説明

電荷制御回路

ある選択された電圧レベルにおける基準電圧(450)を受けるよう構成された入力ノード(340)を有し、且つ、充電信号(440)に応答して該入力ノードを該選択された電圧レベルにおけるパルス電荷で事前充電するよう構成された、スイッチ回路(125,125-1,125-2)を、電荷制御回路(105,125-1)が備える。前記スイッチ回路は、第1及び第2の電極(135-1,140-1)を備える可変キャパシタ(130,130-1)を有する微小電気機械装置(MEM装置)(110,110-1,110-2,110-3)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号(430)に応答するよう構成された単一スイッチを更に含み、該単一スイッチは、前記MEM装置に結合されて、前記継続時間中、前記MEM装置の可変キャパシタ(130,130-1)の第1の電極と第2の電極(135-1,140-1)との間に前記選択された電圧レベルを印加し、これにより、パルス電荷が前記可変キャパシタにおいて蓄積させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年4月30日にファイリングされた「Charge Control of Micro-Electromechanical Device」と題する米国特許出願第10/437,522号の一部継続出願であり、その米国特許出願が、その全体が参照によって本明細書内において組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)は、薄膜技術を使用して開発され、電気的構成要素と微小機械的構成要素との両方を含むシステムである。MEMS装置は、光学表示システム、圧力センサ、流量センサ、及び電荷制御アクチュエータのような様々な用途に使用される。MEMS装置は、微小機構構成要素を移動させるか又はその動きを監視するために静電気力又はエネルギーを使用する。あるタイプのMEMS装置では、所望の結果を達成させるために、静電気力と機械的復元力とを釣り合わせること(バランスさせること)によって電極間のギャップ間隔(ギャップ距離)が制御される。ディジタルMEMS装置は、2つのギャップ間隔を使用するが、アナログMEMS装置は、複数のギャップ間隔を使用する。
【0003】
そのようなMEMS装置は、様々な手法を使用して開発されてきた。ある手法では、変形可能な可撓性膜(deflective membrane)が電極の上に配置され、且つ、電極に静電気的に引き付けられる。他の手法は、シリコンか又はアルミニウムのフラップ又はビームを使用し、これが最上導電層を形成する。光学用途の場合には、この導電層は反射性であり、可撓性膜が、導電層上に入射する光を導くために静電気力を使用して変形される。
【0004】
電極間のギャップ間隔を制御するための1つの手法は、電極に対して連続的な制御電圧を印加することであり、該ギャップ間隔を小さくするために該制御電圧が高められ、この逆の場合も同様に行われる。しかしながら、この手法は、ギャップ間隔を効果的に制御することができる使用可能な動作範囲を大幅に狭くする静電気的不安定性をこうむる。その理由は、電極が、ギャップ間隔が小さくなるにつれ静電容量が大きくなる可変キャパシタ(可変コンデンサ)を形成するからである。ギャップ間隔がある閾値(通常は初期ギャップ間隔の約3分の2)まで低減される時には、電極間の静電気引力が、機械的復元力に打ち勝ち、これにより、電極が互いに「ぱちん」と合わされるか又は機械的に停止する。これは、最低閾値よりも小さい間隔において電極に過剰電荷が溜まり、その結果、静電気引力が高められるポイントにまで静電容量が高められるからである。この現象は、「電荷暴走(charge runaway)」として知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記制御電圧と前記ギャップ間隔との間の非線形な関係によって、制御可能な電極移動範囲が初期ギャップ間隔のわずか3分の1に制限され、従って、MEMS装置の潜在的な有用性が制限される。例えば、光学システムの場合には、干渉又は回折ベースの光変調器MEMS装置は、その光学MEMS装置によって散乱されたより広い光学範囲の可視光を制御するために、ギャップ間隔の制御範囲が好適には広範囲であるべきである。
【課題解決するための手段】
【0006】
ある選択された電圧レベルにおける基準電圧を受けるよう構成された入力ノードを有し、且つ、充電信号に応答して該入力ノードを該選択された電圧レベルにおけるパルス電荷で事前充電するよう構成された、スイッチ回路を、電荷制御回路が備える。このスイッチ回路は、第1の電極と第2の電極とを備える可変キャパシタを有する微小電気機械装置(MEM装置)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号に応答するよう構成された単一スイッチを更に含み、該単一スイッチは、MEM装置に結合されて、前記継続時間中、MEM装置の可変キャパシタの第1の電極と第2の電極との間に前記選択された電圧レベルを印加し、それにより、パルス電荷が可変キャパシタにおいて蓄積させられる。
