説明

電荷強化添加剤を備えたエレクトレットウェブ

熱可塑性樹脂及び電荷添加剤のブレンドを含むエレクトレットウェブが提示されている。電荷添加剤は、エステル置換及びアミド置換トリアニリノトリアジン材料を含む。前記ブレンドから作製されるウェブは、フィルム又は不織繊維ウェブの形態であってよい。不織マイクロファイバーウェブは、濾材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電荷強化添加剤を含有する不織熱可塑性マイクロファイバーウェブなどの不織繊維ウェブを包含するエレクトレットウェブ、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットは、準永久電荷を示す誘電材料である。エレクトレットは、例えば、食品包装用フィルム、エアフィルタ、濾過用接顔部、及び呼吸用マスクを包含する種々のデバイスにおいて、かつマイクロフォン、ヘッドフォン、及び静電記録装置などの電気音響的装置内の静電的要素として有用である。
【0003】
エアゾール濾過に使用されるマイクロ繊維ウェブの性能は、繊維に電荷を付与し、エレクトレット材料を形成することによって改善することができる。特に、エレクトレットはエアゾールフィルタにおける粒子捕捉を向上させるのに有効である。マイクロ繊維ウェブ内にエレクトレット材料を形成するための、多数の方法が知られている。このような方法としては、例えば、メルトブロウン繊維がダイオリフィスから出て、繊維が形成された時点で、電子又はイオンなどの帯電粒子と衝突させることが挙げられる。他の方法としては、例えば、ウェブが形成された後で、DCコロナ放電によって繊維を帯電させること、又はカーディング及び/若しくはニードルタッキング(摩擦帯電)によって繊維マットへ電荷付与することが挙げられる。近年、ウオータージェット又は水滴のストリームが、濾過促進エレクトレット帯電(filtration enhancing electret charge)を提供するのに十分な圧力で不織ウェブに衝突する方法(ハイドロチャージング)が議論されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
性能が向上したエレクトレットウェブに対するニーズが存在する。電荷強化添加剤含有エレクトレットウェブが、本開示にて提示されている。これらの電荷強化添加剤は、DCコロナ放電、ハイドロチャージング又はこれらの組み合わせなどの、種々の異なった帯電メカニズムによって帯電させることが容易なエレクトレットウェブを提供する。加えて、電荷強化添加剤含有エレクトレットウェブは、比較的長い電荷保持力を有する。
【0005】
幾つかの実施形態では、本開示は、熱可塑性樹脂を構成するエレクトレットウェブ並びにエステル置換、及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料を構成する電荷添加剤(charge additive)を包含する。エレクトレットウェブは、不織繊維ウェブの形態であってよく、あるいは不織マイクロファイバーウェブの形態であってもよい。
【0006】
その他の実施形態では、本開示は、熱可塑性樹脂並びにエステル置換、及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料を含む、電荷添加剤(charge additive)のブレンドを含む、不織マイクロファイバーウェブを含む、エレクトレット濾材を包含する。エレクトレット濾材は、人工呼吸器フィルタ、室内換気システムフィルタ、車両換気システムフィルタ、空調装置フィルタ、炉フィルタ、室内空気清浄機フィルタ、真空掃除機フィルタ、又はコンピュータディスクドライブフィルタを構成してよい。
【0007】
熱可塑性材料を提供する工程、エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料を含むホットメルト加工性電荷添加剤(charge additive)を提供する工程、熱可塑性材料及び電荷添加剤(charge additive)をホットメルト混合する工程、並びに混合した熱可塑性材料及び電荷添加剤をメルトブローしてマイクロファイバーウェブを形成する工程、及びウェブを帯電させる工程、を包含する、エレクトレットウェブの調製方法についてもまた開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において有用なエレクトレットウェブとしては、熱可塑性樹脂及び電荷添加剤(charge additive)のブレンドが挙げられる。このようなブレンドから製造されたウェブは、熱可塑性樹脂のみから製造されたウェブよりも高い性能を示す。有用な電荷添加剤(charge additive)としては、エステル置換及びアミド置換トリアニリノトリアジン材料が挙げられる。
【0009】
エレクトレットウェブは、各種形態であってよい。例えば、ウェブは連続又は不連続フィルムであってよく、あるいは繊維ウェブであってよい。繊維ウェブは、濾材形成に特に有用である。幾つかの実施形態では、ウェブは不織マイクロ繊維ウェブである。典型的には、マイクロファイバーは1〜100マイクロメートルの直径である。
【0010】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と交換可能に用いられ、記載された要素の1以上を意味する。
【0011】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。前記アルキルは、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、かつ典型的には、1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第3ブチル(t−ブチル)、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0012】
用語「ヘテロアルキル」とは、ヘテロ原子を含有するアルキル基を意味する。これらのヘテロ原子は、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素などのハロゲン元素、又は窒素、酸素若しくはイオウなどのその他元素であってよい。ヘテロアルキル基の一例は、−CHCH(OCHCHOCHCHなどのポリオキシアルキル基である。
【0013】
用語「置換アルキル」とは、炭化水素主鎖に沿って置換基を含有するアルキル基を意味する。これらの置換基は、アルキル基、ヘテロアルキル基又はアリール基であってよい。置換アルキル基の一例は、ベンジル基である。
【0014】
用語「アリール」とは、1〜5個の環(連結又は縮合していてよい)を含有するラジカルである芳香族炭素環基を意味する。アリール基は、アルキル基又はヘテロアルキル基によって置き換えられてよい。アリール基の一例は、フェニル基である。
【0015】
用語「置換トリアニリノトリアジン」とは、R、R及びRが、トリアニリノトリアジン材料上の置換基である式Iに示すように、3置換アニリン環がトリアジン環に結合している材料を意味する。用語「エステル置換」及び「アミド置換」が、「置換トリアニリノトリアジン」と共に使用される場合、これは、基R、R及びRが各々独立して、エステル(−C(O)−O−)結合又はアミド(−C(O)NR−)結合(この場合、式中のRは、水素原子又はアルキル基である)を介してアニリン環に連結されていることを意味する。
【化1】

