説明

電磁誘導用発熱・蓄熱材

【構成】電磁誘導により発熱し、蓄熱する電磁誘導用発熱・蓄熱材で二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなり、フェライトやアルミニウムやカ−ボン等の電磁誘導発熱材料と併用され、立方体容器に内蔵させて使用される。
【効果】電磁誘導により発熱し、蓄熱する電磁誘導用発熱・蓄熱材として有効で、発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力を節約することができ、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる等の利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導用発熱・蓄熱材に関し、詳しくは、電磁誘導により加熱された水などの加熱媒体を循環させて暖房・給湯等を行う際の当該電磁誘導の加熱装置に使用される発熱・蓄熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房装置や給湯装置に具備せしめられる加熱装置としては、重油等の燃料を燃焼した熱で、水を加熱するボイラが一般的に用いられてきたが、一方では、加熱装置として、電磁誘導作用により生じた熱で、水を加熱するように構成された電磁誘導加熱装置も多数提案されている(特開2001−263810号公報、特開2002−022107号公報、特開2009−174768号公報等)。
当該電磁誘導加熱装置には、電磁誘導の磁界(交番磁界)によって発熱する発熱材料が使用される。
当該発熱材料には、多くの場合、特開平9−44014号公報に開示されるように磁束の吸収が良好な磁性金属が用いられ、鉄、ニッケル、磁性ステンレス、コバルト−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金などが望ましいとされている一方で、一般的な当該磁性金属よりも、導電性の良好なアルミニウム、銅、銀などの非磁性金属を用いてもよいとされている(特開2002−007438号公報)。
他方、フェライトは、良好な磁性体で当該発熱材料として広く使用されている。又、カ−ボン(炭素)等も当該発熱材料として使用されている。
当該発熱材料は、その発熱体の使用形態に合わせて、それに見合った板状、シ−ト状、箔状などの形態が採用される。例えば、暖房便座装置では、便座の表面材の表面にアルミ箔よりなる発熱体を配置し、当該表面材の裏面に電磁誘導の誘導コイルを配置し、当該誘導コイルに通電してアルミ箔よりなる発熱体を発熱させ、便座表面を暖めるようにしているものがある。
金属蒸着、金属スパッタリング、金属メッキなどの手法により、発熱層を形成したり、金属粉や金属片などを合成樹脂に混合して当該合成樹脂層で発熱体を構成すること等も行われている。
当該電磁誘導加熱装置における発熱体とそれにより加熱される水との関係では、例えば、特開2001−263810号公報には、水が流通するパイプの内側に電磁誘導により発熱する鉄板からなる昇温器を配設し、当該パイプの外側にコイルを巻いて通電することによって、パイプ内に設けた当該昇温器を電磁誘導加熱して、パイプ内を通過する水を加熱するように構成されたものが提案されている。
即ち、この従来例は、発熱体の鉄板と水とを直接接触させてパイプ内を流れる水を加熱する構成が取られているのであるが、一般的には、他の従来例の電磁誘導加熱装置も、発熱体を水と直接接触させて、水を加熱する形式が殆んどである。
本発明者らは、先に、上記のような従来例とは異なり、立体容器の内部に発熱材を内蔵させ、当該立体容器の外部で水などの非加熱媒体を加熱して、当該立体容器の内部の発熱体と水とを直接接触させないで、電磁誘導により水を加熱して、暖房や給湯などを行うようにしてなる電磁誘導加熱装置及びそれを用いた暖房装置や給湯装置を提案した(特願2010−108400号)。
その際に、当該立体容器の内部の発熱材については、電磁誘電加熱により短時間に発熱を行うことができれば、暖房装置や給湯装置を短時間に加熱して電力消費を節約できるし、又、立体容器の内部の発熱材が、その発熱を持続して熱を発熱体内部に蓄熱できれば、温度低下を招かずに済み、電力を消費でき、特に、加熱装置の電源をOFFにしても立体容器の内部の発熱材自身がその相互の発熱電子の揺動作用により揺動され続けて外部への電子錯乱を起こさせ、熱を容器内部に充満させることができれば、電源を何時までも入力ON状態にしておく必要がなくなり、適宜電源を切断してOFFにして、電力を節約することができる。更に、その際に、立体容器の内部の発熱材の熱が、その容器内において万便なく行き渡るようにすることができれば、電磁誘導の効率を上げ、省電力に繋がる。
上記のように、従来から各種の発熱材料が使用されてきたが、例えば、フェライトやアルミニウム等の発熱材料は、発熱材料としては良好ではあっても、蓄熱作用が不充分で、且つ、電源のOFF状態が長く続かなかったり、又、鉄は、その種類によっては同様に当該蓄熱作用が不充分で、且つ、電源のOFF状態が長く続かなかったり、更には、当該発熱材料は、立体容器の内部の発熱材の熱がその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であつたりする場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−44014号公報、特開2001−263810号公報、特開2002−007438号公報、特開2002−022107号公報、特開2009−174768号公報、特開2001−263810号公報、特願2010−108400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消できると共に、上記のような立体容器の内部の発熱材として使用できると共に、その発熱だけでなくその発熱と共に蓄熱作用に優れ、且つ、電源のOFF状態を長く続けることができ、又、容器内において万便なく熱を行渡らせることができ、電磁誘導の効率を向上させ、消費電力を小さくすることができる等の上記要請に応えることのできる技術を提供することを目的としたものである。
本発明の他の目的および新規な特徴は以下の明細書及び図面の記載からも明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特許請求の範囲は、次の通りである。
