電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置及び電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置
【課題】電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置及び電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置を提供する。
【解決手段】導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、生体分子の液滴が収容される収容部22と、収容部22と連結されて生体分子の液滴で収容部22の外部に吐出されるように収容部22の下端部に形成された吐出口23を持つ針状の電界形成電極20と、電界形成電極20の下方に配置されており、電界形成電極20の吐出口23から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部31を持って接地されている基板30と、電界形成電極20に充電された電荷とその電荷により基板30に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により生体分子の液滴を基板30の標的部31に滴下させる開放型電圧印加装置50と、を備える。
【解決手段】導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、生体分子の液滴が収容される収容部22と、収容部22と連結されて生体分子の液滴で収容部22の外部に吐出されるように収容部22の下端部に形成された吐出口23を持つ針状の電界形成電極20と、電界形成電極20の下方に配置されており、電界形成電極20の吐出口23から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部31を持って接地されている基板30と、電界形成電極20に充電された電荷とその電荷により基板30に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により生体分子の液滴を基板30の標的部31に滴下させる開放型電圧印加装置50と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置及び電荷集中現象を利用して印刷用紙上にインクをプリンティングする装置に係り、より詳細には、プローブDNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴を基板表面上に滴下して固定化させてバイオチップを製作するために、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置及びインクを印刷用紙に滴下してコンピュータ文書ファイルの内容、写真ファイルなどを出力するために、電荷集中現象を利用して印刷用紙上にインクをプリンティングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクトの驚異的な進行と共に、遺伝病の診断、治療及び予防において莫大な量の遺伝子情報を迅速に提供できる方法への要求が高まっている。これまで塩基配列決定法として使われてきたサンガー(Sanger)の方法は、DNAを複製するポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)法の開発及びその自動化により発展したにもかかわらず、過程が面倒で長時間、労力、コスト及び高度の熟練度を要するために、ぼう大な量の遺伝子を分析できず、新たな塩基配列分析システムが絶えずに摸索された。このような時代的背景に応じて、ここ数年間バイオチップの製作及び利用技術と関連した多くの部分で進歩があった。
【0003】
バイオチップとは、シリコン、表面改質ガラス、ポリプロピレン、活性化ポリアクリルアミドのような固体基板表面に核酸、蛋白質、細胞などの生体分子を結合させて、遺伝子発現様相、遺伝子欠陥、蛋白質分布、各種反応様相などを分析できる生物学的マイクロチップをいう。
【0004】
このようなバイオチップに分析しようとする標的物質を反応させれば、バイオチップに付着されているプローブと標的物質と結合状態をなすが、これを光学的な方法または放射能化学的方法などを通じて観察解析することによって標的物質を分析することができる。例えば、プローブDNAが付着されたDNAチップ(DNAマイクロアレイ)に分析しようとする標的DNA断片を結合させれば、プローブと標的DNA断片上の塩基配列との相補的な程度によってそれぞれ異なる混成化結合状態をなすが、これを色々な検出方法を通じて観察して解析することによって、標的DNAの塩基配列を分析することができる(Sequencing By Hybridization:SBH)。
【0005】
このようなバイオチップまたはDNAマイクロアレイの製作に使われるプリンティング装置の一例は、特許文献1に開示されている。図1に示すように、プリンティング装置1は、導電性素材からなって上下方向に長く配置されており、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴10が収容される収容部2、収容部2と連結されて前記生体分子の液滴がその収容部2の外部に吐出されるように、その収容部2の下端部に形成された吐出口3を持つ針状の電界形成第1電極4と、電界形成第1電極4の下方に配置されており、電界形成第1電極4の吐出口3から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部5を持つ基板6と、電界形成第1電極4の下方に配置されており、導電性素材からなり、基板6に付着される電界形成第2電極7とを備える。また、電界形成第1電極4及び電界形成第2電極7は、電極リード線8により電圧印加装置9に連結されており、その電界形成第1電極4及び電界形成第2電極7に電圧を印加できるようになっている。
【0006】
前述したように構成されたプリンティング装置1において、電圧印加装置9を駆動して電界形成第1電極4及び電界形成第2電極7に直流電圧及び交流電圧を同時に印加すれば、図2に示したように、その電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間に電場が発生する。このように発生した電場分布、自由表面(free surface)を持つ前記生体分子の液滴10及び大気の誘電率勾配(dielectric constant gradient)との相互作用によって、前記生体分子の液滴10の周囲から前記生体分子の液滴10側には電気力が発生し、これにより吐出口3についていた生体分子の液滴10が基板6の標的部5に滴下される。
【0007】
ところが、前述したようなプリンティング装置1において、基板が導電性素材からなるか、基板に導電性素材からなる電界形成第2電極が付着されて初めて、電界形成第1電極と基板との間に電場を形成させることができ、これにより電気水力学的現象を発生させて生体分子の液滴10をプリントできる。したがって、基板の材質及び表面が導電性を持つように構成せねばならないという不便さがある。
【0008】
また、図2に示したように、電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間の電場は不均一に発生し、これにより、生体分子の液滴を所望の位置の標的部に滴下できない場合が頻繁に発生する。
【0009】
一方、電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔が一定レベルより小さくなれば、電気放電が発生するが、このような電気放電は標的部に滴下される生体分子の液滴の生化学的性質の変形や液滴の大きさ及び体積を不均一にさせるだけでなく、基板の表面構造や性質を変化させるので、電気放電が発生しないように電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔が調節されねばならない。実際に、基板がPMMAでコーティングされた場合(コーティング厚さ5μm)において、電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔が750μm以上になって初めて電気放電が発生しなくなる。したがって、前記電気放電が防止されるプリンティング装置を構成するに当って、その電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔を一定レベル以上に調節せねばならないという側面で設計上の制約が伴う。
【特許文献1】大韓民国特許出願第2005−40162号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、基板の材質及び表面特性に制限されず、生体分子の液滴を所望の位置の標的部に正確に滴下できるだけでなく、電気放電が発生しないように構成して電界形成電極と基板との距離を自由に調節でき、生体分子の液滴を従来に比べてさらに小さいサイズ及び体積で基板に滴下して付着させて、同サイズの基板に多くの生体分子の液滴をプリントして高密度のバイオチップを製作可能にする装置であって、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子をプリンティングする装置を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、プリント時に使われるインクを従来に比べてさらに小さなサイズ及び体積で印刷用紙またはカラーフィルタ用ガラス基板に滴下してコンピュータ文書ファイルの内容、写真ファイルまたはディスプレイ用カラーフィルタなどを精密に出力または製造可能にする装置であって、電荷集中現象を利用して、印刷用紙または基板上にインクをプリンティングする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明による電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置において、導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記生体分子の液滴が収容される収容部、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴で前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口を持つ針状の電界形成電極と、前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って接地されている基板と、前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記生体分子は、核酸、蛋白質、オリゴペプチド、糖類、真核細胞、ウイルス、及びバクテリアで構成された群から選択されることが望ましい。
【0014】
また、本発明によれば、前記電界形成電極の吐出口の上方に配置されており、前記電界形成電極を支持するプリンタ本体をさらに備えることが望ましい。
【0015】
また、本発明によれば、前記電界形成電極及び開放型電圧印加装置は、前記電界形成電極の上端部に接続されている電極リード線により電気的に連結されていることが望ましい。
【0016】
また、本発明によれば、前記開放型電圧印加装置は、前記吐出口についている前記生体分子の液滴の下方に電場が形成されるように交流電圧及び直流電圧を同時に印加することが望ましい。
【0017】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、5Vないし100,000Vの前記直流電圧及び5Vないし100,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることが望ましい。
【0018】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、500Vないし10,000Vの前記直流電圧及び500Vないし10,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることが望ましい。
【0019】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、10Hzないし1,000Hzの前記交流電圧が印加されることが望ましい。
【0020】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、2000Vの前記直流電圧と、500V及び130Hzの前記交流電圧が同時に印加されることが望ましい。
【0021】
また、本発明によれば、前記基板は、シリコン、ガラス、ポリマーで構成された群から選択される1種以上からなることが望ましい。
【0022】
また、本発明によれば、前記基板の表面は、前記生体分子の液滴がよく付着されるように、アミン基、カルボキシル基、バイオチン、ストレプトアビジン、ポリLリジン及びチオールで構成された群から選択される1種以上がコーティングされていることが望ましい。
【0023】
また、本発明によれば、前記基板は、平板状の平板部と、前記平板部から上方に突出した複数の突出部と、を有し、前記各突出部が前記基板の標的部であることが望ましい。
【0024】
また、本発明によれば、前記基板は、前記電界形成電極と略直交するように配置されていることが望ましい。
【0025】
また、本発明によれば、前記電界形成電極は、導電性金属、導電性ポリマー、及びITOガラスで構成された群から選択される1種以上からなることが望ましい。