【0016】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」とは、1種のモノマーから調製した物質、例えばホモポリマー、又は2種若しくはそれ以上のモノマーから調製した物質、例えば共重合体、ターポリマーなど、の両方を意味する。同様に、用語「重合させる」とは、ホモポリマー、共重合体、ターポリマー、等であり得るポリマー材料の調製プロセスを意味する。用語「コポリマー」及び「共重合材料」とは、少なくとも2種類のモノマーから調製したポリマー材料を意味する。
【0017】
用語「室温」及び「周囲温度」は、同じ意味で用いられ、20℃〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0018】
本発明で使用する場合、用語「ホットメルト加工性」とは、例えば、熱及び圧力によって固体から粘稠な流体へと変化することができる組成物を意味する。組成物は、化学的に変化したり、分解したり、あるいは目的とした用途に使用不能になったりすることなく、ホットメルト加工可能でなければならない。
【0019】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる特徴的な大きさ、量、及び、物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されることを理解されたい。それゆえに、特に異議を唱えない限り、記載した数字は、本明細書にて開示した教示を使用した所望の性質に応じて変化することがある概算である。
【0020】
本発明で有用な熱可塑性樹脂としては、ウェブへと形成し帯電させた際に、多量の捕捉静電荷を有することが可能な任意の熱可塑性非導電性ポリマーが挙げられる。典型的には、このような樹脂は、使用目的での温度で、1014オームcmより大きいDC(直流)固有抵抗を有する。捕獲電荷を獲得可能なポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート類、並びにポリエステル類が挙げられる。特に有用な材料としては、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、これらのブレンド又はプロピレン及び4−メチル−1−ペンテンのうち少なくとも1つから形成されるコポリマー類が挙げられる。
【0021】
電荷添加剤(charge additive)は、エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料である。エステル置換基及び/又はアミド置換基をアニリン環上に備えた材料が、置換基(例えば、単純なアルキル基)上での優れたエレクトレット電荷保持力を提供することが観察された。典型的には、電荷添加剤(charge additive)はホットメルト加工性材料である。特に好適な電荷添加剤としては、式IIで記述される材料が挙げられる。
【化2】

【0022】
式中、各Z、Z及びZは独立して−OR(エステル置換)又は−NR(アミド置換)であり、かつ式中、各Rは独立してアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基であり、各Rは独立してH若しくはアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基であり、各Rは独立してアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基である。幾つかの実施形態では、各Z、Z及びZは独立して−ORであり、式中、各Rは独立して1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基である。その他の実施形態では、各Z及びZが独立して−ORであり、式中、各Rが独立して1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基であり、かつZは−NRであり、式中、RはH又は1〜20個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり、かつRが1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基である。
【0023】
好適な電荷添加剤(charge additive)の例としては、例えば、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン(BASF(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)から、下記式III(Etはエチル基であり、Bu−nはn−ブチル基であるとともに、Bu−tは第3ブチル基である)のようなユヴィナル(UVINUL)T−150として市販されている);3Vベルガモ(Bergamo)(イタリア)から、下記式IVに示すようなウヴァソルブ(UVASORB)HEBとして市販されている4,4’−[[6−[[4−[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル]フェニル]アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]ジイミノ]ビス−安息香酸ビス(2−エチルヘキシル)エステル;下記式Vに示すような2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−テトラデシル−オキシ)−1,3,5−トリアジン;下記式VIに示すような2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−オクタデシル−オキシ)−1,3,5−トリアジン;及びこれらの混合物が挙げられる。
【化3】

