電磁駆動装置
【課題】駆動用磁石や駆動用コイルを小型化しても動作の直線性がよくかつ強力な駆動力を有する電磁駆動装置を提供する。
【解決手段】可動部材であるレンズホルダー12と、レンズホルダー12を当該レンズホルダー12の軸線方向に移動可能に支持する固定部材であるケース13と、レンズホルダー12の軸線周りに巻き回された駆動用コイル15と、前記軸線に対して放射方向に着磁された駆動用磁石16とを備えるとともに、駆動用磁石16をレンズホルダー12の軸線周りに配置し、駆動用コイル15を駆動用磁石16の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に、駆動用磁石16と同軸に、かつ、駆動用磁石16の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向して配置した。
【解決手段】可動部材であるレンズホルダー12と、レンズホルダー12を当該レンズホルダー12の軸線方向に移動可能に支持する固定部材であるケース13と、レンズホルダー12の軸線周りに巻き回された駆動用コイル15と、前記軸線に対して放射方向に着磁された駆動用磁石16とを備えるとともに、駆動用磁石16をレンズホルダー12の軸線周りに配置し、駆動用コイル15を駆動用磁石16の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に、駆動用磁石16と同軸に、かつ、駆動用磁石16の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向して配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オートフォーカス用レンズ駆動装置やリニアアクチュエータ等に用いられる電磁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に搭載されるカメラは、イメージセンサーの画素数が増大されて撮影画像の高品質化が進んでいる。しかし、従来の固定焦点のカメラモジュールでは焦点ボケが生じて高画素数イメージセンサーの分解能に対応することができないため、可動焦点のカメラモジュールが採用されるようになってきている。この可動焦点のカメラモジュールにおけるレンズの駆動方式としては、図18に示すような、電磁駆動方式のレンズ駆動装置50が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
レンズ駆動装置50は軟鉄等の磁性体から成るヨーク51と、ヨーク51の内壁側に取付けられる駆動用磁石52と、中央位置にレンズ53を保持するレンズホルダー54と、レンズホルダー54に装着される駆動用コイル55と、内周側にヨーク51が装着されるケース56と、レンズホルダー54とケース56とを連結する前側及び後側の板バネ57A,57Bとを備えている。
【0003】
駆動用磁石52としては、レンズホルダー54の軸線に対して放射方向に着磁された円筒状の磁石、あるいは、複数の円弧上の磁石をヨーク51の内壁側に環状に配置したものが用いられる。
ヨーク51は、ケース56の内周側に配置されるアウター部51aと、駆動用コイル55の内周側に挿入されるインナー部51bと、アウター51aとインナー部51bとを連結する連結部51cとを備える。
駆動用コイル55は、ヨーク51のインナー部51bと駆動用磁石52との間に、それぞれ、空隙を隔てて配置される。駆動用コイル55には、駆動用磁石52とヨーク51のインナー部51bとにより放射状の磁界が印加されるので、駆動用コイル55に通電すると、駆動用コイル55には被写体方向へ向けたローレンツ力が発生して、レンズホルダー54を前側及び後側の板バネ57A,57Bの復元力と釣り合った位置に移動させることができる。したがって、駆動用コイル55に通電する電流値を制御することにより、レンズホルダー54の移動量を調整して、レンズ53の位置を所定の位置に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−280031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、携帯電話の小型化や薄型化、多機能化に伴う電子回路部品の占める容積の増大等により、カメラモジュールの占有可能な空間は減少の一途を辿っている。このため、レンズ駆動装置に対しても一層の小型化が求められるが、レンズ53に対しては撮影画像の高画素化に伴う高解像度化が要求されている。そのため、レンズ径やレンズ厚の小型化よりも、レンズ性能の向上が優先されている。こうした背景から、レンズ駆動装置においては、レンズ寸法を維持したまま寸法、特に、幅方向の外形寸法OD(図18参照)を縮小することが必要とされている。
従来のレンズ駆動装置50において外形寸法ODを縮小して小型化を実現するためには、レンズ53と外形寸法ODとの間の空間に配置される構成部品の寸法を縮小する必要がある。そこで、例えば、図19に示すように、駆動用磁石52の寸法を外形寸法ODの縮小に合わせてカットして、外縁が矩形を成すヨーク51のアウター部51aの四隅に配置した構成とするか、もしくは、ヨーク51のインナー部51bを削除して空間を確保する方法などが考えられる。
【0006】
しかしながら、駆動用磁石52をヨーク51のアウター部51aの四隅に配置する構成とした場合には、駆動用磁石52の体積が減少して発生磁力が弱まるとともに、駆動用コイル55との対向面積が減少し駆動用コイル55の利用率が下がるため、駆動力が低下してしまうといった問題点があった。
また、ヨーク51のインナー部51bを削除した構成とした場合には、駆動用磁石52からの磁束を駆動用コイル55と交差する方向に有効に導くことが困難となり、駆動用コイル55に十分な量の磁束を印加できなくなるため駆動力が低下してしまうという問題点がある。更に、磁石の小型化に伴って磁界の均一性が損なわれてしまい、その結果、駆動感度の直線性が悪くなるといった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、駆動用磁石や駆動用コイルを小型化しても動作の直線性がよくかつ強力な駆動力を有する電磁駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に記載の発明は、柱状もしくは筒状の可動部材と、前記可動部材を当該可動部材の軸線方向に移動可能に懸架支持する固定部材と、前記可動部材の軸線周りに巻き回された駆動用コイルと、前記軸線に対して放射方向に着磁された駆動用磁石とを備えた電磁駆動装置であって、前記駆動用磁石は前記可動部材の軸線周りに配置され、前記駆動用コイルは、前記駆動用磁石の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に、前記駆動用磁石と同軸に、かつ、前記駆動用磁石の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向して配置されていることを特徴とする。
ここで、前記可動部材の軸線方向を、図1の矢印で示す+Z方向とすると、駆動用コイルは、駆動用磁石の+Z側及び−Z側のいずれか一方の側または両方の側に配置される。
このように、駆動用磁石と駆動用コイルとを可動部材の軸線方向に沿って配置する構成とすることで、電磁駆動装置の駆動部を小型化しても駆動用磁石の径方向の厚さを確保できるようにしたので、駆動用コイルに均一でかつ強力な磁界を印加することができる。したがって、動作の直線性に優れるとともに強力な駆動力を有する電磁駆動装置を得ることができる。また、巻線の断面形状を径方向に幅広にすることもできるので、駆動電流を少なくできるという利点もある。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電磁駆動装置であって、前記駆動用磁石の内周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方または両方に延長されて前記駆動用コイルの内周側と空隙を隔てて対向して配置される内側磁気ヨークと、前記駆動用磁石の外周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に延長されて前記駆動用コイルの外周側と空隙を隔てて対向して配置される外側磁気ヨークのいずれか一方または両方を備えたことを特徴とする。
このように、駆動用磁石の磁極面と軸線方向に垂直な面とにそれぞれ当接する断面がL字型もしくはコの字型の磁気ヨークを設けたので、駆動用磁石からの磁界を駆動用コイルに効果的に導くことができる。したがって、電磁駆動装置の駆動力と動作の直線性とを更に向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置であって、前記可動部材がバネ部材により前記固定部材に対して移動可能に支持されていることを特徴とする。
これにより、簡単な構成で可動部材を可動部材の軸線方向に移動可能に支持することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置であって、前記可動部材が、軟磁性体より成るリング部材と、補助磁石と、前記可動部材を軸線方向に案内する案内部材とを備えた支持手段より前記固定部材に対して移動可能に支持され、前記リング部材と前記補助磁石のいずれか一方が前記固定部材に取付けられ、他方が前記可動部材に取付けられていることを特徴とする。
これにより、可動部材を可動部材の軸線方向に確実に移動可能に支持することができるので、可動部材を安定して移動させることができる。また、補助磁石の形状や磁化の強さやリング部材の形状等を変更するだけで、可動部材の初期位置を容易に変更できるという利点も有する。
【0011】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレンズ駆動装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施の形態1に係るレンズ駆動装置の駆動部の要部斜視図と要部断面斜視図である。
【図3】実施の形態1に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】実施の形態1に係るレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置における駆動用コイル、駆動用磁石、及び、磁気ヨークの配置と寸法記号とを示す図である。
【図5】実施の形態1に係るレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置における駆動部近傍の磁界の分布を示す断面図である。
【図6】実施の形態1に係るレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置におけるZ軸方向の磁束密度分布を示す図である。
【図7】実施の形態1のレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置の駆動感度を比較した図である。
【図8】本実施の形態1のレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置の変位特性を比較した図である。
【図9】本発明によるレンズ駆動装置の他の例を示す図である。
【図10】本発明によるレンズ駆動装置の駆動部の他の構成を示す図である。
【図11】外形寸法ODを縮小したレンズ駆動装置を示す図である。
