説明

電線接続構造及びジョイントケース

【課題】 一方の電線と他方の電線とを導通接続させる電線接続構造、及び、この電線接続構造に用いられるジョイントケースを提供する。
【解決手段】本発明に係る電線接続構造1は、第1芯線11が第1被覆材12で覆われた第1電線10の端末と、第2芯線21が第2被覆材22で覆われた第2電線20の端末とを接続するものである。この電線接続構造1は、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11と、第2電線20の端末に剥き出しされた第2芯線21とが加圧溶接により接続される溶接部30と、溶接部30を含んだ状態で、第1電線10の端末と第2電線20の端末とを収容するジョイントケース40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続構造及びこの電線接続構造に用いられるジョイントケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一方の電線(第1電線)と他方の電線(第2電線)とを導通接続させる電線接続構造について、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、一方の電線の端末に取り付けられたオス端子が装着されるオスコネクタと、他方の電線の端末に取り付けられたメス端子が装着されるメスコネクタとを嵌合させる電線接続構造(いわゆる、ジョイントコネクタ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電線接続構造では、オス端子とメス端子とが係止構造(いわゆる、バネ接続)によって接続され、一方の電線と他方の電線とを導通接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−346994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の電線接続構造では、各電線の端末に端子が取り付けられる箇所や、オス端子とメス端子とが接続される箇所などの複数の接続箇所が存在し、ジョイントコネクタが複雑な構造とならざるを得なかった。このため、より簡単な構造で一方の電線と他方の電線とを導通接続させる技術が求められているのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、より簡単な構造で、一方の電線と他方の電線とを導通接続させる電線接続構造、及び、この電線接続構造に用いられるジョイントケースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、第1芯線が第1被覆材で覆われた第1電線の端末と、第2芯線が第2被覆材で覆われた第2電線の端末とを接続する電線接続構造であって、前記第1電線の端末に剥き出しされた前記第1芯線と、前記第2電線の端末に剥き出しされた前記第2芯線とが加圧溶接により接続される溶接部と、前記溶接部を含んだ状態で、前記第1電線の端末と前記第2電線の端末とを収容するジョイントケースとを備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記ジョイントケースは、前記溶接部を覆う矩形状のケース本体を有し、前記ケース本体には、前記第1電線の端末と前記第2電線の端末とを収容する電線収容溝部と、前記電線収容溝部の一端に設けられ、前記第1被覆材の端末又は前記第2被覆材の端末が当接して、前記第1電線及び前記第2電線を位置決めする電線位置決め部と、前記第1芯線、前記第2芯線及び前記溶接部を覆う芯線覆い部とが形成されることを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係り、前記ジョイントケースは、前記溶接部を覆う矩形状のケース本体を有し、前記ケース本体は、2つのケース半体と、2つの前記ケース半体の一側同士を連結するとともに、2つの前記ケース半体を開閉自在に支持するヒンジ部と、2つの前記ケース半体を閉じた状態で2つの前記ケース半体を保持するロック部とを備えることを要旨とする。
【0010】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記ジョイントケースは、前記溶接部を覆う矩形状のケース本体を有し、前記ケース本体は、前記第1電線の端末を収容する第1ケースと、前記第2電線の端末を収容する第2ケースとを備え、前記第1ケースは、2つのケース半体によって形成され、前記第1電線の端末を位置決めした状態で収容する第1インナケースと、前記第1インナケースに対してスライド自在な状態で前記第1インナケースを覆うとともに、前記第1芯線及び前記溶接部を覆う第1アウタケースとを備え、前記第2ケースは、2つのケース半体によって形成され、前記第2電線の端末を位置決めした状態で収容する第2インナケースと、前記第2インナケースに対してスライド自在な状態で前記第2インナケースを覆うとともに、少なくとも前記第2芯線を覆って前記第1アウタケースと嵌合する第2アウタケースとを備えることを要旨とする。
