説明

電解水生成装置

【課題】 一定の直流電圧を利用して電解能力を制御可能であり、しかも、電解能力の調整による損失を抑えることで、放熱のためのヒートシンクを小さくでき、基板をコンパクトに構成できる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】 通水路中に対向した電極を有する電解槽と、所定電圧の直流電源とアースとに接続されたHブリッジ回路と、前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との組み合わせを変化させることで、前記電極に印加される直流電圧の極性を切替える通電制御手段と、を備えた電解水生成装置において、
¥前記通電制御手段は、2つのスイッチング素子を利用して所定の極性で前記電極へ所定電圧を印加し、前記電極に流れる電流が所定電流値となると所定電圧の印加を停止することを周期的に繰り返して電解能力を制御可能であり、前記Hブリッジ回路には、前記電極と直列状態で通電される位置にインダクタが接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水を電気分解する電解水生成装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から電解水生成装置には電解槽の電極間を流れる電流を変えて電解能力を調整すること、及び、電解槽への通電極性を切替え可動であることが求められている。そのために、例えば、特許文献1に記載の電解水生成装置においては、商用交流電源が供給される1次側において整流電圧から正負両極性の直流出力を生じさせ、その直流出力を変圧器を介して電解槽が設けられている2次側へ供給している。そして、2次側において電解槽の電極に流れる電流を検知し、フォトカプラを介して1次側にフィードバックしている。これに基づき、1次側においてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行って直流出力電圧を変化させることで、結果として2次側の電解槽の電極に流れる電流が変更されることで電解能力を調整している。
【0003】
尚、この駆動回路としては、2次側に2つのスイッチング素子を設けて、2つのスイッチング素子により電解槽の電極へ供給される電圧の極性の切替えを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−21336号公報(第8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、電解能力を調整するために、電解槽が設けられた2次側に供給するための電圧を可変できる電源回路を1次側に構成した場合には、整流器やトランスが必要となり、そのためにコスト高となり、必要な基板サイズも大きくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、一定の直流電圧を利用して電解能力を制御可能であり、電解槽へ供給する電圧を可変するための電源回路を専用に構成する必要がなく、しかも、電解能力の調整による損失を抑えることで、放熱のためのヒートシンクを小さくでき、コストを抑えられ、基板をコンパクトに構成できる電解水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の電解水生成装置においては、通水路中に対向した電極を有する電解槽と、前記電解槽を中心として4つのスイッチング素子により構成され、所定電圧の直流電源とアースとに接続されたHブリッジ回路と、前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との組み合わせを変化させることで、前記電極に印加される直流電圧の極性を切替える通電制御手段と、を備えた電解水生成装置において、
前記通電制御手段は、2つのスイッチング素子を利用して所定の極性で前記電極へ所定電圧を印加し、前記電極に流れる電流が所定電流値となると所定電圧の印加を停止することを周期的に繰り返して電解能力を制御可能であり、前記Hブリッジ回路には、前記電極への直流電圧の印加極性が切替えられても前記電極と直列状態で通電される位置にインダクタが接続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、Hブリッジ回路のスイッチング素子のオン状態とオフ状態との組み合わせを変化させることで、電極に印加される直流電圧の極性を切替えることが可能であり、極性を周期的に切替えることで電極に付着したスケールを除去することで、電解能力の低下を防ぐことができる。
