説明

電荷輸送材料及び有機電界発光素子

【課題】化学的安定性が高く、Tが大きな電荷輸送材料を提供すること。また、該電荷輸送材料を用いた高効率、低駆動電圧で駆動耐久性が高く、更に駆動時の電圧上昇率が小さい有機EL素子を提供すること。
【解決手段】例えば下記化合物のような、電子輸送部位とホール輸送部位がケイ素原子を介して連結された特定構造を有する電荷輸送材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電荷輸送材料及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、「発光素子」、「EL素子」、又は「素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから活発に研究開発が行われている。有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層を有し、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。燐光発光材料としてイリジウム錯体や白金錯体などを用いた燐光発光素子に関する発明が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、高効率と高耐久性を両立する素子の開発には至っていない。
【0004】
燐光発光素子で高効率と高耐久性を両立できていない原因の一つに、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性が高く、最低励起三重項エネルギー(「Tエネルギー」、「T」ともいう)の大きな電荷輸送材料が限られていることが挙げられる。電荷輸送材料のTが燐光発光材料のTより小さいと発光を消光してしまうため電荷輸送材料には燐光発光材料より大きなTが求められる。また、電荷輸送材料のTが燐光発光材料のTより大きい場合でも、両者のT差が小さい場合には一部、燐光発光材料から電荷輸送材料への逆エネルギー移動が起こるため、効率低下や耐久性低下の原因となる。従って、Tが十分に大きく、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性の高い電荷輸送材料が求められている。
【0005】
燐光材料と共に発光層を形成する材料として、下記に示すようなフェニルカルバゾリル基に窒素含有へテロ環基が結合した化合物からなる材料を用いた有機電界発光素子に関する発明が開示されている(例えば特許文献3参照)。これらの材料はTが大きく、ホール及び電子の注入・輸送性やホール及び電子に対する安定性も比較的高いが、素子の駆動電圧・耐久性は不十分でありさらなる改善が求められていた。
【0006】
【化1】

【0007】
また、特許文献4には、下記に示すようなフェニルカルバゾリル基と、2−フェニルピリジンがケイ素原子で連結した構造からなる材料を用いた有機EL素子が記載されている。
【0008】
【化2】

【0009】
しかし上記材料は、本発明者の検討によれば、化学的安定性が低く、駆動耐久性が不十分であり、改善が求められていた。
また、特許文献5には、下記に示すようなフェニルカルバゾリル基がケイ素原子で連結した構造からなる材料を用いた有機EL素子が記載されている。
【0010】
【化3】

【0011】
しかし上記材料は、電子の注入・輸送性や電子に対する安定性が低いため、素子に用いたときに駆動電圧が上昇してしまう、駆動耐久性が不十分であるなどの問題点がある。
【0012】
また、駆動時に電圧の変化(多くの場合電圧上昇)が大きいものは、素子中での電荷バランスが崩れ、発光色度ずれの原因となったり、回路設計上使用が困難であるなどの問題点があった。したがって、駆動時の電圧変化が小さい素子が求められている。
【0013】
また、有機電界発光素子の製造において、一対の電極間に設けられる有機層である薄膜を形成する方法としては、蒸着法として真空蒸着、湿式法としてスピンコーティング法、印刷法、インクジェット法等が行われている。
中でも湿式法(ウェットプロセス)を用いると、蒸着等のドライプロセスでは成膜が困難な高分子の有機化合物も使用可能となり、フレキシブルなディスプレイ等に用いる場合は耐屈曲性や膜強度等の耐久性の点で適しており、特に大面積化した場合に好ましい。
しかし湿式法により得られた有機電界発光素子には発光効率や素子耐久性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6303238号明細書
【特許文献2】国際公開第00/57676号
【特許文献3】国際公開第03/080760号
【特許文献4】特開2009−152571号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0064238号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、化学的安定性が高く、Tが大きな電荷輸送材料を提供することである。また、該電荷輸送材料を用いた高効率、低駆動電圧で駆動耐久性が高く、更に駆動時の電圧上昇率が小さい有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は以下の通りである。
1.
下記一般式(1)で表される電荷輸送材料。
【0017】
【化4】

【0018】
{(一般式(1)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。GB1は下記一般式(B1−1)又は下記一般式(B2−1)で表される構造を表す。)
【0019】
【化5】

【0020】
(一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−1)中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点であり、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(1)において、下記一般式(A1)で表される部分構造と下記一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0021】
【化6】

【0022】
(一般式(A1)及び一般式(B1)中、R〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1は、各々一般式(1)におけるR〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1と同義である。)}
2.
前記一般式(1)が下記一般式(2)で表される上記1に記載の電荷輸送材料。
【0023】
【化7】

【0024】
{(一般式(2)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、LA2及びLB2は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。R及びRは各々独立に置換基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。GB2は下記一般式(B1−2)又は下記一般式(B2−2)で表される構造を表す。)
【0025】
【化8】

【0026】
(一般式(B1−2)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(2)におけるLB2との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−2)中、*は一般式(2)におけるLB2との結合点であり、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(2)において、下記一般式(A2)で表される部分構造と下記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0027】
【化9】

【0028】
(一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義である。)}
3.
前記一般式(2)が下記一般式(3)で表される上記2に記載の電荷輸送材料。
【0029】
【化10】

【0030】
{(一般式(3)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。R及びRは各々独立に置換基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。GB2は前記一般式(2)におけるGB2と同義である。ただし、一般式(3)において、下記一般式(A3)で表される部分構造と下記一般式(B3)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0031】
【化11】

【0032】
(一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。)}
4.
膜状態での最低励起三重項(T)エネルギーが2.8eV以上3.2eV以下である、上記1〜3のいずれかに記載の電荷輸送材料。
5.
分子量が600以上1200以下である、上記1〜4のいずれかに記載の電荷輸送材料。
6.
上記1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を含む膜。
7.
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に上記1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を含む有機電界発光素子。
8.
前記発光層に燐光性発光材料を含む、上記7に記載の有機電界発光素子。
9.
前記燐光性発光材料の極大発光波長が400nm以上470nm以下である上記8に記載の有機電界発光素子。
10.
上記1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を発光層又は発光層に隣接する層に含む上記7〜9のいずれかに記載の有機電界発光素子。
11.
上記1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を含む有機層がウェットプロセスで形成された層である、上記7〜10のいずれかに記載の有機電界発光素子。
12.
下記一般式(1)で表される化合物。
【0033】
【化12】

【0034】
{(一般式(1)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。GB1は下記一般式(B1−1)又は下記一般式(B2−1)で表される構造を表す。)
【0035】
【化13】

【0036】
(一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−1)中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点であり、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(1)において、下記一般式(A1)で表される部分構造と下記一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0037】
【化14】

【0038】
(一般式(A1)及び一般式(B1)中、R〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1は、各々一般式(1)におけるR〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1と同義である。)}
13.
下記一般式(2’)で表される化合物。
【0039】
【化15】

【0040】
{(一般式(2’)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、LA2及びLB2は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。R及びRは各々独立に置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。GB2は下記一般式(B1−2)又は下記一般式(B2−2)で表される構造を表す。ただし、GB2が下記一般式(B1−2)で表される構造である場合は、−LB2−GB2はケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合する。)
【0041】
【化16】

