説明

電線のダブル圧着装置

【課題】直径の異なる一対の電線を圧着する際にも両者を正確に位置決めできるように改良された電線のダブル圧着装置を提供する。
【解決手段】本発明の装置は、一方の電線を挟持する、接離自在に配設された左右一対の第1の電線挟持部材と、互いに接近して他方の電線を挟持する、前記左右一対の第1の電線挟持部材にそれぞれ相対変位自在に取り付けられた左右一対の第2の電線挟持部材と、前記左右一対の第2の電線挟持部材を前記他方の電線を挟持する方向に付勢する付勢手段とを備える。これにより、ダブル圧着する一対の電線間に直径差がある場合でも、一対の電線をそれぞれ正確に位置決めしてダブル圧着の品質精度を大幅に高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線のダブル圧着装置に関し、より詳しくは、一対の電線を交互にかつ迅速に供給できるようにするとともに、直径の異なる一対の電線を圧着する際にも一対の電線を正確に位置決めできるように改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の配線に用いるワイヤハーネスのなかには、図15に示したように一対の電線1,2の末端1a,2a同士を一つの端子3の圧着部3aに一体にダブル圧着したものがある。
【0003】
このようなワイヤハーネスを製造する際には、一方の電線1を供給してその前端1bをストリップし端子4を圧着するとともに、他方の電線2を供給してその前端2bをストリップし端子5を圧着する。
次いで、一対の電線1,2の後端1a,2aをそれぞれストリップした後、後端1a,2a同士を互いに重ね合わせた状態で一つの端子3の圧着部3aに一体にダブル圧着する。
【0004】
このとき従来のダブル圧着装置においては、一対の電線1,2を別個に供給するために図16に示したような電線供給手段を用いている。
すなわち、図16(a)に示したように一対の回転ローラ6a,6bで一方の電線1を挟持し、図示する紙面に対して垂直な方向に電線1を供給する。
次いで、図16(b)に示したように一対の回転ローラ6a,6bを離間させた後、図16(c)に示したように電線切換機構7を図示上方に変位させて、他方の電線2を一対の回転ローラ6a,6b間に位置決めする。
その後、図16(d)に示したように一対の回転ローラ6a,6bによって他方の電線2を挟持し、図示する紙面に対して垂直な方向に電線2を供給する。
【0005】
また、一対の電線1,2をダブル圧着する際には、一対の電線1,2の末端1a,2a同士を重ね合わせつつ上下左右に正確に位置決めする必要がある。
そこで、従来のダブル圧着装置においては、図17(a)に示したように一対の電線保持金具8a,8b間に一対の電線1,2の末端1b,2bを配置した後、図17(b)に示したように一対の電線保持金具8a,8bを接近させて一対の電線1,2の末端1b,2bを挟持するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図16に示した従来の電線供給手段は、上下動する電線切換機構7を用いて供給する電線を切り換える構造であるため、一対の電線1,2を迅速に供給することができず、ダブル圧着するワイヤハーネスの生産効率を向上させることができなかった。
【0007】
また、図17に示した従来の電線保持金具8a,8bを用いて直径の異なる一対の電線を挟持すると、図18に示したように直径が小さい方の電線1にガタつきが生じて正確に位置決めすることができず、一対の電線をダブル圧着する際の品質精度に問題が生じることがあった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、直径の異なる一対の電線を圧着する際にも両者を正確に位置決めできるように改良された電線のダブル圧着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、上記課題を解決する請求項1に記載の手段は、一対の電線の末端同士を一つの端子の圧着部に一体に圧着する電線のダブル圧着装置であって、
互いに接近して一方の電線を挟持する、接離自在に配設された左右一対の第1の電線挟持部材と、
互いに接近して他方の電線を挟持する、前記左右一対の第1の電線挟持部材にそれぞれ相対変位自在に取り付けられた左右一対の第2の電線挟持部材と、
