説明

電解コンデンサの検査方法および電解コンデンサ検査装置

【課題】チャック不良を検出可能として正確な検査を行う。
【解決手段】抵抗13bと直流電源13cが直列接続された電源部13から電解コンデンサ1の陽極・陰極端子3,4間に直流電圧Vを印加し、ケース5と陽極出力端子13dとの間の電圧波形Aおよび直流電源13cから出力される電流の電流波形Bを直流電圧Vの印加開始から測定し、波形Aを判定エリアCと、波形Bのピーク値を判定値Dと比較し、波形A全体が判定エリアCに含まれピーク値が判定値D以上のときは陽極端子3とケース5とが非短絡状態にあると判別し、波形Aの一部が判定エリアCに含まれず、ピーク値が判定値D以上のときは陽極端子3とケース5とが短絡状態にあると判別し、波形Aの一部が判定エリアCに含まれず、ピーク値が判定値D未満のときは陽極出力端子13dと陽極端子3とが非接続かまたは陰極出力端子13eと陰極端子4とが非接続であると判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極端子および陰極端子が立設されたコンデンサ素子を金属製のケース内に封入してなる電解コンデンサの陽極端子とケースとの間の短絡の有無を検査する電解コンデンサの検査方法、および電解コンデンサ検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電解コンデンサの検査方法として、下記特許文献1に開示された電解コンデンサの検査方法が知られている。この電解コンデンサの検査方法では、金属製(例えばアルミニウム製)のケースとリード線との間に電圧を印加することにより、ケースとリード線との間のショートを検査する。この特許文献1には具体的な検査回路の構成について記載されてはいないが、例えば、図10に示す検査回路101のように、直流電源102と、直流電源102の陽極102aを電解コンデンサ1の陽極端子3に接触させるチャック部11aと、直流電源102の陰極102bを電解コンデンサ1の陰極端子4に接触させるチャック部11bと、チャック部11aと直流電源102の陽極102aとの間を接断(オン・オフ)するためのスイッチ104と、一対のチャック部11a,11b間の電圧を測定する直流電圧計105とを備えているものが一般的に使用されている。
【0003】
この検査回路101を用いた検査方法では、まず、電解コンデンサ1の陽極端子3および陰極端子4を各チャック部11a,11bでチャックし、次いで、スイッチ104をオン状態に移行させて直流電源102で電解コンデンサ1を満充電状態に移行させる。続いて、スイッチ104をオフ状態に移行させて、充電の完了のときから所定時間経過後における電解コンデンサ1の保持電圧を直流電圧計105で測定する。この場合、電解コンデンサ1の陽極端子3とケース5との間に短絡が発生していなければ、保持電圧は閾値以上に維持され、陽極端子3とケース5との間に短絡が発生しているときには、保持電圧は閾値未満となる。したがって、保持電圧と閾値とを比較することにより、電解コンデンサ1の陽極端子3とケース5との間の短絡の有無が検査される。また、他の検査方法として、図11に示すように、電解コンデンサ1の陽極端子3をチャック部11aでチャックして、陽極端子3とケース5とに直流抵抗計111の各プローブを接触させ、陽極端子3とケース5との間の抵抗値を直流抵抗計111を用いて測定することにより、短絡状態を検査する方法も一般的に実施されている。
【0004】
【特許文献1】特許第2542961号公報(第1−2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の電解コンデンサの検査方法には、以下の問題点が存在している。すなわち、この電解コンデンサの検査方法は、検査ラインにおいて、自動検査装置によって実施される場合がある。この場合、電解コンデンサ1は、通常、表面に複数の凹部が形成された搬送用トレイ(図示せず)の各凹部にケース5側が収容されて、倒立状態で、つまり、陽極端子3および陰極端子4がケース5から上方に突出した状態で、検査位置に搬送される。搬送用トレイは導電性材料で形成されているため、ケース5は搬送用トレイと電気的に接続された状態にある。このため、例えば、図10の検査回路101を備えた自動検査装置では、ケース5に対する直流電源102の陰極102bや直流電圧計105の接触は搬送用トレイを介して行われる。一方、陽極端子3および陰極端子4に対しては、自動検査装置は、まず、検査対象とする電解コンデンサ1が収容された凹部上方にチャック部11a,11bを移動させ、次いで、陽極端子3および陰極端子4までチャック部11a,11bを下降させる。続いて、各チャック部11a,11bをチャック状態に移行させて陽極端子3および陰極端子4をチャックさせる。
【0006】
しかしながら、陽極端子3や陰極端子4が大きく曲がっている電解コンデンサ1に対しては、各チャック部11a,11bによる陽極端子3や陰極端子4のチャックが正常に行われない状態が発生し、この場合には、電解コンデンサ1に対する検査が正常に行われない。上記の電解コンデンサの検査方法では、充電完了のときから所定時間経過後における電解コンデンサ1の保持電圧や、陽極端子3とケース5との間の抵抗値といったスタティックな物理量に基づいて検査が行われるため、電解コンデンサ1が不良であるという検査結果が得られた場合に、電解コンデンサ1が実際に不良なのか、チャック不良によって電解コンデンサ1が不良であるという検査結果が得られたのかの区別が困難である。したがって、上記の電解コンデンサの検査方法には、チャック不良を検出できないため、正確な検査が行えないという課題が存在している。