【0011】
本発明の第5の特徴は、第1乃至第4の特徴に係る電線接続構造に用いられることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、ジョイントケースは、溶接部を含んだ状態で、第1電線の端末と第2電線の端末とを収容する。これにより、第1電線の端末に剥き出しされた第1芯線や、第2電線の端末に剥き出しされた第2芯線を絶縁保護することができる。加えて、端子を用いることなく、溶接部によって第1電線と第2電線とを接続できる。つまり、各電線の端末に端子が取り付けられる箇所や、オス端子とメス端子との係止構造などが不要となり、第1電線と第2電線との接続箇所が溶接部のみの1箇所となる。従って、より簡単な構造で第1電線と第2電線とを導通接続させることができる。
【0013】
また、ジョイントケースが容易な構造となることに伴い、例えば車両に搭載する上で、省スペース化をも実現することができる。加えて、従来のジョイントコネクタと比較して、部品点数を削減することができ、製造コストの低減にも寄与する。
【0014】
本発明の第2の特徴によれば、ケース本体には、電線収容溝部と、電線位置決め部と、芯線覆い部とが形成される。これにより、第1電線及び第2電線の位置決めが容易となり、作業者が一目で正確に電線をセットすることができる。このため、ケース本体に第1電線及び第2電線を組み付ける作業が容易となる。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば、ケース本体は、2つのケース半体と、ヒンジ部と、ロック部とを備える。さらに簡単な構造で2つのケース半体を閉じた状態で保持でき、第1電線の端末に剥き出しされた第1芯線や、第2電線の端末に剥き出しされた第2芯線を確実に絶縁保護することができる。
【0016】
本発明の第4の特徴によれば、第1ケースは、第1インナケースと、第1アウタケースとを備え、第2ケースは、第2インナケースと、第2アウタケースとを備える。これにより、第1インナケースに対して第1アウタケースをスライドさせ、第2インナケースに対して第2アウタケースをスライドさせるのみで、作業者が容易に電線をセットすることができるとともに、第1アウタケース及び第2アウタケースで第1芯線、第2芯線及び溶接部を絶縁保護することができる。加えて、溶接部を形成する前の電線接続構造の郵送時等において、第1アウタケースで第1芯線を保護しつつ、第2アウタケースで第2芯線を保護することが可能となる。従って、第1芯線及び第2芯線が損傷し難くなり、第1電線と第2電線との接続信頼性をも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)は、第1実施形態に係る電線接続構造1のジョイントケース40開状態示す斜視図であり、図1(b)は、第1実施形態に係る電線接続構造1のジョイントケース40の閉状態示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1(b)のA−A断面図(又は図1(b)のA’−A’断面図)であり、図2(b)は、図1(b)のB−B断面図である。
【図3】図3(a)は、第1実施形態に係るジョイントケース40の開状態を示す斜視図であり、図3(b)は、第1実施形態に係るジョイントケース40の一部拡大斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係るジョイントケース40の開状態を示す平面図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る電線接続構造2を示す斜視図(開状態)である。
【図6】図6は、第2実施形態に係る電線接続構造2を示す斜視図(閉状態)である。
【図7】図7(a)は、第2実施形態に係る第1電線10(又は第2電線20)を示す図であり、図7(b)は、第2実施形態に係る第1インナケース110(又は第2インナケース210)を示す平面図であり、図7(c)は、第1電線10が一方の第1インナケース110(又は第2電線20が第2インナケース210)に装着された際の平面図である。
【図8】図8(a)は、第1電線10が第1インナケース110(又は第2電線20が第2インナケース210)に完全に装着された際の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のC−C断面図である。
【図9】図9(a)は、第2実施形態に係る第1アウタケース120(又は嵌合フード部230を除く第2アウタケース220)を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のD−D断面図であり、図9(c)は、一方の第1アウタケース120(又は一方の第2アウタケース220)を示す平面図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係るケース本体400Aの嵌合を説明するための平面図である。