【図12】外形寸法ODを縮小した本発明のレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置とを比較した図である。
【図13】外形寸法ODを更に縮小したレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図14】本実施の形態2に係るレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図15】本実施の形態2に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図16】本実施の形態3に係るリニアアクチュエータの構成を示す図である。
【図17】本発明によるリニアアクチュエータの他の例を示す図である。
【図18】従来の電磁駆動方式のレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図19】外形寸法ODを縮小した従来のレンズ駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る電磁駆動装置としてのレンズ駆動装置10の構成を示す図、図2(a),(b)は駆動部10Kの要部斜視図と要部断面斜視図、図3は分解斜視図である。各図において、12は可動部材としてのレンズホルダー、13は固定部材としてのケース、14A,14Bはレンズホルダー12をケース13に懸架支持するためのバネ部材、15は駆動用コイル、16は駆動用磁石、17Aは内側磁気ヨーク、17Bは外側磁気ヨークである。駆動用コイル15と駆動用磁石16と内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとにより、レンズ駆動装置10の駆動部10Kを構成する。
レンズホルダー12は、内側に対物レンズや接眼レンズの組み合わせから成るレンズ11を保持する筒状のホルダー本体12aを有する部材で、ホルダー本体12aの軸線方向は、レンズ11を搭載したときのレンズ11の光軸の方向と一致する。以下、ホルダー本体12aの軸線方向をZ軸方向、図1の矢印で示す、レンズ11を搭載したときの被写体方向をZ軸前方という。
レンズホルダー12のホルダー本体12aのZ軸後方には、ホルダー本体12aの外側に突出する中空円盤状のフランジ部12bが設けられている。また、フランジ部12bの外縁部には、フランジ部12bからZ軸前方に突出するコイル支持部12cが設けられている。
【0015】
ケース13は、図3にも示すように、中心に円形の開口部13hが形成された正方形板状の台座13aと、台座13aの4隅に上側に突出するように設けられた4個の駆動部支持柱13bと、開口部13hの内縁側にレンズホルダー12に向かって突出するように設けられてレンズホルダー12の後端に当接する係止部13cとを備える。駆動部支持柱13bは開口部13h側には、外側磁気ヨーク17B外周側を取付けるための取付用段差部13kが形成されている。
バネ部材14A,14Bは、図3に示すように、それぞれ、円環状の外輪14aと、円環状の内輪14bと、外輪14aと内輪14bとを連結する略円弧状の4本の腕部14cとを備える。以下、Z軸前方に配置されるバネ部材14Aを前側バネ部材、Z軸後方に配置されるバネ部材14Bを後側バネ部材という。前側バネ部材14Aの外輪14aはケース13の駆動部支持柱13bの上端側に固定され、内輪14bはレンズホルダー12のZ軸前方の外縁部に固定される。一方、後側バネ部材14Bの外輪14aはケース13の台座13aの開口部13hと駆動部支持柱13bとの間に固定され、内輪14bはレンズホルダー12のZ軸後方の外縁部に固定される。4本の腕部14cがレンズホルダー12をケース13にZ軸方向に可動自在に懸架支持するバネとして機能する。
本例では、ケース13にレンズホルダー12の後端に当接する係止部13cを設けてバネ部材14A,14Bにオフセットを加えることで、レンズホルダー12を常にZ軸後方に付勢するようにしている。
【0016】
駆動部10Kは、図2(a),(b)に示すように、Z軸周りに巻き回されて環状を成す駆動用コイル15と、駆動用コイル15のZ軸前方に、駆動用コイル15と空隙を隔てて同軸にかつ環状に配置される駆動用磁石16と、駆動用磁石の内周面側と外周面側とにそれぞれ配置される内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを備える。
駆動用コイル15は、レンズホルダー12のコイル支持部12cに装着される。
駆動用磁石16は、図2(b)の太い矢印で示すように、レンズホルダー12のホルダー本体12aの軸線に対して放射方向、すなわち、Z軸を含む平面内においてZ軸と直交する方向に着磁されている。
駆動用磁石16の磁極面は、例えば、内周面側をN極とすると外周面側がS極となるので、本例の駆動用コイル15は、駆動用磁石16のレンズホルダー12の軸線方向の前方に駆動用磁石16と同軸で、かつ、駆動用磁石16の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向していることになる。なお、駆動用磁石16としては、環状の磁石であってもよいし、弧状の磁石を環状に連ねて配置したものであってもよい。
内側磁気ヨーク17Aは軟鉄等の軟磁性材料から成り、駆動用磁石16の内周側磁極面に当接して配置される環状部171と環状部171のZ軸後方からZ軸に直交する方向に駆動用コイル15の巻線部の内周側と空隙を隔てて対向するように突出するフランジ部172とを備える。
外側磁気ヨーク17Bは、駆動用磁石16の外周側磁極面に当接して配置される環状部173と環状部173のZ軸後方からZ軸に直交する方向に駆動用コイル15の巻線部の外周側と空隙を隔てて対向するように突出するフランジ部174とを備える。外側磁気ヨーク17Bも軟鉄等の軟磁性材料から構成される。
【0017】
駆動部10Kでは、駆動用コイル15が内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間に配置されている。駆動用磁石16の内周側の面であるN極からの磁力線は主に内側磁気ヨーク17Aの環状部171からフランジ部172を通って外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174に導かれ、外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174を通って駆動用磁石16の外周側の面であるS極に達するので、駆動用コイル15には、駆動用磁石16の磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差する。したがって、駆動用コイル15に通電すると、駆動用コイル15にはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生する。
内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとがない場合でも、駆動用コイル15には駆動用磁石16の磁化方向とはほぼ反対方向を向く磁束が交差するが、本例では、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとが設けられているので、駆動用コイル15の配置されている内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間の磁束密度を高くかつ均一にすることができる。その結果、駆動用コイル15には、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとがない場合に比較して、強力でかつ均一なローレンツ力が発生するので、強力でかつ直線性に優れた駆動力を得ることができる。したがって、本例のレンズ駆動装置10では、レンズホルダー12を前側及び後側のバネ部材14A,14Bの復元力と釣り合う位置に効率よくかつ高精度に移動させることができる。
【0018】
次に、図1に示したレンズ駆動装置10の性能について、図18に示した従来のレンズ駆動装置50と比較しながら説明する。
図4(a)は、レンズ駆動装置10の駆動部10Kを構成する駆動用コイル15、駆動用磁石16、内側磁気ヨーク17A、及び、外側磁気ヨーク17Bの配置と寸法記号とを示す図で、図4(b)は、従来のレンズ駆動装置50の駆動部50Kを構成する駆動用コイル55、駆動用磁石52、及び、ヨーク51の配置と寸法記号とを示す図である。寸法記号に対応する具体的な寸法数値を以下の表1に示す。
【表1】
図4(a),(b)に示すように、従来のレンズ駆動装置50では、駆動用磁石52の内周側に、駆動用コイル55とヨーク51のインナー部51bとがそれぞれ空隙を隔てて配設されているのに対し、本実施の形態1のレンズ駆動装置10では、駆動用コイル15が駆動用磁石16のZ軸後方に配設されている。したがって、レンズ駆動装置10では、駆動用磁石16を径方向に拡大できるので、駆動用磁石16を径方向に厚い形状、すなわち、外径と内径との差の大きな形状にすることができる。
【0019】
図5(a)は、レンズ駆動装置10における駆動部10K近傍の磁界の分布を示す断面図で、図5(b)は、従来のレンズ駆動装置50における駆動部50K近傍の磁界の分布を示す断面図である。
従来のレンズ駆動装置50では、駆動用コイル55に交差する磁力線が移動範囲前方において放射方向から傾いているのに対し、レンズ駆動装置10では、駆動用コイル15に交差する磁力線がほぼ直線的に放射方向に向けて効率的に印加されていることが分かる。
駆動用コイル15及び駆動用コイル55に通電すると、駆動用コイル15及び駆動用コイル55にはローレンツ力が発生するので、駆動用コイル15及び駆動用コイル55は、それぞれ、図5(a),(b)に示すZ軸の矢印方向(Z軸前方)に移動する。
レンズ駆動装置10では、通電前は、駆動用コイル15のZ軸後側の端部(以下、下端という)の巻線平均径上の点PのZ軸方向の位置が、内側磁気ヨーク17A及び外側磁気ヨーク17Bの下端のZ軸方向の位置と同じ位置にあり、通電によって、駆動用コイル15のZ軸前方側の端部(以下、上端という)が、駆動用磁石16の下端Qに当接する位置まで移動する。
従来のレンズ駆動装置50では、駆動用コイル55の下端の巻線平均径上の点P’のZ軸方向の位置が、駆動用磁石52の下端のZ軸方向の位置と同じ位置にあり、通電によって、駆動用コイル55の上端が連結部51cの下端Q’に当接する位置まで移動する。
図4(a),(b)及び表1に示すように、レンズ駆動装置10の駆動用コイル15の移動可能範囲である点P〜点Q間の距離(Hy−Hm)と駆動用コイル15の巻線高さ(Hcとの差と、従来のレンズ駆動装置50の移動可能範囲である点P’〜点Q’間の距離(駆動用磁石の高さHm)と駆動用コイル55巻線の高さ(Hc)との差はともに0.3mmである。
【0020】
図6は、本実施の形態1のレンズ駆動装置10及び従来のレンズ駆動装置50における駆動用コイル15,55の移動範囲におけるZ軸方向の磁束密度分布を示す図である。同図の横軸は点Pまたは点P’と点Pまたは点P’と計測点との距離[mm]、縦軸は磁束密度[Tesla]である。また、同図の○印はレンズ駆動装置10のデータで、×印は従来のレンズ駆動装置50のデータである。
図6に示すように、従来のレンズ駆動装置50では磁束密度は急激に変化している。また、磁束密度は部分的には本実施の形態1のレンズ駆動装置10よりも大きいものの、点P’(h=0mm)近傍、及び、点Q’(h=1mm)近傍においては、磁束密度の低下が著しいことが分かる。このように、従来のレンズ駆動装置50では、磁束密度が急激に変化している領域に、巻線高さが高くかつ径方向に薄い駆動用コイル55が配置されているので、駆動用コイル55は磁束密度が低い領域にも広く巻線されていることになる。その結果、駆動用コイル55に交差する磁束の総量が低下してしまうことになる。