(請求項1)電磁誘導により発熱し、蓄熱する電磁誘導用発熱・蓄熱材において、当該電磁誘導用発熱・蓄熱材が、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなることを特徴とする電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項2) 電磁誘導用発熱・蓄熱材における二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体が、二酸化ケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項3) 電磁誘導用発熱・蓄熱材における二酸化ケイ素が、シリカ又はシリカゲルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項4) 電磁誘導用発熱・蓄熱材におけるケイ素の単体が、メタルシリコンであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項5) 電磁誘導用発熱・蓄熱材が、フェライトを含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項6) 電磁誘導用発熱・蓄熱材が、鋳鉄を含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項7) 電磁誘導用発熱・蓄熱材が、アルミニウムを含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項8) 電磁誘導用発熱・蓄熱材が、カ−ボンを含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項9) 電磁誘導用発熱・蓄熱材が、無機質結合剤を含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
(請求項10) 電磁誘導用発熱・蓄熱材が、立方体容器の内部に内蔵させて使用され電磁誘導作用により発熱すると共に蓄熱を起こさせるようになっていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【発明の効果】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、本発明によれば、請求項1に記載の発明において、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を電磁誘導用発熱・蓄熱材に含有させることにより、発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力を節約することができ、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。
当該電磁誘導用発熱・蓄熱材は、本発明が目的としている立方体容器の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材を内蔵させて電磁誘導作用により発熱すると共に蓄熱を起こさせる用途に適している。
当該本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、電磁誘電加熱により短時間に発熱を行うことができ、又、その発熱を持続させて当該電磁誘導用発熱・蓄熱材から発した熱をその発熱・蓄熱材の内部に蓄熱できるので、温度低下を招かずに済み、電力を節約できると共に、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力を節約することができ、更には、立体容器の内部の当該電磁誘導用発熱・蓄熱材の熱が、その容器内において万便なく行き渡るようにすることができるので、電磁誘導の効率を上げ、省電力に繋がらせることができる。
請求項2に記載の発明のように、二酸化ケイ素は、上記のような作用に加えて、原材料の混練における粘土的な作用も果たすことが出来るので、フェライト等の発熱材料と混練させて電磁誘導用発熱・蓄熱材を製造するのに好適に使用できる。
請求項3に記載の発明のように、当該二酸化ケイ素としてシリカやシリカゲルの使用は、より一層、上記のような作用に加えて、原材料の混練における粘土的な作用も果たすことが出来るので、フェライト等の発熱材料と混練させて電磁誘導用発熱・蓄熱材を製造するのに好適に使用できる。
請求項4に記載の発明のように、ケイ素の単体としてのメタルシリコンは、珪素(Si)の純度が高く、より一層、上記のような作用に優れ、フェライト等の発熱材料と混練させて電磁誘導用発熱・蓄熱材を製造するのに好適に使用できる。
請求項5に記載の発明では、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、フェライトを含有してなる。当該フェライトは、発熱材料として良好ではあるが、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱がその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であったりする場合がある。上記のように、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材では、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有させることにより、当該フェライト系発熱材料の当該欠点を解消できる。
請求項6に記載の発明では、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、鋳鉄を含有してなる。発熱材料をフェライト−鉄系或いは鉄系としたような場合において、当該鉄よりなる発熱材料は、その種類によっては同様に発熱はしても、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱がその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であったりする場合がある。上記のように、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材では、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有させることにより、当該フェライト−鉄系或いは鉄系発熱材料の当該欠点を解消できる。