【0042】
(一般式(B1−2)中、Xは各々独立に窒素原子又は炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(2’)におけるLB2との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−2)中、*は一般式(2’)におけるLB2との結合点であり、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(2’)において、下記一般式(A2)で表される部分構造と下記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0043】
【化17】

【0044】
(一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義である。)}
14.
前記一般式(2’)が下記一般式(3’)で表される上記13に記載の化合物。
【0045】
【化18】

【0046】
{(一般式(3’)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。GB2が前記一般式(B1−2)で表される構造である場合は、−GB2はケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合する。ただし、一般式(3’)において、下記一般式(A3)で表される部分構造と下記一般式(B3)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0047】
【化19】

【0048】
(一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。)}
15.
上記7〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
16.
上記7〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
17.
上記7〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、化学的安定性が高く、Tが大きな電荷輸送材料が提供される。また本発明によれば、該電荷輸送材料を用いた高効率、低駆動電圧で、駆動耐久性が高く、更に駆動時の電圧上昇率が小さい有機EL素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔一般式(1)で表される電荷輸送材料〕
以下、一般式(1)で表される電荷輸送材料について説明する。
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、化学的安定性やキャリア輸送性が高くTが大きいため、特に有機EL素子に好適である。
【0052】
【化20】

【0053】
{(一般式(1)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。GB1は下記一般式(B1−1)又は下記一般式(B2−1)で表される構造を表す。)
【0054】
【化21】

【0055】
(一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−1)中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点であり、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。
E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(1)において、下記一般式(A1)で表される部分構造と下記一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0056】
【化22】

【0057】
(一般式(A1)及び一般式(B1)中、R〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1は、各々一般式(1)におけるR〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1と同義である。)}
【0058】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、前記一般式(A1)で表される部分構造と前記一般式(B1)で表される部分構造とをケイ素原子で連結した構造を有する。一般式(A1)で表される部分構造と一般式(B1)で表される部分構造とは互いに異なる構造であり、一般式(A1)で表される部分構造はホール輸送部位として機能することができ、一般式(B1)で表される部分構造は電子輸送部位として機能することができる。
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、分子内に電子輸送部位とホール輸送部位を有することで両キャリア(電子/ホール)輸送性を示し、酸化(ラジカルカチオン状態)に対しても還元(ラジカルアニオン状態)に対しても化学的に安定な材料となる。
また、電子輸送部位とホール輸送部位とをケイ素原子を介して連結することで両者を共役させずに連結させることができ、高いTエネルギーを保ちつつ、分子内での電子輸送部位とホール輸送部位の機能がより明確に分担され、素子に用いた場合に良好な特性(耐久性及び発光効率等)を示す。
【0059】
一般式(1)におけるR〜R、LA1、LB1、GB1の選択により膜中での分子集合状態やイオン化ポテンシャルエネルギー(Ip)、Tエネルギー等を制御できる。用途によっても異なるが,化合物の化学的安定性やホール輸送性の観点からIpは、好ましくは5.0〜7.0であり、より好ましくは5.3〜6.5であり、特に好ましくは5.5〜6.2である。また、膜状態でのTエネルギーは好ましくは2.5〜4.0eVであり、より好ましくは2.7〜3.7eVであり、特に好ましくは2.8〜3.2eVである。
なお、Ipは、材料の薄膜の大気下光電子分光法により測定(例えば理研計器AC−2を用いて測定)することができる。また、Ipは材料の溶液状態での酸化還元電位と相関することが知られており(例えばMacromol.1995,28,1180−1196.など)、CV(サイクリック・ボルタンメトリー)測定における酸化電位から見積もることもできる。Tエネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めることができる。
【0060】
一般式(1)中のR〜Rで表される置換基としては下記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
【0061】
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
本発明において、上記アルキル基等の置換基の「炭素数」とは、アルキル基等の置換基が他の置換基によって置換されてもよい場合も含み、当該他の置換基の炭素数も包含する意味で用いる。
【0062】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、化学的安定性、キャリア輸送能、Tエネルギーの観点から、R〜Rとしては、好ましくは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜12のアミノ基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数2〜10のヘテロ環オキシ基、炭素数1〜18のアシル基、炭素数1〜18のアシルアミノ基、炭素数1〜18のスルホニルアミノ基、炭素数2〜18のスルファモイル基、炭素数2〜18のカルバモイル基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数2〜10のヘテロ環チオ基、炭素数1〜18のスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数2〜10のヘテロ環基、炭素数3〜18のシリル基、炭素数3〜18のシリルオキシ基、炭素数1〜18のホスホリル基であり、より好ましくは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜12のアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数2〜10のヘテロ環基、炭素数3〜18のシリル基、炭素数1〜18のホスホリル基であり、特に好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数3〜18のシリル基である。
及びRは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリルオキシ基、又はチエニル基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はフェニル基であることが特に好ましい。またR及びRは互いに結合して環を形成してもよい。
は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、エチル基、アリル基、フェニル基、又はビフェニル基であることが特に好ましい。
は、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基又はビフェニル基であることが特に好ましい。また、Rは複数が互いに結合して環を形成してもよく、ナフタレン環を形成することが好ましい。
一般式(1)において、n1は、キャリア注入及び輸送性の観点から、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0〜1であり、特に好ましくは0である。
また、RとRは互いに結合して環を形成することが好ましい。また、該環は炭素原子及び窒素原子以外の原子を含んでいてもよく、例えば硫黄原子、酸素原子、ケイ素原子などが挙げられる。RとRが互いに結合して形成される環としては、炭素数4〜30の環が好ましく、炭素数4〜20の環がより好ましく、カルバゾリル基を形成することが更に好ましい。
また、R〜Rは、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換基群Aが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、又はシリル基であり、より好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0063】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、化学的安定性、キャリア輸送能、Tエネルギーの観点から、LA1及びLB1として好ましくは、単結合、炭素数1〜18のアルキレン、炭素数6〜24のアリーレン基、炭素数2〜10の2価のヘテロ環基、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基で置換されたアミノ基(−NR−(R:アルキル基又はアリール基))、炭素数2〜30のアルキル基又はアリール基で置換されたシリレン基、ホスホリル基、カルボニル基、スルホニル基、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)より任意に選択した連結基を組み合わせて用いることができる。
より好ましくは単結合、炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数6〜24のアリーレン基より任意に選択した連結基であり、単結合、フェニレン基又はビフェニレン基が更に好ましい。
A1は前記R又はRと結合して環を形成することも好ましい。
A1及びLB1の好ましい具体例を以下に示す。また、以下の構造のうちから選択された複数を組み合わせて得られる構造も好ましい。*は結合部位を表す。
【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
一般式(1)中、GB1は下記一般式(B1−1)又は下記一般式(B2−1)で表される構造を表す。
【0067】
【化25】

【0068】
(一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。一般式(B2−1)中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点であり、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。)
【0069】
一般式(B1)で表される構造は電子欠乏性であり、本発明の電荷輸送材料において電子輸送部位として機能することができる。
【0070】
一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。一般式(B1−1)としては、下記一般式(B1−1−1)〜一般式(B1−1−8)の構造が好ましく、一般式(B1−1−3)、一般式(B−1−5)、一般式(B−1−6)、一般式(B−1−8)のいずれかの構造がより好ましい。
【0071】
【化26】