【0021】
これに対して、本実施の形態1のレンズ駆動装置10では、磁束密度が平坦であり、かつ、点P〜点Q間(h=0〜0.5mm)の全域に亘って高い磁束密度が維持されている。しかも、駆動用コイル15は駆動用磁石16のZ軸後方に配置されているので、駆動用磁石16の寸法に合わせて、巻線の断面形状を径方向に幅広にすることができる。すなわち、駆動用コイル15を、Z軸方向の巻線高さHcが小さな扁平幅広とすることができる。
このように、レンズ駆動装置10では、平坦で高い磁束密度を有する領域に駆動用コイル15を配置できるので、レンズホルダー12がZ軸方向に移動しても駆動用コイル15に交差する磁束の総量(磁力線の数)の変化が小さい。
以上のことは、レンズ駆動装置10が、単位電流当たりの駆動力が大きくてかつ変化しにくい、すなわち、駆動感度が安定した高リニアリティのレンズ駆動装置であることを示唆している。このことを以下に実証する。
図7は、本実施の形態1のレンズ駆動装置10と従来のレンズ駆動装置50の駆動感度を比較した図である。同図の横軸は駆動用コイル15,55の移動距離[mm]、縦軸は駆動感度[mN/mA]で、○印はレンズ駆動装置10のデータで、×印は従来のレンズ駆動装置50のデータである。
同図に示すように、レンズ駆動装置10の駆動感度は従来のレンズ駆動装置50の駆動感度よりも16〜41%も大きく、かつ、ほほ一定レベルで安定していることが分かる。
【0022】
図8は、本実施の形態1のレンズ駆動装置10と従来のレンズ駆動装置50の変位特性を比較した図で、横軸は駆動電流[mA]、縦軸はレンズホルダー12の移動量(変位量)[mm]である。○印はレンズ駆動装置10のデータで、×印は従来のレンズ駆動装置50のデータである。
レンズ駆動装置10では、図1に示すように、レンズホルダー12を、前側バネ部材14Aと後側バネ部材14Bとによりケース13に懸架支持している。このとき、前側及び後側バネ部材14A,14Bは、ケース13側における支点の位置がレンズホルダー12側の支点の位置よりZ軸後方になるように、それぞれ、曲げモーメントが加えられて撓んだ状態となるようにしてケース13とレンズホルダー12とに取付けられている。
従来のレンズ駆動装置50においても、図18に示すように、レンズホルダー54を、前側の板バネ57Aと後側の板バネ57Bとによりケース56に懸架支持するとともに、前側及び後側の板バネ57A,57Bは、ケース56側の支点の位置がレンズホルダー54側の支点の位置よりZ軸後方になるように、それぞれ、曲げモーメントが加えられて撓んだ状態となるようにしてケース56とレンズホルダー54とに取付けられている。
なお、前側及び後側バネ部材14A,14Bのバネ係数と前側及び後側の板バネ57A,57Bのバネ係数とは同じである。また、レンズホルダー12にもレンズホルダー54にも同一のオフセット量0.1mmが付勢されるようにした。
図8から明らかなように、レンズ駆動装置10では、駆動電流が25mAに達したときにレンズホルダー12がZ軸前方に移動を開始するのに対し、従来のレンズ駆動装置50では、駆動電流が29mAに達したときにレンズホルダー54がZ軸前方に移動を開始する。これは、図7に示したように、レンズホルダー12の移動時におけるレンズ駆動装置10の駆動感度が従来のレンズ駆動装置50の駆動感度よりも16%大きいためである。
また、駆動電流を増加させていくと変位量の差が大きくなっていく。これは、以下の表2に示すように、駆動電流に対する変位感度の差がレンズホルダーの前進に伴って拡大していくからである。すなわち、レンズ駆動装置10の駆動感度がほぼ一定で安定しているのに対し、従来のレンズ駆動装置50では駆動感度は最大変位位置において半減するなど、変化が著しいからである。
【表2】
このように、実施の形態1のレンズ駆動装置1の変位特性は、感度が高くかつリニアリティに優れていることが分かる。
【0023】
なお、前記実施の形態1では、駆動用コイル15を駆動用磁石16のZ軸後方に配置したが、図9(a)に示すように、駆動用磁石16のZ軸前方に駆動用コイル15を配置してもよい。このとき、内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174とを、Z軸方向前方、すなわち、駆動用コイル15と空隙を隔てて対向するように突設する構成とするとともに、駆動用コイル15を駆動用磁石16の上端側に当接する位置に配置する。この場合も、実施の形態1と同様に、駆動用コイル15の配置されている、内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間の磁束密度は大きくかつ均一であるので、強力でかつ直線性に優れた駆動力を得ることができる。したがって、レンズホルダー12を前側及び後側のバネ部材14A,14Bの復元力と釣り合う位置に効率よくかつ高精度に移動させることができる。
【0024】
あるいは、図9(b)に示すように、駆動用磁石16のZ軸前方とZ軸後方とに前側及び後側駆動用コイル15A,15Bをそれぞれ配置してもよい。この場合には、内側磁気ヨーク17Aに前,後の2つのフランジ部175,176を設けるとともに、外側磁気ヨーク17Bにも前,後の2つのフランジ部177,178を設けて、前側駆動用コイル15Aが内側磁気ヨーク17Aの前フランジ部175の外周面と外側磁気ヨーク17Bの前フランジ部177の内周面との間に配置され、後側駆動用コイル15Bが内側磁気ヨーク17Aの後フランジ部176の外周面と外側磁気ヨーク17Bの後フランジ部178の内周面との間に配置されるようにすれば、前側及び後側駆動用コイル15A,15Bに駆動用磁石16の磁化方向とは反対方向を向く磁束を効率よく交差させることができる。
このとき、前側駆動用コイル15Aの下端を駆動用磁石16の上端に接する位置に配置するとともに、後側駆動用コイル15Bの下端を内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bの下端の位置に配置し、前側及び後側駆動用コイル15A,15Bに、同図の矢印で示すようなZ軸前方を向いたローレンズ力を発生させるように通電すれば、レンズホルダー12をZ軸前方に効率よく駆動することができる。
【0025】
図9(b)の配置においては、内側磁気ヨーク17Aの前,後のフランジ部175,176の外周面と外側磁気ヨーク17Bの前,後のフランジ部177,178の内周面との間の磁束密度は大きくかつ均一である上、前側駆動用コイル15Aが駆動用磁石16寄りにあるときには後側駆動用コイル15Bが駆動用磁石16から離れており、前側駆動用コイル15Aが駆動用磁石16から離れているときには後側駆動用コイル15Bが駆動用磁石16寄りにあるので、駆動用磁石16との遠近差によるローレンツ力の違いを前側及び後側駆動用コイル15A,15Bで互いに補うことができるので、駆動力の均一性が更に向上する。また、巻数も増加するので、駆動感度の更に高いレンズ駆動装置10を得ることができる。
【0026】
また、前記例では、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを別体で構成したが、図10に示すように、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを連結する連結部17Cを設けて、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bの一部を繋ぎ、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを一体に構成してもよい。
【0027】
また、前記例では、駆動用磁石16を円環状としたが、図11(a)〜(d)に示すように、駆動用磁石16の外周部を矩形状にカットすることで、外形寸法を更に縮小したレンズ駆動装置10Aを得ることができる。(a)図は、駆動用磁石16,内側磁気ヨーク17A,外側磁気ヨーク17Bを示す平面図、(b)図は駆動用磁石16のZ軸後方に駆動用コイル15を配置した例を示す平面図、(c)図は(b)図の対角線方向のカット線A−A’における断面図、(d)図は(b)図の辺方向のカット線B−B’における断面図である。なお、図11(a)〜(d)においては、ケース13と前側及び後側のバネ部材14A,14Bを省略している。
図11(a),(b)に示すように、内側磁気ヨーク17Aは円環状のままであるが、外側磁気ヨーク17Bは、外形寸法の縮小に伴って矩形環状とした。図11(c),(d)に示すように、駆動用コイル15の内周面と外周面とは、それぞれ、内側磁気ヨーク17Aの外周面と外側磁気ヨーク17Bの内周面とに空隙を隔ててZ軸と直交する方向に対向して配置されている。
このような構成を採ることにより、駆動用磁石16を、図19に示した従来のレンズ駆動装置50の外形寸法を縮小したレンズ駆動装置(以下、レンズ駆動装置50Aという)の駆動用磁石52よりも、内径方向に拡大することができるので、駆動用磁石16を駆動用コイル15の全周に亘って配設することが可能となる。したがって、駆動用コイル15の全周に亘って磁束を交差させることが可能になるので、大きな駆動力を得ることができる。
【0028】
図12は、外形寸法ODを縮小したレンズ駆動装置10Aとレンズ駆動装置50Aとを比較した図で、左半分がレンズ駆動装置10Aで右半分が従来のレンズ駆動装置50Aである。本図もケース13、ケース56、前側及び後側のバネ部材14A,14B、及び、前側及び後側の板バネ57A,57Bを省略している。
同図から明らかなように、レンズ駆動装置10Aでは駆動用磁石16の内周側に駆動用コイル15が存在しないために、駆動用磁石16の内周側を拡大して径方向に肉厚にすることができるのに対し、レンズ駆動装置50Aでは、駆動用磁石52の内周側に駆動用コイル55が存在するので、外周側の矩形部の4辺中央部には駆動用磁石52を設ける空間がなくなり、その結果、駆動用磁石52はヨーク51のアウター部51aの四隅にしか配置できなくなることが分かる。
このように、外形寸法ODを縮小したレンズ駆動装置10Aは、駆動用コイル15の全周に亘って駆動用磁石16を配置できるので、駆動用コイル15の全周に磁束を交差させることができる。したがって、駆動用コイル15の使用効率を高めることが可能となり、レンズ駆動装置10の小型化を進めたときにも、高感度で高いリニアリティを維持することが可能となる。
【0029】
図13(a),(b)は、レンズ駆動装置10Aの外形寸法を更に縮小したレンズ駆動装置10Bの構成を示す図で、駆動用磁石16は図示しない矩形のケースの四隅に分割されて配置され、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bも図示しない矩形のケースの四隅に分割されて配置されている。
この場合、前述したレンズ駆動装置10Aに比較して駆動力は低下するが、四隅に分割されて配置されている駆動用磁石16の径方向の厚さは、図19に示したレンズ駆動装置50Aの駆動用磁石52の径方向の厚さよりも厚くすることができるので、駆動用磁石16からの磁界が強くなるだけでなく、駆動用コイル15と対向している駆動用磁石16の長さ(周方向の対向長)を大きくとれるので、駆動用コイル15に交差する磁束量が多くなる。したがって、レンズ駆動装置50Aよりも小型で高感度のレンズ駆動装置10Bを得ることができる。
【0030】
実施の形態2.