【化4】

【0024】
典型的には、電荷添加剤(charge additive)は、熱可塑性樹脂/電荷添加剤ブレンド中に、当該ブレンドの総重量を基準として、0.1〜5重量%の範囲の量で存在する。幾つかの実施形態では、電荷添加剤(charge additive)は、0.1〜3重量%、又は0.25〜2重量%の量で存在する。
【0025】
熱可塑性樹脂及び電荷添加剤のブレンドは、周知の方法により調製することができる。典型的には、ブレンドは溶融押出技術を使用して処理されるので、当該ブレンドがバッチプロセスにて事前にブレンドされてペレットに形成したり、又は熱可塑性樹脂及び電荷添加剤(charge additive)を連続プロセスにて押出成形機内で混合したりしてよい。連続プロセスが使用される場合、熱可塑性樹脂及び電荷添加剤(charge additive)を予め固体として混合して又は別個に押出成形機へと加えたりして、溶融状態にて混ぜ合わせてよい。
【0026】
事前ブレンドペレットを形成するために使用してよい溶融混合機の例としては、分散混合、分配混合、又は分散混合及び分配混合の組み合わせを提供するようなものが挙げられる。バッチ法の例としては、ブラベンダー(BRABENDER)(例えば、C.W.ブレベンダー・インスツルメンツ(C.W. Brabender Instruments, Inc.)(ニュージャージー州サウス・ハッケンサック)から市販されているブレベンダー・プレップ・センター(BRABENDER PREP CENTER))又はバンバリー(BANBURY)内部混合装置及びロールミリング装置(例えば、ファレル(Farrel Co.)(コネティカット州アンソニア)から入手可能な装置)を使用するようなものが挙げられる。バッチ混合後、生成された混合物を直ちにクエンチし、後で処理するために混合物の融解温度未満で保管してよい。
【0027】
連続方法としては、単軸スクリュー押出し、二軸スクリュー押出し、ディスク押出し、往復単軸スクリュー押出し及びピンバレル単軸スクリュー押出しが例として挙げられる。連続法としては、キャビティトランスファーミキサー(例えば、CTM、ラップラテクノロジー(RAPRA Technology, Ltd.)(英国、シュルーズベリー(Shrewsbury))より入手可能)及びピン混合エレメント、静的混合エレメント又は分配混合エレメント(例えば、マッドドック(MADDOCK)混合エレメント又はサクストン(SAXTON)混合エレメントから入手可能)との両方を利用するものが挙げられる。
【0028】
バッチプロセスにより調製された事前ブレンドペレットを押し出すために使用してよい押出機の例としては、連続加工について前述した同一タイプの装置が挙げられる。有用な押出成形条件は、一般には、添加剤なしで樹脂を押出成形するのに好適であるものである。
【0029】
熱可塑性樹脂及び電荷添加剤(charge additive)の押し出されたブレンドは、フィルム又はシートへとキャスト又はコーティングしてよく、あるいは既知の技術を使用して不織繊維ウェブへとメルトブローしてよい。メルトブロー不織マイクロ繊維ウェブは、濾材として特に有用である。
【0030】
メルトブロー不織マイクロ繊維エレクトレットフィルタは、濾過用接顔部などの人工呼吸器のエアフィルタ要素として、あるいは家庭用及び工業用空調機、空気清浄機、真空掃除機、医療用エアラインフィルタ、並びに乗り物並びにコンピュータ、コンピュータ・ディスク・ドライブ、及び電子機器などの一般的装置用空調システムなどの目的のために、特に有用である。人工呼吸器の用途においては、エレクトレットフィルタは、成形された又は折り畳まれた半面の呼吸用マスク、取り換え可能なカートリッジ若しくはキャニスター又は前置フィルタの形態であってよい。
【0031】
本開示において有用なメルトブローマイクロファイバーは、Van A.Wente,“Superfine Thermoplastic Fibers,”Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342〜1346及びReport No.4364 of the Naval Research Laboratories,published May 25,1954,entitled“Manufacture of Super Fine Organic Fibers”by Van A.Wente et al.に記載されているようにして調製することができる。
【0032】
繊維状エレクトレットフィルタのための有用なメルトブローマイクロファイバーは通常、約3〜30マイクロメートルの繊維有効径を有し、幾つかの実施形態では、約7〜15マイクロメートルの繊維有効径を有する(Davies,C.N.,“The Separation of Airborne Dust and Particles,”Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に記述されている方法に従って計算される)。
【0033】
ステープルファイバーもまた、ウェブ内に存在してよい。一般に、ステープルファイバーが存在することで、ブローマイクロファイバーのみからなるウェブよりも、より嵩高でより密度の小さいものとなる。約90重量%以下のステープルファイバーが存在することが好ましく、より好ましくは約70重量%以下である。ステープルファイバーを構成するウェブの例は、米国特許第4,118,531号(ハウザー(Hauser))に開示されている。
【0034】
活性炭又はアルミナなどの吸着粒子材料もまたウェブ内に含まれてよい。このような粒子は、ウェブ内容物の約80容積百分率以下の量で存在する。粒子充填ウェブの例は、例えば米国特許第3,971,373号(ブラウン(Braun))、同第4,100,324号(アンダーソン(Anderson))及び同第4,429,001号(コルピン(Kolpin)ら)に記載されている。
【0035】
本開示に従って製造されたエレクトレット濾材は一般に、約10〜500g/cmの範囲の坪量を有し、幾つかの実施形態では、約10〜100g/cmの範囲の坪量を有する。メルトブローマイクロファイバーウェブの製造において、坪量は、例えばコレクター速度又はダイスループットのいずれかを変化させることによりコントロールすることができる。濾材の厚みは通常、約0.25〜20ミリメートル、及び幾つかの実施形態では、約0.5〜2ミリメートルである。エレクトレット濾材及びそこから製造される樹脂へは、その電気伝導率を増大させ得るあらゆる余計な処理、例えば、電離放射線、ガンマ線、紫外線照射、熱分解、酸化等への曝露を施してはならない。
【0036】
エレクトレットウェブは、それが形成された時点で帯電されてよく、あるいはウェブはウェブ形成後に帯電されてもよい。エレクトレット濾材において、媒体は一般に、ウェブが形成された後で帯電される。一般に、当該技術分野において既知の任意の標準的な帯電方法を使用してよい。例えば、帯電は、DCコロナ放電/充電(DC corona discharge charging)及びハイドロチャージングを包含する様々な方法で実施してよい。これらの方法の組み合わせも使用できる。
【0037】
好適なDCコロナ放電プロセスの例は、米国再発行特許第30,782号(ヴァン・ターンホウト(van Turnhout))、同第31,285号(ヴァン・ターンホウト(van Turnhout))、同第32,171号(ヴァン・ターンホウト(van Turnhout))、米国特許第4,215,682号(ダヴィス(Davis)ら)、同第4,375,718号(ワッズワース(Wadsworth)ら)、同第5,401,446号(ワッズワース(Wadsworth)ら)、同第4,588,537号(クラーゼ(Klaase)ら)、及び同第4,592,815(ナカノ(Nakao))に記載されている。
【0038】
ウェブのハイドロチャージングは、ウェブに濾過促進エレクトレット帯電(filtration enhancing electret charge)を提供するのに十分な圧力で、ウオータージェット又は水滴のストリームをウェブ上へと衝突させることによって実施される。最適な結果を達成するために必要となる圧力は、使用する噴霧器のタイプ、そこからウェブが形成されるポリマーのタイプ、ポリマーへの添加物のタイプ及び濃度、ウェブの厚み及び密度、並びにDCコロナ表面処理などの前処理が、ハイドロチャージングに先立って実施されるかどうかによって変化する。一般に、約69〜3450kPa(10〜500psi)の範囲の圧力が好適である。一般に、ハイドロチャージングのためには、蒸留水又は脱イオン水が、水道水より好ましい。
【0039】
水の噴流又は水滴のストリームは、いずれかの好適なスプレー手段により提供され得る。一般に、油圧駆動により交絡加工した繊維に有用な装置が、本開示の方法において有用であるが、作動は一般に水流交絡にて使用される場合よりも低圧にてハイドロチャージング中実施される。ハイドロチャージングには、例えば、日本特許出願第2002161467号(ホリグチ)、日本特許出願第2002173866号(タケダ)、日本特許出願第2002115177号(タケダ)、日本特許出願第2002339232号(タケダ)、日本特許出願第2002161471号(タケダ)、日本特許第3,780,916号(タケダ)、日本特許出願第2002115178号(タケダ)、日本特許出願第2003013359号(ホリグチ)、米国特許第6,969,484号(ホリグチ)、米国特許第6,454,986号(エイツマン(Eitzman))、日本特許出願第2004060110号(マスモリ)、日本特許出願第2005131485号(コダマ)、及び日本特許出願第2005131484号(コダマ)に記載されている流体ウエッティング及びディウェッティングプロセスを使用して、エレクトレット電荷を付与するための、米国特許第5,496,507号(アンガジイヴァンド(Angadjivand))に記載された方法、並びにその他の各種派生的方法が包含されると理解されている。
【0040】
実用においては、エレクトレットフィルタウェブが帯電される時間と、それらが使用される場合との間には、かなりの時間の経過があり得る。この時間は、出荷、保管等のために必要な時間を包含し、種々の温度条件を伴い得る。ウェブに付与された電荷が維持されることが望ましい。
【0041】
これらの考慮をモデル化するために、種々の濾過試験及び加速エージング試験手順が開発されてきた。これらの試験は、ジオクチルフタレート(DOP)などの標準的忌避エアゾールを使用したフィルタウェブのエアゾール浸透の測定を含み、これは通常、フィルタウェブを抜けるエアゾール浸透(%Pen)及びフィルタウェブを横断する圧力低下(ΔP)として表現される。これら2つの測定値から、品質係数(QF)として知られている量を、次式によって計算してよい。
QF=−ln(%Pen/100)/ΔP
【0042】
式中、Inは自然対数を表す。QF値が大きい場合、濾過性能がより高いことを示し、QF値が小さい場合には、濾過性能の低下と完全な相関関係があることを示す。他の環境に曝露されていない生成したままの(as generated)ウェブの品質係数は通常、初期品質係数「Q」と表される。これらの値の測定についての詳細は、実施例セクションにて示す。
【0043】
濾過性能の安定性を決定するために、帯電させたBMFウェブの初期品質係数を、異なった温度での異なった期間での保存後に、その品質係数と比較することによって、加速エージングを試験することができる。
【0044】
ある試験では、ウェブは72時間、71℃にて空気中で保管される。この条件でのエージング後の本品質係数は通常、「Q」で表される。性能保持力は、次式により計算される。
%保持力(Q)=Q(72時間71℃にてエージング後)/Q(初期)×100%
【0045】
より過酷な加速エージング試験においては、ウェブは9時間100℃にて空気中で保存される。この条件でのエージング後の本品質係数は通常、「Q」で表される。性能保持力は、次式により計算される。
%保持力(Q)=Q(9時間100℃にてエージング後)/Q(初期)×100%
【0046】
典型的には、本開示の濾材は、毎秒6.9cmの面速度にて0.3以上の測定QF値を有する。幾つかの実施形態では、性能保持力(Q)は90%以上である。その他の実施形態では、性能保持力(Q)は91%、93%、95%以上、あるいは100%である。幾つかの実施形態では、性能保持力(Q)は90%以上である。その他の実施形態では、性能保持力(Q)は91%、93%、95%以上、あるいは100%である。
【実施例】
【0047】
これらの実施例は、単に例示のためのものに過ぎず、添付の請求項の範囲を限定することを意図するものではない。実施例及び明細書の他の箇所における全ての部、パーセント、比等は、他に記載がない限りにおいて、重量当たりである。使用した溶媒類及びその他の試薬類は、特に記載のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のシグマ−アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)より入手した。
【表1】