【0026】
また、本発明によれば、前記電界形成電極の吐出口付近は、疎水性処理されたことが望ましい。
【0027】
また、本発明によれば、前記電界形成電極は同一ピッチで複数設けられており、前記基板には複数の標的部が設けられており、その標的部は、前記電界形成電極とそれぞれ対応するようにその電界形成電極と同一ピッチで配置されていることが望ましい。
【0028】
また、前記目的を達成するために、本発明による電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする方法は、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする方法は、導電性素材からなり、前記生体分子の液滴が収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴が前記収容部の外部に吐出されるように、前記収容部の下端部に形成された吐出口とを持つ針状の電界形成電極を上下方向に長く配置する電界形成電極配置ステップと、前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って、接地されている基板を前記電界形成電極の下方に配置する基板配置ステップと、前記電界形成電極と電気的に連結された開放型電圧印加装置を配置する開放型電圧印加装置配置ステップと、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴を前記電界形成電極の収容部に供給する生体分子の液滴供給ステップと、前記開放型電圧印加装置から前記電界形成電極に電圧を印加して前記電界形成電極に電荷を充電し、前記充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下する生体分子の液滴分離ステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
一方、前記他の目的を達成するために、本発明による電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置は、導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記インクが収容される収容部、前記収容部と連結されて前記インクが前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口を持つ針状の電界形成電極と、前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出されるインクが滴下されて付着される標的部を持ち、接地されている印刷用紙または印刷基板と、前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記印刷用紙または印刷基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴が前記印刷用紙または印刷基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、基板の材質及び表面特性に制限されずに生体分子の液滴を所望の位置の標的部に正確に滴下できるだけでなく、電気放電が発生しないように構成して電界形成電極と基板との距離を自由に調節でき、生体分子の液滴を従来に比べてさらに小さい大きさ及び体積で基板に滴下して付着させて、同サイズの基板に多くの生体分子の液滴をプリントして高密度のバイオチップを製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明による望ましい実施形態を添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態による電荷集中現象(electric charge concentration effect)を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図であり、図4は、図3に図示された基板の平面図であり、図5は、図3に図示されたプリンティング装置に電圧が印加された場合に電界形成電極に充電される正電荷及びその正電荷により基板に誘導される負電荷の分布と、吐出口についた生体分子の液滴に作用する力の関係とを概略的に示す図面であり、図6は、図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴をプリンティングする過程を説明するための図面である。図7は、図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴を基板上に滴下する過程で、ネック状の生体分子の液滴に作用する表面張力の関係を説明するための図面である。
【0033】
図3ないし図7を参照すれば、本実施形態の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴10をプリンティングする装置100は、電界形成電極20と、基板30と、プリンタ本体40と、開放型電圧印加装置50と、を備える。
【0034】
電界形成電極20は、金、白金、銅のような導電性金属、伝導性ポリマー、ITO(Indium−Tin Oxide)ガラス、カーボンナノチューブのうちいずれか一つからなっているか、または、前記導電性金属、伝導性ポリマー、ITOガラス、カーボンナノチューブのうち少なくとも2種類からなっている。本実施形態では、一例として、金からなっている。電界形成電極20は、一方向に長く形成されていて全体的に針状になっており、電解形成電極20の長手方向が垂直方向になるように配置されている。電界形成電極20の上端部には、電極リード線21が接続されており、この電極リード線21により、電界形成電極20と後述する開放型電圧印加装置50とは互いに電気的に連結されている。
【0035】
電界形成電極20は、収容部22及び吐出口23を備える。
【0036】
収容部22は、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、糖類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴10が収容される部分である。
【0037】
吐出口23は、収容部22の下端部に形成されており、その収容部22と連結されている。吐出口23の内径は非常に小さく形成されているので、外部から力が加えられなければ、生体分子の液滴10が表面張力により重力に打ち勝ってその吐出口23についている。吐出口23を通じて収容部22に収容されている生体分子の液滴10は、後述する電荷集中現象によりその収容部22の外部に吐出可能である。吐出口23の付近は疎水性処理されているので、生体分子の液滴10と吐出口23の表面との接触角が大きくなってその生体分子の液滴10は吐出口23の横に流れなくなる。
【0038】
基板30は、バイオチップまたはDNAマイクロアレイを構成するものであって、シリコン、ガラス、ポリマーのうちいずれか一つからなるか、または、シリコン、ガラス、ポリマーのうち少なくとも2種類からなっている。本実施形態では、一例として基板30はシリコンからなっている。基板30は、電界形成電極20の下方に配置されており、特に電界形成電極20と略直交するように配置されている。基板30には標的部31が形成されている。標的部31には、電界形成電極20の吐出口23から吐出される生体分子の液滴10が滴下されて付着される。基板30は、接地されている。そして、基板30の表面、特に基板30の標的部31はアミン基、カルボキシル基、ストレプトアビジン、バイオチン、チオール、ポリLリジンのうちいずれか一つでコーティングされているか、アミン基、カルボキシル基、ストレプトアビジン、バイオチン、チオール、ポリLリジンのうち少なくとも2種類でコーティングされており、これにより、生体分子の液滴10は、基板30の表面にさらによく付着されうる。
【0039】
プリンタ本体40は、電界形成電極20の吐出口23の上方に配置されている。プリンタ本体40は、電界形成電極20を支持し、PMMA(polymethlymethacrylate)からなっている。プリンタ本体40は、別途の駆動装置(図示せず)によりx、y及びz軸に3次元移動が可能である。したがって、前記別途の駆動装置を駆動させて、プリンタ本体40に支持されている電界形成電極20を標的部31の上方に移動させて、その標的部31と一定距離離隔されるように配置させることができる。
【0040】
開放型電圧印加装置50は、電界形成電極20と電気的に連結されている。開放型電圧印加装置50は、電極リード線21を通じて電界形成電極20に直流電圧と交流電圧とを同時に印加でき、このような直流電圧及び交流電圧の印加によって吐出口23についている生体分子の液滴10に正電荷が充電され、その充電された正電荷により基板30には負電荷が誘導される。したがって、正電荷と負電荷との間には図5に図示されたような電場が形成される。そして、電界形成電極20に充電された正電荷と、その正電荷により基板30に誘導された負電荷との間に発生したクーロン力により、生体分子の液滴10が基板30の標的部31に滴下される。以下、これについて詳細に説明する。
【0041】
図5を参照すれば、電界形成電極20に電圧が印加される場合に、吐出口31についている生体分子の液滴10には、その生体分子の液滴10に作用する重力(Fg)と、生体分子の液滴10の表面に作用する表面張力(Fc)と、生体分子の液滴10に充電された正電荷とその正電荷により基板30に充電された負電荷との間のクーロン力(Fe)とが作用することが分かる。そして、重力(Fg)と、表面張力(Fc)と、クーロン力(Fe)とは、図5に図示されたような方向に作用するために、生体分子の液滴10が下方に滴下される直前に、重力(Fg)と、表面張力(Fc)と、クーロン力(Fe)とは、次の数式(1)のような力の平衡関係を維持する。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、重力(Fg)=ρg△Vdrop(ただし、ρは、生体分子の液滴の密度であり、gは、重力加速度であり、△Vdropは、吐出口についている生体分子の液滴の体積である)であり、表面張力(Fc)=2πRγ(ただし、Rは、吐出口の半径であり、γは、単位長さ当り表面張力である)であり、クーロン力(Fe)=ρfE−E2∇ε/2(ただし、ρfは、生体分子の液滴の自由電荷であり、Eは、電場の強度であり、∇εは、誘電率である)である。ここで、電気力は電気泳動力(ρfE)と誘電泳動力(−E2∇ε/2)との和で表される。
【0044】
数式(1)で重力(Fg)は、吐出口についている生体分子の液滴の体積に比例し、その生体分子の液滴の体積は非常に小さいので、結局、数式(1)で重力(Fg)は無視できる。
【0045】
したがって、吐出口23についている生体分子の液滴10の表面張力(Fc)より大きいクーロン力(Fe)を発生させれば、そのクーロン力により数式(1)の平衡関係が崩れ、これにより、生体分子の液滴10を基板30の標的部31に滴下できる。そして、吐出口についている生体分子の液滴10の表面の下端部に集中した電荷によって、基板30には相対電荷が誘導され、その誘導された相対電荷は主にその生体分子の液滴10の表面の下端部と対向する部分に誘導される。したがって、生体分子の液滴10の電荷と基板の相対電荷との間にクーロン力が発生する。
【0046】
一方、以下では、本発明のように電荷集中現象を利用する場合と、図1に示したように電気水力学的現象を利用する場合とにおいて、生体分子の液滴を下方に滴下するために必要な力の大きさについてさらに詳細に比較する。
【0047】
図1に図示された電気水力学的現象を利用する方法においても、数式(1)のような力の平衡関係を持っている。生体分子の液滴の体積が非常に小さいので、重力(Fg)を無視でき、作用するクーロン力のうち誘電泳動力(−E2∇ε/2)は電気泳動力(ρfE)に比べて非常に小さいために無視できる。すなわち、電荷集中現象を利用する場合と同様に、下記に示す数式(2)のような関係を持つ。
【0048】
【数2】
【0049】
したがって、吐出口についている生体分子の液滴を下方に滴下するためには、液滴に作用する表面張力より電気泳動力が大きく作用すればよい。
【0050】
前述したように、電荷集中現象と電気水力学的現象とは、支配する力の種類においては非常に類似している。しかし、電気泳動力の大きさ及び作用する範囲が大きく異なる。電気水力学的現象の場合、生体分子の液滴の表面全体に電荷が分布して電気泳動力が液滴の表面に均一に作用するに対し、電荷集中現象の場合、液滴の表面の下端部にのみ大部分が集中してこの部分にのみ強い電気泳動力が作用する。すなわち、同じ電圧を外部から加えた時、電荷集中現象の電気泳動力が電気水力学的現象の電気泳動力に比べて103倍ほどさらに大きく作用する。したがって、電荷集中現象は電気水力学的現象に比べてさらに小サイズの液滴を下方に滴下するにははるかに効率的である。
【0051】
一方、開放型電圧印加装置50によって5Vないし100,000Vの直流電圧と、5Vないし100,000V及び10Hzないし1,000Hzの交流電圧が同時に印加されることが望ましくて、特に500Vないし10,000Vの直流電圧と、500Vないし10,000V及び10Hzないし1,000Hzの交流電圧とが同時に印加されることがさらに望ましい。上述のような電圧範囲及び周波数範囲を外れた直流電圧及び交流電圧を印加すれば、生体分子の液滴10に適切な大きさのクーロン力を作用させてその生体分子の液滴10を基板30に効率的に落とせないので望ましくない。そして、開放型電圧印加装置50によって、2000Vの直流電圧と、500V及び130Hzの交流電圧とが印加されることが最も望ましい。