そして、所定の極性で前記電極へ所定電圧を印加し、電極に流れる電流が所定電流値となると所定電圧の印加を停止することを周期的に繰り返すことで、電解槽に通水される水道水の水質が変わって電極間に所定電圧が印加された時に瞬間的に流れる電流値が変わっても、所定の通電期間に流れる平均電流値としての変化を抑えることができ、結果として電解能力を制御可能である。その際に、前記Hブリッジ回路に接続されたインダクタによって、Hブリッジを流れる電流の立ち上がりが緩やかとなり、容易に所定電流値の範囲内に制御することができ、Hブリッジを構成するスイッチング素子における発熱を抑えることができる。従って、放熱のためのヒートシンクを小さくでき、また、電圧調整のための専用の電源回路が不要であることから、電解槽の駆動回路の基板のコストを抑えて、且つ、コンパクトに構成することができる。
【0009】
また、請求項2に係る電解水生成装置においては、前記通電制御手段は、所定電圧の印加状態から印加停止状態への変更時には、正極側のスイッチング素子のみをオフし負極側のスイッチング素子はオン維持し、前記Hブリッジ回路には、前記インダクタによって生起される回生電流が前記電極に流れることを特徴とする。そのため、回生電流が電極に流れて電解に寄与するため、電解槽の通電回路での無駄を少なくすることができる。
【0010】
また、請求項3に係る電解水生成装置においては、前記電解水生成装置は、前記電解槽による電解によって次亜塩素酸を含んだ水を殺菌水として吐水することを特徴とする。そのため、電解水生成装置が設置された場所によって、異電極間に通水される水道水の水質抵抗はなり、そのことにより電極に所定電圧が印加されたときに流れる電流値が変化するが、通電制御手段によって、平均電流値の変動を抑えるように制御されるため、電解水に含まれる次亜塩素酸濃度を殺菌を得るため必要な濃度以上とすることができ、しかも、無駄に高濃度の次亜塩素酸濃度を発生させることもない。
【0011】
また、請求項4に係る電解水生成装置においては、前記Hブリッジと電源若しくはアースとの間に設けられた電流検出抵抗と、その電流検出抵抗を流れる電流値に基いて前記Hブリッジ回路の故障を判定する故障判別手段とを備え、この故障判別手段は、所定電圧の印加中と印加停止中とで前記電流検出抵抗の電圧の増幅率を変化させることで、所定電圧の印加中に前記電流検出抵抗を流れる電流値が一定であっても出力が変化することで、オン時間に前記電流検出抵抗を流れる電流値ピークが一定であっても、デューティー比によって出力が変化することから確実に故障を検出出来ることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては。Hブリッジ回路を利用して、電極へ印加する直流電圧の極性を周期的に切替えることで電極に付着したスケールを除去することができ、また、Hブリッジを構成するスイッチング素子をオンオフ駆動して電極を流れる電流値を制御する際に、Hブリッジ回路に接続されたインダクタによって、スイッチング素子における発熱を抑えることで、放熱のためのヒートシンクを小型化でき、電解槽の駆動回路の基板のコストを抑えて、且つ、コンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電解水生成装置を用いた温水洗浄便座のコントローラのブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る電解水生成装置の制御装置の構成を例示するブロック図。
【図3】本実施例で使用する電解水生成装置の制御装置の変形例。
【図4】図3における図3におけるインダクタの配置の一例。
【図5】図2に表した電解水生成装置の電解槽の水質抵抗と電極に流れる電流の関係を示す図。
【図6】図5において水質抵抗がA点にある場合の電解槽11への通電電流波形を例示した。
【図7】図5において水質抵抗がB点にある場合の電解槽への通電電流波形を例示した図。
【図8】図5において水質抵抗がC点にある場合の電解槽への通電電流波形を例示した図。
【図9】電極端子間ショート故障を判定する故障検出回路の構成を例示する回路図。
【図10】図9の故障検出回路において、電極端子間が正常な時の各部波形例を表す。