【0048】
試験方法
濾過試験
サンプルについて%DOPエアゾール浸透(%Pen)及び圧力降下(ΔP)の検査をし、品質係数(QF)を計算した。不織布マイクロファイバーウェブの濾過性能(%PEN及びQF)は、自動フィルタ試験機AFT型式8127(TSI社(ミネソタ州、セントポール)から入手可能)を使用し、忌避エアゾールとしてのジオクチルフタレート(DOP)及びフィルタを横切る圧力降下(ΔP(水柱mm))を測定するMKS圧力変換器を使用して評価した。DOPエアゾールは、100mg/mの上流側濃度を有する、名目上、単分散の0.3マイクロメートル質量中央径である。エアゾールは、エアゾールイオン化装置を停止させ、濾材のサンプルを通して、42.5リットル/分の較正流量(6.9cm/秒の面速度)にて押し出した。総試験時間は、23秒であった(立ち上がり時間15秒、サンプル時間4秒、及びパージ時間4秒)。DOPエアゾールの濃度は、濾材の上流側と下流側の両方にて、較正した光度計を使用して、光散乱により測定した。DOP%Penは、次のように定義される。%Pen=100×(DOP下流側濃度/DOP上流側濃度)各材料について、6個の別個の測定をBMFウェブ上の異なった箇所で行い、結果を平均した。
【0049】
次式によりQFを計算するために、%Pen及びΔPを使用した。
QF=−ln(%Pen/100)/ΔP
【0050】
式中、Inは自然対数を表す。QF値が大きい場合、濾過性能がより高いことを示し、QF値が小さい場合には、濾過性能の低下と完全な相関関係があることを示す。他の環境に曝露されていない生成したままの(as generated)ウェブの品質係数は通常、初期品質係数「Q」と表される。
【0051】
加速エージング性能
濾過性能の安定性を決定するために、帯電させたBMFウェブの初期品質係数を、異なった温度での異なった期間での保存後に、その品質係数と比較することによって、加速エージングを試験した。
【0052】
ある試験では、ウェブは72時間、71℃にて空気中で保管される。この条件でのエージング後の本品質係数は通常、「Q」で表される。性能保持力は、次式により計算される。
%保持力(Q)=Q(72時間71℃にてエージング後)/Q(初期)×100%
【0053】
より過酷な加速エージング試験においては、ウェブは9時間100℃にて空気中で保存される。この条件でのエージング後の本品質係数は通常、「Q」で表される。性能保持力は、次式により計算される。
%保持力(Q)=Q(9時間100℃にてエージング後)/Q(初期)×100%
【0054】
合成例
合成例1:電荷添加剤(charge additive)3の調製
【化5】

