説明

電磁誘導加熱調理器用の容器

【課題】導電性の発熱体の劣化を防止した陶磁器製の電磁誘導加熱調理器用の容器を提供する。
【解決手段】本発明の電磁誘導加熱調理器用の容器1は、一端が開口した有底の容器本体2と、容器本体2の底部の外壁面2Aに導電性の発熱体4と、を備える。本発明の容器1は、容器本体2が、陶磁器製であるとともに、熱膨張係数が1.0×10−7〜10.0×10−7/℃の陶磁器製の素地5の表面に容器本体2の吸水率を0.1%以下とする釉薬層6が形成された構成であることを特徴とする。本発明の容器1においては、容器本体2の吸水率が一般的な容器よりも低いので、容器本体2に入れた水分が底部の外壁面2Aにまで滲み出すのを防止し、これにより導電性の発熱体4の劣化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱調理器用の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱方式の調理器(IH調理器)を使用して調理を行うためには、一般的には、導電性を有する金属製の鍋等が使用される。これは、電磁誘導によって金属製の鍋に渦電流を流し、鍋自体を発熱体として使用しているためである。
【0003】
しかし、近年、風味がよく保温性が高いという観点から、土鍋などの陶磁器製の容器が注目されている。そこで、IH調理器に使用できる陶磁器製の容器として、例えば特許文献1に記載の土鍋が提案されている。この土鍋の底部の外壁面には銀製の金属皮膜層が形成されており、この金属皮膜層が発熱することによって調理物の加熱が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3096191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な土鍋においては、吸水率が5〜10%であるため、調理の際に調理物とともに入れる水分が底部の内壁面より吸水され、吸水された水分が底部の外壁面側に滲み出すことがある。上記特許文献1に記載の土鍋のように、底部に銀製の金属皮膜層(導電性の発熱体)を備える土鍋において、水分が底部の外側に滲み出すような事態が生じると、水や調味料などに含まれている塩素や塩分などにより発熱体が浸食されて劣化し、断線してしまうおそれがある。
【0006】
なお、本発明ならびに本明細書中における吸水率とは、乾燥質量(A)を測定しておいた容器を満水状態にしてラップフィルムで蓋をし、室温で15時間放置した後、容器内の水を捨て、容器に付着した水を木綿布で拭い取った直後の質量(B)を測定して以下の式により算出される値のことをいう。
吸水率(%)=100×(B−A)/A
ここで、乾燥質量(A)とは、容器を電気乾燥炉を用いて恒量となるまで乾燥してから測定した容器の質量値である。詳しくは、乾燥質量(A)とは、容器を電気炉を用いて250℃で15時間乾燥した後に質量を測定し、さらに250℃で6時間乾燥して容器の質量を測定し、前回の容器の質量の測定値と同じ測定値になるまで、250℃で6時間の乾燥を繰り返してから測定する質量値である。
満水状態とする際に用いる水は水温15℃〜20℃の水道水を用いる。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、導電性の発熱体の劣化を防止した陶磁器製の電磁誘導加熱調理器用の容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものとして、本発明は、一端が開口した有底の容器本体と、前記容器本体の底部の外壁面に設けた導電性の発熱体と、を備える電磁誘導加熱調理器用の容器であって、前記容器本体は、陶磁器製であるとともに、熱膨張係数が1.0×10−7〜10.0×10−7/℃の陶磁器製の素地の表面に前記容器本体の吸水率を0.1%以下とする釉薬層が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の容器においては、熱膨張係数が1.0×10−7〜10.0×10−7/℃の陶磁器製の素地の表面に、容器本体の吸水率を0.1%以下とする釉薬層が形成されているので、容器本体に入れた水分が容器本体に吸水されにくく容器本体の外壁底面に滲みだすことがほとんどない。
その結果、本発明によれば、容器本体の外壁底面に設けられた導電性の発熱体の浸食を防止し、その劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性発熱体の劣化を防止した陶磁器製の電磁誘導加熱調理器用の容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1の土鍋を用いて調理を行う様子を示す側断面図
【図2】土鍋の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1および図2によって説明する。