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、チャック不良を検出可能として正確な検査を行い得る電解コンデンサの検査方法および電解コンデンサ検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電解コンデンサの検査方法は、電解コンデンサの陽極端子とケースとの間の短絡の有無を検査する電解コンデンサの検査方法であって、陽極出力端子と陰極出力端子との間に抵抗および直流電源が直列接続されて構成された電源部から前記陽極端子と前記電解コンデンサの陰極端子との間に当該直流電源からの直流電圧を印加すると共に、前記ケースと前記電源部の前記陽極出力端子との間の電圧波形および当該直流電源から出力される電流の電流波形を当該直流電圧の印加開始から測定し、前記測定された電圧波形を予め規定された判定エリアと比較すると共に前記測定された電流波形のピーク値を予め決められた判定値と比較して、当該電圧波形の全体が当該判定エリアに含まれ、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が非短絡状態にあると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が短絡する短絡状態であると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態および前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態のうちのいずれか一方の状態であると判別する。
【0009】
また、請求項2記載の電解コンデンサの検査方法は、請求項1記載の電解コンデンサの検査方法において、前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの下限電圧値を下回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する。
【0010】
また、請求項3記載の電解コンデンサの検査方法は、請求項1または2記載の電解コンデンサの検査方法において、前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの上限電圧値を上回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する。
【0011】
また、請求項4記載の電解コンデンサの検査方法は、請求項1から3のいずれかに記載の電解コンデンサの検査方法において、前記電圧波形の測定の際に、前記陽極端子および前記陰極端子と、前記ケースとの間に圧力または振動を印加する。
【0012】
また、請求項5記載の電解コンデンサ検査装置は、電解コンデンサの陽極端子とケースとの間の短絡の有無を検査する電解コンデンサ検査装置であって、前記陽極端子および前記電解コンデンサの陰極端子をチャックする一対のチャック部と、陽極出力端子と陰極出力端子との間に抵抗および直流電源が直列接続されて構成され、当該陽極出力端子が前記一対のチャック部の一方に接続されると共に当該陰極出力端子が前記一対のチャック部の他方に接続された電源部と、前記一対のチャック部にチャックされた前記電解コンデンサへの前記電源部の前記直流電源からの直流電圧の印加開始からの前記ケースと前記電源部の前記陽極出力端子との間の電圧波形と当該直流電源から出力される電流の電流波形とを2つのチャンネルで測定する測定処理と、前記測定された電圧波形と予め規定された判定エリアとを比較すると共に前記測定された電流波形のピーク値と予め決められた判定値と比較して、当該電圧波形の全体が当該判定エリアに含まれ、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が非短絡状態にあると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が短絡する短絡状態であると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態および前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態のうちのいずれか一方の状態であると判別する判別処理とを実行する測定器とを備えている。
【0013】
また、請求項6記載の電解コンデンサ検査装置は、請求項5記載の電解コンデンサ検査装置において、前記測定器は、前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの下限電圧値を下回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する。
【0014】
また、請求項7記載の電解コンデンサ検査装置は、請求項5または6記載の電解コンデンサ検査装置において、前記測定器は、前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの上限電圧値を上回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する。
【0015】
また、請求項8記載の電解コンデンサ検査装置は、請求項5から7のいずれかに記載の電解コンデンサ検査装置において、前記電圧波形の測定の際に、前記陽極端子および前記陰極端子と、前記ケースとの間に圧力または振動を印加する振動印加部を備えている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の電解コンデンサの検査方法および請求項5記載の電解コンデンサ検査装置では、陽極出力端子と陰極出力端子との間に抵抗および直流電源が直列接続されて構成された電源部から電解コンデンサの陽極端子と陰極端子との間に直流電圧を印加すると共に、ケースと電源部の陽極出力端子との間の電圧波形および直流電源から出力される電流の電流波形を直流電圧の印加開始から測定し、測定された電圧波形を判定エリアと比較すると共に電流波形のピーク値を判定値と比較して、電圧波形の全体が判定エリア内に含まれ、かつピーク値が判定値以上のときには、陽極端子とケースとの間が非短絡状態にあると判別する。また、電圧波形の少なくとも一部が判定エリアに含まれず、かつピーク値が判定値以上のときには、陽極端子とケースとの間が短絡する短絡状態であると判別する。また、電圧波形の少なくとも一部が判定エリアに含まれず、かつピーク値が判定値未満のときには、陽極出力端子と陽極端子とが非接続となる非接続状態および陰極出力端子と陰極端子とが非接続となる非接続状態のうちのいずれか一方の状態であると判別する。