請求項7に記載の発明では、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、アルミニウムを含有してなる。発熱材料をアルミニウム系としたような場合において、当該アルミニウムを使用してなる発熱材料は、発熱が不充分であったり、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱がその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であったりする場合がある。上記のように、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材では、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有させることにより、当該アルミニウム系発熱材料の当該欠点を解消できる。
請求項8に記載の発明では、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、カ−ボンを含有してなる。発熱材料をカ−ボン(炭素)としたような場合において、当該カ−ボンを使用してなる発熱材料は、発熱が不充分であったり、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱がその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であったりする場合がある。上記のように、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材では、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有させることにより、当該カ−ボン系発熱材料の当該欠点を解消できる。
請求項9に記載の発明では、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、無機質結合剤を含有してなる。本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、その原料がフェライト、鋳鉄、アルミニウム、カ−ボン、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体等の粉末や粒状等の無機質物を混練して電磁誘導用発熱・蓄熱材とするので、纏まり難い原材料をバインダ−(結合)していく必要がある。二酸化ケイ素のシリカやシリカゲルは、原材料の混練における粘土的な作用も果たすことが出来るので、フェライト等の発熱材料と混練させて電磁誘導用発熱・蓄熱材を製造するのに好適に使用でき、又、当該発熱・蓄熱作用などを阻害せず、むしろ、電磁誘導用発熱・蓄熱材に含有させることにより、発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができ、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。しかし、混練が不充分となる場合もあり、二酸化ケイ素の溶融剤のような
無機質結合剤を含有させることにより、より一層、原材料の混練におけるバインダ−作用を向上させることができる。
請求項10に記載のように、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、本発明が目的としている立方体容器の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材を内蔵させて電磁誘導作用により発熱すると共に蓄熱を起こさせる用途に適している。
当該本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、電磁誘電加熱により短時間に発熱を行うことができ、又、その発熱を持続させて当該電磁誘導用発熱・蓄熱材から発した熱をその発熱・蓄熱材の内部に蓄熱できるので、温度低下を招かずに済み、電力を消費でき、且つ、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力を節約することができると共に、立体容器の内部の当該電磁誘導用発熱・蓄熱材の熱が、その容器内において万便なく行き渡るようにすることができるので、電磁誘導の効率を上げ、省電力に繋がらせることができる。
本発明者らが先に提案した立体容器の内部に発熱材を内蔵させ、当該立体容器の外部で水などの非加熱媒体を加熱して、当該立体容器の内部の発熱体と水とを直接接触させないで、電磁誘導により水を加熱して、暖房や給湯などを行うようにしてなる電磁誘導加熱装置に、当該本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の電磁誘導により発熱し、蓄熱する電磁誘導用発熱・蓄熱材は、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなる。
本発明で使用される二酸化ケイ素としては、二酸化ケイ素(SiO)若しくは二酸化ケイ素(SiO)によって構成される物質の総称のシリカが例示され、当該シリカは、シリカという呼び名の他に、無水ケイ酸、ケイ酸、酸化シリコンと呼ばれることもある。
当該シリカは、 結晶性シリカと非結晶性シリカ とに分類される。即ち、シリカは圧力や温度などの条件により、様々な形(結晶多形)をとるので、これによりシリカは、石英などの結晶性シリカと、シリカゲル・未焼成の珪藻土や生物中に存在する非結晶性シリカとの2つに大別される。本発明では、結晶性シリカでも非結晶性シリカでも使用できる。
自然界におけるシリカ の一般的な形状は、石英である。シリカは、砂の主成分でありガラスの原料となる、珪砂もシリカからなる。地殻内にはシリカが大量に含まれており、地球の表層の約6割がシリカを含む鉱物によって構成されている。
シリカは、ケイ酸をゲル化したシリカゲルとしても存在する。本発明では、シリカゲル(SiO・HO)も使用できる。
本発明によれば、シリカを添加することにより、従来のフェライト系やフェライト−鉄系、フェライト−鉄−アルミニウム系等の発熱材料の上記のような欠点を解消して、発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができ、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。