図1には、本発明を具体化した土鍋1(本発明の電磁誘導加熱調理器用の容器に相当する)を示す。この土鍋1においては、調理物を入れるための土鍋本体2(容器本体2)の底部の外壁面2Aに、発熱体4が設けられている。
土鍋本体2は、陶磁器製であり、有底容器状に形成されている。この土鍋本体2の底部の外壁面2Aには、その周縁部よりもやや内側位置に、下方向に突出された円環状の脚部3が設けられている。
【0013】
土鍋本体2の底部の外壁面2Aにおいて、脚部3の内側領域には、全体として薄い円盤状に形成された発熱体4が設けられている。発熱体4は、例えば銀などの金属やカーボン等、電流を流すことによって発熱する導電性の材料により形成されている。この発熱体4において円盤の中心領域には、下方向に突出された円形の厚層部4Aが設けられており、これにより、発熱体4の中心領域の厚さがその周辺領域4Bよりも厚くされている。
【0014】
発熱体4は、例えば予め所望の形状に形成した薄膜を、耐熱性のセラミック系接着剤等により土鍋本体2の底部の外壁面2Aに貼り付けることにより設けることができる。また、スクリーン印刷法、溶射法等、あるいは、陶磁器加飾技法の一つである転写印刷法により土鍋本体2の底部の外壁面2Aに直接に形成することもできる。
【0015】
次に、本実施形態の土鍋1の材質について説明する。本実施形態の土鍋本体2は、陶磁器製の素地5(基材5)の全表面に釉薬層6が形成されてなる。
基材5は、耐熱容器として要求される耐熱衝撃性を備えるという観点から、熱膨張率が低く、耐熱衝撃性を向上可能な多孔質のペタライトや粘土などの材料を用いて、鋳込み成形法や塑性成形法やローラマシン成形法などの公知の成形法により成形される。
【0016】
本発明において、素地5(基材5)の熱膨張係数は、具体的には1.0×10−7〜10.0×10−7/℃であるのが好ましく、1.0×10−7〜8.0×10−7/℃であるのが特に好ましい。
基材5の材料としては、ムライト系、スポジュメン系、コ−ジェライト系などがあげられる。
基材5は上記の成形法により所定形状に成形したのち、例えば、1200℃〜1280℃で焼成すると得られる。
【0017】
基材5の表面には、全体を被覆する釉薬層6が形成されている。このように土鍋本体2の全表面を釉薬層6で被覆することで、土鍋本体2に均等な機械的強度を与え、吸水および吸臭などを有効に防止することができる。
【0018】
基材5の表面に施釉される釉薬としては、加熱調理時に容器にひびが入ったり容器が割れたりするのを防ぐため、基材5より熱膨張率が小さくなるように調製したものを用いる。
釉薬としては、熱膨張係数が、基材5の熱膨張係数に近いものかそれ以下のものを用いると、貫入などの発生がないため、土鍋本体2の吸水率を低くすることができるので好ましい。
【0019】
本実施形態においては、基材5の材料として熱膨張率の小さいものを使用することから、熱膨張率の低い釉薬を調製して用いる。釉薬材料としては、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、炭酸バリウム、ジルコン、石灰、粘土、ガラス粉末などがあげられ、これらのうちの3種以上を組み合わせて調製したものが釉薬として使用される。
【0020】
そして、釉薬層6を形成するための釉薬としては、釉薬の全質量に対して、SiOを63〜73%、Alを14〜18%、LiOを3.5〜7%、ZnOを3〜7%、BaOを0〜4%、CaOを0〜3%、ZrOを0〜6%の割合で含有するものを使用すると土鍋本体2の吸水率を0.1%以下とすることができるので好ましい。釉薬には上記以外の成分(その他の成分)として顔料などが含まれていてもよい。
【0021】
SiOの含有量が63%未満であると耐衝撃性が不十分となり、73%を超えると吸水率が高くなる。Alの含有量が18%を超えると吸水率が高くなる。LiOの含有量が3.5%未満であると耐熱衝撃性が不十分となり、7%を超えると釉薬層6を形成困難(ガラス膜にならない)となる。ZnOの含有量が3%未満であると吸水率が高くなり、7%を超えると貫入が入りやすくなる。
【0022】
上記組成の釉薬を、基材5の全外表面にわたってスプレー吹き、あるいはディッピングなど公知の方法により150〜250μmの厚みとなるように均一に施釉し、1150℃〜1250℃で焼成すると、土鍋本体2の吸水率を0.1%以下とする釉薬層6が形成される。
【0023】
なお、本実施形態において吸水率とは、乾燥質量(A)を測定しておいた土鍋本体2を満水状態にしてラップフィルム(図示せず)で覆い、室温で15時間放置した後、土鍋本体2内の水を捨て、土鍋本体2に付着した水を木綿布で拭い取った直後の質量(B)を測定して以下の式により算出される値のことをいう。
吸水率(%)=100×(B−A)/A