【0052】
以下、本実施形態の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置100を使用して生体分子の液滴10をプリンティングする過程の一例を、図6を参照しつつ詳細に説明する。
【0053】
まず、駆動装置を駆動して電界形成電極20が支持されているプリンタ本体40を基板30の標的部31の上方に移動させる。その後に、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、糖類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの真核細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴10を電界形成電極20の収容部22に供給する。この時、電界形成電極20はその下端部に吐出口23が形成されているが、その吐出口23の内径は非常に小さく形成されているので、外部から力が加えられなければ、生体分子の液滴10が表面張力により重力に打ち勝って吐出口23についている。
【0054】
このように生体分子の液滴10を供給した後に、開放型電圧印加装置50で電界形成電極20に5Vないし100,000Vの直流電圧と、5Vないし100,000V及び10Hzないし1,000Hzの交流電圧とを同時に印加すれば、吐出口23についている生体分子の液滴10には正電荷が充電され、これにより接地されている基板30には負電荷が誘導される。そして、前記正電荷と負電荷との間には、図5に示したように電場が形成される。
【0055】
このように、生体分子の液滴10に正電荷が充電され、これによりその生体分子の液滴10が対向している基板30の部分に負電荷が誘導されれば、前記正電荷と負電荷との間にクーロン力が発生する。ここで、負電荷が生体分子の液滴10の下方に誘導されるので、前記クーロン力は生体分子の液滴の下方に集中的に作用する。そして、前記クーロン力により吐出口23についていた生体分子の液滴を図6の中間写真、すなわち、図7に示したように、基板30に滴下されてほぼ臼型に変形され、その臼型に変形された生体分子の液滴にはネック状が(neck shape)形成される。このように吐出口についていた生体分子の液滴が基板30に滴下されて図7に示したように形成されれば、その生体分子の液滴に充電されていた正電荷が基板の負電荷と共に消滅され、これによりクーロン力が低減する。すなわち、吐出口23についていた生体分子の液滴を下方に引き寄せたクーロン力が低減する。そして、前記ネック状をなす生体分子の液滴と基板30との間の表面張力Aと、前記ネック状をなす生体分子の液滴と電界形成電極20との間に形成された表面張力Bは、図7に示したように互いに逆方向に作用する。このように、生体分子の液滴に充電された電荷が消滅してクーロン力が低減するだけでなく、生体分子の液滴の表面張力A、Bが互いに逆方向に作用するので、生体分子の液滴をそのネック状部分から分離させて二つの生体分子の液滴に分離させる。したがって、基板30には図6の最後の写真に示したように生体分子の液滴が滴下されて付着される。
【0056】
本実施形態においては、基板が接地されるように構成されているので、その基板の構成において基板の材質に制限されなくてもよい。すなわち、従来に電気水力学的現象を利用する場合には基板を導電性素材で製作するか、基板に導電性素材からなる電界形成電極を配置するように構成せねばならないが、本実施形態においては、基板の構成においてこのような点を考慮する必要がなくなる。
【0057】
また、生体分子の液滴に充電された正電荷により、その生体分子の液滴と対向する基板の部分に負電荷を誘導させるだけでなく、電気水力学的現象を利用する場合に比べて生体分子の液滴にさらに多くの正電荷が充電されるので、生体分子の液滴を所望の位置の標的部に滴下して付着できるようになる。
【0058】
そして、本実施形態においては、前述したようにクーロン力が非常に大きく作用するために、生体分子の液滴を従来に比べてさらに小さなサイズ及び体積、例えば、ピコリットル(picoliter)以下の単位で基板30の標的部31に滴下できるだけでなく、その生体分子の液滴を滴下するのにかかる時間も短縮できる。
【0059】
また、基板が接地されるように構成されているので、従来のように電気水力学的現象を利用する場合とは違って電気放電が発生しなくなり、これにより、電界形成電極と基板との間隔を自由に調節できる。そして、このような間隔を調節すれば、基板に滴下される生体分子の液滴の体積を自由に調節できるようになって、本実施形態のプリンティング装置をさらに自由に設計できる。
【0060】
さらに、基板に複数の標的部が形成されるように構成して生体分子の液滴をその各標的部ごとにプリントすれば、従来とは違って同サイズの基板30に多くの生体分子の液滴10をプリンティングすることが可能になるので、高密度のバイオチップを製作することも容易になるという長所もある。
【0061】
前述したように、本実施形態において従来とは違って生体分子の液滴をさらに小さなサイズ及び体積でさらに短い時間に基板にプリントできるという点を定量的に確認するために、次のような実験を行った。
【0062】
生体分子の液滴10として、pH10の緩衝液で緩衝された100μM DNAを準備し、直径が0.46mmである電界形成電極20を準備した。そして、ガラスからなる基板30を準備し、そのガラス基板30と電界形成電極20との距離が250μmになるように構成した。このように準備された状態で、電界形成電極20に2000Vの直流電圧及び500V、130Hzの交流電圧を同時に印加して基板に滴下される生体分子の液滴の大きさ及び体積と、滴下にかかる時間とを測定した(大きさ、体積の測定時に使われた解像度は1.7μm/pxである)。そして、このような実験を10回反復してその平均及び標準偏差を計算した。計算結果、基板に滴下されて付着された生体分子の液滴の平均体積は83.7plであり、標準偏差は9.0plであった。そして、生体分子の液滴が滴下されるのにかかる平均時間は0.23秒であり、標準偏差は0.11秒であった。また、基板に付着された生体分子の液滴の平均の大きさは45μmであった。
【0063】
次いで、生体分子の液滴10として、pH10の緩衝液で緩衝された100μM DNAを準備し、直径が0.46mmである電界形成電極20を準備した。そして、PMMAでコーティングされた基板を準備し、PMMAでコーティングされた基板と電界形成電極との距離が200μmになるように構成した。このように準備された状態で、電界形成電極20に2000Vの直流電圧及び500V、130Hzの交流電圧を同時に印加して基板に滴下される生体分子の液滴の大きさ及び体積と、滴下にかかる時間とを測定した(大きさ、体積の測定時に使われた解像度は1.7μm/pxである)。そして、このような実験を10回反復してその平均及び標準偏差を計算した。計算結果、基板に滴下されて付着された生体分子の液滴の平均体積は2.6plであり、標準偏差は0.9plであった。そして、生体分子の液滴で滴下されるのにかかる平均時間は0.13秒であり、標準偏差は0.03秒であった。また、基板に付着された生体分子の液滴の平均の大きさは13μmであった。
【0064】
前述したようにPMMAでコーティングされた基板と、ガラス基板との場合についての実験結果は、図8に図示されている。そして、図9には、PMMAでコーティングされた基板の場合に行われた各実験についてのデータが表で図示されている。
【0065】
一方、図10には、電界形成電極と親水性表面性質を持つガラス基板との間隔と、そのガラス基板に滴下される生体分子の液滴の体積との関係が図示されている。ガラス基板と電界形成電極との間隔をそれぞれ275μm、300μmに変化させた状態で、上述のような実験を10回同一に実施すれば、ガラス基板と電界形成電極との間隔が275μmである場合には基板に滴下された生体分子の液滴の平均体積が2.6plであり、ガラス基板と電界形成電極との間隔が300μmである場合には、基板に滴下された生体分子の液滴の平均体積が1.3plであるということが分かる。このように、電界形成電極とガラス基板との間隔が遠ざかるほど基板に滴下される生体分子の液滴の体積が縮小されるので、電界形成電極とガラス基板との間隔のみを調節してもその基板に滴下される生体分子の液滴の体積を調節できる。
【0066】
一方、本実施形態においては、基板の表面が平らに形成されており、その基板には一つの標的部のみ形成されているが、基板70の表面に図11に示したように複数の突出部72を形成し、その突出部72が標的部になるように構成できる。図11に示したように、基板70は、平板状の平板部71と、平板部71から上方に突出した複数の突出部72と、を持つ。突出部72は、同一ピッチで配列されている。各突出部72は、電界形成電極の吐出口23から吐出される生体分子の液滴10が滴下されて付着される標的部である。そして、基板70は、ステージ90(図13)に設置されており、このステージはコンベヤーなどにより移動されうる。
【0067】
このように構成された電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置200においては、生体分子の液滴10をプリンティングしようとする突出部72の上方に電界形成電極20が位置するように、別途の駆動装置を駆動させてプリンタ本体40を移動させた後に、電界形成電極20に直流電圧及び交流電圧を印加して生体分子の液滴10を基板70の突出部72に滴下する。そして、再び駆動装置を駆動してプリンタ本体40を移動させて他の突出部72の上方に電界形成電極20を位置させ、再び電界形成電極20に直流電圧及び交流電圧を印加して生体分子の液滴10をプリンティングする。このような方式でプリンタ本体40を動かしてすべての突出部72に対して生体分子の液滴10を滴下して固定させることができる。
【0068】
このようにすべての突出部72に生体分子の液滴10をプリンティングしてバイオチップまたはDNAマイクロアレイを製作して、そのバイオチップまたはDNAマイクロアレイに分析しようとする標的DNA断片を結合させれば、突出部72は凹部分により互いに隔離されているので、実験者は各突出部72に形成された混成化結合のみを光学的な方法または放射能化学的方法などを通じて観察でき、さらに正確に標的DNAの塩基配列を分析できる。
【0069】
一方、図11に図示された本発明の他の実施形態においては、電界形成電極が一つ設けられており、その電界形成電極が別途の駆動装置により3次元に動いて基板の各突出部に生体分子の液滴をプリントするように構成されているが、図12に図示されているように、電界形成電極20を基板70の各突出部72に対応するように複数用意して構成してもよい。このように構成された電界形成電極20は、基板70の突出部72と同じピッチで配列されており、これにより、各突出部72は各電界形成電極20と対応する。そして、電界形成電極20は互いに電気的に絶縁されている。また、各電界形成電極20は、電極リード線21と電気的に連結されており、この電極リード線21は、開放型電圧印加装置50と電気的に連結されている。したがって、開放型電圧印加装置50を駆動すれば、すべての電界形成電極20に電圧が印加される。
【0070】
このように構成された電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置300においては、他の種類の生体分子の液滴を同時にプリンティングしようとする時に特に有益になる。図13は、図11に図示された装置を使用して基板70に生体分子の液滴をプリンティングする態様を図示した図面であって、電荷集中現象を利用して複数枚のシリコン基板、すなわち、バイオチップまたはDNAマイクロアレイを製作する状態を図示している。図13に示したように、一つのシリコン基板70への生体分子プリンティングが終われば、自動的に基板70を支持するステージ90が移動するようになり、これにより、他の基板70に連続的に生体分子の液滴をプリンティングできる。
【0071】
一方、電界形成電極が一組備わったプリンティング装置300の場合について次のような実験をした。直径460μmである一組の電界形成電極と、PMMAでコーティングされた平らな基板とを備え、その電界形成電極が互いに3.7mm離隔されるように配置されており、その各電界形成電極の吐出口と基板とが互いに787μm離隔されるように配置された生体分子の液滴プリンティング装置を準備した。そして、各電界形成電極にpH10の緩衝液で緩衝された100μM DNAを供給して、図14の左側写真に示したようにDNAを吐出口につけた後、各電界形成電極に2000Vの直流電圧と、100Hz及び500Vの交流電圧とを同時に印加すれば、図14の右側写真に示したように、生体分子の液滴2滴を同時に基板にプリンティングできる。このようにプリンティングした後、そのプリンティングされた生体分子の液滴2滴をそれぞれ倍率8.2μm/pxで測定した。測定結果、プリンティングされた一方の生体分子の液滴は10.8nlであり、残りの一つの生体分子の液滴は9.8nlであった。
【0072】
一方、前記実施形態においては、基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置についてのみ説明されているが、上述した電荷集中現象を利用すれば、基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置と同様に、印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置を構成してもよい。合わせて、電荷集中現象を利用して、プリント用インクをカラーフィルタ用ガラス基板に滴下させてディスプレイ用カラーフィルタなどを製造してもよい。
