帯域とすることが可能な電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供できる。
【0043】
さらに、本発明によれば、従来と同等の情報伝達特性を維持しつつ、情報伝達特性が電磁結合器間の誘電率に殆ど依存しない電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供できる。
【0044】
さらにまた、本発明によれば、従来と同等の情報伝達特性を維持しつつ、給電系との整合調整及び周波数帯域の調整を容易に行うことが可能な電磁結合器及びそれを搭載した情報通信機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の電磁結合器の概念を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電磁結合器を示す図であり、(a)は電磁結合器を表面側から見た平面図であり、(b)は、電磁結合器の裏面を表面側から透視して見た平面図である。
【図3】本発明において、電界の縦波と横波を説明する図である。
【図4】本発明において、電界の波長と距離の比(r/λ)と電界強度との関係を示すグラフ図である。
【図5】(a),(b)は、図2の電磁結合器の寸法の一例を示す図である。
【図6】図2の電磁結合器の周波数と反射係数の絶対値との関係についての実験結果を示すグラフ図である。
【図7】図2の電磁結合器及びモノポールアンテナ間の距離に対する電磁結合器またはモノポールアンテナへの入力電力と出力電力の比の実験結果を示すグラフ図である。
【図8】図7の実験に用いるモノポールアンテナの平面図である。
【図9】図7の実験の実験方法を示す図である。
【図10】図2の電磁結合器及び図2の電磁結合器から第2の素子部を除いた比較例の電磁結合器における測定位置とS21の絶対値の関係の実験結果を示すグラフ図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る電磁結合器を示す図であり、(a)は電磁結合器を表面側から見た平面図であり、(b)は、電磁結合器の裏面を表面側から透視して見た平面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る電磁結合器を示す図であり、(a)は電磁結合器を表面側から見た平面図であり、(b)は、電磁結合器の裏面を表面側から透視して見た平面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る電磁結合器に用いる電磁結合器部を示す図であり、(a)は表面側から見た平面図であり、(b)は、裏面を表面側から透視して見た平面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る電磁結合器に用いる給電用プリント基板を示す図であり、(a)は表面側から見た平面図であり、(b)は、裏面を表面側から透視して見た平面図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る電磁結合器の斜視図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る電磁結合器を示す図であり、(a)は電磁結合器を表面側から見た平面図であり、(b)は、電磁結合器の裏面を表面側から透視して見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0047】
図1は、本発明の電磁結合器の概念を説明する図である。
【0048】
図1に示すように、本発明の電磁結合器1は、第1の平面に形成されると共に、各々が離間して形成される複数の導電パタン2と、第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタン3と、第1の平面と第2の平面に対して垂直に形成されると共に、複数の導電パタン2のうち1つの導電パタン2aに一端が接続され、他端とグランドパタン3間に給電がなされる第1の線状導体4と、第1の平面と第2の平面に対して垂直に形成されると共に、複数の導電パタン2の各々に対して1つ以上形成され、複数の導電パタン2の各々とグランドパタン3とを接続する複数の第2の線状導体5と、を備えている。第1の線状導体4と第2の線状導体5とは、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成される。
【0049】
図1では、3つの導電パタン2a〜2cを備え、導電パタン2aに第1の線状導体4と1本の第2の線状導体5とを形成し、導電パタン2bに1本の第2の線状導体5を形成し、導電パタン2cに3本の第2の線状導体5を形成する場合を示している。ただし、導電パタン2の数や、各導電パタン2に形成する第2の線状導体5の数は、これに限定されるものではなく、適宜設定可能である。ここでは、導電パタン2aに第1の線状導体4と1本の第2の線状導体5とを形成したものを第1の素子部6と呼称し、導電パタン2b(あるいは2c)に1本以上の第2の線状導体5を形成したもの(つまり第1の線状導体4が形成されておらず、給電がなされないもの)を第2の素子部7と呼称する。
【0050】
本発明の電磁結合器1では、第1の線状導体4の他端とグランドパタン3間に給電すると、第1の素子部6に電流が生じるが、第2の素子部7の配置位置や形状を適宜選択することにより、第1の素子部6と第2の素子部7との電磁結合や、第1の素子部6を流れる電流がグランドパタン3を経由して第2の素子部7へ伝達されることにより、第2の素子部7にも電流が生じる。この際、各素子部6,7の第2の線状導体5にも電流が生じるが、本発明の電磁結合器1では、主に第2の線状導体5を流れる電流から生じる電磁波の縦波成分を利用し、無線通信を行う。
【0051】
本発明の電磁結合器1では、電磁波の縦波成分を放射する発信源である第2の線状導体5を広範囲に配置させることが可能であり、より大きな結合範囲の実現が可能である。
【0052】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る電磁結合器を図2を用いて説明する。
【0053】