ここで、乾燥質量(A)とは、土鍋本体2を電気炉を用いて恒量となるまで乾燥してから測定した土鍋本体2の質量値である。詳しくは、乾燥質量(A)とは、土鍋本体2を電気炉を用いて250℃で15時間乾燥した後に質量を測定し、さらに250℃で6時間乾燥して土鍋本体2の質量を測定し、前回の土鍋本体2の質量の測定値と同じ測定値になるまで、250℃で6時間の乾燥を繰り返してから測定する質量値である。満水状態とする際に用いる水は水温15℃〜20℃の水道水を用いる。
【0024】
次に本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態の土鍋1を用いて調理を行う際には、図1に示すように、土鍋1の内部に調理物(図示せず)を入れ、IH調理器10のプレート11上にセットする。そして、IH調理器10のスイッチ13を入れると、IH調理器10に内蔵されている加熱コイル12に電流が流されることによって磁力線が発生する。そして、この磁力線が土鍋1の発熱体4内を流れることにより渦電流が発生し、この発熱体4が発熱する。この熱が土鍋1の内部の調理物に伝わることにより、調理物が加熱される。
【0025】
ところで、一般的な土鍋は、吸水性が高いという性質に起因して以下の問題を有している。
(1)一般的な土鍋では、においや汚れの吸着、水漏れなどが起こり易く、加熱調理中に調理物の汁が漏れ出てきたり、完全に乾燥させるのに長時間を要し、乾燥が不完全であるとカビが生えることがある。
(2)一般的な土鍋を用いてご飯を炊くと、水が土鍋本体11に吸収されるため、水加減が不安定になり、炊き上がったご飯に不具合が生じるという問題があり、予め米のとぎ汁を吸水させてから、水を配合するなど、工夫が必要である。
(3)底部の外壁面に導電性の発熱体を備える土鍋において、水分が底部の外側面に滲み出すような事態が生じると、水や調味料などに含まれている塩素や塩分などが高温(300℃〜600℃)になった発熱体と反応することにより発熱体が浸食されて劣化し、断線してしまうおそれがある。
これらの問題のうち、本実施形態の土鍋1のようにIH調理器に用いる土鍋では、特に(3)の問題を解決することが重要である。
【0026】
従来から、吸水性が高いことに起因する上記(1)〜(3)の問題を緩和するために、例えば土鍋1の使用を開始する際に、おかゆを炊くなどの方法により土鍋の内側面(調理物を入れる部分)にデンプンの皮膜を作る「目止め処理」が行われてはいるが、目止め処理を行っただけでは、その後の使用によりデンプンの皮膜が剥がれてしまうため、再度、同様な問題が生じる懸念がある。
【0027】
しかしながら、本実施形態の土鍋1では、陶磁器製の基材5の全表面に、土鍋本体2の吸水率を0.1%以下とする釉薬層6が形成されているから、土鍋本体2の内部に水が滲み込みにくくなっており、土鍋本体2の底部の外壁面2Aにまで滲み出すような事態は起こり難い。その結果、本実施形態によれば、土鍋本体2の吸水率をかなり低くすることができるから、一般的な土鍋1の有する(1)および(2)の問題を解決するだけでなく、IH調理器に用いる土鍋の有する(3)の問題を解決することができる。すなわち、本実施形態によれば、導電性の発熱体4の劣化を防止した陶磁器製の電磁誘導加熱調理器用の容器1を提供することができるのである。
【0028】
また、本実施形態によれば、釉薬が基材5の全面に施釉されているから、土鍋本体2に均等な機械的強度を与えることができるとともに、土鍋本体2の内壁からの吸水を防ぐだけでなく、土鍋本体2の外壁からの吸水も防ぐ。その結果、本実施形態によれば、吸水および吸臭を有効に防止することができる。
【0029】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
1.実施例1
(1)実施例1の土鍋の作製
実施形態1に示す形状をなし、外径275mm、内径240mm、高さ95mm、糸尻高さ3mm、底面径200mmの実施例1の土鍋を以下の方法により作製した。
基材の材料としてペタライト、スポジューメン、珪石粉末、カオリン、粘土、石灰のうちの3種以上を組み合わせた素地土をローラマシン成形機[新栄機工(株)製、型式ACTM−1R−50DT]により、所定形状に成形したのち、1200〜1270℃下で焼成し、土鍋本体の基材を作製した。
【0030】
次に、釉薬材料として、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、ジルコン、石灰、粘土、ガラス粉末のうちの3種以上を組み合わせて、釉薬の全質量に対して、SiOを68.0%、Alを16.5%、LiOを3.9%、ZnOを5.5%、CaOを0.8%、ZrOを3.0%、顔料などその他の成分を2.3%の割合で含有する釉薬を調製した。