【図11】図9の故障検出回路において、電極端子間がショートした場合の各部波形例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係る電解水生成装置を用いた温水洗浄便座のコントローラのブロック図である。図1に示すように温水洗浄便座のコントローラは、AC入力端子1、24V電源部3、24V電源部4、5V電源部5、24V負荷部6a、6b、6c、6d、5V負荷部7a、7b、7cを備える。電解水生成装置は、前記24V負荷部の一つであり、ここでは6dとする。
【0015】
図1の温水洗浄便座のコントローラについて更に詳しく説明する。AC入力端子1には商用電源が入力される。このAC入力端子に入力された交流100Vの商用電源は、1次側電源部3を構成する整流・平滑回路によって直流141Vとなり、24V電源部4を構成するトランスによって24Vの直流電圧に降圧される。さらに、24V電源部4で生成された24Vの直流電圧が5V電源部5に供給され、この5V電源部を構成するDC−DC降圧ICによって5Vの直流電圧が生成される。この5V電源部5で生成された5Vの直流電圧は、マイコン等の5V負荷部7a、7b、7cを駆動させるための電源として使用される。
【0016】
24V電源部4で生成された24Vの直流電圧は、電解水生成装置6dへ供給されて電気分解の電源として利用されると共に、他の24V負荷部6a〜6cを駆動させるための電源として使用される。例えば、24V負荷部6a〜6cとしては、局部洗浄ノズルを駆動するためのモータ、この局部洗浄ノズルへ供給するための洗浄水供給路を開閉するために設けられた電磁弁、使用者を検出するための焦電センサー等が接続されている。
【0017】
電解水生成装置6dは、局部洗浄ノズルよりも上流側の給水路を流れる水(湯であっても良い)を電気分解して、その水に含まれる塩素イオンを電気分解することにより次亜塩素酸を生成するために用いられる。次亜塩素酸は殺菌成分として機能するため、次亜塩素酸を含む電解水は殺菌水として、局部洗浄ノズルに向けて噴射したり、温水洗浄便座が取り付けられる大便器に噴射したりすることで、アンモニアなどによる汚れを効率的に除去あるいは分解したり、殺菌するために用いられる。具体的には、局部洗浄ノズルが温水洗浄便座に収納されている非進出状態で電解水を局部洗浄ノズルから噴射させ、その噴射水を反射させて局部洗浄ノズルに向けて浴びせたり、または、電解水生成装置6dの下流側を局部洗浄ノズルに至る流路と、電解水を噴射するための殺菌水噴射ノズルへ至る流路とに分岐させ、その分岐部に流路切替弁を設けておき、電解水生成装置6dによって電気分解を行ったときには流路切替弁によって殺菌水噴射ノズル側に連通させて、電解水を局部洗浄ノズルに対して、又は大便器へ噴射するようにしておく。
【0018】
このように、電解水生成装置6dへは、温水洗浄便座のコントローラの24V電源部4から供給された24Vの直流電圧を利用することで、電解水生成装置6dへの通電専用の電源を追加で構成する必要がないため、電解水生成装置6dの制御装置にける回路基板をコンパクトに構成することができる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る電解水生成装置6dの制御装置の構成を例示するブロック図である。本実施例の制御装置10は、電解槽11への通電を制御するために、スイッチング素子12a、12b、12c、12dによって構成されたHブリッジ回路、インダクタ13、電源部14、電流検出抵抗R100、スイッチング素子12a〜12dのオンオフを切替える通電制御手段16、電解槽の故障を検出するための故障検出回路17とを備える。ここで、電解槽11は通水される水によって電気抵抗が変わるため、可変抵抗の記号を用いて図示している。
【0020】
電解槽11は、局部洗浄ノズルの上流側に設けられており、水(又は湯)が流れる通水路中に対向した電極(図示せず)を有している。この電解槽11を中心として4つのスイッチング素子12a〜12dとにより構成されたHブリッジ回路が、電源部14とアース15との間に構成されており、電源部14へは前述した24V電源部4からの24Vの直流電圧が供給されている。通電制御手段16は、スイッチング素子12a、12dをオンした第一給電状態、又は、スイッチング素子12b、12cをオンした第二給電状態で電解槽11へ24Vの直流電圧を印加して電解水の生成が可能である。この第一給電状態と第二給電状態とは、電解水の生成時期毎に切替わるものであり、その切替えに伴い、電極に印加される直流電圧の極性が切替わることによって、電極に付着したスケールを除去することで、電解能力の低下を防ぐことができる。スイッチング素子12a、12b、12c、12dは、通電制御手段16にそれぞれ接続され、通電制御手段16からの制御信号によってオン(導通状態)とオフ(非導通状態)とに切替え可能となっている。
