説明

電解水を用いた手指洗浄殺菌装置

【課題】手と指の洗浄と殺菌を円滑に行うために、電解槽で生成されたアルカリ性水と酸性水を、所定の順序と時間にて正確に供給できるように工夫した手指洗浄殺菌装置を提供する。
【解決手段】制御装置30に、いずれか一方の電解水を設定された時間だけ吐水口14Tから吐水させ、次いで、いずれか他方の電解水を設定された時間だけ吐水口14Tから吐水させた後、設定された送水路11A,11Bに従って、上記いずれか一方の電解水を上記吐水口14Tまでの取水路14内に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水に電解質を添加した被電解水を電解槽内に導入して電気分解を行うことにより、電解槽の陰極室からアルカリ性電解水(以下アルカリ性水という)を生成し、陽極室からは酸性電解水(以下酸性水という)を生成するように構成した電解水生成装置の技術分野に属するものであって、具体的には、上記の電解水を用いて手指の洗浄と殺菌を行うに当たって、生成されたアルカリ性水と酸性水を、所定の順序と時間とで正確に定量供給することを可能にした電解水を用いた手指洗浄殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、衛生学的な手洗いとして、上述したアルカリ性水と酸性水を用いて手指を洗浄及び殺菌する方法が、有機物等の汚れや細菌・ウイルスの除去に有効な手段であり、インフルエンザやノロウイルスなどの感染予防に効果のあることが提唱されており、特に、衛生管理を業務とする人は、アルカリ性水と酸性水を使用して各々15秒ずつの洗浄が最適と言われている。
【0003】
一方、上述したように電気分解によって陰極室から生成されるアルカリ性水には洗浄効果があり、陽極室から生成される酸性水には殺菌効果があるため、これ等アルカリ性水と酸性水の特性を生かして、人の手や指を洗浄及び殺菌する手指洗浄殺菌装置が従来より各種存在する。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のイオン水供給洗面化粧台は、電解槽の酸性水室、又は、アルカリ性水室に給水する給水管にそれぞれ開閉弁を設け、電解槽から送水する配管先にはカラン(蛇口)を取り付けて化粧台上に設置するものであって、所望する酸性水又はアルカリ性水を得るためには、給水管に設けられたそれぞれの開閉弁の操作によって目的とする電解水を得られる仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−314408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、上記特許文献1に記載の如き構成の洗面化粧台を用いて手指を洗浄するには、最初にアルカリ性水を供給して手指を洗浄し、次に酸性水を供給して殺菌するが、これら電解水の切替は電解水生成装置内の切替弁で行なわれる。しかし、此の種従来の装置は、装置本体から吐水口までは配管等の水路で接続されるので、水路の長さによって電解水の供給時間がマチマチに成る問題があった。更には、例えば酸性水で殺菌して洗浄を終了する場合には、吐水口までの水路には酸性水が残在するので、次の洗浄者には水路内に残っている酸性水が全て出尽くすまでは、最初に使用するアルカリ性電解水を供給することが出来なかった。
【0007】
従って本発明の技術的課題は、手と指の洗浄と殺菌を円滑に行うために、電解槽で生成されたアルカリ性水と酸性水を、所定の順序と時間にて正確に供給できるように工夫した手指洗浄殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、電解槽の陰極室から生成されるアルカリ性水と、陽極室から生成される酸性水とを、1箇所の吐水口から交互に吐水させることにより、アルカリ性水で手指の洗浄を行い、酸性水で手指の殺菌を行うことができる電解水を用いた手指洗浄殺菌装置であって、上記陰極室と陽極室の夫々に接続されている各送水路の途中に、陰極室と陽極室から送水されて来る上記の各電解水を、制御装置からの指令に従って上記の吐水口と排水口のいずれかに選択して送水することができる水路切替手段を設け、上記制御装置には、上記水路切替手段から吐水口に至る送水路の長さを設定入力するための送水路長さ設定手段と、各電解水を上記吐水口から吐水させる吐水時間を設定入力するための吐水時間設定手段と、これ等設定された送水路の長さと吐水時間とを記憶する記憶手段とを設けると共に、上記制御装置は、いずれか一方の電解水を上記設定・記憶された吐水時間だけ吐水口から吐水し、次いで、いずれか他方の電解水を上記設定・記憶された吐水時間だけ吐水口から吐水し、且つ、上記いずれか一方の電解水を上記吐水口までの送水路内に導入せしめるように、上記水路切替手段を切替制御せしめることを特徴としている。