【0072】
(一般式(B1−1−1)〜一般式(B1−1−8)中、R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。)
【0073】
一般式(B1−1)において、1〜2個のXが窒素原子を表すことが好ましい。一般式(B1−1)としては、一般式(B1−1−2)〜一般式(B1−1−7)が好ましい。
【0074】
一般式(B1−1)及び一般式(B2−1)中、R〜Rが置換基を表す場合、該置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
一般式(B1−1)中のR〜Rは、前記一般式(1)におけるLB1との結合点とならない場合には、R〜Rは各々独立に置換基を表し、Rは水素原子又は置換基を表すが、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。これにより本発明の電荷輸送材料を素子に用いた場合、素子の発光効率及び耐久性が向上する。このような発光効率及び耐久性の向上の理由は明確にはわかっていないが、本発明の電荷輸送材料において、一般式(B1−1)中の窒素原子の隣の炭素原子は反応活性部位であるため、置換基で保護することが化学的安定性の点から好ましいこと、又は水素原子よりもかさ高い置換基のほうが化学的に活性な窒素原子の孤立電子対が立体的に保護される点から好ましいこと、などが考えられる。材料の化学的安定性の観点から、R〜Rが置換基を表す場合は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又はピリジル基がより好ましく、t−ブチル基又はフェニル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、電子求引性基として機能することができる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子が特に好ましい。パーフルオロアルキル基としては炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。Eとしては酸化・還元に対する安定性の観点からシアノ基が特に好ましい。
n2は、キャリア注入及び輸送性の観点から、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3である。
、は好ましくはアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子であり、炭素数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子がより好ましく、メチル基又はフッ素原子が更に好ましい。
n3は、キャリア注入及び輸送性の観点から、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0〜1であり、特に好ましくは0である。
【0075】
B1が一般式(B1−1)を表す場合、一般式(1)としては下記一般式(1−1)〜一般式(1−5)が好ましく、一般式(1−1)、一般式(1−2)、一般式(1−4)のいずれかがより好ましい。下記一般式(1−1)はRがLB1との結合点となる場合であり、下記一般式(1−2)はRがLB1との結合点となる場合であり、下記一般式(1−3)〜(1−5)はRがLB1との結合点となる場合である。
【0076】
【化27】

【0077】
(一般式(1−1)〜(1−5)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。Xは各々独立に窒素原子、又はRが結合した炭素原子を表す。R及びRは各々独立に置換基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−5)において、いずれかのXが窒素原子を表す場合、該窒素原子の隣のXはRが結合した炭素原子を表し、該Rは置換基を表す。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。)
【0078】
B1が一般式(B1−2)を表す場合、一般式(1)としては下記一般式(1−6)が好ましい。
【0079】
【化28】

【0080】
(一般式(1−6)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。)
【0081】
一般式(1)において、LB1がアリーレン基であり、かつGB1が一般式(B1−1)で表される構造である場合は、GB1はLB1のケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合することが好ましい。メタ位又はパラ位に結合することで分子のひずみが小さくなり、素子としての発光効率や耐久性がオルト位に結合した場合よりも向上する。特に、一般式(1)で表される電荷輸送材料を含有する有機層をウェットプロセスで作製した素子において、この効果は顕著である。
【0082】
一般式(1)中、GB1で表される構造の好ましい具体例を以下に示す。下記具体例の構造中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点を表す。
【0083】
【化29】

【0084】
【化30】

【0085】
上記構造中、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれる。
一般式(1)で表される化合物において、一般式(A1)で表される部分構造はホール輸送部位として機能することができる。一般式(A1)で表される部分構造の好ましい範囲は、前記R、R、n1、及びLA1の好ましい範囲に準じる。
【0086】
一般式(A1)で表される部分構造の好ましい具体例を以下に示す。下記具体例の構造中、*は一般式(1)におけるケイ素原子との結合点を表す。
【0087】
【化31】

【0088】
【化32】

【0089】
【化33】

【0090】
ただし、本発明では、一般式(1)において、下記一般式(A1)で表される部分構造と下記一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。一般式(1)において、一般式(A1)で表される部分構造と一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造である化合物は、有機EL素子に用いた場合に、本発明の化合物を用いた場合よりも発光効率及び耐久性に劣る。
【0091】
【化34】

【0092】
一般式(A1)及び一般式(B1)中、R〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1は、各々一般式(1)におけるR〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0093】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、化学的安定性やキャリア輸送性の観点から、好ましくは下記一般式(2)で表される電荷輸送材料である。
【0094】
〔一般式(2)で表される電荷輸送材料〕
以下、一般式(2)で表される電荷輸送材料について説明する。
【0095】
【化35】

【0096】
{(一般式(2)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、LA2及びLB2は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。R及びRは一般式(1)におけるR及びRと同義である。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。GB2は下記一般式(B1−2)又は下記一般式(B2−2)で表される構造を表す。)
【0097】
【化36】

【0098】
(一般式(B1−2)中、X及びR〜Rは一般式(B1−1)におけるX及びR〜Rと同義である。一般式(B2−2)中、*は一般式(2)におけるLB2との結合点であり、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(2)において、下記一般式(A2)で表される部分構造と下記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0099】
【化37】

【0100】
(一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義である。)}
【0101】
一般式(2)中、R及びRは一般式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0102】
〜R12としては前記置換基群Aが挙げられる。R及びR10としてはRと同様のものが好ましい。R11及びR12としてはRと同様のものが好ましい。
n4〜n7は、キャリア注入及び輸送性の観点から、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0〜1であり、特に好ましくは0である。
A2及びLB2としては、前記LA1及びLB1と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−S−、−O−、及びこれらを組み合わせて得られる2価の連結基が好ましい。X’は、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基、−S−、−O−がより好ましく、単結合、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、−S−が更に好ましく、単結合が特に好ましい。
【0103】
一般式(2)中、GB2は一般式(B1−2)又は一般式(B2−2)で表される構造を表す。
一般式(B1−2)中、X及びR〜Rは一般式(B1−1)におけるX及びR〜Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(B2−2)中、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。
13の好ましい範囲は前記Rと同様である。n8及びn9の好ましい範囲は、それぞれ前記n2及びn3と同様である。
【0104】
ただし、一般式(2)において、前記一般式(A2)で表される部分構造と前記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。
一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0105】
一般式(2)で表される化合物は、化学的安定性やキャリア輸送能の観点から、より好ましくは下記一般式(3)で表される化合物である。
【0106】
〔一般式(3)で表される電荷輸送材料〕
以下、一般式(3)で表される電荷輸送材料について説明する。
【0107】
【化38】

【0108】
{(一般式(3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。ただし、一般式(3)において、下記一般式(A3)で表される部分構造と下記一般式(B3)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0109】
【化39】