【0021】
本実施例においては、Hブリッジ回路部をトランジスタを用いたスイッチング素子12a〜12dを用いた構成を例示しているが、専用ICを用いて構成してもよい。
【0022】
図3に本実施例で使用する電解水生成装置の制御装置の変形例を示す。図2では制御装置10を構成している制御基板上に電解槽11に直列に接続されるインダクタ13を配置していたが、インダクタ13を、制御装置10を構成した制御基板外へ配置した状態を図3に示す。これにより制御装置10を配置した制御基板からインダクタ13を削除することができ、制御基板の一層の小型化が可能となる。
【0023】
図3におけるインダクタ13の配置の一例として、電解槽11にインダクタンスを直接持たせる構成を図4に示す。ケース11a内へ配置された一対の電極11b,11cに接続される銅線13aを、ケース11a外に設置させた鉄心13bの周囲へ巻きつけることによりインダクタンスを持たせる構造とする。インダクタンスはケース11a外に設置させた鉄心13bのサイズおよび銅線13aの巻き数によって調整可能であり、インダクタンスを多く確保出来る構成とすることで、デューティー制御の精度向上にもつながる。
【0024】
次に、通電制御手段16による電解槽11への通電制御について説明する。電解槽11への通電状態は、電解槽11を流れる電解電流値を電流検出抵抗R100の電圧値によって検出し、その電解電流値が1Aを超えることがないように制御される。なお、電解電流値は、検出電圧値(V)/電流検出抵抗値(Ω)によって算出できる。
【0025】
図5は、図2に表した電解水生成装置における電解槽の水質抵抗と電解槽に流れる電解電流の関係を示す図である。電解槽11に24Vの直流電圧を印加した時に電解槽11に流れる電解電流値(以下Ioutとする)は、水質抵抗に比べて電流検出抵抗15の抵抗値が充分に小さいので、Iout=24V/水質抵抗となる。そして、図5に示す通り電解槽11に流れる電解電流は、電解槽11の水質抵抗に係らず制限電流である1Aを超えないように制御される。各水質抵抗(A点、B点、C点)において、電解槽11に流れる電流波形を図6〜図8に示す。
【0026】
図6は、図5において水質抵抗がA点にある場合の電解槽11への通電電流波形を例示した図である。この場合、スイッチング素子12a,12dをオンすると、電解電流値Ioutは水質抵抗が40Ωであるため24V/40V=0.6Aとなる。この0.6Aは制限電流である1Aを超えないので、通電制御手段16はスイッチング素子12a,12dをオン状態に維持(フルデューティー状態)し、電解槽11へは0.6Aが流れていることになる。このフルデューティー状態は、電解電流値が制限電流である1Aを超えない水質抵抗の範囲(=水質抵抗が24Ω以上)において実施される。
【0027】
図7は、図5において水質抵抗がB点にある場合の電解槽への通電電流波形を例示した図であり、図8は、図5において水質抵抗がC点にある場合の電解槽への通電電流波形を例示した図である。
これら、水質抵抗がB点やC点のように、電解電流値が制限電流である1Aを超える場合には、電解槽11への通電電流は、通電をオンしてピーク電流が制限電流値である1Aを超えるとオフされることを周期Tで繰り返すことで、平均電流値が1A以下となるようにデューティー制御(チョッピング制御)される。
【0028】
次に電解槽11への通電をオン/オフするデューティー制御について具体的に説明する。
図7に基いて電解槽11への通電波形について説明する。通電制御手段16からのオン信号(H出力)により、スイッチング素子12a、12dがオンすることで、電源部14から24Vの直流電圧が電解槽11へ印加されことにより、電解槽11へは図2に実線で示す電流が流れる。その時、電解槽11にはインダクタ13が直列に接続されていることで、電解槽11に流れる電流はRLの所定の時定数に基いて徐々に増加し(図7の点線で囲む波形)、その電流値が制限電流値である1Aとなると、スイッチング素子12aがオフする。ここで、スイッチング素子12aのみオフし、スイッチング素子12dはオン状態を継続することで、電源部14からの電解槽11への電圧印加は停止され、電解槽11へはインダクタ13によって生起される回生電流(図2に点線で示す)が流れ、電解槽11への通電電流は徐々に減少する(図7の一点鎖線で囲む波形)。なお、回生電流は電流検出抵抗R100には流れない。通電制御手段16はスイッチング素子12aをオンして電源部14から電解槽11へ電圧印加する状態(ON Duty)と、スイッチング素子12aをオフして電源部14から電解槽11へ電圧の印加を停止した状態(OFF Duty)となるデューティー制御を一定周期Tで繰り返すことにより、結果として、電解槽11へ通電される平均電流は制限電流である1A以下となるように制御される。