上記のように調製した釉薬を、土鍋基材および蓋基材の表面全体にスプレー吹きにより厚みが100〜250μmとなるように均一に施釉し、焼成温度が1150〜1250℃となるように焼成して釉薬層を形成させた。
【0031】
次に、転写印刷法により、以下のようにして土鍋の底部の外壁面に発熱体を設けた。
(A)銀ペーストを用い、転写シート上に直径180mmの円形の薄膜層をスクリーン印刷により形成した。この薄膜層を50℃で2時間乾燥した。
(B)上記(A)で形成した薄膜層上に、この薄膜層と同心となるように直径120mmの円形の薄膜層をスクリーン印刷により積層した。この薄膜層を50℃で2時間乾燥した。
(C)上記(A)および(B)で形成した薄膜層を全て覆うように樹脂カバーコートをスクリーン印刷して、50℃で2時間乾燥した。
(D)上記(C)で形成された転写(薄膜層と樹脂カバーコートとの積層体)を土鍋の底面外壁に貼り付け、70℃で3時間乾燥した。
(E)転写を貼り付けた土鍋を880℃で3時間焼成して、この転写を土鍋に焼き付けることにより、中央位置に厚層部を有する発熱体を得た。なお、厚層部の厚さを26.6μm、周辺領域の厚さを20μm(厚さ比1.33:1)とした。
以上のようにして得られた土鍋を実施例1の土鍋とした。この土鍋の基材の熱膨張係数は5.8×10−7/℃であった。なお、熱膨張係数は、真空理工製DLY7000RH赤外線加熱式熱膨張測定装置を用いて測定した。
【0032】
(2)土鍋の吸水率の測定
上記のようにして得られた土鍋本体を電気乾燥炉(三洋電気製、MOV−212F(U))を用いて250℃で15時間乾燥した後に質量を測定し、さらに250℃で6時間乾燥して土鍋本体の質量を測定し、前回の測定値と同じ測定値になるまで、250℃で6時間の乾燥を繰り返した。電気炉による乾燥を繰返して前回と同じ測定値となったときに土鍋本体の質量を測定しその値を乾燥質量(A)とした。
【0033】
予め乾燥質量(A)を測定しておいた土鍋本体に、15℃〜20℃の水道水を入れて満水状態にしてラップフィルムで蓋をし、室温で15時間放置した後、土鍋本体内の水を捨て、容器に付着した水を木綿布で拭い取った直後の質量(B)を測定し、以下の式により吸水率を算出し、表1に示した。
吸水率(%)=100×(B−A)/A
【0034】
(3)塩害試験
予め入力電力を測定(この測定値を初期の入力電力W1とする)しておいた土鍋本体の内部に、2質量%の食塩水を400ml入れて、IH調理器[200V電源対応のパナソニック(株)製KZ−321L(2KW)]を用いて沸騰するまで加熱した後、IH調理器のスイッチを切って16時間放置した。放置後の土鍋本体を、IH調理器を用いて食塩水がなくなるまで最大出力で再加熱し、食塩水の蒸発後さらに5分間空焚きするか、または空焼き自動オフ機能(OHP)が作動するまで空焚きした。空焚き後の発熱体の異常(断線など)の有無を、目視により確認するとともに、空焚き後の入力電力(W2)を測定した。
初期の入力電力(W1)および空焚き後の入力電力(W2)は、土鍋本体に3分の2の量(容量)の水を入れて、パナソニック製200V電磁調理器KZ−GST1を用いて最大出力で加熱し、5分後の消費電力を横河電機製25341−C−10−M/EX1/DA4消費電力測定装置を用いて測定した。
【0035】
空焚き後の発熱体の異常が認められず、空焚き後の入力電力(W2)が初期の入力電力(W1)の90%以上であれば、発熱体の劣化がなかったものと判断し、表1に結果を示した。表1中、発熱体の劣化のないものを○で示し、劣化のあったものを×で示した。
【0036】
2.実施例2および比較例1〜4
(1)実施例2の土鍋の作製
以下に示す組成の釉薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の土鍋を作製し、実施例1と同様の方法で吸水率を算出し、塩害試験を行った。
実施例2では、釉薬材料として、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、ジルコン、粘土、ガラス粉末、炭酸バリウムのうちの3種以上を組み合わせて、釉薬の全質量に対して、SiOを68.0%、Alを16.0%、LiOを3.5%、ZnOを5.0%、BaOを1.0%、ZrOを2.0%、顔料などその他の成分を4.5%の割合で含有する釉薬を調製して用いた。
【0037】
(2)比較例1の土鍋の作製
以下に示す組成の釉薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例1の土鍋を作製し、実施例1と同様の方法で吸水率を算出し、塩害試験を行った。
比較例1では、釉薬材料として、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、ジルコン、粘土、ガラス粉末のうちの3種以上を組み合わせて、釉薬の全質量に対して、SiOを67.5%、Alを15.0%、LiOを3.4%、ZnOを5.0%、ZrOを3.0%、顔料などその他の成分を6.1%の割合で含有する釉薬を調製して用いた。