【実施例】
【0007】
添付図面は、この装置及び方法の様々な実施形態を示し、本明細書の一部である。示された実施形態は、この装置及び方法の単なる例であり、開示の範囲を限定しない。
【0008】
図面全体を通して、同一の参照番号は、類似しているが必ずしも同一とは限らない要素を指す。
【0009】
ある選択された電圧レベルにおける基準電圧を受けるよう構成された入力ノードを有し且つ、充電信号に応答して該選択された電圧レベルにおけるパルス電荷で入力ノードを事前充電するよう構成された、スイッチ回路を、電荷制御回路が備える。前記スイッチ回路は、第1の電極と第2の電極とによる可変キャパシタを有する微小電気機械装置(MEM装置)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号に応答するよう構成された単一スイッチを更に含み、前記単一スイッチは、前記MEM装置に結合されて、前記持継続時間中、MEM装置の可変キャパシタの第1の電極と第2の電極との間に前記選択された電圧レベルを印加し、それにより、パルス電荷が可変キャパシタにおいて蓄積させられる。
【0010】
本明細書内において及び添付の特許請求の範囲内において用いられる時には、用語「トランジスタ」及び「スイッチ」は、信号に応答して選択的にアクティブにされる任意のデバイスか又は構造として広範囲に理解されるように表される。
【0011】
以下の説明において、説明の目的のため、本方法及び装置の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細事項が記載される。しかしながら、そのような特定の詳細事項が無くても本方法及び装置を実施することができることは当業者であれば明らかであろう。本明細書内における「1つの実施形態」か又は「ある実施形態」は、実施形態と関連して説明されたある特定の特徴か、構造か、又は特性が少なくとも1つの実施形態において含まれることを意味する。本明細書内の様々な場所において使用される語句「1つの実施形態」は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。
[例示的な構造]
図1は、微小電気機械システム(MEMS)(100)の例示的な実施形態を示すブロック図である。MEMS(100)は、電荷制御回路(105)と微小電気機械装置(MEM装置)(110)を含む。電荷制御回路(105)は、可変電力源(115)、コントローラ(120)、及びスイッチ回路(125)を更に含む。MEM装置(110)は、可変ギャップ間隔(145)だけ離された第1の導電性電極(135)と第2の導電性電極(140)とを含む可変キャパシタ(130)を更に含む。第1の導電性電極(135)と第2の導電性電極(140)とを隔てる可変ギャップ間隔(145)は、可変キャパシタ(130)において蓄積された電荷の大きさの関数である。第1の導電性電極(135)と第2の導電性電極(140)との間の相対運動に対応するために、導電性電極のいずれか一方を、他方が移動可能である場合に、固定することができる。参照しやすくするために、この例示的な実施形態に従って、第2の導電性電極(140)が、固定電極と見なされる。
【0012】
電荷制御回路(105)は、可変電力源(115)によって提供された基準電圧を所定の継続時間中、第1及び第2の導電性電極(135、140)に印加し、それにより、所望の大きさを有する蓄積された電荷が、可変キャパシタ(130)において蓄積させられることによってMEM装置(110)を制御するよう構成される。電荷は、電荷制御経路(175)を介してコントローラ(120)によってスイッチ回路(125)に送られた充電信号に応答して蓄積される。従って、スイッチ回路の入力ノードは、事前充電される。第1及び第2の導電性電極(135、140)の間に正確な値の基準電圧を印加することによって、可変キャパシタ(130)において蓄積される電荷と、従って可変ギャップ(145)の大きさ(サイズ)とを、広い範囲にわたって制御することができる。
【0013】
可変電力源(115)は、コントローラ(120)から経路(150)を介して電圧選択信号を受け取り、該電圧選択信号に基づいてある選択された電圧レベルを有する基準電圧を経路(155)を介してスイッチ回路(125)に提供するよう構成された可変電圧源である。前述の充電信号は、この基準電圧がスイッチ回路(125)の入力ノードを前記選択された電圧において事前充電するかどうかを制御する。入力ノードが事前充電されると、その電荷が可変キャパシタ(130)に伝達される。
【0014】