前記左右一対の第2の電線挟持部材を前記他方の電線を挟持する方向に付勢する付勢手段と、を備える。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の電線のダブル圧着装置においては、他方の電線を挟持する第2の挟持部材が第1の挟持部材に対して相対変位することにより、一対の電線間の直径差を吸収することができる。
これにより、ダブル圧着する一対の電線間に直径差がある場合でも、一対の電線をそれぞれ正確に位置決めして、ダブル圧着の品質精度を大幅に高めることができる。
なお、左右一対の第2の電線挟持部材間にリンク機構を介装することにより、左右一対の第2の電線挟持部材の相対変位量を等しくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明の電線のダブル圧着装置は、一方の電線を第1の挟持部材によって挟持しつつ、他方の電線を挟持する第2の挟持部材が第1の挟持部材に対して相対変位することにより、ダブル圧着する一対の電線間の直径差を吸収することができる。
これにより、ダブル圧着する一対の電線間に直径差がある場合でも、一対の電線をそれぞれ正確に位置決めして、ダブル圧着の品質精度を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る一実施形態の電線のダブル圧着装置を示す全体平面図。
【図2】図1中に示した電線供給機構の要部破断平面図。
【図3】図1中に示した電線供給機構の側面図。
【図4】電線供給機構の作動を示す平面図。
【図5】電線供給機構の作動を示す平面図。
【図6】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図7】図1中に示した保持機構の正面断面図。
【図8】図7に示した保持機構の作動を示す正面断面図。
【図9】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図10】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図11】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図12】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図13】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図14】図1中に示した搬送機構の作動を模式的に示す正面図。
【図15】ダブル圧着した電線の平面図。
【図16】従来の電線供給機構の作動を模式的に示す正面図。
【図17】従来の電線保持機構を模式的に示す正面図。
【図18】図17に示した電線保持機構の問題点を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電線のダブル圧着装置の一実施形態を、図1乃至図15を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、同一の部分には同一の符号を用いてその説明を省略するとともに、電線を供給する方向を前後方向と、電線供給方向に対して垂直でかつ水平な方向を左右方向と、鉛直方向を上下方向と言う。
【0014】
まず最初に図1を参照して本実施形態の電線のダブル圧着装置100の全体構造を概説すると、図示されない電線ドラムから引き出された一対の電線1,2は、それぞれ上下方向に間隔を開けて電線供給機構10に導入される。
【0015】
電線供給機構10は、図1乃至図5に示したように電線1,2をそれぞれ一対の回転ローラ組で挟持して供給する形式のもので、電線1,2の軸線に対して左右対称な構造を有している。
【0016】
駆動モータ11によって回転駆動されるプーリ12の回転はベルト13を介してプーリ14に伝達される。
上下方向に延びる支軸C1の回りに回転するプーリ14には、駆動歯車15が同軸一体に回転するように設けられている。
また、駆動歯車15には、支軸C1と平行に延びる支軸C2の回りに回転する従動歯車16が噛み合い、駆動歯車15と反対方向に回転する。
【0017】
支軸C1の回りに揺動するレバー17の揺動端には、上下方向に延びる支軸C3が立設されている。
この支軸C3には、駆動歯車15と噛み合う被駆動歯車18、およびこの被駆動歯車18と同軸一体に回転する回転ローラ19がそれぞれ回転自在に設けられている。
【0018】
支軸C2の回りに揺動するレバー20の揺動端には、上下方向に延びる支軸C4が立設されている。
この支軸C4には、従動歯車16と噛み合う被駆動歯車21、およびこの被駆動歯車21と同軸一体に回転する回転ローラ22がそれぞれ回転自在に設けられている。