【0073】
すなわち、図3、図11及び図12で電界形成電極の収容部に生体分子の液滴の代りにインクを入れて、基板の代りに印刷用紙や印刷基板を接地させた状態で、電界形成電極に直流電圧及び交流電圧を同時に印加すれば、その電界形成電極の吐出口についているインクに正電荷が充電され、そのインクと対向する印刷用紙や印刷基板の部分、すなわち、標的部には負電荷が誘導される。そして、インクの正電荷と標的部の負電荷との間に発生するクーロン力により、吐出口についているインクを標的部に滴下させることができる。したがって、従来にインクジェット方式、レーザー方式のプリンタとは違って電荷集中現象を利用して、コンピュータ文書ファイルの内容、写真ファイルなどを精密に出力することも可能になる。
【0074】
そして、インクが小さい体積でプリンティングされる点を確認するために、次のような実験をした。直径460μmである一つの電界形成電極と、A4サイズの印刷用紙とを備え、その電界形成電極の吐出口と印刷用紙とが適切な間隔(300μmないし1500μm)で離隔されるように配置されたインクプリンティング装置を準備した。そして、電界形成電極にブルーインクを供給し、その電界形成電極に2000Vの直流電圧と、100Hz及び500Vの交流電圧とを同時に印加して、印刷用紙にブルーインクをプリンティングし、そのプリンティングされたブルーインクを倍率30μm/pxで測定した。この時に、電界形成電極の吐出口についているブルーインク滴の大きさを異ならせて変更することによって、そのプリンティングされたブルーインクの大きさを変化させ、それぞれの場合についてプリンティングされるのにかかる時間も測定した。ブルーインクのプリンティングされた状態は図15に図示されている。そして、プリンティングされたブルーインクの大きさを測定すれば、その大きさは、それぞれ837μm、344μm、300μm、159μm、79μmであった。また、ブルーインクをプリンティングするのにかかった時間は、837μmのブルーインクの場合は0.2秒であり、79μmのブルーインクの場合は0.5秒であった。すなわち、プリンティングされるブルーインクの大きさを調節でき、ブルーインクをさらに小サイズにプリンティングするほどそのプリンティングにかかる時間はさらに延長する。
【0075】
以上、本発明を望ましい実施形態を例として詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で当業者によって色々な多くの変形が可能であるということは明らかである。
【0076】
例えば、本実施形態ではプリンタ本体が備わっているが、プリンタ本体が備わらなくてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、電界形成電極に交流電圧と直流電圧とが同時に印加されるように構成されているが、交流電圧のみ印加させるか、直流電圧のみ印加させることもできる。
【0078】
また、本実施形態では、生体分子の液滴に正電荷が充電されて基板に負電荷が誘導されるように構成されているが、生体分子の液滴に負電荷を充電させてその充電された負電荷によりその生体分子の液滴と対向する基板の部分に正電荷が誘導されるように構成でき、このように構成されても負電荷と正電荷との間にはクーロン力が発生するので、このクーロン力により生体分子の液滴を基板に滴下することができる。
【0079】
また、本実施形態では、基板が平板部と複数の突出部とを備えるように構成されているが、その基板が平板状の平板部のみを持つように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、生体分子プリンティグ装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】従来の一例による電気水力学的現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に図示されたプリンティング装置に電圧が印加された場合に生成される電場分布を概略的に示す図面である。
【図3】本発明の一実施形態による電荷集中現象を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図4】図3に図示された基板の平面図である。
【図5】図3に図示されたプリンティング装置に電圧が印加された場合に、電界形成電極に充電される正電荷及びその正電荷により基板に誘導される負電荷の分布と、吐出口についた生体分子の液滴に作用する力の関係とを概略的に示す図面である。
【図6】図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴をプリンティングする過程を説明するための図面である。
【図7】図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴を基板上に滴下する過程で、ネック状の生体分子の液滴に作用する表面張力の関係を説明するための図面である。
【図8】図3に図示されたプリンティング装置を使用してガラスまたはPMMAで表面処理された基板に生体分子の液滴をプリンティングする場合に、その基板に付着された生体分子の液滴の体積を示すグラフである。
【図9】図3に図示されたプリンティング装置を使用してPMMAで表面処理された基板に生体分子の液滴を10回プリンティングする場合において、各場合に基板に付着された生体分子の液滴の体積及びこの時にかかる時間を示すグラフである。
【図10】電界形成電極と基板との間隔と、吐出口から吐出される生体分子の液滴の体積との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の他の実施形態による電荷集中現象を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態による電荷集中現象を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図13】図11に図示された装置を使用して生体分子の液滴またはインクを連続的にプリンティングすることを概略的に示す図面である。
【図14】本発明による一組の電界形成電極が備わったプリンティング装置を使用して生体分子の液滴をプリンティングする過程及びそのプリンティング状態を説明するための写真である。
【図15】図3に図示されたプリンティング装置を使用してブルーインクを印刷用紙にプリンティングした後に、そのプリンティングされた状態を撮影した写真である。
【符号の説明】
【0082】
10 生体分子の液滴、
20 電界形成電極、
21 電極リード線、
22 収容部、
23 吐出口、
30、70 基板、
31 標的部、
40 プリンタ本体、
50 開放型電圧印加装置、
71 平板部、
72 突出部、
90 ステージ、
100、200、300 電荷集中現象を利用して基板または印刷用紙上に生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置及び電荷集中現象を利用して印刷用紙上にインクをプリンティングする装置に係り、より詳細には、プローブDNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴を基板表面上に滴下して固定化させてバイオチップを製作するために、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置及びインクを印刷用紙に滴下してコンピュータ文書ファイルの内容、写真ファイルなどを出力するために、電荷集中現象を利用して印刷用紙上にインクをプリンティングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクトの驚異的な進行と共に、遺伝病の診断、治療及び予防において莫大な量の遺伝子情報を迅速に提供できる方法への要求が高まっている。これまで塩基配列決定法として使われてきたサンガー(Sanger)の方法は、DNAを複製するポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)法の開発及びその自動化により発展したにもかかわらず、過程が面倒で長時間、労力、コスト及び高度の熟練度を要するために、ぼう大な量の遺伝子を分析できず、新たな塩基配列分析システムが絶えずに摸索された。このような時代的背景に応じて、ここ数年間バイオチップの製作及び利用技術と関連した多くの部分で進歩があった。
【0003】
バイオチップとは、シリコン、表面改質ガラス、ポリプロピレン、活性化ポリアクリルアミドのような固体基板表面に核酸、蛋白質、細胞などの生体分子を結合させて、遺伝子発現様相、遺伝子欠陥、蛋白質分布、各種反応様相などを分析できる生物学的マイクロチップをいう。
【0004】
このようなバイオチップに分析しようとする標的物質を反応させれば、バイオチップに付着されているプローブと標的物質と結合状態をなすが、これを光学的な方法または放射能化学的方法などを通じて観察解析することによって標的物質を分析することができる。例えば、プローブDNAが付着されたDNAチップ(DNAマイクロアレイ)に分析しようとする標的DNA断片を結合させれば、プローブと標的DNA断片上の塩基配列との相補的な程度によってそれぞれ異なる混成化結合状態をなすが、これを色々な検出方法を通じて観察して解析することによって、標的DNAの塩基配列を分析することができる(Sequencing By Hybridization:SBH)。
【0005】
このようなバイオチップまたはDNAマイクロアレイの製作に使われるプリンティング装置の一例は、特許文献1に開示されている。図1に示すように、プリンティング装置1は、導電性素材からなって上下方向に長く配置されており、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴10が収容される収容部2、収容部2と連結されて前記生体分子の液滴がその収容部2の外部に吐出されるように、その収容部2の下端部に形成された吐出口3を持つ針状の電界形成第1電極4と、電界形成第1電極4の下方に配置されており、電界形成第1電極4の吐出口3から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部5を持つ基板6と、電界形成第1電極4の下方に配置されており、導電性素材からなり、基板6に付着される電界形成第2電極7とを備える。また、電界形成第1電極4及び電界形成第2電極7は、電極リード線8により電圧印加装置9に連結されており、その電界形成第1電極4及び電界形成第2電極7に電圧を印加できるようになっている。
【0006】
前述したように構成されたプリンティング装置1において、電圧印加装置9を駆動して電界形成第1電極4及び電界形成第2電極7に直流電圧及び交流電圧を同時に印加すれば、図2に示したように、その電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間に電場が発生する。このように発生した電場分布、自由表面(free surface)を持つ前記生体分子の液滴10及び大気の誘電率勾配(dielectric constant gradient)との相互作用によって、前記生体分子の液滴10の周囲から前記生体分子の液滴10側には電気力が発生し、これにより吐出口3についていた生体分子の液滴10が基板6の標的部5に滴下される。
【0007】
ところが、前述したようなプリンティング装置1において、基板が導電性素材からなるか、基板に導電性素材からなる電界形成第2電極が付着されて初めて、電界形成第1電極と基板との間に電場を形成させることができ、これにより電気水力学的現象を発生させて生体分子の液滴10をプリントできる。したがって、基板の材質及び表面が導電性を持つように構成せねばならないという不便さがある。
【0008】
また、図2に示したように、電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間の電場は不均一に発生し、これにより、生体分子の液滴を所望の位置の標的部に滴下できない場合が頻繁に発生する。
【0009】
一方、電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔が一定レベルより小さくなれば、電気放電が発生するが、このような電気放電は標的部に滴下される生体分子の液滴の生化学的性質の変形や液滴の大きさ及び体積を不均一にさせるだけでなく、基板の表面構造や性質を変化させるので、電気放電が発生しないように電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔が調節されねばならない。実際に、基板がPMMAでコーティングされた場合(コーティング厚さ5μm)において、電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔が750μm以上になって初めて電気放電が発生しなくなる。したがって、前記電気放電が防止されるプリンティング装置を構成するに当って、その電界形成第1電極4と電界形成第2電極7との間隔を一定レベル以上に調節せねばならないという側面で設計上の制約が伴う。