【0017】
したがって、この電解コンデンサの検査方法および電解コンデンサ検査装置によれば、電解コンデンサの良否(陽極端子とケースとの間が短絡状態にあるか否か)の検出と共に、電源部の陽極出力端子と電解コンデンサの陽極端子とが非接続となる非接続状態および陰極出力端子と陰極端子とが非接続となる非接続状態のうちのいずれか一方の状態であること(チャック不良)を検出することができるため、電解コンデンサに対する正確な検査を実行することができる。
【0018】
請求項2記載の電解コンデンサの検査方法および請求項6記載の電解コンデンサ検査装置によれば、測定された電圧波形と判定エリアとの比較、およびピーク値と判定値との比較の結果、電圧波形の少なくとも一部が判定エリアの下限電圧値を下回り、かつピーク値が判定値未満のときには、電源部の陰極出力端子と電解コンデンサの陰極端子とが非接続となる非接続状態(チャック不良)であると判別することができるため、チャック不良の発生箇所を具体的に特定することができる。
【0019】
請求項3記載の電解コンデンサの検査方法および請求項7記載の電解コンデンサ検査装置によれば、測定された電圧波形と判定エリアとの比較、およびピーク値と判定値との比較の結果、電圧波形の少なくとも一部が判定エリアの上限電圧値を上回り、かつピーク値が判定値未満のときには、電源部の陽極出力端子と陽極端子とが非接続となる非接続状態(チャック不良)であると判別することができるため、チャック不良の発生箇所を具体的に特定することができる。
【0020】
請求項4記載の電解コンデンサの検査方法および請求項8記載の電解コンデンサ検査装置によれば、コンデンサ素子をケースに押し付けて検査することができるため、陽極箔および陰極箔が電解紙に対してずれて巻回されて製造された結果、電解紙の端部と各箔との端部との間の距離が極めて少ない電解コンデンサ(不良と判別すべき電解コンデンサ)における各箔(陽極箔および陰極箔)のいずれかがケースと接触する確率を高めることができ、これにより、不良と判別すべき電解コンデンサをより確実に不良と判別することができる。また、ケースの内面には、アルミニウムの酸化被膜が存在しているため、電解コンデンサによっては、製造不良に起因して、各箔、陽極端子および陰極端子の少なくとも1つがケースと接触している状態であっても、この酸化被膜によって一時的に絶縁状態(高抵抗状態)となっていることがある。このような電解コンデンサ(不良と判別すべき電解コンデンサ)は、圧力や振動を加えない状態では良品として判別されるが、圧力や振動を加えることで、酸化被膜を物理的に破壊することができ、これにより、不良と判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電解コンデンサの検査方法および電解コンデンサ検査装置の最良の形態について説明する。
【0022】
まず、検査対象となる電解コンデンサ1の概要構成について、図1を参照して説明する。電解コンデンサ1は、所定の寸法に切断された陽極箔および陰極箔(いずれも図示せず)に陽極端子3および陰極端子4をそれぞれ接続し、陽極箔および陰極箔を電解紙(図示せず)を介在させた状態で巻回して作製したコンデンサ素子2と、コンデンサ素子2が収容される金属製のケース5と、ケース5に収容されたコンデンサ素子2を封止するための封止材(一例としてゴム)6と、ケース5の周壁を電気的に絶縁する樹脂フィルム7とで構成されている。また、電解コンデンサ1は、等価的には、図2に示すように、静電容量C、この静電容量Cと直列に接続された状態で陽極端子3と陰極端子4との間に接続された等価直列抵抗Rs(以下、単に「抵抗Rs」ともいう。抵抗値は0.1Ω以下と極めて小さい)と、陽極端子3とケース5との間に存在する漏れ抵抗R1と、陰極端子4とケース5との間に存在する漏れ抵抗R2とを有している。この場合、漏れ抵抗R1の抵抗値は、漏れ抵抗R2の抵抗値と比べて非常に大きな値であり、良品では、数10MΩ程度である。
【0023】
次いで、電解コンデンサ検査装置10の構成について、図面を参照して説明する。
【0024】
電解コンデンサ検査装置10は、図1に示すように、一対のチャック部11a,11b、移動機構12、電源部13、測定器14および制御部15を備えている。各チャック部11a,11bはその間隔が陽極端子3と陰極端子4の間隔(立設された陽極端子3と陰極端子4との立設間隔)に対応させられて、チャック部11aが陽極端子3を、チャック部11bが陰極端子4をそれぞれチャック可能に構成されている。また、チャック部11a,11bは、制御部15からの制御信号S1に基づいて作動して、チャック状態および非チャック状態のいずれかの状態に移行する。移動機構12は、制御部15からの制御信号S2に基づいて作動して、電解コンデンサ1に対する検査位置の上方においてチャック部11a,11bを3次元的に移動させる。一例として、電解コンデンサ1は、従来と同様にして、導電性材料で形成された搬送用トレイの表面に形成された複数の凹部にケース5が収容されて、倒立状態で検査位置に複数個同時に搬送される。移動機構12は、制御部15からの制御信号S2に基づいて、制御部15によって凹部に収容されている検査対象の電解コンデンサ1にチャック部11a,11bを移動させる。
【0025】
電源部13は、互いに直列に接続されたスイッチ13a、抵抗13bおよび直流電源13cを備え、これらの直列回路が陽極出力端子13dと陰極出力端子13eとの間に接続されて構成されている。この場合、スイッチ13aは、その接断状態(オン・オフ状態)が制御部15からの制御信号S3によって制御される。また、陽極出力端子13dはチャック部11aに接続され、陰極出力端子13eはチャック部11bに接続されている。また、抵抗13bは、その抵抗値が直流電源13cから出力される直流電圧Vに対応した適切な値に規定されて、電解コンデンサ1に過大な電流が流れないようになっている。
【0026】