【0038】
(3)比較例2の土鍋の作製
以下に示す組成の釉薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例2の土鍋を作製し、実施例1と同様の方法で吸水率を算出し、塩害試験を行った。
比較例2では、釉薬材料として、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、ジルコン、粘土、ガラス粉末のうちの3種以上を組み合わせて、釉薬の全質量に対して、SiOを67.0%、Alを16.0%、LiOを3.2%、ZnOを4.0%、ZrOを3.0%、顔料などその他の成分を6.8%の割合で含有する釉薬を調製して用いた。
【0039】
(4)比較例3の土鍋の作製
以下に示す組成の釉薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例3の土鍋を作製し、実施例1と同様の方法で吸水率を算出し、塩害試験を行った。
比較例3では、釉薬材料として、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、ジルコン、粘土、ガラス粉末のうちの3種以上を組み合わせて、釉薬の全質量に対して、SiOを66.0%、Alを15.0%、LiOを3.2%、ZnOを3.0%、CaOを3.0%、ZrOを3.0%、顔料などその他の成分を6.8%の割合で含有する釉薬を調製して用いた。
【0040】
(5)比較例4の土鍋の作製
以下に示す組成の釉薬を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例4の土鍋を作製し、実施例1と同様の方法で吸水率を算出し、塩害試験を行った。
比較例4では、釉薬材料として、ペタライト、スポジューメン、炭酸リチウム、マグネサイト、カリ長石、珪石粉末、亜鉛華、炭酸バリウム、ジルコン、石灰、粘土、ガラス粉末のうちの3種以上を組み合わせて、釉薬の全質量に対して、SiOを66.0%、Alを15.0%、LiOを3.0%、ZnOを3.0%、BaOを5.0%、CaOを3.0%、ZrOを3.0%、顔料などその他の成分を2.0%の割合で含有する釉薬を調製して用いた。
【0041】
【表1】

【0042】
3.結果と考察
表1から明らかなように本発明の土鍋(実施例1および実施例2)では、発熱体の劣化が起こらなかったが、比較例の土鍋では発熱体の劣化が起こった。
本発明の土鍋では、土鍋本体の吸水率を0.1%以下とする釉薬層が素地の表面に形成されているので、土鍋本体の内部に水が滲み込みにくくなっており、土鍋本体の底部の外壁面にまで水分が滲み出すような事態は起こり難い。その結果本発明の土鍋では発熱体の劣化が起こらなかったと考えられる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1) 上記実施形態では、発熱体を銀ペーストを転写する方法により設けたが、耐熱性のセラミック系接着剤等により土鍋本体の底部の外壁面に薄膜状の発熱体を貼り付ける方法や、スクリーン印刷法、溶射法等により設けてもよい。
【0044】
(2)上記実施形態においては、中心領域の厚さがその周辺領域よりも厚くなっている発熱体を備えるものを示したが、全域において同じ厚さの発熱体を備えるものであってもよいし、中心領域の厚さがその周辺領域よりも薄くなっている発熱体を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…土鍋(電磁誘導加熱調理起用の容器)
2…土鍋本体(容器本体)
2A…底部の外壁面
4…発熱体
5…基材(素地)
6…釉薬層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した有底の容器本体と、
前記容器本体の底部の外壁面に設けた導電性の発熱体と、を備える電磁誘導加熱調理器用の容器であって、
前記容器本体は、陶磁器製であるとともに、熱膨張係数が1.0×10−7〜10.0×10−7/℃の陶磁器製の素地の表面に前記容器本体の吸水率を0.1%以下とする釉薬層が形成されてなることを特徴とする電磁誘導加熱調理器用の容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−240204(P2010−240204A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93141(P2009−93141)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(594054852)株式会社ミヤオカンパニ−リミテド (14)
【Fターム(参考)】