スイッチ回路(125)は、経路(160)を介して所定の継続時間のイネーブル信号を受け取り、それに応答して、所定の継続期間中に、経路(165)を介して前記選択された電圧レベルをMEM装置(110)に対して印加し、それにより、所望の大きさを有する蓄積電荷が、可変キャパシタ(130)において蓄積させられるように構成される。1つの例示的な実施形態において、スイッチ回路(125)は、経路(170)を介してコントローラ(120)からクリア信号を受け取り、そのクリア信号に応答して、可変キャパシタ(130)における潜在的蓄積電荷を除去するように構成される。この蓄積電荷の除去により、前記選択された電圧レベルを有する基準電圧が印加されるに前に可変キャパシタ(130)が既知の電荷レベルにおかれる。
[例示的な実施形態と動作]
図2は、MEM装置(110−1)の例示的な一実施形態を示す図である。例示的な実施形態において、MEM装置(110−1)は、表示可能画像の画素(ピクセル)を少なくとも部分的に表示する。MEM装置(110−1)は、最上部反射器(200)、底部反射器(210)、可撓性部材(フレクシャ:flexure)(220)、及びばね機構(230)を備える。前記反射器(200、210)によって共振光学キャビティ(240)が画定される。2つの反射器(200、210)は、可変ギャップ間隔(145−1)だけ離されている。最上部反射器(200)は、半透過性か又は半反射性とすることができ、きわめて高い反射性か又は完全な反射性の底部反射器(210)と共に使用されることが可能であり、又逆の場合も同様に可能である。ばね機構(230)は、線形か又は非線形なばね機能を有する重合体のような任意の適合可能な可撓性材料とすることができる。
【0015】
光学キャビティ(240)は、光学干渉を用いてある特定強度における可視光波長を選択するように調整されることが可能である。MEM装置(110−1)の構成に依存して、光学キャビティ(240)は、所望の強度の波長を反射させるか又は透過させるかのいずれかを行うことができる。すなわち、光学キャビティ(240)は、事実上、反射性か又は透過性とすることができる。光学キャビティ(240)によって光は生成されない。従って、MEM装置(110−1)は、周囲光か又は他の外部光源の光に依存する。光学キャビティ(240)によって伝達された可視光波長とその強度は、最上部反射器(200)と底部反射器(210)との間のギャップ間隔(145−1)に依存する。従って、ギャップ間隔(145−1)を制御することによって光学キャビティ(240)を所望の強度における所望の波長に調整することができる。
【0016】
可撓性部材(220)とばね機構(230)とによって、反射器(200、210)において適切な量の電荷が蓄積されたときにギャップ間隔(145−1)が変化することが可能となり、これにより、所望の強度における所望の波長が選択されることとなる。この電荷及び対応する電圧は、次の式Iに従って決定される。次の式Iは、反射器(200、210)間の引力である。従って、反射器(200、210)と可変ギャップ間隔(145−1)は、フリンジングフィールド(fringing field)を考慮しない平行電極キャパシタのように作用する。
式I:
【0017】
【数1】

【0018】
ここで、ε0は、自由空間の誘電率、Vは反射器(200、210)の両側間の電圧、Aは各反射器(200、210)の面積、dは瞬時のギャップ間隔(145−1)である。従って、0.25μのギャップ間隔(145−1)を有する70ミクロン平方の画素の両側に1ボルトの電位をかけると、7×10-7ニュートン(N)の静電気力をもたらす。
【0019】
従って、反射器(200、210)間の低い電圧に対応する電荷量は、最上部反射器(200)を移動させ且つ該最上部反射器(200)を重力及び物理的な衝撃のような他の力に対して保持するために十分な力を提供する。反射器(200、210)内に蓄積された静電荷は、追加の電力なしに最上部反射器(200)を所定位置に保持するのに十分である。
【0020】
式Iにおいて画定された力は、ばね機構(230)によって提供される線形ばね力と釣り合う。この力は、第2の式によって特徴付けられる。
式II:
F=k(d0−d)
ここで、kは線形ばね定数、d0はギャップ間隔(145−1)の初期値、dは瞬時のギャップ間隔(145−1)である。
【0021】
前述のように、式IとIIの力が電圧制御を使用して安定平衡状態にある範囲は、値(d−d0)が0とd0/3との間の時に生じる。(d−d0)>d0/3において、式Iの静電引力が、式IIのばね力に打ち勝ち、これにより、反射器(200、210)がぱちんと合わさることとなる。このことは、可変ギャップ間隔dがd0/3よりも小さい時には、増大させられた静電容量に起因して過剰電荷が反射器(200、210)内に引き込まれ、次いで、反射器(200、210)間の式Iの引力を増大させ、これにより、それらが互いに引き付けさせられるために生じる。
【0022】
しかしながら、式Iの反射器(200、210)間の力を、第3の式に従った電荷の関数として代りに記述されることもできる。