測定器14は、少なくとも2つのチャンネル(CH1,CH2)を備え、一例として第1チャンネル(CH1)の正入力端子に電圧検出プローブ14aが接続されると共に負入力端子に電圧検出プローブ14bが接続され、かつ第2チャンネル(CH2)の正入力端子に電圧検出プローブ14eが接続されると共に負入力端子に電圧検出プローブ14fが接続されている。また、測定器14は、測定処理および判別処理を実行可能に構成されている。また、測定器14は、測定処理で測定した波形A(電圧波形)および波形B(電流波形)、予め記憶されている判定エリア(斜線で示した領域)C、並びに判定値Dを表示するための表示部14cと、判別処理での判別結果を表示するインジケータ14dとを備えている。また、測定器14は、制御部15からの制御信号S4の入力をトリガとして、上記の測定処理等を実行する。
【0027】
この場合、判定エリアCは、良品(陽極端子3とケース5との短絡が発生していない状態)の電解コンデンサ1の陽極端子3および陰極端子4を各チャック部11a,11bに正常にチャックさせた状態において、電源部13のスイッチ13aをオン状態にしたときに、各電圧検出プローブ14a,14bを介して測定器14の第1チャンネルCH1で測定される波形A(漏れ抵抗R1に発生する電圧波形。図1において実線で示す波形)に基づいて作成されたものであり、良品の電解コンデンサ1のばらつきなどを考慮して、良品の電解コンデンサ1についての波形Aがすべて含まれるようにエリアの形状が規定されている。また、判定値Dは、良品の電解コンデンサ1の陽極端子3および陰極端子4を各チャック部11a,11bに正常にチャックさせた状態において、電源部13のスイッチ13aをオン状態にしたときに、各電圧検出プローブ14e,14fを介して測定器14の第2チャンネルCH2で測定される波形B(抵抗13bの両端間に発生する電圧の波形であって、直流電源13cから出力される電流の電流波形を示す波形。図1において破線で示す波形)のピーク値に基づいて作成されたものであり、直流電源13cから電流(電流値は問わないが、例えば数mA以上の電流)が出力されたことを検出し得る値に規定されている。また、測定器14は、1つの電解コンデンサ1に対する検査が完了した時点で、制御部15に対して完了信号S5を出力する。
【0028】
制御部15は、CPUなどで構成されて、搬送用トレイの検査位置への移動完了や、1つの電解コンデンサ1に対する検査完了を検出して、チャック部11a,11b、移動機構12および電源部13に対する制御を実行する。また、制御部15は、測定器14に対して制御信号S4を出力して、測定処理等を開始させる。
【0029】
次いで、電解コンデンサ検査装置10の動作と併せて、電解コンデンサの検査方法について説明する。
【0030】
電解コンデンサ検査装置10では、作動状態において、制御部15が、新たな搬送用トレイの検査位置への移動の完了を検出したときには、電解コンデンサ1に対する検査処理50を開始する(図9参照)。この検査処理では、制御部15は、まず、制御信号S2を移動機構12に出力して、最初に検査対象となる電解コンデンサ1の位置にチャック部11a,11bを移動させ(ステップ51)、移動が完了した時点で、制御信号S1をチャック部11a,11bに出力してチャック状態に移行させる(ステップ52)。この場合、電解コンデンサ1が正規な状態で搬送用トレイに収容されており、かつ電解コンデンサ1の陽極端子3や陰極端子4に曲がりが生じていないとき(曲がりが許容範囲内のものであるときも含む)には、電解コンデンサ1の陽極端子3および陰極端子4は、チャック部11a,11bによってチャックされる。一方、陽極端子3や陰極端子4に生じている曲がりが許容範囲を超えているときには、チャック部11a,11bがチャック状態に移行したとしても、陽極端子3や陰極端子4はチャック部11a,11bによってチャックされない状態となる。なお、チャック部11aが陽極端子3を正常にチャックしたときには、電源部13の陽極出力端子13dが陽極端子3と接続され、これにより、測定器14の1つのチャンネルにおける電圧検出プローブ14aも陽極出力端子13dおよびチャック部11aを介して陽極端子3と接続される。また、チャック部11bが陰極端子4を正常にチャックしたときには、電源部13の陰極出力端子13eが陰極端子4と接続される。
【0031】
次いで、制御部15は、制御信号S4を測定器14に出力する。これにより、測定器14は、測定処理および判別処理をこの順に実行する(ステップ53)。また、制御部15は、制御信号S4の出力に同期して、制御信号S3を電源部13に所定時間だけ出力する。これにより、電源部13では、スイッチ13aがオフ状態からオン状態に所定時間だけ移行(制御)されて、直流電源13cの直流電圧Vが抵抗13bおよびスイッチ13aを介して電解コンデンサ1の陽極端子3および陰極端子4間に所定時間だけ印加される。
【0032】
測定器14は、測定処理では、電解コンデンサ1のケース5と、チャック部11a(本例では電解コンデンサ1の陽極端子3)との間に発生する電圧を第1チャンネルCH1で、また抵抗13bの両端間に発生する電圧を第2チャンネルCH2でそれぞれ所定時間だけ同時に測定して、その波形A,Bを記憶する。これにより、測定処理が完了する。次いで、測定器14は、記憶した波形A,Bと予め記憶されている判定エリアCとを図1に示すように同時に(重ねて)表示部14cに表示させる。次いで、測定器14は、判別処理を実行する。この判別処理では、測定器14は、波形A全体が判定エリアCに含まれているか否かの判別と、波形Bのピーク値が判定値D以上となっているか否かの判別とを実行して、電解コンデンサ1に対する良否判別と、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックにチャックミス(チャック不良)が発生しているか否かの判別とを少なくとも実行する。また、測定器14は、判別の結果をインジケータ14dに表示する。これにより、測定器14による判別処理が完了する。
【0033】