【特許文献1】大韓民国特許出願第2005−40162号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、基板の材質及び表面特性に制限されず、生体分子の液滴を所望の位置の標的部に正確に滴下できるだけでなく、電気放電が発生しないように構成して電界形成電極と基板との距離を自由に調節でき、生体分子の液滴を従来に比べてさらに小さいサイズ及び体積で基板に滴下して付着させて、同サイズの基板に多くの生体分子の液滴をプリントして高密度のバイオチップを製作可能にする装置であって、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子をプリンティングする装置を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、プリント時に使われるインクを従来に比べてさらに小さなサイズ及び体積で印刷用紙またはカラーフィルタ用ガラス基板に滴下してコンピュータ文書ファイルの内容、写真ファイルまたはディスプレイ用カラーフィルタなどを精密に出力または製造可能にする装置であって、電荷集中現象を利用して、印刷用紙または基板上にインクをプリンティングする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明による電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置において、導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記生体分子の液滴が収容される収容部、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴で前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口を持つ針状の電界形成電極と、前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って接地されている基板と、前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記生体分子は、核酸、蛋白質、オリゴペプチド、糖類、真核細胞、ウイルス、及びバクテリアで構成された群から選択されることが望ましい。
【0014】
また、本発明によれば、前記電界形成電極の吐出口の上方に配置されており、前記電界形成電極を支持するプリンタ本体をさらに備えることが望ましい。
【0015】
また、本発明によれば、前記電界形成電極及び開放型電圧印加装置は、前記電界形成電極の上端部に接続されている電極リード線により電気的に連結されていることが望ましい。
【0016】
また、本発明によれば、前記開放型電圧印加装置は、前記吐出口についている前記生体分子の液滴の下方に電場が形成されるように交流電圧及び直流電圧を同時に印加することが望ましい。
【0017】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、5Vないし100,000Vの前記直流電圧及び5Vないし100,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることが望ましい。
【0018】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、500Vないし10,000Vの前記直流電圧及び500Vないし10,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることが望ましい。
【0019】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、10Hzないし1,000Hzの前記交流電圧が印加されることが望ましい。
【0020】
また、本発明によれば、前記電界形成電極には、2000Vの前記直流電圧と、500V及び130Hzの前記交流電圧が同時に印加されることが望ましい。
【0021】
また、本発明によれば、前記基板は、シリコン、ガラス、ポリマーで構成された群から選択される1種以上からなることが望ましい。
【0022】
また、本発明によれば、前記基板の表面は、前記生体分子の液滴がよく付着されるように、アミン基、カルボキシル基、バイオチン、ストレプトアビジン、ポリLリジン及びチオールで構成された群から選択される1種以上がコーティングされていることが望ましい。
【0023】
また、本発明によれば、前記基板は、平板状の平板部と、前記平板部から上方に突出した複数の突出部と、を有し、前記各突出部が前記基板の標的部であることが望ましい。
【0024】
また、本発明によれば、前記基板は、前記電界形成電極と略直交するように配置されていることが望ましい。
【0025】
また、本発明によれば、前記電界形成電極は、導電性金属、導電性ポリマー、及びITOガラスで構成された群から選択される1種以上からなることが望ましい。
【0026】
また、本発明によれば、前記電界形成電極の吐出口付近は、疎水性処理されたことが望ましい。
【0027】
また、本発明によれば、前記電界形成電極は同一ピッチで複数設けられており、前記基板には複数の標的部が設けられており、その標的部は、前記電界形成電極とそれぞれ対応するようにその電界形成電極と同一ピッチで配置されていることが望ましい。
【0028】
また、前記目的を達成するために、本発明による電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする方法は、電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする方法は、導電性素材からなり、前記生体分子の液滴が収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴が前記収容部の外部に吐出されるように、前記収容部の下端部に形成された吐出口とを持つ針状の電界形成電極を上下方向に長く配置する電界形成電極配置ステップと、前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って、接地されている基板を前記電界形成電極の下方に配置する基板配置ステップと、前記電界形成電極と電気的に連結された開放型電圧印加装置を配置する開放型電圧印加装置配置ステップと、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴を前記電界形成電極の収容部に供給する生体分子の液滴供給ステップと、前記開放型電圧印加装置から前記電界形成電極に電圧を印加して前記電界形成電極に電荷を充電し、前記充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下する生体分子の液滴分離ステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
一方、前記他の目的を達成するために、本発明による電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置は、導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記インクが収容される収容部、前記収容部と連結されて前記インクが前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口を持つ針状の電界形成電極と、前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出されるインクが滴下されて付着される標的部を持ち、接地されている印刷用紙または印刷基板と、前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記印刷用紙または印刷基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴が前記印刷用紙または印刷基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、基板の材質及び表面特性に制限されずに生体分子の液滴を所望の位置の標的部に正確に滴下できるだけでなく、電気放電が発生しないように構成して電界形成電極と基板との距離を自由に調節でき、生体分子の液滴を従来に比べてさらに小さい大きさ及び体積で基板に滴下して付着させて、同サイズの基板に多くの生体分子の液滴をプリントして高密度のバイオチップを製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明による望ましい実施形態を添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態による電荷集中現象(electric charge concentration effect)を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図であり、図4は、図3に図示された基板の平面図であり、図5は、図3に図示されたプリンティング装置に電圧が印加された場合に電界形成電極に充電される正電荷及びその正電荷により基板に誘導される負電荷の分布と、吐出口についた生体分子の液滴に作用する力の関係とを概略的に示す図面であり、図6は、図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴をプリンティングする過程を説明するための図面である。図7は、図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴を基板上に滴下する過程で、ネック状の生体分子の液滴に作用する表面張力の関係を説明するための図面である。
【0033】
図3ないし図7を参照すれば、本実施形態の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴10をプリンティングする装置100は、電界形成電極20と、基板30と、プリンタ本体40と、開放型電圧印加装置50と、を備える。
【0034】
電界形成電極20は、金、白金、銅のような導電性金属、伝導性ポリマー、ITO(Indium−Tin Oxide)ガラス、カーボンナノチューブのうちいずれか一つからなっているか、または、前記導電性金属、伝導性ポリマー、ITOガラス、カーボンナノチューブのうち少なくとも2種類からなっている。本実施形態では、一例として、金からなっている。電界形成電極20は、一方向に長く形成されていて全体的に針状になっており、電解形成電極20の長手方向が垂直方向になるように配置されている。電界形成電極20の上端部には、電極リード線21が接続されており、この電極リード線21により、電界形成電極20と後述する開放型電圧印加装置50とは互いに電気的に連結されている。
【0035】
電界形成電極20は、収容部22及び吐出口23を備える。
【0036】
収容部22は、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、糖類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴10が収容される部分である。
【0037】
吐出口23は、収容部22の下端部に形成されており、その収容部22と連結されている。吐出口23の内径は非常に小さく形成されているので、外部から力が加えられなければ、生体分子の液滴10が表面張力により重力に打ち勝ってその吐出口23についている。吐出口23を通じて収容部22に収容されている生体分子の液滴10は、後述する電荷集中現象によりその収容部22の外部に吐出可能である。吐出口23の付近は疎水性処理されているので、生体分子の液滴10と吐出口23の表面との接触角が大きくなってその生体分子の液滴10は吐出口23の横に流れなくなる。
【0038】
基板30は、バイオチップまたはDNAマイクロアレイを構成するものであって、シリコン、ガラス、ポリマーのうちいずれか一つからなるか、または、シリコン、ガラス、ポリマーのうち少なくとも2種類からなっている。本実施形態では、一例として基板30はシリコンからなっている。基板30は、電界形成電極20の下方に配置されており、特に電界形成電極20と略直交するように配置されている。基板30には標的部31が形成されている。標的部31には、電界形成電極20の吐出口23から吐出される生体分子の液滴10が滴下されて付着される。基板30は、接地されている。そして、基板30の表面、特に基板30の標的部31はアミン基、カルボキシル基、ストレプトアビジン、バイオチン、チオール、ポリLリジンのうちいずれか一つでコーティングされているか、アミン基、カルボキシル基、ストレプトアビジン、バイオチン、チオール、ポリLリジンのうち少なくとも2種類でコーティングされており、これにより、生体分子の液滴10は、基板30の表面にさらによく付着されうる。
【0039】
プリンタ本体40は、電界形成電極20の吐出口23の上方に配置されている。プリンタ本体40は、電界形成電極20を支持し、PMMA(polymethlymethacrylate)からなっている。プリンタ本体40は、別途の駆動装置(図示せず)によりx、y及びz軸に3次元移動が可能である。したがって、前記別途の駆動装置を駆動させて、プリンタ本体40に支持されている電界形成電極20を標的部31の上方に移動させて、その標的部31と一定距離離隔されるように配置させることができる。
【0040】
開放型電圧印加装置50は、電界形成電極20と電気的に連結されている。開放型電圧印加装置50は、電極リード線21を通じて電界形成電極20に直流電圧と交流電圧とを同時に印加でき、このような直流電圧及び交流電圧の印加によって吐出口23についている生体分子の液滴10に正電荷が充電され、その充電された正電荷により基板30には負電荷が誘導される。したがって、正電荷と負電荷との間には図5に図示されたような電場が形成される。そして、電界形成電極20に充電された正電荷と、その正電荷により基板30に誘導された負電荷との間に発生したクーロン力により、生体分子の液滴10が基板30の標的部31に滴下される。以下、これについて詳細に説明する。