【0055】
窒素雰囲気下にて、1−テトラデカノール(96.3グラム、449mmol)、ピリジン(40mL)、及びジクロロメタン(1000mL)の混合物を30℃まで加熱した。4−ニトロベンゾイルクロライド(100グラム、539mmol)を何回かに分けて20分かけて添加した。反応混合物を16時間加熱還流させた。反応混合物を水洗した(500mLで2回)。有機層を減圧下で濃縮して、黄色固体を得た。1000mLのヘキサンを添加し、混合物を加熱還流させた。混合物を冷却し、濾過した。ろ液を濃縮して、黄色固体を得た。黄色固体をエタノールから2回再結晶させて、77.0グラムのテトラデシル4−ニトロベンゾエートを黄色結晶として得た。
【0056】
窒素パージしながら、炭素上10%白金(2.5グラム)を、パール社(Parr)製容器内のテトラデシル4−ニトロベンゾエート(25グラム、69mmol)及びエチルアセテート(250mL)の混合物に添加した。容器を水素圧力(3.3×10Pa(49psi))下に16時間置いた。ジクロロメタンを添加し、反応混合物をセライトろ過助剤の層に通して濾過した。ろ液は、減圧下で、黄褐色固体になるまで濃縮した。固体をエタノールから再結晶させて、15グラムのテトラデシル4−アミノベンゾエートを淡褐色針状結晶として得た。
【0057】
窒素雰囲気下にて、テトラデシル4−アミノベンゾエート(45.6グラム、137mmol)及び塩化シアヌル(8.40グラム、45.6mmol)のキシレン(460mL)中混合物を24時間加熱還流させた。反応混合物を90℃まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し(500mLで2回)、続いて水で洗浄した(500mLで3回)。キシレンを一晩冷却することにより、白色沈殿物が形成された。白色沈殿物を濾過によって分離し、過剰なキシレンで洗浄した。固体は、34:66ジクロロメタン:メタノール(750mL)から2回、キシレン(300mL)から1回再結晶させて、27.6グラムの2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−テトラデシル−オキシ)−1,3,5−トリアジンを白色固体として得た。
【0058】
組成分析:C66102(%C,73.70;%H,9.56;%N,7.81)について計算した。結果は、%C,73.44;%H,9.37;%N,7.62であった。
【0059】
合成例2:電荷添加剤(charge additive)4の調製
【化6】