式III:
【0023】
【数2】

【0024】
ここで、Qはキャパシタにおける電荷である。力Fがdではなく電荷Qの関数の場合には、電圧ではなく反射器(200、210)上の電荷の量を制御することによって、可変ギャップ間隔(145−1)を、ほぼ0からd0までの範囲のようなギャップ間隔全体にわたって制御することができることをがわかる。この範囲は、制御範囲を約66%から、77〜95%か又はそれよりも大きく広げることができる。
【0025】
更には、MEM装置(110−1)は、可変キャパシタ上の電荷Qの変化の結果としての、反射器(200)の移動において、遅延を発生させる機械的時定数を有する。機械的時定数を、とりわけばね機構(230)において使用されている材料によって、及びMEM装置(110−1)が動作する環境によって制御することができる。例えば、MEM装置(110−1)の機械的時定数は、空気中において動作している時にはある値を有し、ヘリウム環境内において動作している時には別の値を有する。
【0026】
電荷制御回路(105)は、これらの特性の各々を利用して実質的にはギャップ全体にわたるギャップ間隔を制御する。イネーブル信号の継続時間に基づいて選択可能な制御電圧をMEM装置(110−1)に印加することによって、継続時間がMEM装置(110−1)の機械的時定数よりも短い場合には、基準電圧が印加される継続時間中、MEM装置(110−1)の可変静電容量が「固定」されるように見える。その結果として、前記選択された基準電圧を印加することによって反射器(200、210)において蓄積された所望の電荷Qを、第4の式、すなわち式IVによって決定することができる。
式IV:
Q=CINTREF
ここで、VREFは選択された基準電圧、CINTはMEM装置(110−1)の初期静電容量である。イネーブル信号(すなわち、電気的時定数)の継続時間を、機械的時定数よりも短く維持することによって、基準電圧が、所望の電荷を配送するためにある特定の継続時間の間、MEM装置(110−1)に印加され、次いで除去される。基準電圧が除去されると、MEM装置(110−1)は浮遊状態にされるか又はトライステートにされ、従って蓄積による追加的な電荷が阻止され、MEM装置(110−1)の直接的な電圧制御に比べて広げられた制御範囲についてのギャップ間隔の効果的な制御が可能になる。
【0027】
以上の項目の説明は、理想的な平行電極キャパシタと、理想的な線形ばね復元力とに関するものであるが、説明した原理を、干渉ベースか又は回折ベースの表示装置、平行電極アクチュエータ、非線形ばね、及び他のタイプのキャパシタのような他のMEM装置に適応させることができることが当業者であれば理解することができる。表示装置の場合、使用可能な範囲が広げられる場合には、より多くの色、飽和レベル、及び輝度(intensity)を達成することができる。
【0028】
MEMS装置が繰り返しアドレス指定されて電荷によって「書き込まれる」用途において、該装置は、それぞれの書き込みの前に既知の状態(既知の初期静電容量)にリセットされることが好ましい。典型的には、このリセットは、MEM装置と制御回路構成との間の電気的な接続を形成するノード上における金属酸化物半導体(MOS)デバイスの第2のドレインのような追加的な回路構成が必要であろう。しかしながら、この静電容量を最小にすることは、電荷制御におけるギャップ制御範囲を最大にすることに役立つであろう。より具体的には、Cp/Co比を最小にすることは、最大の制御範囲をもたらす(ここで、CpはMEMS装置の最上部電極に電気的に接続されたノード上における寄生容量であり、CoはMEMSか又は可変キャパシタの初期静電容量である)。Cpを最小にする電圧基準源を使用した電荷制御回路の1つの例示的な実施形態が、次に説明される。
【0029】
図3A〜図3Dは、電荷制御回路(125−1)によって電荷制御を可能にするMEMS(100−1)の概略図である。可変キャパシタ(130−1)が単一スイッチに直接的に接続されるので、可変キャパシタ(130−1)の入力ノード上における静電容量が低減される。
【0030】
図3Aは、非アクティブ状態のMEMS(100−1)の概略図である。MEMSは、クリアトランジスタ(300)、第1又はイネーブルトランジスタ(310)、クリア電圧(320)、第2又は充電イネーブルトランジスタ(330)、及び可変キャパシタ(130−1)を含む。イネーブルトランジスタ(310)は、ゲート(315)を備える。代替として、トランジスタの代わりにスイッチタイプのデバイスを使用することができる。イネーブルトランジスタ(310)は、可変キャパシタ(130−1)に直接的に接続されている唯一のスイッチである。この構成は、可変キャパシタがイネーブルトランジスタ(310)のドレインだけを「見る」ため、入力ノード(340)の静電容量を低減させ、これにより、可変キャパシタ(130−1)の広げられた制御範囲が提供される。更に、トランジスタが全てpチャネル金属酸化物半導体(PMOS)デバイスか又はnチャネル金属酸化膜半導体(NMOS)デバイスのいずれかとすることができるため、本装置は、コスト効率のよいシステムを提供する。以下の例示的な説明では、理解しやすくするために、NMOSを想定している。PMOSトランジスタをNMOSトランジスタに置き換えることができることを当業者であれば理解するであろう。更に、本構成は、1つのMEM装置あたりの相補型金属酸化物半導体(CMOS)の設置面積を比較的小さくすることを可能にすることができ、これにより、更にまた、結果としてコスト効率をより高めた編成プロセスを生させることができるか又は歩留まりを高めることができる。