【0110】
(一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。)}
【0111】
一般式(3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は前記一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0112】
エネルギーは一般に分子中でπ共役系が広がると小さくなる。また、分子のTエネルギーは分子中で最もTエネルギーが小さくなる部分構造で決まるため、分子中に一箇所でもπ共役系が広い部分があると,その部分でTエネルギーが決まる。したがって分子中にビアリール構造や芳香環が縮環した構造を分子内に有することは一般にTが小さくなるため、発光波長の短波長な(極大発光波長が500nm以下の)燐光材料と組み合わせて用いる場合は好ましくない。
また、本発明の電荷輸送材料は、電子輸送部位とホール輸送部位とがケイ素原子を介して連結しているため、ケイ素原子でπ共役系が切断されるため、大きなTを有する。
【0113】
本発明の電荷輸送材料の分子量としては、好ましくは600〜1200であり、より好ましくは600〜1100であり、特に好ましくは600〜1000である。分子量がこの範囲であれば膜状態の安定性が優れ、溶媒への溶解性や昇華温度などの点から高純度化し易い。膜状態の安定性の指標としてガラス転移温度Tgがあり、Tgは、好ましくは60〜400℃であり、より好ましくは100〜400℃であり、特に好ましくは130〜400℃である。
ここで、Tgは示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA)などの熱測定や、X線回折(XRD)、偏光顕微鏡観察などにより確認できる。また、本発明の電荷輸送材料の純度が低いと電荷輸送のトラップとして働くため、本発明の電荷輸送材料の純度は高いほど好ましい。純度は例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定でき、254nmの光吸収強度で検出したときの面積比は、好ましくは95.0%以上であり、より好ましくは97.0%以上であり、特に好ましくは99.0%以上であり、最も好ましくは99.5%以上である。本発明においては、素子の耐久性の観点では本発明の電荷輸送材料以外にハロゲン化合物を含まないほうが好ましく、HPLCで本発明の電荷輸送材料以外にハロゲン化合物が検出されないことが好ましい。
【0114】
WO2008/117889に記載のカルバゾール系材料で知られているように、本発明の電荷輸送材料の水素原子の一部又は全部を重水素原子で置換した材料も好ましく電荷輸送材料として用いることができる。
【0115】
以下に、本発明の電荷輸送材料の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
【化40】

【0117】
【化41】

【0118】
【化42】

【0119】
【化43】

【0120】
本発明の電荷輸送材料は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。以下、合成法を説明する。
文献Asian J.Chem.,2009,21,2516.等の記載を参考に各種置換基を有するカルバゾール誘導体が合成できる。
文献J.Chem.Soc.,1931,2568.,J.Am.Chem.Soc.,1936,58,1278.,J.Am.Chem.Soc.,1938,60,1458.,J.Chem.Soc.C,1971,2537.,Angew.Chem.Int.Ed.,1991,30,1646.,J.Mater.Chem.,2007,17,1209.,WO2007/110228等の記載を参考に各種置換基を有するアクリダン誘導体が合成できる。
文献Chem.Rev.,2005,105,2873.等の記載を参考に各種置換基を有するインドール誘導体が合成できる。
文献Angew.Chem.Int.Ed.,2003,42,5400.等の記載を参考に各種アリールアミン誘導体を合成することができる。
文献WO2003/080760、WO2005/085387、WO2005/022962等の記載を参考に窒素含有芳香族ヘテロ環化合物を合成することができる。
文献US2005214572、特開2009−152571等の記載を参考に、ケイ素化合物を合成することができる。
上記文献に記載の反応を組み合わせることで本発明の電荷輸送材料を合成することができる。
【0121】
本発明の電荷輸送材料は化学的安定性とキャリア輸送能に優れ、各種有機電子デバイスに好ましく用いることができる。用いる電子デバイスとしてはいかなるものでもよく、例えば、有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機光電変換素子、ガスセンサ、有機整流素子,有機インバータ、情報記録素子が挙げられる。有機光電変換素子は光センサ用途(固体撮像素子)、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。好ましくは、有機電界発光素子、有機光電変換素子、有機トランジスタであり、更に好ましくは有機電界発光素子、有機光電変換素子であり、特に好ましくは有機電界発光素子である。
【0122】
本発明は前記一般式(1)で表される電荷輸送材料を含む膜にも関する。本発明の膜は有機電界発光素子における有機層として用いることができる。
また、本発明は下記一般式(2’)で表される化合物にも関する。
【0123】
【化44】

【0124】
{(一般式(2’)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、LA2及びLB2は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。R及びRは各々独立に置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。GB2は下記一般式(B1−2)又は下記一般式(B2−2)で表される構造を表す。ただし、GB2が下記一般式(B1−2)で表される構造である場合は、−LB2−GB2はケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合する。)
【0125】
【化45】

【0126】
(一般式(B1−2)中、Xは各々独立に窒素原子又は炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(2’)におけるLB2との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。一般式(B2−2)中、*は一般式(2’)におけるLB2との結合点であり、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(2’)において、下記一般式(A2)で表される部分構造と下記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0127】
【化46】

【0128】
(一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義である。)}
【0129】
一般式(2’)で表される化合物の好ましい範囲及び具体例は、前記一般式(2)の好ましい範囲及び具体例として前記したものと同様である。本発明の化合物は、例えば電荷輸送材料として用いることができる。
前記一般式(2’)は、下記一般式(3’)で表されることが好ましい。
【0130】
【化47】

【0131】
{(一般式(3’)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。GB2が前記一般式(B1−2)で表される構造である場合は、−GB2はケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合する。ただし、一般式(3’)において、下記一般式(A3)で表される部分構造と下記一般式(B3)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【0132】
【化48】

【0133】
(一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。)}
【0134】
一般式(3’)で表される化合物の好ましい範囲及び具体例は、前記一般式(3)の好ましい範囲及び具体例として前記したものと同様である。
【0135】
次に有機電界発光素子について説明する。
【0136】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に前記一般式(1)で表される電荷輸送材料を含む。
本発明の有機電界発光素子において、一般式(1)で表される電荷輸送材料は発光層又は発光層に隣接する層に含有されることが好ましい。
本発明の有機電界発光素子は、発光層と陰極との間に少なくとも一層の有機層を有し、一般式(1)で表される電荷輸送材料を該発光層と陰極との間の有機層に含有することが好ましい。
【0137】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であるが、更に複数の有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板12上において、陽極4と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極4と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0138】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0139】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0140】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0141】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0142】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0143】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0144】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0145】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、スピンコート法等の湿式製膜法(ウェットプロセス)のいずれによっても好適に形成することができる。
本発明において、一般式(1)で表される電荷輸送材料はトルエンなどの芳香族系有機溶剤、又はクロロホルムなどのハロゲン系有機溶剤に溶解しやすく、結晶性が低いため、ウェットプロセスで有機層を形成することが製造コスト低減の観点から好ましい。また、一般式(1)で表される電荷輸送材料を含有する有機層をウェットプロセスで形成すると耐久性などの素子の性能も向上するため好ましい。
【0146】
(発光層)
発光層は、少なくとも1種の発光材料を含有する。
<発光材料>
本発明における発光材料は、励起一重項からの発光(蛍光)を利用するものでも励起三重項からの発光(燐光)を利用するものでもよいが、発光効率の観点から、燐光を利用するものの方が好ましい。
本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光材料を含有することができる。発光材料の少なくとも一種が燐光発光材料であることが好ましい。
前記発光材料の少なくとも一種が白金錯体又はイリジウム錯体であることが好ましい。
蛍光発光材料、燐光発光材料については、例えば、特開2008−270736の段落番号〔0100〕〜〔0164〕、特開2007−266458の段落番号〔0088〕〜〔0090〕に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0147】
本発明において、燐光性発光材料としては、短波長の(すなわちTの大きい)ものほど本発明の電荷輸送材料と組み合わせたときの効果が顕著であり、燐光性発光材料の極大発光波長が400nm以上470nm以下であることが好ましく、極大発光波長が400nm以上465nm以下であることがより好ましく、400nm以上460nm以下であることが更に好ましい。
また、燐光性発光材料としては、燐光性白金錯体又は燐光性イリジウム錯体が好ましい。
【0148】
燐光性白金錯体について説明する。
本発明において、白金錯体として好ましくは、下記一般式(C−1)で表される化合物である。
【0149】
【化49】