図14は本実施の形態2に係る電磁駆動装置としてのレンズ駆動装置20の構成を示す図、図15は分解斜視図である。
レンズ駆動装置20は、レンズホルダー21と、ケース22と、駆動用コイル15と、駆動用磁石16と、内側磁気ヨーク17Aと、外側磁気ヨーク17Bと、ガイドピン23と、スライドガイド24と、円環状の補補助磁石25と、吸引リング26とを備える。駆動用コイル15〜外側磁気ヨーク17Bまでの実施の形態1と同符号の部品とその配置については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
レンズホルダー21は、内側に対物レンズや接眼レンズの組み合わせから成るレンズ11を保持する筒状のホルダー本体21aと、ホルダー本体21aのZ軸方向後方に設けられ、ホルダー本体21aの外側に突出する中空円盤状のフランジ部21bと、このフランジ部21bの外縁部からZ軸前方に突出するように設けられたコイル支持部21cとを備えている。また、ホルダー本体21aの下端には補助磁石25が取り付けられ、コイル支持部21cの側面にはガイド孔24hを備えたスライドガイド24が取付けられている。
一方、ケース22は、中心に円形の開口部22hが形成された正方形板状の台座22aと台座22aの4隅に上側に突出するように設けられた4個の駆動部支持柱22bとを備え、台座22aの外周を形成する辺の中央部からガイドピン23がZ軸前方に突出するように設けられている。また、ガイドピン23は、スライドガイド24のガイド孔24hに挿入されて、レンズホルダー21をZ軸方向に可動自在に支持する。
吸引リング26は軟磁性体から成る円環状の部材で、補助磁石25と吸引リング26との間に作用する吸引力により、レンズホルダー21をZ軸後方に引き戻す力を付勢する。
駆動用コイル15は、実施の形態1と同様に、駆動用磁石16の内周側と外周側とにそれぞれ配置される内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間に配置されているので、駆動用コイル15には、駆動用磁石16の磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差する。したがって、駆動用コイル15に通電すると、駆動用コイル15にはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生するので、レンズホルダー21は、ローレンツ力と、補助磁石25と吸引リング26との間に作用する吸引力とが釣り合う位置まで移動する。
このように、本実施の形態2では、バネ部材14A,14Bに代えて、吸引リング26と補助磁石25とにより、レンズホルダー21をZ軸後方に引き戻す構成とするとともに、レンズホルダー21をガイドピン23に沿って移動させるようにしたので、レンズホルダー21をZ軸方向に確実に移動させることができる。
【0031】
実施の形態3.
図16(a),(b)は、電磁駆動装置としてのリニアアクチュエータ30の構成を示す図で、(a)図はリニアアクチュエータ30の外観を示す斜視図、(b)図は断面図である。
各図において、31は固定部材としてのケース、32は可動部材としての可動シャフト、33A,33Bは駆動用コイル、34は駆動用磁石、35は外側磁気ヨークである。
以下、可動シャフト32の延長方向をZ軸方向とし、図16の上側をZ軸前方、下側をZ軸後方といい、駆動用コイル33Aを前側駆動用コイル、駆動用コイル33Bを後側駆動用コイルという。
ケース31は、円筒状の筒体31aと、筒体31aのZ軸前方とZ軸後方とにそれぞれ取付けられる、中央部に可動シャフト32が挿入される貫通孔を備えた上蓋31bと下蓋31cとを備えたもので、筒体31aの内周側には駆動用磁石34を保持する外側磁気ヨーク35が取付けられている。
可動シャフト32はZ軸方向に延長する円柱状の部材で、外周面のZ軸方向前方と後方とに、当該可動シャフト32と同軸に、駆動用コイル33A,33Bが巻回・保持されている。前側駆動用コイル33Aは駆動用磁石34のZ軸方向前方に位置し、後側駆動用コイル33Bは駆動用磁石34のZ軸方向後方に位置するよう配置される。
外側磁気ヨーク35は、内周面である可動シャフト32の側面に取付け凹部35sが形成された円環状の部材で、取付け凹部35sに、Z軸に直交する方向に着磁された円環状の駆動用磁石34が装着される。また、外側磁気ヨーク35の取付け凹部35sの前,後の部分である、可動シャフト32に突出している部分(以下、案内部という)は、それぞれ、駆動用コイル33A,33Bに空隙を隔てて対向している。
【0032】
これにより、駆動用コイル33A,33Bには、駆動用磁石34の磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差するので、駆動用コイル33A,33Bに通電すると、駆動用コイル33A,33BにはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生する。したがって、可動シャフト32をZ軸方向に高精度に移動させることができる。
このとき、可動シャフト32を軟磁性体で構成すれば、可動シャフト32に実施の形態1の内側磁気ヨーク17Aと同じ機能を持たせることができるので、駆動用コイル33A,33Bに交差する磁束密度を高めることができる。したがって、駆動用コイル33A,33Bに通電することにより、可動シャフト32をZ軸方向に、更に強力に駆動できるとともに、駆動感度のリニアリティについても更に向上させることができる。
【0033】
なお、前記実施の形態3では、駆動用磁石34のZ軸前方とZ軸後方とに駆動用コイル33A,33Bを配置したが、図17に示すように、ケース31に外側磁気ヨーク35と駆動用コイル33とを配置し、可動シャフト32に、可動シャフト32と同軸に、前後の駆動用磁石34A,34Bを保持してもよい。
この場合には、ケース31の内周側に円筒状の外側磁気ヨーク35を配置し、外側磁気ヨーク35の内周面の中央部に駆動用コイル33を配置する。前後の駆動用磁石34A,34Bは、Z軸に直交する方向に着磁された円環状を成し、前側駆動用磁石34Aが駆動用コイル33のZ軸方向前方に位置し、後側駆動用磁石34Bが駆動用コイル33のZ軸方向後方に位置するよう配置すればよい。これにより、駆動用コイル33には、駆動用磁石34A,34Bの磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差するので、駆動用コイル33に通電すると、駆動用コイル33にはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生する。駆動用コイル33は固定部材であるケース31に取付けられているので、可動シャフト32に取付けられている前後の駆動用磁石34A,34Bには、前記ローレンツ力の反力であるZ軸後方またはZ軸前方を向いた力が作用するので、可動シャフト32をZ軸方向に高精度に移動させることができる。
この場合も、可動シャフト32を軟磁性体で構成すれば、可動シャフト32に内側磁気ヨーク17Aと同じ機能を持たせることができるので、可動シャフト32をZ軸方向に更に強力に駆動できるとともに、駆動感度のリニアリティについても更に向上させることができる。
なお、実施の形態3のリニアアクチュエータ30は、移動や振動の駆動源として利用できるだけでなく、スピーカー等の音響発生装置としても利用することができる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、均一で強力な磁界を駆動用コイルに効率よく印加できるので、駆動力とリニアリティに優れた、小型化が可能な電磁駆動装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 レンズ駆動装置、11 レンズ、12 レンズホルダー、
12a ホルダー本体、12b フランジ部、12c コイル支持部、13 ケース、
13a 台座、13b 駆動部支持柱、13c 係止部、13h 開口部、
13k 取付用段差部、14A 前側バネ部材、14B 後側バネ部材、
15 駆動用コイル、16 駆動用磁石、17A 内側磁気ヨーク、
17B 外側磁気ヨーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オートフォーカス用レンズ駆動装置やリニアアクチュエータ等に用いられる電磁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に搭載されるカメラは、イメージセンサーの画素数が増大されて撮影画像の高品質化が進んでいる。しかし、従来の固定焦点のカメラモジュールでは焦点ボケが生じて高画素数イメージセンサーの分解能に対応することができないため、可動焦点のカメラモジュールが採用されるようになってきている。この可動焦点のカメラモジュールにおけるレンズの駆動方式としては、図18に示すような、電磁駆動方式のレンズ駆動装置50が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
レンズ駆動装置50は軟鉄等の磁性体から成るヨーク51と、ヨーク51の内壁側に取付けられる駆動用磁石52と、中央位置にレンズ53を保持するレンズホルダー54と、レンズホルダー54に装着される駆動用コイル55と、内周側にヨーク51が装着されるケース56と、レンズホルダー54とケース56とを連結する前側及び後側の板バネ57A,57Bとを備えている。
【0003】
駆動用磁石52としては、レンズホルダー54の軸線に対して放射方向に着磁された円筒状の磁石、あるいは、複数の円弧上の磁石をヨーク51の内壁側に環状に配置したものが用いられる。
ヨーク51は、ケース56の内周側に配置されるアウター部51aと、駆動用コイル55の内周側に挿入されるインナー部51bと、アウター51aとインナー部51bとを連結する連結部51cとを備える。
駆動用コイル55は、ヨーク51のインナー部51bと駆動用磁石52との間に、それぞれ、空隙を隔てて配置される。駆動用コイル55には、駆動用磁石52とヨーク51のインナー部51bとにより放射状の磁界が印加されるので、駆動用コイル55に通電すると、駆動用コイル55には被写体方向へ向けたローレンツ力が発生して、レンズホルダー54を前側及び後側の板バネ57A,57Bの復元力と釣り合った位置に移動させることができる。したがって、駆動用コイル55に通電する電流値を制御することにより、レンズホルダー54の移動量を調整して、レンズ53の位置を所定の位置に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−280031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、携帯電話の小型化や薄型化、多機能化に伴う電子回路部品の占める容積の増大等により、カメラモジュールの占有可能な空間は減少の一途を辿っている。このため、レンズ駆動装置に対しても一層の小型化が求められるが、レンズ53に対しては撮影画像の高画素化に伴う高解像度化が要求されている。そのため、レンズ径やレンズ厚の小型化よりも、レンズ性能の向上が優先されている。こうした背景から、レンズ駆動装置においては、レンズ寸法を維持したまま寸法、特に、幅方向の外形寸法OD(図18参照)を縮小することが必要とされている。