【0029】
図8のように、水質抵抗がC点にある場合においても図7の場合と同様に通電制御手段16は動作するが、水質抵抗がB点の時より低いため、電解槽11への通電電流波形は、図8において点線で囲む立ち上がりが水質抵抗がB点の時よりも急俊となり、図8において一点鎖線で囲む立下りが水質抵抗がB点の時よりも緩やかになる。結果として、平均電流値は水質抵抗がB点の時より大きくなるが、制限電流値である1Aを超えることは無い。
【0030】
なお、電極へ付着したスケール除去を行うために、電解槽11への通電極性は電解水を生成する毎に反転させるが、電解槽11への通電電流の極性を変える場合は、スイッチング素子12b、12cをオンさせる。通電を遮断する時は、スイッチング素子12bのみオフし、スイッチング素子12cはオン状態を継続する。
【0031】
以上説明したように、電解槽11に直列にインダクタ13が接続されているため、電解槽11への通電電流は、オン時には所定の時間でなめらかに立ち上がるため、電解槽11に流れる電流値、即ち、Hブリッジを構成するスイッチング素子12a〜12dに流れる電流値を制限電流値を超えない範囲に制限することができ、スイッチング素子12a〜12dをオンオフ駆動した時の発熱を抑えることができる。従って、放熱のためのヒートシンクを小さくでき、また、電圧調整のための専用の電源回路が不要であることから、電解槽の駆動回路の基板のコストを抑えて、且つ、コンパクトに構成することができる。
【0032】
図9は電極端子間ショート故障を判定する故障検出回路の構成を例示する回路図である。
図9に表したように、故障検出回路17は図2の制御装置10の電流検出抵抗R100に接続されており、第一及び第二の増幅手段Amp12、Amp13を備える。
【0033】
第一の増幅手段Amp12は制御装置10に含まれる電流検出抵抗R100(以後、R100とも呼ぶ)とR100に流れる電流で積算された電圧VINを、設定したゲインによって増幅する。
第二の増幅手段Amp13はR1100に流れる電流が電流制限設定値に到達し、チョッピングする水質抵抗範囲で動作し、R100に流れる電流のオフ時間の長さに応じて比較器2の出力オン時間が可変する。
【0034】
増幅手段Amp12の構成についてもう少し詳しく説明する。電源V0の正側から、スイッチ手段Q1と、スイッチ手段Q1の電流制限抵抗R1(以後、R1と呼ぶ)と、容量手段C1とが直列にこの順に接続され、さらに容量手段C1には並列に第一の増幅手段Amp12のゲイン設定用の抵抗R2、R3(以降R2、R3と呼ぶ)が接続されている。また、R3には並列に容量手段C2が接続されている。尚、R2とR3の接続点は比較器1の非反転入力端子(+)にも接続さている。
【0035】
次に、増幅手段Amp13についてもう少し詳しく説明する。R3の陽極端子にさらに第2のゲイン設定用の抵抗R4(以降R4と呼ぶ)が接続され、R4のもう片側の端子は比較器2の出力端子に接続されている。
また、比較器2の電源V0入力端子からDCバイアス電圧を設定するR5とR6がこの順で接続され、さらにHブリッジ回路のR100を介してアース15側に至る。
【0036】
さらに、R100の正側と電源V0の負側には並列に時定数設定用の抵抗7と容量手段C3が接続されており、R7とC3の接続点は比較器2の反転入力端子(−)に接続されている。
【0037】
増幅手段Amp12やAmp13の構成は一例であって、別の手段で構成してもよい。
【0038】
次に、故障検出回路17の動作について説明する。
まず、Hブリッジ回路により定電流制御されて電解槽11を流れる電解電流がR100へ流れているいわゆるオン期間(ON Duty)中について説明する。
デューティー制御状態において、電解電流がR100に流れている期間、故障検出回路17には「電解電流I1×検出抵抗R100」によって生じる電圧VINが増幅手段Amp12及びAmp13に入力される。
【0039】