【0031】
図3Bは、リセット動作中に可変キャパシタ(130−1)がリセットされる時のMEMS(100−1)を示す。MEMSキャパシタ(130−1)のリセットは、クリアトランジスタ(300)のゲート(305)と、イネーブルトランジスタ(310)のゲート(315)とを同時により高い電圧レベルに上昇させることによって達成される。クリアトランジスタ(300)とイネーブルトランジスタ(310)とを高電圧レベルにすることにより、トランジスタが導電体として作用し、これにより、第1又は最上部導電性電極(135−1)からクリア電圧(320)までの電気経路が形成される。従って、クリアトランジスタ(300)とイネーブルトランジスタ(310)とを高電圧レベルに上昇させることによって、MEMSキャパシタ(130−1)からの全ての電荷をクリアするための回路が形成される。図3Bの矢印は、可変キャパシタ(130−1)から電荷が除去されて結果としてクリア電圧(320)となる時に電流が通る経路を示す。可変キャパシタ(130−1)がリセットされた後、クリアトランジスタ(300)とイネーブルトランジスタ(320)とが、より低い電圧レベルに戻る。クリアトランジスタ(300)とイネーブルトランジスタ(310)とを低いレベルに戻すことは、ゲート(305、315)を開かせ、これにより、トランジスタ(300、310)が、それらの間の電荷の流れを遮断することとなる。
【0032】
図3Cは、入力ノード(340)が事前充電される時のMEMSの概略図である。入力ノード(340)は、可変キャパシタ(130−1)がリセットされた後に、事前充電される。入力ノード(340)は、ある選択された基準電圧において事前充電される。入力ノード(340)、クリアトランジスタ(300)、及びイネーブルトランジスタ(310)は、充電イネーブルトランジスタ(330)がより高い電圧レベルに引き上げられた時により低い電圧レベルとなる。充電イネーブルトランジスタ(330)をより高い電圧レベルに上昇させることは、VREF(350)に対するゲート(335)を閉じさせる。従って、充電イネーブルトランジスタ(330)を上昇させることによって、入力ノード(340)が事前充電される。上述のように、クリアトランジスタのゲート(305)とイネーブルトランジスタのゲート(315)とが開くため、入力ノード(340)が充電される。結果として、クリアトランジスタ(300)のドレインと、イネーブルトランジスタ(310)のソースとが、キャパシタノードから切り離される。これらのゲート(305、315)を開き、充電イネーブルトランジスタ(330)のゲート(335)をVREFにすることによって、電荷が入力ノード(340)上に蓄積される。蓄積された電荷は、大きな矢印(A)によって表されている。説明されたように、クリアトランジスタのゲート(305)とイネーブルトランジスタのゲート(315)が開いているので蓄積電荷(A)が蓄積される。可変キャパシタ(130−1)が、イネーブルトランジスタ(310)のドレインに起因して静電容量だけを「見る」ので、この構成は、入力ノード(340)上において見られる静電容量を効果的に低減する。この静電容量を、これまでの設計の静電容量の2分の1か又はそれよりも少なくすることができる。入力ノード(340)の静電容量を低減させることによって、可変ギャップ間隔の全体にわたる制御範囲が広がる。
【0033】
図3Dは、電荷が可変キャパシタ(130−1)にパルスで送られる時のMEMS(100−1)の概略図である。入力ノード(340)が充電された後に、イネーブルトランジスタ(310)はより高い電圧レベルに引き上げられる。説明されたように、イネーブルトランジスタ(310)をより高い電圧に上昇させることによって、イネーブルトランジスタ(310)が導体として作用させられる。クリアトランジスタ(300)のゲート(305)が開かれているので、入力ノード(340)は、クリアするように電圧が低下されることが防止される。従って、入力ノード(340)上に蓄積された電荷は、可変キャパシタ(130−1)に流れることができるか又はパルスで送られる。電荷のパルスは、イネーブルトランジスタ(310)を横切って第1の電極(135−1)へと流れる。イネーブルトランジスタ(310)がより高い電圧に保持される時間は、パルス継続時間として知られる。