従来のレンズ駆動装置50において外形寸法ODを縮小して小型化を実現するためには、レンズ53と外形寸法ODとの間の空間に配置される構成部品の寸法を縮小する必要がある。そこで、例えば、図19に示すように、駆動用磁石52の寸法を外形寸法ODの縮小に合わせてカットして、外縁が矩形を成すヨーク51のアウター部51aの四隅に配置した構成とするか、もしくは、ヨーク51のインナー部51bを削除して空間を確保する方法などが考えられる。
【0006】
しかしながら、駆動用磁石52をヨーク51のアウター部51aの四隅に配置する構成とした場合には、駆動用磁石52の体積が減少して発生磁力が弱まるとともに、駆動用コイル55との対向面積が減少し駆動用コイル55の利用率が下がるため、駆動力が低下してしまうといった問題点があった。
また、ヨーク51のインナー部51bを削除した構成とした場合には、駆動用磁石52からの磁束を駆動用コイル55と交差する方向に有効に導くことが困難となり、駆動用コイル55に十分な量の磁束を印加できなくなるため駆動力が低下してしまうという問題点がある。更に、磁石の小型化に伴って磁界の均一性が損なわれてしまい、その結果、駆動感度の直線性が悪くなるといった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、駆動用磁石や駆動用コイルを小型化しても動作の直線性がよくかつ強力な駆動力を有する電磁駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に記載の発明は、柱状もしくは筒状の可動部材と、前記可動部材を当該可動部材の軸線方向に移動可能に懸架支持する固定部材と、前記可動部材の軸線周りに巻き回された駆動用コイルと、前記軸線に対して放射方向に着磁された駆動用磁石とを備えた電磁駆動装置であって、前記駆動用磁石は前記可動部材の軸線周りに配置され、前記駆動用コイルは、前記駆動用磁石の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に、前記駆動用磁石と同軸に、かつ、前記駆動用磁石の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向して配置されていることを特徴とする。
ここで、前記可動部材の軸線方向を、図1の矢印で示す+Z方向とすると、駆動用コイルは、駆動用磁石の+Z側及び−Z側のいずれか一方の側または両方の側に配置される。
このように、駆動用磁石と駆動用コイルとを可動部材の軸線方向に沿って配置する構成とすることで、電磁駆動装置の駆動部を小型化しても駆動用磁石の径方向の厚さを確保できるようにしたので、駆動用コイルに均一でかつ強力な磁界を印加することができる。したがって、動作の直線性に優れるとともに強力な駆動力を有する電磁駆動装置を得ることができる。また、巻線の断面形状を径方向に幅広にすることもできるので、駆動電流を少なくできるという利点もある。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電磁駆動装置であって、前記駆動用磁石の内周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方または両方に延長されて前記駆動用コイルの内周側と空隙を隔てて対向して配置される内側磁気ヨークと、前記駆動用磁石の外周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に延長されて前記駆動用コイルの外周側と空隙を隔てて対向して配置される外側磁気ヨークのいずれか一方または両方を備えたことを特徴とする。
このように、駆動用磁石の磁極面と軸線方向に垂直な面とにそれぞれ当接する断面がL字型もしくはコの字型の磁気ヨークを設けたので、駆動用磁石からの磁界を駆動用コイルに効果的に導くことができる。したがって、電磁駆動装置の駆動力と動作の直線性とを更に向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置であって、前記可動部材がバネ部材により前記固定部材に対して移動可能に支持されていることを特徴とする。
これにより、簡単な構成で可動部材を可動部材の軸線方向に移動可能に支持することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置であって、前記可動部材が、軟磁性体より成るリング部材と、補助磁石と、前記可動部材を軸線方向に案内する案内部材とを備えた支持手段より前記固定部材に対して移動可能に支持され、前記リング部材と前記補助磁石のいずれか一方が前記固定部材に取付けられ、他方が前記可動部材に取付けられていることを特徴とする。
これにより、可動部材を可動部材の軸線方向に確実に移動可能に支持することができるので、可動部材を安定して移動させることができる。また、補助磁石の形状や磁化の強さやリング部材の形状等を変更するだけで、可動部材の初期位置を容易に変更できるという利点も有する。
【0011】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレンズ駆動装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施の形態1に係るレンズ駆動装置の駆動部の要部斜視図と要部断面斜視図である。
【図3】実施の形態1に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】実施の形態1に係るレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置における駆動用コイル、駆動用磁石、及び、磁気ヨークの配置と寸法記号とを示す図である。
【図5】実施の形態1に係るレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置における駆動部近傍の磁界の分布を示す断面図である。
【図6】実施の形態1に係るレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置におけるZ軸方向の磁束密度分布を示す図である。
【図7】実施の形態1のレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置の駆動感度を比較した図である。
【図8】本実施の形態1のレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置の変位特性を比較した図である。
【図9】本発明によるレンズ駆動装置の他の例を示す図である。
【図10】本発明によるレンズ駆動装置の駆動部の他の構成を示す図である。
【図11】外形寸法ODを縮小したレンズ駆動装置を示す図である。
【図12】外形寸法ODを縮小した本発明のレンズ駆動装置と従来のレンズ駆動装置とを比較した図である。
【図13】外形寸法ODを更に縮小したレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図14】本実施の形態2に係るレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図15】本実施の形態2に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図16】本実施の形態3に係るリニアアクチュエータの構成を示す図である。
【図17】本発明によるリニアアクチュエータの他の例を示す図である。
【図18】従来の電磁駆動方式のレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図19】外形寸法ODを縮小した従来のレンズ駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る電磁駆動装置としてのレンズ駆動装置10の構成を示す図、図2(a),(b)は駆動部10Kの要部斜視図と要部断面斜視図、図3は分解斜視図である。各図において、12は可動部材としてのレンズホルダー、13は固定部材としてのケース、14A,14Bはレンズホルダー12をケース13に懸架支持するためのバネ部材、15は駆動用コイル、16は駆動用磁石、17Aは内側磁気ヨーク、17Bは外側磁気ヨークである。駆動用コイル15と駆動用磁石16と内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとにより、レンズ駆動装置10の駆動部10Kを構成する。
レンズホルダー12は、内側に対物レンズや接眼レンズの組み合わせから成るレンズ11を保持する筒状のホルダー本体12aを有する部材で、ホルダー本体12aの軸線方向は、レンズ11を搭載したときのレンズ11の光軸の方向と一致する。以下、ホルダー本体12aの軸線方向をZ軸方向、図1の矢印で示す、レンズ11を搭載したときの被写体方向をZ軸前方という。
レンズホルダー12のホルダー本体12aのZ軸後方には、ホルダー本体12aの外側に突出する中空円盤状のフランジ部12bが設けられている。また、フランジ部12bの外縁部には、フランジ部12bからZ軸前方に突出するコイル支持部12cが設けられている。
【0015】
ケース13は、図3にも示すように、中心に円形の開口部13hが形成された正方形板状の台座13aと、台座13aの4隅に上側に突出するように設けられた4個の駆動部支持柱13bと、開口部13hの内縁側にレンズホルダー12に向かって突出するように設けられてレンズホルダー12の後端に当接する係止部13cとを備える。駆動部支持柱13bは開口部13h側には、外側磁気ヨーク17B外周側を取付けるための取付用段差部13kが形成されている。
バネ部材14A,14Bは、図3に示すように、それぞれ、円環状の外輪14aと、円環状の内輪14bと、外輪14aと内輪14bとを連結する略円弧状の4本の腕部14cとを備える。以下、Z軸前方に配置されるバネ部材14Aを前側バネ部材、Z軸後方に配置されるバネ部材14Bを後側バネ部材という。前側バネ部材14Aの外輪14aはケース13の駆動部支持柱13bの上端側に固定され、内輪14bはレンズホルダー12のZ軸前方の外縁部に固定される。一方、後側バネ部材14Bの外輪14aはケース13の台座13aの開口部13hと駆動部支持柱13bとの間に固定され、内輪14bはレンズホルダー12のZ軸後方の外縁部に固定される。4本の腕部14cがレンズホルダー12をケース13にZ軸方向に可動自在に懸架支持するバネとして機能する。
本例では、ケース13にレンズホルダー12の後端に当接する係止部13cを設けてバネ部材14A,14Bにオフセットを加えることで、レンズホルダー12を常にZ軸後方に付勢するようにしている。
【0016】