【0150】
(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【0151】
一般式(C−1)について説明する。Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであっても良い。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
、Q、Q及びQで表される基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0152】
、Q、Q及びQで表される基として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0153】
、L及びLは、単結合又は二価の連結基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基である。
【0154】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0155】
【化50】

【0156】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z21、Z22はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。)
【0157】
一般式(C−2)について説明する。L21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0158】
21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A21、A22の内、少なくとも一方は炭素原子であることが好ましく、A21、A22が共に炭素原子であることが、錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点から好ましい。
【0159】
21、Z22は、それぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、Z21、Z22で表される環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、更に好ましくはピリジン環、ピラゾール環であり、特に好ましくはピリジン環である。
【0160】
前記Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては下記置換基群Bが適用できる。
【0161】
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル、ペンタフルオロフェニルなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)
【0162】
炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ポリフルオロアルキル基などが選択される。
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0163】
23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0164】
前記Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素基、シアノ基、ポリフルオロアルキル基などが選択される。窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0165】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0166】
【化51】

【0167】
(式中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0168】
一般式(C−3)について説明する。L31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素基である。A301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましく水素原子である。A307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308がN原子であることが好ましい。
【0169】
上記の如くA307〜A310を選択した場合、2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなる点有利である。
【0170】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。A311、A312及びA313のうち少なくとも一つはNであることが好ましく、特にA311がNであることが好ましい。
【0171】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0172】
【化52】

【0173】
(一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R24又は窒素原子を表す。R24は水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0174】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。A401〜A406及びL41は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0175】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、窒素原子の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408、A412が窒素原子であることが好ましく、A408とA412が共に窒素原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ポリフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、フェニル基、ポリフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ポリフルオロアルキル基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フェニル基、フッ素基である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素基であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。
【0176】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0177】
【化53】

【0178】
(一般式(C−5)中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0179】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0180】
507、A508及びA509とA510、A511及びA512は、それぞれ独立に、一般式(C−3)におけるA311、A312及びA313と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0181】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0182】
【化54】

【0183】
(式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。A61はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z61、Z62はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0184】
一般式(C−6)について説明する。L61は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0185】
61は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA61は炭素原子であることが好ましい。
【0186】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0187】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0188】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0189】
一般式(C−6)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0190】
【化55】

【0191】
(式中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0192】
一般式(C−7)について説明する。L71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−3)におけるA301〜A310と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0193】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の[0143]〜[0152]、[0157]〜[0158]、[0162]〜[0168]に記載の化合物、特開2006−256999号公報の[0065]〜[0083]に記載の化合物、特開2006−93542号公報の[0065]〜[0090]に記載の化合物、特開2007−73891号公報の[0063]〜[0071]に記載の化合物、特開2007−324309号公報の[0079]〜[0083]に記載の化合物、特開2007−96255号公報の[0055]〜[0071]に記載の化合物、特開2006−313796号公報の[0043]〜[0046]が挙げられ、その他以下に例示する白金錯体が挙げられる。
【0194】
【化56】

【0195】
【化57】

【0196】
【化58】

【0197】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0198】
本発明において、一般式(C−1)で表される化合物を発光層に含有させる場合、その含有量は発光層中1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
【0199】
燐光性イリジウム錯体について説明する。
本発明において、イリジウム錯体として、好ましくは以下の一般式(T−1)で表される化合物である。
【0200】
【化59】

【0201】
(一般式(T−1)中、R’はアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
はアリール基又はヘテロアリール基を表し、更に非芳香族基により置換されていてもよい。
環Qは、Irに対して配位される少なくとも1つの窒素原子を有する芳香族複素環又は縮合芳香族複素環を表し、更に非芳香族基により置換されていてもよい。
、R及びRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、−CF、−C2n+1、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
とRは互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
’とRは、−CR−CR−、−CR=CR−、−CR−、−O−、−NR−、−O−CR−、−NR−CR−及びN=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はを表し、更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)、−CN、−NO、−SO、−SOR’、−SOR’、又はSOR’を表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、補助配位子を表す。
mは1〜3の整数。nは0〜2の整数を表す。
m+nは3である。)
【0202】
一般式(T−1)は、金属としてイリジウム(Ir)を有する錯体であり、高い発光量子収率の観点で優れる。
【0203】
’、R〜Rで表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。Raで表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0204】
’で表されるヘテロアルキル基は前記アルキル基の少なくとも1つの炭素がO、NR、又はSに置き換わった基を挙げることができる。
【0205】
’、R、R〜Rで表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0206】
’、R、R〜Rで表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基などが挙げられる。
’で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0207】
’としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0208】
はアリール又ヘテロアリールを表し、前記アリール又はヘテロアリールは1以上の非芳香族基によって置換されてもよい。
における非芳香族基としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、アルキル基、フルオロ基、シアノ基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
としてはフェニル基、p−トリル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0209】
、R及びRとして好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フルオロ基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。
3、4、における置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0210】
環Qが表す芳香族複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、等が挙げられる。好ましくはピリジン環、ピラジン環であり、より好ましくはピリジン環である。
【0211】
環Qが表す縮合芳香族複素環としては、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環等が挙げられる。好ましくはキノリン環、イソキノリン環であり、より好ましくはキノリン環である。
【0212】
環Qにおける非芳香族基としてはアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、アルキル基、フルオロ基、シアノ基がより好ましい。
【0213】
mは1〜3であることが好ましく、2〜3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
nは0〜1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
mが2であってnが1であることがより好ましい。
【0214】
(X−Y)は、補助配位子を示す。これらの配位子は、光活性特性に直接寄与するのではなく、分子の光活性特性を変更することができると考えられているので、「補助」と呼ばれる。光活性及び補助の定義は、非限定的な理論を目的とするものである。例えばIrの場合、二座配位子について、nは0、1又は2でありうる。発光材料において使用される補助配位子を、当業界で公知であるものから選択することができる。補助配位子の非限定的な例は、参照により援用するLamanskyらのPCT出願WO02/15645A1の89〜90頁に記載されている。その他にも、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体などがある。
以下に、補助配位子の例を具体的に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0215】
【化60】

【0216】
上記補助配位子の例において、Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基としては前記置換基群Aが挙げられ、好ましくは、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜18のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0217】
好ましい補助配位子には、アセチルアセトネート(acac)及びピコリネート(pic)、及びこれらの誘導体が含まれる。本発明においては錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点から補助配位子はアセチルアセトネートであることが好ましい。
【0218】
【化61】