又、シリカは、上記のような作用に加えて、原材料の混練における粘土的な作用も果たすことが出来る。
【0008】
本発明で使用される酸化チタンは、シリカと同様に、従来のフェライト系やフェライト−鉄系、フェライト−鉄−アルミニウム系等の発熱材料の上記のような欠点を解消して、発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができる、又、立体容器の内部の発熱材料の熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。
酸化チタン(二酸化チタン、titanium dioxide)は、組成式 TiOで示されるチタンの酸化物である。
天然には金紅石(正方晶系)、鋭錐石(正方晶系)、板チタン石(斜方晶系)の主成分として産出する無色の固体で、その結晶構造には、アナタ−ゼ型,ルチル型等があるが、本発明では、両方を使用することができる。
酸化チタンは、光触媒としての活性が高いので、上記のような作用に加えて、給湯の際の水の殺菌に役立せることもできる。
【0009】
本発明で使用されるケイ素の単体とは、ケイ素(Si)成分単体を意味し、例えば、二酸化ケイ素(SiO)を還元することにより得られる金属グレ−ドシリコン(メタルシリコン)が例示される。当該メタルシリコンは、シリカや酸化チタンと同様に、従来のフェライト系やフェライト−鉄系、フェライト−鉄−アルミニウム系等の発熱材料の蓄熱作用を高め、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力を節約することができ、又、その添加により、立体容器の内部の発熱材料の熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。
メタルシリコンは、珪素(Si)の純度が97%以上のものを指称し、例えば、SiO含有量が多い珪石、珪砂にコ−クスを混ぜ、2000℃近い開放式のア−ク炉で還元することにより得ることができる。
上記のような高純度の珪素(Si)を塩素と反応させ、四塩化ケイ素とし(ガス化)これを蒸留して更に純度の高い製品とした高純度ポリシリコンも本発明では当該ケイ素の単体として使用することができる。
【0010】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなるが、発熱材料と混練する際の当該シリカの粘土的な作用からは、当該二酸化ケイ素を必須とするとよい。特に、シリカ粘土は、結合剤となり得る。酸化チタン及びケイ素の単体は、各々単独でもよいが、二酸化ケイ素と併用するようにするとよい。
【0011】
本発明のような電磁誘導用発熱・蓄熱材において、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体をフェライトよりなる発熱材料に添加した場合に、前記のように、当該フェライト系発熱材料の欠点を解消できる。即ち、フェライトは、発熱材料として良好ではあるが、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分となる場合があるが、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体特に二酸化ケイ素を添加することにより、当該欠点を解消して、発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができ、又、立体容器の内部の発熱材料の熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。
【0012】
上記発熱材料のフェライト(Ferrite)は、酸化鉄を主成分とするセラミックスの総称で、発熱効果などから 強磁性を示すものを使用することが好ましい。
当該フェライトは、結晶構造によってスピネルフェライト、六方晶フェライト、ガ−ネットフェライト等に分類される。
スピネルフェライトは、スピネル型結晶構造を持ち、その組成式は、AFe
で、式中のAは、Mn、Co、Ni,Cu,Zn等を示し、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト等が代表的なものである。
スピネルフェライトの一種には、当該式中のAが、Fe(鉄)で、磁鉄鉱(マグネタイト、Fe)のフェライトが、本発明では、発熱が良好であることに加え、磁器質で、原材料の混練における粘土的な作用を果たすことなどから、好ましい。
本発明では、他に、マグネトプランバイト型の六方晶型結晶構造を持つ六方晶フェライト やガ−ネット型結晶構造を持つガ−ネットフェライトなども使用することができる。
軟磁性を示すソフトフェライトでも、硬磁性を示すハ−ドフェライトでも使用することができる。
【0013】
本発明では、電磁誘導用発熱・蓄熱材において、発熱材料を鉄系の発熱材料としたような場合において、鉄よりなる発熱材料は、その種類によっては同様に発熱はしても、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であったりする場合等があるが、本発明では、当該鉄(iron)として鋳鉄(cast iron)を使用すると、発熱作用に優れ、又、蓄熱作用に優れ、発熱電子の揺動作用により加熱装置の電源を適宜OFFにすることができ、更には、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる点から好ましい。
即ち、鉄(Fe)は、鋳鉄(cast iron)、銑鉄(Pig iron)、砂鉄(iron sand)など各種の種類があるが、当該鉄を使った鋳物製品の製造に用いられているような鋳鉄(cast iron)が好ましい。
フェライト系発熱材料、フェライト−鉄系発熱材料、フェライト−鉄−アルミニウム系発熱材料等の発熱材料の場合、発熱は良好であるが、蓄熱作用に難があり、冷め易いという難点を包蔵している場合、当該鋳鉄(cast iron)は、当該難点を克服し、又、立体容器の内部の発熱材の熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることもできる。
鋳鉄(cast iron)は、鉄 (Fe)と炭素 (C)とケイ素(Si)との三元合金である。