【図11】図11(a)は、第2実施形態に係るケース本体400Aの嵌合状態を示す平面図であり、図11(b)は、図11(a)のE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る電線接続構造及びこの電線接続構造に用いられるジョイントケースの実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)その他の実施形態について説明する。
【0019】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0020】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0021】
(1)第1実施形態
(1.1)電線接続構造の概略構成
まず、第1実施形態に係る電線接続構造1の概略構成について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は、第1実施形態に係る電線接続構造1のジョイントケース40開状態示す斜視図であり、図1(b)は、第1実施形態に係る電線接続構造1のジョイントケース40の閉状態示す斜視図である。図2(a)は、図1(b)のA−A断面図(又は図1(b)のA’−A’断面図)であり、図2(b)は、図1(b)のB−B断面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、電線接続構造1は、第1芯線11が第1被覆材12で覆われた第1電線10の端末と、第2芯線21が第2被覆材22で覆われた第2電線20の端末とを接続するものである。
【0023】
電線接続構造1は、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11と、第2電線20の端末に剥き出しされた第2芯線21とが加圧溶接により接続される溶接部30と、溶接部30を含んだ状態で、第1電線10の端末と第2電線20の端末とを収容するジョイントケース40とを備えている。
【0024】
ここで、加圧溶接(圧接)とは、結合面(接合面)を溶融させずに結合部(溶接継手)に機械的圧力や熱を加えることで溶接する溶接法の総称を示す。例えば、加圧溶接には、摩擦圧接、鍛接、拡散接合、熱間圧接、冷間圧接、爆発圧接、ガス圧接などの圧接方法が挙げられる。
【0025】
第1実施形態では、第1芯線11の端部と第2芯線21の端部とを加圧変形させることにより相互間で原子結合を起こす冷間圧接であるものとする。すなわち、第1実施形態では、第1芯線11及び第2芯線21は、冷間圧接が可能な材料(例えば、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛、銀、金、ニッケル、真鍮、マグネシウム、鉛)によって形成される。
【0026】
(1.2)ジョイントケースの構成
次に、上述したジョイントケース40の構成について、図面を参照しながら説明する。図3(a)は、第1実施形態に係るジョイントケース40の開状態を示す斜視図であり、図3(b)は、第1実施形態に係るジョイントケース40の一部拡大斜視図である。図4は、第1実施形態に係るジョイントケース40の開状態を示す平面図である。
【0027】
図3及び図4に示すように、ジョイントケース40は、矩形状のケース本体400を有している。ケース本体400は、2つのケース半体410,420と、ヒンジ部430と、ロック部440とを備えている。
【0028】
(1.2.1)ケース半体
図3及び図4に示すように、2つのケース半体410,420のそれぞれには、電線収容溝部411,421と、電線位置決め部412,422と、芯線覆い部413,423とが形成されている。
【0029】
電線収容溝部411,421は、第1被覆材12を含めた第1電線10の端末と、第2被覆材22を含めた第2電線20の端末とを収容する。電線収容溝部411,421は、ケース半体410,420の長手方向LD(すなわち、第1電線10及び第2電線20の延在方向)に沿って形成されるとともに、断面略半円状に形成されている。電線収容溝部411,421の一端は、ケース半体410,420の短手方向SDに沿った側面410A,420Aに開口する。また、電線収容溝部411,421の他端は、電線位置決め部412,422となっているとともに、芯線覆い部413,423に連なっている。
【0030】
電線位置決め部412,422は、第1被覆材12の端末又は第2被覆材22の端末が当接して、第1電線10及び第2電線20を位置決めする。電線位置決め部412,422は、第1被覆材12の端末が当接する第1壁面412A,422Aと、第2被覆材22の端末が当接する第2壁面412B,422Bとによって構成される(図4参照)。第1壁面412A,422A及び第2壁面412B,422Bには、芯線覆い部413,423が開口されている。