図2(a),(b)に示すように、第1の実施の形態に係る電磁結合器21は、両面に配線パタンを形成可能な2層のプリント基板22を用い、プリント基板22の一方の面(第1層、以下表面という)Sに2つの導電パタン2を形成し、プリント基板22の他方の面(第2層、以下裏面という)Rにグランドパタン3を形成するようにした。つまり、上述の第1の平面は、プリント基板22の表面Sであり、上述の第2の平面は、プリント基板22の裏面Rである。ここでは、プリント基板22として、正方形状のFR4(Flame Retardant Type 4)ガラスエポキシプリント基板を用いる場合を説明する。
【0054】
電磁結合器21では、プリント基板22の裏面Rの中央部に平面視で円形状の給電パタン23を形成しており、グランドパタン3は、給電パタン23の周囲に形成された空隙24を挟んで、給電パタン23の周囲を囲むように設けられると共に、給電パタン23の周囲のプリント基板22の裏面R全体を覆うように形成され、平面視で正方形状に形成される。
【0055】
電磁結合器21では、2つの導電パタン2は、プリント基板22の表面Sの中央部に形成された平面視で正方形状の導電パタン(第1の導電パタン)2dと、その導電パタン2dの周囲に形成された空隙25を挟んで導電パタン2dの周囲を囲むように設けられ、平面視で正方形の枠状に形成された導電パタン(第2の導電パタン)2eとからなる。導電パタン2dは、給電パタン23とグランドパタン3と対向するように形成され、導電パタン2eは、グランドパタン3と対向するように形成される。
【0056】
第1の線状導体4と複数の第2の線状導体5は、プリント基板22の表面Sと裏面Rに対して垂直に形成される。これら線状導体4,5は、プリント基板22に形成されたスルーホール(図示せず)の内部に形成された導体である。この導体は、スルーホールの内部に充填されていてもよく、また、スルーホールの内面に薄く設けられていてもよい。
【0057】
第1の線状導体4は、一端が給電パタン23の平面視における中心(基準点としての中心)に接続され、他端が正方形状の導電パタン2dの平面視における中心(基準点としての中心)に接続される。これにより、給電パタン23と導電パタン2dとが、第1の線状導体4を介して電気的に接続される。導電パタン2dは、第1の線状導体4との接続点Aに対して点対称となる形状となっている。
【0058】
正方形状の導電パタン2dには、8本の第2の線状導体5が形成される。これら第2の線状導体5は、一端がグランドパタン3に接続され、他端が導電パタン2dに接続される。これにより、グランドパタン3と導電パタン2dとが、第2の線状導体5を介して電気的に接続される。
【0059】
正方形状の導電パタン2dに形成される8本の第2の線状導体5は、平面視で第1の線状導体4に対して点対称となる位置に形成される。第1の実施の形態では、正方形状の導電パタン2dの4辺の近傍に2本ずつ、第2の線状導体5を形成した。これら8本の第2の線状導体5は、平面視で、第1の線状導体4に対して点対称となり、かつ、上下対称、左右対称となる位置に形成される。また、8本の第2の線状導体5は、導電パタン2dと第1の線状導体4との接続点Aから、導電パタン2dと第2の線状導体5との接続点までの距離L1が全て等しくなるように形成される。
【0060】
プリント基板22として、比誘電率が4.0〜5.0のものを用いる場合、プリント基板22の厚さTは、使用する周波数の波長をλとすると、6λ/1000〜45λ/1000とされる。また、導電パタン2dと第1の線状導体4との接続点Aから、導電パタン2dと第2の線状導体5との接続点までの距離L1は、75λ/1000〜225λ/1000とされ、導電パタン2dは、1辺の長さL3が225λ/1000〜450λ/1000の正方形状に形成される。さらに、導電パタン2dの1つの辺の近傍に設けられた2本の第2の線状導体5と、その隣の辺の近傍に設けられた2本の第2の線状導体5との最短距離L2は、75λ/1000〜225λ/1000とされる。これら各寸法は、電磁結合器21の適度な整合条件をとる入力インピーダンスを実現するために必要となる。
【0061】
給電系26から電磁結合器21への給電は、例えば同軸ケーブルにより行うことができる。同軸ケーブルの中心導体は、給電パタン23に接続され、同軸ケーブルの外部導体は、グランドパタン3に接続される。
【0062】
なお、第1の実施の形態では、正方形状の導電パタン2dの4辺の近傍に2本ずつ、合計8本の第2の線状導体5を導電パタン2dに形成する場合を説明したが、第2の線状導体5の本数や配置はこれに限定されるものではない。また、第1の実施の形態では、導電パタン2dを正方形状に形成する場合を説明したが、導電パタン2dは、第1の線状導体4との接続点Aに対して点対称となる形状であればよく、入力イミタンスの周波数特性および結合範囲を考慮し、円形状や多角形状など他の形状としてもよい。電磁結合器21の入力イミタンスの周波数特性は、導電パタン2dの形状、および、導電パタン2dに対する第2の線状導体5の配置位置、数、径等に依存し、これらを適当に選択することで、所望する入力イミタンスの周波数特性を有する電磁結合器21の実現が可能である。
【0063】
導電パタン2dの周囲に形成される正方形の枠状の導電パタン2eには、その4つの角部に1本ずつ、各辺に2本ずつ、合計12本の第2の線状導体5が等間隔に形成される。これら第2の線状導体5は、一端がグランドパタン3に接続され、他端が導電パタン2eに接続される。これにより、グランドパタン3と導電パタン2eとが、第2の線状導体5を介して電気的に接続される。
【0064】
正方形の枠状の導電パタン2eに形成される12本の第2の線状導体5は、平面視で第1の線状導体4に対して点対称となり、かつ、上下対称、左右対称となる位置に形成される。つまり、第1の実施の形態では、全ての第2の線状導体5が、第1の線状導体4に対して点対称となり、かつ、上下対称、左右対称となる位置に形成されている。
【0065】
また、導電パタン2eは、導電パタン2dと第1の線状導体4との接続点Aに対して点対称となる形状に形成されており、導電パタン2eに形成される12本の第2の線状導体5は、導電パタン2eの対称点に対しても、点対称となる位置に形成されている。
【0066】
電磁結合器21の作用を説明する。
【0067】
図3に示すように、微小ダイポール(Il)から生じる電界には、縦波Erと横波Eθがある。縦波Erは[数1]に示す式(1)、横波Eθは[数2]に示す式(2)により表される(非特許文献1)。