【0019】
レバー17の揺動端に揺動自在に軸支されたリンク23の自由端、およびレバー20の揺動端に揺動自在に軸支されたリンク24の自由端は、共にエアシリンダ25のピストン26の先端に揺動自在に軸支されている。
これにより、エアシリンダ25を伸張させてピストン26を図2において図示左方向に往動させると、レバー17およびレバー20の揺動によって一対の回転ローラ19,22を互いに離間させることができる。
【0020】
これに対して、エアシリンダ25を伸縮させてピストン26を図2において図示右方向に復動させると、レバー17およびレバー20の揺動によって一対の回転ローラ19,22が互いに接近し、図4に示したように電線1を挟持することができる。
このとき駆動モータ11を所定の回転数だけ回転させることにより、電線1を所定の長さだけ前方(図2において図示右側)に供給することができる。
【0021】
全く同様に、支軸C1の回りに揺動するレバー27の揺動端には、上下方向に延びる支軸C5が立設されている。
この支軸C5には、駆動歯車15と噛み合う被駆動歯車28、およびこの被駆動歯車28と同軸一体に回転する回転ローラ29がそれぞれ回転自在に設けられている。
【0022】
支軸C2の回りに揺動するレバー30の揺動端には、上下方向に延びる支軸C6が立設されている。
この支軸C6には、従動歯車16と噛み合う被駆動歯車31、およびこの被駆動歯車31と同軸一体に回転する回転ローラ32がそれぞれ回転自在に設けられている。
【0023】
さらに、レバー27の揺動端に揺動自在に軸支されたリンク33の自由端、およびレバー30の揺動端に揺動自在に軸支されたリンク34の自由端は、共にエアシリンダ35のピストン36の先端に揺動自在に軸支されている。
これにより、エアシリンダ35を伸張させてピストン36を図2において図示右方向に往動させると、レバー27およびレバー30の揺動によって一対の回転ローラ29,32を互いに離間させることができる。
【0024】
これに対して、エアシリンダ35を短縮させてピストン36を図2において図示左方向に復動させると、レバー27およびレバー30の揺動によって一対の回転ローラ29,32を互いに接近させ、図5に示したように電線2を挟持することができる。
このとき駆動モータ11を所定の回転数だけ回転させることにより、電線2を所定の長さだけ前方(図2において図示右側)に供給することができる。
【0025】
すなわち、本実施形態の電線供給機構10は、一対の回転ローラ19,22によって電線1を挟持して前方に供給するとともに、一対の回転ローラ29,32によって電線2を挟持して前方に供給する構造である。
これにより、図16に示した従来技術のように、供給する電線1,2を選択するための時間を全く必要としない。
【0026】
また、本実施形態の電線供給機構10は、一対の回転ローラ19,22の接離をエアシリンダ25によって制御するとともに、一対の回転ローラ29,32の接離をエアシリンダ35によって制御する構造である。
これにより、一方の回転ローラを互いに接近させる動作と、他方の回転ローラを互いに離間させる動作とを同時に行うことができる。
【0027】
したがって本実施形態の電線供給機構10によれば、電線1,2を交互に供給する動作を迅速に行うことができるから、電線をダブル圧着する作業の効率を大幅に向上させることができる。
さらに、両方のエアシリンダ25,35を伸張させることにより、各回転ローラ19,22,29,32と各電線1,2との摩擦係合を同時に解除できるから、両方の電線1,2をこの電線供給機構10にセットする作業を容易に行うことができる。
【0028】
次に、ダブル圧着する電線1,2の前端1b,2bに端子4,5をそれぞれ装
着する手順について説明する。
【0029】
上述した電線供給機構10によって供給される電線1,2は、可撓性のガイドチューブ38,39内にそれぞれ挿通されて、その供給が案内されている。
ガイドチューブ38,39は、図1に示した首振り機構40の揺動端に左右方向に位置をずらすとともに上下方向には位置を揃えて配設された保持部41,42にそれぞれ接続されている。
【0030】
首振り機構40は、基端43側の上下方向に延びる揺動軸回りに揺動し、保持部41,42によって保持されている各電線1,2の先端1b,2bをカッタ44、ストリップ手段45,端子圧着機46,47にそれぞれ対向させる。
【0031】
電線1の前端1bに端子4を圧着する際には、カッタ44によって切断されて形成された電線1の前端1bを、ストリップ手段45によってストリップした後、端子圧着機46を用いて端子4を圧着する。