この判別処理について具体的に説明すると、電解コンデンサ1が良品(つまり、陽極端子3とケース5との間が短絡(ショート)していないもの)であって、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われているときには、電源部13の直流電源13cから図3中の右図に示す経路で電流Iが電解コンデンサ1に供給される。このため、電解コンデンサ1は、電流Iによって自らの静電容量Cが充電される。このときに電圧検出プローブ14a,14bを介して測定器14の第1チャンネルCH1で測定される波形A(つまり、陽極端子3および陰極端子4間に発生する電圧が各漏れ抵抗R1,R2で分圧されて、漏れ抵抗R1の両端間に発生する電圧の波形。同図中において実線で示す波形)は、電源部13による電圧の印加開始(時刻t1)直後から、静電容量C、電源部13の抵抗13b、および抵抗Rsで規定される時定数(上記したように抵抗Rsが極めて小さいため、実質的には静電容量Cおよび抵抗13bで規定される時定数)で上昇する波形となり、同図中の左図に示されるように、判定エリアCに含まれることとなる。また、直流電源13cから電流Iが出力されて抵抗13bに流れるため、電圧検出プローブ14e,14fを介して測定器14の第2チャンネルCH2で、波形B(同図中において破線で示す波形)が測定されて、そのピーク値は判定値Dを超えることとなる。したがって、測定器14は、判別処理において、波形Aの全体が判定エリアCに含まれ、かつ波形Bのピーク値が判定値D以上であることに基づいて、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われており、かつ陽極端子3とケース5との間が非短絡状態にあると判別して、電解コンデンサ1が良品であると判別する。また、測定器14は、検査対象となっている電解コンデンサ1が良品である旨をインジケータ14dに表示する。
【0034】
また、電解コンデンサ1の陰極端子4とケース5とが短絡しているときには、図4中の右図に示すように漏れ抵抗R2の抵抗値がほぼゼロとなる。このため、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われている状態において、測定器14の第1チャンネルCH1で測定される波形Aは、陽極端子3および陰極端子4間に発生する電圧が漏れ抵抗R1全体に印加されるため、図4中の左図に示すように、陰極端子4とケース5とが短絡していない電解コンデンサ1の波形A(図3中の左図)よりも、高い電圧まで上昇する。しかしながら、漏れ抵抗R2の抵抗値は元々小さいため、図4中の左図に示すように、多くの電解コンデンサ1で判定エリアC内に含まれることとなる。また、電流Iは、同図中の左図に示すように抵抗13bを含む経路に流れるため、測定器14の第2チャンネルCH2で測定される波形Bのピーク値は同図中の左図に示すように判定値D以上となる。このように陰極端子4とケース5とが短絡している電解コンデンサ1はコンデンサとしての機能には問題ないため、測定器14は、判別処理において、波形Aの全体が判定エリアCに含まれ、かつ波形Bのピーク値が判定値D以上であることに基づいて、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われており、かつ陽極端子3とケース5との間が非短絡状態にあると判別して、電解コンデンサ1を良品と判別する。また、測定器14は、その旨をインジケータ14dに表示する。
【0035】
また、電解コンデンサ1の陽極端子3とケース5とが短絡しているときには、図5中の右図に示すように漏れ抵抗R1の抵抗値がほぼゼロとなる。このため、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われている状態においても、同図中の左図に示すように、測定器14の第1チャンネルCH1で測定される波形Aはゼロボルトのままで、変化しない。このため、波形Aは電源部13による電圧の印加開始(時刻t1)直後から判定エリアCに含まれずに、判定エリアCを下回ることとなる(言い換えれば、波形Aは、判定エリアCの下限電圧値よりも低い電圧となる)。一方、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われているため、電流Iは、図5に示すように、上記した図3,4で示す態様のときと同様の経路に流れ、これによって測定器14の第2チャンネルCH2で測定される波形Bのピーク値も判定値D以上となる。この場合、測定器14は、判別処理において、波形Aが図5の左図に示す態様(判定エリアCの下限電圧値を下回る態様)で判定エリアCに含まれない状態となっており、かつ波形Bのピーク値が判定値D以上であることに基づいて、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われてはいるものの、陽極端子3とケース5との間が短絡状態にある、つまり電解コンデンサ1を不良品と判別する。また、測定器14は、その旨をインジケータ14dに表示する。
【0036】
また、電解コンデンサ1が良品であっても、図6中の右図に示すように、チャック部11bにおいてチャック不良(陰極端子4がチャックされていない状態)が発生しているときには、直流電源13cを含む電流経路が形成されないため、直流電源13cから電流Iは出力されず、したがって、電源部13による電解コンデンサ1の充電が行われない。このため、測定器14の各チャンネルCH1,CH2で測定される波形A,Bは、図6中の左図に示すように、ゼロボルトから変化しない。つまり、波形Aは、判定エリアCの下限電圧値を下回る状態となり、波形Bは判定値D未満となる。この場合、測定器14は、判別処理において、波形Aが図6の左図に示す態様(判定エリアCの下限電圧値を下回る態様)で判定エリアCに含まれない状態となっており、かつ波形Bのピーク値が判定値D未満であることに基づいて、チャック部11bによる陰極端子4のチャックが正常に行われていない(チャック部11bにおいて陰極端子4に対するチャック不良が発生している状態にある)と判別して、その旨をインジケータ14dに表示する。
【0037】