【0031】
芯線覆い部413,423は、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11と、第2電線20の端末に剥き出しされた第2芯線21と、第1芯線11及び、第2電線20が接続される溶接部30とを覆う。芯線覆い部413,423は、ケース半体410,420の長手方向LDに沿って形成されるとともに、断面略半円状に形成されている。
【0032】
(1.2.2)ヒンジ部
図3及び図4に示すように、ヒンジ部430は、2つのケース半体410,420の長手方向LDに沿う一面410B,420B側同士を連結している。また、ヒンジ部430は、2つのケース半体410,420を開閉自在に支持している。ヒンジ部430は、ロック部440と対向するように設けられている。
【0033】
(1.2.3)ロック部
図3及び図4に示すように、ロック部440は、2つのケース半体410,420を閉じた状態で2つのケース半体410,420を保持する。ロック部440は、ヒンジ部430が設けられる一面410B,420Bと対向する他面410C,420Cに設けられている。ロック部440は、ケース半体410に設けられる係止枠441と、ケース半体420に設けられる係止突起442とによって構成される。
【0034】
係止枠441には、係止突起442が係止される係止孔441A(図3(a)参照)が形成されている。2つのケース半体410,420が閉じると、係止孔441Aに係止突起442が係止されることによって、ロック部440は、2つのケース半体410,420を閉じた状態で保持できる。
【0035】
(1.3)作用・効果
以上説明した第1実施形態では、ジョイントケース40は、溶接部30を含んだ状態で、第1電線10の端末と第2電線20の端末とを収容する。これにより、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11や、第2電線20の端末に剥き出しされた第2芯線21を絶縁保護することができる。加えて、端子を用いることなく、溶接部30によって第1電線10と第2電線20とを接続できる。つまり、各電線の端末に端子が取り付けられる箇所や、オス端子とメス端子との係止構造などが不要となり、第1電線10と第2電線20との接続箇所が溶接部30のみの1箇所となる。従って、より簡単な構造で第1電線10と第2電線20とを導通接続させることができる。
【0036】
また、ジョイントケース40が容易な構造となることに伴い、例えば車両に搭載する上で、省スペース化をも実現することができる。加えて、従来のジョイントコネクタと比較して、部品点数を削減することができ、製造コストの低減にも寄与する。
【0037】
第1実施形態では、ケース本体400には、電線収容溝部411,421と、電線位置決め部412,422と、芯線覆い部413,423とが形成される。これにより、第1電線10及び第2電線20の位置決めが容易となり、作業者が一目で正確に電線をセットすることができる。このため、ケース本体400に第1電線10及び第2電線20を組み付ける作業が容易となる。
【0038】
第1実施形態では、ケース本体400は、2つのケース半体410,420と、ヒンジ部430と、ロック部440とを備える。これにより、さらに簡単な構造で2つのケース半体410,420を閉じた状態で保持でき、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11や、第2電線20の端末に剥き出しされた第2芯線21を確実に絶縁保護することができる。
【0039】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る電線接続構造2について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る電線接続構造1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0040】
図5は、第2実施形態に係る電線接続構造2を示す斜視図(開状態)である。図6は、第2実施形態に係る電線接続構造2を示す斜視図(閉状態)である。
【0041】
図7(a)は、第2実施形態に係る第1電線10(又は第2電線20)を示す図であり、図7(b)は、第2実施形態に係る第1インナケース110(又は第2インナケース210)を示す平面図であり、図7(c)は、第1電線10が一方の第1インナケース110(又は第2電線20が第2インナケース210)に装着された際の平面図である。図8(a)は、第1電線10が第1インナケース110(又は第2電線20が第2インナケース210)に完全に装着された際の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のC−C断面図である。
【0042】