【0060】
窒素雰囲気下にて、1−オクタデカノール(36グラム、210mmol)、ピリジン(20mL)、及びジクロロメタン(500mL)の混合物を加熱還流させた。アルコールを溶解し、溶液を5℃まで冷却させた。4−ニトロベンゾイルクロライド(39.0グラム、210mmol)を何回かに分けて20分かけて添加した。反応混合物を16時間加熱還流させた。反応混合物は、250mLの水で洗浄した。水層は、250mLのジクロロメタンで洗浄した。有機層を混ぜ合わせ、淡褐色固体になるまで減圧下で濃縮した。500mLのヘキサンを添加し、加熱還流させた。溶液を室温まで冷却させて白色沈殿物を形成した。白色沈殿物を濾し取り、淡褐色固体になるまでろ液を濃縮した。固体をエタノール(500mL)から再結晶させて、46グラムのオクタデシル4−ニトロベンゾエートを白色固体として得た。
【0061】
窒素パージしながら、炭素上10%白金(2.0グラム)を、パール社(Parr)製容器内のオクタデシル4−ニトロベンゾエート(23グラム、55mmol)及びエチルアセテート(230mL)の混合物に添加した。容器を水素圧力(3.3×10Pa(49psi))下に16時間置いた。クロロホルムを添加し、反応混合物をセライトろ過助剤の層に通して濾過した。ろ液は、減圧下で、淡褐色固体になるまで濃縮した。固体をエタノールから再結晶させて、18グラムのオクタデシル4−アミノベンゾエートを白色固体として得た。
【0062】
窒素雰囲気下にて、オクタデシル4−アミノベンゾエート(40.1グラム、103mmol)及び塩化シアヌル(6.30グラム、34.2mmol)のキシレン(350mL)中混合物を24時間加熱還流させた。反応混合物を90℃まで冷却し、175mLの重炭酸ナトリウム飽和水溶液にて2時間攪拌した。混合物を一晩冷却することにより、白色沈殿物が形成された。白色沈殿物を濾過によって分離し、過剰なキシレン及び水で洗浄した。固体を90:10クロロホルム:メタノール(500mL)から再結晶させて、38.2グラムの2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−オクタデシル−オキシ)−1,3,5−トリアジンを白色固体として得た。
【0063】
組成分析:C78126(%C,75.32;%H,10.21;%N,6.76)について計算した。結果は、%C,75.27;%H,10.16;%N,6.72であった。
【0064】
合成例3:電荷添加剤(charge additive)5の調製
【化7】

【0065】
窒素雰囲気下にて、4−テトラデシルアナリン(analine)(50.0グラム、173mmol)及び塩化シアヌル(10.6グラム、57.6mmol)のキシレン(500mL)中混合物を24時間加熱還流させた。反応混合物を90℃まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し(500mLで2回)、続いて水で洗浄した(500mLで3回)。キシレンを一晩冷却することにより、白色沈殿物が形成された。白色沈殿物を濾過によって分離し、過剰なキシレンで洗浄した。固体は、34:66クロロホルム:メタノール(750mL)から2回、キシレン(300mL)から1回再結晶させて、30.0グラムのN,N’,N”−トリス(4−テトラデシル−フェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンを白色固体として得た。
【0066】
組成分析:C63102(%C,80.20;%H,10.90;%N,8.91)について計算した。結果は、%C,80.16;%H,11.05;%N,8.92であった。
【0067】
合成例4:電荷添加剤(charge additive)6の調製
【化8】

【0068】
窒素雰囲気下にて、4−オクタデシルアナリン(analine)(50グラム、145mmol)及び塩化シアヌル(8.9グラム、48mmol)のキシレン(500mL)中混合物を24時間加熱還流させた。反応混合物を90℃まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し(500mLで2回)、続いて水で洗浄した(500mLで2回)。キシレンを一晩冷却することにより、白色沈殿物が形成された。白色沈殿物を濾過によって分離し、過剰なキシレンで洗浄した。固体は、90:10クロロホルム:メタノール(500mL)から2回、キシレン(500mL)から1回再結晶させて、45グラムのN,N’,N”−トリス(4−オクタデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンを白色固体として得た。
【0069】
組成分析:C75126(%C,81.02;%H,11.42;%N,7.56)について計算した。結果は、%C,81.05;%H,11.38;%N,7.60であった。
【0070】
合成例5:電荷添加剤(charge additive)7の調製
【化9】