電線2の前端2bに端子5を圧着する際には、カッタ44によって切断されて形成された電線2の前端2bを、ストリップ手段45によってストリップした後、端子圧着機47を用いて端子5を圧着する。
なお、電線1,2の前端1b,2bにそれぞれ圧着する端子4,5が同一である場合には、端子圧着機46を用いる。
【0032】
次に、電線1,2の後端1a,2aに端子3をダブル圧着する機構について説明する。
【0033】
図1に示したように、カッタ44の図示左側には、電線1,2の後端1a,2aをストリップするストリップ手段51と、電線1,2の後端1a,2aを保持する保持手段52と、電線1,2の後端1a,2aに端子3をダブル圧着する端子圧着機53とが互いに所定の間隔を開けて平行に配設されている。
【0034】
また、ストリップ手段51と保持手段52および端子圧着機53の前方には、図1において図示左右方向に往復動して電線1,2の後端1a,2aをストリップ手段51から保持手段52および端子圧着機53に向けて順次搬送するための搬送機構60が設けられている。
【0035】
この搬送機構60は、エアシリンダ61によって駆動されて所定距離だけ左右方向に往復動するベッド62と、このベッド上に配設された第1クランプ63,第2クランプ64および電線1,2の後端1a,2aを重ね合わせた状態で保持する電線保持機構70とを有している。
なお、ベッド62が左右方向に往復動する距離は、ストリップ手段51と保持手段52および端子圧着機53同士の間隔に等しい。
【0036】
第1クランプ63は、開閉動作する一対の開閉腕63a,63bによって電線1の後端1aおよび電線2の後端2aを把持する。
第2クランプ64は、開閉動作する一対の開閉腕64a,64bによって電線1の後端1aおよび電線2の後端2aを把持する。
【0037】
電線保持機構70は、図7に示したように、ベッド62上に固定された昇降シリンダ71によって昇降されるベース72上に図示左右方向に接離自在に配設された左右一対の保持部材73,74を有している。
これらの保持部材73,74は、図示されないエアシリンダにより駆動され、図7に示したように互いに離間して電線1,2の受入および排出が可能な位置と、図8に示したように互いに接近して電線1,2を保持する位置との間で往復動することができる。
【0038】
左右一対の保持部材73,74には、上下一対の傾斜面を組み合わせた係合凹部73a,74aがそれぞれ左右対称に凹設されている。
これにより、左右一対の保持部材73,74が互いに接近すると、電線1を上下左右に正確に位置決めしつつ挟持して保持することができる。
【0039】
左右一対の保持部材73,74には、左右一対のスライド部材75,76がそれぞれ左右方向にスライド自在に配設されている。
しかしながら、左右一対のスライド部材75,76にそれぞれ貫設された左右方向に延びる長孔75a,76aに、左右一対の保持部材73,74にそれぞれ植設されたピン73b,74bがそれぞれ挿通されているので、左右一対のスライド部材75,76がスライドして左右一対の保持部材73,74から脱落することはない。
【0040】
また、左右一対のスライド部材75,76は、ばね定数が等しい左右一対のコイルスプリング77,78によって、それぞれ互いに接近する方向に付勢されている。
さらに、左右一対のスライド部材75,76の先端には、上下一対の傾斜面を組み合わせた係合凹部75a,76aがそれぞれ左右対称に凹設されている。
これにより、左右一対のスライド部材75,76が互いに接近して電線2を挟持する際には、電線1と電線2との直径差にかかわりなく、電線2を上下左右に正確に位置決めしつつ挟持することができる。
【0041】
次に、上述したストリップ手段51、保持手段52、端子圧着機53、搬送機構60および電線保持機構70を用いて、電線1,2の後端1a,2aを端子3にダブル圧着する手順について説明する。
【0042】
電線1の前端1bに端子4を圧着する作業が終了すると、首振り機構40が揺動して電線1の前端1bをカッタ44に対向させる。
次いで、電線供給機構10を用いて電線1を所定の長さだけ前方に供給し、カッタ44を通過させて電線1の前端1b側を傾斜台48上に移載する。
その後、搬送機構60の第1クランプ63によって電線1を保持しつつ、カッタ44を用いて電線1を切断すると、電線1の後端1aが形成される。
この作業が終了した状態は、図6に模式的に示されている。
【0043】