【0009】
(2) また、本発明の請求項2に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、前記制御装置に、前記設定・記憶された送水路の長さと電解水の吐水時間とを、夫々変更するための手段が具備されていることを特徴としている。
【0010】
上記請求項1と2に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置によれば、電解水を吐水する送水路の長さと吐水時間を設定、又は変更すると、制御装置はこれ等設定又は変更された各水路切替手段から吐水口までの水路の長さに基づいて、第1種目の電解水を設定された時間吐水口から吐水し、次に第2種目の電解水を設定された時間吐水し、第2種目の電解水の吐水を行って手指の洗浄が終了した時点で、次の洗浄者が使用する第1種目の電解水が吐水口に導かれる様に水路切替手段を制御する。
【0011】
即ち、請求項1と2に係る装置は、洗浄者用の電解水を吐水口から決められた順序で時間どおりに吐水する様に構成されており、アルカリ性水を吐水する場合は陰極室で生成された電解水を吐水口から吐水し、酸性水を吐水する場合は陽極室で生成された電解水を吐水口から吐水する。また、水路切替手段から吐水口までの水路の長さと吐水時間を設定すれば、所定のタイミングで水種を切替えることが出来る。尚、吐水時間と水路の長さはデフォルト値を設定し、状況に合わせて変更可能としてもよく、全く新たに設定する様にしても良い。
【0012】
従って、制御装置によって第1種目の電解水を吐水している最中に、第2種目の電解水を第一、第二の水路切替手段を切替えることにより、設定した時間どおり吐水できる。
【0013】
通常の場合、次の洗浄者には前の人が使用した電解水が水路内に残っているので、残存電解水が出尽くすまでは前の電解水が吐水されてしまう。そのため、本発明では水路の長さを設定入力し、水路の長さ及び吐水時間から水路切替手段の切替時期を計算し、洗浄を終了する前に、次の洗浄者が手を洗う為の第1種目の電解水が吐水される様に切替えておく。その結果、次の洗浄者は最初に他種の電解水で手を洗うことがなく、残存電解水を無駄に排水してから第1種目の吐水を待つこともないので、時間と資源を節約できる。
【0014】
因みに、本発明で用いる吐水口は開放式であるが、細い水路なので空気が入らない限り水路内の電解水は漏れることはないので、蛇口の様な止水栓は必要ない。
【0015】
(3) また、本発明の請求項3に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、前記制御装置に、当該制御装置による送水路の長さ又は電解水の吐水時間の設定操作時、若しくは、これ等長さと時間の変更操作時において、いずれか一方の電解水の時間当たりの生成量と、前記水路切替手段から吐水口に至る送水路の容積から算出された上記一方の電解水の通過時間とを比較して、吐水時間の方が小さい場合は、警報を発するか又は警報を表示する警報部が具備されていることを特徴としている。
【0016】
上記請求項3の構成によれば、夫々設定された吐水時間と、一方の電解水の時間当たり(実際には秒当たり)の生成量と、水路切替手段から吐水口までの水路の容積から算出した通過時間を比較して、吐水時間の方が小さい場合は、水路切替手段から吐水口までの間にアルカリ性水と酸性水の双方が存在し、境界の部分では中和されてしまうので、この様な設定を避けるために、警報を発して注意を促す。
【0017】
尚、電解水が送水路の水路切替手段から吐水口までに通過する時間は、時間当たりの一方の電解水の生成量(一定値)と、初期設定した水路の長さと、水路の内径から求めた容量にて決まる。
【0018】
(4) また、本発明の請求項4に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、前記吐水時間を前記制御装置に設定入力するための設定手段は、総吐水時間が入力されると、各電解水の吐水時間を1/2ずつに分けて、これ等分けた時間が各電解水の吐水時間として設定入力されることを特徴としている。
【0019】
上記請求項4に係る構成は、吐水時間の設定に関するものであり、通常、作業の種別により油脂系の汚れが多い場合などもあり、各々の時間毎で入力することなっている。しかし、請求項第4項は吐水時間を設定する場合に、総吐水時間を入力すると各電解水の吐水時間の1/2ずつに自動的に分配して各電解水を吐水する様に制御することになっているので、設定の手間を省くことが可能となる。