【0068】
【数1】

【0069】
【数2】

【0070】
ここで、Ilは原点0を通りZ軸上にある微小ダイポールを示す。n0はこのときの特性インピーダンスを、Erは観測点Pにおける縦波を、Eθは観測点Pにおける横波を、rは微小ダイポールからの距離を、k0は波数を、jは虚数単位を、wは角周波数を、ε0は真空の誘電率を、μ0は真空の透磁率を、θはZ軸(微小ダイポール)と観測点Pのなす角を示す。
【0071】
図4に式(1)と式(2)を元に計算した電界の波長と距離の比(r/λ)と電界強度との関係を示す。図4の横軸は電界の波長と距離の比(r/λ)を示し、図4の縦軸は電界強度を対数で示している。図4には、
(a)縦波の1/r2を含む項の絶対値
(b)縦波の1/r3を含む項の絶対値
(c)横波の1/r1を含む項の絶対値
(d)横波の1/r2を含む項の絶対値
(e)横波の1/r3を含む項の絶対値
の5つの電界成分の大きさを示す。
【0072】
式(1),(2)、および図4において、距離rに反比例する成分が放射電界、距離rの2乗に反比例する成分が誘導電界、距離rの3乗に反比例する成分が静電界である。横波Eθは放射電界と誘導電界と静電界とで構成されるのに対し、縦波Erは誘導電界と静電界のみで構成される。
【0073】
放射電界は、距離rに反比例するため、距離rの2乗あるいは3乗に反比例する誘導電界や静電界と比較して、より遠くまで減衰せずに届くこととなり、他のシステムへの妨害波となるおそれがある。よって、電磁結合器では、横波Eθを抑制しつつ、放射電界の成分を含まない縦波Erを利用して情報の伝達を行う。
【0074】
このように、電界の縦波Erは、横波Eθと比較し、1/rを含む項をもたないため、距離に対する減衰が大きく、遠方まで届かないという特徴があり、電磁結合器では、この特徴を利用して近距離に限定した無線通信を実現する。
【0075】
本発明の電磁結合器21においても、第2の線状導体5上に分布する電流から生じる縦波(図4における(a),(b))を積極的に利用することにより、従来と同等の無線データ通信を実現する。
【0076】
具体的には、第1の実施の形態に係る電磁結合器21では、給電系26から電磁結合器21に給電することにより、第1の素子部6に電流が流れ、第1の素子部6を構成する第2の線状導体5を流れる電流から、第2の線状導体5と平行な方向(導電パタン2dと垂直な方向)に電界の縦波成分が放射される。この縦波成分の大きさは、電磁結合器21と給電系26との整合条件と正の相関関係にある。
【0077】
第1の素子部6に電流が流れると、第1の素子部6との電磁結合により、あるいは第1の素子部6を流れる電流がグランドパタン3を経由して伝達されることにより、第2の素子部7にも電流が流れ、第2の素子部7を構成する第2の線状導体5からも電界の縦波成分が放射される。
【0078】
このように、電磁結合器21では、第1の素子部6のみでも動作可能であるが、その第1の素子部6の周囲にさらに第2の素子部7を追加することで、縦波の発生源である第2の線状導体5をより広範囲に分布させ、結合範囲を大きくしている。
【0079】
なお、第1の素子部6の大きさ自体を大きく(導体2dの面積を大きく)することで、結合範囲を大きくすることも考えられるが、第1の素子部6の大きさを変更すると動作周波数が変わってしまうので、第1の素子部6の大きさを大きくすることは限界がある。本発明のように、第1の素子部6の周囲に第2の素子部7を追加することで、動作周波数を変えることなく、結合範囲を大きくすることが可能である。
【0080】
ただし、第1の素子部6の導電パタン2dと第2の素子部7の導電パタン2eとが近づきすぎると、容量結合により第1の素子部6の動作周波数が変わってしまうので、第1の素子部6の導電パタン2dと第2の素子部7の導電パタン2eとは、容量結合の影響を受けない程度に、離間している必要がある。
【0081】
なお、電磁結合器21では、第1の素子部6を構成する第2の線状導体5を、平面視で第1の線状導体4に対して点対称となる位置に形成しているため、導電パタン2dには、同じ大きさの電流が逆方向に流れることとなり、導電パタン2dで発生する横波は互いに打ち消し合う。
【0082】
また、電磁結合器21では、第2の素子部7を構成する第2の線状導体5を、導電パタン2eの対称点に対して点対称となる位置に形成し、かつ、第1の線状導体4に対して点対称となる位置に形成しているため、導電パタン2eで発生する横波も互いに打ち消し合う。
【0083】
さらに、電磁結合器21では、詳細は後述するが、第2の線状導体5の長さ(つまりプリント基板22の厚さT)を短くでき、例えば1mm以下とすることもできるため、第2の線状導体5と垂直方向に発生する電界である横波を小さくできる。したがって、他のシステムへの妨害波となる放射電界を含む横波を抑制することができる。
【0084】
なお、第2の線状導体5の長さを短くすると、第2の線状導体5で発生する縦波も小さくなるが、電磁結合器21では、第2の線状導体5を複数(ここでは合計20本)形成しており、縦波の発生源である第2の線状導体5の本数を増やすことで、電磁結合器21全体で発生する縦波の大きさを維持し、結合強度を高く保つことが可能となる。
【0085】
また、導電パタン2dとグランドパタン3との距離が近くなると、インピーダンス特性が急峻となり、使用できる周波数帯域が狭くなるという問題が発生するが、本発明の電磁結合器21では、導電パタン2dとグランドパタン3とを第2の線状導体5で電気的に接続しているため、この第2の線状導体5が所謂ショートスタブの役割を果たし、インピーダンス特性を緩やかとし、導電パタン2dとグランドパタン3との距離を近くしても、使用できる周波数帯域を広く維持することができる。
【0086】
例えば、特許文献1の電磁結合器は、電極を接地しておらず、オープンスタブの電磁結合器ということができる。オープンスタブにおける入力アドミタンスYは、特許文献2より、[数3]に示す式(3)で表すことができる。また、式(3)は、0<αθ<<1であり、かつθ=(2m−1)π+δθ、|δθ|<<1、である場合、[数4]に示す式(4)のように近似が可能である。
【0087】
【数3】

【0088】
【数4】

【0089】
ここで、Y0は特性アドミタンスを、αは損失定数を、βは波数を、lは電気長を、mは正の整数を示す。なお、電磁結合器は小型であることが望まれるので、m=1を用いる。