これにより、比較器1の反転入力端子(-)には電圧VINが印加される。この時、容量手段C1に充電されていない状態にある時、比較器1の非反転入力端子(+)の電圧より、反転入力端子(-)の電圧が大きくなり、比較器1はロウレベル信号を出力する。
【0040】
比較器1の出力がオンしロウレベル信号を出力すると、スイッチ手段Q1がオンし、容量手段C1に電荷が充電される。この時、電流オン期間中の増幅手段Amp12のゲインG(on中)はゲイン設定用の抵抗R2とR3によって、以下の(1)の式により表せられる。
【0041】
(on中)=(R2+R3)/R3・・・(1)
【0042】
次にHブリッジ回路により定電流制御されている時に電解電流がR100に流れている期間における増幅手段Amp13の動作について説明する。電解電流がR100に流れているオン期間は、比較器2の非反転入力端子(+)V1は反転入力端子(−)の電圧V2より大きくなる。(反転入力端子電圧は抵抗R7と容量手段C3により、VIN電圧が平均化される)すなわち、V1>V2となる。この時、比較器2の出力はオフ状態となる。
【0043】
従って、Hブリッジ回路により定電流制御されている時に電流がR100に流れているオン期間は、比較器2がオフ状態にあるため、VoutはR100の両端電圧VINに対し、以下の(2)の式により表せられる。
【0044】
Vout=VIN×G(on中)・・・(2)
【0045】
次に、Hブリッジ回路により定電流制御されている電解電流がR100に流れていない期間、いわゆるオフ期間(OFF Duty)中の故障検出回路17の動作について説明する。
【0046】
まず、増幅手段12の動作について説明する。R100に電解電流が流れていないため、R100の両端電圧VINは0Vとなる。この時、増幅手段Amp12では比較器1の反転入力端子(-)に抵抗R5と抵抗R6の接続点に生じる、V0電源電圧が抵抗R5、抵抗R6及び抵抗R100の抵抗比により分圧された電圧V3が印加される。
【0047】
この時、比較器1の非反転入力端子(+)に生じる電圧V4は、容量手段C2の両端電圧となる。容量手段C2には、容量手段C1に充電された電荷が電流オフ期間中に抵抗R2を介して、充電されることで電圧が生じる。この時、故障検出回路17は容量手段C2に充電される電圧が、R3の両端電圧以上にならないように動作する。尚、電解電流がオン、オフする1周期中の容量手段C2両端電圧は、R100両端電圧をピークホールドした値と一致する。
上記の結果、比較器1の非反転入力端子(+)の電圧V4は反転入力端子(−)の電圧V3より大きくなった直後(V3は数十ミリボルト程度の電圧になるよう抵抗5と抵抗6を設定している)比較器1の出力はオフ状態となり、スイッチ手段Q1がオフする。
【0048】
この時、容量手段C1の電荷はR2、R3を介してGNDへ放電されるため、容量手段C1の両端電圧は放電される電荷に応じて小さくなる。
【0049】
次に、電流オフ期間中の増幅手段Amp13の動作について説明する。
R100に電解電流が流れていない場合、比較器2の反転入力端子(−)電圧V2と非反転入力端子(+)電圧V1の関係は、V2>V1となる。
【0050】
よって、比較器2の出力はオン状態となり、ロウレベル信号を出力する。
従って、この電流オフ期間中の増幅手段12のG(off中)は、以下の(3)の式により表せられる。
【0051】
【数1】

【0052】
以上のように、電解電流がR100に流れている時と流れていない時において故障検出回路のゲインはオン期間中では(1)式で表すことが出来、オフ期間中では(3)式で表すことが出来る。
【0053】
これにより、定電流動作を行うオン期間中とオフ期間中を組み合わせた1周期のゲインG(total)は以下の(4)の式により表せられる。
(total) =G(on中)×ON Duty+G(off中)×OFF Duty ・・・(4)
従って、定電流動作中の故障検出回路の出力電圧VoutはVINに対し、以下の(5)の式により表せられる。
Vout=VIN×{G(on中)×ON Duty+G(off中)×OFF Duty}・・・(5)
【0054】
ここで、図10は、図9の故障検出回路において、電極端子間が正常な時の各部波形例を表し、図11は、図9の故障検出回路において、電極端子間がショートした場合の各部波形例を表す。図10においては、電極端子間が正常な時としてON Dutyが50%の場合であり、図11においては、電極端子間に異物が詰ってショートしたため、電解電流が急激に立ち上がることで、ON Dutyが10%とった場合である。
【0055】