【0041】
図5を参照すれば、電界形成電極20に電圧が印加される場合に、吐出口31についている生体分子の液滴10には、その生体分子の液滴10に作用する重力(Fg)と、生体分子の液滴10の表面に作用する表面張力(Fc)と、生体分子の液滴10に充電された正電荷とその正電荷により基板30に充電された負電荷との間のクーロン力(Fe)とが作用することが分かる。そして、重力(Fg)と、表面張力(Fc)と、クーロン力(Fe)とは、図5に図示されたような方向に作用するために、生体分子の液滴10が下方に滴下される直前に、重力(Fg)と、表面張力(Fc)と、クーロン力(Fe)とは、次の数式(1)のような力の平衡関係を維持する。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、重力(Fg)=ρg△Vdrop(ただし、ρは、生体分子の液滴の密度であり、gは、重力加速度であり、△Vdropは、吐出口についている生体分子の液滴の体積である)であり、表面張力(Fc)=2πRγ(ただし、Rは、吐出口の半径であり、γは、単位長さ当り表面張力である)であり、クーロン力(Fe)=ρfE−E2∇ε/2(ただし、ρfは、生体分子の液滴の自由電荷であり、Eは、電場の強度であり、∇εは、誘電率である)である。ここで、電気力は電気泳動力(ρfE)と誘電泳動力(−E2∇ε/2)との和で表される。
【0044】
数式(1)で重力(Fg)は、吐出口についている生体分子の液滴の体積に比例し、その生体分子の液滴の体積は非常に小さいので、結局、数式(1)で重力(Fg)は無視できる。
【0045】
したがって、吐出口23についている生体分子の液滴10の表面張力(Fc)より大きいクーロン力(Fe)を発生させれば、そのクーロン力により数式(1)の平衡関係が崩れ、これにより、生体分子の液滴10を基板30の標的部31に滴下できる。そして、吐出口についている生体分子の液滴10の表面の下端部に集中した電荷によって、基板30には相対電荷が誘導され、その誘導された相対電荷は主にその生体分子の液滴10の表面の下端部と対向する部分に誘導される。したがって、生体分子の液滴10の電荷と基板の相対電荷との間にクーロン力が発生する。
【0046】
一方、以下では、本発明のように電荷集中現象を利用する場合と、図1に示したように電気水力学的現象を利用する場合とにおいて、生体分子の液滴を下方に滴下するために必要な力の大きさについてさらに詳細に比較する。
【0047】
図1に図示された電気水力学的現象を利用する方法においても、数式(1)のような力の平衡関係を持っている。生体分子の液滴の体積が非常に小さいので、重力(Fg)を無視でき、作用するクーロン力のうち誘電泳動力(−E2∇ε/2)は電気泳動力(ρfE)に比べて非常に小さいために無視できる。すなわち、電荷集中現象を利用する場合と同様に、下記に示す数式(2)のような関係を持つ。
【0048】
【数2】
【0049】
したがって、吐出口についている生体分子の液滴を下方に滴下するためには、液滴に作用する表面張力より電気泳動力が大きく作用すればよい。
【0050】
前述したように、電荷集中現象と電気水力学的現象とは、支配する力の種類においては非常に類似している。しかし、電気泳動力の大きさ及び作用する範囲が大きく異なる。電気水力学的現象の場合、生体分子の液滴の表面全体に電荷が分布して電気泳動力が液滴の表面に均一に作用するに対し、電荷集中現象の場合、液滴の表面の下端部にのみ大部分が集中してこの部分にのみ強い電気泳動力が作用する。すなわち、同じ電圧を外部から加えた時、電荷集中現象の電気泳動力が電気水力学的現象の電気泳動力に比べて103倍ほどさらに大きく作用する。したがって、電荷集中現象は電気水力学的現象に比べてさらに小サイズの液滴を下方に滴下するにははるかに効率的である。
【0051】
一方、開放型電圧印加装置50によって5Vないし100,000Vの直流電圧と、5Vないし100,000V及び10Hzないし1,000Hzの交流電圧が同時に印加されることが望ましくて、特に500Vないし10,000Vの直流電圧と、500Vないし10,000V及び10Hzないし1,000Hzの交流電圧とが同時に印加されることがさらに望ましい。上述のような電圧範囲及び周波数範囲を外れた直流電圧及び交流電圧を印加すれば、生体分子の液滴10に適切な大きさのクーロン力を作用させてその生体分子の液滴10を基板30に効率的に落とせないので望ましくない。そして、開放型電圧印加装置50によって、2000Vの直流電圧と、500V及び130Hzの交流電圧とが印加されることが最も望ましい。
【0052】
以下、本実施形態の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置100を使用して生体分子の液滴10をプリンティングする過程の一例を、図6を参照しつつ詳細に説明する。
【0053】
まず、駆動装置を駆動して電界形成電極20が支持されているプリンタ本体40を基板30の標的部31の上方に移動させる。その後に、プローブDNA、RNA、PNA、LNAなどの核酸類、抗原、抗体などの蛋白質類、オリゴペプチド類、糖類、人間細胞、動物細胞、植物細胞などの真核細胞類、ウイルス、バクテリアのような生体分子の液滴10を電界形成電極20の収容部22に供給する。この時、電界形成電極20はその下端部に吐出口23が形成されているが、その吐出口23の内径は非常に小さく形成されているので、外部から力が加えられなければ、生体分子の液滴10が表面張力により重力に打ち勝って吐出口23についている。
【0054】
このように生体分子の液滴10を供給した後に、開放型電圧印加装置50で電界形成電極20に5Vないし100,000Vの直流電圧と、5Vないし100,000V及び10Hzないし1,000Hzの交流電圧とを同時に印加すれば、吐出口23についている生体分子の液滴10には正電荷が充電され、これにより接地されている基板30には負電荷が誘導される。そして、前記正電荷と負電荷との間には、図5に示したように電場が形成される。
【0055】
このように、生体分子の液滴10に正電荷が充電され、これによりその生体分子の液滴10が対向している基板30の部分に負電荷が誘導されれば、前記正電荷と負電荷との間にクーロン力が発生する。ここで、負電荷が生体分子の液滴10の下方に誘導されるので、前記クーロン力は生体分子の液滴の下方に集中的に作用する。そして、前記クーロン力により吐出口23についていた生体分子の液滴を図6の中間写真、すなわち、図7に示したように、基板30に滴下されてほぼ臼型に変形され、その臼型に変形された生体分子の液滴にはネック状が(neck shape)形成される。このように吐出口についていた生体分子の液滴が基板30に滴下されて図7に示したように形成されれば、その生体分子の液滴に充電されていた正電荷が基板の負電荷と共に消滅され、これによりクーロン力が低減する。すなわち、吐出口23についていた生体分子の液滴を下方に引き寄せたクーロン力が低減する。そして、前記ネック状をなす生体分子の液滴と基板30との間の表面張力Aと、前記ネック状をなす生体分子の液滴と電界形成電極20との間に形成された表面張力Bは、図7に示したように互いに逆方向に作用する。このように、生体分子の液滴に充電された電荷が消滅してクーロン力が低減するだけでなく、生体分子の液滴の表面張力A、Bが互いに逆方向に作用するので、生体分子の液滴をそのネック状部分から分離させて二つの生体分子の液滴に分離させる。したがって、基板30には図6の最後の写真に示したように生体分子の液滴が滴下されて付着される。
【0056】
本実施形態においては、基板が接地されるように構成されているので、その基板の構成において基板の材質に制限されなくてもよい。すなわち、従来に電気水力学的現象を利用する場合には基板を導電性素材で製作するか、基板に導電性素材からなる電界形成電極を配置するように構成せねばならないが、本実施形態においては、基板の構成においてこのような点を考慮する必要がなくなる。
【0057】
また、生体分子の液滴に充電された正電荷により、その生体分子の液滴と対向する基板の部分に負電荷を誘導させるだけでなく、電気水力学的現象を利用する場合に比べて生体分子の液滴にさらに多くの正電荷が充電されるので、生体分子の液滴を所望の位置の標的部に滴下して付着できるようになる。
【0058】
そして、本実施形態においては、前述したようにクーロン力が非常に大きく作用するために、生体分子の液滴を従来に比べてさらに小さなサイズ及び体積、例えば、ピコリットル(picoliter)以下の単位で基板30の標的部31に滴下できるだけでなく、その生体分子の液滴を滴下するのにかかる時間も短縮できる。
【0059】
また、基板が接地されるように構成されているので、従来のように電気水力学的現象を利用する場合とは違って電気放電が発生しなくなり、これにより、電界形成電極と基板との間隔を自由に調節できる。そして、このような間隔を調節すれば、基板に滴下される生体分子の液滴の体積を自由に調節できるようになって、本実施形態のプリンティング装置をさらに自由に設計できる。
【0060】
さらに、基板に複数の標的部が形成されるように構成して生体分子の液滴をその各標的部ごとにプリントすれば、従来とは違って同サイズの基板30に多くの生体分子の液滴10をプリンティングすることが可能になるので、高密度のバイオチップを製作することも容易になるという長所もある。
【0061】
前述したように、本実施形態において従来とは違って生体分子の液滴をさらに小さなサイズ及び体積でさらに短い時間に基板にプリントできるという点を定量的に確認するために、次のような実験を行った。
【0062】
生体分子の液滴10として、pH10の緩衝液で緩衝された100μM DNAを準備し、直径が0.46mmである電界形成電極20を準備した。そして、ガラスからなる基板30を準備し、そのガラス基板30と電界形成電極20との距離が250μmになるように構成した。このように準備された状態で、電界形成電極20に2000Vの直流電圧及び500V、130Hzの交流電圧を同時に印加して基板に滴下される生体分子の液滴の大きさ及び体積と、滴下にかかる時間とを測定した(大きさ、体積の測定時に使われた解像度は1.7μm/pxである)。そして、このような実験を10回反復してその平均及び標準偏差を計算した。計算結果、基板に滴下されて付着された生体分子の液滴の平均体積は83.7plであり、標準偏差は9.0plであった。そして、生体分子の液滴が滴下されるのにかかる平均時間は0.23秒であり、標準偏差は0.11秒であった。また、基板に付着された生体分子の液滴の平均の大きさは45μmであった。
【0063】
次いで、生体分子の液滴10として、pH10の緩衝液で緩衝された100μM DNAを準備し、直径が0.46mmである電界形成電極20を準備した。そして、PMMAでコーティングされた基板を準備し、PMMAでコーティングされた基板と電界形成電極との距離が200μmになるように構成した。このように準備された状態で、電界形成電極20に2000Vの直流電圧及び500V、130Hzの交流電圧を同時に印加して基板に滴下される生体分子の液滴の大きさ及び体積と、滴下にかかる時間とを測定した(大きさ、体積の測定時に使われた解像度は1.7μm/pxである)。そして、このような実験を10回反復してその平均及び標準偏差を計算した。計算結果、基板に滴下されて付着された生体分子の液滴の平均体積は2.6plであり、標準偏差は0.9plであった。そして、生体分子の液滴で滴下されるのにかかる平均時間は0.13秒であり、標準偏差は0.03秒であった。また、基板に付着された生体分子の液滴の平均の大きさは13μmであった。
【0064】
前述したようにPMMAでコーティングされた基板と、ガラス基板との場合についての実験結果は、図8に図示されている。そして、図9には、PMMAでコーティングされた基板の場合に行われた各実験についてのデータが表で図示されている。
【0065】
一方、図10には、電界形成電極と親水性表面性質を持つガラス基板との間隔と、そのガラス基板に滴下される生体分子の液滴の体積との関係が図示されている。ガラス基板と電界形成電極との間隔をそれぞれ275μm、300μmに変化させた状態で、上述のような実験を10回同一に実施すれば、ガラス基板と電界形成電極との間隔が275μmである場合には基板に滴下された生体分子の液滴の平均体積が2.6plであり、ガラス基板と電界形成電極との間隔が300μmである場合には、基板に滴下された生体分子の液滴の平均体積が1.3plであるということが分かる。このように、電界形成電極とガラス基板との間隔が遠ざかるほど基板に滴下される生体分子の液滴の体積が縮小されるので、電界形成電極とガラス基板との間隔のみを調節してもその基板に滴下される生体分子の液滴の体積を調節できる。
【0066】
一方、本実施形態においては、基板の表面が平らに形成されており、その基板には一つの標的部のみ形成されているが、基板70の表面に図11に示したように複数の突出部72を形成し、その突出部72が標的部になるように構成できる。図11に示したように、基板70は、平板状の平板部71と、平板部71から上方に突出した複数の突出部72と、を持つ。突出部72は、同一ピッチで配列されている。各突出部72は、電界形成電極の吐出口23から吐出される生体分子の液滴10が滴下されて付着される標的部である。そして、基板70は、ステージ90(図13)に設置されており、このステージはコンベヤーなどにより移動されうる。