【0090】
式(4)より、オープンスタブにおける入力アドミタンスYは、θ=(2m−1)π近傍にて、実数成分が極値をとり、虚数成分が0となる。
【0091】
他方、本発明の電磁結合器21は、導電パタン2dを接地しており、ショートスタブの電磁結合器ということができる。ショートスタブにおける入力アドミタンスYは、特許文献2より、[数5]に示す式(5)で表すことができる。また、式(5)は、0<αθ<<1であり、かつθ=2mπ+δθ、|δθ|<<1、である場合、[数6]に示す式(6)のように近似が可能である。
【0092】
【数5】

【0093】
【数6】

【0094】
式(6)より、ショートスタブにおける入力アドミタンスYは、θ=2mπ近傍にて、実数成分が極値をとり、虚数成分が0となる。
【0095】
式(4)と式(6)とを比較すると、入力アドミタンスYの実数成分および虚数成分のθに対する傾きは、ショートスタブにおける入力アドミタンスYを表す式(6)の方が小さい。よって、従来のオープンスタブの電磁結合器と比較して、ショートスタブの電磁結合器である本発明の電磁結合器21は、インピーダンス特性を緩やかとし、導電パタン2dとグランドパタン3との距離を近くしても、使用できる周波数帯域を広く維持することができる。
【0096】
図6は、電磁結合器21の周波数と反射係数の絶対値との関係を調査した実験結果である。この実験では、図5に示す形状の電磁結合器21を使用した。電磁結合器21は、厚さ1mmのFR4両面銅箔プリント基板を用いて形成され、電磁結合器21の各寸法は、図5に示す通りである。この電磁結合器21に特性インピーダンスが50Ωである同軸ケーブルを用いて給電し、50Ωの給電系26に対する反射係数の絶対値の周波数特性を、ネットワークアナライザを用いて測定した。
【0097】
図6に示すように、電磁結合器21では、周波数4.5GHzを中心に反射係数の絶対値が最小であり、電磁結合器として動作し、4.25GHz〜4.75GHzの帯域において、反射係数の絶対値が0.7より小さく、この周波数において、アンテナへ入力する電力に対するアンテナへ進行する電力の比は50パーセント以上である。したがって、電磁結合器21は、広帯域な周波数特性を実現していることが分かる。
【0098】
また、図7は、電磁結合器21とモノポールアンテナに関して、2つの電磁結合器21の間、及び2つのモノポールアンテナの間の距離に対する電磁結合器21又はモノポールアンテナへの入力電力と出力電力の比との関係を調査した実験結果である。この実験では、図8に示すモノポールアンテナ51を使用した。モノポールアンテナ51は、プリント基板52と、プリント基板52の表面に形成された2つの矩形導体53a,53bとからなる。2つの矩形導体53a,53bは、離間して形成されており、矩形導体53aは放射導体として動作し、矩形導体53bはグランドとして動作する。矩形導体53a,53bの間において給電がされる。モノポールアンテナ51は、厚さ2.4mmのFR4片面基板を用いて形成され、L’1=22.0mm、L’2=10.0mm、L’3=1.0mm、L’4=20.0mm、L’5=9.5mm、L’6=1.0mmである。モノポールアンテナ51は、一般的に利用されているアンテナであり、横波を用いた無線通信に適用されている。
【0099】
また、図9を用いて実験系を述べる。実験では、2つの被測定物61a,61b、すなわち、2つの電磁結合器21又は2つのモノポールアンテナ51は、平行に対向して配置され、一方の被測定物61aの中心を通る垂線が、他方の被測定物61bの中心を通るように配置される。被測定物61a,61bは、同軸ケーブル62a,62bを介し1つのネットワークアナライザ63の2つの端子に接続されている。ネットワークアナライザ63の一方の端子から出力される電力に対する他方の端子から入力される電力の比(S21の絶対値)、すなわち、電磁結合器21又はモノポールアンテナ51への入力電力と出力電力の比を評価する。
【0100】
図7は、2つの図2の電磁結合器21の間、及び2つの図8のモノポールアンテナ51の間のS21の絶対値と距離との関係についての実験結果を示す。実験では、周波数が4.5GHzの信号を使用しており、図7の横軸は、この使用周波数の波長に対する被測定物61a,61b間の距離の比とした。
【0101】
図7から分かるように、本発明の電磁結合器21では、距離に対する減衰が横波より大きい縦波を用い無線通信を行っているため、横波を用いて無線通信を行うモノポールアンテナ51より距離に対するS21の絶対値の傾きが大きい。
【0102】
具体的には、波長に対する被測定物61a,61b間の距離の比が約0.07の場合と、該距離の比が約1.5の場合の入出力電力の比の差は、モノポールアンテナ51では約18dBであるのに対し、本発明の電磁結合器21では約30dBであり、本発明の電磁結合器21は比較的に遠方での無線通信強度が弱く、近距離無線通信に適していることが分かる。
【0103】
また、給電されない第2の素子部7を追加することにより結合範囲が大きくなることを確認するために、図2の電磁結合器21と、図2の電磁結合器21において第2の素子部7を除いた電磁結合器(比較例の電磁結合器という)のそれぞれの結合強度の測定を行い、両者を比較した。
【0104】
結合強度の測定は、図9の評価系を用いS21を測定することにより行った。具体的には、2つの電磁結合器21(あるいは2つの比較例の電磁結合器)を、中心位置を合わせて、距離が3mmとなるように対向配置し、一方の電磁結合器21(あるいは比較例の電磁結合器)に対するもう一方の電磁結合器21(あるいは比較例の電磁結合器)の位置を両者の中心を結ぶ直線と垂直な方向へ移動させた場合の周波数4.5GHzでのS21の絶対値を測定した。なお、対向する2つの電磁結合器21(あるいは比較例の電磁結合器)の中心位置が合っているときの測定位置を0mmとした。測定結果を図10に示す。
【0105】
図10に示すように、本発明の電磁結合器21は、少なくとも測定位置10〜30mmにおいて、第2の素子部7を有さない比較例の電磁結合器と比較して、S21の絶対値が約1〜2dB程度大きくなっており、第2の素子部7を配置することにより結合範囲が大きくできることがわかる。