【0034】
パルス継続時間は、MEM装置(110−2)の機械的時定数よりも短い時間の期間である。更に、パルス継続時間を、少なくともMEM装置(110−2)の電気的時定数と同じくらいの長さとすることができる。上述のように、この機械的時定数によって、可変キャパシタ(130−1)上の電荷Qにおける変化の結果として第1及び第2の電極(135−1、140−1)の移動の遅延が生じられる。従って、イネーブル信号の継続時間に基づいてVREF(350)からMEM装置(110−2)へと選択可能な制御電圧を印加することによって、MEM装置(110−2)の可変静電容量は、基準電圧が印加されている継続時間の間、「固定」されているように見える。更に、前述のように、MEM装置(110−2)が単一トランジスタか又はスイッチに結合されるので、MEM装置(110−2)の静電容量はより小さい。
【0035】
イネーブルトランジスタ(310)が再びより低い電圧にされた後に、可変キャパシタ(130−1)は、その最終的な機械的な状態に安定化する。図3内に示された単一のMEMS(100−1)は、入力電圧VREFを列信号として有し、クリアトランジスタ(300)、イネーブルトランジスタ(310)及び充電イネーブルトランジスタ(330)に伝達される電荷制御信号電圧を行信号として有する大きなアレイに再現することができる。
【0036】
図4は、例示的な微小電気機械システム(MEMS、400)を示すブロック図である。MEMS(400)は、M行×N列をなすMEMセル(410)のアレイを含む。各MEMセル(410)は、MEM装置(110−3)とスイッチ回路(125−2)とを含む。簡単化のために図示されていないが、各MEM装置(110−3)は、図3A〜図3D内において示されたような可変ギャップ間隔だけ分離された可変キャパシタを形成する第1及び第2の導電性電極を更に含む。
【0037】
各スイッチ回路(125−2)は、関連付けられたMEM装置(110−3)の可変キャパシタにおいて蓄積される電荷の大きさを制御するように構成され、これにより、関連付けられた可変ギャップ間隔が制御される。アレイのM行の各行は、別個のクリア信号(420)、イネーブル信号(430)、及び充電信号(440)を受け取る。アレイのM行の各行は、別個のクリア信号(420)、別個のイネーブル信号(430)、及び別個の充電信号(440)を受け取る。所与の行の全てのスイッチ回路(125−2)は、実質的には同じクリア信号とイネーブル信号とを受け取る。アレイのN列の各列は、合計N個の基準電圧信号の別個の基準電圧(VREF、450)を受け取る。クリア電圧(320)は、システムの至る所に結合され、従って省略されている。
【0038】
所与の行のMEMセル(410)の各MEM装置(110−3)に対して所望の電荷を蓄積(格納)か又は「書き込む」ために、ある選択された値を有する基準電圧がN列のそれぞれに対して提供され、N個の基準電圧信号の各々が、ある異なる選択された値を有する可能性がある。所与の行のクリア信号が次いで「パルス化」されることによって、所与の行の各スイッチ回路(125−2)が、上述のように関連付けられたMEM装置(110−3)から任意の潜在的な蓄積電荷を除去させるか又はクリアさせる。関連付けられたMEM装置(110−3)の各々の入力ノードを事前充電するために、所与の行の充電信号(440)が次いで提供される。所与の行のイネーブル信号(430)が次いで「パルス化」されることによって、所与の行の各スイッチ回路(125−2)が、その関連付けられた基準電圧を、所定の継続時間の間、その関連付けられたMEM装置(110−3)に印加させる。結果として、印加された基準電圧の値に基づいて所望の大きさを有する蓄積電荷が、関連付けられた可変キャパシタに蓄電(格納)され、これにより、蓄積電荷の所望の大きさに基づいて可変ギャップ間隔が設定される。この手順は、アレイの各MEMセル(410)に所望の電荷を「書き込む」ために、矢印の各行ごとに繰り返される。
【0039】
図1〜図4に関連して説明された実施形態において、スイッチ回路(125、125−1、125−2)は、電圧を制御するよう構成される。他の実施形態において、スイッチ回路(125、125−1、125−2)は、電流を制御するよう構成されることが可能である。そのような実施形態において、スイッチを、電流源として作用するトランジスタとすることができる。例えば、3極素子(triode)領域において、イネーブルトランジスタは、電流を制御するための抵抗器として作用することができる。更に、飽和モードにおいて、イネーブルトランジスタは電流源として直接的に作用することができる。結果として、入力ノード(340)上において電流パルスが蓄積されることとなる。次いで、このパルス電流は、可変キャパシタを充電するために該可変キャパシタ上へとパルスで送られる。
【0040】