駆動部10Kは、図2(a),(b)に示すように、Z軸周りに巻き回されて環状を成す駆動用コイル15と、駆動用コイル15のZ軸前方に、駆動用コイル15と空隙を隔てて同軸にかつ環状に配置される駆動用磁石16と、駆動用磁石の内周面側と外周面側とにそれぞれ配置される内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを備える。
駆動用コイル15は、レンズホルダー12のコイル支持部12cに装着される。
駆動用磁石16は、図2(b)の太い矢印で示すように、レンズホルダー12のホルダー本体12aの軸線に対して放射方向、すなわち、Z軸を含む平面内においてZ軸と直交する方向に着磁されている。
駆動用磁石16の磁極面は、例えば、内周面側をN極とすると外周面側がS極となるので、本例の駆動用コイル15は、駆動用磁石16のレンズホルダー12の軸線方向の前方に駆動用磁石16と同軸で、かつ、駆動用磁石16の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向していることになる。なお、駆動用磁石16としては、環状の磁石であってもよいし、弧状の磁石を環状に連ねて配置したものであってもよい。
内側磁気ヨーク17Aは軟鉄等の軟磁性材料から成り、駆動用磁石16の内周側磁極面に当接して配置される環状部171と環状部171のZ軸後方からZ軸に直交する方向に駆動用コイル15の巻線部の内周側と空隙を隔てて対向するように突出するフランジ部172とを備える。
外側磁気ヨーク17Bは、駆動用磁石16の外周側磁極面に当接して配置される環状部173と環状部173のZ軸後方からZ軸に直交する方向に駆動用コイル15の巻線部の外周側と空隙を隔てて対向するように突出するフランジ部174とを備える。外側磁気ヨーク17Bも軟鉄等の軟磁性材料から構成される。
【0017】
駆動部10Kでは、駆動用コイル15が内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間に配置されている。駆動用磁石16の内周側の面であるN極からの磁力線は主に内側磁気ヨーク17Aの環状部171からフランジ部172を通って外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174に導かれ、外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174を通って駆動用磁石16の外周側の面であるS極に達するので、駆動用コイル15には、駆動用磁石16の磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差する。したがって、駆動用コイル15に通電すると、駆動用コイル15にはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生する。
内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとがない場合でも、駆動用コイル15には駆動用磁石16の磁化方向とはほぼ反対方向を向く磁束が交差するが、本例では、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとが設けられているので、駆動用コイル15の配置されている内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間の磁束密度を高くかつ均一にすることができる。その結果、駆動用コイル15には、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとがない場合に比較して、強力でかつ均一なローレンツ力が発生するので、強力でかつ直線性に優れた駆動力を得ることができる。したがって、本例のレンズ駆動装置10では、レンズホルダー12を前側及び後側のバネ部材14A,14Bの復元力と釣り合う位置に効率よくかつ高精度に移動させることができる。
【0018】
次に、図1に示したレンズ駆動装置10の性能について、図18に示した従来のレンズ駆動装置50と比較しながら説明する。
図4(a)は、レンズ駆動装置10の駆動部10Kを構成する駆動用コイル15、駆動用磁石16、内側磁気ヨーク17A、及び、外側磁気ヨーク17Bの配置と寸法記号とを示す図で、図4(b)は、従来のレンズ駆動装置50の駆動部50Kを構成する駆動用コイル55、駆動用磁石52、及び、ヨーク51の配置と寸法記号とを示す図である。寸法記号に対応する具体的な寸法数値を以下の表1に示す。
【表1】
図4(a),(b)に示すように、従来のレンズ駆動装置50では、駆動用磁石52の内周側に、駆動用コイル55とヨーク51のインナー部51bとがそれぞれ空隙を隔てて配設されているのに対し、本実施の形態1のレンズ駆動装置10では、駆動用コイル15が駆動用磁石16のZ軸後方に配設されている。したがって、レンズ駆動装置10では、駆動用磁石16を径方向に拡大できるので、駆動用磁石16を径方向に厚い形状、すなわち、外径と内径との差の大きな形状にすることができる。
【0019】
図5(a)は、レンズ駆動装置10における駆動部10K近傍の磁界の分布を示す断面図で、図5(b)は、従来のレンズ駆動装置50における駆動部50K近傍の磁界の分布を示す断面図である。
従来のレンズ駆動装置50では、駆動用コイル55に交差する磁力線が移動範囲前方において放射方向から傾いているのに対し、レンズ駆動装置10では、駆動用コイル15に交差する磁力線がほぼ直線的に放射方向に向けて効率的に印加されていることが分かる。
駆動用コイル15及び駆動用コイル55に通電すると、駆動用コイル15及び駆動用コイル55にはローレンツ力が発生するので、駆動用コイル15及び駆動用コイル55は、それぞれ、図5(a),(b)に示すZ軸の矢印方向(Z軸前方)に移動する。
レンズ駆動装置10では、通電前は、駆動用コイル15のZ軸後側の端部(以下、下端という)の巻線平均径上の点PのZ軸方向の位置が、内側磁気ヨーク17A及び外側磁気ヨーク17Bの下端のZ軸方向の位置と同じ位置にあり、通電によって、駆動用コイル15のZ軸前方側の端部(以下、上端という)が、駆動用磁石16の下端Qに当接する位置まで移動する。
従来のレンズ駆動装置50では、駆動用コイル55の下端の巻線平均径上の点P’のZ軸方向の位置が、駆動用磁石52の下端のZ軸方向の位置と同じ位置にあり、通電によって、駆動用コイル55の上端が連結部51cの下端Q’に当接する位置まで移動する。
図4(a),(b)及び表1に示すように、レンズ駆動装置10の駆動用コイル15の移動可能範囲である点P〜点Q間の距離(Hy−Hm)と駆動用コイル15の巻線高さ(Hcとの差と、従来のレンズ駆動装置50の移動可能範囲である点P’〜点Q’間の距離(駆動用磁石の高さHm)と駆動用コイル55巻線の高さ(Hc)との差はともに0.3mmである。
【0020】
図6は、本実施の形態1のレンズ駆動装置10及び従来のレンズ駆動装置50における駆動用コイル15,55の移動範囲におけるZ軸方向の磁束密度分布を示す図である。同図の横軸は点Pまたは点P’と点Pまたは点P’と計測点との距離[mm]、縦軸は磁束密度[Tesla]である。また、同図の○印はレンズ駆動装置10のデータで、×印は従来のレンズ駆動装置50のデータである。
図6に示すように、従来のレンズ駆動装置50では磁束密度は急激に変化している。また、磁束密度は部分的には本実施の形態1のレンズ駆動装置10よりも大きいものの、点P’(h=0mm)近傍、及び、点Q’(h=1mm)近傍においては、磁束密度の低下が著しいことが分かる。このように、従来のレンズ駆動装置50では、磁束密度が急激に変化している領域に、巻線高さが高くかつ径方向に薄い駆動用コイル55が配置されているので、駆動用コイル55は磁束密度が低い領域にも広く巻線されていることになる。その結果、駆動用コイル55に交差する磁束の総量が低下してしまうことになる。
【0021】
これに対して、本実施の形態1のレンズ駆動装置10では、磁束密度が平坦であり、かつ、点P〜点Q間(h=0〜0.5mm)の全域に亘って高い磁束密度が維持されている。しかも、駆動用コイル15は駆動用磁石16のZ軸後方に配置されているので、駆動用磁石16の寸法に合わせて、巻線の断面形状を径方向に幅広にすることができる。すなわち、駆動用コイル15を、Z軸方向の巻線高さHcが小さな扁平幅広とすることができる。
このように、レンズ駆動装置10では、平坦で高い磁束密度を有する領域に駆動用コイル15を配置できるので、レンズホルダー12がZ軸方向に移動しても駆動用コイル15に交差する磁束の総量(磁力線の数)の変化が小さい。
以上のことは、レンズ駆動装置10が、単位電流当たりの駆動力が大きくてかつ変化しにくい、すなわち、駆動感度が安定した高リニアリティのレンズ駆動装置であることを示唆している。このことを以下に実証する。
図7は、本実施の形態1のレンズ駆動装置10と従来のレンズ駆動装置50の駆動感度を比較した図である。同図の横軸は駆動用コイル15,55の移動距離[mm]、縦軸は駆動感度[mN/mA]で、○印はレンズ駆動装置10のデータで、×印は従来のレンズ駆動装置50のデータである。
同図に示すように、レンズ駆動装置10の駆動感度は従来のレンズ駆動装置50の駆動感度よりも16〜41%も大きく、かつ、ほほ一定レベルで安定していることが分かる。
【0022】
図8は、本実施の形態1のレンズ駆動装置10と従来のレンズ駆動装置50の変位特性を比較した図で、横軸は駆動電流[mA]、縦軸はレンズホルダー12の移動量(変位量)[mm]である。○印はレンズ駆動装置10のデータで、×印は従来のレンズ駆動装置50のデータである。
レンズ駆動装置10では、図1に示すように、レンズホルダー12を、前側バネ部材14Aと後側バネ部材14Bとによりケース13に懸架支持している。このとき、前側及び後側バネ部材14A,14Bは、ケース13側における支点の位置がレンズホルダー12側の支点の位置よりZ軸後方になるように、それぞれ、曲げモーメントが加えられて撓んだ状態となるようにしてケース13とレンズホルダー12とに取付けられている。
従来のレンズ駆動装置50においても、図18に示すように、レンズホルダー54を、前側の板バネ57Aと後側の板バネ57Bとによりケース56に懸架支持するとともに、前側及び後側の板バネ57A,57Bは、ケース56側の支点の位置がレンズホルダー54側の支点の位置よりZ軸後方になるように、それぞれ、曲げモーメントが加えられて撓んだ状態となるようにしてケース56とレンズホルダー54とに取付けられている。
なお、前側及び後側バネ部材14A,14Bのバネ係数と前側及び後側の板バネ57A,57Bのバネ係数とは同じである。また、レンズホルダー12にもレンズホルダー54にも同一のオフセット量0.1mmが付勢されるようにした。
図8から明らかなように、レンズ駆動装置10では、駆動電流が25mAに達したときにレンズホルダー12がZ軸前方に移動を開始するのに対し、従来のレンズ駆動装置50では、駆動電流が29mAに達したときにレンズホルダー54がZ軸前方に移動を開始する。これは、図7に示したように、レンズホルダー12の移動時におけるレンズ駆動装置10の駆動感度が従来のレンズ駆動装置50の駆動感度よりも16%大きいためである。