また、電解コンデンサ1が良品であっても、図7中の右図に示すように、チャック部11aにおいてチャック不良(陽極端子3がチャックされていない状態)が発生しているときには、電源部13の直流電源13cからは電解コンデンサ1に対して正規の経路(図3〜5に示す経路)での電流Iの供給は行われず、図7中の右図に示す経路(測定器14の内部抵抗Ri(図2,7参照。通常は1MΩ程度の高抵抗値)を含む経路)で電流Iが供給される。この経路においては、このように高抵抗値の内部抵抗Riが直列状態で含まれると共に、静電容量Cが、抵抗値の極めて大きい漏れ抵抗R1と直列に接続されると共にその直列回路と抵抗値の小さい漏れ抵抗R2とが並列に接続された状態で含まれる。このため、測定器14の第1チャンネルCH1で測定される波形Aは、静電容量Cの存在には殆ど影響を受けることなく、図7中の左図に示すように、電源部13の直流電源13cによる電圧の印加開始(時刻t1)直後に、急激に上昇して判定エリアCを上回り(判定エリアCの上限電圧値よりも高い電圧となり)、その後に徐々に低下して判定エリアCに含まれる波形となる。一方、電流Iが流れる経路は上記したように高抵抗値の内部抵抗Riを含むため、電流Iは、その電流値が極めて小さいもの(ほぼゼロアンペアに近い電流値)となる。これにより、測定器14の第2チャンネルCH2で測定される波形Bは、ほぼゼロボルトに維持される。したがって、測定器14は、判別処理において、波形Aが図7の左図に示す態様(電圧の印加直後に判定エリアCの上限電圧値を上回る態様)で判定エリアCに含まれない状態となっており、かつ波形Bのピーク値が判定値D未満となっていることに基づいて、チャック部11aにチャック不良が発生していると判別して、その旨をインジケータ14dに表示する。なお、図7中の左図に示すような波形Aは、電解コンデンサ1が搬送用トレイの凹部へ正常の収容状態から180°回転して収容されている誤装着状態、つまりチャック部11aで陰極端子4をチャックするようになる状態(逆装着状態)において、チャック部11aでチャック不良が発生しているときにも発生する。
【0038】
また、電解コンデンサ1が良品であって、かつチャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャックが正常に行われている状態であっても、例えば、電解コンデンサ1が搬送用トレイの凹部へ上記の誤装着状態で収容されていることに起因して、図8中の右図に示すように、チャック部11aで陰極端子4がチャックされ、チャック部11bで陽極端子3がチャックされている状態(逆装着状態)のときには、測定器14は、漏れ抵抗R1と比較して抵抗値が大幅に小さい漏れ抵抗R2の両端間にその電圧検出プローブ14a,14bが接続されることになる。このため、測定器14の第1チャンネルCH1で測定される波形Aは、図8中の左図に示すように、電源部13による電圧印加開始(時刻t1)直後から徐々に上昇するものの極めて低い電圧までしか上昇せず、判定エリアCの下限電圧値を下回るものとなる。一方、測定器14の第2チャンネルCH2で測定される波形Bは、同図中の右図に示す経路で電流Iが流れるため、そのピーク値は判定値D以上となる。したがって、測定器14は、判別処理において、波形Aが図8の左図に示す態様(判定エリアCの下限電圧値を下回る態様)で判定エリアCに含まれない状態となっており、かつ波形Bのピーク値が判定値D以上となっていることに基づいて、電解コンデンサ1の陽極端子3および陰極端子4が、チャック部11a,11bに逆装着状態(逆極性)でチャックされていると判別して、その旨をインジケータ14dに表示する。
【0039】
測定器14は、検査対象となっている1つの電解コンデンサ1に対する上記の測定処理および判別処理が完了したときには、完了信号S5を制御部15に出力する。制御部15は、完了信号S5を入力したときには、制御信号S1を各チャック部11a,11bに出力して非チャック状態に移行させる(ステップ54)。次いで、制御部15は、未検査の電解コンデンサ1が存在するか否かを判別し(ステップ55)、存在する場合には、ステップ51に移行して、次に検査対象となる電解コンデンサ1の位置にチャック部11a,11bを移動させる。制御部15は、上記のステップ51〜55を繰り返し実行して、搬送用トレイに収容されている電解コンデンサ1に対する検査を続行する。一方、ステップ55において、未検査の電解コンデンサ1が存在しないと判別したときには、制御部15は、各チャック部11a,11bを待避位置に移動させる(ステップ56)。これにより、検査処理が完了する。したがって、作業者は、測定器14のインジケータ14dの表示や、表示部14cに表示される波形Aを観測することにより、電解コンデンサ1についての良否の判断や、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャック状態の良否を判断可能となっている。
【0040】
このように、この電解コンデンサ検査装置10、およびこの電解コンデンサ検査装置10が実行する電解コンデンサの検査方法では、陽極出力端子13dと陰極出力端子13eとの間に抵抗13bおよび直流電源13cが直列接続されて構成された電源部13から電解コンデンサ1の陽極端子3と陰極端子4との間に直流電圧Vを印加すると共に、ケース5と電源部13の陽極出力端子13dとの間の波形Aおよび直流電源13cから出力される電流Iの波形Bを直流電圧Vの印加開始(時刻t1)から測定し、測定された波形Aを判定エリアCと比較すると共に波形Bのピーク値を判定値Dと比較して、波形Aの全体が判定エリアC内に含まれ、かつピーク値が判定値D以上のときには、陽極端子3とケース5との間が非短絡状態にある(電解コンデンサ1は良品である)と判別する。また、波形Aの少なくとも一部が判定エリアCに含まれず、かつピーク値が判定値D以上のときには、陽極端子3とケース5との間が短絡する短絡状態であると判別する。また、波形Aの少なくとも一部が判定エリアCに含まれず、かつピーク値が判定値D未満のときには、陽極出力端子13dと陽極端子3とが非接続となる非接続状態(チャック部11aでチャック不良が生じている状態)および陰極出力端子13eと陰極端子4とが非接続となる非接続状態(チャック部11bでチャック不良が生じている状態)のうちのいずれか一方の状態であると判別する。
【0041】