【0071】
窒素雰囲気下にて、オクタデシルアミン(389グラム、1.44モル)、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル(1.50リットル)、酢酸ナトリウム(134グラム、1.63モル)、及び塩化シアヌル(88.4グラム、0.479モル)の混合物を30分間攪拌し、次に85℃まで2時間加熱した。反応混合物を155℃まで加熱し、この温度で反応混合物からの酢酸を還流させた。反応混合物を170℃まで16時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却した時点で、2−プロパノール(1.60リットル)を反応混合物に添加した。沈殿物を室温で濾過し、過剰な2−プロパノールで洗浄した。固体を還流水(2.00リットル)中で2時間攪拌し、濾過し、かつ過剰な水で洗浄した。固体を還流2−プロパノール(2.00リットル)中で攪拌し、濾過し、かつ過剰な2−プロパノールで洗浄して、377グラムのN,N’,N”−トリオクタデシル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンを白色固体として得た。
【0072】
熱安定性分析:
各帯電添加剤の熱安定性は、ティー・エイ・インスツルメント社(デラウェア州ニューカッスル)から入手可能な熱重量分析器(TGA)型式2950にて測定した。約5〜10ミリグラムの材料をTGA内に配置し、室温から500℃まで、10℃/分の速度にて、空気雰囲気下で、熱分解による重量損失を測定しながら加熱した。表1は、2%の重量喪失が検出された時点の温度を示す。
【表2】

【0073】
実施例1〜31及び比較実施例C1〜C25
実施例及び比較実施例の各々について、後述の手順が続く。これらの実施例のデータは、表2及び表3にて提示されている。
【0074】
サンプルの調製
工程A−マイクロファイバーウェブの調製:
各サンプルについて、上記帯電添加剤の1つ(添加剤1、2、3又は4のいずれか)を選択し、表2に示す濃度にてポリプロピレンの3種類の等級の1つとドライブレンドし、当該ブレンドをVan A.Wente,“Superfine Thermoplastic Fibers,”Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342〜1346にて記載されているようにして押し出した。押出温度は、約250℃〜300℃の範囲であり、押出成形機はブラベンダー(BRABENDER)円錘二軸スクリュー押出成形機(ブラベンダー・インスツルメンツ社(Brabender Instruments, Inc.)から市販されている)であり、約2.5〜3kg/時(5〜7ポンド/時)の速度で稼働させた。ダイの幅は25.4cm(10インチ)であり、1cm当たり10個の穴(1インチ当たり25個の穴)があった。約50〜60グラム/m2の坪量、約6.5〜9.5マイクロメートルの繊維有効径及び約0.75〜2ミリメートルの厚みを有するメルトブローマイクロファイバー(BMF)ウェブが形成された。
【0075】
同様に、各比較実施例においては、BMFウェブは、対応する実施例ウェブとしての同一等級のポリプロピレンから調製されたが、この際、電荷添加剤(charge additive)を添加しないか、あるいは帯電添加剤5、6、7、又は8の1つを使用するかのいずれかであった。表2は、比較実施例のそれぞれについて、特定ウェブの特性をまとめている。
【0076】
工程B−エレクトレット調製:
上記工程Aで製造した各BMFウェブは、ハイドロチャージング、コロナ帯電、又はコロナ前処理及びハイドロチャージングという3つのエレクトレット帯電法によって帯電させた。表2は、各サンプルに適用される特定の帯電法についてまとめている。
【0077】
帯電法1−ハイドロチャージング:
5マイクロS/cm未満の伝導度を有する高純度水の微細スプレーを、896キロパスカル(130psig)の圧力及び約1.4リットル/分の流量で稼動するノズルから連続的に発生させた。工程Aにて作製した選択されたBMFウェブは、水噴霧を抜け約10cm/秒の速度にて、下方からウェブを通して水を同時に真空引きしながら、多孔質ベルトによって搬送された。各BMFウェブは、ハイドロチャージャーへ2回通し(連続して、各面に対して1回)、次にフィルタ試験に先だって一晩完全に乾燥させた。
【0078】
帯電法2−コロナ帯電:
DCコロナ放電によって、上記工程Aにて作製した選択されたBMFウェブを帯電させた。コロナ帯電は、毎秒約3cmの速度で、放電ソース長1cm当たり約0.01ミリアンペアのコロナ電流を備えたコロナブラシソースの下を接地表面上のウェブを通過させることによって行った。コロナソースは、その上をウェブが搬送される接地表面上約3.5cmにある。コロナソースは、正の直流電圧によって駆動した。
【0079】
帯電法3−コロナ前処理及びハイドロチャージング:
上記工程Aにて作製した選択されたBMFウェブは、帯電法2に記載されているように、DCコロナ放電によって前処理し、次に帯電法1に記載されているようにハイドロチャージングによって帯電させた。
【0080】
濾過試験手順
初期濾過性能:
上記工程Bで作製された各帯電サンプルを2個の1メートル部分へと切断した。1つのセクションを、%DOPエアゾール浸透(%Pen)及び圧力降下(ΔP)についてのその初期状態にて試験し、品質係数(QF)を上記の試験方法に記載するようにして計算した。これらの結果は、下表3にて、初期%Pen、初期ΔP及び初期QFとして示す。
【0081】
加速エージング濾過性能:
濾過性能の安定性を決定するために、加速エージング試験を行って、上記試験方法に記載されている様に%電荷保持力を決定した。工程Bにて作製した各サンプルの他方の1メートル部分は、表3に報告されているように、2つの加速熱エージングレジメンの1つを実施した。
熱エージングレジメン1:3日間71℃で加熱
熱エージングレジメン2:9時間100℃にて加熱
【0082】
熱エージング後、サンプルセクションを、%DOPエアゾール浸透(%Pen)及び圧力降下(ΔP)についてのその初期状態にて試験し、品質係数(QF)を上記の試験方法に記載するようにして計算した。これらの結果は、表3にて、エージング%PEN、エージングΔP及びエージングQFとして示す。最後に、試験方法に記載されているように、初期及びエージングQF値を比較することによって、各サンプルについて%保持力を計算し、表3に示す。
【表3−1】