次いで、搬送機構60のベッド62を所定距離だけ図示左方向にスライドさせて、電線1の後端1aをストリップ手段51に対向させ、ストリップ手段51を用いて電線1の後端1aをストリップする。
この作業が終了した状態は、図9に模式的に示されている。
【0044】
ストリップが終了した電線1の後端1aは、ストリップ手段51と搬送機構60との間に配置された持ち替えクランプ54によって保持され続ける。
これにより、第1クランプ63の一対の開閉腕63a,63bを開いて電線1を離した後、搬送機構60のベッド62を所定距離だけ図示右方向にスライドさせる。
【0045】
電線1の後端1aをストリップ手段51を用いてストリップしている間に、電線2の前端2bをストリップし端子5を圧着する作業を行う。
そして、この作業が終了すると、首振り機構40が揺動して電線2の前端2bをカッタ44に対向させる。
次いで、電線供給機構10を用いて電線2を所定の長さだけ前方に供給し、カッタ44を通過させて電線2の前端2b側を傾斜台48上に移載する。
その後、搬送機構60の第1クランプ63によって電線2を保持しつつ、カッタ44を用いて電線2を切断すると、電線2の後端2aが形成される。
同時に、搬送機構60の第2クランプ64により、持ち替えクランプ54によって保持されていた電線1の後端1aを保持する。
この作業が終了した状態は、図10に模式的に示されている。
【0046】
次いで、搬送機構60のベッド63を所定距離だけ図示左側にスライドさせ、第2クランプ64が保持していた電線1を、保持手段52の上側の開閉腕52aに受け渡す。
このとき、第1クランプ63が保持している電線2の後端2aを、ストリップ手段51を用いてストリップする作業を同時に行う。
この作業が終了した状態は、図11に模式的に示されている。
【0047】
次いで、搬送機構60のベッド63を所定距離だけ図示右側にスライドさせ、持ち替えクランプ54によって保持されていた電線2の後端2aを第2クランプ64によって保持する。
同時に、第1クランプ63により、カッタ44によって切断された電線1の後端1aを保持する。
【0048】
次いで、搬送機構60のベッド63を所定距離だけ図示左側にスライドさせ、第2クランプ64が保持していた電線2を、保持手段52の下側の開閉腕52bに受け渡す。
これにより、保持手段52の上側の開閉腕52aが電線1の後端1aを保持するとともに、保持手段52の下側の開閉腕52bが電線2の後端2aを保持する状態となる。
このとき、第1クランプ63が保持している電線1の後端1aを、ストリップ手段52を用いてストリップする作業を同時に行う。
この作業が終了した後に搬送機構60のベッド63をわずかに図示右側にスライドさせた状態が、図12に模式的に示されている。
【0049】
図12に示した状態から、搬送機構60のベッド63を所定位置まで図示右側にスライドさせた状態が図13に模式的に示されている。
このとき、保持手段52の上下の開閉腕52a,52bが保持している電線1,2の後端1a,2aを、電線保持機構70によって保持する。
なお、電線保持機構70を図示右側に変位させる前には、昇降シリンダ71によってベース72を降下させ、保持手段52の上下の開閉腕52a,52bがそれぞれ保持している電線1,2との干渉を防止する。
そして、図示右側に移動して保持手段52と対向する位置に達した後に、昇降シリンダ71によってベース72を上昇させ、保持手段52の上側の開閉腕52aが保持している電線1の後端1aに左右一対の保持部材73,74を対向させるとともに、保持手段52の下側の開閉腕53aが保持している電線2の後端2aに左右一対の保持部材75,76を対向させる。
【0050】
次いで、図14に示したように搬送機構60のベッド63を図示左側にスライドさせると、電線保持機構70が端子圧着機53に対向し、電線1,2の後端1a,2aを端子3に対してダブル圧着することができる。
このとき、前述したように電線保持機構70が電線1,2の後端1a,2aを正確に位置決めしつつ保持しているから、電線1,2の後端1a,2aを端子3にダブル圧着する際の品質精度を高めることができる。
なお、ダブル圧着する作業と同時に、第2クランプ64が保持している電線1を保持手段52の上側開閉腕52aに受け渡す作業、および持ち替えクランプ54によって保持されている電線2を第1クランプ63が保持する作業を行う。
【0051】
すなわち、本実施形態の電線のダブル圧着装置100においては、ダブル圧着する電線1,2を供給する電線供給機構10が、回転ローラ19,22によって電線1を供給するとともに、回転ローラ29,32によって電線2を供給する構造となっている。