【0020】
(5) また、本発明の請求項5に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、前記電解水を1箇所の吐水口から交互に吐水させるに当たって、いずれか一方の電解水を吐水中はその水種名を表示部に表示し、水種が切り替わっていずれか他方の電解水が吐水される場合は、当該他方の電解水が吐水口から吐水される時点で、他方の電解水の水種名が上記表示部に表示されることを特徴としている。
【0021】
上記請求項5の構成によれば、吐水口から吐水される水種は、吐水口から実際に吐水される水種が表示され、特に水種の切替時の表示は、水路の長さと吐水時間から算出したタイミングに基づいて切替えて表示される。
【0022】
(6) また、本発明の請求項6に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、前記吐水口の近傍に、前記他方の電解水の吐水が終わるまでの洗浄残時間を表示する表示器を設けたことを特徴としている。
【0023】
上記請求項6の構成によれば、吐水口の付近に表示器を設けて、洗浄残時間を表示するため、洗浄しながらこの表示器の洗浄残時間を見ることにより、途中で洗浄、殺菌をやめてしまう問題を解決できる。即ち、残時間が「0」になるまで手指を洗浄すれば、手指を充分きれに洗浄することができる。
【0024】
(7) 更に、本発明の請求項7に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、前記制御装置が、前記電解槽の各電解室に設けた電極に印加する電圧の極性を定期的に反転させることにより、酸性水とアルカリ性水を交互に生成し、これ等生成される各電解水に応じて設定された順序と時間に基づいて、各電解水が前記吐水口から吐水されるように制御されることを特徴としている。
【0025】
上記請求項7の構成によれば、定時間毎に陰電極と陽電極の各々電極に印加する通電極性を反転する機能を持たせることにより、陰極室及び陽極室において、アルカリ性電解水が通水される水路に付着したスケールを酸性電解水で溶解でき、しかも各電極室で生成される電解水に応じて所定の順序で決められた時間通り電解水を吐水することが出来る。
【0026】
即ち、水道水には陽イオンを持ったマグネシウムやカルシウムが含まれ、電気分解により陰極側がアルカリ性になり炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムとなって析出するため、スケールとなって隔膜や電極に付着して導通不良や水路の閉塞等をもたらす。この点、請求項7に係る発明によれば、スケール対策の為に電極に印加する電圧の極性を反転させることにより、酸性電解水を生成して電解槽内に付着したスケールを除去するものであり、電極の極性を反転しても手洗い用の電解水は設定した順序と時間で吐水される様に制御されるものである。
【0027】
また、本発明の手指洗浄装置には、アルカリ性水と酸性水の各々専用の取水が可能なモードを付加した為、これらの電解水を使用して厨房等での各種機器の洗浄及び殺菌を可能としたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置は、アルカリ性水と酸性水を1 箇所の吐水口から交互に吐水する手指洗浄装置であり、電解水の吐水時間と水路の長さを設定可能とした手指洗浄装置である。従って、本発明によれば、吐水口からは所定の順序で、設定された吐水時間通りに電解水が吐水されるので、必要な時間だけ手指の洗浄が可能となる。また、通常の場合、次の洗浄者は、前の洗浄者が使用した電解水が水路に残っているので、残存電解水が出尽くすまでは第1 種目の電解水が吐水されないが、本発明では吐水の途中で水種を切替えて送水することが出来るので、次の洗浄者は初めから第1種目の電解水を使え、不要な電解水を無駄に排水させることがない。
【0029】
更に本発明によれば、吐水時間の設定値が小さいため、吐水量が少なく、水路切替手段から吐水口までの水路内に2種類の電解水が存在する設定となる場合は、境界の部分では中和されてしまうので、この様な場合は警報を発して注意を促せばよい。また、吐水時間は、総吐水時間を入力すれば自動的に1/2ずつの時間で設定されるので双方の時間の設定をする必要がなく、操作が簡単で容易に取り扱うことができる。
【0030】