図9(a)は、第2実施形態に係る第1アウタケース120(又は嵌合フード部230を除く第2アウタケース220)を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のD−D断面図であり、図9(c)は、一方の第1アウタケース120(又は一方の第2アウタケース220)を示す平面図である。
【0043】
上述した第1実施形態では、ケース本体400は、2つのケース半体410,420を備えている。これに対して、第2実施形態では、ケース本体400Aは、第1電線10及び第2電線20のそれぞれの専用のものケースを備えている。
【0044】
具体的には、図5及び図6に示すように、ケース本体400Aは、第1電線10の端末を収容する第1ケース100と、第2電線20の端末を収容する第2ケース200とを備えている。
【0045】
(2.1)第1ケース
図6に示すように、第1ケース100は、第1電線10の端末を位置決めした状態で収容する第1インナケース110と、第1インナケース110に対してスライド自在な状態で第1インナケース110を覆う第1アウタケース120とを備えている。
【0046】
(2.1.1)第1インナケース
図7及び図8に示すように、第1ケース100は、2つのケース半体110A,110Bによって形成されている。このケース半体110A,110Bのそれぞれには、電線収容溝部111と、電線位置決め部112と、芯線覆い部113とが形成されている。
【0047】
電線収容溝部111は、第1被覆材12を含めた第1電線10の端末を収容する。電線収容溝部111は、ケース半体110A,110Bの長手方向LDに沿って形成されるとともに、断面略半円状に形成されている。電線収容溝部111の一端は、ケース半体410,420の短手方向SDに沿った側面410A,420Aに開口し、電線収容溝部111の他端は、電線位置決め部112となっているとともに、芯線覆い部113に連なっている。
【0048】
このような電線収容溝部111には、第1電線10の第1被覆材12の中心に向かって凹んだ固定溝D(図7(a)参照)が係止される被覆材固定部111Aが形成されている。この被覆材固定部111Aは、ケース半体410,420の短手方向SDに沿った側面a寄りに設けられている。なお、被覆材固定部111Aは、必ずしも側面410A,420A寄りに設けられる必要はなく、電線収容溝部111の途中に設けられていてもよい。
【0049】
電線位置決め部112は、第1被覆材12の端末が当接して、第1電線10を位置決めする壁面によって構成され、この壁面には、芯線覆い部113が開口されている。
【0050】
芯線覆い部113は、断面略半円状に形成されており、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11のみを覆っている。すなわち、芯線覆い部113は、溶接部30を覆っていない。
【0051】
このようなケース半体110A,110B同士の当接面bには、係止孔114及び係止爪115が形成されている。このケース半体110A,110Bの一方に形成される係止孔114に、ケース半体110A,110Bの他方に形成される係止爪115が係止されることによって、2つのケース半体410,420が閉じた状態で保持される。
【0052】
また、ケース半体110A,110Bの側面cには、外方に向けて突出するスライドレール116が形成されている(図6及び図9(b)参照)。さらに、ケース半体110A,110Bの上面d及び下面eには、外方に向けて突出するスライド位置決め突起117が形成されている(図8参照)。
【0053】
(2.1.2)第1アウタケース
図9に示すように、第1アウタケース120は、上述したように、第1インナケース110に対してスライド自在な状態で第1インナケース110を覆うとともに、第1芯線11及び溶接部30を覆っている。第1アウタケース120は、2つのケース半部材120A,120Bによって形成されている。このケース半部材120A,120Bのそれぞれには、第1インナケース110がスライド自在に収容されるスライド空間S(図5及び図9(c)参照)が形成されている。
【0054】
また、ケース半部材120A,120Bのそれぞれには、上述した第1インナケース110に設けられるスライドレール116を案内するスライド溝121と、スライド位置決め突起117を案内する突起スライド溝122が形成されている。
【0055】
このようなケース半部材120A,120B同士の当接面fには、係止孔123及び係止爪124が形成されている。このケース半部材120A,120Bの一方に形成される係止孔123に、ケース半部材120A,120Bの他方に形成される係止爪124が係止されること。これにより、2つのケース半部材120A,120Bが閉じた状態で、かつケース半部材120A,120Bが第1インナケース110を収容した状態で保持できる。
【0056】
また、図5及び図9(a)に示すように、ケース半部材120A,120Bの上面g及び下面hには、可撓性を有する可撓片125が形成されている。この可撓片125には、スライド位置決め突起117が係止される突起係止孔126が形成されている。さらに、ケース半部材120A,120Bの上面g及び下面hには、外方に向かって突出する固定突起127が形成されている。