【表3−2】

【表4−1】

【表4−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、及び
エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料を含む電荷添加剤を含む、エレクトレットウェブ。
【請求項2】
前記ウェブが不織繊維ウェブを含む、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項3】
前記ウェブが不織マイクロファイバーウェブを含む、請求項2に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項4】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が構造(a)を含む、請求項3に記載のエレクトレットウェブであって、
【化1】


式中、Z、Z及びZが各々独立して、−OR又は−NRであり、
式中、各Rが独立して、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基であり、
各Rが独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、若しくはアリール基であり、
各Rが独立して、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基である、請求項3に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項5】
請求項4に記載のエレクトレットウェブであって、各Z及びZが独立して−ORであり、式中、各Rが独立して1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基であり、かつZが−OR又は−NRであり、ここでRが1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基であり、かつRがH又は1〜20個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり、かつRが1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基である、請求項4に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項6】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が、構造(b)〜(e)、
【化2】

又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項7】
前記熱可塑性マイクロファイバーが、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、又はポリエステルを含む、請求項3に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項8】
前記熱可塑性マイクロファイバーが、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、プロピレン及び4−メチル−1−ペンテンのコポリマー、又はこれらの混合物を含む、請求項3に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項9】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が前記ウェブの0.1〜5.0重量%を構成する、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項10】
前記ウェブが静電荷を含み、当該静電荷がハイドロチャージング、DCコロナ処理又はこれらの組み合わせによって付与される、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項11】
熱可塑性樹脂並びに
エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料を含む電荷添加剤
のブレンドを含む不織マイクロファイバーウェブを含むエレクトレット濾材。
【請求項12】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が構造(a)を含む、請求項11に記載のエレクトレット濾材であって、
【化3】

式中、Z、Z及びZが各々独立して、−OR又は−NRであり、
式中、各Rが独立して、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基であり、
各Rが独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、若しくはアリール基であり、
各Rが独立して、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基である、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項13】
請求項11に記載のエレクトレットウェブであって、式中、各Z及びZが独立して−ORであり、式中、各Rが独立して1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基であり、かつZが−ORであり、ここでRが1〜20個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基又は−NRであり、式中、RはH又は1〜20個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり、かつRが1〜20個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基である、請求項11に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項14】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が構造(b)〜(e)
【化4】

又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項15】
前記熱可塑性マイクロファイバーが、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、又はポリエステルを含む、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項16】
前記熱可塑性マイクロファイバーが、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、プロピレン及び4−メチル−1−ペンテンのコポリマー、又はこれらの混合物を含む、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項17】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が前記ウェブの0.1〜5.0重量%を構成する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項18】
前記ウェブが電荷を含み、当該電荷がハイドロチャージング、DCコロナ処理又はこれらの組み合わせによって付与される、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項19】
前記ウェブが、毎秒6.9cmの面速度にて、0.3以上のQFが測定されるような濾過性能を示すのに十分な静電荷を有する、請求項18に記載のエレクトレット濾材。
【請求項20】
前記ウェブが、72時間71℃でのエージング後にQFを測定した場合に、少なくとも91%の濾過性能を保持する、請求項19に記載のエレクトレット濾材。
【請求項21】
前記ウェブが、9時間100℃でのエージング後にQFを測定した場合に、少なくとも91%の濾過性能を保持する、請求項19に記載のエレクトレット濾材。
【請求項22】
前記濾材が、人工呼吸器フィルタ、室内換気システムフィルタ、車両換気システムフィルタ、空調装置フィルタ、炉フィルタ、室内空気清浄機フィルタ、真空掃除機フィルタ、又はコンピュータディスクドライブフィルタを構成する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項23】
熱可塑性材料を提供する工程、
エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料を含むホットメルト加工性電荷添加剤を提供する工程、
熱可塑性材料及び電荷添加剤をホットメルト混合する工程、
混合した熱可塑性材料及び電荷添加剤をメルトブローしてマイクロファイバーウェブを形成する工程、並びに
前記ウェブを帯電させる工程、を包含する、エレクトレットウェブの製造方法。
【請求項24】
前記エステル置換及び/又はアミド置換トリアニリノトリアジン材料が構造(a)で表される、請求項23に記載の方法であって、
【化5】

式中、Z、Z及びZが各々独立して、−OR又は−NRであり、
式中、各Rが独立して、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基であり、
各Rが独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、若しくはアリール基であり、
各Rが独立して、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換アルキル基、ヘテロアルキル基、又はアリール基である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記熱可塑性材料が、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、プロピレン及び4−メチル−1−ペンテンのコポリマー、並びにこれらの混合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ホットメルト加工性電荷添加剤が、形成されるマイクロファイバーウェブの0.1〜5.0重量%を構成する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記帯電させる工程が、DCコロナ放電処理、ハイドロチャージング又はこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2011−506783(P2011−506783A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536988(P2010−536988)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084686
【国際公開番号】WO2009/076064
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】