加えて本発明によれば、アルカリ性水と酸性水の表示は、実際に吐水口から吐水される水種を切り替えた時点で表示を切替えられるので、洗浄者は使用中の水種が分かりやすく、使用中に水種を間違える心配も少なく、更に、洗浄の残時間が表示されるので残時間を見ながら洗浄できるため、途中で洗浄をやめてしまうことがなく、十分な時間手指の洗浄と殺菌ができて好適である。また、電極の極性を反転可能としたので、電解槽内や水路内に付着したスケールを除去でき、高価な純水器や軟水器を併設する必要がなく、スケールの除去の為に印加電圧を反転しても、所望の電解水を正しい順序で決められた時間吐水できる機能を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置の全体を示した構成図。
【図2】本発明の実施例に係る操作部パネルの正面図。
【図3】本発明の電気的構成を説明したブロック図。
【図4】各電解水の吐水順序と水種ランプの関係を説明した図。
【図5】本発明における設定の手順を説明したフロー図。
【図6】本発明における吐水の動作を説明したフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る電解水を用いた手指洗浄殺菌装置の実施の形態を図面と共に説明すると、図1は本発明の全体を説明した構成図であって、図中、符号1で全体的に示したのは、水道水若しくは純水に電解質を添加した被電解水を電気分解することによって、陽極側に殺菌効果を有する酸性水を生成し、陰極側に洗浄効果を有するアルカリ性水を生成することができる電解水生成装置であって、同じく符号2で全体的に示したのは手指の洗浄部を示す。
【0033】
上記の電解水生成装置1は、電解槽10と、電源部20と、制御基板を備えた制御装置30と、第1〜第4の計4個の水路切替用の電磁弁41,42,43,44から成る水路切替装置40とを備えていて、この水路切替装置40には、後述する電極反転手段によって電解槽10の電極が途中で反転したとしても、この反転によって後述する吐水口14Tから取水(給水)される電解水の性状が反転しないように制御するための、性状維持機能が具備されている。
【0034】
即ち、電解槽10の内部は、隔膜10Tによって2つの電解室10A,10Bに仕切られていて、各電解室10A,10Bには夫々電極10X,10Yが取り付けられている。これ等各電極10X,10Yの極性は、制御装置30による定期的なリレースイッチ31,32の切替制御に従って反転し、その結果、両電解室10A,10Bで生成される電解水の性状を反転することを可能にしている。
【0035】
従って、本発明で使用する電解槽10は、両電解室10A,10B内で、アルカリ性水と酸性水を定期的に交互に生成するため、アルカリ性水を生成した陰極室に付着したスケールは、次回の電極の反転によって陽極室になるので、この陽極室で生成された酸性水によって溶解除去されると共に、両電解室10A,10Bの上面に設けた各採水口10M,10Nに対して、各下端部を連通接続した各送水路11A,11B内でのスケールの発生も、合わせて防止できる仕組みに成っている。
【0036】
更に、上記一方の送水路11Aの上端側には、上述した第3と第4の水路切替用の電磁弁43と44が並列に接続され、また、上記他方の送水路11Bの上端側には、上述した第1と第2の水路切替用の電磁弁41と42が、同じく並列接続されている。
【0037】
更に図中、12は上記第1と第3の水路切替用の電磁弁41,43の間を接続する第1の切替用水路、13は上記第2と第4の水路切替用の電磁弁42,44の間を接続する第2の切替用水路であって、前述した制御装置30からの指令に従って開閉制御されるこれ等計4個の水路切替用の電磁弁41,42,43,44と、計2本の切替用水路12,13とによって、前述した性状維持機能を備えた水路切替装置40が構成されているが、この性状維持機能の作用に付いては後述する。尚、図面では符号SV3とSV4で示した電磁弁43と44が酸性水用の第一の水路切替手段を構成し、符号SV1とSV2で示した電磁弁41と42がアルカリ性水用の第二の水路切替手段を構成しているが、これは実施の一例を示したものである。
【0038】
同じく図1において、14は根端部を上記第1の切替用水路12の中間部分に接続し、先端部には吐水口14Tを設けた取水路、16は根端部を上記第2の切替用水路13の中間部分に接続し、先端部には排水口16Tを設けた排水路、15はシンクであって、このシンク15からの排水と、排水口16Tからの排水を一緒にすることによって、中和させる仕組みに成っている。
【0039】