【0219】
前記一般式(T−1)で表される化合物の好ましい形態のひとつは下記一般式(T−2)で表される化合物である。
【0220】
【化62】

【0221】
(一般式(T−2)中、R’はアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
’〜R’は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基表し、更に置換基Zを有していてもよい。
’とR’、R’とR’、及びR’とR’はそれぞれ独立に、互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
’とRは、−CR−CR−、−CR=CR−、−CR−、−O−、−NR−、−O−CR−、−NR−CR−及びN=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
はアリール基又はヘテロアリール基を表し、更に非芳香族基により置換されていてもよい。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、−CF、−C2n+1、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
とRは互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)、−CN、−NO、−SO、−SOR’、−SOR’、又はSOR’を表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、補助配位子を表す。
mは1〜3の整数。nは0〜2の整数を表す。
m+nは3である。)
【0222】
一般式(T−2)におけるR’、R〜R、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−1)におけるR’、R〜R、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましいものも同様である。
’〜R’は、R’と同義である。
’は水素原子、アルキル基、アリール基、フルオロ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
’及びR’は水素原子を表すか、又は互いに結合して縮合4〜7員環式基を形成することが好ましく、該縮合4〜7員環式基は、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであることがより好ましく、アリールであることが更に好ましい。
’〜R’における置換基Zとしてはアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0223】
前記一般式(T−1)で表される化合物の好ましい形態のひとつは下記一般式(A9)で表される化合物である。
【0224】
【化63】

【0225】
一般式(A9)中、R1a〜R1iの定義及び好ましい範囲は一般式(T−1)におけるR〜Rにおけるものと同様である。X、Yの定義及び好ましい範囲も一般式(T−1)におけるものと同様である。nは0〜3の整数を表す。
【0226】
一般式(T−1)で表される化合物の具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0227】
【化64】

【0228】
上記一般式(T−1)で表される化合物として例示した化合物は、特開2009−99783号公報に記載の方法や、米国特許7279232号等に記載の種々の方法で合成できる。例えば、TR−1は、2-クロロメチルキノリンを出発原料として、米国特許7279232号のカラム24、1行〜カラム27、33行に記載の方法で合成することができる。また、TG−1は、2-ブロモ−3-メチルピリジンを出発原料として、米国特許7279232号のカラム29、1行〜カラム31、29行に記載の方法で合成することができる。
【0229】
その他の発光材料について説明する。
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0230】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859号、特開2002−302671号、特開2002−117978号、特開2003−133074号、特開2002−235076号、特開2003−123982号、特開2002−170684号、EP1211257号、特開2002−226495号、特開2002−234894号、特開2001−247859号、特開2001−298470号、特開2002−173674号、特開2002−203678、特開2002−203679号、特開2004−357791号、特開2006−256999号、特開2007−19462号、特開2007−84635号、特開2007−96259号等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0231】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜30質量%含有されることが更に好ましい。
【0232】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0233】
本発明の素子における発光層は、発光材料とホスト材料との混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。そのような材料としては、炭化水素系材料が好ましく、アダマンタン骨格を有する材料が特に好ましい。また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0234】
<ホスト材料>
本発明の有機EL素子は、ホスト材料として、以下の化合物を含有していても良い。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0235】
発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、前記燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。ホスト材料のTが燐光発光材料のTより0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましく、0.3eV以上大きいことが更に好ましい。
ホスト材料のTが燐光発光材料のTより小さいと発光を消光してしまうためホスト材料には燐光発光材料より大きなTが求められる。また、ホスト材料のTが燐光発光材料より大きい場合でも、両者のT差が小さい場合には一部、燐光発光材料からホスト材料への逆エネルギー移動が起こるため、効率低下や耐久性低下の原因となる。従って、Tが十分に大きく、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性の高いホスト材料が求められている。
【0236】
発光層におけるホスト材料として一般式(1)で表される電荷輸送材料を用いることもできる。
また、発光層におけるホスト材料の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
発光層中の一般式(1)で表される電荷輸送材料は、発光層中に発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましく、40質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。
【0237】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明に関し、有機層として、電子受容性ドーパントを含有する正孔注入層又は正孔輸送層を含むことが好ましい。
【0238】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0239】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0240】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0241】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0242】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0243】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0244】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0245】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0246】
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0247】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜500cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0248】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0249】
本発明の有機電界発光素子は、350nm以上700nm以下に極大発光波長(発光スペクトルの最大強度波長)を有するものが好ましく、より好ましくは350nm以上600nm以下、更に好ましくは400nm以上520nm以下、特に好ましくは400nm以上465nm以下である。
【0250】
(本発明の発光素子の用途)
本発明の発光素子は、発光装置、ピクセル、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0251】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器11等により構成されている。
【0252】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0253】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0254】
(照明装置)
次に、図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0255】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0256】
下記の本発明の化合物1〜17、及び比較化合物1〜6を合成した。
【0257】
【化65】