【0106】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る電磁結合器21では、第1の平面に形成されると共に、各々が離間して形成される複数の導電パタン2と、第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタン3と、第1の平面と第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、複数の導電パタン2のうち1つの導電パタン2dに一端が接続され、他端とグランドパタン3間に給電がなされる第1の線状導体4と、第1の平面と第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、複数の導電パタン2の各々に対して1つ以上形成され、複数の導電パタン2の各々とグランドパタン3とを接続する複数の第2の線状導体5と、を備えている。
【0107】
つまり、第1の実施の形態に係る電磁結合器21は、第1の線状導体4、導電パタン2d、および第2の線状導体5からなる第1の素子部6に加えて、導電パタン2eと第2の線状導体5とからなる第2の素子部7を備えた構造となっている。
【0108】
従来の電磁結合器では、電磁波の縦波成分の放射源として1つの電極(つまり第1の素子部6)しか備えておらず、その電極の大きさ(つまり導電パタン2dの大きさ)を大きくすると動作周波数特性が変わってしまうため、電磁結合器への入力電力が一定であれば、電磁波の結合範囲はある程度限定されていた。
【0109】
これに対して、第1の実施の形態に係る電磁結合器21では、給電系26と接続されない第2の素子部7を備えており、この第2の素子部7を構成する第2の線状導体5から近距離に限定した無線通信に利用する電磁波の縦波成分が放射されるので、これらの第2の素子部7を広範囲に配置することにより、電磁波の縦波成分をより広範囲で放射することが可能になる。よって、従来の電磁結合器と比較し、結合範囲のより広い電磁結合器21を実現できる。また、第2の素子部7を追加することにより第1の素子部6の動作周波数が変わることがないので、動作周波数を変えることなく、結合範囲を大きくすることが可能である。
【0110】
さらに、電磁結合器21によれば、縦波の発生源である第2の線状導体5を複数形成しているため、薄型として各第2の線状導体5で発生する縦波の大きさが小さくなった場合でも、電磁結合器21全体で発生する縦波の大きさを維持することが可能となり、結合強度を高く維持することが可能となる。よって、電磁結合器21によれば、薄型とした場合でも、従来と同等の結合強度を維持しつつ、より大きな結合範囲を実現できる。よって、送信側の電磁結合器21と受信側の電磁結合器21の位置が多少ずれた場合であっても、情報の伝達は可能となり、利便性の向上に寄与する。
【0111】
また、電磁結合器21によれば、第1の素子部6を構成する第2の線状導体5がショートスタブの役割を果たすので、薄型とした場合であっても、インピーダンス特性を緩やかとし、使用する周波数帯域を広帯域とすることが可能となる。
【0112】
さらに、第2の線状導体5がショートスタブの役割を果たすので、オープンスタブの場合と比較して、同様の整合条件を実現するためには、第1の素子部6を構成する導電パタン2dの大きさを大きく(ここでは、1辺の長さが225λ/1000〜450λ/1000)し、第1の線状導体4と第2の線状導体5との距離を大きく(ここでは、75λ/1000〜225λ/1000)する必要が生じる。つまり、電磁結合器21では、第1の素子部6における第1の線状導体4と第2の線状導体5との距離を大きくすることができ、結合範囲をより広くすることができる。
【0113】
また、電磁結合器21では、第1の素子部6を構成する第2の線状導体5を第1の線状導体4に対して点対称となる位置に形成するので、導電パタン2dを流れる電流により発生する横波が互いに打ち消し合い、放射電界を含む横波の発生を抑制できる。さらに、電磁結合器21では、第2の素子部7を構成する第2の線状導体5を、第1の線状導体4に対して点対称となる位置であり、かつ導電パタン2eの対称点に対して点対称となる位置に形成するので、導電パタン2eを流れる電流により発生する横波も互いに打ち消し合う。さらにまた、電磁結合器21では、薄型化が可能となるので、第2の線状導体5で発生する横波も抑制することができる。なお、上述の式(1),(2)を比較すれば分かるように、横波は縦波の1/2の大きさであるから、電磁結合器21を薄く(第2の線状導体5を短く)すれば、横波は非常に小さくなる。よって、他の無線通信システムを妨害することのない、近距離無線通信に適した電磁結合器21を実現できる。
【0114】
さらに、電磁結合器21は、従来技術のようにバンドパスフィルタ構造を用いていないため、前述の電磁結合器間の誘電率の変化に基づく情報伝達特性の劣化の低減が可能である。つまり、本発明によれば、情報伝達特性が情報伝達を行うもう一方の電磁結合器との間の誘電率の変化に殆ど依存しない電磁結合器21を実現できる。この結果、誘電体を含むカバーで覆われた機器に電磁結合器を内蔵する場合であっても、情報伝達特性の劣化を低減することが可能であり、より多くの種類の情報通信機器への適応が容易となる。
【0115】
なお、従来の電磁結合器では、バンドパスフィルタを実現するために、電極、直列インダクタ、並列インダクタ、及び容量が必要であり、また、電極は直列インダクタ及びグラウンドパタンとは独立する層に配置される構造である。これを具現化する手法の一つとして、2層のプリント基板の表面に直列および並列のインダクタを、裏面にグランドパタンを形成し、さらにこれらに別の電極を接続する方法がある。また、3層のプリント基板を用いて、それぞれの層に電極、直列および並列インダクタ、グランドパタンを形成し、電極とインダクタを線状導体で接続する方法がある。しかし、このような方法によると、電磁結合器の構造が複雑となり、コストも高くなる。これに対して、本発明では、2層のプリント基板22を用いて電磁結合器21の実現が可能であり、例えばFR4を介在とするプリント基板等を用いることが可能である。したがって、本発明によれば、構造が単純でコストが低い電磁結合器21の実現が可能である。
【0116】