【0067】
このように構成された電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置200においては、生体分子の液滴10をプリンティングしようとする突出部72の上方に電界形成電極20が位置するように、別途の駆動装置を駆動させてプリンタ本体40を移動させた後に、電界形成電極20に直流電圧及び交流電圧を印加して生体分子の液滴10を基板70の突出部72に滴下する。そして、再び駆動装置を駆動してプリンタ本体40を移動させて他の突出部72の上方に電界形成電極20を位置させ、再び電界形成電極20に直流電圧及び交流電圧を印加して生体分子の液滴10をプリンティングする。このような方式でプリンタ本体40を動かしてすべての突出部72に対して生体分子の液滴10を滴下して固定させることができる。
【0068】
このようにすべての突出部72に生体分子の液滴10をプリンティングしてバイオチップまたはDNAマイクロアレイを製作して、そのバイオチップまたはDNAマイクロアレイに分析しようとする標的DNA断片を結合させれば、突出部72は凹部分により互いに隔離されているので、実験者は各突出部72に形成された混成化結合のみを光学的な方法または放射能化学的方法などを通じて観察でき、さらに正確に標的DNAの塩基配列を分析できる。
【0069】
一方、図11に図示された本発明の他の実施形態においては、電界形成電極が一つ設けられており、その電界形成電極が別途の駆動装置により3次元に動いて基板の各突出部に生体分子の液滴をプリントするように構成されているが、図12に図示されているように、電界形成電極20を基板70の各突出部72に対応するように複数用意して構成してもよい。このように構成された電界形成電極20は、基板70の突出部72と同じピッチで配列されており、これにより、各突出部72は各電界形成電極20と対応する。そして、電界形成電極20は互いに電気的に絶縁されている。また、各電界形成電極20は、電極リード線21と電気的に連結されており、この電極リード線21は、開放型電圧印加装置50と電気的に連結されている。したがって、開放型電圧印加装置50を駆動すれば、すべての電界形成電極20に電圧が印加される。
【0070】
このように構成された電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置300においては、他の種類の生体分子の液滴を同時にプリンティングしようとする時に特に有益になる。図13は、図11に図示された装置を使用して基板70に生体分子の液滴をプリンティングする態様を図示した図面であって、電荷集中現象を利用して複数枚のシリコン基板、すなわち、バイオチップまたはDNAマイクロアレイを製作する状態を図示している。図13に示したように、一つのシリコン基板70への生体分子プリンティングが終われば、自動的に基板70を支持するステージ90が移動するようになり、これにより、他の基板70に連続的に生体分子の液滴をプリンティングできる。
【0071】
一方、電界形成電極が一組備わったプリンティング装置300の場合について次のような実験をした。直径460μmである一組の電界形成電極と、PMMAでコーティングされた平らな基板とを備え、その電界形成電極が互いに3.7mm離隔されるように配置されており、その各電界形成電極の吐出口と基板とが互いに787μm離隔されるように配置された生体分子の液滴プリンティング装置を準備した。そして、各電界形成電極にpH10の緩衝液で緩衝された100μM DNAを供給して、図14の左側写真に示したようにDNAを吐出口につけた後、各電界形成電極に2000Vの直流電圧と、100Hz及び500Vの交流電圧とを同時に印加すれば、図14の右側写真に示したように、生体分子の液滴2滴を同時に基板にプリンティングできる。このようにプリンティングした後、そのプリンティングされた生体分子の液滴2滴をそれぞれ倍率8.2μm/pxで測定した。測定結果、プリンティングされた一方の生体分子の液滴は10.8nlであり、残りの一つの生体分子の液滴は9.8nlであった。
【0072】
一方、前記実施形態においては、基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置についてのみ説明されているが、上述した電荷集中現象を利用すれば、基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置と同様に、印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置を構成してもよい。合わせて、電荷集中現象を利用して、プリント用インクをカラーフィルタ用ガラス基板に滴下させてディスプレイ用カラーフィルタなどを製造してもよい。
【0073】
すなわち、図3、図11及び図12で電界形成電極の収容部に生体分子の液滴の代りにインクを入れて、基板の代りに印刷用紙や印刷基板を接地させた状態で、電界形成電極に直流電圧及び交流電圧を同時に印加すれば、その電界形成電極の吐出口についているインクに正電荷が充電され、そのインクと対向する印刷用紙や印刷基板の部分、すなわち、標的部には負電荷が誘導される。そして、インクの正電荷と標的部の負電荷との間に発生するクーロン力により、吐出口についているインクを標的部に滴下させることができる。したがって、従来にインクジェット方式、レーザー方式のプリンタとは違って電荷集中現象を利用して、コンピュータ文書ファイルの内容、写真ファイルなどを精密に出力することも可能になる。
【0074】
そして、インクが小さい体積でプリンティングされる点を確認するために、次のような実験をした。直径460μmである一つの電界形成電極と、A4サイズの印刷用紙とを備え、その電界形成電極の吐出口と印刷用紙とが適切な間隔(300μmないし1500μm)で離隔されるように配置されたインクプリンティング装置を準備した。そして、電界形成電極にブルーインクを供給し、その電界形成電極に2000Vの直流電圧と、100Hz及び500Vの交流電圧とを同時に印加して、印刷用紙にブルーインクをプリンティングし、そのプリンティングされたブルーインクを倍率30μm/pxで測定した。この時に、電界形成電極の吐出口についているブルーインク滴の大きさを異ならせて変更することによって、そのプリンティングされたブルーインクの大きさを変化させ、それぞれの場合についてプリンティングされるのにかかる時間も測定した。ブルーインクのプリンティングされた状態は図15に図示されている。そして、プリンティングされたブルーインクの大きさを測定すれば、その大きさは、それぞれ837μm、344μm、300μm、159μm、79μmであった。また、ブルーインクをプリンティングするのにかかった時間は、837μmのブルーインクの場合は0.2秒であり、79μmのブルーインクの場合は0.5秒であった。すなわち、プリンティングされるブルーインクの大きさを調節でき、ブルーインクをさらに小サイズにプリンティングするほどそのプリンティングにかかる時間はさらに延長する。
【0075】
以上、本発明を望ましい実施形態を例として詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で当業者によって色々な多くの変形が可能であるということは明らかである。
【0076】
例えば、本実施形態ではプリンタ本体が備わっているが、プリンタ本体が備わらなくてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、電界形成電極に交流電圧と直流電圧とが同時に印加されるように構成されているが、交流電圧のみ印加させるか、直流電圧のみ印加させることもできる。
【0078】
また、本実施形態では、生体分子の液滴に正電荷が充電されて基板に負電荷が誘導されるように構成されているが、生体分子の液滴に負電荷を充電させてその充電された負電荷によりその生体分子の液滴と対向する基板の部分に正電荷が誘導されるように構成でき、このように構成されても負電荷と正電荷との間にはクーロン力が発生するので、このクーロン力により生体分子の液滴を基板に滴下することができる。
【0079】
また、本実施形態では、基板が平板部と複数の突出部とを備えるように構成されているが、その基板が平板状の平板部のみを持つように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、生体分子プリンティグ装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】従来の一例による電気水力学的現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に図示されたプリンティング装置に電圧が印加された場合に生成される電場分布を概略的に示す図面である。
【図3】本発明の一実施形態による電荷集中現象を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図4】図3に図示された基板の平面図である。
【図5】図3に図示されたプリンティング装置に電圧が印加された場合に、電界形成電極に充電される正電荷及びその正電荷により基板に誘導される負電荷の分布と、吐出口についた生体分子の液滴に作用する力の関係とを概略的に示す図面である。
【図6】図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴をプリンティングする過程を説明するための図面である。
【図7】図3に図示されたプリンティング装置を使用して生体分子の液滴を基板上に滴下する過程で、ネック状の生体分子の液滴に作用する表面張力の関係を説明するための図面である。
【図8】図3に図示されたプリンティング装置を使用してガラスまたはPMMAで表面処理された基板に生体分子の液滴をプリンティングする場合に、その基板に付着された生体分子の液滴の体積を示すグラフである。
【図9】図3に図示されたプリンティング装置を使用してPMMAで表面処理された基板に生体分子の液滴を10回プリンティングする場合において、各場合に基板に付着された生体分子の液滴の体積及びこの時にかかる時間を示すグラフである。
【図10】電界形成電極と基板との間隔と、吐出口から吐出される生体分子の液滴の体積との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の他の実施形態による電荷集中現象を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態による電荷集中現象を利用して生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置を概略的に示す断面図である。
【図13】図11に図示された装置を使用して生体分子の液滴またはインクを連続的にプリンティングすることを概略的に示す図面である。
【図14】本発明による一組の電界形成電極が備わったプリンティング装置を使用して生体分子の液滴をプリンティングする過程及びそのプリンティング状態を説明するための写真である。
【図15】図3に図示されたプリンティング装置を使用してブルーインクを印刷用紙にプリンティングした後に、そのプリンティングされた状態を撮影した写真である。
【符号の説明】
【0082】
10 生体分子の液滴、
20 電界形成電極、
21 電極リード線、
22 収容部、
23 吐出口、
30、70 基板、
31 標的部、
40 プリンタ本体、
50 開放型電圧印加装置、
71 平板部、
72 突出部、
90 ステージ、
100、200、300 電荷集中現象を利用して基板または印刷用紙上に生体分子の液滴またはインクをプリンティングする装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置において、
導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記生体分子の液滴が収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴が前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口と、を持つ針状の電界形成電極と、
前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って接地されている基板と、
前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項2】
前記生体分子は、核酸、蛋白質、オリゴペプチド、糖類、真核細胞、ウイルス、及びバクテリアで構成された群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項3】
前記電界形成電極の吐出口の上方に配置されており、前記電界形成電極を支持するプリンタ本体をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項4】
前記電界形成電極及び開放型電圧印加装置は、前記電界形成電極の上端部に接続されている電極リード線により電気的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項5】
前記開放型電圧印加装置は、前記吐出口についている前記生体分子の液滴の下方に電場が形成されるように交流電圧及び直流電圧を同時に印加することを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項6】