【0258】
【化66】

【0259】
【化67】

【0260】
<合成例>
合成例1:化合物1の合成
【0261】
【化68】

【0262】
ビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルシラン(9.00g、18.2mmol)、カルバゾール(2.74g、16.4mmol)、酢酸パラジウム(165mg、0.72mmol)、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル(858mg、2.88mmol)炭酸ルビジウム(12.6g、54.6mmol)、キシレン(90mL)を混合し、窒素雰囲気下で3時間加熱還流した。反応溶液をセライト濾過した後、溶媒を減圧留去し、更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1:2)により精製した。得られた固体をエタノールでたき洗いし、真空乾燥することにより、合成中間体M−1を白色粉末として得た(収量2.70g、収率59%)。
合成中間体M−1(2.70g、4.65mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.42g、5.58mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(1:1)(114mg、0.14mmol)、酢酸カリウム(1.05g、10.7mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(30mL)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温に戻してから純水と酢酸エチルを加えて分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製し、真空乾燥することにより合成中間体M−2を白色粉末として得た(収量1.35g、収率46%)。
合成中間体M−2(1.26g、20.0mmol)、4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリミジン(622mg、20.0mmol)、酢酸パラジウム(225mg、1.0mmol)、トリフェニルホスフィン(1.05g、4.0mmol)、炭酸ナトリウム(6.36g、60.0mmol)、1,2−ジメトキシエタン(15mL)、純水(10mL)を混合し、窒素雰囲気下、4時間加熱還流した。反応溶液を室温に戻した後、酢酸エチルを加えてセライト濾過した。有機溶媒を減圧留去し、析出した固形分を濾過、水洗した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1:1)により精製し、得られた固体をヘキサンでたき洗いし、真空乾燥することで化合物1を白色粉末として得た(収量1.16g、収率79%)。
H NMR(300MHz,DMSO)δ=8.70−8.48(m,7H),8.26(d,2H),7.87−7.77(m,6H),7.69−7.43(m,20H),7.31(dd,2H).MS(MALDI−TOF):m/z=732.2([M+H]).
【0263】
合成例2:化合物2の合成
合成例1の4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリミジンを4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリジンに代える以外は同様にして、化合物2を合成した。MS(MALDI−TOF):m/z=731.3([M+H]).
【0264】
合成例3:化合物3の合成
合成例1の4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリミジンを2−クロロ−4,6−ジフェニル−[1,3,5]トリアジンに代える以外は同様にして、化合物3を合成した。MS(MALDI−TOF):m/z=733.3([M+H]).
【0265】
合成例4:化合物4の合成
合成例1の4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリミジンを3−ブロモベンゾニトリルに代える以外は同様にして、化合物4を合成した。MS(MALDI−TOF):m/z=603.2([M+H]).
【0266】
合成例5:化合物5の合成
合成例1においてビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルシランをビス(4−ブロモフェニル)ジメチルシランに、カルバゾールを9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジンに、炭酸ルビジウムをt−ブトキシナトリウムに代える以外は同様にして合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は合成例1と同様の方法で化合物5を合成した。MS(MALDI−TOF):m/z=774.3([M+H]).
【0267】
合成例6:化合物6の合成
合成例1においてカルバゾールを4−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸に、ビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルシランをビス(4−ブロモフェニル)ジメチルシランに、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニルをトリフェニルホスフィンに、炭酸ルビジウムを炭酸ナトリウムに、キシレンを1,2−ジメトキシエタン及び水(2:1)に代えること以外は同様にして合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は合成例1と同様の方法で化合物6を合成した。MS(MALDI−TOF):m/z=684.3([M+H]).
【0268】
合成例7:化合物7の合成
合成例1においてカルバゾールをα−フェニルナフチルアミンに、炭酸ルビジウムをt−ブトキシナトリウムに代える以外は同様にして合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は合成例1と同様の方法で化合物7を合成した。MS(MALDI−TOF):m/z=784.3([M+H]).
【0269】
合成例8:化合物8の合成
3−ブロモ−9−エチルカルバゾール(1.37g、5.0mmol)、マグネシウム粉末(146mg、6.0mmol)、ヨウ素片、THF(10mL)を室温で攪拌した後、1時間加熱還流した。この反応液の液体成分のみをクロロジフェニル(ペンタフルオロフェニル)シラン(1.92g、5.0mmol)のTHF(10mL)溶液に混合し、4時間攪拌した。反応液に純水、酢酸エチルを加え、分液により有機層を抽出した。硫酸ナトリウムにより乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、化合物8を得た(収量1.01g、収率37%)。MS(MALDI−TOF):m/z=544.2([M+H]).
【0270】
合成例9:化合物9の合成
合成例1においてカルバゾールを3−t−ブチルインドールに、炭酸ルビジウムをt−ブトキシナトリウムに代える以外は同様にして合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は合成例1と同様の方法で化合物9を合成することができる。
【0271】
合成例10:化合物10の合成
合成例1においてカルバゾールをフェノチアジンに、ビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルシランをビス(3−ブロモフェニル)ジフェニルシランに、炭酸ルビジウムをt−ブトキシナトリウムに代える以外は同様にして合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は合成例1と同様の方法で化合物10を合成することができる。
【0272】
合成例11:化合物11の合成
合成例1においてカルバゾールをトリベンズアゼピンに、炭酸ルビジウムをt−ブトキシナトリウムに代える以外は同様にして合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は合成例1と同様の方法で化合物11を合成することができる。
【0273】
合成例12:化合物12の合成
合成例1のビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルシランをビス(4−ブロモフェニル)ジイソプロピルシランに代えて合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリミジンを5−ブロモ−1,2,3−トリフルオロベンゼンに代える以外は合成例1と同様にして、化合物12を合成できる。
【0274】
合成例13:化合物13の合成
合成例1のビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルシランをビス(4−ブロモフェニル)ジブチルシランに代えて合成中間体M−1に対応する合成中間体を合成し、その後は4−ブロモ−2,6−ジフェニルピリミジンを4−ブロモ−4’−トリフルオロメチルビフェニルに代える以外は合成例1と同様にして、化合物13を合成できる。
【0275】
合成例14:化合物14の合成
以下の合成ルートにより化合物14を合成できる(実験条件等は合成例1に準ずる)。
【0276】
【化69】

【0277】
合成例15:化合物15の合成
以下の合成ルートにより化合物15を合成した。
【0278】
【化70】

【0279】
合成例16:化合物16の合成
以下の合成ルートにより化合物16を合成した。
【0280】
【化71】

【0281】
合成例17:化合物17の合成
以下の合成ルートにより化合物17を合成した。
【0282】
【化72】

【0283】
素子作製に用いた材料はすべて昇華精製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により純度(254nmの吸収強度比)が99.5%以上であること、及び合成中間体のうちハロゲンを含む化合物が検出限界量以下であることを確認した。
【0284】
以下の条件で各化合物のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行い、酸化ピーク値Eox、還元ピーク値Eredからイオン化ポテンシャルIp(eV)=Eox(V)+4.5、電子親和力Ea(eV)=Ered(V)+4.8の計算により求め、表に記載した(CVのEox、Eredが固体膜状態でのIp、Eaと相関することは文献Macromol.1995,28,1180−1196.などに記載されている。用いた補正値(+4.5、+4.8)は、いくつかの材料単層膜(真空蒸着によりガラス基板上に膜厚50nmで成膜)を理研計器AC−2を用いて測定したIp値、及び前記材料単層膜の吸収長波長端から求めたバンドギャップEgからEa=Ip−Egの関係により求めたEa値と比較して、ほぼ一致する値を用いた)。
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド
濃度:1.0×10−3mol/L
支持電解質:0.1mol/L n−BuNPF
作用極:グラッシーカーボン
対極:白金
参照極:Ag/AgCl
また、真空蒸着法により本発明の電荷輸送材料又は比較材料の単層膜(膜厚約50nm)をガラス基板上に作製したものを測定サンプルとし、F−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて液体窒素温度で燐光スペクトルを測定し、短波長端をエネルギー換算することにより、各材料のT(eV)を求めた。結果を表1に示す。
【0285】
【表1】

【0286】
<実施例1>
[素子1−1の作製]
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)及び2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)(質量比99.7:0.3):膜厚120nm
第2層:NPD:膜厚7nm
第3層:C−1:膜厚3nm
第4層(発光層):H−1及び下記化合物9−16(質量比85:15):膜厚30nm
第5層:化合物1:膜厚27nm
第6層:BCP:膜厚3nm
この上に、フッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
このようにして得られた積層体を大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、本発明の有機電界発光素子1−1を得た。
【0287】
【化73】

【0288】
【化74】

【0289】
【化75】

【0290】
[素子1−2〜1−11、比較素子1−1〜1〜6の作製]
素子1−1の作製において、第5層の材料として化合物1の代わりに下記表2に示す材料を用いることにより、素子1−2〜1−11、比較素子1−1〜1〜6を得た。
【0291】
これらの素子を以下の方法で効率、駆動電圧、耐久性、駆動電圧上昇率、極大発光波長の観点で評価した。結果を表2に示した。
【0292】
[素子の評価]
(a)効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が360cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出し、相対値で記載した。効率は数字が高いほど好ましい。
【0293】
(b)駆動電圧
各素子を輝度が360cd/mになるように直流電圧を印加して発光させる。この時の印加電圧を駆動電圧評価の指標とし、相対値で記載した。駆動電圧は数字が小さいほど好ましい。
【0294】
(c)耐久性
各素子を輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度が500cd/mになるまでに要した時間を耐久性の指標とし、相対値で記載した。耐久性は数字が高いほど好ましい。
【0295】
(d)駆動電圧上昇率
(b)で測定した駆動電圧をVとし、(c)評価後の素子で(b)と同様に360cd/mの輝度を得るのに必要な電圧をV’としたときのV’/Vを駆動電圧上昇率として記載した。駆動電圧上昇率は数字が小さいほど好ましい。
【0296】
(e)極大発光波長
各素子を輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加し発光させ、このときの発光スペクトルから極大発光波長を求めた。
【0297】
【表2】