鋳鉄(cast iron)は、一般的に、銑鉄(Pig iron)に比べてケイ素(Si)分を多く(約1−3%)含有している。銑鉄(Pig iron)は、鉄鉱石から直接製造された鉄の一種で、不純物が多く、炭素含有量も2.6〜5%で、一般に脆く鍛錬することはできない。銑鉄(Pig iron)で鋳物用に適するものを鋳鉄(cast iron)という。銑鉄(Pig iron)は、用途別に製鋼用銑と鋳物用銑に分けられ、後者の鋳物用銑(JISで2種が規定されている。)が鋳鉄(cast iron)となる。
鋳鉄(cast iron)は、銑鉄(Pig iron)などをキュポラなどの炉で溶解し、砂型或いは金型に注入したものである。
鋳鉄(cast iron)は、炭素の状態によって、ねずみ鋳鉄・白鋳鉄・まだら鋳鉄の三つに大別できる。鋳鉄(cast iron)は炭素量が多いと黒鉛(グラファイト)が晶出する。黒鉛は黒色をしており、炭素量の多い鋳鉄(cast iron)はその断面の色からねずみ鋳鉄と呼ばれる。
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材において、鋳鉄(cast iron)を使用する場合、鋳物砂や黒さびを含有しないようにするとよい。
当該黒さびは、鉄にできるさびの一種で、鉄を空気中で焼く又は赤熱した鉄に水蒸気を作用させると、当該鉄の表面に黒色膜が生成されるが、当該黒色膜の成分が黒さびで、その主成分は、四酸化三鉄(Fe4)で、赤さびの三酸化二鉄(Fe3)と対比される。
当該黒さびは、比較的に組成的に安定しており水等に侵され難くなり、上記の発熱・蓄熱作用に好ましくない面があるので、本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材において、当該黒さびを含有しないようにするとよい。
【0014】
本発明では、電磁誘導用発熱・蓄熱材において、発熱材料をカ−ボン(炭素)としたような場合において、カ−ボンよりなる発熱材料は、発熱はしても、蓄熱作用が不充分であったり、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができなかったり、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにする作用が不充分であったりする場合があるが、本発明では、当該カ−ボン(炭素)を使用した場合でも、その発熱作用を向上させ、又、蓄熱作用に優れ、発熱電子の揺動作用により加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力を節約することができ、更には、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができる。
【0015】
本発明の二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなる電磁誘導用発熱・蓄熱材は、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体をフェライトなどの発熱材料に添加することにより、従来のフェライト系やフェライト−鉄系等の発熱材料の発熱作用を向上させ、蓄熱作用を良好にし、加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので電力消費の節約を図ることができ、又、立体容器の内部の発熱材料から発した熱をその容器内において万便なく行き渡るようにすることができるので、本発明が目的としている立方体容器の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材を内蔵させて電磁誘導作用により発熱すると共に蓄熱を起こさせる用途に適している。
当該本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、電磁誘電加熱により短時間に発熱を行うことができ、又、その発熱を持続させて当該電磁誘導用発熱・蓄熱材から発した熱を内部に蓄熱できるので、温度低下を招かずに済み、電力を消費できると共に、発熱電子の揺動作用により加熱装置の電源を適宜OFFにすることができ、更に、立体容器の内部の当該電磁誘導用発熱・蓄熱材の熱が、その容器内において万便なく行き渡るようにすることができるので、電磁誘導の効率を上げ、省電力に繋がらせることができる。
当該本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材を立体容器の内部に内蔵させてなる電磁誘導加熱装置を用いて暖房装置や給湯装置を構成すると、当該電磁誘導加熱装置は短時間に発熱して、短時間で当該暖房装置や給湯装置を加熱できるので、電力消費を節約できる。
又、当該暖房装置や給湯装置から循環してきた水などの非加熱媒体を再び加熱する際に、当該電磁誘導加熱装置内部の本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、その発熱を持続して熱を当該電磁誘導用発熱・蓄熱材内部に蓄熱しているので、温度低下を招かずに済む。
更に、発熱電子の揺動作用により加熱装置の電源を適宜OFFにすることができるので当該暖房装置や給湯装置の電源を何時までも入力ON状態にしておく必要がなくなり、電源の適宜OFFにより、電力を消費でき、電磁誘導の効率を上げ、省電力に寄与することができる。
【0016】
本発明の二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなる電磁誘導用発熱・蓄熱材において、電磁誘導用発熱材料としては、上記のフェライト等の他に、金属元素を含有する鉱物(a−1)よりなる生成された1種又は2種以上の電磁誘導用発熱材料(a1)が使用できる。金属元素を含有する鉱物よりなる生成された電磁誘導用発熱材料(a1)の単独使用でも、2種以上の混合使用でもよい。
当該金属元素を含有する鉱物(a−1)としては、金属鉱物(a−1−1)の他に、広くは、金属元素を含有する鉱物(a−1−2)が挙げられる。
金属鉱物(a−1−1)の例としては、鉄属鉱物と非鉄属金属鉱物が挙げられ、当該鉄属鉱物としては、製鉄や製鋼原料になるもので、鉄鉱石、砂鉄、チタン鉱、硫化鉄鋼、クロム鉱石、マンガン鉱、モリブテン鉱、タングステン鉱が挙げられ、非鉄属金属鉱物としては、銅鉱石、鉛鉱石、亜鉛鉱石、錫鉱石、アンチモン鉱石、ニッケル鉱石、コバルト鉱が挙げられる。