前記電界形成電極には、5Vないし100,000Vの前記直流電圧及び5Vないし100,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることを特徴とする請求項5に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項7】
前記電界形成電極には、500Vないし10,000Vの前記直流電圧及び500Vないし10,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることを特徴とする請求項6に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項8】
前記電界形成電極には、10Hzないし1,000Hzの前記交流電圧が印加されることを特徴とする請求項6に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項9】
前記電界形成電極には、2000Vの前記直流電圧と、500V及び130Hzの前記交流電圧とが同時に印加されることを特徴とする請求項7に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項10】
前記基板は、シリコン、ガラス、ポリマーで構成された群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項11】
前記基板の表面は、前記生体分子の液滴がよく付着されるように、アミン基、カルボキシル基、バイオチン、ストレプトアビジン、ポリLリジン、及びチオールで構成された群から選択される1種以上がコーティングされていることを特徴とする請求項10に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項12】
前記基板は、平板状の平板部と、前記平板部から上方に突出した複数の突出部と、を有し、
前記各突出部が前記基板の標的部であることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項13】
前記基板は、前記電界形成電極と略直交するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項14】
前記電界形成電極は、導電性金属、導電性ポリマー、及びITOガラスで構成された群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項15】
前記電界形成電極の吐出口付近は、疎水性処理されたことを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項16】
前記電界形成電極は同一ピッチで複数設けられており、
前記基板には複数の標的部が設けられており、その標的部は、前記電界形成電極とそれぞれ対応するようにその電界形成電極と同一ピッチで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項17】
電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする方法において、
導電性素材からなり、前記生体分子の液滴が収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴が前記収容部の外部に吐出されるように、前記収容部の下端部に形成された吐出口とを持つ針状の電界形成電極を上下方向に長く配置する電界形成電極配置ステップと、
前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って、接地されている基板を前記電界形成電極の下方に配置する基板配置ステップと、
前記電界形成電極と電気的に連結された開放型電圧印加装置を配置する開放型電圧印加装置配置ステップと、
核酸類、蛋白質類、オリゴペプチド類、糖類、真核細胞類、ウイルス、バクテリアのような前記生体分子の液滴を前記電界形成電極の収容部に供給する生体分子の液滴供給ステップと、
前記開放型電圧印加装置から前記電界形成電極に電圧を印加して前記電界形成電極に電荷を充電し、前記充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下する生体分子の液滴分離ステップと、を含むことを特徴とする電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする方法。
【請求項18】
電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置において、
導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記インクが収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記インクが前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口とを持つ針状の電界形成電極と、
前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出されるインクが滴下されて付着される標的部を持ち、接地されている印刷用紙または印刷基板と、
前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記印刷用紙または印刷基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴が前記印刷用紙または印刷基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置。
【請求項1】
電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置において、
導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記生体分子の液滴が収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴が前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口と、を持つ針状の電界形成電極と、
前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って接地されている基板と、
前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項2】
前記生体分子は、核酸、蛋白質、オリゴペプチド、糖類、真核細胞、ウイルス、及びバクテリアで構成された群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項3】
前記電界形成電極の吐出口の上方に配置されており、前記電界形成電極を支持するプリンタ本体をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項4】
前記電界形成電極及び開放型電圧印加装置は、前記電界形成電極の上端部に接続されている電極リード線により電気的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項5】
前記開放型電圧印加装置は、前記吐出口についている前記生体分子の液滴の下方に電場が形成されるように交流電圧及び直流電圧を同時に印加することを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項6】
前記電界形成電極には、5Vないし100,000Vの前記直流電圧及び5Vないし100,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることを特徴とする請求項5に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項7】
前記電界形成電極には、500Vないし10,000Vの前記直流電圧及び500Vないし10,000Vの前記交流電圧が同時に印加されることを特徴とする請求項6に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項8】
前記電界形成電極には、10Hzないし1,000Hzの前記交流電圧が印加されることを特徴とする請求項6に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項9】
前記電界形成電極には、2000Vの前記直流電圧と、500V及び130Hzの前記交流電圧とが同時に印加されることを特徴とする請求項7に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項10】
前記基板は、シリコン、ガラス、ポリマーで構成された群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項11】
前記基板の表面は、前記生体分子の液滴がよく付着されるように、アミン基、カルボキシル基、バイオチン、ストレプトアビジン、ポリLリジン、及びチオールで構成された群から選択される1種以上がコーティングされていることを特徴とする請求項10に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項12】
前記基板は、平板状の平板部と、前記平板部から上方に突出した複数の突出部と、を有し、
前記各突出部が前記基板の標的部であることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項13】
前記基板は、前記電界形成電極と略直交するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項14】
前記電界形成電極は、導電性金属、導電性ポリマー、及びITOガラスで構成された群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項15】
前記電界形成電極の吐出口付近は、疎水性処理されたことを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項16】
前記電界形成電極は同一ピッチで複数設けられており、
前記基板には複数の標的部が設けられており、その標的部は、前記電界形成電極とそれぞれ対応するようにその電界形成電極と同一ピッチで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする装置。
【請求項17】
電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする方法において、
導電性素材からなり、前記生体分子の液滴が収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記生体分子の液滴が前記収容部の外部に吐出されるように、前記収容部の下端部に形成された吐出口とを持つ針状の電界形成電極を上下方向に長く配置する電界形成電極配置ステップと、
前記電界形成電極の吐出口から吐出される生体分子の液滴が滴下されて付着される標的部を持って、接地されている基板を前記電界形成電極の下方に配置する基板配置ステップと、
前記電界形成電極と電気的に連結された開放型電圧印加装置を配置する開放型電圧印加装置配置ステップと、
核酸類、蛋白質類、オリゴペプチド類、糖類、真核細胞類、ウイルス、バクテリアのような前記生体分子の液滴を前記電界形成電極の収容部に供給する生体分子の液滴供給ステップと、
前記開放型電圧印加装置から前記電界形成電極に電圧を印加して前記電界形成電極に電荷を充電し、前記充電された電荷と前記充電された電荷により前記基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴を前記基板の標的部に滴下する生体分子の液滴分離ステップと、を含むことを特徴とする電荷集中現象を利用して基板上に生体分子の液滴をプリンティングする方法。
【請求項18】
電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置において、
導電性素材からなり、上下方向に長く配置されており、前記インクが収容される収容部と、前記収容部と連結されて前記インクが前記収容部の外部に吐出されるように前記収容部の下端部に形成された吐出口とを持つ針状の電界形成電極と、
前記電界形成電極の下方に配置されており、前記電界形成電極の吐出口から吐出されるインクが滴下されて付着される標的部を持ち、接地されている印刷用紙または印刷基板と、
前記電界形成電極に電荷が充電されるように前記電界形成電極と電気的に連結されており、前記電界形成電極に充電された電荷と前記充電された電荷により前記印刷用紙または印刷基板に誘導された電荷との間に発生したクーロン力により、前記生体分子の液滴が前記印刷用紙または印刷基板の標的部に滴下させる開放型電圧印加装置と、を備えることを特徴とする電荷集中現象を利用して印刷用紙または印刷基板上にインクをプリンティングする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−52009(P2007−52009A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214739(P2006−214739)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】
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