【0057】
(2.2)第2ケース
図5に示すように、第2ケース200は、第2電線20の端末を位置決めした状態で収容する第2インナケース210と、第2インナケース210に対してスライド自在な状態で第2インナケース210を覆うとともに、少なくとも第2芯線21を覆って第1アウタケース120と嵌合する第2アウタケース220とを備えている。
【0058】
(2.2.1)第2インナケース
図7及び図8に示すように、第2インナケース210は、2つのケース半体210A,210Bによって形成されている。このケース半体210A,210Bのそれぞれは、上述した第1インナケース110と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0059】
(2.2.2)第2アウタケース
図9に示すように、第2アウタケース220は、上述したように、第2インナケース210に対してスライド自在な状態で第2インナケース210を覆うとともに、第2芯線21及び溶接部30を覆っている。また、第2アウタケース220は、2つのケース半部材220A,220Bによって形成されている。
【0060】
なお、2つのケース半部材220A,220Bの構成については、上述した第1アウタケース120と同様であるため、異なる部分のみ説明する。すなわち、図5及び図6に示すように、第2アウタケース220は、第1アウタケース120の一部を収容するとともに、第1アウタケース120に嵌合される嵌合フード部230をさらに備えている。
【0061】
この嵌合フード部230は、第2アウタケース220の外周から張り出して形成されている。この嵌合フード部230の上面及び下面には、可撓性を有する可撓片231が形成されている。この可撓片231には、固定突起127が係止される突起係止孔132が形成されている。
【0062】
(2.3)ケース本体の嵌合
次に、上述したケース本体400Aの嵌合について、図面を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態に係るケース本体400Aの嵌合を説明するための平面図である。図11(a)は、第2実施形態に係るケース本体400Aの嵌合状態を示す平面図であり、図11(b)は、図11(a)のE−E断面図である。
【0063】
図10(a)に示すように、第1電線10の端末を収容した第1インナケース110に対して、第1アウタケース120を第1電線10側にスライドさせる。同様に、第2電線20の端末を収容した第2インナケース210に対して、第2アウタケース220を第2電線20側にスライドさせる。
【0064】
次いで、図10(b)に示すように、第1電線10の端末に剥き出しされた第1芯線11と、第2電線20の端末に剥き出しされた第2芯線21とを当接する。そして、図10(c)に示すように、第1芯線11と第2芯線21とが加圧溶接(冷間圧接)により接続されることによって、溶接部30を形成する。
【0065】
次いで、図11に示すように、第1アウタケース120と第2アウタケース220とを互いに近づけるようにスライドさせる。そして、嵌合フード部230内に第1アウタケース120が挿入され、突起係止孔132に固定突起127が係止される。これにより、第1アウタケース120と第2アウタケース220とが嵌合して、第1アウタケース120及び第2アウタケース220(嵌合フード部230)が、第1芯線11、第2芯線21及び溶接部30を覆うこととなる。
【0066】
(2.4)作用・効果
以上説明した第2実施形態では、第1実施形態の作用・効果と同様に、より簡単な構造で第1電線10と第2電線20とを導通接続させることができるとともに、省スペース化及び製造コストの低減を両立できる。
【0067】
第2実施形態では、第1ケース100は、第1インナケース110と、第1アウタケース120とを備え、第2ケース200は、第2インナケース210と、第2アウタケース220とを備える。これにより、第1インナケース110に対して第1アウタケース120をスライドさせ、第2インナケース210に対して第2アウタケース220をスライドさせるのみで、作業者が容易に電線をセットすることができるとともに、第1アウタケース120及び第2アウタケース220で第1芯線11、第2芯線21及び溶接部30を絶縁保護することができる。加えて、溶接部30を形成する前の電線接続構造2の郵送時等において、第1アウタケース120で第1芯線11を保護しつつ、第2アウタケース220(嵌合フード部230)で第2芯線21を保護することが可能となる。従って、第1芯線11及び第2芯線21が損傷し難くなり、第1電線10と第2電線20との接続信頼性をも向上できる。
【0068】
第2実施形態では、被覆材固定部111Aは、電線収容溝部111の途中に設けられている。これにより、さらに電線の位置決めが容易となる。このため、作業性をさらに向上させることができるとともに、電線同士が移動し難くなり、接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0069】