当該鉄属鉱物の鉄鉱石、砂鉄、チタン鉱、硫化鉄鋼、クロム鉱石、マンガン鉱、モリブテン鉱、タングステン鉱等からは、鉄(Fe)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)等が生成される。
又、非鉄属金属鉱物からは、銅(Cu)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、黒鉛(C)等が生成される。
金属元素を含有する鉱物(a−1−2)は、その鉱石中に含有される金属分を利用するもので、ボ−キサイト(Al・nHO)などが挙げられる。
当該ボ−キサイト(Al・nHO)からは、アルミニウム(Al)が生成され、本発明では、当該1種又は2種以上の金属元素を含有する鉱物(a−1)よりなる生成された電磁誘導用発熱材料(a1)として、アルミニウム(Al)を使用することができる。
当該金属元素を含有する鉱物(a−1)としては、金(Au)鉱、銀(Ag)鉱、白金属鉱を含めることができる。
【0017】
本発明で使用される上記の1種又は2種以上の電磁誘導用発熱材料を構成する金属元素としては、磁性金属(Ni、Fe、磁性ステンレス、Co−Ni合金、Fe−Ni合金、Al−Ni−Coを主成分としたアルニコ系の磁性金属材料、ネオジウム(Nd)−鉄(Fe)−ボロン(B)を主成分とした希土類系の磁性金属材料など)でも、フェライト磁性を有するセラミックスであって酸化鉄を主成分とするもの、或いは、非磁性の例えばAl、Ag、Cu、非磁性ステンレスなどでもよい。
磁性とは、強磁性を意味し、非磁性とは、強磁性を含まず、反磁性若しくは常磁性を意味している。
【0018】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材の配合例を示す。
(a)フェライト1〜3%、鋳鉄30〜50%及びシリカ50〜70%
(b)フェライト10〜30%、鋳鉄10〜30%、シリカ40〜60%、アルミニウム5〜10%及び酸化チタン5〜10%
(c)フェライト10〜30%、鋳鉄10〜30%、シリカ40〜60%、アルミニウム5〜10%、酸化チタン5〜10%及びメタルシリコン10〜20%
【0019】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材において、前記のように、二酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)は、発熱・蓄熱作用の向上等の作用に加えて、原材料の混練における粘土的な作用も果たすことができるのであるが、同様に、ケイ素の単体(メタルシリコンなど)も、上記のような作用に加えて、原材料の混練における粘土的な作用も果たすことができる。
当該二酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)やケイ素の単体(メタルシリコンなど)は、フェライト(粉末)や鋳鉄やアルミニウム(粉末)などの原材料の混練において粘土的な作用を果たし、当該原料の結合剤となり得るが、他に、二酸化ケイ素の溶融剤などの無機質結合剤を添加するとよい。
当該二酸化ケイ素の溶融剤の例としては、酸化マグネシウム、酸化カリウム、炭酸リチウム、酸化硼素、酸化ナトリウムなどが挙げられる。当該二酸化ケイ素の溶融剤を添加する場合の電磁誘導用発熱・蓄熱材の配合例を示す。
(d)フェライト10〜30%、鋳鉄10〜30%、シリカ40〜60%、アルミニウム5〜10%、カ−ボン5〜10%、酸化チタン5〜10%及び二酸化ケイ素の溶融剤10〜15%
【0020】
本発明の(c)電磁誘導用発熱・蓄熱材には、他に、石炭、土壌、砂、水、水ガラス(アルカリ−ケイ酸系ガラスの濃厚水溶液)、セラミック、セメントなどの固形材、粘結剤等を添加してもよい。
【0021】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、粉末、粒状又は塊状などの諸形態の原材料を攪拌混練し、成型し、焼結することにより製造することができる。成型加工には、例えば、鋳込み成形法が採用される。
【0022】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、立方体容器の内部に内蔵させて使用して電磁誘導作用により発熱すると共に蓄熱を起こさせることができる。
当該立方体容器としては、金属製筒状体が挙げられ、当該金属製筒状体の中空内部に、例えば、塊状の電磁誘導用発熱・蓄熱材をカラムとして充填すればよい。
当該立方体容器の金属製筒状体の周囲には、誘導コイル(励磁コイル、電線)を巻回してワ−クコイル(ソレノイド体)を形成し、発熱体を構成することができる。
【0023】
当該発熱体を構成する金属製の筒状体は、銅などの反磁性金属若しくはアルミニウムなどの常磁性金属によりなっていてもよいが、非磁性系の金属(合金)であることが、電磁誘導発熱性能を劣化させずに錆を防止し得る等の利点があり、好ましい。尚、ここに、非磁性とは、強磁性を含まず、反磁性若しくは常磁性を意味している。
当該電磁誘導用発熱・蓄熱材は、電磁誘導により、500℃以上、好ましくは600℃〜900℃といった高温域の所望の温度に発熱させることができる電磁誘導型発熱材であって、且つ、熱を備蓄し、水などの非加熱媒体をその発熱・蓄熱により熱効率よく暖房や給湯の加熱媒体として使用することができる発熱・蓄熱材となし得る。
【0024】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材を用いた暖房や給湯の際の加熱媒体の加熱を行う電磁誘導加熱装置の一例を、図面(図1及び図2)に基づいて説明する。
電磁誘導加熱装置Eは、内側の第一発熱体1と、当該第一発熱体1の外側に位置する第二発熱体2と、当該第二発熱体2の外側に設けられた第一流路F1と、当該第一発熱体1と当該第二発熱体2との間に設けられた第二流路F2とを備え、当該第一流路F1に導入された非加熱媒体Wは、当該第二発熱体2及び第一発熱体1に接触せずに当該第一流路F1及び第二流路F2を流れ、当該第二発熱体2に交番電力を印加することにより、当該第二発熱体2が発熱すると共に、当該第一発熱体1との間の電磁誘導作用により、当該第一発熱体1が発熱し、当該第一流路F1に導入された非加熱媒体Wは、当該第一流路F1にて当該第二発熱体2により加熱されると共に、当該第二流路F2にて当該第一発熱体1及び第二発熱体2により加熱されるように構成されている。