また、本発明によれば、バンドパスフィルタの実現を考慮せずに電磁結合器21の設計を行うことができるので、従来と同等の情報伝達特性を維持しつつ、給電系26との整合調整を容易に行うことが可能である。したがって、電磁結合器21を機器に搭載する場合に、電磁結合器21を配置する空間や周囲環境により、電磁結合器21の周波数特性の調整が必要であるが、給電系26との整合調整を容易に行うことが可能であるため、この調整に要する時間の低減が可能であり、迅速に最適な電磁結合器21の提供が可能となる。
【0117】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電磁結合器を図11を用いて説明する。
【0118】
図11(a),(b)に示す電磁結合器111は、給電がなされる第1の素子部6の周囲に、4つの第2の素子部7を形成したものである。なお、ここでは第2の素子部7を4つ形成した場合を説明するが、第2の素子部7の数はこれに限定されるものではない。
【0119】
第2の実施の形態では、第1の素子部6は、プリント基板22の表面Sの中央部に形成された平面視で正方形状の導電パタン(第1の導電パタン)2fと、一端が給電パタン23の中心に接続され、他端が導電パタン2fの中心に接続された第1の線状導体4と、導電パタン2fとグランドパタン3とを電気的に接続する4本の第2の線状導体5と、からなる。4本の第2の線状導体5は、平面視で第1の線状導体4に対して点対称となる位置に形成され、平面視で第1の線状導体4を中心とする同心円の円周を4等分する位置(図11(a)においては第1の線状導体4の上下左右)に配置される。なお、第1の素子部6の導電パタン2fの形状、第2の線状導体5の本数、第2の線状導体5を形成する位置等は、これに限定されるものではなく、例えば、導電パタン2fの形状は円形や楕円形状などでもよい。導電パタン2fの形状や、導電パタン2fに形成される第2の線状導体5の位置を適宜選択することで、所望の周波数特性を有する電磁結合器が実現できる。
【0120】
第2の素子部7は、平面視で正方形状の導電パタン(第2の導電パタン)2gと、一端がグランドパタン3に接続され、他端が導電パタン2gの中心に接続された1本の第2の線状導体5とからなる。なお、第2の素子部7の導電パタン2gの形状、第2の線状導体5の本数、第2の線状導体5を形成する位置等は、これに限定されるものではない。ただし、横波の発生を抑制する観点からは、導電パタン2gを点対称形状とし、第2の線状導体5を導電パタン2gの対称点に対して点対称となる位置に形成することが望ましい。
【0121】
4つの第2の素子部7は、その導電パタン2gの中心が、平面視で第1の線状導体4を中心とする同心円の円周を4等分する位置(図11(a)においては第1の線状導体4の右上、右下、左上、左下)にくるように配置されている。これにより、全ての第2の線状導体5が、第1の線状導体4に対して点対称となる位置に形成されることとなり、電磁結合器111全体での対称性を確保し、横波の発生を最も抑制することができる。
【0122】
なお、図11では、4つの第2の素子部7を、第1の線状導体4の図示右上、右下、左上、左下にそれぞれ配置する場合を示したが、図12に示す電磁結合器121のように、第1の素子部6の導電パタン2fと、4つの第2の素子部7の導電パタン2gのそれぞれを、一直線上に配置する(つまり、導電パタン2fの平面視における中心と、導電パタン2gの平面視における中心が一直線状となるように配置する)ようにしてもよい。
【0123】
図11の電磁結合器111では、第1の線状導体4を中心とした全方向に結合範囲が広くなるが、図12の電磁結合器121では、一方向のみ(図示左右方向)に結合範囲を広げることができ、結合範囲を横長とすることができる。このように、第2の素子部7の配置位置を好適に選択することによって、所望の結合範囲を実現することが可能である。
【0124】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る電磁結合器を図13〜15を用いて説明する。
【0125】
図13に示す電磁結合器131は、グランドパタン3として給電用プリント基板151のグランド導体を使用するようにしたものであり、図14(a),(b)に示す電磁結合器部141を、図15(a),(b)に示す給電用プリント基板151に重ね合わせて構成される。
【0126】
図14(a),(b)に示すように、電磁結合器部141は、図11の電磁結合器111からグランドパタン3を除いたものである。プリント基板22の裏面Rには、線状導体4,5とそれぞれ電気的に接続された9つの素子側接続電極142が形成される。なお、ここでは、第1の線状導体4と接続される素子側接続電極142を平面視で円形状、第2の線状導体5と接続される素子側接続電極142を平面視で正方形状に形成しているが、素子側接続電極142の形状については、これに限定されるものではない。また、ここでは、一例として、電磁結合器部141を図11の電磁結合器111と略同じ構造とする場合を示しているが、電磁結合器部141の構造はこれに限定されるものではなく、例えば図2の電磁結合器21と同様の構造としてもよい。
【0127】
図13及び図15(a),(b)に示すように、給電用プリント基板151は、平面視で長方形状に形成されており、その短辺の長さが、電磁結合器部141を構成する正方形状のプリント基板22の一辺と略同じ長さ(プリント基板22の一辺より若干長い長さ)となるように形成され、その長辺が、プリント基板22の一辺よりも長く形成されている。
【0128】
給電用プリント基板151の裏面Rには、グランドパタン3となる導電パタン(グランド導体)が形成される。給電用プリント基板151の表面Sには、電磁結合器部141の裏面Rに形成された9つの素子側接続電極142のそれぞれと接続される9つのグランド側接続電極152が形成される。これら9つのグランド側接続電極152は、給電用プリント基板151の長辺方向における一端側(図15(a)では上側)に偏った位置に形成される。各グランド側接続電極152とグランドパタン3とは、線状導体(スルーホールの内部に形成された導体)153により、それぞれ電気的に接続されている。
【0129】
また、給電用プリント基板151の表面Sには、第1の線状導体4と接続されるグランド側接続電極152から、給電用プリント基板151の長辺方向における他端部(図15(a)では下側の部分)に延びる配線パタン154が形成され、その配線パタン154の先端には、図示しない給電用の同軸ケーブルの中心導体が接続される給電電極155が形成される。給電電極155は、電磁結合器部141を給電用プリント基板151に重ね合わせたときに、電磁結合器部141が重ならない部分に形成される。