上記の説明は、単に本発明の 本方法と装置とを図示し且つ説明することのみのために提示されてきた。網羅的となることは意図されず、或いは開示された任意の厳密な形態に開示を限定することが意図されていない。上記の教示を鑑みて多くの修正と変形形態が可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって画定されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】1つの例示的な実施形態によるMEMSを示す簡単なブロック図である。
【図2】1つの例示的な実施形態によるMEM装置を示す断面図である。
【図3A】1つの例示的な実施形態による例示的なMEMSを示す概略図である。
【図3B】リセット動作中の例示的なMEMSを示す概略図である。
【図3C】事前充電動作中の例示的なMEMSを示す概略図である。
【図3D】電荷パルシング動作中の例示的なMEMSを示す概略図である。
【図4】M×Nアレイ内における複数のMEMセルを有する例示的なMEMSを示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷制御回路(105、125−1)であって、
ある選択された電圧レベルにおける基準電圧(450)を受けるよう構成された入力ノード(340)を有し、且つ、充電信号(440)に応答して前記入力ノード(340)を前記選択された電圧レベルにおけるパルス電荷で事前充電するように構成された、スイッチ回路(125、125−1、125−2)
を備え、
前記スイッチ回路(125、125−1、125−2)は、第1及び第2の電極(135−1、140−1)を備えた可変キャパシタ(130、130−1)を有する微小電気機械装置(MEM装置)(110、110−1、110−2、110−3)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号(430)に応答するよう構成された単一スイッチを更に含み、
前記単一スイッチは、前記MEM装置(110、110−1、110−2、 110−3)に結合されて、前記継続時間中に前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)の可変キャパシタ(130、130−1)の第1の電極と第2の電極(135−1、140−1)との間に前記選択された電圧レベルを印加して、これにより、前記パルス電荷が前記可変キャパシタ(130、130−1)において蓄積させられることからなる、電荷制御回路。
【請求項2】
前記単一スイッチが、トランジスタ(300、310、320、330)を含む、請求項1に記載の電荷制御回路。
【請求項3】
前記単一スイッチが第1のスイッチであり、前記第1のスイッチが前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)と第2のスイッチとの間になるように、前記入力ノード(340)と前記第1のスイッチとに結合された前記第2のスイッチを前記スイッチ回路(125、125−1、125−2)が更に含み、
前記第2のスイッチが、前記充電イネーブル信号(430)に応答して閉じて前記入力ノード(340)に前記基準電圧(450)を提供して、前記入力ノード(340)を前記パルス電荷で充電するよう構成されることからなる、請求項1に記載の電荷制御回路。
【請求項4】
前記入力ノード(340)に結合され、且つ、前記選択された電圧レベルにおける前記基準電圧(450)を提供するように構成された、可変電力源(115)を更に含む、請求項1に記載の電荷制御回路。
【請求項5】
微小電気機械セルであって、
可変ギャップ間隔(145、145−1)だけ離された第1の導電性電極(135)と第2の導電性電極(140)とによって形成された可変キャパシタ(130、130−1)を有する微小電気機械(MEM)装置(110、110−1、110−2、110−3)と、
ある選択された電圧レベルにおける基準電圧(450)を受けるよう構成された入力ノード(340)を有し、且つ、充電信号(440)に応答して前記入力ノード(340)を前記選択された電圧レベルにおけるパルス電荷で事前充電するように構成された、スイッチ回路(125、125−1、125−2)
とを備え、
MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号(430)に応答するよう構成された前記可変キャパシタ(130、130−1)に結合され、且つ、前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)に結合されて前記継続時間中に第1の電極と第2の電極(135−1、140−1)との間に前記選択された電圧レベルを印加することにより前記可変キャパシタ(130、130−1)において前記パルス電荷が蓄積される、第1のスイッチだけを、前記スイッチ回路(125、125−1、125−2)が更に含むことからなる、微小電気機械セル。
【請求項6】