当該第一発熱体1における金属筒状体100の内部には上記の本発明の(c)電磁誘導用発熱・蓄熱材101が内蔵されている。
当該第二発熱体2を構成する内体200及び外体201の内部には、励磁コイル202が内蔵され、当該第二発熱体2の励磁コイル202に電線203から交番電力を印加することができるようになっている。
当該第二発熱体2に交番電力を印加すると、当該第二発熱体2が発熱すると共に、当該第一発熱体1との間の電磁誘導作用により、当該第一発熱体1も発熱するので、当該第一流路F1に導入された非加熱媒体Wは、当該第一流路F1にて当該第二発熱体2により加熱されると共に、当該第二流路F2にて当該第一発熱体1及び第二発熱体2の両者により共に加熱されることができるので、極めて高い熱効率で加熱することができ、無駄な熱の散逸が殆どなく、電磁誘導により第一発熱体1及び第二発熱体2の両者から発生した熱を共に無駄にすることなく非加熱媒体Wの加熱に利用でき、高速の非加熱媒体の加熱上昇が行われて短時間に高温になり、又、その細菌やウイルスを死滅させ易く、更には、当該第一流路F1及び第二流路F2を通過した非加熱媒体は、その分子レベルが小さくなり、ナノレベルのものとなる。
第二流路F2が、密閉(被覆)された第一発熱体1と第二発熱体2との間に設けられ、又、第一流路F1が、密閉(被覆)された第二発熱体2の外側に設けられているので、非加熱媒体Wは、当該第一流路F1及び第二流路F2中を第二発熱体2及び第一発熱体1に接触せずに流れ、その為、熱損失が少なく熱効率が高いものとなる。
即ち、第一発熱体1及び第二発熱体2は、金属の筒体等で被覆されており、非加熱媒体W等に曝されるのを防止でき、第二発熱体2中の励磁コイルが破損(腐食し断線する等)したりすることを低減でき、装置の信頼性を増すことができる。
当該第一発熱体1における本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、加熱により500℃以上、好ましくは600℃〜900℃といった高温域の所望の温度に発熱させることができ、発熱と共に、熱を蓄えることができ、又、熱の容器内での伝達が良好なので、非加熱媒体Wが暖房機などとの間で循環使用されても、冷めず極めて高い熱効率で加熱することができる。
当該電磁誘導加熱装置Eは、暖房を必要とする部位又は設備や温水を必要とする部位又は設備と接続して、当該電磁誘導加熱装置Eから供給された加熱媒体により該暖房や給湯を必要とする部位又は設備の暖房や給湯を行うことができ、効率的な暖房を行うことができ、短時間に高温になり、その第一発熱体1に内蔵された本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、発熱と共に、熱を蓄えることができるので、非加熱媒体が暖房機や給湯装置などとの間で循環使用されても、冷めず極めて高い熱効率で加熱することができ、暖房に際して非加熱媒体を不凍液で構成すると、寒冷地での暖房でも、凍結せずに、暖房を良好に行うことができ、給湯を短時間で、しかも、冷めず極めて高い熱効率で加熱することができる。
当該電磁誘導加熱装置Eでは、第一発熱体1の立体容器の内部の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、当該電磁誘導加熱装置Eの電源をOFFにしても当該第一発熱体1の立体容器の内部の電磁誘導用発熱・蓄熱材自身がその相互の発熱電子の揺動作用により揺動され続けて当該第一発熱体1外部への電子錯乱を起こさせ、熱を当該第一発熱体1の立体容器内部に充満させることができうので、電源を何時までも入力ON状態にしておく必要がなくなり、適宜電源を切断OFFにして、電力を節約することができ、電磁誘導の効率を上げ、省電力に繋がる。
【0025】
上記の電磁誘導加熱装置Eでは、その非加熱媒体Wの導入口4から当該第一流路F1に導入された非加熱媒体Wは、図1及び図2に示すように、当該第二発熱体2及び第一発熱体1に接触せずに、当該第一流路F1、次いで、第二流路F2の中を流れる。
当該第一流路F1に導入された非加熱媒体Wは、図1及び図2に示すように、当該第一流路F1を下降し、次いで、第二流路F2を上昇して流れる。
第二発熱体2の内体200の上部で非加熱媒体Wは、合流し、電磁誘導加熱装置Eの非加熱媒体Wの排出口5から排出される。当該排出口5から排出された非加熱媒体Wは、後述のように暖房機などとの間で循環される。
【0026】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
【0028】
次の配合率に従い電磁誘導用発熱蓄熱材を調製した。
フェライト(Fe) 18%
鋳鉄 21%
アルミニウム 6%
シリカ 49%
酸化チタン 6%
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放された内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、温水の給湯装置を構成した。
当該電磁誘導加熱装置Eにより、約1トンの水を約30分で18℃から41℃に加温(周波数60Hz)することができた。
約2時間の循環工程で、電磁誘導加熱装置における第一発熱体は、始動後に、電源をOFFにしておいても温度の低下が殆どなく、給湯装置の消費電力を低くすることができた。
実施例2
【0029】
次の配合率に従い電磁誘導用発熱蓄熱材を調製した。
フェライト(Fe) 18%
鋳鉄 21%
アルミニウム 12%
シリカ 49%
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放された内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、暖房装置を構成した。
約1トンの水を18℃から41℃に加温(周波数60Hz)するのに、約35分を要したが、水の循環工程で始動後に電源をOFFにしておいても、温度低下は殆どなく、実施例1と同様の結果を得た。
実施例3
【0030】
次の配合率に従い電磁誘導用発熱蓄熱材を調製した。
フェライト(Fe) 20%
鋳鉄 20%
シリカ 60%
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放された内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、暖房装置を構成した。