【0130】
さらに、給電用プリント基板151の表面Sであって、給電電極155のさらに他端側には、給電電極155と離間して、図示しない給電用の同軸ケーブルの外部導体が接続されるグランド電極156が形成される。グランド電極156は、2本の線状導体(スルーホールの内部に形成された導体)157を介して、給電用プリント基板151の裏面Rのグランドパタン3と電気的に接続されている。
【0131】
電磁結合器部141を給電用プリント基板151に重ね合わせ、素子側接続電極142とグランド側接続電極152のそれぞれを半田等で電気的に接続すると、図13に示すような電磁結合器131が得られる。
【0132】
上述の図2の電磁結合器21,図11の電磁結合器111、図12の電磁結合器121では、プリント基板22の裏面Rに同軸ケーブルを半田付け等により接続して給電を行うので、同軸ケーブルを接続した状態では、プリント基板22の裏面R側の外形が凸形状となる。そのため、例えば外形が平坦な装置(情報通信機器)の外面に配置する際には、電磁結合器21,111,121を固定するための台座を設ける必要があり、配置スペースの高さが電磁結合器21,111,121の高さと台座の高さの和となるので、結果的に配置スペースが高くなってしまう場合がある。
【0133】
これに対して、第3の実施の形態に係る電磁結合器131では、同軸ケーブルを給電用プリント基板151の表面S側に接続するので、電磁結合器131の裏面となる給電用プリント基板151の裏面Rを平坦にすることができ、その結果、外形が平坦な装置(情報通信機器)の外面へそのまま配置することが可能となり、配置スペースの高さを低くすることができる。
【0134】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る電磁結合器を図16を用いて説明する。
【0135】
図16(a),(b)に示す電磁結合器161は、図2の電磁結合器21の導電パタン2d,2eとグランドパタン3とを平面視で囲むように、電磁誘導により無線通信を行うためのコイル162を配置したものである。
【0136】
本実施の形態では、プリント基板22の表面Sに、導電パタン2eの周囲を反時計回りに2周するようにコイル162となる配線パタンを形成し、その配線パタンの両端部に形成した2つの電極163と、プリント基板22の裏面Rに形成した2つの給電用電極164とを、線状導体(スルーホールの内部に形成された導体)165によりそれぞれ電気的に接続するよう構成した。
【0137】
2つの給電用電極164間には、給電パタン23とグランドパタン3間に給電する給電系とは別系統の給電系が接続され、給電がなされる。コイル162となる配線パタンは、電磁誘導による無線通信に適した電気長を有する。
【0138】
このように、第4の実施の形態に係る電磁結合器161は、図2の電磁結合器21の周囲に、さらに電磁誘導による電磁結合器を配置した構造となっている。図2の電磁結合器21の動作周波数は上述のように数GHz程度であるが、コイル162による電磁結合器の動作周波数は例えば13MHz程度であり、それぞれ異なる用途に用いることができる。つまり、第4の実施の形態によれば、用途の異なる2つの電磁結合器を組み合わせてパッケージ化した電磁結合器161を実現でき、用途の異なる2つの電磁結合器を1つの情報通信機器に搭載する場合に、両者を1か所に集約して占有容積を低減でき、情報通信機器の小型化や設計自由度の向上が可能となる。
【0139】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0140】
例えば、上記実施の形態では、2層のプリント基板22を用い、その表面Sに導電パタン2、裏面Rにグランドパタン3(あるいは素子側接続電極142)を形成する場合を説明したが、これに限らず、例えば、3層以上のプリント基板を用い、そのプリント基板の何れか2層を用いることも可能である。また、上記実施の形態では、2層のプリント基板22を用いた場合を示したが、プリント基板22を用いずに銅や鉄などの導体からなる導体板を用いて電磁結合器を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 電磁結合器
2 導電パタン
3 グランドパタン
4 第1の線状導体
5 第2の線状導体
6 第1の素子部
7 第2の素子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平面に形成されると共に、各々が離間して形成される複数の導電パタンと、
前記第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタンと、
前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンのうち1つの導電パタンに一端が接続され、他端と前記グランドパタン間に給電がなされる第1の線状導体と、
前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンの各々に対して1つ以上形成され、前記複数の導電パタンの各々と前記グランドパタンとを接続する複数の第2の線状導体と、
を備えたことを特徴とする電磁結合器。
【請求項2】
前記第1の平面は、プリント基板の一方の面であり、
前記第2の平面は、前記プリント基板の他方の面であり、
前記第1の線状導体と前記第2の線状導体は、前記プリント基板に形成されたスルーホールの内部に形成された導体である
請求項1記載の電磁結合器。
【請求項3】
前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンは、前記第1の線状導体との接続点に対して点対称となる形状に形成され、
前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンには、平面視で前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に、複数の前記第2の線状導体が接続される
請求項1または2記載の電磁結合器。
【請求項4】