次に、上述した性状維持機能に付いて説明すると、例えば一方の電解室10Aで酸性水が生成され、他方の電解室10Bでアルカリ性水が生成されている状態において、制御装置30が上記水路切替装置40の第1と第4の電磁弁41,44を開とし、第2と第3の電磁弁42,43を閉とすると、一方の電解室10Aで生成された酸性水は、一方の送水路11Aより開いている第4の電磁弁44を通って第2の切替用水路13から排水路16を経て排水口16Tに排水される。また、他方の電解室10Bで生成されているアルカリ性水は、他方の送水路11Bより開いている第1の電磁弁41を通って、第1の切替用水路12から取水路14を経て吐水口14Tに送水される。
【0040】
以上の給水形態において、例えば定期的なプログラムに従って制御装置30がリレースイッチ31,32を切替えて、双方の電解室10A,10Bの電極10X、10Yの極性を図1の状態から反転させた場合、一方の電解室10Aではアルカリ性水が生成され、他方の電解室10Bでは酸性水が生成されることになるため、上記電磁弁41〜44の開閉状態がそのまま続くと、吐水口14Tに酸性水が送水され、排水口16Tにアルカリ性水が送水されることになって、希望する電解水を吐水口14Tから得られなくなったり、取水の途中で異なる電解水(この場合は酸性水)が給水されてしまう問題が発生する。
【0041】
しかし、本発明では制御装置30が上記電解室10A,10Bの電極10X,10Yの極性を反転させると同時に、同じく制御装置30が上記電磁弁41〜44の開閉状態を、第1と第4を閉、第2と第3を開に逆に切替えるように制御作動するため、吐水口14Tから続けてアルカリ性水を取水し、排水口16Tからは続けて酸性水を排水することが可能となり、取水する電解水の性状をそのまま維持することができる。
【0042】
尚、図1に示した構成図では、水路切替装置40として、計4個の電磁弁41〜44を用いた装置が記載されているが、これは実施の一例であって、計2個の三方弁式電磁弁、或いは、1個の四方弁式電磁弁を代わりに使用してもよく、その選択は任意とする。
【0043】
一方、前記手指洗浄部2に設けた操作部50のパネル50Pには、例えば、図2に示すようにモード切替ボタン52の操作に従って、本発明に係る電解水生成装置1の運転モードを、上記吐水口14Tからアルカリ性水を取水させることができる「アルカリ性水取水モード」と、吐水口14Tから酸性水を取水させることができる「酸性水取水モード」と、吐水口14Tから先ずアルカリ性水を出水させた後、酸性水を出水させて洗浄と消毒を行う「手洗い取水モード」のいずれかに切替えることができるモード切替釦52と、表示部53に表示切替ボタン51で切替えられる送水路の長さと吐水時間の設定値や手指の洗浄残時間等を表示することができる表示部53と、上記モード切替釦52を押すことによって選定された各取水モードを各々点灯により明示する水種ランプ50A,50B,50Cと、電解質の補給が必要になった場合に点灯する電解質補給ランプ50Dと、手をかざすことによって取水の開始及び停止を指令する非接触センサ54が設けられている。
【0044】
次に、図3は上述した本発明の電気的な構成を説明したブロック図であって、制御部の中心を構成するCPU38と、洗浄に必要な各種プログラムを格納したメモリー39との間に、バス33を介して接続されたインターフェイス34には、時計回路35と、前記電極反転用のリレー31,32によって構成される電極反転部36と、表示部53と、前述した送水路の長さや吐水時間といった各種データ入力用の入力部37と、上述した非接触センサ54と、前述した水種ランプ50A,50B,50Cと、警報部55が接続されている。
【0045】
更に上記のインターフェイス34には、水路切替装置40としての水路切替用の各電磁弁41,42,43,44と、流量調整弁4と、フローセンサ6と、入水用電磁弁5と、電解質供給ポンプ8Pが接続されていて、夫々がメモリー39に格納した制御プログラムに従ってCPU38によって制御される仕組みに成っている。
【0046】
また、CPU38には、夫々メモリー39に格納されているプログラムに従って、上記電解槽10に設けた電極10X,10Yの極性を定時間毎に反転させるための第一の時計部と、前記水路切替用の電磁弁41〜44の開閉状態から、吐水口14Tに取水されるアルカリ性水と酸性水の累積取水時間を計時する第二の計時部とから成る計時部38Aが具備されている。更にCPU38には各電磁弁41,43から吐水口14Tまでの各水路12及び14の長さに基づいて、第1番目の電解水を設定された吐水時間(例えば15秒間)だけ吐水口14Tから吐水し、次に、第2番目の電解水を設定された吐水時間(同様に15秒間)だけ吐水口14Tから吐水して、第2番目の電解水の吐水が終了した時点で、吐水口14Tに至るまでの水路12,14内に次の洗浄者(利用者)用として第1番目の電解水を導くように、上記の各電磁弁41,43を開閉制御するための水路切替部とから構成された水路切替時期計算部38Bが具備されている。