微小電気機械システム(100)であって、
微小電気機械セル(140)のM行×N列をなすアレイであって、可変ギャップ間隔(145、145−1)だけ離された第1の導電性電極(135)と第2の導電性電極(140)によって形成された可変キャパシタ(130、130−1)を有するMEM装置(110、110−1、110−2、110−3)を各セルが含むことからなる、M行×N列をなすアレイと、
ある選択された電圧レベルにおける基準電圧(450)を受けるよう構成された入力ノード(340)を有し、且つ、充電信号(440)に応答して前記入力ノード(340)を前記選択された電圧レベルにおけるパルス電荷で事前充電するように構成された、スイッチ回路(125、125−1、125−2)であって、前記可変キャパシタ(130、130−1)に結合され、且つ、MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号(430)に応答するよう構成され、且つ、前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)に結合されて前記継続時間中に前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)の可変キャパシタ(130、130−1)の第1の電極と第2の電極(135−1、140−1)との間に前記選択された電圧レベルを印加することにより前記パルス電荷が前記可変キャパシタ(130、130−1)において蓄積させられる、単一スイッチを、更に含むことからなる、スイッチ回路
とを備える、微小電気機械システム。
【請求項7】
可変キャパシタ(130、130−1)を有する微小電気機械装置(110、110−1、110−2、110−3)を制御する方法であって、
入力ノード(340)を充電するために、事前に選択した電圧レベルにおける電圧を印加し、
前記微小電気機械装置の機械的時定数よりも短い継続時間中に第1のスイッチを閉じるために、イネーブル信号(430)を前記第1のスイッチに提供し、及び、
前記電荷を前記可変キャパシタ(130、130−1)に印加する
ことを含み、
前記電荷が、前記可変キャパシタ(130、130−1)の第1の導電性電極と第2の導電性電極(135、140)との間のギャップ間隔(145、145−1)に対応し、
前記第1のスイッチが、前記可変キャパシタ(130、130−1)に直接的に結合された唯一のスイッチであることからなる、方法。
【請求項8】
電荷制御回路(105、125−1)であって、
ある選択された電流レベルにおける基準電流を受けるよう構成された入力ノード(340)を有し、且つ、充電信号(440)に応答して前記入力ノード(340)を前記選択された電流レベルにおけるパルス電流で事前充電するように構成された、スイッチ回路(125、125−1、125−2)
を備え、
微小電気機械装置(MEM装置)(110、110−1、110−2、110−3)の機械的時定数よりも短い継続時間を有するイネーブル信号(430)に応答するよう構成され、且つ、前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)に結合されて前記継続時間中に前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)の可変キャパシタ(130、130−1)の第1の電極と第2の電極(135−1、140−1)との間に前記選択された電流レベルを印加することにより前記パルス電流が前記可変キャパシタ(130、130−1)において蓄積される、第1のスイッチを、前記スイッチ回路(125、125−1、125−2)が更に含み、
前記第1のスイッチだけが、前記キャパシタに接続されていることからなる、電荷制御回路。
【請求項9】
前記可変ギャップ間隔(145、145−1)が、前記蓄積電荷の大きさの関数である、請求項8に記載の電荷制御回路。
【請求項10】
前記MEM装置(110、110−1、110−2、110−3)に結合され、且つ、前記充電信号(440)に応答して閉じて前記入力ノード(340)に前記基準電流を提供して、前記入力ノード(340)を前記パルス電流で充電するように構成された、第2のスイッチを、前記スイッチ回路(125、125−1、125−2)が更に含む、請求項8に記載の電荷制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−519050(P2007−519050A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551075(P2006−551075)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041860
【国際公開番号】WO2005/073950
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】