図10において、例えば、R2=4.7kΩ、R3=1kΩ、R4=1kΩと設定した場合、電極端子が正常である時の故障検出回路の出力電圧Voutを算出する。但し、前提条件として
VIN=0.4Vとし、ON Duty=50%,OFF Duty=50%である。
【0056】
(on中) =(4.7k+1k)/1k=5.7
(off中) =4.7k+{(1k×1k)/(1k+1k)}/{(1k×1k)/(1k+1K)=10.33
よって、
Vout=0.4V×{5.7×0.5+10.33×0.5}=3.2V
【0057】
次に、図11において、電極端子間がショート故障した時の故障検出回路の出力電圧Voutを算出する。但し、前提条件としてON Duty、OFF Duty以外は図10で仮定した値と同じとし、ここではON Duty=10%、OFF Duty=90%である時の値を算出する。
【0058】
Vout=0.4V×{5.7×0.1+10.33×0.9}≒4.0V
【0059】
この図10、図11に表したように、本実施形態によれば電極端子間がショート故障した場合において、たとえR100に流れる電流ピーク値が同じであっても、すなわちVINが同じ値であってもON DutyとOFF Dutyの比率に応じて故障検出回路が持つゲインを可変することで故障検出回路の出力電圧に差を持たせることが出来る。
例えばこの出力電圧をCPUなど、ロジックICを用いて監視させることにより、電極端子間が正常時か、異常かを故障検出回路のVout電圧をAD値換算さえることで、明確に区別することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
6d10…制御装置、11…電解槽、12a、12b、12c、12d…スイッチング素子(Hブリッジ回路)、13…インダクタ、14…電源部、16…通電制御手段、17…故障検出回路、電流検出抵抗…R100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水路中に対向した電極を有する電解槽と、
前記電解槽を中心として4つのスイッチング素子により構成され、所定電圧の直流電源とアースとに接続されたHブリッジ回路と、
前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との組み合わせを変化させることで、前記電極に印加される直流電圧の極性を切替える通電制御手段と、
を備えた電解水生成装置において、
前記通電制御手段は、2つのスイッチング素子を利用して所定の極性で前記電極へ所定電圧を印加し、前記電極に流れる電流が所定電流値となると所定電圧の印加を停止することを周期的に繰り返して電解能力を制御可能であり、
前記Hブリッジ回路には、前記電極への直流電圧の印加極性が切替えられても前記電極と直列状態で通電される位置にインダクタが接続されていることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記通電制御手段は、所定電圧の印加状態から印加停止状態への変更時には、正極側のスイッチング素子のみをオフし負極側のスイッチング素子はオン維持し、
前記Hブリッジ回路には、前記インダクタによって生起される回生電流が前記電極に流れることを特徴とする請求項1記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記電解水生成装置は、前記電解槽による電解によって次亜塩素酸を含んだ水を殺菌水として吐水することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記Hブリッジと電源若しくはアースとの間に設けられた電流検出抵抗と、その電流検出抵抗を流れる電流値に基いて前記Hブリッジ回路の故障を判定する故障判別手段とを備え、この故障判別手段は、所定電圧の印加中と印加停止中とで前記電流検出抵抗の電圧の増幅率を変化させることで、所定電圧の印加中に前記電流検出抵抗を流れる電流値が一定であっても出力が変化することを特徴とする請求項1〜請求項3何れか一項に記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−206622(P2011−206622A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74096(P2010−74096)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】