【0047】
図4は、本発明における吐水のタイミングチャートを示したもので、(イ)は各電解水の吐水順序と、前記水種ランプ50A,50Cの点灯状態を説明したものであって、図では分かり易く説明するために、一人分の洗浄を行なう場合を表わし、先ず第1番目にアルカリ性電解水を吐水口14Tから15秒間吐水して、次に酸性電解水を15秒間吐水口14Tから吐水する場合の図であり、同時に吐水中の水種の表示も水種ランプ50Aと50Cの点灯で行なうことを示している。
【0048】
また、(ロ)の場合は、水路切替用電磁弁41,43を通過するアルカリ性電解水と酸性電解水のチャートであり、電磁弁41,43の位置では、前の洗浄者の酸性電解水の吐水が終了する時点では既に、次の洗浄者用のアルカリ性電解水が通過しているので、電磁弁41,43から吐水口までの通過時間(T1)を、洗浄時間の15秒から差し引いた時間(15−T1)だけ通水すれば良いことになる。次に酸性電解水を15秒間通水し、最後にアルカリ性電解水を吐水口まで通過時間(T1)を通水するようになっている。
【0049】
次に、上述した本発明が実施されている電解水生成装置の動作を、図5と図6に記載したフローチャートに従って説明する。
【0050】
図5は設定のフロー図であり、ステップS1で電解水の吐水順序と吐水時間、並びに、吐水口14Tまでの取水路14の長さを設定した後、ステップS2で一方の電解水の吐水時間(全吐水時間/2)と、水路の電磁弁41,43から吐水口14Tまでの通過時間と比較して、吐水時間が短い場合は、ステップS3に進んで警報部55が警告をして再設定を促すものである。
【0051】
図6は、電解水を吐水口14Tから吐水させる場合の動作を説明したフローチャートであって、始めのステップS4で利用者が手をかざすことによって非接触センサ54がONすると、図1並びに図3に示した入水用電磁弁5が開いて電解槽10による電気分解が開始され、次いで、ステップS6に進んで吐水順序第1番目の電解水(例えばアルカリ性水)の送水路11Aに設けた電磁弁43が開いて、第1番目の電解水を吐水口14Tから吐水させ、吐水順序第2番目の電解水(例えば酸性水)を、送水路11Bより開いた電磁弁42を通して排水口16Tより排水して、次のステップS7に進む。
【0052】
ステップS7では、操作部50に設けた第1番目の電解水(例えばアルカリ性水)を明示する水種ランプ50Aが点灯し、次いで、次のステップS8に進んで水種切替時間に達したか否かが判定され、達した場合は次のステップS9に進んで、吐水順序第2番目の電解水(例えば酸性水)の送水路11Bに設けた電磁弁41が開いて、第2番目の電解水を吐水口14Tから吐水させ、吐水順序第1番目の電解水を、送水路11Aより開いた電磁弁44を通して排水口16Tから排水して、次のステップS10に進む。
【0053】
ステップS10では、第2番目の電解水の吐水開始時間に達したか否かが判定され、達した場合は上記第2番目の電解水を表す水種ランプ50Cが点灯し、前記第1番目の電解水を明示する水種ランプ50Aが消灯して、次のステップS12に進む。
【0054】
ステップS12では、吐水順序(設定順序)第2番目の電解水が、送水路11Bに設けた電磁弁41を設定時間分通過したか否かが判定され、通過が判定(Yes)された場合は、ステップS13に進んで吐水順序第1番目の電解水の送水路11Aに設けた電磁弁43を吐水側に開き、吐水順序第2番目の電解水の送水路11Bに設けた電磁弁42を排水側に開いた後、ステップS14に進んで洗浄残時間が「0」になったか否かが判定され、Yesの場合はステップS15に進んで、上記ステップS11で点灯した吐水順序第2番目の電解水の水種ランプ50Cを消灯すると共に、前記入水電磁弁5を閉にして電解を停止することにより、処理を終了する。
【0055】
尚、上述した洗浄処理において、吐水口14Tと排水口16Tへの各酸性水及びアルカリ性水の送水は、予め設定されているプログラムに従って制御装置30が各電磁弁41〜44を開閉する制御することによって行われる。
【符号の説明】
【0056】
1 電解水生成装置
2 手指洗浄部
10 電解槽
10A 一方の電解室
10B 他方の電解室
10X,10Y 電極
11A,11B 送水路
12,13 切替用水路
14 取水路
14T 吐水口
15 シンク
16 排水路