また、駆動電流を増加させていくと変位量の差が大きくなっていく。これは、以下の表2に示すように、駆動電流に対する変位感度の差がレンズホルダーの前進に伴って拡大していくからである。すなわち、レンズ駆動装置10の駆動感度がほぼ一定で安定しているのに対し、従来のレンズ駆動装置50では駆動感度は最大変位位置において半減するなど、変化が著しいからである。
【表2】
このように、実施の形態1のレンズ駆動装置1の変位特性は、感度が高くかつリニアリティに優れていることが分かる。
【0023】
なお、前記実施の形態1では、駆動用コイル15を駆動用磁石16のZ軸後方に配置したが、図9(a)に示すように、駆動用磁石16のZ軸前方に駆動用コイル15を配置してもよい。このとき、内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174とを、Z軸方向前方、すなわち、駆動用コイル15と空隙を隔てて対向するように突設する構成とするとともに、駆動用コイル15を駆動用磁石16の上端側に当接する位置に配置する。この場合も、実施の形態1と同様に、駆動用コイル15の配置されている、内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間の磁束密度は大きくかつ均一であるので、強力でかつ直線性に優れた駆動力を得ることができる。したがって、レンズホルダー12を前側及び後側のバネ部材14A,14Bの復元力と釣り合う位置に効率よくかつ高精度に移動させることができる。
【0024】
あるいは、図9(b)に示すように、駆動用磁石16のZ軸前方とZ軸後方とに前側及び後側駆動用コイル15A,15Bをそれぞれ配置してもよい。この場合には、内側磁気ヨーク17Aに前,後の2つのフランジ部175,176を設けるとともに、外側磁気ヨーク17Bにも前,後の2つのフランジ部177,178を設けて、前側駆動用コイル15Aが内側磁気ヨーク17Aの前フランジ部175の外周面と外側磁気ヨーク17Bの前フランジ部177の内周面との間に配置され、後側駆動用コイル15Bが内側磁気ヨーク17Aの後フランジ部176の外周面と外側磁気ヨーク17Bの後フランジ部178の内周面との間に配置されるようにすれば、前側及び後側駆動用コイル15A,15Bに駆動用磁石16の磁化方向とは反対方向を向く磁束を効率よく交差させることができる。
このとき、前側駆動用コイル15Aの下端を駆動用磁石16の上端に接する位置に配置するとともに、後側駆動用コイル15Bの下端を内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bの下端の位置に配置し、前側及び後側駆動用コイル15A,15Bに、同図の矢印で示すようなZ軸前方を向いたローレンズ力を発生させるように通電すれば、レンズホルダー12をZ軸前方に効率よく駆動することができる。
【0025】
図9(b)の配置においては、内側磁気ヨーク17Aの前,後のフランジ部175,176の外周面と外側磁気ヨーク17Bの前,後のフランジ部177,178の内周面との間の磁束密度は大きくかつ均一である上、前側駆動用コイル15Aが駆動用磁石16寄りにあるときには後側駆動用コイル15Bが駆動用磁石16から離れており、前側駆動用コイル15Aが駆動用磁石16から離れているときには後側駆動用コイル15Bが駆動用磁石16寄りにあるので、駆動用磁石16との遠近差によるローレンツ力の違いを前側及び後側駆動用コイル15A,15Bで互いに補うことができるので、駆動力の均一性が更に向上する。また、巻数も増加するので、駆動感度の更に高いレンズ駆動装置10を得ることができる。
【0026】
また、前記例では、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを別体で構成したが、図10に示すように、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを連結する連結部17Cを設けて、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bの一部を繋ぎ、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bとを一体に構成してもよい。
【0027】
また、前記例では、駆動用磁石16を円環状としたが、図11(a)〜(d)に示すように、駆動用磁石16の外周部を矩形状にカットすることで、外形寸法を更に縮小したレンズ駆動装置10Aを得ることができる。(a)図は、駆動用磁石16,内側磁気ヨーク17A,外側磁気ヨーク17Bを示す平面図、(b)図は駆動用磁石16のZ軸後方に駆動用コイル15を配置した例を示す平面図、(c)図は(b)図の対角線方向のカット線A−A’における断面図、(d)図は(b)図の辺方向のカット線B−B’における断面図である。なお、図11(a)〜(d)においては、ケース13と前側及び後側のバネ部材14A,14Bを省略している。
図11(a),(b)に示すように、内側磁気ヨーク17Aは円環状のままであるが、外側磁気ヨーク17Bは、外形寸法の縮小に伴って矩形環状とした。図11(c),(d)に示すように、駆動用コイル15の内周面と外周面とは、それぞれ、内側磁気ヨーク17Aの外周面と外側磁気ヨーク17Bの内周面とに空隙を隔ててZ軸と直交する方向に対向して配置されている。
このような構成を採ることにより、駆動用磁石16を、図19に示した従来のレンズ駆動装置50の外形寸法を縮小したレンズ駆動装置(以下、レンズ駆動装置50Aという)の駆動用磁石52よりも、内径方向に拡大することができるので、駆動用磁石16を駆動用コイル15の全周に亘って配設することが可能となる。したがって、駆動用コイル15の全周に亘って磁束を交差させることが可能になるので、大きな駆動力を得ることができる。
【0028】
図12は、外形寸法ODを縮小したレンズ駆動装置10Aとレンズ駆動装置50Aとを比較した図で、左半分がレンズ駆動装置10Aで右半分が従来のレンズ駆動装置50Aである。本図もケース13、ケース56、前側及び後側のバネ部材14A,14B、及び、前側及び後側の板バネ57A,57Bを省略している。
同図から明らかなように、レンズ駆動装置10Aでは駆動用磁石16の内周側に駆動用コイル15が存在しないために、駆動用磁石16の内周側を拡大して径方向に肉厚にすることができるのに対し、レンズ駆動装置50Aでは、駆動用磁石52の内周側に駆動用コイル55が存在するので、外周側の矩形部の4辺中央部には駆動用磁石52を設ける空間がなくなり、その結果、駆動用磁石52はヨーク51のアウター部51aの四隅にしか配置できなくなることが分かる。
このように、外形寸法ODを縮小したレンズ駆動装置10Aは、駆動用コイル15の全周に亘って駆動用磁石16を配置できるので、駆動用コイル15の全周に磁束を交差させることができる。したがって、駆動用コイル15の使用効率を高めることが可能となり、レンズ駆動装置10の小型化を進めたときにも、高感度で高いリニアリティを維持することが可能となる。
【0029】
図13(a),(b)は、レンズ駆動装置10Aの外形寸法を更に縮小したレンズ駆動装置10Bの構成を示す図で、駆動用磁石16は図示しない矩形のケースの四隅に分割されて配置され、内側磁気ヨーク17Aと外側磁気ヨーク17Bも図示しない矩形のケースの四隅に分割されて配置されている。
この場合、前述したレンズ駆動装置10Aに比較して駆動力は低下するが、四隅に分割されて配置されている駆動用磁石16の径方向の厚さは、図19に示したレンズ駆動装置50Aの駆動用磁石52の径方向の厚さよりも厚くすることができるので、駆動用磁石16からの磁界が強くなるだけでなく、駆動用コイル15と対向している駆動用磁石16の長さ(周方向の対向長)を大きくとれるので、駆動用コイル15に交差する磁束量が多くなる。したがって、レンズ駆動装置50Aよりも小型で高感度のレンズ駆動装置10Bを得ることができる。
【0030】
実施の形態2.
図14は本実施の形態2に係る電磁駆動装置としてのレンズ駆動装置20の構成を示す図、図15は分解斜視図である。
レンズ駆動装置20は、レンズホルダー21と、ケース22と、駆動用コイル15と、駆動用磁石16と、内側磁気ヨーク17Aと、外側磁気ヨーク17Bと、ガイドピン23と、スライドガイド24と、円環状の補補助磁石25と、吸引リング26とを備える。駆動用コイル15〜外側磁気ヨーク17Bまでの実施の形態1と同符号の部品とその配置については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
レンズホルダー21は、内側に対物レンズや接眼レンズの組み合わせから成るレンズ11を保持する筒状のホルダー本体21aと、ホルダー本体21aのZ軸方向後方に設けられ、ホルダー本体21aの外側に突出する中空円盤状のフランジ部21bと、このフランジ部21bの外縁部からZ軸前方に突出するように設けられたコイル支持部21cとを備えている。また、ホルダー本体21aの下端には補助磁石25が取り付けられ、コイル支持部21cの側面にはガイド孔24hを備えたスライドガイド24が取付けられている。
一方、ケース22は、中心に円形の開口部22hが形成された正方形板状の台座22aと台座22aの4隅に上側に突出するように設けられた4個の駆動部支持柱22bとを備え、台座22aの外周を形成する辺の中央部からガイドピン23がZ軸前方に突出するように設けられている。また、ガイドピン23は、スライドガイド24のガイド孔24hに挿入されて、レンズホルダー21をZ軸方向に可動自在に支持する。
吸引リング26は軟磁性体から成る円環状の部材で、補助磁石25と吸引リング26との間に作用する吸引力により、レンズホルダー21をZ軸後方に引き戻す力を付勢する。
駆動用コイル15は、実施の形態1と同様に、駆動用磁石16の内周側と外周側とにそれぞれ配置される内側磁気ヨーク17Aのフランジ部172の外周面と外側磁気ヨーク17Bのフランジ部174の内周面との間に配置されているので、駆動用コイル15には、駆動用磁石16の磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差する。したがって、駆動用コイル15に通電すると、駆動用コイル15にはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生するので、レンズホルダー21は、ローレンツ力と、補助磁石25と吸引リング26との間に作用する吸引力とが釣り合う位置まで移動する。
このように、本実施の形態2では、バネ部材14A,14Bに代えて、吸引リング26と補助磁石25とにより、レンズホルダー21をZ軸後方に引き戻す構成とするとともに、レンズホルダー21をガイドピン23に沿って移動させるようにしたので、レンズホルダー21をZ軸方向に確実に移動させることができる。
【0031】
実施の形態3.