前記複数の第2の線状導体は、前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に形成される請求項1〜3いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項5】
前記複数の導電パタンは、点対称となる形状に形成され、
前記複数の第2の線状導体は、接続される前記導電パタンの対称点に対して点対称となる位置に形成される
請求項1〜4いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項6】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される平面視で正方形状の第1の導電パタンと、該第1の導電パタンの周囲を囲むように平面視で正方形の枠状に形成された第2の導電パタンとからなる
請求項1〜5いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項7】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、
前記複数の第2の導電パタンは、その平面視における基準点としての中心が、前記第1の線状導体を中心とする同心円の円周を等分する位置にくるように配置される
請求項1〜5いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項8】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、
前記第1の導電パタンの平面視における基準点としての中心と、前記複数の第2の導電パタンの平面視における基準点としての中心が一直線状となるように配置される
請求項1〜5いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項9】
平面視で前記複数の導電パタンと前記グランドパタンとを囲むように、電磁誘導により無線通信を行うためのコイルを配置した
請求項1〜8いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項10】
前記第1の線状導体の他端と前記グランドパタン間には、同軸ケーブルで給電がなされる
請求項1〜9いずれかに記載の電磁結合器。
【請求項11】
電磁結合器を搭載し、静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて情報を伝達する情報通信機器であって、
前記電磁結合器は、
第1の平面に形成されると共に、各々が離間して形成される複数の導電パタンと、
前記第1の平面と平行な第2の平面に形成され、接地されるグランドパタンと、
前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンのうち1つの導電パタンに一端が接続され、他端と前記グランドパタン間に給電がなされる第1の線状導体と、
前記第1の平面と前記第2の平面に対して垂直に形成されると共に、長さが使用する周波数の波長の1/4より短く形成され、かつ、前記複数の導電パタンの各々に対して1つ以上形成され、前記複数の導電パタンの各々と前記グランドパタンとを接続する複数の第2の線状導体と、
を備えたことを特徴とする情報通信機器。
【請求項12】
前記第1の平面は、プリント基板の一方の面であり、
前記第2の平面は、前記プリント基板の他方の面であり、
前記第1の線状導体と前記第2の線状導体は、前記プリント基板に形成されたスルーホールの内部に形成された導体である
請求項11記載の情報通信機器。
【請求項13】
前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンは、前記第1の線状導体との接続点に対して点対称となる形状に形成され、
前記第1の線状導体が接続される前記導電パタンには、平面視で前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に、複数の前記第2の線状導体が接続される
請求項11または12記載の情報通信機器。
【請求項14】
前記複数の第2の線状導体は、前記第1の線状導体に対して点対称となる位置に形成される請求項11〜13いずれかに記載の情報通信機器。
【請求項15】
前記複数の導電パタンは、点対称となる形状に形成され、
前記複数の第2の線状導体は、接続される前記導電パタンの対称点に対して点対称となる位置に形成される
請求項11〜14いずれかに記載の情報通信機器。
【請求項16】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される平面視で正方形状の第1の導電パタンと、該第1の導電パタンの周囲を囲むように平面視で正方形の枠状に形成された第2の導電パタンとからなる
請求項11〜15いずれかに記載の情報通信機器。
【請求項17】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、
前記複数の第2の導電パタンは、その平面視における基準点としての中心が、前記第1の線状導体を中心とする同心円の円周を等分する位置にくるように配置される
請求項11〜15いずれかに記載の情報通信機器。
【請求項18】
前記複数の導電パタンは、前記第1の線状導体が接続される第1の導電パタンと、該第1の導体パタンの周囲に形成される複数の第2の導電パタンとからなり、
前記第1の導電パタンの平面視における基準点としての中心と、前記複数の第2の導電パタンの平面視における基準点としての中心が一直線状となるように配置される
請求項11〜15いずれかに記載の情報通信機器。
【請求項19】
平面視で前記複数の導電パタンと前記グランドパタンとを囲むように、電磁誘導により無線通信を行うためのコイルを配置した
請求項11〜18いずれかに記載の情報通信機器。
【請求項20】
前記第1の線状導体の他端と前記グランドパタン間には、同軸ケーブルで給電がなされる
請求項11〜19いずれかに記載の情報通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147119(P2012−147119A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2421(P2011−2421)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】