したがって、この電解コンデンサ検査装置10および電解コンデンサの検査方法によれば、電解コンデンサ1の良否の検出と共に、チャック部11a,11bによる陽極端子3および陰極端子4のチャック不良を検出することができるため、電解コンデンサ1に対する正確な検査を実行することができる。
【0042】
また、この電解コンデンサ検査装置10および電解コンデンサの検査方法によれば、波形Aと判定エリアCとの比較、および波形Bのピーク値と判定値Dとの比較の結果、波形Aの少なくとも一部が判定エリアCの下限電圧値を下回り、かつピーク値が判定値D未満のときには、陰極出力端子13eと陰極端子4との間でチャック不良が生じている、つまりチャック部11bでチャック不良が生じていると判別することができるため、チャック不良の発生箇所を具体的に特定することができる。
【0043】
また、この電解コンデンサ検査装置10および電解コンデンサの検査方法によれば、波形Aと判定エリアCとの比較、および波形Bのピーク値と判定値Dとの比較の結果、波形Aの少なくとも一部が判定エリアCの上限電圧値を上回り、かつピーク値が判定値D未満のときには、陽極出力端子13dと陽極端子3との間でチャック不良が生じている、つまりチャック部11aでチャック不良が生じていると判別することができるため、チャック不良の発生箇所を具体的に特定することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、直流電源13cから出力される電流Iの電流波形である波形Bの測定を、抵抗13bの両端間電圧を一対の電圧検出プローブ14e,14fを用いて測定することにより実行しているが、一対の電圧検出プローブ14e,14fの使用に代えて、電流検出プローブ(カレントプローブ)を第2チャンネルCH2に接続して使用することもできる。また、電源部13から直流電圧Vを電解コンデンサ1に印加して、測定器14による波形Aの測定中において、制御部15が制御信号S2を移動機構12に出力することにより、移動機構12に対してチャック部11a,11bを電解コンデンサ1側にさらに移動させる制御を行わせるようにすることもできる。これにより、チャック部11a,11bから陽極端子3や陰極端子4を介してコンデンサ素子2が圧力を受けて、ケース5に押し付けられる。このため、陽極箔および陰極箔が電解紙に対してずれて巻回されて製造された結果、電解紙の端部と各箔との端部との間の距離が極めて少ない電解コンデンサ1(不良と判別すべき電解コンデンサ1)に対して、そのコンデンサ素子2をケース5に押し付けて検査することができるため、各箔のいずれかがケース5と接触する確率を高めることができ、これにより、不良と判別すべき電解コンデンサ1をより確実に不良と判別することができる。また、ケース5の内面には、アルミニウムの酸化被膜が存在しているため、電解コンデンサ1によっては、製造不良に起因して、箔、陽極端子3および陰極端子4の少なくとも1つがケース5と接触している状態であっても、この酸化被膜によって一時的に絶縁状態(高抵抗状態)となっていることがある。このような電解コンデンサ1(不良と判別すべき電解コンデンサ1)は、圧力や振動を加えない状態では良品として判別されるが、圧力や振動を加えることで、酸化被膜を物理的に破壊することができ、これにより、不良と判別することができる。
【0045】
このため、制御部15が制御信号S2を移動機構12に出力することにより、移動機構12に対してチャック部11a,11bを電解コンデンサ1に対して進退動させる制御を行わせるようにすることもできる。この構成によれば、電解コンデンサ1のコンデンサ素子2に対して振動を加えることができ、この振動により、上記のような不良と判別すべき電解コンデンサ1を、一層確実に不良と判別することもできる。なお、上記の例では、移動機構12に対する制御により、移動機構12を本発明における振動印加部として機能させて、電解コンデンサ1のコンデンサ素子2に対して圧力や振動を加えるようにしているが、圧力や振動を加えるための専用の振動印加部を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】電解コンデンサ1の構成および電解コンデンサ検査装置10の構成を示す構成図である。
【図2】電解コンデンサ1の等価回路を説明するための説明図である。
【図3】良品の電解コンデンサ1を正常にチャックした状態の電解コンデンサ検査装置10の部分構成図、およびこの状態において表示部14cに表示される波形A,B、判定エリアCおよび判定値Dを説明するための説明図である。
【図4】陰極端子4がケース5と短絡している電解コンデンサ1を正常にチャックした状態の電解コンデンサ検査装置10の部分構成図、およびこの状態において表示部14cに表示される波形A,B、判定エリアCおよび判定値Dを説明するための説明図である。
【図5】陽極端子3がケース5と短絡している電解コンデンサ1を正常にチャックした状態の電解コンデンサ検査装置10の部分構成図、およびこの状態において表示部14cに表示される波形A,B、判定エリアCおよび判定値Dを説明するための説明図である。
【図6】チャック部11bにおいてチャック不良が生じている状態の電解コンデンサ検査装置10の部分構成図、およびこの状態において表示部14cに表示される波形A,B、判定エリアCおよび判定値Dを説明するための説明図である。
【図7】チャック部11aにおいてチャック不良が生じている状態の電解コンデンサ検査装置10の部分構成図、およびこの状態において表示部14cに表示される波形A,B、判定エリアCおよび判定値Dを説明するための説明図である。
【図8】電解コンデンサ1がチャック部11a,11bに逆装着状態(逆極性)でチャックされている状態の電解コンデンサ検査装置10の部分構成図、およびこの状態において表示部14cに表示される波形A,B、判定エリアCおよび判定値Dを説明するための説明図である。
【図9】電解コンデンサ検査装置10の検査処理50を示すフローチャートである。
【図10】電解コンデンサ1に対する従来の検査回路101の構成図である。
【図11】電解コンデンサ1に対して直流抵抗計111を用いて検査する場合の構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 陽極端子