約40分を要したが、水の循環工程で始動後に電源をOFFにしておいても、温度低下は殆どなく、実施例1と同様の結果を得た。
実施例4
【0031】
次の配合率に従い電磁誘導用発熱蓄熱材を調製した。
フェライト(Fe) 3%
鋳鉄 39%
シリカ 58%
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放された内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、給湯装置及び暖房装置を構成した。
実施例3と同様の結果を得た。
実施例5
【0032】
次の配合率に従い電磁誘導用発熱蓄熱材を調製した。
フェライト(Fe) 0.20kg
鋳鉄 2.68kg
シリカ 4.00kg
酸化チタン 0.20kg
メタルシリコン 0.50kg
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放され内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、給湯装置及び暖房装置を構成した。
実施例3と同様の結果を得た。
実施例6
【0033】
次の配合率に従い電磁誘導用発熱蓄熱材を調製した。
フェライト(Fe) 10%
鋳鉄 10%
アルミニウム 5%
カ−ボン 5%
シリカ 50%
酸化チタン 10%
二酸化ケイ素の溶融剤(酸化Na) 10%
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放され内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、給湯装置及び暖房装置を構成した。
実施例3と同様の結果を得た。
比較例1
【0034】
次の配合率に従い原材料を調製した。
フェライト(Fe) 36%
鋳鉄 43%
アルミニウム 12%
上記で調製された原材料を攪拌容器に入れて攪拌混練し、当該混練物を底を有し上部が開放され内部が中空の金属筒状体に充填(鋳込み成形)して成型加工後、温度600℃で焼結し、金属筒状体の内部に電磁誘導用発熱・蓄熱材が充填された発熱体を得た。
図1及び図2に示す電磁誘導加熱装置Eの第一発熱体1の金属筒状体100の内部に当該電磁誘導用発熱・蓄熱材101を内蔵させ、温水の給湯装置を構成した。
当該電磁誘導加熱装置Eにより、約1トンの水を約50分で18℃から41℃に加温(周波数60Hz)することができた。
約2時間の循環工程で、電磁誘導加熱装置における第一発熱体は、始動後に、電源をOFFにしておくと温度の低下が8℃〜10℃あり、給湯装置の消費電力を低くすることができなかった。
【0035】
本発明は上記実施例に限定されず、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材は、各種の用途に使用できる。例えば、調理加熱にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材が使用される実施の一例を示す電磁誘導加熱装置の構成図である。
【図2】本発明の電磁誘導用発熱・蓄熱材が使用される実施の一例を示す電磁誘導加熱装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…第一発熱体
2…第二発熱体
100…発熱・蓄熱材
E…電磁誘導加熱装置
F1…第一流路
F2…第二流路
W…非加熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導により発熱し、蓄熱する電磁誘導用発熱・蓄熱材において、当該電磁誘導用発熱・蓄熱材が、二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体を含有してなることを特徴とする電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項2】
電磁誘導用発熱・蓄熱材における二酸化ケイ素、酸化チタン及び/又はケイ素の単体が、二酸化ケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項3】
電磁誘導用発熱・蓄熱材における二酸化ケイ素が、シリカ又はシリカゲルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項4】
電磁誘導用発熱・蓄熱材におけるケイ素の単体が、メタルシリコンであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項5】
電磁誘導用発熱・蓄熱材が、フェライトを含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項6】
電磁誘導用発熱・蓄熱材が、鋳鉄を含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項7】
電磁誘導用発熱・蓄熱材が、アルミニウムを含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項8】
電磁誘導用発熱・蓄熱材が、カ−ボンを含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項9】
電磁誘導用発熱・蓄熱材が、無機質結合剤を含有してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。
【請求項10】
電磁誘導用発熱・蓄熱材が、立方体容器の内部に内蔵させて使用され電磁誘導作用により発熱すると共に蓄熱を起こさせるようになっていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載の電磁誘導用発熱・蓄熱材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−113914(P2012−113914A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260915(P2010−260915)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(592257538)
【Fターム(参考)】