【0298】
表2から分かるように、本発明の電荷輸送材料を用いた本発明の素子は比較素子と比べて効率、駆動電圧、耐久性、及び駆動電圧上昇率の全ての観点で優れている。
【0299】
<実施例2〜23>
[素子2−1〜23−1、比較素子2−1〜23−1の作製]
実施例1における第3層材料、第4層材料、第5層材料を下記表3中に示すものに変えて素子(素子2−1〜23−1、比較素子2−1〜23−1)を作製し、実施例1と同様に素子評価を行った結果を表3に示す。
【0300】
【表3】

【0301】
表3から分かるように、本発明の電荷輸送材料は、様々な材料と組み合わせてホール輸送層、発光層ホスト、電子輸送層のいずれの用途で用いても高性能な素子を作製することができる。
【0302】
〔実施例24〕
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上にPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水溶液(BaytronP(標準品))をスピンコート(4000rpm、60秒間)し、120℃で10分間乾燥することにより、ホール輸送性バッファ層を形成させた。
次いで、化合物1を1質量%、及びTM−3を0.05質量%含有するトルエン溶液を先のバッファ層上にスピンコート(2000rpm、60秒間)し、発光層を形成させた。
この発光層の上に、BAlqを真空蒸着法により50nm蒸着して電子輸送層とし、更にフッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウムを100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせること無く、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機電界発光素子24−1を得た。また、発光層を構成する材料を表4中に記載の材料に変更する以外は同様にして、素子24−2〜25−2、比較素子24−1〜25−1を得た。
【0303】
【表4】

【0304】
以上、本発明の化合物1〜8、15〜17を用いた実施例を示したが、本発明の化合物9〜14を用いた素子も同様に高い素子性能を示す。
【符号の説明】
【0305】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される電荷輸送材料。
【化1】

{(一般式(1)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。GB1は下記一般式(B1−1)又は下記一般式(B2−1)で表される構造を表す。)
【化2】

(一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−1)中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点であり、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(1)において、下記一般式(A1)で表される部分構造と下記一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【化3】

(一般式(A1)及び一般式(B1)中、R〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1は、各々一般式(1)におけるR〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1と同義である。)}
【請求項2】
前記一般式(1)が下記一般式(2)で表される請求項1に記載の電荷輸送材料。
【化4】

{(一般式(2)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、LA2及びLB2は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。R及びRは各々独立に置換基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。GB2は下記一般式(B1−2)又は下記一般式(B2−2)で表される構造を表す。)
【化5】

(一般式(B1−2)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(2)におけるLB2との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−2)中、*は一般式(2)におけるLB2との結合点であり、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(2)において、下記一般式(A2)で表される部分構造と下記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【化6】

(一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義である。)}
【請求項3】
前記一般式(2)が下記一般式(3)で表される請求項2に記載の電荷輸送材料。
【化7】

{(一般式(3)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。R及びRは各々独立に置換基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。GB2は前記一般式(2)におけるGB2と同義である。ただし、一般式(3)において、下記一般式(A3)で表される部分構造と下記一般式(B3)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【化8】

(一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。)}
【請求項4】
膜状態での最低励起三重項(T)エネルギーが2.8eV以上3.2eV以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項5】
分子量が600以上1200以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を含む膜。
【請求項7】
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に請求項1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を含む有機電界発光素子。
【請求項8】
前記発光層に燐光性発光材料を含む、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記燐光性発光材料の極大発光波長が400nm以上470nm以下である請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を発光層又は発光層に隣接する層に含む請求項7〜9のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料を含む有機層がウェットプロセスで形成された層である、請求項7〜10のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化9】

{(一般式(1)中、R〜Rは各々独立に置換基を表し、n1は0〜5の整数を表し、LA1及びLB1は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。R、R、及びLA1のうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。GB1は下記一般式(B1−1)又は下記一般式(B2−1)で表される構造を表す。)
【化10】

(一般式(B1−1)中、Xは各々独立に窒素原子又はRが結合した炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(1)におけるLB1との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−1)中、*は一般式(1)におけるLB1との結合点であり、Eはハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、ニトロ基、シアノ基のいずれかから選ばれ、Rは置換基を表し、n2は1〜5の整数を表し、n3は0〜4の整数を表す。E及びRは複数存在する場合は、複数のE及びRは各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(1)において、下記一般式(A1)で表される部分構造と下記一般式(B1)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【化11】

(一般式(A1)及び一般式(B1)中、R〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1は、各々一般式(1)におけるR〜R、n1、LA1、LB1、及びGB1と同義である。)}
【請求項13】
下記一般式(2’)で表される化合物。
【化12】

{(一般式(2’)中、R〜R12は各々独立に置換基を表し、LA2及びLB2は各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、n4及びn5は各々独立に0〜4の整数を表し、n6及びn7は各々独立に0〜5の整数を表す。R〜R12が複数存在する場合、複数のR〜R12は各々同一でも異なってもよい。R及びRは各々独立に置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。X’は、単結合、又は2価の連結基を表す。GB2は下記一般式(B1−2)又は下記一般式(B2−2)で表される構造を表す。ただし、GB2が下記一般式(B1−2)で表される構造である場合は、−LB2−GB2はケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合する。)
【化13】

(一般式(B1−2)中、Xは各々独立に窒素原子又は炭素原子を表す。R〜Rのいずれかは一般式(2’)におけるLB2との結合点となり、R〜Rのうち残りのものは各々独立に置換基を表し、Rのうち残りのものは水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(B1−1)において窒素原子の隣が炭素原子である場合は、該炭素原子はRとして置換基を有する。Rが複数存在する場合は、複数のRは各々同一でも異なってもよい。R〜Rのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B2−2)中、*は一般式(2’)におけるLB2との結合点であり、R13は置換基を表し、n8は0〜5の整数を表し、n9は0〜4の整数を表す。R13は複数存在する場合は、複数のR13は各々同一でも異なってもよい。ただし、一般式(2’)において、下記一般式(A2)で表される部分構造と下記一般式(B2)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【化14】

(一般式(A2)及び一般式(B2)中、X’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2は、各々一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、LA2、LB2、及びGB2と同義である。)}
【請求項14】
前記一般式(2’)が下記一般式(3’)で表される請求項13に記載の化合物。
【化15】

{(一般式(3’)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。GB2が前記一般式(B1−2)で表される構造である場合は、−GB2はケイ素原子に対してメタ位又はパラ位に結合する。ただし、一般式(3’)において、下記一般式(A3)で表される部分構造と下記一般式(B3)で表される部分構造とが同一の構造を表すことはない。)
【化16】

(一般式(A3)及び一般式(B3)中、X’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2は、各々一般式(2’)におけるX’、R〜R12、n4〜n7、及びGB2と同義である。)}
【請求項15】
請求項7〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項16】
請求項7〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項17】
請求項7〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−140475(P2011−140475A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3383(P2010−3383)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】