4 陰極端子
5 ケース
11a,11b チャック部
13 電源部
13b 抵抗
13c 直流電源
13d 陽極出力端子
13e 陰極出力端子
14 測定器
14a,14b,14e,14f 電圧検出プローブ
15 制御部
A 波形(電圧波形)
B 波形(電流Iの電流波形を示す電圧波形)
C 判定エリア
D 判定値
V 直流電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサの陽極端子とケースとの間の短絡の有無を検査する電解コンデンサの検査方法であって、
陽極出力端子と陰極出力端子との間に抵抗および直流電源が直列接続されて構成された電源部から前記陽極端子と前記電解コンデンサの陰極端子との間に当該直流電源からの直流電圧を印加すると共に、前記ケースと前記電源部の前記陽極出力端子との間の電圧波形および当該直流電源から出力される電流の電流波形を当該直流電圧の印加開始から測定し、
前記測定された電圧波形を予め規定された判定エリアと比較すると共に前記測定された電流波形のピーク値を予め決められた判定値と比較して、当該電圧波形の全体が当該判定エリアに含まれ、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が非短絡状態にあると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が短絡する短絡状態であると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態および前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態のうちのいずれか一方の状態であると判別する電解コンデンサの検査方法。
【請求項2】
前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの下限電圧値を下回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する請求項1記載の電解コンデンサの検査方法。
【請求項3】
前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの上限電圧値を上回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する請求項1または2記載の電解コンデンサの検査方法。
【請求項4】
前記電圧波形の測定の際に、前記陽極端子および前記陰極端子と、前記ケースとの間に圧力または振動を印加する請求項1から3のいずれかに記載の電解コンデンサの検査方法。
【請求項5】
電解コンデンサの陽極端子とケースとの間の短絡の有無を検査する電解コンデンサ検査装置であって、
前記陽極端子および前記電解コンデンサの陰極端子をチャックする一対のチャック部と、
陽極出力端子と陰極出力端子との間に抵抗および直流電源が直列接続されて構成され、当該陽極出力端子が前記一対のチャック部の一方に接続されると共に当該陰極出力端子が前記一対のチャック部の他方に接続された電源部と、
前記一対のチャック部にチャックされた前記電解コンデンサへの前記電源部の前記直流電源からの直流電圧の印加開始からの前記ケースと前記電源部の前記陽極出力端子との間の電圧波形と当該直流電源から出力される電流の電流波形とを2つのチャンネルで測定する測定処理と、前記測定された電圧波形と予め規定された判定エリアとを比較すると共に前記測定された電流波形のピーク値と予め決められた判定値と比較して、当該電圧波形の全体が当該判定エリアに含まれ、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が非短絡状態にあると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値以上のときには、前記陽極端子と前記ケースとの間が短絡する短絡状態であると判別し、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアに含まれず、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態および前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態のうちのいずれか一方の状態であると判別する判別処理とを実行する測定器とを備えている電解コンデンサ検査装置。
【請求項6】
前記測定器は、前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの下限電圧値を下回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陰極出力端子と前記陰極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する請求項5記載の電解コンデンサ検査装置。
【請求項7】
前記測定器は、前記測定された電圧波形と前記判定エリアとの比較、および前記ピーク値と前記判定値との比較の結果、当該電圧波形の少なくとも一部が当該判定エリアの上限電圧値を上回り、かつ当該ピーク値が前記判定値未満のときには、前記電源部の前記陽極出力端子と前記陽極端子とが非接続となる非接続状態であると判別する請求項5または6記載の電解コンデンサ検査装置。
【請求項8】
前記電圧波形の測定の際に、前記陽極端子および前記陰極端子と、前記ケースとの間に圧力または振動を印加する振動印加部を備えている請求項5から7のいずれかに記載の電解コンデンサ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−302276(P2009−302276A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154909(P2008−154909)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】