図16(a),(b)は、電磁駆動装置としてのリニアアクチュエータ30の構成を示す図で、(a)図はリニアアクチュエータ30の外観を示す斜視図、(b)図は断面図である。
各図において、31は固定部材としてのケース、32は可動部材としての可動シャフト、33A,33Bは駆動用コイル、34は駆動用磁石、35は外側磁気ヨークである。
以下、可動シャフト32の延長方向をZ軸方向とし、図16の上側をZ軸前方、下側をZ軸後方といい、駆動用コイル33Aを前側駆動用コイル、駆動用コイル33Bを後側駆動用コイルという。
ケース31は、円筒状の筒体31aと、筒体31aのZ軸前方とZ軸後方とにそれぞれ取付けられる、中央部に可動シャフト32が挿入される貫通孔を備えた上蓋31bと下蓋31cとを備えたもので、筒体31aの内周側には駆動用磁石34を保持する外側磁気ヨーク35が取付けられている。
可動シャフト32はZ軸方向に延長する円柱状の部材で、外周面のZ軸方向前方と後方とに、当該可動シャフト32と同軸に、駆動用コイル33A,33Bが巻回・保持されている。前側駆動用コイル33Aは駆動用磁石34のZ軸方向前方に位置し、後側駆動用コイル33Bは駆動用磁石34のZ軸方向後方に位置するよう配置される。
外側磁気ヨーク35は、内周面である可動シャフト32の側面に取付け凹部35sが形成された円環状の部材で、取付け凹部35sに、Z軸に直交する方向に着磁された円環状の駆動用磁石34が装着される。また、外側磁気ヨーク35の取付け凹部35sの前,後の部分である、可動シャフト32に突出している部分(以下、案内部という)は、それぞれ、駆動用コイル33A,33Bに空隙を隔てて対向している。
【0032】
これにより、駆動用コイル33A,33Bには、駆動用磁石34の磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差するので、駆動用コイル33A,33Bに通電すると、駆動用コイル33A,33BにはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生する。したがって、可動シャフト32をZ軸方向に高精度に移動させることができる。
このとき、可動シャフト32を軟磁性体で構成すれば、可動シャフト32に実施の形態1の内側磁気ヨーク17Aと同じ機能を持たせることができるので、駆動用コイル33A,33Bに交差する磁束密度を高めることができる。したがって、駆動用コイル33A,33Bに通電することにより、可動シャフト32をZ軸方向に、更に強力に駆動できるとともに、駆動感度のリニアリティについても更に向上させることができる。
【0033】
なお、前記実施の形態3では、駆動用磁石34のZ軸前方とZ軸後方とに駆動用コイル33A,33Bを配置したが、図17に示すように、ケース31に外側磁気ヨーク35と駆動用コイル33とを配置し、可動シャフト32に、可動シャフト32と同軸に、前後の駆動用磁石34A,34Bを保持してもよい。
この場合には、ケース31の内周側に円筒状の外側磁気ヨーク35を配置し、外側磁気ヨーク35の内周面の中央部に駆動用コイル33を配置する。前後の駆動用磁石34A,34Bは、Z軸に直交する方向に着磁された円環状を成し、前側駆動用磁石34Aが駆動用コイル33のZ軸方向前方に位置し、後側駆動用磁石34Bが駆動用コイル33のZ軸方向後方に位置するよう配置すればよい。これにより、駆動用コイル33には、駆動用磁石34A,34Bの磁化方向とは反対方向を向く磁束が交差するので、駆動用コイル33に通電すると、駆動用コイル33にはZ軸前方またはZ軸後方を向いたローレンツ力が発生する。駆動用コイル33は固定部材であるケース31に取付けられているので、可動シャフト32に取付けられている前後の駆動用磁石34A,34Bには、前記ローレンツ力の反力であるZ軸後方またはZ軸前方を向いた力が作用するので、可動シャフト32をZ軸方向に高精度に移動させることができる。
この場合も、可動シャフト32を軟磁性体で構成すれば、可動シャフト32に内側磁気ヨーク17Aと同じ機能を持たせることができるので、可動シャフト32をZ軸方向に更に強力に駆動できるとともに、駆動感度のリニアリティについても更に向上させることができる。
なお、実施の形態3のリニアアクチュエータ30は、移動や振動の駆動源として利用できるだけでなく、スピーカー等の音響発生装置としても利用することができる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、均一で強力な磁界を駆動用コイルに効率よく印加できるので、駆動力とリニアリティに優れた、小型化が可能な電磁駆動装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 レンズ駆動装置、11 レンズ、12 レンズホルダー、
12a ホルダー本体、12b フランジ部、12c コイル支持部、13 ケース、
13a 台座、13b 駆動部支持柱、13c 係止部、13h 開口部、
13k 取付用段差部、14A 前側バネ部材、14B 後側バネ部材、
15 駆動用コイル、16 駆動用磁石、17A 内側磁気ヨーク、
17B 外側磁気ヨーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状もしくは筒状の可動部材と、前記可動部材を当該可動部材の軸線方向に移動可能に支持する固定部材と、前記可動部材の軸線周りに巻き回された駆動用コイルと、前記軸線に対して放射方向に着磁された駆動用磁石とを備えた電磁駆動装置であって、
前記駆動用磁石は前記可動部材の軸線周りに配置され、
前記駆動用コイルは、前記駆動用磁石の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に、前記駆動用磁石と同軸に、かつ、前記駆動用磁石の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向して配置されていることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記駆動用磁石の内周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方または両方に延長されて前記駆動用コイルの内周側と空隙を隔てて対向して配置される内側磁気ヨークと、
前記駆動用磁石の外周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に延長し前記駆動用コイルの外周側と空隙を隔てて対向して配置される外側磁気ヨークのいずれか一方または両方を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記可動部材がバネ部材により前記固定部材に対して移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記可動部材が、
軟磁性体より成るリング部材と、補助磁石と、前記可動部材を軸線方向に案内する案内部材とを備えた支持手段により前記固定部材に対して移動可能に支持され、
前記リング部材と前記補助磁石のいずれか一方が前記固定部材に取付けられ、他方が前記可動部材に取付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置。
【請求項1】
柱状もしくは筒状の可動部材と、前記可動部材を当該可動部材の軸線方向に移動可能に支持する固定部材と、前記可動部材の軸線周りに巻き回された駆動用コイルと、前記軸線に対して放射方向に着磁された駆動用磁石とを備えた電磁駆動装置であって、
前記駆動用磁石は前記可動部材の軸線周りに配置され、
前記駆動用コイルは、前記駆動用磁石の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に、前記駆動用磁石と同軸に、かつ、前記駆動用磁石の磁極面とは異なる面と空隙を隔てて対向して配置されていることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記駆動用磁石の内周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方または両方に延長されて前記駆動用コイルの内周側と空隙を隔てて対向して配置される内側磁気ヨークと、
前記駆動用磁石の外周側磁極面から前記可動部材の軸線方向の一方の側及び軸線方向の他方の側のいずれか一方の側または両方の側に延長し前記駆動用コイルの外周側と空隙を隔てて対向して配置される外側磁気ヨークのいずれか一方または両方を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記可動部材がバネ部材により前記固定部材に対して移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記可動部材が、
軟磁性体より成るリング部材と、補助磁石と、前記可動部材を軸線方向に案内する案内部材とを備えた支持手段により前記固定部材に対して移動可能に支持され、
前記リング部材と前記補助磁石のいずれか一方が前記固定部材に取付けられ、他方が前記可動部材に取付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−85331(P2013−85331A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221952(P2011−221952)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(507186609)マイクロウインテック株式会社 (26)
【出願人】(502426061)大立光電股▲ふん▼有限公司 (34)
【出願人】(509035613)
【出願人】(511116177)厦▲門▼新▲鴻▼洲精密科技有限公司 (10)
【氏名又は名称原語表記】XINHONGZHOU PRECISION TECHNOLOGY CO,.LTD
【住所又は居所原語表記】No.11 Xintian Road,Xinchun,Houxi Town,Jimei District,Xiamen,China
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(507186609)マイクロウインテック株式会社 (26)
【出願人】(502426061)大立光電股▲ふん▼有限公司 (34)
【出願人】(509035613)
【出願人】(511116177)厦▲門▼新▲鴻▼洲精密科技有限公司 (10)
【氏名又は名称原語表記】XINHONGZHOU PRECISION TECHNOLOGY CO,.LTD
【住所又は居所原語表記】No.11 Xintian Road,Xinchun,Houxi Town,Jimei District,Xiamen,China
【Fターム(参考)】
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