16T 排水口
20 電源部
30 制御装置
31,32 リレースイッチ
36 電極反転部
37 入力部
40 水路切替装置
41,42,43,44 水路切替用の電磁弁
50 操作部
50A,50B,50C 水種ランプ
53 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽の陰極室から生成されるアルカリ性水と、陽極室から生成される酸性水とを、1箇所の吐水口から交互に吐水させることにより、アルカリ性水で手指の洗浄を行い、酸性水で手指の殺菌を行うことができる電解水を用いた手指洗浄殺菌装置であって、
上記陰極室と陽極室の夫々に接続されている各送水路の途中に、陰極室と陽極室から送水されて来る上記の各電解水を、制御装置からの指令に従って上記の吐水口と排水口のいずれかに選択して送水することができる水路切替手段を設け、
上記制御装置には、上記水路切替手段から吐水口に至る送水路の長さを設定入力するための送水路長さ設定手段と、各電解水を上記吐水口から吐水させる吐水時間を設定入力するための吐水時間設定手段と、これ等設定された送水路の長さと吐水時間とを記憶する記憶手段とを設けると共に、
上記制御装置は、いずれか一方の電解水を上記設定・記憶された吐水時間だけ吐水口から吐水し、次いで、いずれか他方の電解水を上記設定・記憶された吐水時間だけ吐水口から吐水し、且つ、上記いずれか一方の電解水を上記吐水口までの送水路内に導入せしめるように、上記水路切替手段を切替制御せしめることを特徴とする電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。
【請求項2】
前記制御装置に、前記設定・記憶された送水路の長さと電解水の吐水時間とを、夫々変更するための手段が具備されていることを特徴とする請求項1に記載の電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。
【請求項3】
前記制御装置に、当該制御装置による送水路の長さ又は電解水の吐水時間の設定操作時、若しくは、これ等長さと時間の変更操作時において、いずれか一方の電解水の時間当たりの生成量と、前記水路切替手段から吐水口に至る送水路の容積から算出された上記一方の電解水の通過時間とを比較して、吐水時間の方が小さい場合は、警報を発するか又は警報を表示する警報部が具備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。
【請求項4】
前記吐水時間を前記制御装置に設定入力するための設定手段は、総吐水時間が入力されると、各電解水の吐水時間を1/2ずつに分けて、これ等分けた時間が各電解水の吐水時間として設定入力されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。
【請求項5】
前記電解水を1箇所の吐水口から交互に吐水させるに当たって、いずれか一方の電解水を吐水中はその水種名を表示部に表示し、水種が切り替わっていずれか他方の電解水が吐水される場合は、当該他方の電解水が吐水口から吐水される時点で、他方の電解水の水種名が上記表示部に表示されることを特徴とする請求項1に記載の電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。
【請求項6】
前記吐水口の近傍に、前記他方の電解水の吐水が終わるまでの洗浄残時間を表示する表示器を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は5のいずれかに記載の電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。
【請求項7】
前記制御装置が、前記電解槽の各電解室に設けた電極に印加する電圧の極性を定期的に反転させることにより、酸性水とアルカリ性水を交互に生成し、これ等生成される各電解水に応じて設定された順序と時間に基づいて、各電解水が前記吐水口から吐水されるように制御されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の電解水を用いた手指洗浄殺菌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−253329(P2010−253329A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102552(P2009−102552)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】