これにより、電線1,2を交互に供給する動作を迅速に行うことができるから、電線をダブル圧着する作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態の電線のダブル圧着装置100においては、左右一対の保持部材73,74によって電線1を左右方向に挟持し、かつ左右一対の保持部材73,74に対して左右方向にそれぞれ相対変位可能に配設されるとともに左右一対のコイルスプリング77,78によって電線を挟持する方向にそれぞれ付勢された左右一対のスライド部材75,76によって電線2を左右方向に挟持する構造であるから、電線1と電線2との直径差にかかわりなく、電線1,2を上下左右に正確に位置決めしつつ保持することができる。
これにより、電線1,2を端子3にダブル圧着する作業を高速で行う際にも、電線1,2を確実にダブル圧着することができる。
【0053】
以上、本発明に係る電線のダブル圧着装置の一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば上述した実施形態においては、左右一対のエアシリンダ25,35によって電線1,2を供給する動作を個別に制御しているが、2対の回転ローラ組をリンク機構を用いて接続し、一つのエアシリンダで制御することもできる。
また、エアシリンダに限らず、電動モータ等の電気的に動作する他のアクチュエータを用いることもできる。
さらに、上述した実施形態においては、左右一対のスライド部材75,76を左右一対のコイルスプリング77,78よって個別に付勢しているが、両スライド部材75,76間にリンク機構を介装することにより、左右一対のスライド部材75,76のスライド量が等しくなるように規制することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 電線
2 電線
3 ダブル圧着端子
4,5 端子
6a,6b 回転ローラ
7 電線切換機構
8a,8b 電線保持金具
10 電線供給機構
11 駆動モータ
12 プーリ
13 ベルト
14 プーリ
15 駆動歯車
16 従動歯車
17 レバー
18 被駆動歯車
19 回転ローラ
20 レバー
21 被駆動歯車
22 回転ローラ
23 リンク
24 リンク
25 エアシリンダ
26 ピストン
27 レバー
28 被駆動歯車
29 回転ローラ
30 レバー
31 被駆動歯車
32 回転ローラ
33 リンク
34 リンク
35 エアシリンダ
36 ピストン
38,39 ガイドチューブ
40 首振り機構
41,42 保持部
43 基端
44 カッタ
45 ストリップ手段
46,47 端子圧着機
48 傾斜台
51 ストリップ手段
52 保持手段
52a 上側開閉腕
52b 下側開閉腕
53 端子圧着機
54 持ち替えクランプ
60 搬送機構
61 エアシリンダ
62 ベッド
63 第1クランプ
64 第2クランプ
70 電線保持機構
71 昇降シリンダ
72 ベース
73,74 保持部材
75,76 スライド部材
77,78 コイルスプリング
100 電線のダブル圧着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電線の末端同士を一つの端子の圧着部に一体に圧着する電線のダブル圧着装置であって、
互いに接近して一方の電線を挟持する、接離自在に配設された左右一対の第1の電線挟持部材と、
互いに接近して他方の電線を挟持する、前記左右一対の第1の電線挟持部材にそれぞれ相対変位自在に取り付けられた左右一対の第2の電線挟持部材と、
前記左右一対の第2の電線挟持部材を前記他方の電線を挟持する方向に付勢する付勢手段と、
を備えることを特徴とする電線のダブル圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−114089(P2010−114089A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298404(P2009−298404)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2000−299273(P2000−299273)の分割
【原出願日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【出願人】(000228257)日本オートマチックマシン株式会社 (39)
【Fターム(参考)】