(3)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0070】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、加圧溶接として、冷間圧接であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、その他の圧接であってもよい。
【0071】
また、電線収容溝部、電線位置決め部及び芯線覆い部は、2つのケース半体にそれぞれ設けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、一方のケース半体に設けられていてもよい。
【0072】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0073】
1,2…電線接続構造
10…第1電線
11…第1芯線
12…第1被覆材
20…第2電線
21…第2芯線
22…第2被覆材
30…溶接部
40…ジョイントケース
400,400A…ケース本体
410,420…ケース半体
411,421…電線収容溝部
412,422…電線位置決め部
413,423…芯線覆い部
430…ヒンジ部
440…ロック部
100…第1ケース
110…第1インナケース
111…電線収容溝部
112…電線位置決め部
113…芯線覆い部
120…第1アウタケース
200…第2ケース
210…第2インナケース
210A,210B…ケース半体
220…第2アウタケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯線が第1被覆材で覆われた第1電線の端末と、第2芯線が第2被覆材で覆われた第2電線の端末とを接続する電線接続構造であって、
前記第1電線の端末に剥き出しされた前記第1芯線と、前記第2電線の端末に剥き出しされた前記第2芯線とが加圧溶接により接続される溶接部と、
前記溶接部を含んだ状態で、前記第1電線の端末と前記第2電線の端末とを収容するジョイントケースと
を備えることを特徴とする電線接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電線接続構造であって、
前記ジョイントケースは、前記溶接部を覆う矩形状のケース本体を有し、
前記ケース本体には、
前記第1電線の端末と前記第2電線の端末とを収容する電線収容溝部と、
前記電線収容溝部の一端に設けられ、前記第1被覆材の端末又は前記第2被覆材の端末が当接して、前記第1電線及び前記第2電線を位置決めする電線位置決め部と、
前記第1芯線、前記第2芯線及び前記溶接部を覆う芯線覆い部と
が形成されることを特徴とする電線接続構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電線接続構造であって、
前記ジョイントケースは、前記溶接部を覆う矩形状のケース本体を有し、
前記ケース本体は、
2つのケース半体と、
2つの前記ケース半体の一側同士を連結するとともに、2つの前記ケース半体を開閉自在に支持するヒンジ部と、
2つの前記ケース半体を閉じた状態で2つの前記ケース半体を保持するロック部と
を備えることを特徴とする電線接続構造。
【請求項4】
請求項1に記載の電線接続構造であって、
前記ジョイントケースは、前記溶接部を覆う矩形状のケース本体を有し、
前記ケース本体は、
前記第1電線の端末を収容する第1ケースと、
前記第2電線の端末を収容する第2ケースと
を備え、
前記第1ケースは、
2つのケース半体によって形成され、前記第1電線の端末を位置決めした状態で収容する第1インナケースと、
前記第1インナケースに対してスライド自在な状態で前記第1インナケースを覆うとともに、前記第1芯線及び前記溶接部を覆う第1アウタケースと
を備え、
前記第2ケースは、
2つのケース半体によって形成され、前記第2電線の端末を位置決めした状態で収容する第2インナケースと、
前記第2インナケースに対してスライド自在な状態で前記第2インナケースを覆うとともに、少なくとも前記第2芯線を覆って前記第1アウタケースと嵌合する第2アウタケースと
を備えることを特徴とする電線接続構造。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の電線接続構造に用いられることを特徴とするジョイントケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−69642(P2013−69642A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209290(P2011−209290)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】